(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467908
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】熱媒体用基材
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
C09K5/10 E
C09K5/10 F
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-258931(P2014-258931)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-117844(P2016-117844A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】湯山 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】増田 現
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−241018(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/077894(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/003108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00− 5/20
C07D207/00−207/50
F25B 1/00
F25B 15/00
F28D 15/02
F25D 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるイオン液体からなることを特徴とする熱媒体用基材。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は、メチル基またはエチル基を表し、nは、1または2を表し、X
-は、1価のアニオンを表す。)
【請求項2】
前記X-が、BF4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO2)2N-または(FSO2)2N-である請求項1記載の熱媒体用基材。
【請求項3】
前記X-が、(FSO2)2N-である請求項2記載の熱媒体用基材。
【請求項4】
前記R1が、メチル基またはエチル基を表す請求項1〜3のいずれか1項記載の熱媒体用基材。
【請求項5】
前記R1およびR2が、共にメチル基である請求項1〜4のいずれか1項記載の熱媒体用基材。
【請求項6】
前記R1およびR2が、共にメチル基であり、前記nが1または2である請求項3記載の熱媒体用基材。
【請求項7】
前記R1およびR2が、共にメチル基であり、前記nが1である請求項3記載の熱媒体用基材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の熱媒体用基材を含む熱媒体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の熱媒体用基材のみからなる熱媒体。
【請求項10】
前記nが2である請求項6記載の熱媒体用基材を含むヒートパイプ装置の作動媒体。
【請求項11】
請求項7記載の熱媒体用基材を含む冷却液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体用基材に関し、さらに詳述すると、特定のイオン液体からなる熱媒体用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関や燃料電池等の冷却液や不凍液などの熱媒体の基材としてエチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類が広く用いられている。
しかし、エチレングリコールやプロピレングリコールは、有害性が疑われることからPRTR法の第1種指定化学物質に指定されている。
【0003】
また、ヒートパイプ装置の熱媒体(作動媒体)として水が用いられているが、通常、凍結防止のため水溶性ポリマーやグリコール類が添加されている。
しかし、上述した有害性の問題に加え、添加物自体が蒸気圧を有しているためヒートパイプの沸騰凝縮性能に悪影響を及ぼすおそれがあるうえに、ヒートパイプの使用温度範囲が添加物の分解温度以下に制限されるという問題がある。
【0004】
以上のような点から、それらに代替する安全性に優れた熱媒体が求められており、そのような熱媒体の1つとしてイオン液体が提案されている。
例えば、特許文献1には、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド等のイミダゾリウム系イオン液体と防錆剤とを含む組成物を内燃機関や燃料電池等の冷却液として用いる技術が開示され、特許文献2には、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等のイミダゾリウム系イオン液体の水溶液をヒートパイプの作動媒体として用いる技術が開示されているものの、これらのイオン液体は融点や流動性、さらには含水率等の点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−235889号公報
【特許文献2】特開2009−145038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、イオン液体からなる新規かつ有用な熱媒体用基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のピロリジニウムカチオンを有するイオン液体が、低粘度かつ低融点であるとともに熱安定性が良好であることから、熱媒体用基材として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で示されるイオン液体からなることを特徴とする熱媒体用基材、
