【文献】
Research In Motion Ltd,Go to Long Sleep Command for LTE DRX[online],3GPP TSG-RAN-WG2 Meeting #61bis R2-081868,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_61bis/Docs/R2-081868.zip>,2008年 3月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ロングタームエボリューション(LTE)
【0003】
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させる上での最初のステップとして、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンストアップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0004】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0005】
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network(UTRAN):進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
【0006】
LTEアーキテクチャ
【0007】
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示し、
図2は、E−UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。E−UTRANは、eNodeBから構成され、eNodeBは、UE向けの、E−UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端処理する。eNodeB(eNB)は、物理(PHY)レイヤ、メディアアクセス制御(MAC)レイヤ、無線リンク制御(RLC)レイヤ、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)レイヤ(これらのレイヤはユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。eNBは、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。eNBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数のeNodeBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0008】
また、複数のeNodeBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのユーザ機器へのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0009】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス階層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証をチェックし、ユーザ機器のローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/整合性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0010】
LTE(リリース8)におけるコンポーネントキャリアの構造
【0011】
【0012】
【0013】
「コンポーネントキャリア」という用語は、数個のリソースブロックの組合せに言及する。LTEの将来のリリースにおいて、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されない。代わりに、この用語は「セル」に変更される。「セル」は、ダウンリンクリソースおよび任意でアップリンクリソースの組合せに言及する。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との連結(linking)は、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報に示される。
【0014】
LTEのさらなる発展(LTE−A)
【0015】
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域や国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。以下では、2つの主要な技術要素について説明する。
【0016】
より広い帯域幅をサポートするためのLTE−Aにおけるキャリアアグリゲーション
【0017】
LTE−Advancedシステムがサポートできる帯域幅は100MHzであるが、LTEシステムは20MHzをサポートできるのみである。最近、無線スペクトルの不足によって無線ネットワークの発展が妨げられており、結果として、LTE−Advancedシステムのための十分に広いスペクトル帯域を見つけることが困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を得るための方法を見つけることが緊急課題であり、1つの可能な答えがキャリアアグリゲーション機能である。
【0018】
キャリアアグリゲーションでは、最大で100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる。LTE−Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルが、より広い1つのチャネルにアグリゲートされ、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。
【0019】
少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数がアップリンクとダウンリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。ユーザ機器によってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。リリース8/9のユーザ機器がコンポーネントキャリアにキャンプオンする(camp on)ことを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング(barring))を使用することができる。
【0020】
ユーザ機器は、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(複数のサービングセルに対応する)を同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE−Aリリース10のユーザ機器は、複数のサービングセル上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのサービングセル上で受信および送信を行うことができる。
【0021】
キャリアアグリゲーションは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてサポートされ、各コンポーネントキャリアは、3GPP LTE(リリース8/9)の計算方式(numerology)を使用して、周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。
【0022】
同じeNodeB(基地局)から送信される、場合によってはアップリンクおよびダウンリンクにおいて異なる帯域幅の異なる数のコンポーネントキャリアをアグリゲートするように、3GPP LTE−A(リリース10)互換のユーザ機器を構成することが可能である。設定することのできるダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のダウンリンクのアグリゲーション能力に依存する。逆に、設定することのできるアップリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のアップリンクのアグリゲーション能力に依存する。ダウンリンクコンポーネントキャリアよりもアップリンクコンポーネントキャリアが多くなるように移動端末を構成することはできない。
【0023】
一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、アップリンクとダウンリンクとで同じである。同じeNodeBから送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
【0024】
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、3GPP LTE(リリース8/9)の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
【0025】
複数のキャリアをアグリゲートする影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(アップリンクにおけるSU−MIMOを使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
【0026】
図5および
図6は、それぞれ、ダウンリンクおよびアップリンクにおける、キャリアアグリゲーションが設定された第2層構造を示している。
【0027】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、移動端末はネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立時、1つのセルが、LTEリリース8/9と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセス階層(NAS)モビリティ情報(例:TAI)とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、ダウンリンクプライマリセル(PCell)と称される。接続状態では、ユーザ機器あたりつねに1つのダウンリンクPCell(DL PCell)および1つのアップリンクPCell(UL PCell)が設定される。設定された一連のコンポーネントキャリアの中で、プライマリセル以外のセルはセカンダリセル(SCell)と称される。ダウンリンクPCellおよびアップリンクPCellの特徴は以下のとおりである。
− アップリンクPCellは、第1層アップリンク制御情報を送信するのに使用される。
− ダウンリンクPCellは、SCellとは異なり非アクティブ化することはできない。
− ダウンリンクPCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、ダウンリンクSCellにRLFが発生しても再確立はトリガーされない。
− ダウンリンクPCellセルは、ハンドオーバーに伴って変更され得る。
− 非アクセス階層情報はダウンリンクPCellから取得される。
− PCellは、ハンドオーバー手順(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によってのみ変更することができる。
− PCellは、PUCCHの送信に使用される。
【0028】
コンポーネントキャリアの設定および再設定は、RRCによって行うことができる。アクティブ化および非アクティブ化は、MAC制御要素を介して行われる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのSCellを追加、削除、または再設定することもできる。新しいSCellを追加するときには、SCellのシステム情報(送信/受信に必要である)を送るために専用のRRCシグナリングが使用される(LTEリリース8/9におけるハンドオーバー時と同様)。
【0029】
キャリアアグリゲーションを使用するようにユーザ機器が構成されているとき、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアの一対がつねにアクティブである。この対のうちのダウンリンクコンポーネントキャリアは、「ダウンリンクアンカーキャリア」と称されることもある。同じことはアップリンクについてもあてはまる。
【0030】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、それぞれのDCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF」と称する)が導入されている。
【0031】
クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用されるアップリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。アップリンクコンポーネントキャリアへのダウンリンクコンポーネントキャリアのリンクは、必ずしも1対1である必要はない。言い換えれば、同じアップリンクコンポーネントキャリアに複数のダウンリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つのダウンリンクコンポーネントキャリアは、1つのアップリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
【0032】
LTE RRC状態
【0033】
LTEは、2つの主状態、すなわち「RRC_IDLE」状態および「RRC_CONNECTED」状態のみに基づいている。
【0034】
RRC_IDLEでは、無線は有効ではないが、ネットワークによってIDが割り当てられて追跡されている。より具体的には、RRC_IDLE状態の移動端末は、セルの選択および再選択を実行し、言い換えれば、キャンプオンするセルを決定する。セルの(再)選択プロセスでは、適用可能な各RAT(無線アクセス技術)の適用可能な各周波数の優先度、無線リンクの品質、およびセルのステータス(すなわちセルが禁止または予約されているか)が考慮される。RRC_IDLE状態の移動端末は、ページングチャネルを監視して着呼を検出し、さらにシステム情報を取得する。システム情報は、主として、ネットワーク(E−UTRAN)がセルの(再)選択プロセスを制御することのできるパラメータからなる。RRCは、RRC_IDLE状態の移動端末に適用される制御シグナリング、すなわちページングおよびシステム情報を指定する。RRC_IDLE状態における移動端末の挙動については、非特許文献2の例えば第8.4.2章に指定されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0035】
