特許第6467582号(P6467582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467582大気圧下で溶媒分圧のシーケンスの関数として実効的多孔質性基板表面の光学特性の変化を調べるシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467582
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】大気圧下で溶媒分圧のシーケンスの関数として実効的多孔質性基板表面の光学特性の変化を調べるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   G01N21/21 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-522519(P2018-522519)
(86)(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公表番号】特表2018-532123(P2018-532123A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】US2016000121
(87)【国際公開番号】WO2017160263
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】14/999,015
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508293737
【氏名又は名称】ジェイ・エイ・ウーラム・カンパニー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】J.A.WOOLLAM CO.,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】518146267
【氏名又は名称】ヴァン・ダースリス・ジェレミー・エイ
【氏名又は名称原語表記】VAN DERSLICE,Jeremy,A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518146278
【氏名又は名称】ゴーデン クリストファー エイ
【氏名又は名称原語表記】GOEDEN,Christopher,A.
(73)【特許権者】
【識別番号】518146289
【氏名又は名称】リファード マーティン エム
【氏名又は名称原語表記】LIPHARDT,Martin,M.
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・ダースリス・ジェレミー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーデン クリストファー エイ
(72)【発明者】
【氏名】リファード マーティン エム
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−039044(JP,A)
【文献】 特表2008−541120(JP,A)
【文献】 特表2002−523773(JP,A)
【文献】 特表平09−506211(JP,A)
【文献】 特開2009−147096(JP,A)
【文献】 米国特許第07426030(US,B1)
【文献】 米国特許第07042570(US,B1)
【文献】 米国特許第09007593(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 15/00−15/14
G01N 1/00− 1/44
G01J 4/00− 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実効的多孔質性基板の光学特性の変化を調べるシステムであって、
前記実効的多孔質性基板は、大気圧下での、
実効的な表面深さ及び屈折率;
細孔径;
細孔容積; そして
細孔径分布
の群から選択される少なくとも一つに関連する表面を含み、
前記システムは、監視された温度で前記基板表面上に流される少なくとも一つの溶媒を含むガス流を、異なる既知の溶媒分圧のシーケンスにわたって生じさせることを可能にするシステムであって、
a)少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源と、溶媒のマスフロー生成コントローラーと、
b)ガス流の供給源及びガスのマスフロー生成コントローラーと、
c)少なくとも一つの溶媒流とガス流の両方を受け取り、溶媒分圧のシーケンスで前記基板上の前記気体中の前記少なくとも一つの溶媒の混合物を排出するための噴霧ノズルと、
d)表面を含む前記基板及び温度モニターセンサーを備える開放チェンバーと
を含み、
前記開放チェンバー内の分圧値を制御する分圧センサーフィードバックループを備えておらず、むしろ、
使用中に前記温度モニターセンサーが温度の測定値を提供し、
前記噴霧ノズルは、ガス流及び溶媒流の供給源に関連するマスフロー生成コントローラーが生成する前記ガス流及び溶媒流から、ガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方を受け取り、
前記少なくとも一つの溶媒流の前記少なくとも一つの供給源のそれぞれと、
それに応答して前記ガス中の前記少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、
この混合物は、前記溶媒が一連の溶媒分圧のそれぞれについて、前記基板表面からデータを取得するために前記基板表面に過渡的に十分に浸透し、前記開放チェンバー内の前記基板表面を通過するように、
