特許第6467599号(P6467599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467599
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20190204BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20190204BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G09F9/30 308Z
   G09F9/30 349E
   G02F1/1333 500
   G02F1/1333
   H04N5/64 501Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-169919(P2015-169919)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-49274(P2017-49274A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】西山 榮
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031948(JP,A)
【文献】 特開2006−023676(JP,A)
【文献】 特開2013−257564(JP,A)
【文献】 特開2005−331872(JP,A)
【文献】 特開2002−006797(JP,A)
【文献】 特開2015−152816(JP,A)
【文献】 特開2013−174738(JP,A)
【文献】 特開2013−045105(JP,A)
【文献】 特開2012−256019(JP,A)
【文献】 特開2009−222844(JP,A)
【文献】 特開2010−099122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0043976(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0109286(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/190190(WO,A1)
【文献】 特開2015−210522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133− 1/1334、
1/1339− 1/1341、 1/1347、
G09F 9/00 − 9/46 、
H04N 5/64 − 5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型化されたガラス基板を含む可撓性を備えたフレキシブルディスプレイと、
前記フレキシブルディスプレイを支持するように構成された可撓性を備えたフレキシブルシャーシと、
前記フレキシブルディスプレイまたは前記フレキシブルシャーシの少なくともいずれか一方に取り付けられた変形自在なフレキシブル部材であって、前記フレキシブルディスプレイおよび前記フレキシブルシャーシに対して変形に必要な力を加えるように構成されたフレキシブル部材と、
前記フレキシブル部材を所望の形状に変形させるように構成された変形制御手段と、
前記フレキシブルディスプレイの表示画面の形状に係る視聴者からの操作を受け付けるとともに、受け付けた操作内容を前記変形制御手段に伝達するように構成された操作手段と、
を備え、
前記フレキシブルディスプレイが予め湾曲するように形成されており、
前記フレキシブルディスプレイが、熱収縮性の第1の偏光フィルムが貼り付けられた第1のガラス基板、および熱収縮性の第2の偏光フィルムが貼り付けられた第2のガラス基板を少なくとも含むLCDユニットであり、
前記第1の偏光フィルムおよび前記第2の偏光フィルムの熱収縮力の差によってLCDユニットが、前記変形制御手段からの力が加わらない状態で予め湾曲することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記フレキシブル部材は、前記フレキシブルディスプレイの表示画面よりも大きい開口部が形成された額縁状のフレーム部材であって、電気駆動型のアクチュエータ群が取り付けられたフレーム部材であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記フレキシブルディスプレイに用いられるガラス基板の厚みがエッチングによって0.2mm以下に薄型化されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビ等の薄板状の表示画面を有するディスプレイ装置に関し、特に、表示画面を任意に湾曲変形させることが可能なディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ等の薄板状の表示画面を有するディスプレイ装置は、従来、一般的にはフラットな平面状の表示画面を有していた。