RRC_CONNECTEDでは、移動端末は、eNodeBにおけるコンテキストを用いての有効な無線動作を有する。E−UTRANでは、共有データチャネルを介して(ユニキャスト)データを伝送することができるように、移動端末に無線リソースが割り当てられる。この動作をサポートするため、移動端末は、時間および周波数における共有送信リソースの動的な割当てを示すために使用される対応する制御チャネルを監視する。移動端末は、E−UTRANが移動端末にとって最適なセルを選択できるように、自身のバッファ状態およびダウンリンクチャネル品質の報告と、隣接セルの測定情報とを、ネットワークに提供する。これらの測定報告には、別の周波数またはRATを使用するセルが含まれる。さらに、ユーザ機器は、送信チャネルを使用するために要求される情報から主としてなるシステム情報を受信する。RRC_CONNECTED状態のユーザ機器は、自身のバッテリの寿命を延ばすため、不連続受信(DRX)サイクルを使用するように構成することができる。RRCとは、RRC_CONNECTED状態のユーザ機器の挙動をE−UTRANが制御するためのプロトコルである。
【0036】
図7は、IDLE状態およびCONNECTED状態の移動端末によって実行される関連する機能の概要を含む状態図を示している。
【0037】
第1層/第2層(L1/L2)制御シグナリング
【0038】
スケジューリング対象のユーザに、ユーザの割当てステータス、トランスポートフォーマット、およびその他のデータ関連情報(例:HARQ情報、送信電力制御(TPC)コマンド)を知らせる目的で、第1層/第2層制御シグナリングがデータと一緒にダウンリンクで送信される。第1層/第2層制御シグナリングは、サブフレーム内でダウンリンクデータと一緒に多重化される(ユーザ割当てがサブフレーム単位で変化しうるものと想定する)。なお、ユーザ割当てをTTI(送信時間間隔)ベースで実行することもでき、その場合、TTI長はサブフレームの倍数であることに留意されたい。TTI長は、サービスエリアにおいてすべてのユーザに対して一定とする、ユーザ毎に異なる、あるいはユーザ毎に動的とすることもできる。第1層/第2層制御シグナリングは、一般的にはTTIあたり1回送信するのみでよい。
【0039】
第1層/第2層制御シグナリングは、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)で送信される。PDCCHは、ダウンリンク制御情報(DCI)としてメッセージを伝え、このメッセージには、移動端末またはユーザ機器のグループのリソース割当て情報およびその他の制御情報が含まれる。一般的には、いくつかのPDCCHを1つのサブフレーム内で送信することができる。
【0040】
なお、3GPP LTEでは、アップリンクデータ送信のための割当て(アップリンクスケジューリンググラントまたはアップリンクリソース割当てとも称する)も、PDCCHで送信されることに留意されたい。
【0041】
スケジューリンググラントに関して、第1層/第2層制御シグナリングで送られる情報は、次の2つのカテゴリ、すなわち、カテゴリ1の情報を伝える共有制御情報(SCI:Shared Control Information)と、カテゴリ2/3の情報を伝えるダウンリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)に分けることができる。
【0042】
カテゴリ1の情報を伝える共有制御情報(SCI)
【0043】
第1層/第2層制御シグナリングの共有制御情報部分は、リソース割当て(指示)に関連する情報を含む。共有制御情報は、一般には以下の情報を含んでいる。
− リソースが割り当てられるユーザを示すユーザ識別情報。
− ユーザに割り当てられるリソース(リソースブロック(RB))を示すリソースブロック(RB)割当て情報。割り当てられるリソースブロックの数は動的とすることができる。
− 割当ての持続時間(オプション)。複数のサブフレーム(またはTTI)にわたる割当てが可能である場合。
【0044】
これらに加えて、共有制御情報は、他のチャネルの設定およびダウンリンク制御情報(DCI)の設定(以下を参照)に応じて、アップリンク送信に対するACK/NACK、アップリンクスケジューリング情報、DCIに関する情報(例:リソース、MCS)などの情報を含んでいることができる。
【0045】
カテゴリ2/3の情報を伝えるダウンリンク制御情報(DCI)
【0046】
第1層/第2層制御シグナリングのダウンリンク制御情報部分は、カテゴリ1の情報によって示されるスケジューリング対象のユーザに送信されるデータの送信フォーマットに関連する情報(カテゴリ2の情報)を含んでいる。さらに、再送信プロトコルとして(ハイブリッド)ARQを使用する場合、カテゴリ2の情報は、HARQ(カテゴリ3)の情報を伝える。ダウンリンク制御情報は、カテゴリ1に従ってスケジューリングされるユーザによって復号化されるのみでよい。ダウンリンク制御情報は、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− カテゴリ2の情報:変調方式、トランスポートブロック(ペイロード)サイズまたは符号化率、MIMO(多入力多出力)関連情報など。トランスポートブロック(もしくはペイロードサイズ)または符号化率のいずれかをシグナリングできる。いずれの場合も、これらのパラメータは、変調方式情報およびリソース情報(割り当てられたリソースブロックの数)を使用することによって相互に計算することができる。
− カテゴリ3情報:HARQ関連情報(例えば、ハイブリッドARQプロセス番号、冗長バージョン、再送信シーケンス番号)
【0047】
ダウンリンク制御情報は、全体的なサイズと、フィールドに含まれる情報とが異なるいくつかのフォーマットの形をとる。LTEにおいて現在定義されている異なるDCIフォーマットは、以下のとおりであり、非特許文献2の第5.3.3.1節に詳しく記載されている(この文書は、3GPPのウェブサイトで入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0048】
フォーマット0:DCIフォーマット0は、PUSCHのためのリソースグラントを送信するのに使用される。
【0049】
フォーマット1:DCIフォーマット1は、単一符号語PDSCHの送信(送信モード1,2,7)のためのリソース割当てを送信するのに使用される。
【0050】
フォーマット1A:DCIフォーマット1Aは、単一符号語PDSCHの送信のためのリソース割当てをコンパクトにシグナリングする目的と、非競合ランダムアクセスのために専用プリアンブルシグネチャ(dedicated preamble signature)を移動端末に割り当てる目的とに使用される。
【0051】
フォーマット1B:DCIフォーマット1Bは、ランク1送信による閉ループプリコーディングを使用してのPDSCH送信(送信モード6)のためのリソース割当てをコンパクトにシグナリングするのに使用される。送信される情報はフォーマット1Aと同じであるが、それに加えて、PDSCHの送信に適用されるプリコーディングベクトルのインジケータが送信される。
【0052】
フォーマット1C:DCIフォーマット1Cは、PDSCHのための割当てを極めてコンパクトに送信するのに使用される。フォーマット1Cが使用されるとき、PDSCH送信は、QPSK変調の使用に制約される。このフォーマットは、例えば、ページングメッセージをシグナリングしたり、システム情報メッセージをブロードキャストするために使用される。
【0053】
フォーマット1D:DCIフォーマット1Dは、マルチユーザMIMOを使用してのPDSCH送信のためのリソース割当てをコンパクトにシグナリングするのに使用される。送信される情報は、フォーマット1Bの場合と同じであるが、プリコーディングベクトルのインジケータのビットのうちの1つの代わりに、データシンボルに電力オフセットが適用されるかを示すための1個のビットが存在する。この構成は、2基のユーザ機器の間で送信電力が共有されるか否かを示すために必要である。LTEの今後のバージョンでは、この構成は、より多くの数のユーザ機器の間で電力を共有する場合に拡張されうる。
【0054】
フォーマット2:DCIフォーマット2は、閉ループMIMO動作の場合にPDSCHのためのリソース割当てを送信するのに使用される。
【0055】
フォーマット2A:DCIフォーマット2Aは、開ループMIMO動作の場合にPDSCHのためのリソース割当てを送信するのに使用される。送信される情報はフォーマット2の場合と同じであるが、異なる点として、eNodeBが2つの送信アンテナポートを有する場合、プリコーディング情報は存在せず、4つのアンテナポートの場合、送信ランクを示すために2ビットが使用される。
【0056】
フォーマット3および3A:DCIフォーマット3および3Aは、それぞれ、2ビットまたは1ビットの電力調整を有する、PUCCHおよびPUSCHのための電力制御コマンドを送信するのに使用される。これらのDCIフォーマットは、ユーザ機器のグループのための個々の電力制御コマンドを含む。
【0057】
次の表は、利用可能なDCIフォーマットの概要を示している。
【0058】
【表1】
【0059】
DCIフォーマットと、DCIにおいて送信される具体的な情報に関するさらなる詳細については、技術規格、または非特許文献3(参照によって本明細書に組み込まれている)の第9.3章を参照されたい。
【0060】
ダウンリンクデータおよびアップリンクデータの送信
【0061】
第1層/第2層制御シグナリングは、ダウンリンクデータ送信に関して、ダウンリンクパケットデータ送信と一緒に、個別の物理チャネル(PDCCH)で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下に関する情報を含む。
− データが送信される(1つまたは複数の)物理リソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。移動端末(受信器)は、データが送信されるリソースをこの情報によって識別することができる。
− ユーザ機器が、第1層/第2層制御シグナリングにおいてキャリア指示フィールド(CIF:Carrier Indication Field)を有するように構成されているとき、この情報は、その特定の制御シグナリング情報が対象とするコンポーネントキャリアを識別する。これにより、1つのコンポーネントキャリアを対象とする割当てを別のコンポーネントキャリアで送ることが可能になる(「クロスキャリアスケジューリング」)。クロススケジューリングされる側のキャリアは、例えば、PDCCHのないコンポーネントキャリアとすることができ、すなわち、クロススケジューリングされる側のコンポーネントキャリアは、第1層/第2層制御シグナリングを伝えない。
− 送信に使用されるトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(受信器)は、復調、デ・レートマッチング(de-rate-matching)、および復号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報(通常はリソース割当て(例:ユーザ機器に割り当てられるリソースブロックの数)と組み合わせる)によって識別することができる。変調方式は明示的にシグナリングすることができる。
− ハイブリッドARQ(HARQ)情報:
・ HARQプロセス番号:ユーザ機器は、データがマッピングされているハイブリッドARQプロセスを識別することができる。
・ シーケンス番号または新規データインジケータ(NDI):ユーザ機器は、送信が新しいパケットであるか再送信されたパケットであるかを識別することができる。HARQプロトコルにおいて軟合成が実施される場合、シーケンス番号または新規データインジケータとHARQプロセス番号とを組み合わせることで、復号化の前にPDUのための送信の軟合成が可能である。
・ 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用されているハイブリッドARQ冗長バージョン(デ・レートマッチングに必要である)、および、使用されている変調コンステレーションバージョン(復調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(UE ID):第1層/第2層制御シグナリングの対象であるユーザ機器を知らせる。一般的な実装においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読み取られることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0062】
アップリンクパケットデータ送信を可能にする目的で、送信の詳細をユーザ機器に知らせるため、第1層/第2層制御シグナリングがダウンリンク(PDCCH)で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− ユーザ機器がデータ送信に使用するべき(1つまたは複数の)物理リソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。
− ユーザ機器が、第1層/第2層制御シグナリングにおいてキャリア指示フィールド(CIF)を有するように構成されているとき、この情報は、その特定の制御シグナリング情報が対象とするコンポーネントキャリアを識別する。これにより、1つのコンポーネントキャリアを対象とする割当てを別のコンポーネントキャリアで送ることが可能になる。クロススケジューリングされる側のキャリアは、例えば、PDCCHのないコンポーネントキャリアとすることができ、すなわち、クロススケジューリングされる側のコンポーネントキャリアは、第1層/第2層制御シグナリングを伝えない。
− アップリンクグラントの第1層/第2層制御シグナリングは、アップリンクコンポーネントキャリアにリンクされているDLコンポーネントキャリアで送られる、または、いくつかのDLコンポーネントキャリアが同じULコンポーネントキャリアにリンクされている場合、いくつかのDLコンポーネントキャリアのうちの1つで送られる。
− ユーザ機器が送信に使用するべきトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(送信器)は、変調、レートマッチング、および符号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報(通常はリソース割当て(例:ユーザ機器に割り当てられるリソースブロックの数)と組み合わせる)によって取得することができる。場合によっては、変調方式を明示的にシグナリングすることができる。
