(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボキシル基または窒素含有官能基を有するモノマーの含有量は、前記アクリル共重合体を構成するモノマーの全質量に対して、0.1〜20質量%である請求項1に記載の積層体。
前記ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、前記ハードコート層を形成するモノマーであって、前記ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤以外のモノマー100質量部に対して0.5〜15質量部である請求項1または2に記載の積層体。
前記ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤のラジカル重合性不飽和基が(メタ)アクリル官能基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[積層体]
<構成の特徴>
本発明の積層体は、ハードコート層、易接着層、透明基材層、粘着剤層を順に積層した構造を有し、波長360nmにおける光透過率は65%以上の積層体である。積層体を構成するハードコート層は、ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤を共重合させた樹脂を含む。また、粘着剤層は、カルボキシル基または窒素含有官能基を有するモノマーを重合成分として含むアクリル共重合体を主成分として含有する。これにより、高温多湿といった過酷な条件下で長期間使用した場合であっても、ハードコートフィルムに虹ムラが発生することを抑制することができる。尚、本発明において、虹ムラとは、ハードコートフィルムに複屈折干渉が起こり、複屈折干渉色によってハードコートフィルムが変色することをいう。
また、本発明では、粘着剤層を特定のアクリル共重合体から形成することにより、粘着剤層が剥離することを抑制でき、粘着剤層に気泡が発生することを防止できる。さらに、本発明では、積層体の着色も抑制されている。すなわち、本発明の積層体は、耐候性に優れたものである。
さらに、本発明の積層体は波長360nmにおける光透過率が65%以上であるため、積層体を形成した後の工程において、活性エネルギー線硬化型粘着剤層や活性エネルギー線硬化型樹脂層を加工することが可能になる。
【0015】
図1には本発明の積層体1の一例が示されている。
図1の積層体は、ハードコート層10、易接着層11、透明基材層12および粘着剤層13が順に積層されたものである。なお、各層の間には、他の層が設けられていてもよい。例えば、易接着層は、ハードコート層10と透明基材層12の間に設けられる以外に、透明基材層12と粘着剤層13の間にも設けられていてもよい。本発明の積層体は、ハードコート層10、易接着層11、透明基材層12および粘着剤層13がこの順で各々隣接するように直接貼り合わされているものか、ハードコート層10、易接着層11、透明基材層12、易接着層(図示せず)および粘着剤層13がこの順で各々隣接するように直接貼り合わされているものであることが好ましい。
【0016】
本発明の積層体の波長360nmにおける光透過率は65%以上であればよく、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。本発明の積層体においては、波長360nmにおける光透過率が上記範囲以上であるため、積層体を形成した後の工程においても、活性エネルギー線硬化型粘着剤層や活性エネルギー線硬化型樹脂層を効率よく加工することができる。すなわち、本発明の積層体は、過酷な条件下において気泡や虹ムラが発生することを抑制しつつも、後工程において、活性エネルギー線を用いた樹脂加工を可能とするものである。
【0017】
<ハードコート層>
本発明の積層体はラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤を共重合させた樹脂を含むハードコート層を有する。積層体は後工程で活性エネルギー線硬化型樹脂を加工可能とするため、ハードコート層は透明であることが好ましい。
【0018】
本発明で使用するラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。中でも、ラジカル重合性不飽和基は、(メタ)アクリル官能基であることが好ましく、(メタ)アクリル官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤である4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンや4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンは好ましく用いられる。ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤はこれら化合物に限定されるものではない。また、ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤には、上述した1種のみを用いてもよく、2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0019】
ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤は、ハードコート層を形成するモノマーであって、ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤以外のモノマー100質量部に対して、0.5〜15質量部含有させることが好ましく、1〜10質量部含有させることがより好ましく、2〜7質量部含有させることがさらに好ましい。ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記数値範囲内であれば、光安定剤がハードコート層を形成する樹脂組成物と反応して高分子量のハードコート層の構造中に組み込まれる。このため、低分子量の光安定剤でもブリードアウトせず、耐候性を付与することができる。さらに、後工程で活性エネルギー線硬化型粘着剤や活性エネルギー線硬化型樹脂を加工することが可能になる。
