【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることではない。
【0033】
実施例1:ヒト大動脈弁の石灰化(CAVD)でのDPP−4の発現確認
ヒト大動脈弁膜の標本は、ソウルアサン病院で大動脈弁膜の置換術を受けた正常患者とひどい石灰化の病変形成の患者から得た。各サンプルの半分は、直ちにRNAlater(ライフテクノロジー)に貯蔵して、残り半分のOCT化合物(さくらFinetek社)に固定させた。ヒト由来のサンプルの収集に対する研究プロトコルは、ソウルアサン病院(ソウル、韓国)の臨床試驗審査委員会(IRB)の承認を受けて進行した。
【0034】
ヒトの心臓大動脈弁の石灰化(CAVD)での細胞進行に関与する遺伝子発現のプロファイルをマイクロアレイで確認した。
【0035】
遺伝子発現のプロファイルは石灰化が起きなかった正常患者と石灰化患者の大動脈弁膜のサンプルをAffymetrix GeneChip(R)Human Gene2.0STアレイ(Affymetrix,USA)を使用して遂行した。分位数正規化とデータの分析はAffymetrix GCOSソフトウェア(Affymetrix社)を使用して遂行した。
【0036】
その結果、
図1に示したことのように、石化化、繊維化及び炎症と関連された遺伝子が正常人に比べて、CAVD患者の大動脈弁膜で上流調節されることが確認された。
【0037】
また、リアルタイムPCR(qRT−PCR)を随行して、CAVD患者でのDPP−4の発現を再確認した。qRT−PCR方法は、まず、各サンプルの総RNAをRNeasy Lipid Tissue kit(Qiagen,USA)を使用して分離して、cDNA合成キット(Thermo scientifir,EU)を使用してcDNAを合成した後、光学96ウェルプレートでPower SYBRグリーン1stepキットとABI 7000リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を利用して、qRT−PCR分析を遂行して、内部対照群としてGAPDHを使用した。
【0038】
その結果、
図2aに示したことのように、DPP−4がCAVD患者で高いレベルで発現されることをリアルタイムPCRで確認した。
【0039】
マイクロアレイ分析を通じて、DPP−4の活性が炎症性ケモカインを活性化させて、DPP−4によって調節されるダウンストリーム遺伝子とケモカイン遺伝子が大動脈弁膜の石灰化組織で上流調節されることを確認して(
図2b)、上記遺伝子の上流調節はリアルタイムPCRを利用したmRNA発現を分析して再確認した(
図2c)。
【0040】
ヒト大動脈弁膜のサンプルを4%ホルマリン溶液に24時間の間固定した後パラフィンで包埋して4μm厚さの切片を作製した。パラフィン包埋した大動脈弁及び心臓基底部の切片でカルシウムの沈着を確認するため、Von Kossa染色(VK)、Alizalin red染色(AR)をした。Von Kossa染色はホルマリンに固定された大動脈弁を蒸留水で洗った後、室温で5%水溶性AgNO
3と強い光に60分間露出させた。以後、2.5%チオ硫酸ナトリウムに5分間処理して黒褐色が現われれば、陽性反応で判読した。Alizarin red染色はホルマリンに固定された大動脈弁を蒸留水で洗った後、2% Alizarin red S(aqueous,Sigma)に5分間処理して赤色またはオレンジ色が現われれば陽性反応で判読した。
【0041】
石灰化された大動脈弁膜の組織を免疫蛍光染色した結果、
図3に示したことのように、DPP−4は、Von Kossa(VK)とAlizalin red(AR)によって染色される石灰化の進行された部分で高く発現され、正常人の大動脈弁膜の組織では発現が確認されなかった。
【0042】
実施例2:eNOSノックアウトマウスモデルでのDPP−4の発現確認
C57BL/6J起源のeNOS−/−(Endothelial nitric oxide synthase knock−out)マウス(8週齢,n=10,The Jackson Laboratory,Bar Harbor,Me,USA)と同種の野生対照群のマウス(8週齢、wild type、WT、n=10)を利用した。搬入後3ヵ月齢までには標準のげっ歯類の飼料を与えた。
【0043】
マウスは深く麻酔させた状態で4%パラホルムアルデヒドを含有するPBSを投与して、心臓と大動脈を摘出して、一晩固定させた後、パラフィン包埋して、全体の大動脈弁膜の部位に対して、5μm厚さの切片を修得した。マウスを安楽死させて血液と大動脈のサンプルは分析のために保管した。
【0044】
パラフィン包埋した大動脈弁及び心臓基底部の切片では、カルシウムの沈着を確認するため、von Kossa染色、Alizarin redの染色を行った。
【0045】
その結果、
図4に示したことのように、大動脈弁のvon Kossa染色で、対照群とは違って、eNOS KOマウスの大動脈弁に無機質の沈着を意味する黒褐色で染色された部分が観察されて、Alizarin red染色でもカルシウムの沈着を意味する赤く染色された部分が観察された。また、AR染色とVK染色で、石灰化が確認された部分で高いDPP−4の発現が確認される細胞が観察された。
【0046】
実施例3:マウスの血管平滑筋細胞(Vascular smooth muscle cells,VSMC)での石灰化の確認