− ハイブリッドARQ情報:
・ HARQプロセス番号:データの取得先のハイブリッドARQプロセスをユーザ機器に知らせる。
・ シーケンス番号または新規データインジケータ:新しいパケットを送信するのか、あるいはパケットを再送信するのかをユーザ機器に知らせる。HARQプロトコルにおいて軟合成が実施される場合、シーケンス番号または新規データインジケータとHARQプロセス番号とを組み合わせることで、復号化の前にプロトコルデータユニット(PDU)のための送信の軟合成が可能である。
・ 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用するハイブリッドARQ冗長バージョン(レートマッチングに必要である)、および、使用する変調コンステレーションバージョン(変調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(UE ID):データを送信するべきユーザ機器を知らせる。一般的な実装においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読み取られることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0063】
上述したさまざまな情報をアップリンクデータ送信およびダウンリンクデータ送信において実際に送信するとき、いくつかの異なる可能な方法が存在する。さらには、アップリンクおよびダウンリンクにおいて、第1層/第2層制御情報は、追加の情報を含んでいることもでき、あるいは、いくつかの情報を省くことができる。例えば以下のとおりである。
− 同期HARQプロトコルの場合、HARQプロセス番号が必要ないことがある(すなわちシグナリングされない)。
− チェイス合成(Chase Combining)を使用する(冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方がつねに同じである)場合、または、冗長バージョンのシーケンスもしくはコンステレーションバージョンのシーケンスまたはその両方が事前に定義されている場合、冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方が必要ないことがある。
− 電力制御情報を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− MIMOに関連する制御情報(例えばプリコーディング情報)を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− 複数の符号語によるMIMO送信の場合には、複数の符号語のためのトランスポートフォーマットもしくはHARQ情報またはその両方を含めることができる。
【0064】
LTEにおいて(物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)を対象として)PDCCHでシグナリングされるアップリンクリソース割当てでは、第1層/第2層制御情報にHARQプロセス番号が含まれず、なぜなら、LTEのアップリンクには同期HARQプロトコルが採用されるためである。アップリンク送信に使用されるHARQプロセスは、タイミングによって認識される。さらには、冗長バージョン(RV)情報は、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化され、すなわち、RV情報はトランスポートフォーマット(TF)フィールドに埋め込まれることに留意されたい。トランスポートフォーマット(TF)/変調・符号化方式(MCS)フィールドは、例えば5ビットのサイズを有し、これは32個のエントリに対応する。TF/MCSテーブルの3個のエントリは、冗長バージョン(RV)1、RV2、またはRV3を示すために予約されている。MCSテーブルの残りのエントリは、RV0を暗黙的に示すMCSレベル(TBS)をシグナリングするために使用される。PDCCHのCRCフィールドのサイズは16ビットである。
【0065】
LTEにおいてPDCCHでシグナリングされるダウンリンク割当て(PDSCH)では、冗長バージョン(RV)は、2ビットのフィールドにおいて個別にシグナリングされる。さらに、変調次数情報が、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される。アップリンクの場合と同様に、5ビットのMCSフィールドがPDCCHでシグナリングされる。エントリのうち3個は、明示的な変調次数をシグナリングするために予約されており、トランスポートフォーマット(トランスポートブロック)情報は提供されない。残りの29個のエントリにおいては、変調次数およびトランスポートブロックサイズ情報がシグナリングされる。
【0066】
物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)
【0067】
すでに説明したように、PDCCHは、DCIとしてメッセージを伝える。各PDCCHは、1つまたは複数のいわゆる制御チャネル要素(CCE)のアグリゲーションにおいて送信され、各CCEは9個のリソース要素グループ(REG、すなわち4個の物理リソース要素のセット)に相当する。CCEを構成するREGは連続的ではなく、CCEは、帯域幅全体にわたる周波数内に分散している。なお、周波数ダイバーシチを達成するため、CCEは周波数領域内に広がっていることに留意されたい。次の表に記載したように、4つのPDCCHフォーマットがサポートされており、この表には、対応する可能なCCEアグリゲーションレベルも示してある。
【0068】
【表2】
【0069】
CCEは番号付けされており連続的に使用され、復号化プロセスを単純化するため、n個のCCEからなるフォーマットのPDCCHは、nの倍数に等しい番号のCCEからのみ開始することができる。
【0070】
セルにおいて利用可能なCCEの数は変化する。この数は、半静的(システム帯域、PHICH設定)または動的(PCFICH)とすることができる。
【0071】
特定のPDCCHを送信するのに使用されるCCEの数は、チャネル条件に従ってeNodeBによって決定される。例えば、PDCCHが、良好なダウンリンクチャネルを有する(例えばeNodeBに近い)移動端末を対象とする場合、1個のCCEで十分である可能性が高い。しかしながら、不良なチャネルを有する(例えばセル境界に近い)移動端末の場合、十分な堅牢性を達成する目的で8個のCCEが要求されることがある。さらに、PDCCHの電力レベルを、チャネル条件に合致するように調整することができる。
【0072】
移動端末は、PDCCHを検出するとき、すべての非DRXサブフレームにおいて制御情報のための一連のPDCCH候補を監視し、この場合、監視するとは、後からさらに詳しく説明するように、一連のPDCCHにおける各PDCCHをすべてのDCIフォーマットに従って復号化することを試みるプロセスを意味する。
【0073】
PDCCH送信を正しく受信したかを移動端末が識別できるようにする目的で、各PDCCHに付加される16ビットのCRCによって誤り検出が提供される。さらには、どのPDCCHが自身を対象としているかをユーザ機器が識別できることが必要である。このことは、理論的には、PDCCHペイロードに識別子を追加することによって達成することができる。しかしながら、ユーザ機器の識別情報(例えばC−RNTI:セル無線ネットワーク一時識別子)によってCRCをスクランブルするのがより効率的であることが判明し、この方法では、追加のペイロードが節約されるが、その代償として、別のユーザ機器を対象とするPDCCHを誤って検出する確率がわずかに増大する。
【0074】
物理制御フォーマットインジケータチャネル(PCFICH:Physical Control Format Indicator Channel)は、各サブフレーム内で制御チャネル情報を送信するのに使用されるOFDMシンボルの数を示す制御フォーマットインジケータ(CFI:Control Format Indicator)を伝える。eNodeBは、1つのサブフレーム内で複数のPDCCHを送信することができる。この送信は、ユーザ機器が自身を対象とするPDCCHを特定することができると同時に、PDCCHの送信用に割り当てられるリソースが効率的に利用されるように、編成される。
【0075】
少なくともeNodeBにとって単純な方法は、eNodeBが、PCFICHによって示されるPDCCHリソース(またはCCE)内の任意の位置に任意のPDCCHを配置できるようにすることである。この場合、ユーザ機器は、PDCCHが配置されうるすべての位置と、PDCCHフォーマットと、DCIフォーマットとをチェックして、(ユーザ機器の識別情報によってCRCがスクランブルされていることを考慮して)正しいCRCを有するメッセージに対して動作する必要がある。すべての可能な組合せのこのようなブラインド検出を行うためには、ユーザ機器が各サブフレームにおいてPDCCHの復号化を何度も試みることが要求される。システム帯域幅が小さい場合には計算負荷はそれほど大きくならないが、システム帯域幅が大きく、PDCCHが配置されうる位置が多数存在する場合、計算負荷が大幅に増大し、ユーザ機器の受信器における過大な電力消費量につながる。
【0076】
LTEに採用されている代替方法は、ユーザ機器ごとに、PDCCHを配置できる一連の限られたCCE位置を定義することである。しかしながら、このような制約は、同じサブフレーム内でPDCCHを送ることのできるユーザ機器に関して制限につながることがあり、したがって、eNodeBがリソースを許可できるユーザ機器が制約される。したがって、良好なシステム性能のためには、各ユーザ機器に利用可能な、PDCCHを配置可能な一連の位置が少なくなりすぎないことが重要である。ユーザ機器が自身のPDCCHを見つけることのできる一連のCCE位置は、サーチスペースとみなすことができる。LTEにおいては、サーチスペースのサイズはPDCCHフォーマットごとに異なる。さらに、個別の専用サーチスペースと共通サーチスペースが定義され、専用サーチスペースはユーザ機器ごとに個別に設定される一方で、共通サーチスペースの範囲がすべてのユーザ機器に通知される。なお、1つのユーザ機器において、専用サーチスペースと共通サーチスペースが重なることができる。
【0077】
小さいサーチスペースの場合、1つのサブフレームにおいて、eNodeBがPDCCHを送ろうとするすべてのユーザ機器にPDCCHを送るためのCCEリソースをeNodeBが見つけられないことが起こる可能性が高く、なぜなら、いくつかのCCE位置が割り当てられているとき、残りのCCE位置が特定のユーザ機器のサーチスペース内にないためである。
【0078】
ブラインド復号化の合計試行回数から発生する計算負荷を制御下に維持する目的で、ユーザ機器は、定義されているDCIフォーマットすべてを同時に探索することが要求されない。
【0079】
ユーザ機器は、共通サーチスペース内では、DCIフォーマット1Aおよび1Cを探索する。さらに、フォーマット3または3Aを探索するようにユーザ機器を構成することができ、フォーマット3または3Aは、DCIフォーマット0および1Aと同じサイズを有し、ユーザ機器に固有の識別情報(例:C−RNTI)ではなく異なる(共通の)識別情報(例:PC−PUCCH−RNTI)によってスクランブルされたCRCを有することによって区別することができる。この点において、特に、PC−PUCCH−RNTI(送信電力制御−物理アップリンク制御チャネル−RNTI:Transmit Power Control-Physical Uplink Control Channel-RNTI)およびTPC−PUSCH−RNTI(送信電力制御−物理アップリンク共有チャネル−RNTI:Transmit Power Control-Physical Uplink Shared Channel-RNTI)が使用される。
【0080】
DCIフォーマット0、1A、1C、3、および3Aは、2種類のペイロードサイズを有する。共通サーチスペースは、すべてのユーザ機器によって監視され、CCE0〜15に対応することができ、PDCCHフォーマット2を有する4つの復号化候補(0〜3、4〜7、8〜11、12〜15)、またはPDCCHフォーマット3を有する2つの復号化候補(0〜7、8〜15)を提供する。この場合、ペイロードサイズあたりのブラインド復号化の試行は6回であり、PDCCHのペイロードサイズが2種類であるため、ユーザ機器あたりのブラインド復号化の合計回数は12回である。
【0081】
DCIフォーマット3,3Aの電力制御メッセージは、端末のグループに、そのグループに固有なRNTIを使用して送られる。各端末に2つの電力制御RNTI(PUCCH電力制御用のRNTIとPUSCH電力制御用のRNTI)を割り当てることができる。
【0082】
専用サーチスペースにおいては、一般に、ユーザ機器はDCIフォーマット0および1Aをつねに探索し、DCIフォーマット0とDCIフォーマット1Aは同じサイズであり、メッセージ内のフラグによって区別される。さらに、eNodeBによって設定されるPDSCH送信モードに応じて、ユーザ機器はさらなるDCIフォーマット(例:1、1B、または2)を受信することが要求されうる。
【0083】
ユーザ機器に固有のサーチスペースの開始位置は、通常では、例えば無線フレーム内のスロット番号、RNTI値、およびその他のパラメータに基づくハッシング関数によって決定される。ユーザ機器に固有のサーチスペースでは、1個、2個、4個、および8個のCCEのアグリゲーションレベルが可能である。
【0084】
さらなる情報については、非特許文献3の第9.3章に記載されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0085】
DRX(不連続受信)
【0086】
RRC_IDLEの場合にDRX機能を設定することができ、この場合、ユーザ機器は、自身に固有なDRX値またはデフォルトのDRX値(defaultPagingCycle)のいずれかを使用する。デフォルト値は、システム情報の中でブロードキャストされ、値として、32個、64個、128個、および256個の無線フレームを有することができる。固有な値とデフォルト値の両方が利用可能である場合、ユーザ機器は2つのうち短い方の値を選択する。ユーザ機器は、DRXサイクルあたり1回のページング機会においてウェイクアップする必要があり、ページング機会は1つのサブフレームである。
【0087】