【0020】
ハードコート層は熱硬化型樹脂組成物や活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化することによって形成されることが好ましく、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化することによって形成されることがより好ましい。ここで、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とは架橋重合体を主成分とするものであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の全質量に対し、架橋重合体は50質量%以上含まれることが好ましい。架橋重合体としては、単官能モノマー重合体および多官能モノマー重合体を挙げることができる。多官能モノマー重合体は、好ましくは3官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体であり、より好ましくは4官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。例えば、3官能以上の多官能モノマーと2官能モノマーの混合モノマーの共重合体なども好ましく例示することができる。なお、ここでいうモノマーには、オリゴマーも含まれる。
【0021】
架橋重合体を得るために使用されるモノマーの種類は特に制限されないが、例えば、アクリルモノマーなどを好ましく例示することができる。例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸ジアクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
【0022】
ハードコート層は、柔軟性成分を含有しても良い。ハードコート層に柔軟性成分が含まれていると、クラックの発生等を防止することができる。柔軟性成分としては、例えば、トリシクロデカンメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、ハードコート層は、無機粒子および/または有機粒子を含有していても良い。無機粒子および/または有機粒子を含有すると、塗膜の硬化収縮が抑制される点で好ましい。無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、二酸化スズ粒子、五酸化アンチモン粒子、三酸化アンチモン粒子などの無機酸化物粒子を挙げることができる。また、有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリアミドなどの樹脂粒子を挙げることができる。
【0024】
無機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した疎水性無機微粒子や反応性無機酸化物粒子を用いても良い。有機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した反応性有機酸化物粒子を用いても良い。カップリング剤により処理することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中での分散性の向上やアクリル系重合体との間の結合力を高めることができる。その結果、組成物中での粒子の沈降および表面硬度や耐擦傷性を向上させることができる。
【0025】
カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシアルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0026】
本発明の積層体を構成するハードコート層の厚みは特に制限されないが、例えば、0.5μm以上にすることができ、1.0μm以上、2.0μm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば1mm以下、50μm以下、20μm以下の範囲内で選択することも可能である。
【0027】
<易接着層>
本発明の積層体を構成する易接着層はアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む。また、必要に応じてウレタン系樹脂等を含有しても良い。
本発明の易接着層に使用されるアクリル系樹脂としては、以下に示すようなアクリルモノマーから重合されるものが例示される。例えば、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を有したアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ヒドロキシ含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基を含有するモノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのモノマー成分は、2種以上を用いて共重合させても良い。
また、ポリエステル系樹脂としては、多塩基酸成分とポリオール成分を重縮合したものが例示される。用いられる多塩基酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸等が挙げられる。ポリオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのモノマー成分は、2種類以上を用いて共重合させても良い。