実施例2でeNOS−/−マウスと野生型マウスで、心臓とともに摘出した大動脈を無血清(serum−free)M199(Cellgro)につけて洗った後、小片に切った後、M199に20%ウシ胎児血清(fetal calf serum)、3mg/mlコラゲナーゼ(Sigma)を添加し、37℃の水槽で3時間湯煎した。分離された細胞は抗SM単クローン抗体(Sigma)を使用して血管平滑筋細胞であることを確認した。分離された血管平滑筋細胞を30%濃度で分注して24時間後、骨形成培地(Osteogenic Basal Medium,Osteogenic SingleQuots,Lonza,USA)で交替した。培地は3日ごとに交替して28日間、培養した。
【0047】
野生型及びeNOS KOマウスに対して、石灰化の初期段階の染色法であるALP染色、中期段階の染色法であるAlizarin red(AR)染色法、後期段階の染色法であるVon Kossa(VK)染色を利用してCD26が脈管性平滑筋細胞の骨化促進を誘発するかを確認した。
【0048】
その結果、
図5に示したことのように、対照群のマウスに比べてeNOS knock−out形質転換のマウスで、脈管性平滑筋細胞(Vascular smooth muscle cell,VSMC)の骨細胞化(Osteogenic differentiation)が促進されたことを観察することができた。
【0049】
血管平滑筋細胞の培養液の遊離CD26/DPP−4の濃度を商用のELISAキット(Sigma)を使用して製造社の指針によって測定して、その結果、
図6aに示したことのように、eNOS−/−マウス由来のVSMC培養液で増加されたDPP−4の濃度を確認することができた。
【0050】
大動脈弁膜組織のDPP−4のmRNAの発現レベルをリアルタイムPCRを利用して測定し、その結果、
図6bに示したことのように、野生型に比べてeNOS−/−マウスの大動脈弁膜組織でDPP−4のmRNAが増加することを確認した。
【0051】
また、eNOS−/−マウスと野生型マウスの血漿内のDPP−4タンパク質のレベルはELISAを利用して測定し、その結果、
図6cに示したことのように、eNOS−/−マウス血漿で野生型に比べてDPP−4タンパク質のレベルが増加することを確認した。
【0052】
実施例4:血管平滑筋細胞(VSMC)でNOによるDPP−4の発現調節確認
NO生合成の抑制剤であるL−NAME(Nω−Nitro−L−arginine methyl ester)を処理すると、大動脈でDPP−4の発現が顕著に増加することで示され、NOの欠乏がDPP−4の発現を引き起こすことで知られている。
【0053】
本実施例では実施例3の方法で獲得した血管平滑筋細胞にNO供与体であるDETA−NONOate(DETA−NO)を処理すると、VSMCでDPP−4mRNAの発現が減少されるだけではなく(
図7a)、DPP−4タンパク質の発現も減少することで確認された(
図7b)。
【0054】
DPP−4発現の減少でNOの調節の役割に対するより直接的な証拠を得るために、DPP−4のプロモーター活性がNOによって調節されるかを確認した。
【0055】
その結果、DPP−4のプロモーター活性は野生型マウス由来のVSMCでよりeNOS−/−マウス由来のVSMCでさらに高く、これはDETA−NO処理により濃度依存的に抑制されることで示された(
図7c)。
【0056】
VSMCでのNF−κBの活性はNOによって抑制される。eNOS−/−マウス由来のVSMCで野生型マウス由来のVSMCより高いNF−κBの活性を示して、これはDETA−NOの処理により減少された(
図7d)。DPP−4のプロモーターにNF−κBの推定上の結合部位が存在するために、NF−κBの活性が直接的にDPP−4プロモーターの活性を調節することができるかを確認した
【0057】
まず、VSMCを6ウェルプレートで80%の培養密度になるまでに培養した後、Lipofectamine2000(Life Technology)を利用して、NF−κBの結合部位の変異を含めたり、正常の結合部位を有するDPP−4のリポーター部分をルシフェラーゼpGL3−basicベクター(promega)にクローニングした後、形質導入させた。24時間後、蛍及びRenillaルシフェラーゼの活性をDual−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(promega)を使用して測定した。蛍ルシフェラーゼの活性はRenillaルシフェラーゼの活性で標準化した。
【0058】
上記NF−κB結合部位のSDM(site directed mutagenesis)のために、下記プライマーを使用してPCRを遂行した。
[配列番号1]5’−CAGCCAGATAACATGCCACACCCAACCCCTTC−3’
[配列番号2]5’−GAAGGGGTTGGGTGTGGCATGTTATCTGGCTG−3’
【0059】
その結果、
図8に示したことのように、DPP−4プロモーターのNF−κBの結合部位を変異させると、DPP−4プロモーターの活性が顕著に抑制されて、NF−κBの抑制剤を処理すると、DPP−4の生産が完全に抑制された(
図7e)。このような結果は、血管平滑筋細胞でNF−κBの活性化を通じたDPP−4の誘導がNOの欠乏によって起こり、NOの供給を調節してVSMCの造骨細胞の転移分化を調節することができるということを提案している。
【0060】