「RRC_CONNECTED」の場合にもDRX機能を設定することができ、したがって、ダウンリンクチャネルをつねに監視する必要はない。ユーザ機器のバッテリが過大に消費されないようにする目的で、3GPP LTE(リリース8/9)および3GPP LTE−A(リリース10)では、不連続受信(DRX)というコンセプトが提供される。技術規格書である非特許文献4の第5.7章にはDRXについて説明されており、この文書は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0088】
ユーザ機器のDRX挙動を定義するため以下のパラメータが利用可能であり、すなわち、移動ノードがアクティブであるオン期間と、移動ノードがDRXモードである期間である。
− オン期間:ユーザ機器がDRXからウェイクアップした後、PDCCHを受信および監視する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。ユーザ機器は、PDCCHを正常に復号化した場合、アウェイク状態を維持し、インアクティビティタイマー(inactivity timer)を起動する。[1〜200個のサブフレーム、16ステップ:1〜6、10〜60、80、100、200]
− DRXインアクティビティタイマー:ユーザ機器が、PDCCHを最後に正常に復号化してから、さらなるPDCCHを正常に復号化するのを待機する期間(単位:ダウンリンクサブフレーム)。ユーザ機器は、この期間の間にPDCCHを正常に復号化できないとき、再びDRXに入る。ユーザ機器は、最初の送信(すなわち再送信ではない)のみについてPDCCHを1回正常に復号化した後に、インアクティビティタイマーを再起動する。[1〜2560個のサブフレーム、22ステップ、10予備:1〜6、8、10〜60、80、100〜300、500、750、1280、1920、2560]
− DRX再送信タイマー:最初の利用可能な再送信時間の後にユーザ機器がダウンリンク再送信を予測する、連続するPDCCHサブフレームの数を指定する。[1〜33個のサブフレーム、8ステップ:1、2、4、6、8、16、24、33]
− 短DRXサイクル:短DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復を指定する。このパラメータはオプションである。[2〜640個のサブフレーム、16ステップ:2、5、8、10、16、20、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640]
− 短DRXサイクルタイマー:DRXインアクティビティタイマーが切れた後にユーザ機器が短DRXサイクルに従う、連続するサブフレームの数を指定する。このパラメータはオプションである。[1〜16個のサブフレーム]
− 長DRXサイクル開始オフセット:長DRXサイクルにおいてオン期間の後に非アクティブ期間が続く周期的な反復と、オン期間が開始するときのオフセット(単位:サブフレーム)を指定する(非特許文献4の第5.7節に定義されている式によって求められる)。[サイクル長10〜2560個のサブフレーム、16ステップ:10、20、30、32、40、64、80、128、160、256、320、512、640、1024、1280、2048、2560。オフセットは[0〜選択されたサイクルのサブフレーム長]の間の整数]
【0089】
ユーザ機器がアウェイクしている合計期間は、「アクティブ時間」と称される。アクティブ時間には、DRXサイクルのオン期間と、インアクティビティタイマーが切れていない間にユーザ機器が連続受信を行っている時間と、1 HRQ RTTの後にダウンリンク再送信を待機している間にユーザ機器が連続受信を行っている時間とが含まれる。上記に基づくと、最小アクティブ時間は、オン期間に等しい長さであり、最大アクティブ時間は未定義(無限大)である。
【0090】
DRXの動作は、電力を節約する目的で、(その時点で有効なDRXサイクルに従って)反復的に無線回路を非アクティブにする機会を移動端末に提供する。DRX期間中にユーザ機器が実際にDRX(すなわちアクティブではない)状態のままであるかは、ユーザ機器によって決定することができる。例えば、ユーザ機器は通常では周波数間測定を実行するが、この測定はオン期間の間に実施することができず、したがって、DRX機会の間の他の何らかの時間に実行する必要がある。
【0091】
DRXサイクルをパラメータ化するときには、バッテリの節約と遅延(レイテンシ)との間のトレードオフを伴う。例えば、ウェブブラウジングサービスの場合、ダウンロードされたウェブページをユーザが読んでいる間、ユーザ機器がダウンリンクチャネルを連続的に受信することは、通常ではリソースの無駄である。長いDRX期間は、ユーザ機器のバッテリの寿命を延ばすうえで有利である。これに対して、短いDRX期間は、データ伝送が再開されるときに(例えばユーザが別のウェブページを要求するときに)より高速に応答するうえで有利である。
【0092】
これらの矛盾する要件を満たすため、各ユーザ機器に対して2つのDRXサイクル(短いサイクルと長いサイクル)を設定することができる。短DRXサイクルはオプションであり、すなわち長DRXサイクルのみが使用される。短DRXサイクル、長DRXサイクル、連続受信の間の遷移は、タイマーによって、またはeNodeBからの明示的なコマンドによって制御される。短DRXサイクルは、ある意味、パケットが遅れて到着する場合における、ユーザ機器が長DRXサイクルに入る前の確認期間とみなすことができる。ユーザ機器が短DRXサイクルにある間にeNodeBにデータが到着する場合、そのデータを送信するためのスケジューリングが次のオン期間において行われ、次いでユーザ機器は連続受信を再開する。これに対して、短DRXサイクルの間にeNodeBにデータが到着しない場合、ユーザ機器は、当面の間はパケット送信が終了したものと想定して長DRXサイクルに入る。
【0093】
ユーザ機器は、アクティブ時間の間、PDCCHを監視し、SRS(サウンディング基準信号)を報告し(設定されているとき)、CQI(チャネル品質情報)/PMI(プリコーディングマトリクスインジケータ)/RI(ランクインジケータ)/PTI(プリコーダタイプ指示情報)をPUCCHで報告する。ユーザ機器がアクティブ時間にないときには、トリガータイプ0のSRS(type-0-triggered SRS)およびCQI/PMI/RI/PTIをPUCCHで報告することはできない。ユーザ機器に対してCQIマスキングが設定されている場合、PUCCHでのCQI/PMI/RI/PTIの報告は、オン期間に制限される。
【0094】
利用可能なDRX値は、ネットワークによって制御され、非DRXから開始してx秒までである。値xは、RRC_IDLEにおいて使用されるページングDRXと同じ長さとすることができる。測定要件および報告基準は、DRX間隔の長さに従って異なることがあり、すなわち長いDRX間隔では、要件をより緩和することができる(後からさらに詳しく説明する)。
【0095】
図8は、DRXの例を開示している。ユーザ機器は、「オン期間」(この期間は長DRXサイクルおよび短DRXサイクルにおいて同じ)の間、スケジューリングメッセージ(PDCCH上のC−RNTI(セル無線ネットワーク一時識別子)によって示される)がないかチェックする。「オン期間」の間にスケジューリングメッセージが受信されたときには、ユーザ機器は、「インアクティビティタイマー」を起動し、インアクティビティタイマーが作動している間、各サブフレームにおいてPDCCHを監視する。この期間中、ユーザ機器は連続受信モードにあるものとみなすことができる。インアクティビティタイマーが作動している間にスケジューリングメッセージが受信されると、ユーザ機器はインアクティビティタイマーを再起動し、インアクティビティタイマーが切れたとき、ユーザ機器は短DRXサイクルに移行し、「短DRXサイクルタイマー」を起動する。短DRXサイクルは、MAC制御要素によって開始することもできる。短DRXサイクルタイマーが切れると、ユーザ機器は長DRXサイクルに移行する。
【0096】
このDRX挙動に加えて、HARQ RTTの間にユーザ機器がスリープできるようにする目的で、「HARQラウンドトリップタイム(RTT)タイマー」が定義される。1つのHARQプロセスにおけるダウンリンクトランスポートブロックの復号化に失敗すると、ユーザ機器は、そのトランスポートブロックの次の再送信が、少なくとも「HARQ RTT」のサブフレームの後に行われるものと想定することができる。HARQ RTTタイマーが作動している間、ユーザ機器はPDCCHを監視する必要がない。HARQ RTTタイマーが切れると、ユーザ機器は通常どおりにPDCCHの受信を再開する。
【0097】
ユーザ機器あたり1つのみのDRXサイクルが存在する。アグリゲートされたコンポーネントキャリアすべてがこのDRXパターンに従う。
【0098】
図9は、多数のサブフレームを含む長DRXサイクルを有するユーザ機器のDRX動作を示しているのに対して、
図10は、少数のサブフレームを含む長DRXサイクルを有するユーザ機器のDRX動作を示している。これらの図から理解できるように、
図10の「短い」長DRXサイクルは、
図9の長DRXサイクルと比較して、ユーザ機器をスケジューリングする機会をeNodeBが長時間にわたり待機しなくてよいことにおいて有利である。
【0099】
ファストドーマンシー
【0100】
スマートフォンでは、少量のデータを送るのみであるがパケットの送信頻度が比較的高いアプリケーションの数が増大している。このような常時オンのアプリケーションとしては、例えば、電子メール、インスタントメッセージ、ウィジェットが挙げられる。頻繁に送信を行いながら、ユーザ機器の電力消費量を低く維持することが重要である。低い電力消費量のためには、ユーザ機器をアイドル状態に移行させることができる。しかしながら、その場合には次のパケットによってパケット接続の確立が発生し、結果としてネットワークにおけるレイテンシおよびシグナリングトラフィックが増大するため、アイドル状態は回避するべきである。
【0101】
ユーザ機器の電力消費量を低く維持する目的で、所有権が保持された(すなわち3GPP規格によって定義されていない機能である)ファストドーマンシーが導入された。ファストドーマンシーの使用時には、モバイルアプリケーションはデータ送信が終了したときに無線層に通知し、次いで、ユーザ機器は、SCRI(シグナリング接続解放指示情報:Signaling Connection Release Indication)をRNCに送ることができ、シグナリング接続の失敗をシミュレートする。結果として、ユーザ機器はRRC接続を解放してアイドル状態に移行する。この方法では、ユーザ機器の電力消費量が低く維持されるが、パケット接続の確立が頻繁に発生し、シグナリング負荷が不必要に増大する。さらに、このバッテリ節約方法では、ネットワークにおける純粋なシグナリング接続の失敗と区別できないため、ネットワークカウンタは多数のシグナリング接続失敗を示す。
【0102】
3GPPリリース8によって指定されるファストドーマンシー機能では、ユーザ機器の挙動が明確化され、ユーザ機器が実際に望む動作の情報がネットワークに提供されるが、ユーザ機器のRRC状態の管理がネットワークに委ねられる。言い換えれば、ユーザ機器は、ネットワークの制御なしには自身の判断でRRC接続を解放してアイドル状態に移行することができない。ファストドーマンシーに関するさらなる情報については、非特許文献5の第15.6章を参照されたい。
【0103】
測定
【0104】
ユーザ機器によって実行される測定は、無線リソース管理の一部であり、eNBによって設定される。これらの測定は、主として(ただし以下に限定されない)、別のLTEセルまたは別の無線アクセス技術(RAT)に属するセルとのモビリティを扱う目的に役立つ。
【0105】
無線リソース管理手順(非特許文献6に指定されている)では、RRC_IDLE状態において実行される測定と、RRC_CONNECTED状態において実行される測定とが区別される。以下では、周波数内測定(すなわちサービングセルおよび同じ周波数帯域内に位置するセルに関する測定)と、周波数間測定(すなわち現在のサービングセルの周波数帯域とは異なる周波数帯域におけるセルの測定)と、RAT間測定(すなわちUTRAN以外の無線アクセス技術によって動作しているセルの測定)について、RRC_CONNECTED状態と、ユーザ機器が不連続受信(DRX)モードであるときに従わなければならない測定要件とに焦点を当てて、さらに詳しく説明する。
【0106】
周波数内測定
【0107】
LTEの周波数内監視は、サービングセルと、サービングセルと同じキャリア周波数を使用する隣接セルの両方に関する測定を実行することを目的とする。
【0108】
DRX動作が有効であるとき、ユーザ機器は、以降のDRXの「オン期間」の間の、電力を節約する機会を生かすことができなければならない。周波数内監視の動作の緩和は、「オン期間」の周期が40msより大きい場合にのみ定義される(非特許文献7の第13.6.1.1章)。
【0109】
DRXが使用されているときのRRC_CONNECTED状態における測定では、実行される周波数内測定(ならびに周波数間測定およびRAT間測定、以下を参照)の回数は、長DRXサイクルのDRXサイクル長に依存する。下の表は、DRXサイクルのサブフレームの数に依存する時間T_IdentifyおよびT_Measure(単位:秒)を開示している。
【0110】
RSRP(基準信号受信電力:Reference Signal Receive Power)測定およびRSRQ(基準信号基準品質:Reference Signal Reference Quality)測定を実行することができるためには、ユーザ機器は、最初に隣接セルと同期して隣接セルのセルIDを求めなければならない。T_Identifyは、まだ認識していない隣接セルの識別をユーザ機器が実行することが要求される時間である。例えば、DRXサイクルが40サブフレーム長〜80サブフレーム長の範囲内であるとき、ユーザ機器は、隣接セルの識別を40DRXサイクル(すなわち1.6〜3.2秒)以内に完了する必要がある。T_Measureは、サービングセルおよび隣接セルに関する周波数内測定を実行するのにユーザ機器が使用できる時間長を定義する。例えば、DRXサイクルが128サブフレームであるとき、ユーザ機器は周波数内測定を5DRXサイクル(すなわち0.64秒)以内に完了する必要がある。
【0111】
セルの識別および測定が実行される正確なタイミングは、ユーザ機器の実装に依存する。例えば、(周波数間測定とは異なり)無線部を別の周波数に再較正することを必要としない周波数内測定と、セルの識別と、測定は、ユーザ機器がすでにアクティブであるオン期間の間に実行することができる。
【0112】
正確な測定結果を得るためには5つの測定サンプルが必要であり、各測定サンプルに1つのサブフレームで十分であると想定する。非特許文献6の表8.1.2.2.1.2−2を参照すると、T_Measureは、40個未満のサブフレームのDRXサイクルの場合には0.2秒、40個以上のサブフレームのDRXサイクルの場合には5サイクルであることが示されている。結論として、例えば40個のサブフレームのDRXサイクル長では、200ms以内に測定値が得られる。セルの識別は、周波数内測定と並行して実行することができる。
