(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記THz波照射部から被検査類又は紙葉類に照射されるTHz波と前記THz波検知器に入射されるTHz波との偏光方向が制御される、請求項1〜14の何れかに記載のTHz帯を用いた検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明の範囲は実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。特に、図面に記載した各部材の形状、寸法、位置関係などについては概念的な事項を示すに過ぎず、その適用場面に応じて変更することができる。各図において、同一の又は対応する部材、ユニットには同一の符号を付している。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るTHz帯を用いた検査装置1を説明する図である。
図1に示すように、本発明のTHz帯を用いた検査装置1は、被検査類2にTHz波を照射するTHz波照射部3と、被検査類2に照射されたTHz波の透過波4を検出するTHz波検知部5と、THz波が照射された被検査類2の透過波4の強度データから、被検査類2の透過波4の強度分布を得る情報処理部10と、を含んで構成されている。被検査類2は、例えば紙葉類である。被検査類2に付着する異物7は例えば、樹脂性のテープである。本明細書では、被検査類2は紙葉類とし、異物7は樹脂性のテープとして説明する。
【0019】
THz波照射部3は、THz波発振器3aと、THz波発振器3aから照射されるTHz波3cを被検査類2に集光する集光用光学部品3eを含んで構成される。本発明では、THz波3cは、周波数として30GHz(GHzは10
9Hz)〜12THzの周波数帯である。
【0020】
THz波発振器3aに用いる発振素子としては、ガンダイオード、IMPATT(インパット)ダイオード、タンネットダイオード等の各種ダイオード、Si、GaAsやInPのような化合物半導体から形成されるトランジスタを使用することができる。発振素子としては、上記ダイオードやトランジスタからなる集積回路を用いてもよい。このような集積回路としては、GaAs等の化合物半導体からなる集積回路や、SiやSiGeを用いたCMOS集積回路が挙げられる。Siを用いたCMOS集積回路は、ミリ波CMOSICとも呼ばれている。
【0021】
THz波発振器3aから照射されるTHz波3cが、集光用光学部品3eとしてのレンズを介して紙葉類2に照射される。集光用光学部品3eとしては、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ等や鏡を用いた集光系を用いることができる。鏡としては、半透鏡や放物面鏡等を用いることができる。レンズ3eの材料としては、フッ素樹脂やガラス等を用いることができる。THz波発振器3aから照射されるTHz波3cが、紙葉類2の垂直方向(厚さ方向)に対して入射角度(θ)をつけて照射することが望ましい。θが0°の場合が垂直入射である。垂直入射又は垂直入射に近い場合には、紙葉類2からの反射波と入射波の干渉による透過強度の周期的な強度パターンが現れ、貼付物を識別する際の障害となるので好ましくない。この入射角度は、数°〜50°とすることができる。入射角度は、概ね10°以上が好ましい。
【0022】
集光されたTHz波3fは、紙葉類2を透過して、レンズ5aを介して透過波4を検出するTHz波検知部5に入射される。集光用光学部品5aとしては、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ等や鏡を用いた集光系を用いることができる。鏡としては、半透鏡や放物面鏡等を用いることができる。レンズや鏡の材料としてはフッ素樹脂やガラス等を用いることができる。THz波検知部5としては、紙葉類を透過したTHz波4を検知できる素子やTHz波受信回路を使用することができる。THz波検知部5に用いるTHz波検知素子5cとしては、点接触ダイオードやショットキーバリヤダイオード、受信用ICを用いることができる。受信用ICは、ヘテロダイン又はホモダイン検波方式を用いることができる。受信用ICがホモダイン検波方式の場合には、THz波照射部3のTHz波発振器3aから分岐した信号を、受信用ICの局部発振器用の信号としてもよい。
【0023】
被検査類2の透過波4の強度分布を得る情報処理部10は、マイクロプロッセッサ、マイクロコントローラ等のマイコンやパーソナルコンピュータ(PC)を含んで構成されている。THz波検知部5からの出力は、A/D変換器10aや入出力インターフェース(I/O)10bを介してマイコンやパーソナルコンピュータに入力される。必要に応じてディスプレイ10cや記憶装置10dを備えてもよい。
【0024】
情報処理部10は、透過波4の二次元の強度分布を取得し、異物7の付着のない紙葉類を検出したときの強度分布と、検査時に紙葉類2を検出したときの検査時強度分布を比較することで、検査時の被検査類2に異物7が付着しているか否かを検出することができる。
【0025】
情報処理部10は、異物7の付着しない紙葉類2の透過波4を検出したときの二次元強度分布を予め測定したデータを、参照データとして、情報処理部10の記憶装置10dに記憶させてもよい。紙葉類2の種類に応じた複数の参照データを、情報処理部10の記憶装置10dに記憶させてもよい。
【0026】
(90GHzにおける透過波の測定例)
図1のTHz帯を用いた検査装置1の測定例について説明する。
THz波発振器3aとしては、90GHzの連続発振(CW発振)のガンダイオード発振器(SPACEK LABS社製、モデルGW−900P)を使用した。ガンダイオード発振器の出力は、約10mWである。ガンダイオード発振器3aからのTHz波3cの出力は、テフロン(登録商標)製のレンズ3eで集光し、シンガポールドル紙幣2aに照射した。シンガポールドル紙幣2aを透過したTHz波4は、テフロン(登録商標)製のレンズ5aで集光し、ショットキーバリヤダイオード(millitech社製、モデルDXP−10−RPF0)で透過したTHz波4の強度を検出した。
【0027】
シンガポールドル紙幣2aの位置等の保持を容易にするために、シンガポールドル紙幣2aの両面には、THz波を透過する光学用樹脂膜8a,8bを配置した。光学用樹脂膜8a,8bとしては、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン製、ZEONEX(登録商標))を用いた。
【0028】
図2は、測定に用いた紙葉類におけるメンディングテープ7aの貼り付け位置を説明する図である。
図2に示すように、シンガポールドル紙幣2aの表と裏には、64mm×18mmのメンディングテープ7aが貼られている。
