(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者の体内の三次元構造を示すボリュームデータに含まれる部位のうち指定された部位または所定の部位が強調されて生成された仮想的な透視像である第1透視像を取得する第1取得部と、
前記患者の体内を透視した第2透視像を取得する第2取得部と、
前記第1透視像を参照して第2透視像から前記部位または前記部位以外を除去した部位除去像を生成する部位除去像生成部と、を備え、
前記部位除去像生成部は、
前記第1透視像を参照した平滑化フィルタを前記第2透視像に適用する平滑化部
を有することを特徴とする医用画像処理装置。
患者の体内の三次元構造を示すボリュームデータに含まれる部位のうち指定された部位または所定の部位が強調されて生成された仮想的な透視像である第1透視像を取得するステップと、
前記患者の体内を透視した第2透視像を取得するステップと、
前記第1透視像を参照して第2透視像から前記部位または前記部位以外を除去した部位除去像を生成するステップと、を含み、
前記部位除去像を生成するステップにおいて、
前記第1透視像を参照した平滑化フィルタを前記第2透視像に適用することを特徴とする医用画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、医用画像処理装置10は、患者の体内の三次元構造を示すボリュームデータBを取得するボリュームデータ取得部11と、指定された部位(例えば骨)の領域が強調されたボリュームデータB’を生成する部位強調部14と、ボリュームデータB’からの仮想透視像(DRR: digitally reconstructed radiograph)として第1透視像Mを生成する第1透視像生成部16と、患者42の体内を所定方向から透視した第2透視像Nを取得する第2透視像取得部12と、第2透視像Nから指定された部位(例えば骨)を除去した部位除去像P2、あるいは、指定された部位以外を除去した部位除去像P3を生成する部位除去像生成部20と、を備えている。
なお、
図1の医用画像処理装置10において、部位除去像生成部20の上流に位置し第1透視像M(M’)を取得する第1取得部51(
図12参照)の記載が省略されている。
【0012】
さらに医用画像処理装置10において、第2透視像取得部12は、第2透視像Nを連続的に取得し、この取得した第2透視像Nを基準として第1透視像Mを変形した第1透視像M’を生成するデフォーマブルレジストレーションを実行するデフォーマブルレジストレーション部17と、取得した第2透視像Nに対応する部位除去像P2を連続的に外部出力する外部出力部19と、をさらに備えている。
【0013】
そして、放射線治療装置30は、医用画像処理装置10の第2透視像取得部12に取得させる第2透視像Nを撮像する透視像撮像部31と、患者42を載置した治療台43を設定した照準に合うように移動させる治療台移動部33と、医用画像処理装置10の外部出力部19から連続的に出力される部位除去像P2から追跡目標を識別する追跡目標識別部34と、連続する複数の部位除去像P2の中で変化する追跡目標が、ビーム41の照射ポイントに合致したか否かを判定する判定部35と、合致するとの判定が得られたタイミングにおいて、ビームを照射させるビーム照射部36と、を備えている。
【0014】
ボリュームデータ取得部11に取得されるボリュームデータBは、例えば、X線CT装置で撮像された患者の体内の三次元画像である。その他に、ボリュームデータBは、MRI装置で撮像された画像も採用することができ、患者の体内の三次元構造を示す画像であれば特に限定されない。
【0015】
このボリュームデータBを用いれば、各ボクセルの値から、骨や各種臓器といった体内の部位を解析することができる。
部位設定部13では、情報テーブルの中に様々な部位の名称がリストアップされており、そのうちいずれかの名称をユーザが指定することで、除去する部位、あるいは、除去せずに残したい部位が選択できるようになっている。
つまり、部位設定部13では、最終的に第2透視像N(