ウレタン系樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物の反応生成物が例示される。用いられるポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、ポリアセタールジオール等が挙げられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの成分は、2種類以上を用いて反応させることもできる。更に、必要であればこの他に鎖長延長剤、架橋剤などを使用しても良い。
【0028】
本発明の積層体を構成する易接着層には、易滑性の付与や屈折率の調整を目的として粒子を添加させることができる。粒子としては、無機顔料や有機フィラー等が挙げられるが、易接着層の樹脂と屈折率が比較的近く、高い透明性が得られるため、シリカを使用することが好ましい。また、易接着層の屈折率を調整する目的で使用される粒子としてはアルミナ−シリカ複合体や酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの粒子は、2種類以上を使用しても良い。
【0029】
本発明の積層体を構成する易接着層には必要に応じて帯電防止剤、可塑剤等の種々の添加剤を添加しても良い。また、塗工適性や反応性向上を目的として界面活性剤やpH調整剤を添加しても良い。
【0030】
本発明の積層体を構成する易接着層の厚みは特に制限されないが、例えば、0.1nm以上にすることができ、1nm以上、5nm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば1μm以下、100nm以下、50nm以下の範囲内で選択することも可能である。
【0031】
本発明において易接着層の形成方法は特に制限されないが、透明基材層にポリエステル系樹脂を用いる場合、ポリエステル系樹脂を溶融し押し出した後、ポリエステル系樹脂シートの上に易接着層を形成することが好ましい。ポリエステル系樹脂シートは、溶融し、押し出された後、縦方向に3〜10倍延伸して縦延伸ポリエステル系樹脂フィルムを形成し、必要に応じてコロナ放電処理をする。その少なくとも一面に易接着層を塗布し、乾燥して易接着層を形成する。その後、易接着層を有するフィルムを横方向に3〜10倍延伸することにより2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムの形成時に同時に横方向に延伸された易接着層を形成することが好ましい。
また、別法として、ポリエステル系樹脂と易接着層用樹脂を同時に押し出し、積層フィルムとし、積層したフィルムを9〜100倍に公知の方法にて2軸延伸して易接着層を形成しても良い。
上記のようにして製造されたフィルムに、必要に応じてヘイズが8%より大きくならないように、さらにコロナ放電処理、火炎処理等の公知の方法により表面処理を施しても良い。
【0032】
本発明の積層体を構成する易接着層は、ハードコート層と透明基材層の間に設けられるが、さらに透明基材層と粘着剤層の間に設けられてもよい。易接着層が透明基材層と粘着剤層との間に設けられることで透明基材層と粘着剤層との接着性が増し、両者の界面で剥離しにくくなる。
【0033】
<透明基材層>
本発明の積層体は透明基材層を有する。透明基材層は、可視光線を透過する透明な材料であって、フィルム状の材料から構成される。典型的な構成材料は透明な樹脂であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中では、耐熱性に優れること等から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。
【0034】
本発明の積層体を構成する透明基材層は、単層であっても、複数の層から構成されるものであっても良い。複数の層から構成される場合、透明基材層は、異なるポリエステル系樹脂から構成されることとしても良い。
【0035】
本発明の積層体を構成する透明基材層の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上にすることができ、20μm以上、50μm以上の範囲内で選択することも可能である。上限は用途によって異なるが、例えば1cm以下、1mm以下、300μm以下の範囲内で選択することも可能である。
【0036】
<粘着剤層>
本発明の積層体は特定の粘着剤層を有する。具体的には、粘着剤層は、カルボキシル基または窒素含有官能基を有するモノマーを重合成分として含むアクリル共重合体を主成分として含有する。ここで、アクリル共重合体を主成分とするとは、粘着剤層の全質量に対して、アクリル共重合体を50質量%以上含むことを意味し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含むことを意味する。
【0037】
アクリル共重合体は、官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これにカルボキシル基または窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを共重合させたものである。カルボキシル基または窒素含有官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーは架橋剤を用いる場合の反応点となり、架橋により粘着力や凝集力、耐熱性の制御を可能とする。カルボキシル基または窒素含有官能基を有するモノマーの含有量はアクリル共重合体を構成するモノマーの全質量に対して、0.1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0038】
アクリル共重合体を構成する官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0039】