【0003】
ところが、ディスプレイ装置の大型化が近年加速するのに伴って、表示画面が湾曲しているディスプレイ装置が次第に登場するようになってきた。例えば、従来技術の中には、表示体の左右に配置されたスピーカボックスをネジ操作によって接近させることにより、左右のスピーカボックスに挟まれる表示画面を湾曲変形させることを可能にしたディスプレイ装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、他の従来技術では、可撓性の板部材の面に一方向に延在する枠部材を設け、これとは反対側の面に可撓性の表示画面を配置するように構成したディスプレイ装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この従来技術においては、枠部材の板部材に対向する辺または面の形状を調整することにより、板部材およびこれに取り付けられた表示画面を所望の形状にすることが可能になる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4885430号
【特許文献2】特開2013−257385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、湾曲変形させるための操作が面倒であるという不都合があった。このため、多くの場合は一度設定した湾曲状態を固定してディスプレイ装置を継続使用することを余儀なくされていることが予想される。
【0007】
近年、65インチを超えるような大型のディスプレイ装置が使用される機会が増えているところ、湾曲状態を固定して使用することには色々な不都合が考えられる。例えば、ディスプレイ装置の表示画面の視聴者が複数存在する場合には、特定の視聴者のみ表示画面の視認性が低下する可能性がある。また、ディスプレイ装置の表示画面からの距離によっては、湾曲した表示画面よりもフラットな表示画面の方が、視認性が高まることも考えられる。
【0008】
このように、ディスプレイ装置の使用形態や配置環境等を考慮すれば、視聴者が任意にディスプレイ装置の表示画面をフラット状態にしたり湾曲状態にしたり、また、湾曲度合を調整したりできるようにすることが好ましいと言える。
【0009】
この発明の目的は、視聴者が簡易な操作によって、任意に表示画面をフラット状態にしたり、所望の湾曲度合の湾曲状態にしたりすることが可能なディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るディスプレイ装置は、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルシャーシ、フレキシブル部材、変形制御手段、および操作手段を少なくとも備える。フレキシブルディスプレイは、薄型化されたガラス基板を有しており、それ自体が全体として可撓性を備えている。フレキシブルディスプレイの例としては、可撓性を備えた液晶表示パネル(LCDユニット)や有機EL表示パネル等が挙げられる。
【0011】
フレキシブルシャーシは、フレキシブルディスプレイを支持するように構成されており、それ自体が全体として可撓性を備えている。フレキシブルシャーシの例としては、複数のパーツの端部を互いにヒンジを介して連結して構成されるシャーシや、可撓性を有する材質で構成されたシャーシ等が挙げられる。
【0012】
フレキシブル部材は、フレキシブルディスプレイまたはフレキシブルシャーシの少なくともいずれか一方に取り付けられており、変形自在に構成されている。このフレキシブル部材は、自らが変形することによってフレキシブルディスプレイおよびフレキシブルシャーシに対して変形に必要な力を加えるように構成されている。フレキシブル部材は、電気または熱等によって任意に形状を変化させることが可能な薄板状または薄型額縁状を呈していることが好ましい。
【0013】
変形制御手段は、フレキシブル部材を所望の形状に変形させるように構成されている。変形制御手段の構成例としては、フレキシブル部材を変形させる変形駆動部(ドライバ)およびこれを制御する制御部の組み合わせが挙げられる。
【0014】
操作手段は、フレキシブルディスプレイの表示画面の形状に係る視聴者からの操作を受け付けるとともに、受け付けた操作内容を変形制御手段に伝達するように構成されている。操作手段の例としては、ディスプレイ装置を遠隔操作するためのリモコンやディスプレイ装置に配置された操作ボタン等が挙げられる。
【0015】
上述のディスプレイ装置の構成においては、操作手段による視聴者の入力操作に応じて、変形制御手段がフレキシブル部材を変形させ、この結果として、フレキシブルディスプレイおよびフレキシブルシャーシが変形する。つまり、リモコン等の操作手段を用いて、視聴者が簡易にディスプレイ装置の表示画面を所望の湾曲形状にしたり、フラット形状にしたりすることが可能となる。
【0016】