前記開放チェンバー内の分圧値は、測定された温度を考慮して前記少なくとも一つの溶媒の溶媒流速を直接制御することによって完全に設定され、
前記溶媒の前記分圧値は、前記測定された温度及び溶媒流速から決定され
前記システムは、更にエリプソメータシステムを含み、当該エリプソメータは、
前記基板の前記表面に電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるように配向された偏光状態生成器と、
前記基板の前記表面と相互作用した後に前記電磁放射線の前記ビームを検出するように配向された偏光状態検出器とを備え、
基板表面特性データを生成する。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
当該システムは、
開放された雰囲気中に存在し、前記開放チェンバー内の静圧は、開放された大気より大きいかまたは小さい。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
当該システムは、
大気成分と異なる成分比をもつ以外は、共通の周囲環境に存在し、前記開放チェンバー内の静圧が共通の周囲雰囲気の静圧よりも大きくないか、一般的な大気圧に等しい。
【請求項4】
基板表面の光学特性の変化を調べる、以下のA)〜C)に示すステップを含む方法であって、
ステップA)は、
実効的多孔質性基板の光学特性の変化を調べるシステムを提供するステップであり、
前記実効的多孔質性基板は、大気圧下での、
実効的な表面深さ及び屈折率;
細孔径;
細孔容積; そして
細孔径分布
の群から選択される少なくとも一つに関連する表面を含み、
前記システムは、監視された温度で前記基板表面上に流される少なくとも一つの溶媒を含むガス流を異なる既知の溶媒分圧のシーケンスにわたって生じさせることを可能にするシステムであって、
a)少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源と、溶媒のマスフロー生成コントローラーと
b)ガス流の供給源及びガスのマスフロー生成コントローラーと
c)少なくとも一つの溶媒流とガス流の両方を受け取り、溶媒分圧のシーケンスで前記基板上の前記気体中の前記少なくとも一つの溶媒の混合物を排出するための噴霧ノズルと
d)表面を含む前記基板及び温度モニターセンサーを備える開放チェンバーと
を含み、
前記開放チェンバー内の分圧値を制御する分圧センサーフィードバックループを備えておらず、むしろ、
使用中に前記温度モニターセンサーが温度の測定値を提供し、
前記噴霧ノズルは、ガス流及び溶媒流の供給源に関連するマスフロー生成コントローラーが生成する前記ガス流及び溶媒流からガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方を受け取り、
前記少なくとも一つの溶媒流の前記少なくとも一つの供給源のそれぞれと、
それに応答して前記ガス中の前記少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、
当該混合物は、前記溶媒が一連の溶媒分圧のそれぞれについて、前記基板表面からデータを取得するために前記基板表面に過渡的に十分に浸透し、前記開放チェンバー内の前記基板表面を通過するように、
前記開放チェンバー内の分圧値は、測定された温度を考慮して前記少なくとも一つの溶媒の溶媒流速を直接制御することによって完全に設定され、
前記溶媒の前記分圧値は、前記測定された温度及び溶媒流速から決定され、
前記システムは、更に、
e)前記基板の前記表面に電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるように配向された偏光状態生成器と、前記基板の前記表面と相互作用した後に前記電磁放射線の前記ビームを検出するように配向された偏光状態検出器を備え、基板表面特性データを生成するエリプソメータシステムが提供され、
使用時に、前記噴霧ノズルは、ガス流の供給源及び少なくとも一つの溶媒の供給源からのガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方をそれぞれ受け取り、
それに応答して前記ガス中の前記少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、
当該混合物は、前記溶媒が、一連の溶媒分圧の各々に対して、前記基板表面からデータを取得するために前記基板表面に過渡的に十分に浸透し、前記開放チェンバー内の前記基板表面上を通過するようにされ、
そしてまた、前記エリプソメータの偏光状態生成器を使用して前記基板の前記表面に電磁放射線の偏光されたビームを導き、前記基板の前記表面と相互作用させた後に前記電磁放射線の前記偏光されたビームを偏光状態検出器で検出して基板表面特性データを生成する。
ステップB)は、
前記噴霧ノズルに、前記ガス流の供給源及び前記少なくとも一つの溶媒流の供給源からのガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方を前記ガス及び溶媒マスフロー生成コントローラーを介してそれぞれ受け取り、
それに応答して、一連の溶媒分圧を達成するように、前記ガス中の前記少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、
前記エリプソメータの偏光状態生成器に前記基板の前記表面で電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるようにさせることによって、前記基板表面からデータを取得するために前記基板表面に前記溶媒が過渡的に十分に浸透するように、この混合物を前記開放チェンバー内の前記基板表面上を通過させ、
前記基板の前記表面と相互作用した後に前記電磁放射線の前記偏光されたビームの偏光状態を検出する偏光状態検出器とを備え、