図2に示すように、シンガポールドル紙幣2aの幅は64mmであり、約70mm(X方向)×60mm(Y方向)の範囲の透過波4の強度分布を、2mm毎に測定した。シンガポールドル紙幣2aの厚さは約0.1mm(100μm)である。紙葉類2の搬送方向はY方向としたが、X方向でもよい。
【0029】
図3は、本発明のTHz帯を用いた検査装置1で取得した紙葉類2を透過したTHz波の二次元の強度分布の一例を示し、(a)は二次元の強度分布、(b)は(a)のA−A’方向の強度分布、(c)は(a)のB−B’方向の強度分布である。
【0030】
最初に、シンガポールドル紙幣2aにTHz波を照射したときの透過波4の二次元の強度分布を取得した。
次に、シンガポールドル紙幣2aの表と裏の同じ位置に異物7として、幅が約64mmで、長さが約18mmのメンディングテープ7aを貼り付けた。メンディングテープ7aを貼り付けた場合の透過波4aの二次元の強度分布を取得した。
【0031】
シンガポールドル紙幣2aだけの場合の透過波4の二次元の強度分布と、メンディングテープ7aを貼り付けた場合の透過波4aの二次元の強度分布とを比較した強度分布を8レベルの等高線で表したのが、
図3(a)である。
図3(a)では、色が濃い箇所が透過波4aの強度が増加している箇所であり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aを貼り付けた箇所に対応している。メンディングテープ7aは、アセテートフィルム等で形成されている。
【0032】
図3(b)に示すA−A’方向の強度分布は、メンディングテープ7aが貼り付けられたシンガポールドル紙幣2aの幅方向(X方向)の強度分布であり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、透過波4aの強度が大きいことが分かる。
【0033】
図3(c)に示すB−B’方向の強度分布は、メンディングテープ7aが貼り付けられたシンガポールドル紙幣2aの幅方向に垂直な方向(Y方向)の強度分布であり、メンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、透過波4aの強度が大きくなり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられていない箇所では、透過波4aの強度が低くなることが分かる。
【0034】
図2及び
図3で説明したように、シンガポールドル紙幣2aに異物7として、メンディングテープ7aを貼り付けた場合に、透過光4aの強度が向上する理由について説明する。
図4は、THz波が照射される媒体の断面を示す図である。THz波は、第1の媒体12となる空気(屈折率:n
0)と、第2の媒体13となるシンガポールドル紙幣2aの表面側に配設された第1の光学用樹脂膜8a(屈折率:n
1)と、第3の媒体14となるシンガポールドル紙幣2aの表面側に貼り付けられたメンディングテープ7a(屈折率:n
2)と、第4の媒体15となるシンガポールドル紙幣2a(屈折率:n
3)と、第5の媒体16となるシンガポールドル紙幣2aの裏面側に貼り付けられたメンディングテープ7a(屈折率:n
2)と、第6の媒体17となるシンガポールドル紙幣2aの裏面側に配設された第2の光学用樹脂膜8b(屈折率:n
1)と、第7の媒体18となる空気(屈折率:n
0)を、この順に通過する。
【0035】
上記媒体の屈折率は、以下のような値となる
第1及び第7の媒体12,18となる空気の屈折率(n
0)=1
第2及び第6の媒体13,17となる光学用樹脂膜8の屈折率(n
1)=1.53
第3及び第5の媒体14,16となるメンディングテープ7aの屈折率(n
2)=1.57
第4の媒体15となるシンガポールドル紙幣2aの屈折率(n
3)=1.45〜1.5
【0036】
シンガポールドル紙幣2aの両面に貼り付けられる第3及び第5の媒体14,16となるメンディングテープ7aの屈折率(n
2=1.57)と、第2及び第6の媒体13,17となる第1及び第2の光学用樹脂膜8a,8bの屈折率(n
1=1.53)は、何れもシンガポールドル紙幣2aの屈折率(n
3=1.45〜1.5)よりも大きい。従って、シンガポールドル紙幣2aの両側に貼り付けられる第3及び第5の媒体14,16となるメンディングテープ7aの屈折率(n
2=1.57)は、レンズの作用をし、透過波4aの強度が増大すると推定される。つまり、紙葉類2に付着したメンディングテープ7aのような異物7は、異物7の屈折率と異物7の付着のない被検査類2の屈折率との差のレンズ効果に基づく強度変化から検出することができる。
尚、第2及び第6の媒体13,17となる第1及び第2の光学用樹脂膜8a,8bは、シンガポールドル紙幣2aの支持に用いている。第1及び第2の光学用樹脂膜8a,8bがなくとも上記のレンズ効果は生じる。
【0037】
図5は、本発明の第1実施形態に係るTHz帯を用いた別の検査装置20を説明する図である。
図5に示すように、THz帯を用いた検査装置20が、
図1のTHz帯を用いた検査装置1と異なるのは、THz波検知部5が、THz波の紙葉類2への透過波4,4aではなく、反射波22を検出する点である。他の点は、
図1のTHz帯を用いた検査装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0038】
THz帯を用いた検査装置20は、紙葉類2に照射されたTHz波の反射波22を測定するが、上記した透過波4の測定と同様に、紙葉類2に付着したメンディングテープ7aのような異物7は、異物7の屈折率と異物7の付着のない被検査類2の屈折率との差のレンズ効果に基づく強度変化から検出することができる。
【0039】
(60GHzにおける反射波の測定例)
THz帯を用いた検査装置20の測定例について説明する。
図6は、60GHzの反射測定に用いた紙葉類におけるメンディングテープ7aの貼り付け位置を説明する図である。
図6に示すように、シンガポールドル紙幣2aの表と裏には、走査範囲のほぼ中央の左側及び右側と、右隅と、下部の中央の一部にメンディングテープ7aを貼り付けた。メンディングテープ7aの大きさは、18mm×20mmである。
図6に示す70mm×80mmの範囲の反射波22の強度分布を、2mm毎に測定した。
【0040】
THz波発振器3aとして、60GHzの連続発振(CW発振)のガンダイオード発振器(モデルGDO−15−6013R)を使用した。ガンダイオード発振器3aの出力は、約10mWである。45°の入射角度に対して45°の反射波を測定した以外は、
図2の透過波4の測定と同様に測定した。反射波の測定には、60GHz用のショットキーバリヤダイオード(SPACEK LABS社製、モデルDV−2N)を用いた。
【0041】
シンガポールドル紙幣2aの位置等の保持を容易にするために、シンガポールドル紙幣2aの裏面には、THz波を透過するシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン製、ZEONEX(登録商標))からなる光学用樹脂膜8を配置した。
