(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
導電性粒子の平均粒子径は、導電性粒子の電子顕微鏡像から30個の導電性粒子を無作為に選び、それぞれの導電性粒子について、最小径および最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一粒子の粒子径とし、測定した30個の導電性粒子の粒子径を算術平均して得た値である。
導電性繊維の平均繊維長は、導電性繊維の電子顕微鏡像から30本の導電性繊維を無作為に選び、それぞれの導電性繊維について、繊維長を測定し、測定した30本の導電性繊維の繊維長を算術平均して得た値である。
導電性繊維の平均繊維径は、導電性繊維の電子顕微鏡像から30本の導電性繊維を無作為に選び、それぞれの導電性繊維について、最小径および最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一繊維の繊維径とし、測定した30本の導電性繊維の繊維径を算術平均して得た値である。
導電性粒子および導電性繊維の比表面積は、脱気した粒子等を液体窒素に浸漬させ、吸着した窒素量を測定し、この値から算出した値である。
フィルム(離型フィルム、絶縁フィルム等)、塗膜(絶縁性保護層、導電性接着剤層等)、金属薄膜層等の厚さは、透過型電子顕微鏡を用いて測定対象の断面を観察し、5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
貯蔵弾性率は、測定対象に与えた応力と検出した歪から算出され、温度または時間の関数として出力する動的粘弾性測定装置を用いて、粘弾性特性の一つとして測定される。
表面抵抗は、石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、この電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を0.049Nの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で測定される電極間の抵抗である。
【0012】
<電磁波シールドフィルム>
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム10は、絶縁性保護層12と、絶縁性保護層12の第1の表面を覆う金属薄膜層14と、金属薄膜層14の表面を覆う等方導電性接着剤層16と、絶縁性保護層12の第2の表面を覆う第1の離型フィルム18と、等方導電性接着剤層16の表面を覆う第2の離型フィルム20とを備える。
【0013】
(絶縁性保護層)
絶縁性保護層12は、金属薄膜層14を形成する際のベース(下地)となり、電磁波シールドフィルム10を、フレキシブルプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に貼着した後には、金属薄膜層14を保護する。
絶縁性保護層12の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10
6Ω以上が好ましい。絶縁性保護層12の表面抵抗は、実用上の点から、1×10
19Ω以下が好ましい。
【0014】
絶縁性保護層12としては、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、硬化させて形成された塗膜、熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布して形成された塗膜、熱可塑性樹脂を溶融成形したフィルムからなる層等が挙げられる。ハンダ付け等の際の耐熱性の点から、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、硬化させて形成された塗膜が好ましい。
【0015】
熱硬化性樹脂としては、アミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、UV硬化アクリレート樹脂等が挙げられ、耐熱性に優れる点から、アミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
絶縁性保護層12の160℃における貯蔵弾性率は、5×10
6〜1×10
8Paが好ましく、8×10
6〜2×10
7Paがより好ましい。通常、熱硬化性樹脂の硬化物は硬いため、これからなる塗膜は、柔軟性に乏しく、特に、厚さを薄くした場合は、非常に脆く自立膜として存在できるほどの強度がない。絶縁性保護層12は、第1の離型フィルム18を剥離する際の温度下(導電性接着剤を硬化させる温度で、通常150〜200℃の温度)において、十分な強度を有することが好ましい。絶縁性保護層12の160℃における貯蔵弾性率が5×10
6Pa以上であれば、絶縁性保護層12が軟化することがない。絶縁性保護層12の160℃における貯蔵弾性率が1×10
8Pa以下であれば、柔軟性や強度が十分となる。その結果、第1の離型フィルム18を剥離する際に絶縁性保護層12はもとより電磁波シールドフィルム10が破断しにくい。
【0017】
絶縁性保護層12は、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板に意匠性を付与するために、着色されていてもよい。
絶縁性保護層12は、貯蔵弾性率等の特性、材料等が異なる2種以上の層から構成されていてもよい。
【0018】
絶縁性保護層12の厚さは、1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。絶縁性保護層12の厚さが1μm以上であれば、耐熱性が良好となる。絶縁性保護層12の厚さが10μm以下であれば、電磁波シールドフィルム10を薄くできる。
【0019】
(金属薄膜層)
金属薄膜層14は、金属の薄膜からなる層である。金属薄膜層14は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波シールド層等として機能する。
【0020】