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は、メチル基またはエチル基を表し、nは、1または2を表し、X
-は、1価のアニオンを表す。)
2. 前記X
-が、BF
4-、PF
6-、CF
3SO
3-、CF
3CO
2-、(CF
3SO
2)
2N
-または(FSO
2)
2N
-である1の熱媒体用基材、
3. 前記X
-が、(FSO
2)
2N
-である2の熱媒体用基材、
4. 前記R
1が、メチル基またはエチル基を表す1〜3のいずれかの熱媒体用基材、
5. 前記R
1およびR
2が、共にメチル基である1〜4のいずれかの熱媒体用基材、
6. 前記R
1およびR
2が、共にメチル基であり、前記nが1または2である3の熱媒体用基材、
7. 前記R
1およびR
2が、共にメチル基であり、前記nが1である3の熱媒体用基材、
8. 1〜7のいずれかの熱媒体用基材を含む熱媒体、
9. 1〜7のいずれかの熱媒体用基材のみからなる熱媒体、
10. 前記nが2である6の熱媒体用基材を含むヒートパイプ装置の作動媒体、
11. 7の熱媒体用基材を含む冷却液
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明で用いるイオン液体は、融点が比較的低く低粘度であり、また熱安定性にも優れている。
このようなイオン液体を用いた本発明の熱媒体は、比較的高温でも変質・分解しにくく、さらに氷点下に晒されても凍結しにくいため、氷点下から高温まで広い温度範囲で使用することができる。
本発明の熱媒体は、内燃機関、燃料電池、ヒートパイプ、モーター等の高温で使用される装置の冷却液や不凍液;道路、滑走路、ガラス、循環式仮設トイレ、住宅用設備(玄関、ドア、トイレ、排水トラップ等)の凍結防止剤、融雪剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたMEMP・TFSAのTG−DTA測定結果を示す図である。
【
図2】実施例2で得られたMMMP・FSAの
1H−NMRスペクトル図である。
【
図3】実施例2で得られたMMMP・FSAのDSC測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る熱媒体用基材は、式(1)で示されるイオン液体からなる。
【0013】
R
1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、その具体例としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル基等が挙げられるが、直鎖状のアルキル基が好ましく、中でもメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
R
2は、メチル基またはエチル基を表すが、メチル基が好ましい。
nは、1または2を表す。
【0014】
中でもカチオン構造としては、より熱安定性に優れているという点から、下記(A)の構造が好ましく、より低粘度という点から、下記(B)の構造が好ましい。
【0016】
X
-は1価のアニオンであり、イオン液体を形成し得るアニオンであれば特に限定されるものではないが、本発明では、BF
4-、PF
6-、CF
3SO
3-、CF
3CO
2-、(CF
3SO
2)
2N
-または(FSO
2)
2N
-が好ましく、BF
4-、PF
6-、CF
3SO
3-、(CF
3SO
2)
2N
-または(FSO
2)
2N
-がより好ましい。
特に、熱媒体用基材に適した粘度の低い、流動性に優れたイオン液体を与えるという点から、(CF
3SO
2)
2N
-、(FSO
2)
2N
-が好ましく、また、高温で使用するヒートパイプ等の熱媒として適した、分解点の高いイオン液体を与えるという点から、(CF
3SO
2)
2N
-が好ましく、冷却材として適した、融点の低いイオン液体を与えるという点から、(FSO
2)
2N
-がより好ましい。
【0017】
本発明で用いられるイオン液体は、国際公開第2002/076924号記載の方法や、中国特許出願公開第101747243号明細書等により製造することができ、例えば、定法に従って製造したN−アルコキシアルキル−N−アルキルピロリジニウムハライド(例えば、クロライド、ブロマイド等)と、所望のアニオンのアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩とを水溶媒中でアニオン交換反応させて得ることができる。
【0018】
本発明で好適に用いることができるイオン液体としては下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
これらの中でも、低粘度であるという点から、下記MEMP・TFSA、MMMP・TFSA、MEMP・FSA、MMMP・FSAが好適である。
特に、後述の実施例で示すように、MMMP・FSAは融点が−33℃と極めて低く、氷点下でも凍結しないため、冷却材に適しており、MEMP・TFSAは分解点が高いため、高温の熱媒体に適している。
【0023】
本発明の熱媒体は、上記イオン液体からなる熱媒体用基材のみからなるものでも、上記熱媒体用基材とその他の溶媒とを含むものでもよい。
その他の溶媒は、熱媒体の適用箇所および使用条件などにより適宜選択されるものであり、例えば、水;メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油、動物性油、鉱物性油、合成油等が挙げられる。
【0024】
なお、本発明で用いる上記イオン液体は、それ自体比較的粘度が低いため、その他の溶媒を用いる場合、その使用量は熱媒を構成する液体成分中に50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより一層好ましく、全く使用しない(液体成分はイオン液体のみ)ことが最適である。
【0025】
また、本発明の熱媒体には防錆剤を添加してもよい。その添加量は、特に限定されるものではないが、熱媒体中に0.1〜10質量%程度である。