【0042】
図7は、60GHzで取得したシンガポールドル紙幣2aを反射波22の二次元の強度分布の一例を示す図であり、(a)は二次元の強度分布、(b)は(a)のA−A’方向の強度分布、(c)は(a)のB−B’方向の強度分布である。
【0043】
最初に、シンガポールドル紙幣2aにTHz波を照射したときの反射波22の二次元の強度分布を取得した。
次に、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aを貼り付けた場合の反射波22aの二次元の強度分布を取得した。
図7(a)は、シンガポールドル紙幣2aだけの反射波22の二次元の強度分布と、メンディングテープ7aを貼り付けた場合の反射波22aの二次元の強度分布とを比較した強度分布を8レベルの等高線で表した図である。
図7(a)では、色が濃い箇所が透過波4の強度が増加している箇所であり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aを貼り付けた4箇所に対応している。
【0044】
図7(b)に示すA−A’方向(X方向)の一次元の強度分布は、メンディングテープ7aのシンガポールドル紙幣2aの幅方向の強度分布であり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、反射波22aの強度が高いことが分かる。
【0045】
図7(c)に示すB−B’方向の強度分布は、メンディングテープ7aのシンガポールドル紙幣2aの幅方向に垂直な方向(Y方向)の強度分布であり、メンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、反射波22aの強度が高くなり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられていない箇所では、反射波22aの強度が低くなることが分かる。
【0046】
透過波4や反射波22の強度は、紙葉類2の厚さや材質、異物7の厚さや材質等で変化する。また、透過波4や反射波22の強度は、用いるTHz波の周波数や偏光方向、紙葉類2へのTHz波の入射角度により変化する。従って、検査する紙葉類2や検出する異物7に応じて、用いる周波数、偏光、紙葉類2への入射角度の何れか又はこれらの組み合わせにより調整することが望ましい。THz波発振器3aは、紙葉類2を変えた場合に、各紙葉類2に最適なTHz波を発生できるように、複数の周波数を発生できるTHz発振器を備えてもよい。紙葉類2に入射されるTHz波の偏光に合わせて、THz波検知部5の偏光状態も感度が良く検出されるように調整すればよい。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態として、紙葉類2を幅方向に垂直な方向(Y方向)に搬送させながら走査して、紙葉類2に付着した異物7を検査できるTHz帯を用いた検査装置30について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係るTHz帯を用いた検査装置30を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図8に示すように、本発明のTHz帯を用いた検査装置30は、紙葉類2を搬送する紙葉類搬送部32と、紙葉類搬送部32の移動方向と直交する方向にTHz波を照射するTHz波照射部33と、紙葉類2に照射されたTHz波の透過波34を検出するTHz波検知部35と、紙葉類搬送部32の搬送方向と直交する方向にTHz波が照射された紙葉類2の透過波34の強度データから、紙葉類2の透過波34の強度分布を得る情報処理部40と、を含んで構成されている。
【0048】
図8に示すように、THz波照射部33は、THz波発振器33aと、THz波発振器33aから照射されるTHz波33cを走査する走査素子33dを含んで構成されている。THz波発振器33aはガンダイオードを用いた発振器からのTHz波33aが、レンズ33e等で集光され、走査素子33dにより、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に左端から右端まで走査され、さらに、フレネルレンズ33f等を介して、紙葉類搬送部32によって搬送される紙葉類2に照射される。
【0049】
走査素子33dとしては、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、デジタルミラー素子の何れかを用いることができる。
【0050】
フレネルレンズ33fは、走査素子33dにより走査されるTHz波33sを、紙葉類2に垂直に対してやや角度を付けた入射角(θ)を持って、平行な透過光34として照射する機能を有している。ここで、垂直に対してやや角度を付けた入射角とは、好ましくは、上述したように数°〜50°、さらに好ましくは概ね10°〜50°である。
【0051】
紙葉類2を透過したTHz波34は、集光用光学部品35aと、レンズ35bを介してショットキーバリヤダイオード等からなるTHz波検知素子35cで検知される。レンズ35bとしては、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ等や鏡を用いた集光系を用いることができる。鏡としては、半透鏡や放物面鏡等を用いることができる。
【0052】
集光用光学部品35aとしては、フレネルレンズ等を用いることができる。フレネルレンズは、紙葉類2を所定の角度で透過し平行な透過光となったTHz波34を、レンズ35bに集光する機能を有している。
【0053】
紙葉類搬送部32は、紙葉類2を搬送する図示しない搬送機構を含んで構成されている。紙葉類搬送部32は、紙葉類2がTHz波により走査されるX方向に垂直な方向、つまり、紙葉類2のY方向(
図2参照)に紙葉類2を搬送する。紙葉類搬送部32では、紙葉類2の搬送のための部材の材料そして、樹脂やガラス38を用いることができる。つまり、紙葉類を搬送するために、紙葉類2の上面及び/又は下面には、THz波を透過する材料からなる部材を配設する。ガラス38としては、THz波を透過する無機ガラスや有機ガラスを用いることができる。透過波34や後述する反射波52の強度を上述の屈折率差によるレンズ効果で増大するためには、樹脂やガラス38の屈折率は、紙葉類2の屈折率よりも大きいことが望ましい。走査方向は、紙葉類2のY方向としたが、X方向でもよい。
【0054】
情報処理部40は、紙葉類2に異物7の付着のない紙葉類2を検出したときの透過波34の二次元強度分布と、検査時に異物7が付着した紙葉類2を検出したときの透過波34aの二次元強度分布とを比較することで、紙葉類2に異物7が付着しているか否かを検出することができる。
【0055】