金属薄膜層14としては、物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着、電子ビーム蒸着等)、CVD、めっき等によって形成された金属薄膜、金属箔等が挙げられ、厚さを薄くでき、かつ厚さが薄くても面方向の導電性に優れ、ドライプロセスにて簡便に形成できる点から、物理蒸着による金属薄膜(蒸着膜)が好ましい。
【0021】
金属薄膜層14を構成する金属薄膜の材料としては、アルミニウム、銀、銅、金、導電性セラミックス等が挙げられる。電気伝導度の点からは、銅が好ましく、化学的安定性の点からは、導電性セラミックスが好ましい。
【0022】
金属薄膜層14の厚さは、0.01〜1μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。金属薄膜層14の厚さが0.01μm以上であれば、面方向の導電性がさらに良好になる。金属薄膜層14の厚さが0.05μm以上であれば、電磁波ノイズの遮蔽効果がさらに良好になる。金属薄膜層14の厚さが1μm以下であれば、電磁波シールドフィルム10を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム10の生産性、可とう性がよくなる。
【0023】
金属薄膜層14の表面抵抗は、0.01〜0.3Ωであり、0.02〜0.2Ωが好ましく、0.05〜0.1Ωがより好ましい。金属薄膜層14の表面抵抗が0.01Ω以上であれば、金属薄膜層14を十分に薄くできる。金属薄膜層14の表面抵抗が0.3Ω以下であれば、電磁波シールド層として十分に機能できる。
【0024】
(等方導電性接着剤層)
等方導電性接着剤層16は、厚さ方向および面方向に導電性を有し、かつ接着性を有する。
等方導電性接着剤層16は、厚さ方向に導電性を有し、面方向に導電性を有しない異方導電性接着剤層に比べ、電磁波シールド層として十分に機能できる。
【0025】
等方導電性接着剤層16は、導電性フィラーを含む。等方導電性接着剤層16は、厚さ方向および面方向の導電性の点から、導電性フィラーとして導電性粒子22を含むことが好ましく、面方向の導電性がさらに良好になり、表面抵抗が低くなる点、また、等方導電性接着剤層16の強度が高くなり、クラックが生じにくい点から、導電性フィラーとして導電性粒子22および導電性繊維24を含むことがより好ましい。
【0026】
また、等方導電性接着剤層16においては、面方向の導電性がさらに良好になり、表面抵抗が低くなる点、また、等方導電性接着剤層16の強度が高くなり、クラックが生じにくい点から、導電性繊維24の繊維方向の向きが、等方導電性接着剤層16の厚さ方向よりも、等方導電性接着剤層16の面方向に偏っている、すなわち導電性繊維24が等方導電性接着剤層16の面方向に配向していることが好ましい。
【0027】
等方導電性接着剤層16としては、硬化後に耐熱性を発揮できる点から、熱硬化性の等方導電性接着剤層が好ましい。
熱硬化性の等方導電性接着剤層16は、例えば、熱硬化性接着剤と導電性粒子22と導電性繊維24とを含む。等方導電性接着剤層16は、未硬化の状態であってもよく、Bステージ化された状態であってもよい。
【0028】
熱硬化性接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、UV硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。耐熱性に優れる点から、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)、粘着付与剤等を含んでいてもよい。
熱硬化性接着剤は、等方導電性接着剤層16の強度を高め、打ち抜き特性を向上させるために、セルロース樹脂、ミクロフィブリル(ガラス繊維等)を含んでいてもよい。
【0029】
導電性粒子22としては、黒鉛粉、焼成カーボン粒子、金属(銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、ハンダ等)の粒子、めっきされた焼成カーボン粒子等が挙げられる。等方導電性接着剤層16の流動性の点からは、堅く球状である焼成カーボン粒子が好ましい。
【0030】
導電性粒子22の平均粒子径は、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。導電性粒子22の平均粒子径が0.1μm以上であれば、導電性粒子22の接触点数が増えることになり、3次元方向の導通性を安定的に高めることができる。導電性粒子22の平均粒子径が10μm以下であれば、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。
【0031】
導電性粒子22の比表面積は、0.2〜50m
2/gが好ましく、0.5〜20m
2/gがより好ましい。導電性粒子22の比表面積が0.2m
2/g以上であれば、導電性粒子22を入手しやすい。導電性粒子22の比表面積が50m
2/g以下であれば、導電性粒子22の吸油量が大きくなりすぎず、その結果、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性がさらに良好となる。また、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)をさらに確保できる。
【0032】
導電性フィラーが導電性粒子22のみの場合、導電性粒子22の割合は、等方導電性接着剤層16の100体積%のうち、30〜80体積%が好ましく、50〜70体積%がより好ましい。導電性粒子22の割合が30体積%以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性が安定化する。導電性粒子22の割合が80体積%以下であれば、等方導電性接着剤層16の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム10の可とう性がよくなる。
【0033】