前記溶媒分圧の前記シーケンスの少なくともいくつかについての基板実効的表面特性データを生成するステップであり、
ステップC)は、
前記開放チェンバーの前記温度モニターセンサーによって提供される温度に対して、前記実効的基板表面特性データの少なくともいくつかを分析し表示する、あるいは分析又は表示するステップである。
【請求項5】
請求項に記載の方法であって、
生成された実効的基板表面特性データの分析により、
実効的基板表面厚さ;
実効的基板表面屈折率;
基板表面の細孔径;
基板表面の細孔容積;
基板表面の細孔径分布
の内から選択される少なくとも2つの基板表面関連パラメータが、既知の温度での前記少なくとも一つの溶媒の溶媒分圧の関数として評価される。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記基板表面上に薄膜が存在し、当該薄膜が調べられる。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、
前記基板表面上に薄膜が存在し、当該薄膜が調べられる。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
溶媒は水である。
【請求項9】
請求項に記載の方法であって、
溶媒は水である。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
溶媒は水以外である。
【請求項11】
請求項に記載の方法であって、
溶媒は水以外である。
【請求項12】
請求項に記載の方法であって、
ルックアップテーブル(Look-up table:ある特定の情報を検索するために表形式に編集されたデータ)を作成することを更に含み、
このルックアップテーブルには、
利用される溶媒について、溶媒流速と温度及び圧力との間の相関に関するデータが含まれ、
特定の分圧値を決定するために前記テーブルを使用し、
前記溶媒のマスフロー生成コントローラーが規定する溶媒流速と
前記測定された温度が
与えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板検査システム及び基板検査方法に関し、より具体的には、例えば、大気圧下での実効的な表面深さ(effective surface depth)及び屈折率、細孔径、細孔容積及び細孔径分布に関連する実効的多孔質性基板表面(porous effective substrate surface)の光学特性の変化を調べるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の検体(被分析物)を含有する薄膜を、液体を含む分析物から基板上に堆積させることが知られている。例えば、Pfeiffer 等によって、流体を含む検体が流入され、その流体中に存在する検体が基板上に堆積する過程の終段までの詳細が示されている(特許文献1〜4参照)。ここでは、上述の文献に記載された検体含有の薄いフィルム上に指向されるように供給される偏光解析ビームが用意され、使用中、電磁放射線の偏光ビームが上述の基板上の薄膜と相互作用し、次いで検出器に入るようにされた形態についても記載されている。
【0003】
一連の溶媒流速に対して、溶媒を過渡的に十分に浸透させることにより、その偏光解析的な調査を可能にし、細孔を含む基板の実効的多孔質性基板表面を特徴付けることも知られている。関連する先行文献には、Baklanov 等による特許文献5〜7、及びBoissire 等による非特許文献1、Xinxin and Vogt による非特許文献2、Vogt 等による非特許文献3がある。なお、上述の先行文献は大気圧下での使用について記載していないことに留意されたい。
【0004】
出願人は、開放(周囲に対して)セル内の分圧の直接測定に頼る先行技術システムを開示している文献をこれ以上は把握していない。既知の従来技術のシステムでは、密閉式セルを使用し、所望の分圧値を設定するために上述の開放式セルへの溶媒流速を制御するフィードバックシステムが適用されている。加えて、既知の分圧モニターは、水が含まれる溶剤の場合にのみ適している。本願明細書の以下に開示するように、本願発明では、分圧が発現する開放チェンバーを用いる。更に、以下に開示するように、本願発明は溶媒として水のみを使用することに限定されない。
【0005】
本願発明者の知る限り、例えば、大気圧下における実効的な表面深さ及び屈折率、細孔径、細孔容積及び細孔径分布に関し、監視された温度で上述の基板表面上を流れる少なくとも一つの溶媒を含む気体の流れを可能にし、一連の異なる既知の溶媒分圧にわたって、実効的多孔質性基板表面の光学特性の変化を調べるシステム及び方法は知られておらず、そのようなシステム及び方法は、本明細書において開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,531,665号明細書
【特許文献2】米国特許第8,493,565号明細書
【特許文献3】米国特許第8,130,375号明細書
【特許文献4】米国特許第7,817,266号明細書
【特許文献5】米国特許第6,435,008号明細書
【特許文献6】米国特許第6,319,736号明細書
【特許文献7】米国特許第6,662,631号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Boissire et al:"Porosity and Mechanical Properties of Mesoporous Thin Films Assessed by Environmental Ellipsometric Porosity", Langmuir 2005, 21, 12362-12371.