図3)のなかから、除去したい、あるいは、除去せずに残したい部位をユーザが指定することとなる。なお実施形態では、骨を指定するが、指定される部位は特に限定されない。なお、除去する部位が決まっている場合は、ユーザが指定する部位の代わりに、その所定の部位を設定しても良い。この場合、部位設定部13は省いても良い。以降、部位設定部13で設定された部位を、設定部位と表記する。
【0016】
部位強調部14は、ボリュームデータBのなかから、設定部位に対応する領域を、ボクセルの値に基づいて自動的に決定する。そして、第1透視像生成部16で生成される第1透視像Mにおいてその設定部位が強調されるように、その設定部位に対応する領域のボクセルの値を書き換えたボリュームデータB’を生成する。
例えば、ボリュームデータBがCTデータである場合、その設定部位に対応する領域のボクセルの値を1に、それ以外のボクセルの値を0にすることで、ボリュームデータB’を生成する。あるいは、その設定部位に対応する領域のボクセルの値は変更せず、それ以外のボクセルの値を0にすることで、ボリュームデータB’を生成する。
【0017】
第1透視像生成部16は、ボリュームデータB’の周囲に仮想視点と画像平面を設定し、透視投影でボリュームデータB’を透視したDRRである第1透視像Mを生成する。
なお第1透視像Mの仮想視点と画像平面は、3D−2Dレジストレーション部15によって設定される。3D−2Dレジストレーション部15には、ボリュームデータBと第2透視像Nが入力される。3D−2Dレジストレーション部15においては、第2透視像N(
図3)が撮影されたときと同じジオメトリになる仮想視点と画像平面が3D−2Dレジストレーションによって計算される。この3D−2Dレジストレーションにより、第2投影像Nと第1投影像Mにおける被写体の位置が一致するようになる。
【0018】
図2は、設定部位が骨である場合に、その骨が強調されたボリュームデータB’の第1透視像Mの例を示す図である。本図は、骨の部分を黒で、骨以外の部分を白で表した2値画像で表示している。部位強調部14におけるボリュームデータB’の生成方法に応じて、第1透視像Mにおける部位領域の強調のされ方が異なる。例えば、第1透視像Mは、設定部位に対応する領域に陰影があり、それ以外の領域で陰影がなく、一つの値しか持たない多値画像になる場合もある。
【0019】
この二次元像である第1透視像Mは、三次元のボリュームデータB’を画像平面に透視投影したものであるので、強調表示されている領域は、設定部位(骨)の領域になる。
このように生成された第1透視像Mには、第2透視像Nから除去する部位が第2透視像Nにおいてどこに写っているかについての情報が含まれる。
【0020】
図3に示す第2透視像Nは、例えばX線透視画像であり、所定の位置からX線を照射して患者の体内を透視する装置により撮像される。なお、X線以外の放射線によって透視してもよい。
このようにして撮像された第2透視像Nは、電子送信されて第2透視像取得部12に取得される。
【0021】
この第2透視像Nは、放射線治療装置30のX線照射部45及びX線検出部46により患者42をリアルタイムで撮像したものが例示される。
この場合、第2透視像取得部12により経時的に取得された複数の第2透視像Nは、設定部位(骨)の形状又は位置が、呼吸に伴い連続的に変化する。
【0022】
第1透視像Mと第2透視像Nとは、撮影対象の患者が同一であっても、撮影時期のずれや、ベッド上の姿勢の僅かな相違や、呼吸の位相のずれ等によって、必ずしも全領域において一致しない。
【0023】
そこで、デフォーマブルレジストレーション部17において、取得した第2透視像Nを基準として第1透視像Mを変形した第1透視像M’を生成するデフォーマブルレジストレーションを実行する。
これにより、第1透視像M’における被写体の位置が第2透視像Nに一致することになる。
なお、第1透視像Mと第2透視像Nとの被写体の位置が一致している場合は、デフォーマブルレジストレーションを実行する必要はない。
完全に一致していない場合であっても、デフォーマブルレジストレーション部17は省略可能である。この場合、第1透視像M’の代わりに第1透視像Mを採用する。完全に一致していない場合にデフォーマブルレジストレーション部17を省略すると、部位除去像の画質が劣化する場合がある。
【0024】