図9は、本発明の第2実施形態に係るTHz帯を用いた別の検査装置50を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
図9に示すTHz帯を用いた別の検査装置50が、
図8に示すTHz帯を用いた検査装置30と異なるのは、THz波の反射波52を検知している点である。THz波の反射波52を検出するTHz波検知部55は、紙葉類2を反射したTHz透過波52の集光用光学部品55aと、レンズ55bを介してショットキーバリヤダイオード等からなるTHz波の反射波52を検出するTHz波検知素子55cで検知される。THz波検知部55の構成は、
図8のTHz波検知部35と同様であるが、紙葉類搬送部32の上部側に配設されている。他の構成は、
図8に示したTHz帯を用いた検査装置30と同じであるので、説明は省略する。
【0056】
図8、
図9の第2実施形態に係るTHz帯を用いた検査装置30,50においては、情報処理部40は、THz帯を用いた検査装置1、20と同様に、マイクロプロッセッサ、マイクロコントローラやパーソナルコンピュータ(PC)を含んで構成されている。THz波検知部55からの出力は、A/D変換器40aや入出力インターフェース(I/O)40bを介してマイクロプロッセッサやパーソナルコンピュータに入力される。情報処理部40は、さらに、ディスプレイ40cや記憶装置40dを備えてもよい。
【0057】
情報処理部40には、THz波検知部55からの出力と、紙葉類搬送部32からの紙葉類2の搬送位置等に関する情報が入力される。
【0058】
紙葉類搬送部32は、THz波照射部33から照射されるTH
z波が、紙葉類2の幅方向(X方向)を左端から右端迄走査すると、紙葉類2を、次の走査位置に搬送する。つまり、紙葉類2は次の走査位置となるY方向に移動する。この紙葉類2の移動は、図示しないベルトとモータによる搬送機構やステップモータを用いた搬送機構により行うことができる。
【0059】
各紙葉類2のY方向の搬送は、走査される位置を紙葉類2が通過するか否かで判定してもよい。紙葉類2のY方向への通過は、紙葉類搬送部32に備えたフォトカップラやフォトインタラプタにより検出することができる。
【0060】
紙葉類2のY方向への通過が、紙葉類の一端から他端まで行われると、それまでに、出力されたTHz透過波34または反射波52の強度信号から紙葉類2で透過または反射されたTHz波の二次元強度分布が計算される。
【0061】
このように、情報処理部40には、THz波検知部35、55からの出力と、紙葉類搬送部32からの紙葉類2の搬送位置等に関する情報が、紙葉類搬送部32の制御回路32aから入力され、紙葉類搬送部32を通過する紙葉類2からのTHz波の透過波34または反射波52による二次元強度分布を出力する。
【0062】
紙葉類搬送部32を通過する紙葉類2からのTHz波の透過波34や反射波52による二次元強度分布により、正常な紙葉類2ではないと判断された場合には、異常が判定されたとして、回収部において、回収してもよい。
【0063】
本発明のTHz帯を用いた検査装置30,50によれば、1台のTHz波発振器33aにより紙葉類2の一辺(X方向)を走査し、他の辺(Y)の方向に順次紙葉類2を移動すれば、紙葉類2に入射される二次元の透過波34や反射波52の二次元強度分布から紙葉類2に付着した異物7の検出を、非接触で高速及び高効率に容易に行うことができ、かつ、低コストである。従って、1台のTHz波発振器33aにより紙葉類2の一辺を走査できるので、走査のために複数のTHz波発振器やTHz波検知器が不要となる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、複数のTHz波発振器又は複数のTHz波検知器を使用したTHz帯を用いた検査装置について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係るTHz帯を用いた検査装置60を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図10に示すTHz帯を用いた検査装置60は、
図8に示すTHz帯を用いた検査装置30と同様に透過波34を検出する構成であるが、複数のTHz波発振器からなるTHz波照射部63を備えている点で異なっている。他の構成は、
図8に示したTHz帯を用いた検査装置30と同じであるので、説明は省略する。
【0065】
具体的には、THz波照射部63は、複数のTHz波発振器63a,63b,63c,63dと、複数のTHz波発振器63と紙葉類搬送部32との間に挿入されるレンズ63eを含んで構成されている。各THz波発振器63a,63b,63c,63dからのTHz波が、対応する各レンズ63eで集光され、紙葉類搬送部32によって搬送される紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に照射される。
【0066】
複数のTHz波発振器63a,63b,63c,63dは、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に所定の順にパルス発振をするように、情報処理部40により制御されてもよい。例えば、THz波発振器63a,63b,63c,63dの順にパルス発振をさせて、次に紙葉類2を搬送方向(
図2のY方向)に所定の距離を搬送した後に、再度、THz波発振器63a,63b,63c,63dを順にパルス発振をさせる。この操作を繰り返すことにより、紙葉類2を二次元で走査することができる。
【0067】
THz波検知部65の構成は、
図8のTHz波検知部35と同様に構成されており、フレネルレンズ等からなる集光用光学部品65aと、レンズ65bを介してショットキーバリヤダイオード65c等からなるTHz波検知部65で検知される。他の構成は、
図8に示したTHz帯を用いた検査装置30と同じであるので、説明は省略する。
【0068】
THz波検知部65においては、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に配設された各THz波発振器63a,63b,63c,63dからのTHz波の透過波34が順に入射され、紙葉類2を二次元で走査することによりTHz波の透過波34の二次元の信号分布が得られる。
【0069】
THz帯を用いた検査装置60によれば、THz波照射部63が複数のTHz波発振器63a,63b,63c,63dと複数のレンズ63eとから構成され、走査素子を含まない構成であるので、小型化が図られる。さらに、駆動部を有している走査素子を用いないので信頼性が向上する。
【0070】
(第3実施形態の変形例1)
図11は、本発明の第3実施形態の変形例1に係るTHz帯を用いた検査装置70を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