導電性繊維24としては、カーボンナノファイバ、金属(銅、白金、金、銀、ニッケル等)のナノワイヤ等が挙げられ、等方導電性接着剤層16の厚みがミクロンレベルと薄いことから繊維径の細いカーボンナノファイバが好ましい。カーボンナノファイバとしては、分散性に優れている点、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保する点から、気相法炭素繊維が好ましい。
【0034】
導電性繊維24の平均繊維長は、0.5〜5μmが好ましく、1〜3μmがより好ましい。導電性繊維24の平均繊維長が0.5μm以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性および強度がさらに良好になる。導電性繊維24の平均繊維長が5μm以下であれば、等方導電性接着剤層16の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。
【0035】
導電性繊維24の平均繊維径は、0.01〜0.5μmが好ましく、0.05〜0.3μmがより好ましい。導電性繊維の平均繊維径が0.01μm以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性および強度がさらに良好になる。導電性繊維24の平均繊維径が0.5μm以下であれば、等方導電性接着剤層16の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。
【0036】
導電性繊維24のアスペクト比は、5〜300が好ましく、10〜100がより好ましい。導電性繊維のアスペクト比が5以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性および強度がさらに良好になる。導電性繊維のアスペクト比が300以下であれば、等方導電性接着剤層16の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。
【0037】
導電性繊維24の比表面積は、2〜50m
2/gが好ましく、2〜40m
2/gがより好ましい。導電性繊維24の比表面積が2m
2/g以上であれば、導電性
繊維24を入手しやすい。導電性繊維24の比表面積が50m
2/g以下であれば、導電性繊維24の吸油量が大きくなりすぎず、その結果、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性がさらに良好となる。また、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)をさらに確保できる。
【0038】
導電性フィラーが導電性粒子22および導電性繊維24である場合、導電性繊維24の割合は、等方導電性接着剤層16の100体積%のうち、3〜30体積%が好ましく、5〜20体積%がより好ましい。ただし、導電性粒子22および導電性繊維24の合計は、30〜80体積%(好ましくは50〜70体積%)である。導電性繊維24の割合が3体積%以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性および強度がさらに良好になる。導電性繊維24の割合が30体積%以下であれば、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性が良好となる。また、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を等方導電性接着剤層16で十分に埋めることができる。
【0039】
等方導電性接着剤層16の厚さは、5〜20μmが好ましく、7〜17μmがより好ましい。等方導電性接着剤層16の厚さが5μm以上であれば、等方導電性接着剤層16の導電性がさらに良好になり、電磁波シールド層として十分に機能できる。また、等方導電性接着剤層16の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができ、耐折性も確保でき繰り返し折り曲げても
等方導電性接着剤層16が断裂することはない。等方導電性接着剤層16の厚さが20μm以下であれば、電磁波シールドフィルム10を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム10の可とう性がよくなる。
【0040】
等方導電性接着剤層16の表面抵抗は、1〜100Ωであり、1〜50Ωが好ましく、1〜10Ωがより好ましい。等方導電性接着剤層16の表面抵抗が1Ω以上であれば、等方導電
性接着剤層16の流動性も高く、強度が高く強靭となる。等方導電性接着剤層16の表面抵抗が100Ω以下であれば、金属薄膜層14にクラックが生じても、金属薄膜層14および等方導電性接着剤層16からなる電磁波シールド層の抵抗の上昇が抑えられ、その結果、電磁波シールドフィルム10が、電磁波ノイズの遮蔽効果を維持できる。
【0041】
(第1の離型フィルム)
第1の離型フィルム18は、絶縁性保護層12や金属薄膜層14を形成する際のキャリアフィルムとなるものであり、電磁波シールドフィルム10のハンドリング性を良好にする。第1の離型フィルム18は、電磁波シールドフィルム10をフレキシブルプリント配線板等に貼り付けた後には、絶縁性保護層12から剥離される。
【0042】
第1の離型フィルム18の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられ、電磁波シールドフィルム10を製造する際の耐熱性(寸法安定性)およびコストの点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
第1の離型フィルム18の160℃における貯蔵弾性率は、0.8×10
8〜4×10
8Paが好ましく、0.8×10
8〜3×10
8Paがより好ましい。第1の離型フィルム18の160℃における貯蔵弾性率が0.8×10
8Pa以上であれば、電磁波シールドフィルム10のハンドリング性が良好となる。第1の離型フィルム18の160℃における貯蔵弾性率が4×10
8Pa以下であれば、第1の離型フィルム18の柔軟性が良好となる。
【0044】