【0113】
しかしながら、セルの識別では、各DRXサイクル内の、より長い時間長(例:5ms)が要求されることがある。
【0114】
【表3】
【0115】
周波数間測定
【0116】
LTEの周波数間監視は、周波数内監視に極めて似ている。ユーザ機器がDRXモードでないとき、周波数間測定は監視ギャップを使用して実施される。6msのギャップパターンの場合、周波数間監視に利用できるのは、切替え時間を除いて、わずかに5msである(すなわち無線周波数調整の時間は1msである)。640msにおける測定の場合、ユーザ機器は8回(80msのギャップ期間)または16回(40msのギャップ期間)を有することができる。5msは、セルの識別のために5ms毎に存在するプライマリおよびセカンダリ同期チャネルによる。
【0117】
監視ギャップが40msごとに反復する場合、周波数間監視に利用できるのはわずかに5/40=12.5%である。この理由のため、LTEの周波数間最大セル識別時間および測定期間は、周波数内の場合よりも長い必要がある。
【0118】
1つの監視ギャップの中にPSS(プライマリ同期シンボル:Primary Synchronization Symbol)およびSSS(セカンダリ同期シンボル:Secondary Synchronization Symbol)が存在することが保証され、なぜならこれらは5ms毎に反復するためであり、電力蓄積を実行してRSRP計算のための測定サンプルを取得するための十分な基準信号(RS)も存在する。さらに、LTEキャリアRSSI(受信信号強度インジケータ:Received Signal Strength Indicator)測定を実行してRSRQを導くための十分な信号も存在する。
【0119】
周波数内の場合と同様に、ユーザ機器がDRXモードにある場合、ユーザ機器がDRX期間を利用して電力を節約できるように、いくらかの動作の緩和が要求される。識別ではなく測定のみのためにユーザ機器が利用できる時間長は、ユーザ機器の実装に依存する。ユーザ機器は、測定および識別の両方に5ms以上を使用する。セルの識別および測定のためのこの時間期間は、受信器の無線周波数部分を別の周波数に再調整できるようにする目的で、アクティブ時間の外側である。
【0120】
下の表は、ギャップパターンID 0およびNfreq=1の場合の一例であり、その時点で有効なDRXサイクルのサブフレームの数に依存する、隣接セルの識別および周波数間測定の時間要件を開示している。
【0121】
【表4】
【0122】
RAT(無線アクセス技術)間
【0123】
RAT間測定は、UTRAN以外の別の無線アクセス技術(例:GSM(登録商標))に属するダウンリンク物理チャネルを対象とする。下の表は、ギャップパターンID 0、Nfreq=1、UTRA_FDDの場合の一例である。
【0124】
【表5】
【0125】
従来技術の欠点
【0126】
上にすでに説明したように、短DRXサイクルと長DRXサイクルによって、バッテリの大きな節約と、データスケジューリングに対する高速応答とのトレードオフが可能である。
【0127】
バッテリ電力の浪費は、ユーザ機器に課される測定要件および報告要件によってさらに悪化し、これらは長DRXサイクルに依存する。上述したように、周波数内測定、周波数間測定、およびRAT間測定は、実際のDRXサイクル長に依存する時間間隔内に移動端末によって実行される。さらに、ユーザ機器は、アクティブ時間においてSRSおよびCQI/PMI/RI/PTIをPUCCHで報告しなければならない。
【0128】
DRX動作のオン期間が、周波数内測定を実行するのに十分に長い(すなわち少なくとも5つのサブフレームである)場合、周波数内測定をオン期間の間に実行することができる。これに対して、周波数間測定は、ユーザ機器が非アクティブであることが許可されるDRX機会の1つの間に実行する必要があり、なぜなら、無線チューナーを別の周波数に較正する必要があり、一般にこの動作には6つのサブフレームを要するためである。
【0129】
測定要件は長DRXサイクルのサブフレーム長に依存するため、短DRXサイクルでは、ユーザ機器はより頻繁に測定を実行しなければならない。周波数内測定を例にとると、40個のサブフレームの長DRXサイクル長の場合、ユーザ機器は、1.6秒以内に隣接セルを繰り返し識別しなければならず、0.2秒以内に周波数内測定を実行しなければならない。例えば2560個のサブフレームの長DRXサイクル長の場合、時間要件は緩和され、隣接セルの識別は51.2秒以内に実行すればよく、周波数内測定は12.8秒以内に実行すればよい(上の表を参照)。
【0130】
したがって、データの送信/受信のための応答時間を低減できるように長DRXサイクルが短縮される場合、オン期間および測定要件によるバッテリに対する影響が大きい。
【0131】
したがって、ユーザ機器のバッテリ消費量に対する影響を最小限にしながら、ユーザ機器の高速な応答時間を可能とすることが重要である。
【発明を実施するための形態】
【0173】
以下の段落では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。例示のみを目的として、実施形態のほとんどは、3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE−A(リリース10/11)の移動通信システムによる無線アクセス方式に関連して概説してあり、これらの技術の一部については上の背景技術のセクションに説明してある。なお、本発明は、例えば、上の背景技術のセクションに説明されている3GPP LTE−A(リリース10/11)通信システムなどの移動通信システムにおいて有利に使用することができるが、本発明は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
【0174】
請求項および説明において使用されている用語「アクティブ」および「アクティブになる」は、不連続受信モードにおける移動端末の動作を意味し、例えば測定を実行して報告したりPDCCHを監視することができるように、移動端末がウェイクアップして、オン時間期間にわたりアクティブになることを意味する。したがって、この表現は、LTEの標準化において使用されている、ユーザ機器が「アクティブ時間に入る」という表現と同等である。
【0175】
本発明の一態様は、応答時間と、移動端末に提供されるバッテリ節約機会に関して、移動端末のDRX動作を改良することである。これを目的として、本発明では、短DRXサイクルもしくは長DRXサイクルまたはその両方と並行して動作する追加のDRXサイクル(以下ではDRXウェイクアップサイクルと称する)を導入する。
【0176】
図11は、本発明の一実施形態による、長DRXサイクルと並行するDRXウェイクアップサイクルを示しており、このサイクルを例示的に使用して、本発明の基礎となる概念について説明する。
図11は、例示的なものにすぎず、したがって本発明の保護範囲はこの特定の実施形態に制限されないものとする。
【0177】
本発明では、短DRXサイクルおよび長DRXサイクルのユーザ機器の動作を、標準規格と比較して変更せずに維持することができる。本発明によって導入されるDRXウェイクアップサイクルは、短DRXサイクルもしくは長DRXサイクルまたはその両方と並行して動作する。
【0178】
図11から明らかであるように、DRXウェイクアップサイクルは、長DRXサイクルのみと並行して動作しており、短DRXサイクルとは並行して動作していない。したがって、DRXウェイクアップサイクルによる移動端末の動作は、基本的には長DRXサイクルにおける移動端末の動作と同時に開始し、すなわち、短DRXサイクルタイマーが切れた時点で開始する。これに代えて、DRXウェイクアップサイクルは、長DRXサイクルを基準として所定の時間だけずれたタイミングで開始することもできる(図示していない)。
【0179】
図11には示していない別の実施形態によると、DRXウェイクアップサイクルは、短DRXサイクルにおける移動端末の動作と同時に開始する、すなわち、インアクティビティタイマーが切れた時点で、または対応するMAC CEを基地局から受信したときに開始することができる。さらに、短DRXサイクルを基準とする時間オフセットを導入することができ、移動端末は、DRXウェイクアップサイクルによる動作を開始する前に待機する。DRXウェイクアップサイクルを開始するための対応するオフセットパラメータは、wake−upDRX−CycleStartOffsetと称することができ、サブフレームの任意の特定の数(例えば、0と、DRXウェイクアップサイクルの実際のサイクル長との間の数)をとることができる。
【0180】
図11には示していないさらなる実施形態によると、DRXウェイクアップサイクルは、短DRXサイクルにおける移動端末の動作と同時に開始する、すなわち、インアクティビティタイマーが切れた時点で、または対応するMAC CEを基地局から受信したときに開始し、短DRXサイクルタイマーが切れた後に終了することができる。さらに、上述したように、短DRXサイクルを基準とする時間オフセットを導入することができ、移動端末は、DRXウェイクアップサイクルによる動作を開始する前に待機する。
【0181】
図11には示していない別の実施形態によると、DRXウェイクアップサイクルは、対応するMAC CEを基地局から受信した時点でのみ、すなわちeNodeBから命令された短DRXサイクルに移動端末が入ったときにのみ、短DRXサイクルにおける移動端末の動作と同時に開始することができる。DRXウェイクアップサイクルの使用は、短DRXサイクルタイマーが切れた後に終了する。
【0182】
図11を参照すると、短DRXサイクルタイマーが切れた時点で、DRXウェイクアップサイクルと長DRXサイクルとが同時に開始する。DRXウェイクアップサイクルに対して定義されている時間間隔の後、移動端末は、自身を宛先とするPDCCH(すなわち移動端末に割り当てられているRNTIの1つによってマスクされているPDCCH)がないか、1つのサブフレームの制御領域の監視を開始する。したがって、移動端末は、必要な無線部分に給電し、この1つのサブフレームの中の監視対象の制御領域に自身へのメッセージ(任意のDCIフォーマット)が存在しないかをチェックするため、さまざまなブラインド復号化の試みを行う。なお、移動端末は、PDCCHがないかサブフレームの制御領域の監視を実行するのみであり、その他の動作は実行しないことに留意されたい。
【0183】
移動端末は、何らのメッセージも見つからない場合、DRXモードを続行し、1つのサブフレームのウェイクアップ期間においてPDCCHを対象とする監視を再び開始するまで、DRXウェイクアップサイクルの時間間隔の間、待機する。移動端末は、アクティブ時間に入るまでこの動作を反復的に実行し、なぜなら移動端末は、自身を宛先とするPDCCHメッセージを、短/長DRXサイクルのオン期間の間、またはDRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間の間に検出するためである。
【0184】
さらに、移動端末がDRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間の間にPDCCHメッセージを受信したときの移動端末の挙動は、短/長DRXサイクルのオン期間の間にPDCCHメッセージを受信したときの移動端末の挙動と同じであることに留意されたい。いずれの場合も、移動端末は次のサブフレームでアクティブになる、すなわちアクティブ時間に入る(前のサブフレームがウェイクアップ期間であったとき)、または、例えばPDCCHにおいて受信されたメッセージに従ってアクティブ時間のままでいる(前のサブフレームがDRXオン期間であった場合)。
【0185】
図11から明らかであるように、DRXウェイクアップサイクルにおいて提供されるウェイクアップ機会の間の時間間隔は、長DRXサイクルのオン期間の間の時間間隔よりもずっと短い。これは厳密には必要ではないが、長DRXサイクルのみに従って動作することと比較して応答時間を改善するという利点を提供するため、DRXウェイクアップサイクルは長DRXサイクルよりも短いべきである。
【0186】
本発明の一実施形態においては、DRXウェイクアップサイクルの間隔(すなわちウェイクアップ期間の間にはさまれた間隔)は、短DRXサイクルに対して設定される間隔と同じにすることができる。したがって、この場合、DRXウェイクアップサイクルは、短DRXサイクルに対して定義されているshortDRX−cycleパラメータをそのまま使用する。これに代えて、当然ながら、DRXウェイクアップサイクルに対して個別のパラメータ、例えばwake−upDRX−cycleパラメータを定義することができ、このパラメータは、shortDRX−cycleと同様にサブフレームの任意の特定の数(例:2〜640個の範囲内のサブフレーム(16ステップ))をとることができる。
【0187】
同様に、DRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間を、短/長DRXサイクルのオン期間と同じにすることができ、したがってonDurationTimerパラメータによって設定される。長いウェイクアップ期間では、基地局はPDCCHメッセージを移動端末により柔軟に送信することができるが、移動端末がPDCCHを監視するサブフレームごとにバッテリ消費量が増大し、DRXウェイクアップサイクルが比較的短いためバッテリに影響する。したがって、これに代えて、より有利な方法として、DRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間をずっと短くする(例:1つのサブフレーム)べきであり、個別のパラメータ(例えばwake−upDurationTimerと称される)によって設定することができ、このパラメータは、少ない数のサブフレーム(例えば1〜8つのサブフレーム(8ステップ))をとることができる。
【0188】
測定要件および報告要件(例えば周波数内測定、周波数間測定、RAT間測定、CQI報告)は、背景技術のセクションで詳しく説明したように、長DRXサイクルの間隔の長さに依然として依存する。測定要件および報告要件は、本発明のDRXウェイクアップサイクルには依存しない、またはDRXウェイクアップサイクルによって影響されない。したがって、移動端末はウェイクアップする機会をより頻繁に有するが、測定または報告をそれほど頻繁に実行する必要はない。移動端末は、ユーザ機器の実装に応じて、長DRXサイクルによって与えられるDRX機会の間に必要な測定を実行する。例えばオン期間の間に周波数内測定を実行したり、DRX機会の1つにおいて周波数間測定を実行するとき、移動端末は自身のRF部に電力を供給し、RF部を対応する周波数に再調整し、周波数間測定を実行する。