実施例5:大動脈弁膜の石灰化でDPP−4の抑制剤であるシタグリプチンの効果確認
大動脈弁膜の石灰化の過程でDPP−4が顕著に増加されることは弁膜の石灰化でDPP−4が潜在的な役割をしたということを意味する。これを証明するため、eNOS−/−マウスの大動脈石灰化に選択的のDPP−4の抑制剤であるシタグリプチン(sitagliptin)を処理し、その効果を確認した。
【0061】
C57BL/6J起源のeNOS−/−(Endothelial nitric oxide synthase knock−out)マウス(8週齢,n=10,The Jackson Laboratory,Bar Harbor,Me,USA)と同種野生の対照群のマウス(8週齢,wild type,WT,n=10)を利用した。搬入後3ヵ月齢までには標準のげっ歯類飼料を与えて、食塩水、またはシタグリプチン(sitagliptin,15mg/kg/day,Merck&Co.,Inc)を12週間投与した。
【0062】
eNOS−/−マウスで骨形成の活性を検出するために、尾静脈注射を通じて、ビスフォスフォネート−コンジュゲート映像化剤(Osteosense680,VisEn Medical Inc.)を注射した。Osteosense680は生体内で石灰化の部位、特にヒドロキシルアパタイトに結合して、造骨細胞の活動の検出のための映像化剤の役割をする。マウスを安楽死させた後、体全体または分離された大動脈をOptixMX3(ART Advanced Research Technologies,Inc)を使用してイメージングした。
【0063】
その結果、eNOS−/−マウスで大動脈の周囲に石灰化が大きく進行されることを確認して(
図9)、シタグリプチンを経口投与した場合、マウスの生体内で大動脈部位の石灰化が減少されることを確認した(
図9a,b)。また、eNOS−/−マウスの大動脈弁膜の部位をVK染色したセクションでもDPP−4の活性を抑制する場合、大動脈の石灰化の過程を抑制することができるということを確認した(
図10a,b)。
【0064】
実施例6:ヒト大動脈弁膜細胞(VIC)でのシタグリプチン処理効果の確認
ヒト大動脈弁膜のVIC(Valve interstitial cell)は繊維芽細胞、筋芽細胞及び平滑筋細胞の異種細胞の集合であり、VSMCと類似した特徴を有して、造骨細胞の転移分化をすることができる。
【0065】
ヒトVICを利用して造骨細胞の転移分化でDPP−4の役割を確認した。
【0066】
ヒトVICは大動脈弁の前端で通常的な細胞の分離方法で分離して、2〜10継代したものを使用した。DPP−4(R&D)またはシタグリプチン、DETA−NONOate(エンゾ生命科学)と一緒に培養した。
【0067】
その結果、
図11に示したことのように、DPP−4の処理はVICの骨形成能力を増加させて、このような現象はシタグリプチンの処理によりなくなった。
【0068】
疾病活性でDPP−4の関係を確認するために、CAVD患者の血漿でDPP−4の濃度を分析したが、リウマチ性大動脈弁膜疾患を有した患者とDPP−4の阻害剤を投与した患者は分析から除外した。
【0069】
その結果、CAVD患者のDPP−4のレベルが正常人より高かった(
図12,表1)。
【0070】
【表1】
【0071】
石灰化が示されたCAVD患者は石灰化のない患者と比較して、DPP−4のレベルが34%増加しており(
図13a)、活性化されたタンパク質の分解能を有するDPP−4も増加した(
図13b)。これはDPP−4の循環レベルがヒトCAVD患者の重症度と関連があることを意味する(表2)。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例7:様々な種類のDPP−4の抑制剤の投与によるVSMCでの造骨細胞の転移分化の抑制効果の確認
シタグリプチン以外のDPP−4の抑制剤による弁膜石灰化の抑制効果を確認するために、様々な種類のDPP−4の抑制剤の処理によるeNOS−/−マウス由来のVSMC(Vascular Smooth Muscle Cell,VSMC)の骨細胞化(Osteogenic differentiation)の抑制効果を確認した。
【0074】
アログリプチン(alogliptin)、エボグリプチン(evogliptin)、リナグリプチン(linagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、ビルダグリプチン(vildagliptin)をそれぞれ48ウェルプレートで培養されたeNOS−/−マウス由来のVSMCに10Mの濃度で7日間処理して、ALPの活性を測定した。その結果、DPP−4の抑制剤を処理していなかった陰性対照群に比べて50%以下のALPの活性抑制を確認して、これはシタグリプチン以外のDPP−4の抑制剤も大動脈血管弁膜の石灰化の抑制効果を示すことを意味する。
【0075】
以上で本発明内容の特定した部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有した者において、このような具体的な技術はただ好ましい実施態様であるに過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることではないことは自明である。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項と等価物によって定義されると言える。