第1の離型フィルム18の厚さは、5〜500μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、25〜100μmがさらに好ましい。第1の離型フィルム18の厚さが5μm以上であれば、電磁波シールドフィルム10のハンドリング性が良好となる。また、第1の離型フィルム18がクッション材として十分に働き、フレキシブルプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム10の等方導電性接着剤層16を熱プレスにて貼着する際に、等方導電性接着剤層16が絶縁フィルムの表面の凹凸形状に追随しやすくなる。第1の離型フィルム18の厚さが500μm以下であれば、絶縁フィルムの表面に電磁波シールドフィルム10の等方導電性接着剤層16を熱プレスする際に等方導電性接着剤層16に熱が伝わりやすい。
【0045】
(離型剤層)
離型フィルム本体18aの絶縁性保護層12側の表面に、離型剤による離型処理が施されて、離型剤層18bが形成される。第1の離型フィルム18が離型剤層18bを有することによって、後述する工程(g)において第1の離型フィルム18を絶縁性保護層12から剥離する際に、第1の離型フィルム18が剥離しやすく、絶縁性保護層12や硬化後の等方導電性接着剤層16が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0046】
離型剤層18bの厚さは、0.05〜2.0μmが好ましく、0.1〜1.5μmがより好ましい。離型剤層18bの厚さが前記範囲内であれば、後述する工程(g)において第1の離型フィルム18がさらに剥離しやすくなる。
【0047】
(第2の離型フィルム)
第2の離型フィルム20は、等方導電性接着剤層16を保護するものであり、電磁波シールドフィルム10のハンドリング性を良好にする。第2の離型フィルム20は、電磁波シールドフィルム10をフレキシブルプリント配線板等に貼り付ける前に、等方導電性接着剤層16から剥離される。
【0048】
第2の離型フィルム20の樹脂材料としては、第1の離型フィルム18の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
第2の離型フィルム20の厚さは、5〜500μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、25〜100μmがさらに好ましい。
【0049】
(離型剤層)
離型フィルム本体20aの等方導電性接着剤層16側の表面に、離型剤による離型処理が施されて、離型剤層20bが形成される。第2の離型フィルム20が離型剤層20bを有することによって、後述する工程(g)において第2の離型フィルム20を等方導電性接着剤層16から剥離する際に、第2の離型フィルム20が剥離しやすく、等方導電性接着剤層16が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0050】
離型剤層20bの厚さは、0.05〜2.0μmが好ましく、0.1〜1.5μmがより好ましい。離型剤層20bの厚さが前記範囲内であれば、後述する工程(g)において第2の離型フィルム20がさらに剥離しやすくなる。
【0051】
(電磁波シールドフィルムの厚さ)
電磁波シールドフィルム10の厚さ(離型フィルムを除く)は、10〜45μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。電磁波シールドフィルム10の厚さ(離型フィルムを除く)が10μm以上であれば、第1の離型フィルム18を剥離する際に破断しにくい。電磁波シールドフィルム10の厚さ(離型フィルムを除く)が45μm以下であれば、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を薄くできる。
【0052】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルムは、例えば、下記の工程(a)〜(d)を有する方法によって製造できる。
(a)第1の離型フィルムの片面に絶縁性保護層を形成する工程。
(b)絶縁性保護層の表面に金属薄膜層を形成することによって、第1の離型フィルムと、絶縁性保護層と、金属薄膜層とを順に備えた第1の積層体を得る工程。
(c)第2の離型フィルムの片面に等方導電性接着剤層を形成することによって、第2の離型フィルムと、等方導電性接着剤層とを順に備えた第2の積層体を得る工程。
(d)第1の積層体と第2の積層体とを、金属薄膜層と等方導電性接着剤層とが接触するように貼り合わせる工程。
【0053】
以下、
図1に示す電磁波シールドフィルム10を製造する方法について、
図2〜
図4を参照しながら説明する。
【0054】
(工程(a))
図2に示すように、第1の離型フィルム18の離型剤層18bの表面に絶縁性保護層12を形成する。
【0055】
絶縁性保護層12の形成方法としては、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、硬化させる方法、熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布する方法、熱可塑性樹脂を溶融成形したフィルムを貼着する方法等が挙げられる。ハンダ付け等の際の耐熱性の点から、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、硬化させる方法が好ましい。
熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料は、必要に応じて溶剤、他の成分を含んでいてもよい。
【0056】
絶縁性保護層12を、塗料の塗布によって形成した場合、絶縁性保護層12を比較的薄くできる。なお、熱硬化性樹脂の硬化物は硬いため、絶縁性保護層12を薄くした場合は、強度が不十分となる。上述したように、絶縁性保護層12の160℃における貯蔵弾性率を、5×10
6〜1×10
8Paの範囲とすることによって、柔軟性や強度と、耐熱性とのバランスが良好となる。
【0057】
絶縁性保護層12の貯蔵弾性率の制御は、架橋密度および架橋構造からもたらされる強靭性の観点から熱硬化性樹脂、硬化剤等の種類や組成を選択し、熱硬化性樹脂の硬化物の貯蔵弾性率を調整することによって行われる。