上述のディスプレイ装置において、フレキシブルディスプレイが予め湾曲するように形成されていることが好ましい。このような構成を採用することにより、フラットなフレキシブルディスプレイを湾曲させる場合に比較して、湾曲時におけるフレキシブルディスプレイの破損リスクが著しく低減する。
【0017】
また、上述のフレキシブル部材が、フレキシブルディスプレイの表示画面よりも大きい開口部が形成された額縁状のフレーム部材であって、電気駆動型のアクチュエータ群が取り付けられたフレーム部材であることが好ましい。このような構成を採用することにより、フレキシブル部材が表示画面に与える影響が最小化され、かつ、フレキシブル部材の配置位置の自由度が向上する。
【0018】
さらに、上述のディスプレイ装置において、フレキシブルディスプレイに用いられるガラス基板の厚みがエッチングによって0.2mm以下に薄型化されていることが好ましい。ガラス基板は薄くなるほど曲がり易くなり、より小さな曲率半径であっても破損しなくなるため、このような構成を採用することにより、フレキシブルディスプレイの変形が円滑に行われるようになる。また、エッチングによってガラス基板に存在し得るキズ等が微小化または消滅するため、フレキシブルディスプレイの変形時のガラス基板の破損リスクを著しく低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、視聴者が簡易な操作によって、任意に表示画面をフラット状態にしたり、所望の湾曲度合の湾曲状態にしたりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る液晶テレビの外観を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液晶テレビの概略構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る液晶テレビの概略構成を示すブロック図である。
図4】アクチュエータユニットの変形例を示す図である。
図5】液晶テレビの変形例を示す図である。
図6】LCDユニットの概略構成を示す図である。
図7】LCDモジュールの構成の一例を示す図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る液晶テレビの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を用いて本発明の一実施形態に係る液晶テレビ10について説明する。ここでは、液晶テレビ10のサイズは65インチまたはそれ以上を想定しているが、65インチ以下のサイズのテレビにおいても本発明を適用可能である。図1(A)および図1(B)に示すように、液晶テレビ10は、ベース部材14、ベース部材14に支持されたフレキシブルシャーシ16、およびフレキシブルシャーシ16に装着されたLCDユニット18を備えている。ベース部材14は、図2に示すように、フレキシブルシャーシ16にユニバーサルジョイント(自在継手)を介してフレキシブルシャーシ16に接続されている。
【0022】
フレキシブルシャーシ16およびLCDユニット18はそれぞれ、液晶テレビ10の長手方向および短手方向の双方において湾曲自在に構成されている。フレキシブルシャーシ16にLCDユニット18を装着する際には、これらの間に薄型枠状のアクチュエータユニット34が介在するように配置される。アクチュエータユニット34は電気駆動式のアクチュエータを内蔵しており、印可する電圧を制御することにより所望の形状に変化させることが可能になるように構成されている。
【0023】
液晶テレビ10は、リモコン12によって操作可能になっている。リモコン12は、通常は、液晶テレビ10の電源のオン/オフ切り替え、チャンネル選択、音量や輝度の調整、入力切り替え等の操作を行うために用いられる。さらに、この実施形態に係る液晶テレビ10では、リモコン12の操作によって液晶テレビを図1(A)に示すフラットモード、および図1(B)に示すカーブモードのいずれかにモード切り替えすることが可能になっている。視聴者は、リモコン12を操作することにより、例えば、図1(B)に示すように、リモコン12からの操作によって液晶テレビ10を所望の湾曲度合で湾曲させることが可能になっている。
【0024】
図3は、液晶テレビ10の概略を示すブロック図である。同図に示すように、液晶テレビ10は、入力部20、操作部22、表示制御部24、制御部26、センサユニット28、インターフェース部30、および変形駆動部32を備えている。入力部20は、リモコン12または操作部22からの操作信号を受信し制御部26に伝達するように構成される。操作部22は、液晶テレビ10側に設けられた操作ボタン等を有しており、リモコン12を介さずに液晶テレビ10を操作する場合に用いられる。
【0025】