【非特許文献2】Xinxin and Vogt:"Carbon Dioxide Mediated Synthesis of Mesoporous Silica Films: Tuning Properties using Pressure", Chem. Mater. Amer. Chem. Soc, Web 04/18/2008.
【非特許文献3】Vogt et al:"Characterization of Ordered Mesoporous Silica Films Using Small-Angle Neutron scattering and X-ray Porosimetry", Chem. Mater., 17, 1398-1408.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の目的は、大気圧下での実効的な表面深さ及び屈折率、細孔径、細孔容積及び細孔径分布に関連する表面を含む実効的多孔質性基板の光学特性の変化を調べるシステムを提供することであって、このシステムは、監視された温度で上述の基板表面上を流れている少なくとも一つの溶媒を含むガス流を、異なる既知の溶媒分圧のシーケンスにわたって生じさせることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明のシステムは以下のa)〜d)に示す構成要素を備えている。
a)少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源と、溶媒のマスフロー生成コントローラー
b)ガス流の供給源及びガスのマスフロー生成コントローラー
c)少なくとも一つの溶媒流とガス流の両方を受け取り、溶媒分圧のシーケンスで基板上の気体中の少なくとも一つの溶媒の混合物を排出するための噴霧ノズル
d)表面を含む基板及び温度モニターセンサーを備える開放チェンバー
【0010】
上述のシステムは、開放チェンバー内の分圧値を制御する分圧センサーフィードバックループを備えておらず、むしろ、使用中に温度モニターセンサーが温度の測定値を提供し、噴霧ノズルは、ガス流及び溶媒流の供給源に関連するガス及び溶媒マスフロー生成コントローラーが生成するガス流及び溶媒流から、ガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方を受け取り、少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源のそれぞれと、それに応答してガス中の少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、この混合物は、溶媒が一連の溶媒分圧のそれぞれについて、基板表面からデータを取得するために基板表面に過渡的に十分に浸透し、開放チェンバー内の基板表面を通過するように、開放チェンバー内の分圧値は、測定された温度を考慮して少なくとも一つの溶媒の溶媒流速を直接制御することによって完全に設定され、溶媒の分圧値は、測定された温度及び溶媒流速から決定される。
【0011】
使用中、温度モニターセンサーは温度の測定値を提供し、噴霧ノズルは、ガス流及び溶媒流の供給源に関連するマスフロー生成コントローラーが生成するガス流及び溶媒流から、ガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方を受け取り、少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源のそれぞれと、それに応答してガス中の少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、この混合物は、溶媒が一連の溶媒分圧のそれぞれについて、基板表面からデータを取得するために基板表面に過渡的に十分に浸透し、開放チェンバー内の基板表面を通過する。
【0012】
このシステムは、基板の表面に電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるように配向された偏光状態生成器と、基板の表面と相互作用した後に電磁放射線の偏光されたビームを検出するように配向された偏光状態検出器を備え、基板表面特性データを生成するエリプソメータシステムを更に備えることができる。
【0013】
このシステムは、開放された雰囲気中に存在することができ、開放チェンバー内の静圧は開放気流の静圧以上であってもなくてもよい。このシステムは、共通比で大気成分以外の共通周囲環境に存在することができ、開放チェンバー内の静圧は、共通周囲雰囲気の静圧よりも大きくないか、あるいはこの共通周囲雰囲気は、支配的な大気圧と実質的に等しい。このシステムは、薄膜が基板表面に存在する場合に利用することができる。この方法は、水であるか、または水以外の溶媒を使用する場合を含むことができる。後者の場合、出願人は、従来技術の密閉式セルシステム(closed cell systems)に適用可能な分圧センサーがないことを把握していることを強調しておく。