図11に示すTHz帯を用いた検査装置70が、
図9に示すTHz帯を用いた検査装置50と同様に反射波52を検出する構成であるが、複数のTHz波発振器からなるTHz波照射部73を備えている点で異なっている。他の構成は、
図9に示したTHz帯を用いた検査装置50と同じであるので、説明は省略する。
【0071】
具体的には、THz波照射部73は、複数のTHz波発振器73a,73b,73c,73dと、複数のTHz波発振器73と紙葉類搬送部32との間に挿入されるレンズ73eを含んで構成されている。各THz波発振器73a,73b,73c,73dからのTHz波が、レンズ73eで集光され、紙葉類搬送部32によって搬送される紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に照射される。
【0072】
複数のTHz波発振器73a,73b,73c,73dは、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に順にパルス発振をするように、情報処理部40により制御されてもよい。例えば、THz波発振器73a,73b,73c,73dの順にパルス発振をさせて、次に紙葉類2を搬送方向(
図2のY方向)に所定の距離を搬送した後に、再度、THz波発振器73a,73b,73c,73dを順にパルス発振をさせる。この操作を繰り返すことにより、紙葉類2を二次元で走査することができる。
【0073】
THz波検知部75の構成は、
図8のTHz波検知部35と同様にフレネルレンズ等からなる集光用光学部品75aと、レンズ75bと、ショットキーバリヤダイオード75cを使用しているが、THz波の反射波52を検出するようにTHz波検知部75は、紙葉類搬送部32の上方に配設されている。
【0074】
THz波検知部75においては、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に配設された各THz波発振器73a,73b,73c,73dからのTHz波の反射波52が順に入射され、紙葉類2を二次元で走査することによりTHz波の反射波52の二次元の信号分布が得られる。
【0075】
THz帯を用いた検査装置70によれば、THz波照射部73が複数のTHz波発振器73a,73b,73c,73dと複数のレンズ73eとから構成され、走査素子を含まない構成であるので、小型化が図られ、また、駆動部を有している走査素子を用いないので、信頼性が向上する。
【0076】
THz帯を用いた検査装置70では、紙葉類2の表面からのTHz波の反射波52を検出するようにしたが、さらに紙葉類2の裏面からのTHz波の反射波を検出するために、別のTHz波照射部73及びTHz波検知部75を、紙葉類搬送部72の下部側にさらに設けてもよい。
【0077】
(第3実施形態の変形例2)
図12は、本発明の第3実施形態の変形例2に係るTHz帯を用いた検査装置80を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図12に示すTHz帯を用いた検査装置80は、
図8に示すTHz帯を用いた検査装置30と同様に透過波34を検出する構成を有している。THz波照射部83は
図8に示すTHz
帯を用いた検査装置30と同様に構成されているが、THz波検知部85が複数のTHz波検知素子85a,85b,85c,85dを備えている点で
図8に示すTHz帯を用いた検査装置30とは異なっている。
【0078】
THz波検知部85は、紙葉類搬送部32の下方に配設され、THz波が走査されて紙葉類2を透過する位置に対応して、複数のレンズ85eと複数のショットキーバリヤダイオード85a,85b,85c,85dとが配設されている。
【0079】
本発明のTHz帯を用いた検査装置80によれば、1台のTHz波発振器83aにより紙葉類2の一辺(X方向)を走査し、紙葉類を透過したTHz波が、各ショットキーバリヤダイオード85a,85b,85c,85dで検知される。他の辺(Y)の方向に順次紙葉類2を移動すれば、紙葉類2に入射される二次元の透過波34の二次元強度分布から紙葉類2に付着した異物7の検出を、非接触で高速及び高効率に容易に行うことができる。
【0080】
本発明のTHz帯を用いた検査装置80によれば、THz波検知部85は、複数のTHz波検知素子85a,85b,85c,85dと複数のレンズ85eを使用するが、フレネルレンズのような光学部品を使用しないので、小型化が図れる。
【0081】
(第3実施形態の変形例3)
図13は、本発明の第3実施形態の変形例3に係るTHz帯を用いた検査装置90を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
図13に示すTHz帯を用いた検査装置90は、
図9に示すTHz帯を用いた検査装置50と同様に反射波52を検出する構成を有している。THz波照射部93は
図9に示すTHz帯を用いた検査装置50と同様に構成されているが、THz波検知部95が複数のTHz波検知素子95a,95b,95c,95dを備えている点で
図9に示すTHz帯を用いた検査装置50とは異なっている。
【0082】
THz波検知部95は、反射波52を検出するために紙葉類搬送部32の上方に配設され、走査される反射波52の位置に複数のレンズ95eと、複数のショットキーバリヤダイオード95a,95b,95c,95dとが配設されている。
【0083】
本発明のTHz帯を用いた検査装置90によれば、1台のTHz波発振器93aにより紙葉類2の一辺(X方向)を走査し、紙葉類で反射したTHz波が、各ショットキーバリヤダイオード95a,95b,95c,95dで検知される。他の辺(Y)の方向に順次紙葉類2を移動すれば、紙葉類で反射される反射波52の二次元強度分布から紙葉類2に付着した異物7の検出を、非接触で高速及び高効率に容易に行うことができる。
【0084】
本発明のTHz帯を用いた検査装置90によれば、THz波検知部95は、複数のTHz波検知素子95a,95b,95c,95dと複数のレンズ95eを使用するが、フレネルレンズのような光学部品を使用しないので、小型化が図れる。
【0085】
THz帯を用いた検査装置90では、紙葉類2の表面からの反射波52を検出するよう構成したが、紙葉類2の裏面からの反射波を検出するために、別のTHz波照射部93及びTHz波検知部95を、紙葉類搬送部32の下部側にさらに設けてもよい。
【0086】
(第3実施形態の変形例4)
図14は、本発明の第3実施形態の変形例4に係るTHz帯を用いた検査装置100を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図14に示すTHz帯を用いた検査装置100は、