表示制御部24は、LCDユニット18に電気的に接続されており、LCDユニット18の画面表示動作を制御するように構成される。制御部26は、液晶テレビ10の動作を統括的に制御するように構成されている。制御部26は、内蔵するROMに書き込まれたプログラムやRAMのデータをCPUが適宜読み込んで各部の動作を制御する。
【0026】
センサユニット28は、液晶テレビ10の状態や周囲の環境を検出するように構成されている。インターフェース部30は、アンテナ、DVDレコーダ等の外部機器、およびインターネット等との接続に用いられる。変形駆動部32は、制御部26からの制御信号に基づいてアクチュエータユニット34に対して駆動用電圧を印可するように構成されている。
【0027】
図4(A)および図4(B)は、アクチュエータユニット34の変形のバリエーションの一部を示している。図4(A)は、アクチュエータユニット34が長手方向において湾曲している状態を示しており、図4(B)は、アクチュエータユニット34が短手方向において湾曲している状態を示している。アクチュエータユニット34は、例えば、ロボットアーム機構に用いられる電気駆動型のアクチュエータ群を湾曲自在なフレーム部材内に埋め込むように構成されている。このため、アクチュエータユニット34は、変形駆動部32からの駆動電圧を受けて、所望の形状に変形することが可能になっている。ここでは、LCDユニット18の表示画面よりも大きい開口部が形成された額縁状のフレーム部材を用いているが、アクチュエータユニット34の構成はこれには限定されず、薄板状や格子状であっても良い。
【0028】
アクチュエータユニット34は、上述したように、フレキシブルシャーシ16およびLCDユニット18の間に介在するように配置されているため、アクチュエータユニット34が変形することによりフレキシブルシャーシ16およびLCDユニット18がこれに追従するように変形することになる。図5(A)は、アクチュエータユニット34が長手方向において湾曲することにより、液晶テレビ10が長手方向に湾曲している状態を示している。また、図5(B)は、アクチュエータユニット34が短手方向において湾曲することにより、液晶テレビ10が短手方向に湾曲している状態を示している。リモコン12からの操作信号は入力部20を介して制御部26に伝達され、これを受けて制御部26が変形駆動部32を制御することにより、液晶テレビ10が所望の形状に湾曲する。
【0029】
図5(A)および図5(B)では、長手方向または短手方向のいずれか一方向においてのみ湾曲させる例を示しているが、適宜アクチュエータユニット34を変形させることによって、長手方向および短手方向のそれぞれにおいて湾曲させることも可能である。この実施形態では、通常は、長手方向においてわずかに湾曲したカーブモードにデフォルト設定されている。例えば、多人数で鑑賞する場合や遠くから鑑賞する場合にはリモコン12を操作してフラットモードに移行することができる。また、カーブモードにおいてさらに湾曲度合を大きくしたい場合には、リモコン12を操作して湾曲度合を調整することができる。
【0030】
液晶テレビ10において、フラットモードおよびカーブモードのモード切り替えや湾曲度合の調整は、リモコン12または操作部22を用いて行うことができるため、視聴者が所望する状態でテレビ鑑賞を楽しむことが可能になっている。この結果、液晶テレビ10の宿命的な狭視野角度の問題を解決することも可能になっている。
【0031】
さらに、液晶テレビ10では、フラットモードおよびカーブモードのモード切り替えにおけるLCDユニット18の破損を防止するための創意工夫が施されている。図6(A)および図6(B)に示すように、LCDユニット18は、第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186が貼り付けられたLCDモジュール184、およびこれらに取り付けられた湾曲自在な薄型のバックライトユニット(導光板を含む。)188を備える。そして、図6(A)に示すように、LCDユニット18をカーブモードの湾曲方向と同じ方向に予め少しだけ湾曲させている。図6(B)に示すように、予め湾曲させたLCDユニット18にアクチュエータユニット34を取り付けることにより、LCDユニット18をフラットな状態にしている。この結果、もともとフラットなLCDユニット18をアクチュエータユニット34からの力によって湾曲させる場合に比較して、LCDユニット18に局所的な応力が発生しにくくなり、また、比較的大きく湾曲させてもLCDユニット18に曲げ破壊が生じにくくなる。
【0032】
続いて、LCDユニット18を予め湾曲させるための手法について説明する。図7は、LCDモジュール184の概略構成を示している。LCDモジュール184は、第1のガラス基板181、第2のガラス基板183、液晶層185を備えており、第1のガラス基板181と第2のガラス基板183との間に液晶層185が保持されている。第1のガラス基板181は、ブラックマトリクス層やRGBのカラーフィルター層が形成されたカラーフィルター基板である。ブラックマトリクス層およびカラーフィルター層は、公知の技術を用いて第1のガラス基板181の一方の主表面に形成される。第2のガラス基板183は、液晶層185の液晶を電気的に制御するための透明電極層が形成されたTFT基板である。透明電極層は、公知の技術を用いて第2のガラス基板183の一方の主表面に形成される。LCDモジュール184に必要な層が形成された第1のガラス基板181および第2のガラス基板183は、貼り合わせられた後にシール材で周面を封止されてから、液晶が注入されることで液晶層185が形成される。