【0014】
基板表面の光学特性の変化を調査するための本願発明の方法は以下のA)〜C)に示すステップを含む。
A)
実効的多孔質性基板の光学特性の変化を調べるためのシステムを提供するステップ
この実効的多孔質性基板は、例えば、大気圧下での、
実効的な表面深さ及び屈折率、
細孔径;
細孔容積; そして
細孔径分布
に関連する表面を含み、
このシステムは、監視された温度で基板表面上に流される少なくとも一つの溶媒を含むガス流を、異なる既知の溶媒分圧のシーケンスにわたって生じさせることを可能にするシステムであって、
a)少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源と、溶媒のマスフロー生成コントローラー
b)ガス流の供給源及びガスのマスフロー生成コントローラー
c)少なくとも一つの溶媒流とガス流の両方を受け取り、溶媒分圧のシーケンスで基板上の気体中の少なくとも一つの溶媒の混合物を排出するための噴霧ノズル
d)表面を含む基板及び温度モニターセンサーを備える開放チェンバー
を含む。
【0015】
しかしながら、このシステムは、開放チェンバー内の分圧値を制御する分圧センサーフィードバックループを備えておらず、むしろ、使用中、温度モニターセンサーは温度の測定値を提供し、噴霧ノズルは、ガス流及び溶媒流の供給源に関連するマスフロー生成コントローラーが生成するガス流及び溶媒流からガス流及び少なくとも一つの溶媒の両方を受け取り、少なくとも一つの溶媒流の少なくとも一つの供給源のそれぞれと、それに応答してガス中の少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、この混合物は、溶媒が一連の溶媒分圧のそれぞれについて、基板表面からデータを取得するために基板表面に過渡的に十分に浸透し、開放チェンバー内の基板表面を通過するようにされる。
【0016】
開放チェンバー内の分圧値は、測定された温度を考慮して少なくとも一つの溶媒の溶媒流速を直接制御することによって完全に設定される。そして、溶媒の分圧値は、測定された温度及び溶媒流速から決定される。
【0017】
また、このシステムは、更に、
e)基板の表面に電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるように配向された偏光状態生成器と、基板の表面と相互作用した後に電磁放射線の偏光されたビームを検出するように配向された偏光状態検出器を備え、基板表面特性データを生成するエリプソメータシステムを備えている。
【0018】
使用に際して、噴霧ノズルは、ガス流の供給源及び少なくとも一つの溶媒の供給源からのガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方をそれぞれ受け取り、それに応答して、一連の溶媒分圧を達成するように、ガス中の少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、この混合物は、溶媒が、一連の溶媒分圧の各々に対して、基板表面からデータが取得できるように、基板表面に過渡的に十分に浸透するように開放チェンバー内の基板表面上を通過させ、そしてまた、エリプソメータの偏光状態生成器を使用して基板の表面に電磁放射線の偏光されたビームを導き、偏光状態検出器が基板の表面と相互作用した後に電磁放射線の偏光されたビームを偏光状態検出器で検出して基板表面特性データを生成する。
【0019】
この方法では、引き続き次に示すステップB)、C)が続けられる。
B)
噴霧ノズルに、ガス流の供給源及び少なくとも一つの溶媒の供給源からのガス流及び少なくとも一つの溶媒流の両方をそれぞれ受け取り、それに応答して、一連の溶媒分圧を達成するように、ガス中の少なくとも1種類の溶媒の混合物を排出し、エリプソメータの偏光状態生成器に基板の表面で電磁放射線の偏光されたビームを方向付けるようにさせることによって、基板表面からデータを取得するために基板表面に溶媒が過渡的に十分に浸透するように、この混合物を開放チェンバー内の基板表面上を通過させ、基板の表面と相互作用した後に電磁放射線の偏光されたビームの偏光状態を検出する偏光状態検出器とを備え、溶媒分圧のシーケンスの少なくともいくつかについての基板実効的表面特性データを生成するステップ
【0020】
C)
開放チェンバーの温度モニターセンサーによって提供される温度に対して、実効的基板表面特性データの少なくともいくつかを分析し表示する、あるいは分析又は表示するステップ