図8に示すTHz帯を用いた検査装置30と同様に透過波34を検出する構成を有しており、紙葉類搬送部32の上方に配設される複数のTHz波発振器103a,103b,103c,103d,103eからなるTHz波照射部103と、複数のTHz波検知器105a,105b,105c,105d,105eからなるTHz波検知部105等を含んで構成されている。
【0087】
具体的には、THz波照射部103は、
図10に示すTHz帯を用いた検査装置60と同様に、複数
のTHz波発振器103a,103b,103c,103d,103eと、該THz波発振器103a,103b,103c,103d,103eと紙葉類搬送部
32との間に配設される対応する複数のレンズ103fから構成されている。
【0088】
THz波検知部105は、
図12に示すTHz帯を用いた検査装置80と同様に、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)の透過波34が照射される各位置に複数のレンズ105fと、複数のショットキーバリヤダイオード105a,105b,105c,105d,105eとが配設されている。
【0089】
複数のTHz波発振器103a,103b,103c,103d,103eは、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に所定に順にパルス発振をするように、情報処理部40により制御されてもよい。例えば、THz波発振器103a,103b,103c,103d,103eの順にパルス発振をさせて、次に紙葉類2を搬送方向(
図2のY方向)に所定の距離を搬送した後に、再度、THz波発振器103a,103b,103c,103d,103eを順にパルス発振をさせる。この操作を繰り返すことにより、紙葉類2を二次元で走査することができる。
【0090】
THz波検知部105においては、紙葉類2の幅方向(
図2のX方向)に配設された各THz波発振器103a,103b,103c,103d,103eからのTHz波の透過波34が対応するTHz波検知素子105a,105b,105c,105d,105eに入射され、紙葉類2を二次元で走査することによりTHz波の透過波34の二次元の信号分布が得られる。
【0091】
THz帯を用いた検査装置100によれば、THz波照射部103が複数のTHz波発振器103a,103b,103c,103d,103eと複数のレンズ103fとから構成され、走査素子を含まない構成であるので、小型化が図られる。さらに、駆動部を有している走査素子を用いないので信頼性が向上する。また、THz波検知部105が複数のTHz波検知器105a,105b,105c,105d,105eと複数のレンズ105fとから構成され、集光用光学部品を含まない構成であるので、小型化が図られると共に、信頼性が向上する。
【0092】
(第3実施形態の変形例5)
図15は、本発明の第3実施形態の変形例5に係るTHz帯を用いた検査装置110を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
図15に示すTHz帯を用いた検査装置110は、
図11に示すTHz帯を用いた検査装置70と同様に反射波52を検出する構成を有しており、紙葉類2の表面側及び裏面側を検査するために、第1及び第2のTHz波照射部113A,113Bと、第1及び第2のTHz波検知部115A,115B等を含んで構成されている。
【0093】
第1のTHz波照射部113Aは、
図11に示すTHz波照射部73と同様に構成されており、THz波発振器113a,113b,113c,113d,113eと複数のレンズ113fとを含んで構成されている。同様に、第2のTHz波照射部113Bは、THz波発振器113a’,113b’,113c’,113d’,113e’と複数のレンズ113fとを含んで構成されている。
【0094】
第1のTHz波検知部115Aは、
図14に示すTHz波検知部105と同様に構成されており、THz波検知素子115a,115b,115c,115d,115eと複数のレンズ115fとを含んで構成されている。同様に、第2のTHz波検知部115Bは、THz波検知素子115a’,115b’,115c’,115d’,115e’と複数のレンズ115fとを含んで構成されている。
【0095】
紙葉類2の表面側及び裏面側を検査するために、制御部40は第1及び第2のTHz波照射部113A,113Bを制御し、第1及び第2のTHz波照射部113A,113Bからの照射タイミング信号が入力される。
【0096】
紙葉類2の上方を紙葉類2の表面とした場合、第1のTHz波照射部113Aから照射されて紙葉類2の表面で反射したTHz波は、第1のTHz波検知部115Aにより検知される。
【0097】
これにより、紙葉類2の表面にある異物7は、第1のTHz波照射部113Aから照射され紙葉類2の表面で反射したTHz波が、第1のTHz波検知部115Aにより検知されて、制御部40によりTHz帯の反射波52の二次元の強度分布が取得される。
【0098】
紙葉類搬送部32の下部に配設された第2のTHz波照射部113BからTHz波が照射される。紙葉類2の裏面で反射したTHz波は、第2のTHz波検知部115Bにより検知される。これにより、紙葉類2の裏面にある異物7は、第2のTHz波照射部113Bから照射され紙葉類2の裏面で反射したTHz波が、第2のTHz波検知部115Bにより検知されて、制御部40によりTHz帯の反射波52の二次元の強度分布が取得される。
【0099】
THz帯を用いた検査装置110によれば、紙葉類2の表面及び裏面に貼り付けされた異物7を検出することができる。
なお、第1のTHz波照射部113aによるTHz波の照射と第1のTHz波検知部115aによるTHz反射波の検出及び第2のTHz波照射部113bによるTHz波の照射と第2のTHz波検知部115bによるTHz反射波の検出は、所定の順で照射と検知を繰り返す。
【0100】
THz帯を用いた検査装置110によれば、第1及び第2のTHz波照射部113A,113B及び第1及び第2のTHz波検知部115A,115Bが、走査素子を含まない構成であるので小型化が図られると共に、駆動部を有している走査素子を用いないので信頼性が向上する。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0101】
(透過波の検出における階調の効果)
図2〜3で説明した90GHzの透過波4を用いた検査装置1における、二次元強度分布における階調の効果について説明する。
図16は、90GHzの透過波4を用いた検査装置1で取得したシンガポールドル紙幣2aを透過した90GHzの二次元の強度分布の等高線レベル数16を示す図であり、(a)は二次元の強度分布、(b)はA−A’方向の強度分布、(c)はB−B’方向の強度分布である。シンガポールドル紙幣2aへのTHz波の照射条件は、
図2と同様に、90GHzを用い、シンガポールドル紙幣2aだけの場合と、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aを貼り付けた場合の透過波4の強度の差を、THz波の二次元の強度分布として得た。