また、カルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシル基含有モノマーを挙げることができる。窒素含有官能基を有するモノマーとしては、アミド基またはアミノ基を有するモノマーを挙げることができ、具体的には、(メタ)アクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート等の窒素含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどを挙げることができる。なお、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0040】
アクリル共重合体を重合する際には、例えば、溶液重合法を適用することができる。溶液重合法としては、イオン重合法やラジカル重合法など挙げられる。その際に使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0041】
本発明で用いるアクリル共重合体は、架橋剤を配合することにより架橋処理を施すことができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
これら架橋剤の中でも、アクリル共重合体を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
架橋剤の含有量は、所望とする粘着物性に応じて適宜調整することが好ましい。
【0042】
本発明の粘着剤層に併用することができる添加剤として、ヒンダードアミン系化合物に代表される光安定剤を好ましく例示することができる。
【0043】
粘着剤層には、必要に応じて、粘着付与剤、シランカップリング剤、金属腐食防止剤、酸化防止剤などの上記以外の添加剤が含まれても良い。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
金属腐食防止剤は、金属と錯体を形成し金属表面に皮膜を作ることにより腐食を防止するタイプが好ましく、特にベンゾトリアゾール系金属腐食防止剤が好ましい。特に、粘着剤層上に、金属がパターニングされた導電性フィルムや導電層付きガラスの導電面を貼合する際は、粘着剤層に金属腐食防止剤を含有させることが好ましい。
酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物に代表される酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は、一般にラジカル連鎖停止剤とよばれる一次酸化防止剤と、過酸化物分解剤として作用する二次酸化防止剤とに分類される。一次酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤が挙げられる。また、二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が挙げられる。これら酸化防止剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
併用される添加剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば添加剤による効果が発現し、上記上限値以下であれば添加剤のブリードアウトが発生しにくい。
【0045】
なお、粘着剤層には、波長360nmにおける光透過率が積層体全体において65%未満にならない範囲において、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。粘着剤層が紫外線吸収剤を含む場合は、アクリル共重合体100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、全く含まれないことがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記数値範囲内であることにより、紫外線が粘着剤層側からハードコート層側へ積層体全体を透過できるため、後工程で活性エネルギー線硬化型粘着剤や活性エネルギー線硬化型樹脂を加工することが可能となる。活性エネルギー線硬化型粘着剤や活性エネルギー線硬化型樹脂を加工することとは、活性エネルギー線硬化型粘着剤を塗布したり、活性エネルギー線硬化型粘着剤層や活性エネルギー線硬化樹脂層を形成することなどをいう。
【0046】
粘着剤層の厚みは10〜100μmとすることが好ましく、15〜70μmとすることがより好ましい。厚みが10μm以上であれば、十分な粘着力を確保でき、長時間使用しても浮きや剥がれが生じにくくなる。また、粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、ディスプレイの大きさに粘着シートをカットする際にカット刃などに粘着剤が付着して不良率が上がるなどのトラブルが生じにくいという利点がある。
【0047】
粘着剤層の対ガラス90°粘着力は、8N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましい。ここで、対ガラス90°粘着力とは、アルカリガラス板と粘着剤層を貼り合せてから1日経過した後、JIS Z0237に基づき規定された90°引きはがし法によって、引張速度30mm/分で引きはがした際の粘着力(N/25mm)のことをいう。
【0048】
<導電層>
本発明の積層体は導電層を有しても良い。導電層は、積層体のハードコート層側に設けられることが好ましい。導電層はハードコート層に直接積層しても良いし、その間に他の基材層等を設けて積層しても良い。
導電層は、表面型静電容量式タッチパネルなどに用いられる積層体上の面内方向で実質的に均一な導電性能を有する均一層でも良い。また、投影型静電容量方式のタッチパネルなどに用いられる導電層であって、位置検知のために面内に一部絶縁性部を設け、導電性能が規則的にパターン化された導電層であっても良い。なお、導電層の上に、さらに導電膜の酸化を防ぐための保護膜が形成されていても良い。
【0049】
導電層の導電性能は、例えばJIS-K7194に記載の方法にて測定される表面抵抗で示すことができ、タッチパネル用の電極板とするため、表面抵抗は1×10
5Ω/sq以下が好ましく、1×10