【0021】
上述の方法では、
生成された実効的基板表面特性データを分析することにより、
実効的基板表面の厚さ;
実効的基板表面の屈折率;
基板表面の細孔径;
基板表面の細孔容積;
基板表面の細孔径分布
の内から選択される少なくとも2つの基板表面関連パラメータが、既知の温度での少なくとも一つの溶媒の溶媒分圧の関数として評価される。
【0022】
溶媒の分圧は、測定された温度及び溶媒流速から決定される。水が溶媒である場合、公開された表(テーブル)は、溶媒の流速及び測定された温度を分圧に関連付けるために利用可能である。水が溶媒でない場合、本願発明の方法は更に適切な表(テーブル)を作成することを含む。上述の方法は、基板表面上に存在する薄膜を含むことができる。方法は、水であるか、または水以外の溶媒を使用することを含むことができる。また、ルックアップテーブル(Look-up table:ある特定の情報を検索するために表形式に編集されたデータ)を作成することを更に含み、このルックアップテーブルには、利用される溶媒について、溶媒流速と温度及び圧力との間の相関に関するデータが含まれ、特定の分圧を決定するためにテーブルを使用し、溶媒のマスフロー生成コントローラーが規定する溶媒流速と、測定された温度が与えられる。
【0023】
出願日の利益を主張し現在許可されている出願の米国における審査で、審査官により米国特許法第103条に関連して参照されたSimonらの出願2009/0019921は、「システムは、開放チェンバー内の分圧値を制御する分圧センサーフィードバックループを備えておらず、むしろ、開放チェンバー内の分圧値は、測定された温度を考慮して少なくとも一つの溶媒の溶媒流速を直接制御することによって完全に設定される...」との本願請求項に現れる文言によって、完全に退けられていることに注意されたい。
【0024】
この特許請求の範囲におけるこの文言は、Simonらの文献 921(出願2009/0019921)を完全に排除するが、これに関しては、米国特許法第103条に係る議論の余地がある米国における事件として審査官による議論が進められた。システムを機能させるためには、Simonらの文献 921では、圧力測定センサーが必要である。それゆえに、本願発明のシステムと方法に到達するための圧力測定センサーの除去について、Simonらの文献 921のどこにも示唆されていない。例えば、Simonらの文献921の段落0031の最後の2つの行は、「...チェンバー内の圧力を測定する圧力センサー8に接続されている」と述べている。これは、本願請求項に記載されているように、本願発明では圧力センサーも圧力感知も全く含まない発明とはかなり対照的である。
【0025】
本願発明は、図面と併せて本明細書の詳細な説明の項を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】従来技術のシステムの基本系を示す図である。
図1B】本願発明の基本系を示す図である。
図2】本願発明の方法によって測定した試料について、H2Oの分圧に対する屈折率の変化の関係を示す図である。
図3】本願発明の方法によって測定した試料について、H2Oの分圧に対する細孔径分布の関係を示す図である。
図4】より一般的なエリプソメータシステム(E)を示す図である。
図5】本願発明の方法の使用方法プロセスの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照するに、図1Aは先行技術システムを示している。本願発明のシステムのように、環境チェンバー(Environment Chamber)(5')があり(通常は周囲の雰囲気に開放されていない)、環境チェンバー(5')はその内部に基板(SUBS)を含む。環境チェンバー(5)'は、溶媒マスフローコントローラー(1)(すなわち、少なくとも一つの溶媒(L)の供給源)、ガス流量コントローラー(2)(すなわち、ガス(G)流の供給源)と、環境チェンバー(5')にアクセス可能なアトマイジングノズル(3)とを含む。
【0028】
図1Bは、基板(SUBS)をその内部に備えた本願発明のシステムの開放環境チェンバー(5)を示し、それと一緒に、溶媒マスフローコントローラー(1)(すなわち、少なくとも一つの溶媒流の供給源)、ガスマスフローコントローラー(2)(すなわち、ガス(G)流の供給源)、噴霧ノズル(3)、及び、基板(SUBS)を含む開放気圧チェンバー(Open Environment Chamber)(5)と、温度モニターセンサー(4)を示している。開放気圧環境チェンバー(Open Atmosphere Environment Chamber)(5)は、開放気圧環境チェンバー(5)内の分圧を制御するための湿度(蒸気)センサーフィードバックループを必要としない点で、既知のすべての従来技術を考慮すると独特であることが指摘される。しかし、温度モニターセンサー(4)が存在しているが、開放気圧環境チェンバー(Open Atmosphere Environmental Chamber)(5)の温度を監視制御していない。更に、噴霧ノズル(3)を使用して、任意の溶媒を蒸発させることができる(すなわち、溶媒として何を使用するかについての制限はないが、本願発明者らが現在使用している溶媒は水、トルエン及びメタノールである)。