【0189】
ウェイクアップ期間の間の移動端末の挙動は、オン期間の間の挙動とは異なる。オン期間の間の移動端末はアクティブである(すなわちアクティブ時間にある)とみなされるが、ウェイクアップ期間の間の移動端末は、そのようなアクティブとしてみなされない。移動端末は、必要な部分に給電して、自身に割り当てられているRNTIにアドレッシングされたPDCCHがないかダウンリンク制御領域を監視するのみであり、この手順は、さまざまなDCIフォーマットのブラインド復号化を含む。ウェイクアップ期間の間、移動端末は、CSIの報告やその他の測定を実行する必要がない。したがって移動端末は、PDCCHがないか監視するのみである。
【0190】
DRXウェイクアップサイクルによるウェイクアップ期間が、(
図11におけるように)別の短/長DRXサイクルの一方によるオン期間の一部でもあるサブフレームに位置する場合、ユーザ機器の挙動は、その短/長DRXサイクルの一方に従う。言い換えれば、ウェイクアップ期間とオン期間とが互いに一致する(またはいくつかのサブフレームにわたり重なる)とき、DRXウェイクアップ期間が短/長DRXサイクルのオン期間によって上書きされる。基本的に移動端末は、オン期間の各サブフレームの間、(ウェイクアップ期間の間に監視するのと同じように)PDCCHがないか監視するため、オン期間とウェイクアップ期間とが一致することによってDRXウェイクアップサイクルの機能が影響されることはない。
【0191】
図12は、長DRXサイクル/DRXウェイクアップサイクルに入ってから短い時間の経過後に移動端末へのダウンリンクデータが到着する場合に、DRXウェイクアップサイクルおよび長DRXサイクルによって与えられる異なるスケジューリング機会の一例を開示している。
図12から理解できるように、本発明によると、基地局は、例えばPDCCH DCIフォーマット1を送信するための機会として移動端末のウェイクアップ期間を使用することで、ダウンリンクデータを受信してから短い時間の経過後に移動端末をスケジューリングすることができる。当然ながら、何らかの別の動作(例:別の移動端末をスケジューリングする)によって基地局が妨げられることがなく、1つのサブフレームのウェイクアップ期間によって与えられるこのウェイクアップ機会を利用できるものと想定する。
【0192】
これとは異なり、
図12には、代わりに長DRXサイクルのオン期間を使用して移動端末がスケジューリングされる場合も(点線によって)示してある。基地局は、移動端末をスケジューリングすることができるまで、より長い時間だけ待機する必要があり、したがって移動端末の応答時間はかなり長い。
【0193】
図13を参照すると、本発明の一実施形態のDRXウェイクアップサイクルの機能と、長DRXサイクルの機能とを比較するため、定量的な例が示してある。
図13の例においては、DRXウェイクアップサイクルが長DRXサイクルと同時に開始し、長DRXサイクルと並行するものと想定する。DRXウェイクアップサイクルは160個のサブフレームであるものと想定し、長DRXサイクルは2560個のサブフレームであるように設定されている。オン期間は4ms(すなわち4つのサブフレーム)とし、ウェイクアップ期間は1つのサブフレームである。
【0194】
図13から明らかであるように、移動端末の最初のウェイクアップ期間から短い時間の経過後に(ウェイクアップ期間の終了から1サブフレーム後であると想定する)データが到着し、これはDRXウェイクアップサイクルにとって最悪のケースと考えることができる。したがって、基地局は、次の2番目のウェイクアップ期間によって与えられる最初のウェイクアップ機会まで少なくとも159個のサブフレーム(159ms)だけ待機しなければならない。一方で長DRXサイクルを考えると、基地局は、移動端末のオン期間を使用して移動端末をスケジューリングするための最初の機会まで、2399個のサブフレーム(2560−161個のサブフレーム)だけ待機しなければならない。したがって、これは2240msの遅延の減少であり、言い換えれば、長DRXサイクルの場合の遅延のわずか6.6%である。
【0195】
第2の例においては、最後から2番目のウェイクアップ期間から1サブフレーム後にダウンリンクデータが到着し、これは、次のように160msの最小の利得が得られる例である。DRXウェイクアップサイクルによると、基地局はダウンリンクスケジューリングするために159ms待機しなければならない。長DRXサイクルのみを考慮すると、基地局は、移動端末をスケジューリングするために319ms(160ms+159ms)待機しなければならない。
【0196】
すでに上述したように、応答時間の減少は、わずかな追加の電力消費量と引換えに得られ、これについて
図13の上の例に従って以下に説明する。電力消費量に関して最悪のシナリオは、DRXサイクルの間にデータが受信されないことである。移動端末は、PDCCHを監視するために15個の追加のサブフレームにおいてRF部に給電しなければならない。2560msと4msのオン期間を有する長DRXサイクルでは、電力を99.84%(1−4/2560)低減することができる。これに対して、DRXウェイクアップサイクルにも従って動作する移動端末では、電力が99.25%(1−19/2560)低減され、したがって、電力節約上の損失はわずかに0.59%である。
【0197】
しかしながら、上の考察は、移動端末の理論上の電力消費量を考慮しているにすぎない。実際には、移動端末は最初にRF部に電力を投入し、ウェイクアップ期間(さらにはオン期間)の後にRF部への電力を落とす必要がある。言い換えれば、前ウェイクアップ期間および後ウェイクアップ期間が存在し、これらの長さはユーザ機器の実装に依存する。1つの現実的な実装においては、前ウェイクアップ期間を5msと想定することができ、後ウェイクアップ期間を3msとすることができる。したがって、ウェイクアップ期間は合計で9ms(5ms+1ms+3ms)となり、オン期間は合計で12ms(5ms+4ms+3ms)となる。これらの「現実的な」電力消費期間を考慮すると、長DRXサイクルのみによって提供される電力低減は99.53%であり、DRXウェイクアップサイクルが並行するときに提供される電力低減は94.26%(1−(15*9/2560+12/2560))である。したがって、DRXウェイクアップサイクルによって、5.26%の電力節約上の損失が生じる。
【0198】
本発明によって提供される利点をさらに評価するため、以下では、移動端末によって満たされるべき測定要件に関してDRXウェイクアップサイクルと「短い」長DRXサイクルとを比較し、ここでは特に、周波数内測定および周波数間測定のみを考慮する。いま、長DRXサイクルが2560msの長さであり、DRXウェイクアップサイクルが並行して動作するものと想定する。一方で、長DRXサイクルが160個のサブフレームの長さであり、DRXウェイクアップサイクルが使用されないものと想定する。前述したように、移動端末の測定要件および報告要件は、依然として長DRXサイクルに従い、長DRXサイクルと並行して動作するDRXウェイクアップサイクルによって影響されたり変更されることはない。DRXウェイクアップサイクルに関して、測定のための追加のサブフレームは必要ない。
【0199】
移動端末の実装によっては、オン期間のサブフレームをセル内測定に使用することができる。したがって、オン期間が5つのサブフレームよりも長い場合、周波数内測定のために追加のサブフレームは必要ない。しかしながら、以下では、例示を目的としてこの点については考慮しない。移動端末は、オン期間の外側のサブフレームにおいて周波数内測定を実行するものと想定する。
【0200】
周波数内測定と、対応する隣接セルの識別とが組み合わせて実行されるものと想定されるとき、オン期間が少なくとも1つのサブフレームであり、測定に使用できるものと想定すると、移動端末は、DRXサイクルごとに4つの追加のサブフレームにおいて電力を消費することが要求される。
【0201】
その一方で、前の長DRXサイクルが2560msの長さであったと想定すると、160個のサブフレームのDRXウェイクアップサイクルの場合と同じ応答時間が得られるように(上記を参照)、長DRXサイクルを160個のサブフレームに短縮した場合、移動端末は、周波数内測定およびセルの識別のために、2.56秒内に16*4個のサブフレームを消費しなければならない。したがって、長DRXサイクルを160msに短縮したときに周波数内測定に使用されるサブフレームの差は60個である。
【0202】
周波数間測定および対応するセルの識別に関しては、長DRXサイクルが2560個のサブフレームである場合、移動端末は2.56秒ごとに6つの追加のサブフレームにおいて電力を消費することが要求される。
【0203】
その一方で、長DRXサイクルが160個のサブフレームに短縮される場合、移動端末は周波数間測定のために2.56秒内に16*6個のサブフレームを消費しなければならない。これは90個の追加のサブフレームを意味する。
【0204】
したがって、周波数内測定および周波数間測定の要件のみを考慮するとき、わずか160個のサブフレームの短い長DRXサイクルでは、必要な周波数内測定/周波数間測定およびセルの識別を実行するために150個の追加のサブフレームが要求される。これは、増大した測定要件に従うためだけのために、移動端末の電力消費量の5.86%(150/2560)の損失を意味する。言い換えれば、本発明の一実施形態によるDRXウェイクアップサイクルを実施することによって、長DRXサイクルが160個のサブフレームとして設定されている場合に周波数内測定および周波数間測定を実行するのに必要となる150個のサブフレームを節約することができる。したがって、2560個のサブフレームの長DRXサイクルとともに160個のサブフレームのDRXウェイクアップサイクルを適用するときには、160個のサブフレームを使用する代わりに、必要なサブフレームはわずか10個である。これは、測定のための電力が93.75%(150サブフレーム/160サブフレーム)減少することを意味する。
【0205】
さらに、2560個のサブフレームにおいて、4msのオン期間と、オン期間あたりの前ウェイクアップ期間および後ウェイクアップ期間の追加の8msを想定すると、移動端末は、オン期間のための12*16個のサブフレームと、測定のための150個のサブフレームとを使用しなければならない。したがって、2560個のサブフレームのうち342個のサブフレームが消費され、これらは移動端末が電力を節約する目的に使用することができない。したがってこの場合、DRXによる電力節約は、わずか86.64%に減少する。
【0206】
実際には、移動端末は周波数内測定および周波数間測定を実行しなければならないのみならず、RAT間測定などの別の測定やCQIおよびSRSの報告なども実行しなければならないため、測定の要件に従うための電力節約上の損失はさらに大きい。
【0207】
したがって、短い長DRXサイクルでは、セル測定の要件が大幅に増大し、このことが本発明によって回避されることに留意されたい。
【0208】
従来技術のDRXの設定と同様に、DRXウェイクアップサイクルは、例えば上の段落ですでに説明した設定パラメータを使用するRRCメッセージを使用して、基地局によって移動端末に対して設定することができる。したがって、eNodeBは、各移動端末のDRXウェイクアップサイクルを認識しており、したがって、対応するウェイクアップ期間のサブフレームによって提供されるスケジューリング機会を利用して、移動端末をスケジューリングする、もしくは小さいデータを送信する、またはその両方を行うことができる。
【0209】
本発明の実施形態の1つの欠点として、移動端末において利用可能なチャネル品質に関する現在の情報を基地局が認識することができず、スケジューリングを現在のチャネル状態に基づいて行うことができないため、基地局によるスケジューリングが非効率的なものとなる。測定要件および報告要件は長DRXサイクルにリンクされており、DRXウェイクアップサイクルにはリンクされていないため、移動端末は、必要な頻度でチャネル品質情報を測定せず、基地局にも報告しない。基地局は、ダウンリンクデータと、ダウンリンクデータのための対応するPDCCHメッセージとを、ウェイクアップ期間のサブフレームにおいて移動端末に送る機会を有する。基地局はチャネル状態を認識していないため、不足しているチャネル品質情報を補って、ダウンリンクデータが移動端末において確実に正しく受信されるように、保守的な変調・符号化方式を使用することができる。結果として、基地局は、少量のダウンリンクデータを小さい遅延のみで移動端末に転送することができ、この転送は、チャネル品質情報が存在しない状態で行われる。
【0210】
さらには、移動端末がDCIフォーマット0のメッセージをPDCCHで受信した場合に、チャネルを測定し、アップリンクデータに加えてチャネル品質情報を基地局に送信するように移動端末を構成することができる。これは特に有用であり、なぜなら、そうでない場合、すぐ上で説明したように基地局にはチャネル状態の情報が存在しないためである。したがって、移動端末は、チャネルに関する必要な測定を実行し、DCIフォーマット0のメッセージによって割り当てられたアップリンクグラントを使用して、CQIを基地局に送信する。当然ながら、この動作は、アップリンクグラントの有効期限が切れる前にチャネルを測定するための十分な時間がユーザ機器にあるかによっても決まる。
【0212】
背景技術のセクションで説明したように、いくつかのDCIフォーマットがPDCCHで送信され、移動端末は、PDCCHがないか監視するときにこれらのPDCCHメッセージを識別するためさまざまなブラインド復号化の試みを実行しなければならない。ここまでの実施形態においては、移動端末がオン期間においてPDCCHを監視するのと同じ方法でウェイクアップ期間の間にPDCCHを監視するものと想定した。すなわち、ユーザ機器は、基本的にはすべてのDCIフォーマットを監視し、背景技術のセクションで詳しく説明したように、一部のフォーマットは共通サーチスペースにおいて、別のフォーマットはユーザ機器に固有なサーチスペースにおいて監視する。
【0213】
本発明の以下の実施形態においては、ウェイクアップ期間の間、移動端末はすべての種類のDCIフォーマットではなくその一部のみを対象としてPDCCHを監視するものと想定する。言い換えれば、移動端末は、ウェイクアップ期間の間、自身を宛先とする所定のメッセージのみを対象としてPDCCHを監視する。
【0214】