【0102】
図16(b)に示すA−A’方向の強度分布は、メンディングテープ7aのシンガポールドル紙幣2aの幅方向(X方向)の強度分布であり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、透過波4aの強度が高いことが分かる。THz波の二次元の強度分布では、等高線レベル数が16であるので、メンディングテープ7a内の透過波4aの強度分布も判別できる。
【0103】
図16(c)に示すB−B’方向の強度分布は、メンディングテープ7aのシンガポールドル紙幣2aの幅方向に垂直な方向(Y方向)の強度分布であり、メンディングテープ7aが貼り付けられた箇所では、透過波4aの強度が高くなり、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aが貼り付けられていない箇所では、透過波4aの強度が低くなることが分かる。
【0104】
図17は、90GHzの透過波4を用いた検査装置1で取得したシンガポールドル紙幣2aを透過した90GHz波の二次元の強度分布の等高線レベル数6を示す図であり、(a)は二次元の強度分布、(b)はA−A’方向の強度分布、(c)はB−B’方向の強度分布である。
図17に示すように、90GHzの二次元の強度分布では、等高線レベル数が6であるので、メンディングテープ7aの位置が一目で判別できる。従って、シンガポールドル紙幣2aにメンディングテープ7aのような異物7があるかないかの判別をする場合には、
図17に示すように、等高線レベル数を6としても十分であることが分かる。
【0105】
(入射角度を0°〜35°まで変えたときの透過波強度関係)
90GHzにおいて、紙葉類に入射させる角度(θ)を、0°〜35°まで変えたときの透過波4の強度を測定した。
図18は、コピー用紙におけるテープの貼り付け位置(Y方向貼り付け)を説明する図である。
図18に示すように、紙葉類2をコピー用紙2bとし、コピー用紙2bの長手方向(Y方向)に平行に、幅18mmのメンディングテープ7aと幅10mmのセロハンテープ7bを貼り付けた。
図1、2、3で説明した90GHzの透過波の測定と同様に、入射角度を0°〜35°まで変えたときの透過波の二次元強度を測定した。
【0106】
図19は、
図18のようにコピー用紙にメンディングテープとセロハンテープを平行に貼り付け、90GHzの透過波の入射角度を変えたときの透過波の二次元強度であり、(a)が0°及び5°、(b)が10°及び15°、(c)が20°及び25°、(d)が30°及び35°を示す図である。
5°〜35°の座標は、
0°の場合と同様である。図において、透過波強度は黒い箇所が強く、白い箇所が弱いことを示している。
図19から明らかなように、入射角度が0°の垂直入射と5°の場合にはメンディングテープ7a及びセロハンテープ7bからの透過波の強度が弱く判別し難いことがわかる。一方、入射角度が10°以上では、メンディングテープ7a及びセロハンテープ7bからの透過波の強度が増大し、一目でこれらのテープが貼り付けられていることが分かる。
上述したように、垂直入射又は垂直入射に近い場合には、紙葉類2からの反射波と入射波の干渉による透過強度の周期的な強度パターンが現れ、貼付物7を識別する際の障害となるので好ましくない。
図19の結果からも入射角度(θ)は、概ね10°以上が好ましい。
【0107】
(入射角度と透過波強度との関係)
90GHzのTHz波を、紙葉類に入射させる角度(θ)を変えたときの透過波4の強度を測定した。
図20は、コピー用紙2bにおけるテープの貼り付け位置(X方向貼り付け)を説明する図である。
図20に示すように、紙葉類2をコピー用紙2bとし、その両面に、40mm×15mm及び10mm×15mmのセロハンテープ7aと、50mm×18mmと5mm×18mmのメンディングテープ7bが、X方向(方向)に平行に貼られている。
【0108】
図21は、入射角度が15°でY方向偏光における
図20に示すコピー用紙2bを透過した90GHzの二次元の強度分布を示す図である。コピー用紙2bへのTHz波の照射条件は、
図1と同様に、90GHzを用い、コピー用紙2bだけの場合と、コピー用紙2bにテープを貼り付けた場合の透過波4の強度の差を、THz波の二次元の強度分布として得た。ガンダイオードを用いた発振器3aと、ショットキーバリヤダイオード5cの導波路の向きは、同じ偏光方向となるように設定した。ガンダイオードを用いた発振器3aとショットキーバリヤダイオード5cの導波路は、何れも導波管と導波管に接続されるホーンアンテナを用いた。
図21に示すように、入射角度が15°の場合のTHz波の二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が明瞭に判別できる。
図21の等高線レベル数が8及び4の座標は、等高線レベル数が12の場合と同じである。他の図も、特に断らない限り同様である。
【0109】
図22は、入射角度が45°でY方向偏光における
図20に示すコピー用紙2bを透過した90GHzの二次元の強度分布を示す図である。測定条件は、入射角度を45°にした以外は、
図21と同じである。
図22に示すように、入射角度が45°の場合の90GHzの二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が明瞭に判別できる。
【0110】
図21及び
図22から得られた90GHzの二次元の強度分布は、入射角度を、15°と45°と変えることで変化し、等高線レベル数が4の場合でも、コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が明瞭に判別できることが判明した。
【0111】
(偏光の効果)
THz波を紙葉類2へ照射するときに偏光を変えたときの透過波強度を測定した。
コピー用紙2bにおけるテープの貼り付け位置は、
図20と同じであり、偏光方向を
図21の場合に比較して、垂直方向(90°)にずらしたX方向偏光とした以外は、
図21と同様にして、コピー用紙2bを透過したTHz波の二次元の強度分布を測定した。
【0112】
図23は、入射角度が15°でX方向偏光における
図20に示すコピー用紙2bを透過したTHz波の二次元の強度分布を示す図である。
図23に示すように、入射角度が15°の場合のTHz波の二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が判別はできるが、
図21よりも判別し難いことが分かった。つまり、
図21とは異なるTHz波の二次元の強度分布が得られた。これにより、コピー用紙2bに入射するTHz波の偏光方向の制御によりコピー用紙2bを透過するTHz波の二次元の強度分布が変化することが分かる。
【0113】