このほか、貯蔵弾性率は、熱硬化性樹脂を硬化させる際の温度、時間等の硬化条件を調整する、または熱硬化性を有さない成分として熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂を添加することによって調整できる。
【0058】
(工程(b))
図2に示すように、絶縁性保護層12の表面に金属薄膜層14を形成、第1の積層体10aを得る。
【0059】
金属薄膜層14の形成方法としては、物理蒸着、CVD、めっき等によって金属薄膜を形成する方法、金属箔を貼り付ける方法等が挙げられる。面方向の導電性に優れる金属薄膜層14を形成できる点から、物理蒸着、CVD、めっき等によって金属薄膜を形成する方法が好ましく、金属薄膜層14の厚さを薄くでき、かつ厚さが薄くても面方向の導電性に優れる金属薄膜層14を形成でき、ドライプロセスにて簡便に金属薄膜層14を形成できる点から、物理蒸着による方法がより好ましい。
【0060】
(工程(c))
図3に示すように、第2の離型フィルム20の離型剤層20bの表面に等方導電性接着剤層16を形成し、第2の積層体10bを得る。
【0061】
等方導電性接着剤層16の形成方法としては、導電性接着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。
導電性接着剤組成物としては、上述した熱硬化性接着剤と導電性粒子22と導電性繊維24とを含むものを用いる。
【0062】
(工程(d))
図4に示すように、第1の積層体10aと第2の積層体10bとを、金属薄膜層14と等方導電性接着剤層16とが接触するように貼り合わせる。
【0063】
第1の積層体10aと第2の積層体10bとの貼り合わせは、導電性繊維24が等方導電性接着剤層16の面方向に配向しやすくなる点から、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行うことが好ましい。
【0064】
(作用効果)
以上説明した電磁波シールドフィルム10にあっては、金属薄膜層14の表面抵抗が0.3Ω以下であり、かつ等方導電性接着剤層16の表面抵抗が10Ω以下であるため、以下に説明するように、金属薄膜層14にクラックが生じても、電磁波ノイズの遮蔽効果を維持できる。
【0065】
図5は、金属薄膜層14にクラックが生じる前の、金属薄膜層14および等方導電性接着剤層16からなる電磁波シールド層のモデルケースを示す斜視図である。
モデルケースにおける電磁波シールド層は、幅10mm、長さ20mmの金属薄膜層14と、幅10mm、長さ20mmの等方導電性接着剤層16との積層体である。
金属薄膜層14の表面抵抗Rmsは、長さ10mm、電極間距離10mmの2本の電極間の抵抗であるから、金属薄膜層14の長さ方向(20mm)の全体抵抗、すなわち回路の抵抗は、表面抵抗Rmsの2倍の2Rmsとなる。
等方導電性接着剤層16の表面抵抗Rcsは、長さ10mm、電極間距離10mmの2本の電極間の抵抗であるから、等方導電性接着剤層16の長さ方向(20mm)の全体抵抗は、同様に2Rcsとなる。
電磁波シールド層を、金属薄膜層14と等方導電性接着剤層16との並列回路と見なせば、クラックが生じる前の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R1は、並列回路の抵抗、すなわち下記式(1)で表される。
R1=2×Rms・Rcs/(Rms+Rcs) ・・・(1)
【0066】
図6は、金属薄膜層14にクラックが生じた後の、金属薄膜層14および等方導電性接着剤層16からなる電磁波シールド層のモデルケースを示す斜視図である。
金属薄膜層14の長さ方向の中央に、幅方向にわたって間隙0.2mmのクラックが生じたとする。
電磁波シールド層を、幅10mm、長さ9.9mmの金属薄膜層14と等方導電性接着剤層16とからなる並列回路と、幅10mm、長さ0.2mmの等方導電性接着剤層16からなる回路と、幅10mm、長さ9.9mmの金属薄膜層14と等方導電性接着剤層16とからなる並列回路とが、直列に接続していると見なせば、クラックが生じた後の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R2は、下記式(2)で表される。
R2=2×0.99×Rms・Rcs/(Rms+Rcs)+0.02×Rcs ・・・(2)
【0067】
金属薄膜層14の表面抵抗Rmsが最大値の0.3Ωであり、等方導電性接着剤層16の表面抵抗Rcsが最大値の100Ωであった場合、クラックが生じる前の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R1は、0.598Ωとなり、クラックが生じた後の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R2は、2.538Ωとなる。このように、金属薄膜層14にクラックが生じることによる電磁波シールド層の抵抗の上昇は、10倍以下に抑えられ、電磁波ノイズの遮蔽効果を維持できる。
【0068】
一方、金属薄膜層14の表面抵抗Rmsが最大値の0.3Ωであり、等方導電性接着剤層16の表面抵抗Rcsが最大値を超える1000Ωであった場合、クラックが生じる前の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R1は、0.600Ωとなり、クラックが生じた後の電磁波シールド層の長さ方向の全体抵抗R2は、20.540Ωとなる。このように、等方導電性接着剤層16の表面抵抗Rcsが最大値を超える場合、金属薄膜層14にクラックが生じることによって電磁波シールド層の抵抗が大きく上昇し、その結果、電磁波ノイズの遮蔽効果が低下する。
【0069】
(他の実施形態)
本発明の電磁波シールドフィルムは、絶縁性保護層と、特定の表面抵抗の金属薄膜層と、特定の表面抵抗の等方導電性接着剤層とを順に備えたものであればよく、
図1の実施形態に限定はされない。
例えば、等方導電性接着剤層16の表面のタック性が少ない場合は、第2の離型フィルム20を省略しても構わない。