本発明の例示的な一実施形態においては、監視されるDCIフォーマットが、DCIフォーマット0、1A、3、および3Aに限定される。背景技術のセクションから明らかであるように、これらのDCIフォーマットは同じサイズ(すなわち42ビット)を有し、したがって、移動端末は、1種類のDCIサイズのみについてブラインド復号化を実行すればよく、これにより、移動端末が実行する必要のあるブラインド復号化の試行回数が減少する。DCIフォーマット0、1A、3、および3Aでは、アップリンクスケジューリングおよびダウンリンクスケジューリングを行うことができ、さらに、送信電力制御コマンドを移動端末に提供することができる。
【0215】
DCIフォーマットに関する別の制約も可能である。例えば、1種類のDCIフォーマットのみを対象として監視するように移動端末を構成することができ、例えばDCIフォーマット0の場合、アップリンク割当てのみに移動端末が制限され、DCIフォーマット1Aの場合、ダウンリンク割当てのみに移動端末が制限される。この方法の利点として、あらかじめ既知である1種類の送信のみを移動端末が監視できるようにすればよい。
【0216】
これに加えて、またはこれに代えて、移動端末は、CQIのみの割当て(CQI-only assignment)を示すコードポイントを含んでいないDCIフォーマットすべてを無視することができる。CQIのみのコードポイントは、移動端末がトランスポートブロックの受信または送信についてMAC層に通知することなく、チャネル測定を実行してCQIを基地局に報告するべきであることを、移動端末に伝える。移動端末は、CQIを基地局に送るのに制御チャネル(PUCCH)を使用し、なぜならそれ以外のアップリンクリソースが移動端末に提供されていないためである。したがって、特に、ダウンリンクデータが移動端末に送信されようとしており、データをユーザ機器に転送する前に基地局がチャネル状態を最初に認識しておくことを望む場合に、基地局は、移動端末からのCQIを明示的に要求することができる。しかしながら、測定を実行してCQIを報告するようにユーザ機器に最初に要求するステップによって、ダウンリンクデータを移動端末に転送するのに6〜8msの追加の遅延が発生する。
【0217】
しかしながら、この6〜8msの遅延は、SCellがウェイクアップするのに必要な時間にほぼ相当する。したがって、SCellが関与する場合、この遅延による悪影響が生じないことがある。
【0218】
本発明の別の実施形態においては、移動端末がPDCCHを対象として監視するアグリゲーションレベルが制限される。背景技術のセクションで説明したように、PDCCHフォーマットは、PDCCHを送信するために使用されるCCEの数を定義する。例えばチャネル条件に応じて、1個、2個、4個、または8個のCCEを使用することができる(8個のCCEが最もロバストであり、1個のCCEのロバスト性が最小である)。しかしながら、少ない数のCCEを使用してPDCCHが送信されるときには、移動端末は、PDCCHメッセージを対象としてサーチスペースを走査するために多くの回数のブラインド復号化を実行しなければならない。したがって、ユーザ機器によるブラインド復号化の試みを制限する目的で、監視されるPDCCHフォーマットを、例えばPDCCHフォーマット2および3のみに制限する(すなわち4個のCCEおよび8個のCCEが使用されるのみである)、または、PDCCHフォーマット3のみに制限する(すなわち8個のCCEを有するメッセージをチェックするのみでよい)ことができる。
【0219】
移動端末におけるブラインド復号化の試みを減らすためのさらなるオプションとして、PDCCHの監視を、共通サーチスペースのみ、または移動端末に固有なサーチスペースのみに制限する。
【0220】
PDCCHの監視を制限する上記のいくつかの実施形態、すなわち特定のDCIフォーマットに制限する、所定のPDCCHフォーマットに制限する、および一方のサーチスペースに制限する実施形態は、これらを組み合わせることで、ユーザ機器がブラインド復号化に消費する電力をさらに低減することができる。
【0221】
DRXウェイクアップサイクルを導入すると、1つのサブフレームの間にPDCCHを監視する移動端末がいくつか存在する。LTEにおけるフォールスアラームの確率が受け入れ可能であることが判明したことを考慮すると、上記の実施形態のうちの1つまたは組合せによってブラインド復号化の試みを減らすことは、フォールスアラーム率をさらに減少させるうえで役立つ。
【0222】
以下の説明では、ユーザ機器にキャリアアグリゲーションが適用され、したがってユーザ機器はプライマリセル(PCell)と1つまたはいくつかのセカンダリセル(SCell)を有するものと想定する。従来技術によるDRX動作は、完全なユーザ機器において有効であり、したがってPCellおよび任意の他の(アクティブな)SCellにおいて有効である。したがって、ユーザ機器は、各PCellおよびSCellにおいて個別に、短/長DRXサイクルに従って動作し、PCellのPDCCHおよび各SCellのうちの1つのPDCCHを、その時点でアクティブなDRXサイクルに従って監視する。
【0223】
本発明の一実施形態においては、DRXウェイクアップサイクルの動作を、PCellと任意のSCellとにおいて同じとすることができる。すなわち、移動端末は、PCellにおいて、上述した実施形態の1つに従ってDRXウェイクアップサイクルを実行するのみならず、SCellのそれぞれにおいても実行する。
【0224】
しかしながら、本発明の別の実施形態によると、DRXウェイクアップサイクルがPCellのみにおいて実行され、SCellのいずれにおいても実行されないように移動端末を構成することができる。短/長DRXサイクルは依然としてSCellに適用されるが、DRXウェイクアップサイクル動作は適用されない。言い換えれば、DRXウェイクアップ期間の間、移動端末は、PCell上でPDCCHを監視するのみである。
【0225】
この状況について
図14を使用して説明する。この図は、PCellと1つのSCellとを示している。図から明らかであるように、短/長DRXサイクルの動作はPCellおよびSCellにおいて同じであり、従来技術による動作とも異なっていない。これに対して、
図14から理解できるように、本発明のこの実施形態によると、ユーザ機器は、PCellにおいてのみ、本発明の前の実施形態の1つに従って、DRXウェイクアップサイクルに従って動作する。この場合、例えば、移動端末は、DRXウェイクアップサイクルと長DRXサイクルをオフセットなしで一緒に開始させる。
【0226】
これにより、ユーザ機器はSCell上でPDCCHを監視する必要がないため、さらなる電力を節約することができる。このことは、SCellが別の周波数上である(帯域間アグリゲーション)場合に、特にあてはまり、なぜなら移動端末の無線ヘッド(無線周波数部)をSCellに対してオフにできるためである。
【0227】
クロスキャリアスケジューリングでは、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、各DCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(CIFと称する)が導入される。しかしながら、DRXウェイクアップサイクルがPCellのみにおいて実施されるときには、クロスキャリアスケジューリングがサポートされないことがあり、なぜなら、SCellではウェイクアップ期間においてメッセージを復号化できることが要求されるためである。
【0228】
このことは
図15に示してあり、
図15は、PCell上で対応するPDCCHメッセージを受信した後に必要なSCellウェイクアップ時間を示している。SCellは、8ms以降(前に非アクティブ化されたSCellをアクティブ化するために必要な時間に似ている)にスケジューリングできる状態とすることができる。
【0229】
したがって、SCellのためのスケジューリングメッセージがPCell上のPDCCHで受信される場合、ユーザ機器は、SCellの同じサブフレーム上のダウンリンクデータを復号化することができない。SCellのためのアップリンクスケジューリングメッセージがPCell上のPDCCHで受信される場合、ユーザ機器には、間に合うようにSCellをウェイクアップさせてアップリンクデータを作成してSCellを介して送るための十分な時間が依然として存在しない。
【0230】
したがって、本発明の一実施形態においては、移動端末は、クロススケジューリングメッセージ(すなわちSCellの1つを指すキャリアインジケータを有するPDCCHメッセージ)を無視する。
【0231】
本発明のさらに別の実施形態によると、移動端末は、DRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間の間にPDCCHを監視するとき、セルの完全なセル帯域幅を監視せずに、セル帯域幅の一部のみに監視を制約する。ここまでの説明では、セルが5MHzの周波数帯域幅を有すると想定すると、利用可能な5MHzのすべてを使用してPDCCHを監視するとき、移動端末は5MHzのセルの完全な帯域幅にわたりセルを受信するものと想定してきた。しかしながら、バッテリ電力をさらに節約する目的で、移動端末は、セルの帯域幅の一部のみ(例えばサブバンドの中心周波数の周囲1.4MHz)を監視することができる。通常では、システム情報は、中心周波数の周囲1.4MHzのサブバンドにおいて送信される。
【0232】
当然ながら、移動端末がPDCCHを監視するときにメッセージを復号化することができるように、eNodeBは、この減少した1.4MHzの周波数サブバンドにおいてメッセージを移動端末に送信する必要がある。
【0233】
さらには、上述したように周波数帯域幅が制限されるとき、eNodeBは、この制限された周波数帯域幅において有効帯域幅インジケータ(Active Bandwidth Indicator)を移動端末に送ることができる。移動端末は、有効帯域幅インジケータを検出すると、受信帯域幅を例えば5MHzの通常のセル帯域幅に戻す。したがって、DRXウェイクアップサイクルの以降に発生するウェイクアップ期間において、ユーザ機器は完全な周波数帯域幅を監視する。あるいは、ユーザ機器は、有効帯域幅インジケータを、アクティブ時間に入るためのトリガーとして認識することができる。
【0234】
本発明のさらなる実施形態は、DRXウェイクアップ期間の発生を制限することに関し、以下ではこれについてさらに詳しく説明する。例えば、スマートフォンでは、いくつかのアプリケーションが、実際にこれらが使用されていない間も同時に実行されている。アプリケーションは、ネットワークとの接続を維持する目的で、キープアライブパケットを受信する。これらのキープアライブパケットは、「合成された」周期(“combined” periodicity)で、この周期を中心としてばらついて到着することがある。キープアライブパケットの到着を正確に求めることは難しいが、キープアライブパケットは長DRXサイクルの次のオン期間まで遅延することはない。通常、長DRXサイクルは、DRXオン期間がキープアライブパケットの予測される到着時に配置されるように設定される。
【0235】
eNodeBが長DRXサイクルを適合化するとき、ユーザ機器は、キープアライブパケットの到着に関する統計情報によってこれを支援できるが、キープアライブパケットがばらついてもよいならば有利であろう。ユーザ機器および短DRXサイクルのアクティブ時間は十分ではなく、なぜなら、これらは、長DRXサイクルにおけるオン期間に最初のパケットが受信されたときに到着するパケットを処理できるのみであるためである。
【0236】
したがって、本発明の別の実施形態によると、DRXウェイクアップサイクルは、限られた期間のみにおいてユーザ機器がDRXウェイクアップサイクルに従って動作するように設定される。したがって、DRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間の発生が減少する。
【0237】
この実施形態の一実装によると、DRXウェイクアップサイクルが開始するときに、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが起動される。ユーザ機器は、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが作動しているときのみ、DRXウェイクアップサイクルによって与えられる時間間隔に従って、ウェイクアップ期間にわたりPDCCHを監視する。ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが切れると、ユーザ機器は、たとえPDCCHがDRXウェイクアップサイクルに従う場合であってもPDCCHを監視しない。ウェイクアップ期間イネーブルタイマーは、ユーザ機器が長DRXサイクルのオン期間のアクティブ時間を終了させるたびにリセットされる。これにより、DRXウェイクアップ期間の発生を、長DRXサイクルのオン期間の後の限られた時間長に限定することができる。
【0238】
これについて
図16を参照しながら説明する。
図16は、長DRXサイクルのオン期間の終了後にウェイクアップ期間イネーブルタイマーが作動していることを示している。本発明のここまでの実施形態と同様に、DRXウェイクアップサイクルは長DRXサイクルと同時に開始するものと想定する。DRXウェイクアップサイクルの開始に伴って、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーも初めて起動する。前述したように、ユーザ機器は、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが依然として作動している限り、DRXウェイクアップサイクルに従って動作する。したがって、DRXウェイクアップサイクルのウェイクアップ期間が近づく(すなわち移動端末がPDCCHを監視することになる)たびに、ユーザ機器は、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが依然として作動しているか、またはすでに切れているかに関して、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーを最初にチェックする。移動端末は、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーが依然として作動している(すなわちまだ切れていない)場合にのみ、(前の実施形態で説明したように)ウェイクアップ期間にわたりPDCCHを監視する。そうでない場合、ユーザ機器は、たとえPDCCHがDRXウェイクアップサイクルに従う場合であっても、ウェイクアップ期間にわたりPDCCHを監視しない。
図16においては、これにより移動端末は、長DRXサイクルのオン期間の後の(4つではなく)2つのDRXウェイクアップ期間にわたり、PDCCHの監視を実行するのみである。
【0239】