3Ω/sq以下がより好ましい。また表面抵抗は1Ω/sq以上が好ましく、1×10
2Ω/sq以上がより好ましい。導電層の表面抵抗の範囲は、1〜1×10
5Ω/sqが好ましく、1×10
2〜1×10
3Ω/sqがより好ましい。
一方、絶縁性部は、タッチパネルがより正確な位置検知を行うために、例えばJIS-K6911に記載の方法にて測定される表面抵抗を1×10
9Ω/sq以上、より好ましくは1×10
11Ω/sq以上として、1×10
13Ω/sq以下、より好ましくは1×10
12Ω/sq以下として、明確に絶縁化すると良い。絶縁性部の表面抵抗の範囲は、1×10
9〜1×10
13Ω/sqが好ましく、1×10
11〜1×10
12Ω/sqがより好ましい。
実質的に均一な導電層を適用する場合でも、タッチパネルの構成などに応じて、引き出し電極等形成のため、導電層の外周近傍の一部をパターン化する場合もある。
【0050】
導電層の材質としては、公知の導電性物質を適用できる。導電性物質としては、無機系材料を用いてもよく、無機系材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、もしくはコバルトなどの金属、又はインジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))、もしくは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))、もしくはアンチモン−スズ酸化物(ATO)などの金属酸化物が例示できる。導電性物質としては有機導電体を用いてもよく、有機導電体としては、導電性カーボンナノチューブやグラフェンなどの導電性炭素材料、又はポリチオフェン、もしくはポリアニリンなどの導電性高分子などが例示できるが、これらに限定するものではない。
中でも無機系材料としては信頼性の高さと、透明性と導電性に優れるという点で、ITOが最も好適に利用される。また、屈曲性に優れるという特徴と、透明性と導電性にも優れるという特徴を有する点で有機導電性高分子のポリチオフェンの一種であるPEDOT/PSSも好適に利用される。PEDOT/PSSとは、PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンのポリマー)とPSS(スチレンスルホン酸のポリマー)を共存させたポリマーコンプレックスを示す。
ITOやPEDOT/PSSのように比較的透明性に優れる導電体に比べ、金属や導電性炭素材料は透明性に劣るため、導電層の材質として金属や導電性炭素材料を用いる場合は、使用する金属や導電性炭素材料をナノワイヤー化して塗工したり、メッシュ状に加工したりすることで透明性を確保すると良い。中でも、銀は、最も導電性に優れる導電体であることから、好適に利用される。
【0051】
導電層の厚みは、適用する導電体の導電性や透明性等を考慮して設定する必要があるため、厚みは特に制限されないが、例えば、金属系の場合で30〜600Å、金属酸化物系や有機系の場合で80〜5000Åの厚さが好ましい。
【0052】
導電層は公知の方法により形成できる。例えば導電層が均一層である場合、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法、塗布法、あるいはこれらの組合せ法などの薄膜形成法が挙げられる。膜の形成速度や大面積膜の形成性、又は生産性などの点より、真空蒸着法やスパッタリング法が好ましい。
規則的なパターンは、各種印刷方式などにより、透明基板上に予め部分的に導電層を設ける方法で形成しても良いし、又は、上記のように均一層を形成した後、その一部をエッチングなどにより除去して形成しても良い。
導電層の形成に先立ち、積層体の表面に、密着性を高めるために、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、又はアンダーコート処理等の適宜な前処理を施しても良い。
【0053】
<剥離層>
積層体の粘着剤層表面には、さらに剥離層が形成されていても良い。積層体の粘着剤層は粘着剤を含有しているため、露出していると意図しない物品に付着してしまったり、粘着剤層自体が劣化してしまったりするおそれがある。このため、粘着剤層を物理的および化学的に保護するために、粘着剤層の表面に剥離層を設けておき、使用する際に剥離層を剥離して粘着剤層を露出させたうえで、他の部材へ貼り合わせることができる。
【0054】
剥離層としては、例えば、各種プラスチックフィルムにシリコーン等の剥離剤を塗布して剥離剤層を形成したもの、ポリプロピレンフィルム単体などが挙げられ、通常の粘着シート用の剥離シートとして用いられているものを利用することができる。
【0055】
<部材>
積層体の粘着剤層表面には、さらに部材が積層されていてもよい。部材としては、ガラス部材、樹脂板等を挙げることができる。本発明の粘着剤層は、このような部材に対して、良好な接着性を発揮することができる。
【0056】
<印刷層>
積層体のハードコート層表面には、さらに印刷層を設けることができる。印刷層は、主に装飾等のために設けられる。印刷層としては、例えば、インキにより絵柄、文字、写真等が印刷された層が挙げられる。印刷層は、ハードコート層の全面上に形成されていてもよく、ハードコート層の一部の面上に形成されていてもよい。
【0057】
<活性エネルギー線硬化型層>
本発明の積層体のハードコート層側には、さらに活性エネルギー線硬化型粘着剤層または活性エネルギー線硬化型樹脂層を形成してもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤層または活性エネルギー線硬化型樹脂層は、ハードコート層の表面に直接接するように形成してもよく、上述した印刷層上に形成してもよい。これらの、活性エネルギー線硬化型層は、積層体を形成した後工程において形成することができる。
【0058】
<積層体の形成方法>