絶縁性保護層12が十分な柔軟性や強度を有する場合は、第1の離型フィルム18を省略しても構わない。
離型フィルムは、離型フィルム本体のみで十分な離型性を有する場合は、離型剤層を有しなくてもよい。
【0070】
<電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板>
図7は、本発明の電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1は、フレキシブルプリント配線板30と、絶縁フィルム40と、離型フィルムを剥離した電磁波シールドフィルム10とを備える。
フレキシブルプリント配線板30は、ベースフィルム32の少なくとも片面にプリント回路34が設けられたものである。
絶縁フィルム40は、フレキシブルプリント配線板30のプリント回路34が設けられた側の表面に設けられる。
電磁波シールドフィルム10の等方導電性接着剤層16は、絶縁フィルム40の表面に接着され、かつ硬化されている。また、等方導電性接着剤層16は、絶縁フィルム40に形成された貫通孔(図示略)を通ってプリント回路34に電気的に接続されている。
【0071】
貫通孔のある部分を除くプリント回路34(信号回路、グランド回路、グランド層等)の近傍には、電磁波シールドフィルム10の金属薄膜層14が、絶縁フィルム40および等方導電性接着剤層16を介して離間して対向配置される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路34と金属薄膜層14との離間距離は、絶縁フィルム40の厚さおよび等方導電性接着剤層16の厚さの総和である。離間距離は、30〜200μmが好ましく、60〜200μmがより好ましい。離間距離が30μmより小さいと、信号回路のインピーダンスが低くなるため、100Ω等の特性インピーダンスを有するためには、信号回路の線幅を小さくしなければならず、線幅のバラツキが特性インピーダンスのバラツキとなって、インピーダンスのミスマッチによる反射共鳴ノイズが電気信号に乗りやすくなる。離間距離が200μmより大きいと、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1が厚くなり、可とう性が不足する。
【0072】
(フレキシブルプリント配線板)
フレキシブルプリント配線板30は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工してプリント回路34(電源回路、グランド回路、グランド層等)としたものである。
銅張積層板としては、ベースフィルム32の片面または両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面にベースフィルム32を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5〜30μmが好ましい。
【0073】
(ベースフィルム)
ベースフィルム32としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
ベースフィルム32の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10
6Ω以上が好ましい。ベースフィルム32の表面抵抗は、実用上の点から、1×10
19Ω以下が好ましい。
ベースフィルム32の厚さは、5〜200μmが好ましく、屈曲性の点から、6〜25μmがより好ましく、10〜25μmがより好ましい。
【0074】
(プリント回路)
プリント回路34(信号回路、グランド回路、グランド層等)を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、1〜50μmが好ましく、18〜35μmがより好ましい。
プリント回路34の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、絶縁フィルム40や電磁波シールドフィルム10に覆われていない。
【0075】
(絶縁フィルム)
絶縁フィルム40は、基材フィルム(図示略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示略)を形成したものである。
基材フィルムの表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×10
6Ω以上が好ましい。基材フィルムの表面抵抗は、実用上の点から、1×10
19Ω以下が好ましい。
基材フィルムとしては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
基材フィルムの厚さは、1〜100μmが好ましく、可とう性の点から、3〜25μmがより好ましい。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層の厚さは、1〜100μmが好ましく、1.5〜60μmがより好ましい。
【0076】
貫通孔の開口部の形状は、特に限定されない。貫通孔の開口部の形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
【0077】
(電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板は、例えば、下記の工程(e)〜(g)を有する方法によって製造できる。
(e)ベースフィルムの少なくとも片面にプリント回路を有するフレキシブルプリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に、プリント回路に対応する位置に貫通孔が形成された絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板を得る工程。