【0029】
図1A及び1Bは、いずれもエリプソメータシステムを示しており、電磁放射線の偏光ビーム(6)は、基板(SUBS)の表面に向かって進行するように配向され、次いで開放気圧環境チェンバー(5)を出て、偏光状態検出器に向かって進行するように方向づけられている(図4(DET)参照)。
【0030】
図1Bに示すように、図1Aの従来技術と本願発明との間には大きな違いがあることに留意されたい。図1Aの従来技術のシステムは、フィードバックループ(FBL)の一部である分圧センサー(4')を含み、このセンサーは、環境チェンバー(5')内の測定された特性に基づく信号を溶媒マスフローコントローラー(1)に提供する。溶媒マスフローコントローラー(1)は、そのフィードバックループ(FBL)によって提供される信号を使用して、溶媒(L)が供給される速度を制御する。また、分圧センサー(4')によって分圧を監視し、フィードバック信号(FBL)を提供する既知のシステムは、水が液体である場合にのみ作用することにも留意されたい。
【0031】
図4は、より一般的には、電磁放射線源(LS)、偏光子(P)及び任意の補償器(C)を含む偏光状態生成器(PSG)を備えるエリプソメータシステム(E)を示しており、ステージ(STG)上のサンプル(S)の表面に電磁放射線の偏光されたビーム(PPCLS)が向けられ、 ステージ(STG)は、図1Bの開放気圧環境チェンバー(5)に存在し、基板(SUBS)を形成することができる。
【0032】
図1Bにおいて、用語「開放」は、噴霧ノズル(3)を出るガスと溶媒との混合物が、図示のように上方から開放気圧環境チェンバー(5)に自由に入り、基板(SUBS)に近づくことを示している。更に、電磁放射線の偏光されたビームを、基板(SUBS)の表面と相互作用(例えば、反射)させた後、基板表面特性データを生成する検出器(DET)に入るように配向された偏光状態検出器(PSD)が示されている。図5に概略を示したプロセスフローによるこのような特徴付けデータの分析は、屈折率及び細孔径などの、図2及び図3にそれぞれ示す様な結果に到達することを可能にする。
【0033】
図5は本願発明のフローチャートを示し、噴霧ノズル(3)によって制御された量の溶剤を気化させて、開放チェンバー(5)でのガス流に意図された溶剤分圧を提供することを特徴とする方法を示している。これは、基板表面(SUBS)に直接提示され、過渡的にそれを十分に浸透させ、特徴づけられた楕円偏光解析データを取得できるようにする。この方法(体系)では、一連の溶媒分圧について楕円偏光解析データの取得を行う必要がある。更に、本願発明の実施には、温度を測定し、溶媒流速を設定することが含まれることに留意されたい。結果として生じる分圧は、一般に、任意の溶媒に対して生成され得る温度及び溶媒流速の組み合わせアクセスパラメータを有するルックアップテーブルから決定される。本願発明を適用する方法の一部は、特定の溶媒が入手できない場合に、特定の溶媒についてのルックアップテーブルを作成することを含むことができる。
【0034】
「液体」及び「溶媒」という用語は、前述の先行技術及び本願発明に関して主に使用されていることに留意されたい。加えて、「分圧」という用語は、本願発明が制御対象として重点を置いているものとして使用される。しかしながら、技術的には、先行技術においてセンサーが適用される場合、それは圧力そのものである。それを直接測定し、その結果を「分圧」のモニターリングに用いる。
【0035】
以上、本願発明の主旨を開示したので、ここに教示したことを考慮すれば、本願発明に対する多くの修正変更、置き換え、変形形態の実現が可能であることは明らかである。したがって、本願発明は、ここで具体的に記載されたもの以外の態様で実施されてもよく、特許請求の範囲によってのみその技術的内容の広がり及び限界が限定されるべきであることを理解されたい。
【0036】
この出願は、2016年3月18日に出願された米国特許出願第14/999,015号に基づく優先権を主張するものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5