本発明の積層体の形成方法としては、例えば、剥離層上に粘着剤層形成用組成物(粘着剤溶液)を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後に、粘着剤層に透明基材層を貼り合わせる方法や、透明基材層に粘着剤層形成用組成物を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後に、粘着剤層に剥離層を貼り合わせる方法などが挙げられる。粘着剤層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、メイヤーバーコータ、ロールコータ、ナイフコータ、グラビアコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等を用いた塗布方法が挙げられる。
【0059】
また、ハードコート層の形成方法としては、例えば、易接着層を有する透明基材層にハードコート層形成用組成物を塗布し、塗膜を乾燥および硬化させる方法や、ハードコート層形成用組成物を転写用ロール、離型フィルム等に塗布後、易接着層を有する透明基材層に転写させ、塗膜を乾燥および硬化させる方法等が挙げられる。ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、印刷機等を用いた方法が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0061】
(粘着剤層を形成する粘着剤溶液の調製)
<粘着剤溶液1の調製>
攪拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、溶媒である酢酸エチルを添加した。次いで、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート64質量部、メチルアクリレート34質量部、アクリル酸2質量部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、金属腐食防止剤1,2,3ベンゾトリアゾール(商品名 BT120 城北化学工業(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液を得た。
【0062】
<粘着剤溶液2の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート90質量部、エチルメタクリレート5部、アクリル酸2部、ヒドロキシエチルアクリレート3質量部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、金属腐食防止剤1,2,3ベンゾトリアゾール(商品名 BT120 城北化学工業(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液2を調製した。
【0063】
<粘着剤溶液3の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート64質量部、メチルアクリレート34質量部、アクリル酸2部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、酸化防止剤(商品名 IRAGANOX1010 BASF(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)1質量部を混合して粘着剤溶液を得た。
【0064】
<粘着剤溶液4の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート64質量部、メチルアクリレート34質量部、アクリル酸2部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、酸化防止剤(商品名 IRAGANOX1010 BASF(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)1質量部を混合して粘着剤溶液4を得た。
【0065】
<粘着剤溶液5の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート63質量部、メチルアクリレート33質量部、アクリル酸4部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、金属腐食防止剤1,2,3ベンゾトリアゾール(商品名 BT120 城北化学工業(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液5を得た。
【0066】
<粘着剤溶液6の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート90質量部、エチルメタクリレート5質量部、アクリルアミド2質量部、ヒドロキシエチルアクリレート3質量部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、金属腐食防止剤1,2,3ベンゾトリアゾール(商品名 BT120 城北化学工業(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液6を調製した。
【0067】
<粘着剤溶液7の調製>
粘着剤溶液1の調製のときと同様にして、反応装置内に、アクリル単量体である2−エチルヘキシルアクリレート65質量部、メチルメタクリレート10質量部、エチルメタクリレート15質量部、ヒドロキシエチルアクリレート10質量部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、金属腐食防止剤1,2,3ベンゾトリアゾール(商品名 BT120 城北化学工業(株)製)0.2質量部、架橋剤トリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液7を調製した。
【0068】
(実施例1)
<透明基材層の作製>