【0033】
液晶層185が注入された後で、第1のガラス基板181および第2のガラス基板183をエッチングすることによってLCDモジュール184の薄型化処理を行う。各種機能層をガラス基板に形成する段階では、高温での処理や、ある程度の厚みがないとガラス基板が割れてしまうおそれがある工程があるため、0.5mm程度の厚みが必要であるが、LCDモジュール184を湾曲させるためにはLCDモジュール184の総厚を減少させることが好ましい。ガラス基板を薄型化するためには、フッ酸を含むエッチング液を用いてエッチングすることが好ましい。
【0034】
フッ酸を含むエッチング液をガラス基板に接触させることで所望の厚さまでLCDモジュール184をエッチングする。LCDモジュール184を湾曲させるためには、第1のガラス基板181および第2のガラス基板183を0.3mm以下の厚さまでエッチングすることが好ましく、0.2mm以下の厚さまでエッチングすることがさらに好ましいことが出願人の研究・開発により判明している。また、上述のように、フッ酸を用いてエッチングすることにより、第1のガラス基板181および第2のガラス基板183の主表面上に存在する微小な傷を減少または消滅させることができる。この結果、ガラス基板の曲げ強度が向上させることができるため、LCDモジュール184を湾曲させた際に割れにくくなる。なお、出願人がガラス基板を0.2mmまで薄型化した場合には、曲率半径が50mm程度になるまでガラス基板を湾曲させることも可能であった。さらに、0.15mmまで薄型化した場合には、曲率半径が30mm程度になるまでガラス基板を湾曲させることが可能であり、0.1mmまで薄型化するとガラス基板を曲率半径が10mm程度になるまでガラス基板を湾曲させることが可能であった。
【0035】
また、通常の製造工程では、作業性の観点からエッチングまでの製造工程は、複数の液晶パネル基板が面取りされた大型のシート基板で処理される。エッチングされた大型のシート基板をスクライブ等の分断装置を用いて複数のLCDモジュール184に分断された後に偏光フィルムが貼り付けられたり、バックライトや電源コネクタ等が取り付けられたりする。LCDモジュール184は、スクライブによって分断された後のパネル基板である。
【0036】
第1のガラス基板181の主表面上に第1の偏光フィルム182が貼り付けられており、第2のガラス基板183の主表面上に第2の偏光フィルム186が貼り付けられている。第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186は、少なくとも熱収縮性の透明フィルム部材を有する。通常、偏光フィルムはポリビニルアルコールにヨウ素を添加した偏光層と、ポリビニルアルコールを保護する透明フィルムである保護層と、基板に貼り付けるための粘着層等の複数層が積層状態で構成されている。つまり、この積層構造の中に熱収縮性の透明フィルム部材を含んでいる偏光フィルムであれば、どのような偏光フィルムでも構わない。熱収縮性を有する透明フィルムとしては、ガラス基板を湾曲させたい方向に延伸させた延伸フィルムを用いることができる。例えば、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルムを延伸させたものを使用することができる。
【0037】
第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186は、公知の貼り付け装置によって第1のガラス基板181および第2のガラス基板183に貼り付けられる。第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186の厚みは、150〜400μmの範囲であることが好ましい。第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186に150μm以上の厚みがなければ、加熱時の熱収縮力が十分ではないため、LCDモジュール184を湾曲させることができない。一方で、400μm以上の厚みがあると、LCDモジュール184自体が厚くなりすぎるため、湾曲させにくくなる等の問題がある。
【0038】