ここで第2透視像Nを構成する画素の各々には、X線検出部46の各画素に到達した放射線が貫いた複数の体内部位(皮膚、骨、内臓、血管、気管支等)の組織情報が重畳されている。
このために、第2透視像Nの各画素の値に含まれるいずれかの組織情報(骨情報)を差し引くことにより、対応する体内部位(骨)の除去された透視像を得ることができる。
【0025】
部位除去像生成部20は、第2透視像Nから設定部位(骨)を除去した部位除去像P2を生成する。
この部位除去像P2によれば、第2透視像Nでは一部の部位(骨)の存在により視認が困難であった別の体組織(患部)の視認性を、向上させることができる。
【0026】
図4に示すように、部位除去像生成部20は、設定された部位(骨)以外を除去した部位除去像P3を生成する平滑化部22と、第2透視像Nと部位除去像P3の差分演算を実行して部位除去像Pを生成する差分演算部23と、を有する。
【0027】
さらに部位除去像生成部20は、設定された部位(骨)も細かい画像パターンもない部位除去像P4を生成するインペインティング部24と、部位除去像Pと部位除去像P4を加算することで部位除去像P1を生成する加算処理部25と、部位除去像P1のアーチファクトノイズを除去したり画像調整をしたりした部位除去像P2を生成する調整部26と、をさらに有している。
【0028】
図5(A)の左側に、第2透視像N(
図3)の一部を切り取った図を示す。
図5(A)の右側のグラフは、左側の画像上に引いた線分上の画素の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
このグラフより、線分の中央付近の骨が描写されている部分の濃淡値は、線分の両側の骨が描写されていない部分(肺野)と比較して、相対的に小さいことがわかる。さらに、骨の有無にかかわらず、その他の体組織(気管支等)に由来する画像パターンの存在が、グラフからも確認される。
【0029】
図5(B)の左側の画像は、部位除去像P3の一部を示している。
図7のフローチャートに基づいて、平滑化部22の実施例を説明する。
第2透視像N(
図5(B))を構成する複数の画素のうちいずれか一つを注目画素に設定する(S21)。なお、
図7のフローが循環する度に、この注目画素は、第2透視像N上の隣接する別の画素に移動する。
【0030】
そして、この注目画素に設定部位(骨)が写っている場合は(S22 Yes)、設定部位(骨)が写っている画素の値の平均値の計算式(1)に従って第1代表値Y(p)を計算し、部位除去像P3の注目画素の値とする(S23)。この注目画素に設定部位(骨)が写っていない場合は(S22 No)、設定部位(骨)が写っていない画素の値の平均値の計算式(2)に従って第2代表値Y(p)を計算し、部位除去像P3の注目画素の値とする(S24)。
【0031】
ここで、注目画素に設定部位(骨)が写っているか否かは、第1透視像M’を参照することで判定する。pは、注目画素の位置ベクトルを表す。X(q)は、pの周辺画素と定義した注目画素qの値を表す。Ω(p)(
図8参照)は、注目画素の周辺画素の集合を表す。B(p)は、Ω(p)に含まれる画素のうち、設定部位(骨)が写っている画素の集合を表す。S(p)は、Ω(p)に含まれる画素のうち、設定部位(骨)が写っていない画素の集合を表す。|B(p)|及び|S(p)|は、それぞれ集合B(p)及び集合S(p)の要素の数を表す。
Ω(p)は、B(p)とS(p)の和集合となる。
【0032】
そして、第2透視像Nに含まれる全ての画素について代表値Y(p)を計算したところで(S25 Yes)、部位除去像P3を出力する。部位除去像P3は、第2透視像Nから設定部位(骨)以外が除去された部位除去像になる。
【0033】
図5(B)の右側のグラフは、
図5(B)の左側の部位除去像P3上に引いた線分上の画素の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
このように、部位除去像P3は、設定部位(骨)以外の体組織(気管支等)に由来する細かい画像パターンが除去されているのが、グラフからも確認される。
【0034】
図8のフローチャートに基づいて、平滑化部22の他の実施例を説明する。
部位除去像P3(