PETのペレットを真空乾燥した後、押出機に供給し、シート状に溶融押出しし延伸した。更にロールコータで易接着層形成用組成物(A)を両面に塗工した後、幅方向に延伸し、厚さ100μmのPETフィルムで両面に厚さ100nmの易接着層を備えた両面易接着層付きPETフィルムを得た。易接着層形成用組成物(A)は、ポリエステル樹脂100質量部、メラミン系架橋剤(商品名:ニカラックMW12LF、三和ケミカル社製)5質量部、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスOL、日産化学工業社製)1質量部からなる塗料である。なお、希釈溶剤としてエタノール/イソプロピルアルコール=1:1を用いて10質量%に希釈した。
【0069】
<ハードコート層の作製>
上記の両面易接着層付きPETフィルムに、ハードコート層形成用組成物(B)をバー塗工した。ハードコート層形成用組成物(B)は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能アクリレート、商品名 A−DPH、新中村化学(株)製)を100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184、BASF(株)製)を4質量部、(メタ)アクリル官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤A(4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 商品名 T2324 東京化成工業(株)製)を5質量部混合し、メチルエチルケトンで固形分濃度50%となるように希釈したものである。ハードコート層形成用組成物(B)を塗工後、80℃で60秒加熱乾燥し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、積算光量300mJ/cm
2となるように、窒素雰囲気下で紫外線照射して厚さ3μmのハードコート層を硬化形成した。
【0070】
<粘着剤層の作製>
上記粘着剤溶液1を、ナイフコータにより、易接着層を有する透明基材層のハードコート層未塗工面に、乾燥後の塗工厚さが30μm/m
2になるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ3μmの粘着剤層を形成し、積層体を得た。次いで、シリコーンPET剥離フィルム(商品名;75RL−07(L)、王子エフテックス(株)製、75μm厚)へ貼り合わせて剥離層を有する積層体を作製した。
【0071】
<実施例2>
ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤Aの添加量を2質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0072】
<実施例3>
ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤Aの添加量を10部に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0073】
<実施例4>
ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤Aをラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤B(4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン 商品名 P1513 東京化成工業(株)製)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0074】
<実施例5>
粘着剤層の厚みを50μmに変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0075】
<実施例6>
粘着剤溶液1の代わりに粘着剤溶液2を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0076】
<実施例7>
粘着剤溶液1の代わりに粘着剤溶液3を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0077】
<実施例8>
粘着剤溶液1の代わりに粘着剤溶液4を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0078】
<実施例9>
粘着剤溶液1の代わりに粘着剤溶液5を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0079】
<実施例10>
粘着剤溶液1の代わりに粘着剤溶液6を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0080】
<実施例11>
ハードコート層形成用組成物(B)100質量部に対して粒子径1400nmのシリカ粒子(商品名サイリシア310、富士シリシア化学(株)製)を5質量部添加した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0081】
<比較例1>
ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤Aを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0082】
<比較例2>
光安定剤Aをラジカル重合性不飽和基を有しないヒンダードアミン系光安定剤C((セバシン酸ビス1,2,2,6,6-ペンタメチル−4−ピペリジル) 商品名 B3924 東京化成工業(株)製)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0083】
<比較例3>
光安定剤Aをラジカル重合性不飽和基を有しないヒンダードアミン系光安定剤D((セバシン酸ビス1−(オクチルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル) 商品名 TINUVIN123(株)BASF製)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0084】