(f)工程(e)の後、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板と、本発明の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に等方導電性接着剤層が接触するように重ね、これらを熱プレスすることによって、絶縁フィルムの表面に等方導電性接着剤層を接着し、かつ等方導電性接着剤層を、貫通孔を通ってプリント回路に電気的に接続する工程。
(g)工程(f)の後、第1の離型フィルムを剥離し、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得る工程。
【0078】
以下、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を製造する方法について、
図8を参照しながら説明する。
【0079】
(工程(e))
図8に示すように、フレキシブルプリント配線板30に、プリント回路34に対応する位置に貫通孔42が形成された絶縁フィルム40を重ね、フレキシブルプリント配線板30の表面に絶縁フィルム40の接着剤層(図示略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板2を得る。フレキシブルプリント配線板30の表面に絶縁フィルム40の接着剤層を仮接着し、工程(f)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着および硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
【0080】
(工程(f))
図8に示すように、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板2に、第2の離型フィルム20を剥離した電磁波シールドフィルム10を重ね、熱プレスすることによって、絶縁フィルム40の表面に等方導電性接着剤層16が接着され、かつ等方導電性接着剤層16が、貫通孔42を通ってプリント回路34に電気的に接続された電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の前駆体3を得る。
【0081】
等方導電性接着剤層16の接着および硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
熱プレスの時間は、20秒〜60分間であり、30秒〜30分間がさらに好ましい。熱プレスの時間が20秒以上であれば、絶縁フィルム40の表面に等方導電性接着剤層16が接着される。熱プレスの時間が60分以下であれば、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1の製造時間を短縮できる。
【0082】
熱プレスの温度(プレス機のプレス板の温度)は、140〜190℃が好ましく、150〜175℃がより好ましい。熱プレスの温度が140℃以上であれば、絶縁フィルム40の表面に等方導電性接着剤層16が接着される。また、熱プレスの時間を短縮できる。熱プレスの温度が190℃以下であれば、電磁波シールドフィルム10、フレキシブルプリント配線板30等の劣化等を抑えることができる。
【0083】
熱プレスの圧力は、10MPa〜20MPaが好ましく、10MPa〜16MPaがより好ましい。熱プレスの圧力が10MPa以上であれば、絶縁フィルム40の表面に等方導電性接着剤層16が接着される。また、熱プレスの時間を短縮できる。熱プレスの圧力が20MPa以下であれば、電磁波シールドフィルム10、フレキシブルプリント配線板30等の破損等を抑えることができる。
【0084】
(工程(g))
図8に示すように、絶縁性保護層12から第1の離型フィルム18を剥離し、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1を得る。
【0085】
工程(f)における熱プレスの時間が20秒〜10分間の短時間である場合、第1の離型フィルム18を剥離する前または剥離した後に等方導電性接着剤層16の本硬化を行うことが好ましい。
等方導電性接着剤層16の本硬化は、例えば、オーブン等の加熱装置を用いて行う。
加熱時間は、15〜120分間であり、30〜60分間が好ましい。加熱時間が15分以上であれば、等方導電性接着剤層16を十分に硬化できる。加熱時間が120分以下であれば、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1の製造時間を短縮できる。
加熱温度(オーブン中の雰囲気温度)は、120〜180℃が好ましく、120〜150℃が好ましい。加熱温度が120℃以上であれば、加熱時間を短縮できる。加熱温度が160℃以下であれば、電磁波シールドフィルム10、フレキシブルプリント配線板30等の劣化等を抑えることができる。
加熱は、特殊な装置を使用しなくてもよい点から、無加圧で行うことが好ましい。
【0086】
(作用効果)
以上説明した電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1にあっては、金属薄膜層14の表面抵抗が0.3Ω以下であり、かつ等方導電性接着剤層16の表面抵抗が10Ω以下であるため、金属薄膜層14にクラックが生じても、電磁波ノイズの遮蔽効果を維持できる。
【0087】
(他の実施形態)
本発明の電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板と、絶縁フィルムと、本発明の電磁波シールドフィルムとを備えたものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、フレキシブルプリント配線板は、裏面側にグランド層を有するものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板は、両面にプリント回路を有し、両面に絶縁フィルムおよび電磁波シールドフィルムが貼り付けられたものであってもよい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を示す。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0089】
(貯蔵弾性率)