図5(B))を構成する複数の画素のうちいずれか一つを注目画素に設定する(S31)。なお、
図8のフローが循環する度に、この注目画素は、第2透視像N上の隣接する別の画素に移動する。
あるいは、第2透視像N(
図5(A))を構成する複数の画素のうちいずれか一つを注目画素に設定する(S31)。なお、
図8のフローが循環する度に、この注目画素は、第2透視像N上の隣接する別の画素に移動する。
【0035】
そして、この注目画素に設定部位(骨)が写っているか否かにかかわらず、計算式(3)に従って第3代表値Y(p)を計算する(S32)。
ここで、qは、Ω(p)内の画素を表す。w(q)は、Ω(p)内の各画素qに対する重みを表す。この重み係数w(q)は、第1透視像M’における注目画素pの値と、第1透視像M’における画素qの値が近いほど、大きく設定する。
【0036】
例えば、注目画素pに設定部位(骨)が写っており、画素qに設定部位(骨)が写っていない場合、注目画素pと画素qの値は乖離しているため、重み係数w(q)は小さな値をとる。
反対に、注目画素pにも画素qにも設定部位(骨)が写っている場合、あるいは、注目画素pにも画素qにも設定部位(骨)が写っていない場合、注目画素pと画素qの値が近いため、重み係数w(q)は大きな値をとる。
【0037】
そして、第2透視像Nに含まれる全ての画素について第3代表値Y(p)を計算したところで(S33 Yes)、部位除去像P3を出力する。部位除去像P3は、第2透視像Nから設定部位(骨)以外が除去された部位除去像になる。
【0038】
図5(C)の左側は、上述した平滑化部22(
図4)における他の実施例により平滑化した部位除去像P3の一部を示している。
図5(C)の右側のグラフは、部位除去像P3の図上に引いた線分上の画素Y(p)の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
図5(C)も、
図5(B)と同等の結果が得られていることが確認される。
【0039】
なお、平滑化部22における代表値Y(p)の計算方法として、計算式(1)、(2)の領域別の平均値や計算式(3)の加重平均値を例示したが、これらに限定されることはない。計算式(1)、(2)の領域別の平均値の代わりに、領域別のメジアン値、領域別の最頻値を用いても構わない。計算式(3)の加重平均値の代わりに加重メジアン値を採用しても良い。いずれも、第1透視像M’を参照するため、エッジ保存型平滑化フィルタになっている。代表値Y(p)の計算としては、第1透視像M’を参照した他の平滑化フィルタを用いても構わない。平滑化フィルタとしては、例えば、バイラテラルフィルタ、イプシロンフィルタ、ガイデッドイメージフィルタなどを用いても良い。第1透視像M’を参照した平滑化により、エッジ保存型平滑化フィルタになる。
このように、平滑化部22(
図4)において平滑化した部位除去像P3は、
図9に示すように、第2透視像Nから設定部位(骨)以外が除去された部位除去像になる。
【0040】
差分演算部23(
図4)は、部位除去像P3の構成画素と第2透視像Nの構成画素とに対し、差分演算を実行する。この差分演算を実行した結果出力される像は、第2透視像Nから設定部位(骨)が除去された部位除去像Pとなる。
【0041】
図6(D)の左側の画像は、部位除去像Pの一部を示している。
図6(D)の右側のグラフは、左側の画像上に引いた線分上の画素の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
このように骨を除去した部位除去像Pは、骨が描写されていると存在感が薄いその他の体組織(気管支等)に由来する画像パターンを、明りょうに表示させることがグラフからも確認される。つまり、所定の体組織と重なっていて視認することが困難な別の体組織の視認性を向上させることができる。なお、部位除去像Pは、負の値を持ち得る。
【0042】
インペインティング部24(
図4)は、第1透視像M’を参照して、第2透視像Nから設定部位(骨)と他の細かい画像パターンがない部位除去像P4を生成する。
図10のフローチャートに基づいて、インペインティング部24の動作を説明する。
第2透視像N(