したがって、キープアライブパケットが、予測される時刻(オン期間の間)の後に予測されないタイミングで到着する場合、DRXウェイクアップサイクルによって、基地局がキープアライブパケットを移動端末に転送するためのさらなるスケジューリング機会が得られる。これと同時に、移動端末は、ウェイクアップ期間のすべてのウェイクアップ機会においてPDCCHを監視しなくてよく、これによって電力がさらに節約される。
【0240】
上の実施形態に代えて、または上の実施形態との組合せにおいて、長DRXサイクルのオン期間の後のみにウェイクアップ期間の発生を制限する代わりに、別の実施形態では、長DRXサイクルのオン期間の前のみにウェイクアップ期間の発生を制限することができる。したがって、ウェイクアップ期間イネーブルタイマーの代わりに(またはこれに加えて)、ユーザ機器においてウェイクアップ期間禁止タイマーが実施され、ユーザ機器は、ウェイクアップ期間禁止タイマーが作動していないときに、DRXウェイクアップサイクルによるウェイクアップ期間にわたりPDCCHを監視するのみである。
【0241】
これは
図17に示してあり、この図には、オン期間の前に2つのみのウェイクアップ期間が発生することが示されている。移動端末が実際にPDCCHを監視するのは2回のみであり、なぜなら最初の2つのウェイクアップ機会は、ウェイクアップ期間禁止タイマーが作動していることにより使用されないためである。ウェイクアップ期間禁止タイマーは、前のウェイクアップ期間イネーブルタイマーと同様に、長DRXサイクルのオン期間が切れた時点で(アクティブ時間が終了するとき)リセットされる。
【0242】
上に説明したタイマーの一方または両方を使用することによって、移動端末の環境およびニーズに適合するようにと、それと同時に、ダウンリンクパケットが受信されないウェイクアップ期間におけるバッテリ電力の無駄を回避するため、DRXウェイクアップサイクルを柔軟に設定することが可能である。
【0244】
さらなる実施形態においては、移動端末は、RRC_CONNECTED状態でDRXモードにある間、ページング機会の間にPDCCHを監視する。
【0245】
現在の仕様においては、システム情報の変更についてユーザ機器に通知されるようにする目的で、ユーザ機器は、RRC_CONNECTED状態にあるときにもページング機会を監視することができる。ページング機会は、長DRXサイクルにおけるオン期間よりも高い頻度で発生する。
【0246】
さらなる実施形態によると、長DRXサイクルにあるユーザ機器は、ページング機会の間、メッセージがないかPDCCHを監視することができる。この目的のため、ウェイクアップRNTI(WU−RNTI)が導入され、PDCCHメッセージがWU−RNTIによってスクランブルされているとき、そのことはユーザ機器にウェイクアップするように命令する。P−RNTIの場合と同様に、システム内には移動端末に対するWU−RNTIのみが存在する。
【0247】
したがって、ページングメカニズムとウェイクアップメカニズムとが分かれており、これにより、ページングメッセージまたはウェイクアップメッセージを不必要に受信することが回避される。
【0248】
ページング機会において送信されるウェイクアップメッセージには、通常のページングメッセージに類似して、wakeUpRecordListが追加される。長DRXサイクルにあるユーザ機器は、このwakeUpRecordListを読み取って、自身の識別情報(C−RNTI)が見つかった場合、DRXからウェイクアップする。
【0249】
これは
図18に示してある。
図18は、さまざまなページング機会を示しており、eNodeBはそのうちの1つを使用して、ユーザ機器へのダウンリンクデータが到着した後にWU−RNTIを用いてPDCCHメッセージを送信する。したがって、ユーザ機器は、このメッセージを対象としてPDCCHを監視し、メッセージを復号化し、WU−RNTIが含まれているため自身がウェイクアップすることを認識する。ページングの発生した後、定義されたサブフレーム時間の経過後に、ユーザ機器はアクティブ時間に戻り、例えばスケジューリングされることができる。この間隙は、ページングメッセージを受信する時間を提供するために必要であり、少なくとも4つのサブフレーム、またはSCellのアクティブ化に類似して8つのサブフレームも可能である。この時間において、移動端末はeNodeBからのウェイクアップメッセージを受信することができ、この場合、移動端末のC−RNTIによってCRCがスクランブルされる。この手順の開始時、移動端末がデータ送信を受信することはできず、ウェイクアップメッセージのみを受信できる。
【0250】
したがってeNodeBは、長DRXサイクルのみを使用する場合よりも早く移動端末をウェイクアップさせることができる。
図18には、一例としての差を点線を用いて示してある。さらには、ページングメカニズムを再利用することによって、移動端末は(システム情報の変更を探索する以外に)1つのRNTIをブラインド復号化するのみでよい。
【0251】
これに代えて、移動端末は、WU−RNTIを対象としてページング機会を監視する代わりに、移動端末に直接割り当てられる別のRNTIによってマスクされたPDCCHメッセージを対象としてページング機会を監視することができる。これにより、移動端末をウェイクアップさせるためのより高速な手順が可能となり、なぜなら、RNTIはすでに移動端末に固有であるため、上述したさらなるチェックを実行しなくてもよいためである。この代替方式の欠点として、ページング機会におけるPDCCHが増大する。
【0252】
本発明の別の実施形態においては、eNodeBは、パーシステント(永続的)なダウンリンク割当て(SPS:セミパーシステントスケジューリング)を使用するように移動端末を構成し、この間隔の長さは、長DRXサイクルの数分の1である。SPSは、アクティブ時間の間に有効にされる。DRXの間、ユーザ機器は、設定された割当て上でPDSCHを受信し、これらの設定された割当てのトランスポートブロックを復号化する。
【0253】
設定された割当てにおいてトランスポートブロックの復号化に失敗した場合、HARQ動作は実行されず、したがって移動端末は、再送信のためにウェイクアップしない(HARQ RTTが起動しない)。これに対して、トランスポートブロックの復号化に成功した場合、移動端末はアクティブ時間に戻る。なお、ユーザ機器が実際にアクティブ時間に入る前に、トランスポートブロックを正常に復号化するための時間を提供するため、間隙が必要となりうることに留意されたい。
【0254】
この実施形態の利点として、DRXの間のSPS動作の変更のみが要求されるため、実装に対する影響が小さい。しかしながら、設定された割当てとアクティブ時間の開始との間に遅延が存在することがある。さらに、DRX段階の前/後にSPSを有効化/無効化する必要がある場合、追加のシグナリングが必要となることがある。さらには、アクティブ時間の間にSPSが有効なままである場合、ダウンリンクリソースの無駄につながる。
図19は、本発明のこの実施形態の機能を示している。
【0255】
移動端末、特にスマートフォンでは、移動端末において同時にアクティブである複数のアプリケーションからトラフィックが生成される。このようなアプリケーションの混合からは、予測することが難しいデータトラフィックが生成される。これは特にRANレベルにおいてあてはまり、RANレベルでは、eNodeBに到着するダウンリンクデータを特定のアプリケーションに対応させることができない。さらには、アプリケーションによって遅延要件が異なる。
【0256】
移動端末は、ネットワークの制御下で、より電力が節約される状態(例:RRC_IDLE)にされる、またはアクティブ状態に維持される。したがって、ネットワークは、ネットワークのシグナリング負荷と移動端末の電力消費量とを比較検討しなければならず、基本的に2つの選択肢がある。状態を遷移させるための高いシグナリング負荷と増大する遅延と引換えに、移動端末の電力節約が向上する。移動端末における高い電力消費量と引換えに、ネットワークは状態の遷移および対応するシグナリングを控え、したがってシグナリングオーバーヘッドが減少し、アイドル状態であることによって発生する遅延が回避される。
【0257】
したがって、ネットワーク側においてトラフィックパターンが未知であるために移動端末が必要以上に長時間にわたりアクティブ状態に維持されるという問題が存在する。この状況は、移動端末の観点からは不必要であり、移動端末のバッテリが浪費される。
【0258】
背景技術のセクションで説明したように、LTEのリリース8によってファストドーマンシーが導入された。
【0259】
本発明の一実施形態は、この問題を異なる方法で解決する。ユーザ機器は、自身が実行しているアプリケーションについて認識しており、したがってアクティブなアプリケーションから、RAN層における予測されるデータ受信/送信挙動を求めることができる。したがって、ユーザ機器は、ダウンリンクトラフィックパターンを予測することができ、eNodeBからスケジューリングされる。
【0260】
ユーザ機器は、ダンクリンクデータの予測される最後をeNodeBに示し、eNodeBは、移動端末がDRXモードに入るように、これに応えてDRX MAC CEを移動端末に送ることができる。これにより、ユーザ機器がアクティブ状態に維持されるため、シグナリングオーバーヘッドが回避される。短DRXサイクルおよび長DRXサイクルを適切に設定することによって、良好な電力効率が達成される。例えば、短DRXサイクルを、実際のトラフィックに合致するように設定することができ、長DRXサイクルがアイドルモードをモデル化することができる。さらに、より高い電力効率を達成できるように、短DRXサイクルおよび長DRXサイクルを、標準化において現在許可されているよりも長いサイクル期間に拡張することもできる(現在はそれぞれ640msおよび2560ms)。
【0261】
本発明のさらなる実施形態によると、ユーザ機器におけるバッテリ電力をさらに節約する目的で、最初に短DRXサイクルに従って動作することなく、ただちに長DRXサイクルに従って動作するように、eNodeBがユーザ機器に示すことができる。この指示は、例えば、「スリープ状態に移行せよ」という命令のみならず、「ただちに短DRXサイクルから長DRXサイクルに遷移せよ」という指示も含まれるように、MAC DRX CEを変更することによって、実施することができる。
【0262】
ダウンリンクデータの予測される最後をeNodeBに示す動作は、以下のうちの1つに従って実施することができる。
【0263】
この指示は、HSPAファストドーマンシーにおけるように、RRCシグナリングを介して行うことができる。これに代えて、現在予約されているLCIDの1つを使用して、新規のMAC制御要素を定義することができる。したがって、ダウンリンクデータの予測される最後を示すためのペイロードは必要ない。あるいは、この指示をバッファ状態報告(BSR)に挿入することができる。
【0264】
短BSRもしくは長BSRまたはその両方のMACヘッダにおいて、予約されているビットのうちの1つを使用して、ユーザ機器がダウンリンクデータの最後を予測していることを示す。この場合、この指示情報は、BSRがトリガーされる場合のみ送られる。したがって、トリガリング規則を変更する必要がありうる。
【0265】
さらなる代替実施形態は、この指示をCQI報告の中で送ることに関する。ユーザ機器が、周期的にCQIを報告するように構成されているとき、移動端末は、例えば広帯域CQIを報告するときに、「範囲外」値を設定することができる。
【0266】
さらに、一実施形態においては、アクティブ化されたSCellに関する測定が、長DRXサイクルに従わず、通常では非アクティブ化されたSCellに採用されるパラメータmeasCycleSCellに従う。measCycleSCellは、160個、256個、320個、512個、640個、1024個、および1280個のサブフレームに設定することができる。ユーザ機器は、5回のうち1回、measCycleSCellを測定するように構成される。これにより、電力をさらに節約しながらユーザ機器の測定要件をさらに緩和することができる。
【0267】
本発明のハードウェアおよびソフトウェア実装
【0268】
本発明の他の実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアを用いて、上記したさまざまな実施形態を実施することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)およびeNodeB(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本発明の方法を実行するようにされている。さらに、eNodeBが備える手段は、eNodeBがそれぞれのユーザ機器のIPMIセットの品質を、ユーザ機器から受信されるIPMIセットの品質情報から評価し、異なるユーザ機器のスケジューリングにおいて、異なるユーザ機器のIPMIセットの品質をスケジューラが考慮することを可能にする。
【0269】
本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行され得るものとさらに認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、その他プログラマブルロジックデバイスなどである。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによっても実行または具体化され得る。
【0270】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによっても実施され得る。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行され、または、ハードウェアにおいて直接実行される。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組合せも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAMやEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納され得る。
【0271】
さらには、本発明の複数の異なる実施形態の個々の特徴は、個々に、または任意の組合せにおいて、別の本発明の主題とすることができることに留意されたい。
【0272】
具体的な実施形態に示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更もしくは修正またはその両方を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本明細書に示した実施形態は、あらゆる点において例示的であり、本発明を制限するものではないものとみなされる。