第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186が貼り付けられたLCDモジュール184は、第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186を加熱することで湾曲させる。第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186を加熱する手段として、オートクレーブを用いることが好ましい。オートクレーブは、高温・高圧の槽内に液晶表示パネル用基板を投入することで、第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186の貼り付け時に発生したガラス基板と偏光フィルムの間の気泡を除去するための装置であり、平面状の液晶表示パネル用基板を製造する際にも必要な工程である。
【0039】
図6(A)に示すように第2のガラス基板183側が凸になるように湾曲させるために、ここでは、第1の偏光フィルム182が第2の偏光フィルム186より有意的な量だけ厚くなるように構成している。この構成において、第1の偏光フィルム182の熱収縮力が第2の偏光フィルム186の体積差の分だけ第2の偏光フィルム186よりも大きくなるため、LCDモジュール184を第2のガラス基板183が凸になるように湾曲させることが可能になる。第1の偏光フィルム182と第2の偏光フィルム186の厚みの差は、80μm以上あることが好ましい。この構成により、同一温度で加熱したとしても、第1の偏光フィルム182の熱収縮力が第2の偏光フィルム186よりも大きくなるので、加熱温度を調整する必要がなくなる。
【0040】
なお、第1の偏光フィルム182の厚みと第2の偏光フィルム186の厚みを同一にする場合であっても、オートクレーブの槽内にLCDモジュール184を投入する際に、第1の偏光フィルム182の加熱温度が第2の偏光フィルム186の加熱温度よりも高くなるようにすることによって図6(A)に示す形状のLCDユニット18を得ることが可能となる。いずれの構成においても、第1の偏光フィルム182から第1のガラス基板181に加えられる熱収縮力が、第2の偏光フィルム186から第2のガラス基板183に加えられる熱収縮力よりも大きい場合には、第1のガラス基板181が貼り合わせられている第2のガラス基板183ごと第1の偏光フィルム182によって引っ張られ、LCDモジュール184全体が湾曲する原理を利用している。
【0041】
第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186の加熱温度はオートクレーブ内で調整可能である。オートクレーブの加熱槽内に複数の加熱ヒーターを設置しておけば、それらの加熱温度を調整することにより、所望の温度で偏光フィルムを加熱することが可能である。また、オートクレーブ内の加熱温度は、60℃以上100℃以下に調整することが好ましい。100℃以上で加熱すると第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186の特性が維持できなくなる。また、60℃以下で加熱すると、第1の偏光フィルム182および第2の偏光フィルム186の熱収縮力が小さくなるため、LCDモジュール184を湾曲させるのが難しくなる。
【0042】
液晶表示パネル用基板の製造ではオートクレーブでの加熱は必須の工程であるため、オートクレーブでの加熱工程を利用することで、ガラス基板を湾曲させるために従来に工程を変更したり、新たな工程を追加したり、新たな装置を導入したりする必要がなくなる。
【0043】
液晶テレビ10が、上述した構成を備えることにより、フラットなLCDユニットを外力のみによって湾曲させる場合に比較して、LCDユニットの曲げ破壊のリスクが低くなっている。この結果、液晶テレビ10のフラットモードおよびカーブモードのモード切り替えや湾曲度合の調整時におけるLCDユニット18の破損を確実に防止することが可能である。
【0044】
図8は、本発明の他の実施形態の概略を示すブロック図である。ここでは、温度調整部36を追加している。温度調整部36は、LCDユニット18を加熱または冷却するように構成されている。LCDユニット18は、熱膨張係数が低いガラス素材を備えているため、このガラス素材に熱膨張係数の高い透明樹脂フィルムを、接着剤等を介して、適宜貼り合わせることによりバイメタル効果を得ることが可能となる。変形駆動部32がアクチュエータユニット34の変形制御をするのに同期して、LCDユニット18を加熱または冷却することによって、カーブモードおよびフラットモードの切り替えをより円滑に行うことが可能になる。
【0045】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
10−液晶テレビ
12−リモコン
14−ベース部材
16−フレキシブルシャーシ
18−LCDユニット
34−アクチュエータユニット
181−第1のガラス基板(CF基板)
182−第1の偏光フィルム
183−第2のガラス基板(TFT基板)
184−LCDモジュール
185−液晶層
186−第2の偏光フィルム
188−バックライトユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8