図5(B))を構成する複数の画素のうちいずれか一つを注目画素に設定する(S41)。なお、
図10のフローが循環する度に、この注目画素は、第2透視像N上の隣接する別の画素に移動する。
【0043】
そして、この注目画素に設定部位(骨)が写っているか否かにかかわらず、計算式(4)に従って第4代表値Y(p)を計算する(S42)。
つまり、注目画素pの周辺にある画素の集合Ω(p)(
図8参照)のうち、設定部位(骨)が写っていない画素の集合S(p)に基づいて第4代表値Y(p)を生成する。この第4代表値Y(p)の計算式(4)により、S(p)に含まれる1つ以上の画素の平均値が計算される。なお、計算式(4)で用いた平均値の代わりに、加重平均値、メジアン値、加重メジアン値、最頻値などが用いられても良い。
【0044】
これにより、第4代表値Y(p)は、注目画素pに設定部位(骨)がある場合、周囲の設定部位(骨)がない画素からインペインティングされた値になる。
そして、注目画素pに設定部位(骨)がない場合、第4代表値Y(p)は、周囲の設定部位(骨)がない画素の値を平滑化した値をとる。
【0045】
第2透視像Nに含まれる全ての画素について第4代表値Y(p)を計算したところで(S43 Yes)、部位除去像P3を出力する。
【0046】
図6(E)の左側の画像は、上述したインペインティング部24(
図4)により変換処理した部位除去像P4の一部を示している
図6(E)の右側のグラフは、部位除去像P4の図上に引いた線分上の画素Y(p)の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
このようにインペインティングされた部位除去像P4は、骨やその他の体組織(気管支等)が除去された部位除去像になる。
【0047】
加算処理部25(
図4)は、部位除去像Pの構成画素と部位除去像P4の構成画素とを加算するものである。
【0048】
図6(F)の左側の画像は、上述した加算処理部25(
図4)により加算処理した部位除去像P1の一部を示している。
図6(F)の右側のグラフは、部位除去像P1の図上に引いた線分上の画素Y(p)の濃淡値(Intensity)の模式図である。このグラフの横軸がその線分における位置(position)を表し、縦軸が濃淡値(Intensity)を表す。
このように加算処理された部位除去像P1は、骨が除去されて、骨以外の体組織(気管支等)が明りょうで、負の値を持たない画像となる。
【0049】
調整部26は、部位除去像P1に対し、アーチファクトノイズを除去したり画像調整をしたりした部位除去像P2を生成し、出力するものである。
ここでアーチファクトノイズとは、3D−2Dレジストレーション部15やデフォーマブルレジストレーション部17の精度が悪い場合等、設定部位(骨)とそれ以外との境界付近で生じる濃淡値の不均一現象である。
この場合、境界付近の濃淡値を平滑化処理することにより、アーチファクトノイズを低減することができる。この境界に関する情報は、第1透視像M’に含まれるため、第1透視像M’を参照して平滑化することで、アーチファクトノイズを低減する。
また画像調整としては、アンシャープマスクフィルタやガウスフィルタを利用して画像パターンを強調したり減衰させたりすることが挙げられ、これにより体組織の視認性を向上させることができる。
【0050】
なお、
図4では、調整部26を加算処理部25の後段に設置したが、他の位置に設置したり、複数設置したりしても良い。例えば、部位除去像Pを処理するために、差分演算部23の後段に設置しても良い。
部位除去像生成部20において設定部位(骨)を除去する上述の処理では、設定部位(骨)が写っていない画素の値が第2透視像Nの値から変化し得る。第1透視像M’を参照し、設定部位(骨)が写っていない画素では、第2透視像Nの値をそのまま採用するように、その処理を変更しても構わない。
部位除去像生成部20において設定部位(骨)以外を除去する上述の処理では、設定部位(骨)が写っている画素の値が第2透視像Nの値から変化し得る。第1透視像M’を参照し、設定部位(骨)が写っている画素では、第2透視像Nの値をそのまま採用するように、その処理を変更しても構わない。
【0051】
外部出力部19(