図24は、入射角度が45°でX方向偏光における
図20に示すコピー用紙2bを透過したTHz波の二次元の強度分布を示す図である。
図24に示すように、入射角度が45°の場合のTHz波の二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が判別はできるが、
図22よりも判別し難いことが分かった。つまり、
図22とは異なるTHz波の二次元の強度分布が得られた。これにより、コピー用紙2bに入射するTHz波の偏光方向の制御によりコピー用紙2bを透過するTHz波の二次元の強度分布が変化することが分かる。
【0114】
図23及び
図24から得られたTHz波の二次元の強度分布は、
図21及び
図22のY方向偏光の場合のデータとは明らかに異なり、コピー用紙2bに入射されるTHz波の偏光方向により変化することが判明した。
【実施例2】
【0115】
(90GHzにおける反射測定)
次に、90GHzにおける反射測定をした実施例2について説明する。
THz波発振器3aとしては、90GHzの連続発振(CW発振)のガンダイオード発振器を使用し、紙葉類2の紙面垂直方向から45°の方向から入射させ、反射波22を測定した。ガンダイオードを用いた発振器3aと、ショットキーバリヤダイオード5cの導波路の向きは、
図23と同じ偏光方向である。
【0116】
図25は、入射角度が45°でX方向偏光における
図18に示すコピー用紙2bを反射した90GHzの二次元の強度分布を示す図である。テープの貼り付け箇所は、
図18と同様である。
図18に示すように、紙葉類2をコピー用紙2bとし、その両面に、10mm×70mmの大きさのセロハンテープ7bと18mm×70mmの大きさのメンディングテープ7aが貼り付けられている。走査範囲は70mm(X方向)×70mm(Y方向)であり、反射波22の強度分布を2mm毎に測定した。
【0117】
図25に示すように、入射角度が45°の場合の90GHz波の反射波22の二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、90GHz波のテープからの反射波22の強度は、コピー用紙2bからの反射波22の強度より弱くなった。コピー用紙2bに貼り付けられたテープの存在が明瞭に判別できるが、テープからの反射強度は、60GHzの場合とは異なりコピー用紙2bからの反射強度よりも弱くなることが分かった。
【実施例3】
【0118】
(140GHzにおける透過測定)
次に、140GHzにおける透過測定をした実施例3について説明する。
THz波発振器3aとしては、140GHzの連続発振(CW発振)のIMPATTダイオードを用いた発振器(ELVA−1社製、モデルCIDO−06/140/20)を使用し、紙葉類2の紙面垂直方向から15°の方向から入射させ、透過波4を測定した。出力は大凡10mWである。IMPATTダイオードを用いた発振器3aと、ショットキーバリヤダイオード5c(ELVA−1社製、モデルZBD−06)の導波路の向きは、
図21と同じ偏光方向である。他の条件は、90GHzの透過波4の測定と同様である。
【0119】
紙葉類2を上質紙とし、その両面に、
図18と同様の位置に、10mm×70mmの大きさのセロハンテープ7bと18mm×70mmの大きさのメンディングテープ7aを、長手方向がY方向となるように貼った。走査範囲は70mm(X方向)×70mm(Y方向)であり、透過波4aの強度分布を2mm毎に測定した。
【0120】
図26は、入射角度が15°でY方向偏光における
図18に示すテープを貼り付けた上質紙を透過した140GHzの二次元の強度分布を示す図である。
図26の座標は、紙面上下方向がX方向であり、紙面左右方向がY方向である。
図26に示すように、入射角度が15°の場合の140GHz波の透過波4aの二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、90GHzにおけるテープからの透過波4aの強度はコピー用紙2bの透過波4aの強度よりも強かったが、140GHz波のテープからの透過波4aの強度は、上質紙からの透過波4の強度より弱くなった。等高線レベル数が4の場合には、Y方向に貼られたセロハンテープ7bとメンディングテープ7aの位置が明瞭に分かる。上質紙に貼り付けられたテープの存在が明瞭に判別できるが、テープからの透過波の強度は、90GHzの場合とは異なり上質紙からの透過波の強度よりも弱くなることが分かった。
【0121】
図26の結果から、コピー用紙や上質紙に照射するTHz波の周波数が変わることにより、コピー用紙や上質紙からの透過波の強度とコピー用紙や上質紙に貼られたテープの透過波の強度の関係は変わるが、その存在は明瞭に判別できることがわかる。
【実施例4】
【0122】
(140GHzにおける反射測定)
次に、140GHzにおける反射測定をした実施例4について説明する。
140GHzにおける反射測定は、紙葉類2の紙面垂直方向から45°の方向から入射させ、反射波22の測定をする以外は、90GHzの反射に係る実施例2と同様である。IMPATTダイオードを用いた発振器3aと、ショットキーバリヤダイオード5cの導波路の向きは、
図21に示す透過波の測定と同じ偏光方向である。
図18のように上質紙の両面には、10mm×70mmの大きさのセロハンテープ7bと18mm×70mmの大きさのメンディングテープ7aが貼られている。走査範囲は70mm(X方向)×70mm(Y方向)であり、反射波22の強度分布を2mm毎に測定した。
【0123】
図27は、上質紙を反射した140GHzの二次元の強度分布を示す図である。
図27に示すように、入射角度が45°の場合の140GHz波の反射波22の二次元の強度分布では、等高線レベル数が12、8、4の何れの場合でも、60GHzにおけるテープからの反射波22の強度はコピー用紙2bの反射波22の強度よりも強かったが、140GHz波のテープからの反射波22の強度は、上質紙2bからの反射波22の強度より弱くなった。上質紙に貼り付けられたセロハンテープ7bとメンディングテープ7aの存在が明瞭に判別できるが、これらのテープからの反射強度は、60GHzの場合とは異なり上質紙からの反射強度よりも弱くなることが分かった。
【0124】
IMPATTダイオードを用いた発振器3aとショットキーバリヤダイオード5cの偏光を90°回転した場合の、反射測定を行った。この場合は、
図27に示す反射波22の二次元の強度分布と類似したデータが得られた。
【0125】
図27の結果から、コピー用紙や上質紙に照射するTHz波の周波数が変わることにより、コピー用紙や上質紙からの反射波の強度とコピー用紙や上質紙に貼られたテープの反射波の強度の関係は変わるが、その存在は明瞭に判別できることがわかる。
【0126】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。