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、RSAII)を用いて測定した。
【0090】
(実施例1)
第1の離型フィルム18および第2の離型フィルム20として、非シリコーン系離型剤にて片面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、T157、厚さ:50μm、160℃における貯蔵弾性率:6×10
8Pa)を用意した。
【0091】
工程(a):
第1の離型フィルム18の離型剤層18bの表面に、溶剤溶解性アミド樹脂(ティーアンドケイ東華社製、TPAE−617C)および硬化剤(トルエンジイソシアネート)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した塗料を塗布し、150℃で0.4時間加熱し、アミド樹脂を硬化させて、絶縁性保護層12(厚さ:5μm、160℃における貯蔵弾性率:8×10
6Pa、表面抵抗:8×10
12Ω)を形成した。
【0092】
工程(b):
絶縁性保護層12の表面に、電子ビーム蒸着法にて銅を物理的に蒸着させ、厚さ0.07μm、表面抵抗0.3Ωの蒸着膜(金属薄膜層14)を形成し、第1の積層体10aを得た。
【0093】
工程(c):
第2の離型フィルム20の離型剤層20bの表面に、硬化性エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂(DIC社製、EXA−4816)と硬化剤(味の素ファインテクノ社製、PN−23)との混合物、導電性粒子22として銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製、AG 6−11、平均粒子径:3.6μm、比表面積:0.21m
2/g、真密度:10.5g/cm
3)およびカーボンナノファイバ(昭和電工社製、VGCF、平均繊維長:6μm、平均繊維径:0.15μm、アスペクト比:60、比表面積:13m
2/g、真密度:2.1g/cm
3)を溶剤(メチルエチルケトン)に溶解または分散させた導電性接着剤組成物を、ダイコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発させて、等方導電性接着剤層16(厚さ:10μm、銀粒子:58体積%、カーボンナノファイバ:15体積%、表面抵抗:80Ω)を形成し、第2の積層体10bを得た。
【0094】
工程(d):
第1の積層体10aと第2の積層体10bとを、金属薄膜層14と等方導電性接着剤層16とが接触するように重ね、ホットプレス装置(VIGOR社製、VFPC−05R)を用い、温度:90℃、圧力:2MPaで3秒間熱プレスし、電磁波シールドフィルム10を得た。
【0095】
工程(e):
厚さ25μmのポリイミドフィルム(表面抵抗:1×10
17Ω)(基材フィルム)の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤組成物を、乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、接着剤層を形成し、絶縁フィルム40(厚さ:50μm)を得た。
【0096】
厚さ12μmのポリイミドフィルム(表面抵抗:1×10
17Ω)(ベースフィルム32)の表面に、プリント回路34が形成されたフレキシブルプリント配線板30を用意した。
フレキシブルプリント配線板30に絶縁フィルム40を熱プレスにより貼り付けて、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板2を得た。
【0097】
工程(f):
フレキシブルプリント配線板30に、第2の離型フィルム20を剥離した電磁波シールドフィルム10を重ね、ホットプレス装置(VIGOR社製、VFPC−05R)を用い、温度:170℃、圧力:15MPaで30秒間熱プレスし、絶縁フィルム40の表面に等方導電性接着剤層16を接着して、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の前駆体3を得た。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の前駆体3を、高温恒温器(楠本化成社製、HT210)を用い、温度:170℃で30分間加熱することによって、等方導電性接着剤層16を本硬化させた。
【0098】
工程(g):
絶縁性保護層12から第1の離型フィルム18を剥離し、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板1を得た。
【0099】
(比較例1)
工程(a)〜(b):
実施例1と同様にして、第1の積層体を得た。
【0100】
工程(c):
第2の離型フィルムの離型剤層の表面に、硬化性エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂(DIC社製、EXA−4816)と硬化剤(味の素ファインテクノ社製、PN−23)との混合物、導電性粒子22として焼成カーボン粒子(エア・ウォーター・ベルパール社製、CR2−800SR、平均粒子径:5.0μm、比表面積:0.8m
2/g、真密度:1.34g/cm
3)を溶剤(メチルエチルケトン)に溶解または分散させた導電性接着剤組成物を、ダイコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発させて、等方導電性接着剤層(厚さ:10μm、焼成カーボン粒子:75体積%、カーボンナノファイバ:10体積%、表面抵抗:620Ω)を形成し、第2の積層体を得た。
【0101】
工程(d):
第2の積層体として、比較例1の工程(c)で得られた第2の積層体を用いた以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールドフィルムを得た。
【0102】
工程(e)〜(g):
電磁波シールドフィルムとして、比較例1の工程(d)で得られた電磁波シールドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。