図1)は、部位除去像生成部20から出力される部位除去像P2を、外部に向けて出力するものである。なお、第2取得部12において複数の第2透視像Nが連続的に取得される場合、外部出力部19は、この取得に同期して対応する部位除去像P2を連続的に外部出力する。
【0052】
外部出力部19が出力するのは、部位除去像P2ではなく、部位除去像P、P1、P3、P4のうちのいずれかであっても構わない。外部出力部19からの出力を部位除去像P2以外に変更する場合、部位除去像生成部20から不要なものを省ける。例えば、外部出力部19からの出力を部位除去像Pに変更する場合、部位除去像生成部20において部位除去像Pの生成には役立たないインペインティング部24、加算処理部25、調整部26は不要である。
【0053】
以上説明した医用画像処理装置10は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0054】
また医用画像処理装置10で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態に係る医用画像処理装置10で実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。
【0056】
図1に戻って説明を続ける。
放射線治療装置30は、患者42の体内にある患部を、治療用のビーム41で狙い撃ちして、この患部を治療するものである。
ビーム41が重粒子線の場合、ビーム41が体内に入射すると、通過の過程で運動エネルギーを失い、ある一定の速度にまで低下すると急激に停止して、ブラッグピークと呼ばれる大線量を発生させる。このようにピンポイントで発生させた大線量により、がん細胞のみを狙い撃ちして死滅させ、正常細胞への影響を最小限にとどめることができる。
このため重粒子線のビーム41を用いた治療技術は、がん等の悪性腫瘍に対し、高い治療効果、少ない副作用、及び身体への負担軽減等の優れた特徴を有する。
【0057】
治療用のビーム41の種類によらず、放射線治療装置30では、正常な組織を損傷させないために、患部に照射するビーム41の照準を正確に合わせることが求められる。
このために、ビームの照射開始前に、患部の位置をX線観察などにより特定し、患者を載置した可動式の治療台43の位置・角度を移動部33により適切に調整し、ビーム41の照射範囲に患部を正確に位置合わせすることが行われる。
【0058】
透視像撮像部31は、X線照射部45(45a,45b)及びX線検出部46(46a,46b)を制御して、患者42の第2透視像Nを撮像するものである。
撮像された第2透視像Nは、移動量計算部32に送られてビーム41の照準を患部に合わせるのに必要な治療台移動部33の移動量を生成するのに利用されるとともに、第2取得部12にも取得される。
【0059】
さらに、動きを有する内臓(肺など)に存在する患部にビーム41を照射する場合、ビーム照射の正確性を期するため、呼吸や心拍等に伴う周期的な変位に、照射タイミングを合わせる必要がある。
このような場合、ビーム41の照準を患部に直接合わせる方法の他に、患部近傍に金などのマーカを埋め込んで、X線撮影によりこのマーカの動きを追跡し、患部の位置を特定する方法がとられている。
【0060】
識別部34は、医用画像処理装置10の外部出力部19から連続的に出力される部位除去像P2から追跡目標(患部又はマーカ)を識別する。
判定部35は、連続する複数の部位除去像P2の中で変化する追跡目標が、ビーム41の照射ポイントに合致したか否かを判定する。
ビーム照射部36は、合致するとの判定が得られたタイミングにおいて、ビームを照射させる。なお、患者42に照射するビーム41は、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、及び、重粒子線などがある。
【0061】
図11のフローチャートに基づいて(適宜、
図1参照)、実施形態に係る医用画像処理方法、プログラム及びこれを用いた放射線治療装置の動作を示す。
X線CT装置等で患者の体内を撮像し、ボリュームデータを取得する(S11)。そして、このボリュームデータに含まれる部位(骨)を設定し(S12)、この設定した部位が強調されたDRRをボリュームデータから第1透視像Mとして生成する(S13)。