<比較例4>
光安定剤Aを紫外線吸収剤E(C7−C9−アルキル−3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテル 商品名 TINUVIN384−2(株)BASF製)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0085】
<比較例5>
粘着層組成物1の代わりに粘着剤溶液7を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0086】
(評価)
<粘着力の評価>
得られた積層体を温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間エージングさせた後、この積層体から、幅25mm×長さ100mmの試験片をサンプリングした。一方、表面をエタノールで洗浄し、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて3時間以上放置したアルカリガラス板を用意した。試験片から剥離フィルムを剥離したものを、アルカリガラス板の表面に質量2kgの圧着ローラーで一往復させることによって貼り合せた。貼り合せてから1日経過した後、JIS Z0237に基づき規定された90°引きはがし法によって、引張速度30mm/分で引きはがして、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0087】
<透過率の測定方法>
得られた積層体を粘着剤層を介してソーダガラス(板厚0.7mm 平岡特殊硝子製作(株)製)に貼り、(株)島津製作所製、分光光度計「Solid−Spec3700」を使用し、得られた積層体の波長360nmでの光透過率を測定した。
【0088】
<耐候性評価>
1)気泡および虹ムラ発生評価
気泡および虹ムラ発生の評価を耐候性試験により行った。耐候性試験では、積層体を粘着剤層を介してソーダガラス(板厚0.7mm 平岡特殊硝子製作(株)製)に貼り、ISO 11507/4892−3に準拠しQ−Lab社製促進耐候性試験機を用いてQUV促進曝露を行った。試験条件は、340nmにおけるUVA光の照射量を0.7W/m
2、試験時間を100時間とした。耐候性試験後、目視により気泡または虹ムラの発生を下記評価基準によりそれぞれ確認した。
(気泡発生評価基準)
○:気泡が全く発生していない
×:気泡が発生している
(虹ムラ発生評価基準)
○:虹ムラが全く発生していない
△:虹ムラがわずかに発生している
×:虹ムラが大きく発生している
【0089】
2)密着性評価
JIS K 5600−5−6に準拠し、以下のようにして碁盤目密着試験を行った。セロハンテープ(登録商標)(商品名CT28、ニチバン社製)を、指で上から押し付けるようにしてハードコート層に密着させた後に剥離した。100マスの内、ハードコート層が全てのマス目で剥離していない場合を100/100、全てのマス目で剥離している場合を0/100とし、ハードコート層が剥離していないマス目を数え、以下の評価基準にて、耐候性試験前後のハードコート層の密着性を評価した。
(評価基準)
○:100/100
△:50/100〜99/100
×:0/100〜49/100
【0090】
3)色相評価
得られた積層体の色相L*、a*、b*をJIS Z8729に基づき、日本電色工業(株)製のSE6000を用いて測定し、Δb*及びΔEを算出した。なお、Δb*及びΔEは下記の計算式(
1)及び(2)により算出できる。
Δb*=|b*
2−b*
1|≦1 (1)
ΔE=((L*
2−L*
1)
2+(a*
2−a*
1)
2+(b*
2−b*
1)
2)
0.5≦1 (
2)
a*
1:耐候性試験前に測定したa*
a*
2:耐候性試験前に測定したa*
b*
1 :耐候性試験前に測定したb*
b*
2:耐候性試験後に測定したb*
L*
1:耐候性試験前に測定したL*
L*
2:耐候性試験前に測定したL*
【0091】
算出したΔb*、ΔE値について下記基準で評価した。
(Δb*評価基準)
○:0以上0.8未満
△:0.8以上1未満
×:1以上
(ΔE評価基準)
○:0以上0.8未満
△:0.8以上1未満
×:1以上
【0092】
<後加工適性の評価>
得られた積層体を粘着剤層を介してソーダガラス1(板厚0.7mm 平岡特殊硝子製作(株)製)に貼った後、紫外線硬化型接着剤(製品名 ロックタイト350 ヘンケル(株)製)で積層体のハードコート層とソーダガラス2を貼合した。次いで、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、積算光量が5000mJ/cm
2となるように、ソーダガラス1側から紫外線を照射し、接着剤が硬化してハードコート面とソーダガラス2が接着しているか評価した。
(評価基準)
○:ハードコート層とソーダガラス2が接着している
×:ハードコート層とソーダガラス2が接着していない
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1〜11は虹ムラの発生が抑制されて変色もせず、また耐候性に優れた上で、活性エネルギー線硬化樹脂の後加工適正も良好であった。また、粘着剤層の気泡の発生を防止できた。
一方、ラジカル重合性不飽和基を有するヒンダードアミン系光安定剤を添加しなかった比較例1〜3では、耐候性が悪く、虹ムラや変色が発生した。また、比較例4は光透過率が65%以下となり、後加工で活性エネルギー線硬化型樹脂を加工することが困難となった。比較例5は虹ムラや変色がわずかに発生し、耐候性も悪化した。また、粘着剤層に気泡が発生していた。
本発明では、ヒンダードアミン系光安定剤を共重合させた樹脂を含むハードコート層と特定の粘着層との積層体とすることで、過酷な条件下で長期間使用しても虹ムラの発生や粘着剤層の気泡を防止できるものと考えられる。