【0062】
一方において、取得したボリュームデータを用いて患部の位置・範囲を認識し、患部に照射するビーム41の照射条件を設定する(S14)。
放射線治療装置30の治療台43に患者42を載置して、この治療台43を銃口44の直下に移動する(S15)。
【0063】
この状態で、撮像部31を動作させて患者42の透視像を撮像し(S16)、ビーム41の照準を患部に合わせるのに必要な治療台43の移動量を生成する。そして、照準が一致するまで治療台43を移動する(S17 No/Yes)。
そして、再び撮像部31を動作させて、患者42の第2透視像Nの連続撮像を開始する(S18)。
【0064】
放射線治療装置30から連続的に送られてくる第2透視像Nを医用画像処理装置10において取得し、それぞれの第2透視像Nを基準として第1透視像Mに対しデフォーマブルレジストレーションを実行する(S19)。
デフォーマブルレジストレーションで生成された第1透視像M’を参照し、第2透視像Nから骨を除去した部位除去像P2を生成し(S20)、放射線治療装置30に送信する。
【0065】
放射線治療装置30は、受信した部位除去像P2の中から、追跡目標(患部又はマーカ)を、識別し追跡する(S21)。そして、追跡目標が照準に一致したところで(S22 No/Yes)、そのタイミングでビーム41を照射する(S23)。
この照射されたビーム41は、照射ポイントに変位した患部の位置においてブラッグピークを発生させ、この患部の細胞を治療する(END)。
【0066】
なお、外部出力部19からの出力を部位除去像P2から、部位除去像Pや部位除去像P1に変更しても良い。部位除去像Pや部位除去像P1にも設定部位(骨)がないため、追跡目標(患部又はマーカ)を識別しやすい。例えば、設定部位として横隔膜を設定し、追跡目標として横隔膜を設定する場合、外部出力部19からの出力を部位除去像P2から、部位除去像P3や部位除去像P4に変更しても良い。部位除去像P3や部位除去像P4からは設定部位(横隔膜)以外が除去されているため、横隔膜を追跡しやすい。
【0067】
放射線治療装置30では、追跡目標(患部又はマーカ)を追跡し、所定のタイミングでビーム41を照射する例を示したが、患部を追跡し、患部に合わせてビーム41を追尾照射しても構わない。
【0068】
図12に基づいて、他の実施形態に係る医用画像装置10を説明する。なお、
図12において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第1透視像生成部52は、例えば、
図1のボリュームデータ取得部11、部位設定部13、部位強調部14、3D−2Dレジストレーション部15、第1透視像生成部16、および、デフォーマブルレジストレーション部17から構成される。
医用画像装置10は、第1取得部51、第2透視像取得部12、部位除去像生成部20、および、外部出力部19から構成される。
【0069】
第1取得部51は、第1透視像M’を取得し、部位除去像生成部20に送る。第1透視像M’は、医用画像装置10の外部で生成される。
第1透視像M’の生成は、上述の構成を有する第1透視像生成部52による場合に限定されないが、ボリュームデータBと第2透視像Nから生成される。
【0070】
図1の医用画像処理装置10と
図12の医用画像装置10とでは、部位除去像生成部20に入力されるものが同じため、医用画像処理装置10から出力されるものも、医用画像装置10から出力されるものも同じである。したがって、
図12の医用画像装置10も、
図1の医用画像処理装置10と同じ効果を有する。
【0071】
以上述べた実施形態の医用画像処理装置によれば、ボリュームデータから生成した第1透視像を用い、患者を撮像して得た第2透視像に含まれる部位を指定することにより、骨等の指定部位を高精度で除去した透視像を撮影条件によらず、教師画像なしで得ることが可能となる。さらに、実施形態の放射線治療装置によれば、呼吸等により移動する患部の位置を正確に認識し、この患部のみにビームを照射させ正常細胞への影響を最小限にとどめることが可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。