防錆剤としては、例えば、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、モリブデン酸塩、脂肪族一塩基酸およびその塩、脂肪族二塩基酸およびその塩、芳香族一塩基酸およびその塩、芳香族二塩基酸およびその塩、トリアゾールおよびその塩、チアゾールおよびその塩等が挙げられる。
【0026】
ホウ酸塩の具体例としては、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
ケイ酸塩の具体例としては、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
リン酸塩の具体例としては、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸アルカリ金属塩が挙げられる。
亜硝酸塩の具体例としては、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
硝酸塩の具体例としては、硝酸ナトリウム等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
モリブデン酸塩の具体例としては、モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0027】
脂肪族一塩基酸およびその塩の具体例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ステアリン酸、並びにこれらの酸のナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
脂肪族二塩基酸およびその塩の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸、ドデカン2酸、ブラシル酸、タプチン酸、並びにこれらの酸のナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0028】
芳香族一塩基酸およびその塩の具体例としては、安息香酸、ニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、p−トルイル酸、p−エチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−tertブチル安息香酸等の安息香酸類、メトキシ安息香酸等のアルコキシ安息香酸類、けい皮酸、アルキルけい皮酸、アルコキシけい皮酸等のけい皮酸類、並びにこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
芳香族二塩基酸およびその塩の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、並びにこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0029】
トリアゾールおよびその塩の具体例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4−フェニル−1,2,3−トリアゾール、2−ナフトトリアゾール、4−ニトロベンゾトリアゾール、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
チアゾールおよびその塩の具体例としては、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、合成例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した分析装置は下記のとおりである。
[1]
1H−NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 AL−400
溶媒:重ジメチルスルホキシド
[2]粘度計
装置:BROOK FIELD社製 プログラマブルレオメーター
[3]DSC
装置:SII製 DSC6200
[4]TG−DTA
装置:SII製 TG/DTA6200
【0031】
[実施例1]MEMP・TFSAの合成
【化7】
【0032】
ピロリジン(和光純薬工業(株)製)1.51質量部と塩化2−メトキシエチル(関東化学(株)製)1.00質量部とを混合し、還流しながら1時間反応させた。反応後、反応液は2層に分離したが、しばらく放冷すると下層は固化した。デカンテーションにより上層のみ回収し、減圧蒸留により精製し、目的物であるN−2−メトキシエチルピロリジン(沸点76℃/蒸気圧45mmHg)0.96質量部を得た(収率70%)。
得られたN−2−メトキシエチルピロリジン1.00質量部、およびこれに対して2倍容量のトルエン(和光純薬工業(株)製)を混合し、オートクレーブ中に入れ、系内を窒素置換した。密閉系にした後、室温撹拌下で塩化メチルガス(日本特殊化学工業(株)製)約1.00質量部を加えた。塩化メチルガス導入時には温度および内圧の上昇が見られ、最高時で温度は約53℃、内圧は5.5kgf/cm
2(約5.4×10
5Pa)まで上昇した。そのまま加熱せずに反応させ、2日後に塩化メチルガス約0.75質量部を加えた。さらに1日反応させた後、加圧を解除し、系中に生成した結晶を減圧濾過にてろ別し、真空ポンプを用いて乾燥させ、N−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.29質量部を得た(収率92%)。
得られたN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.00質量部に、当倍容量のイオン交換水を加えて撹拌して溶解させた。この溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(関東化学(株)製)1.68質量部を当倍容量のイオン交換水に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で反応させ、3時間以上経過した後に、2層に分離した反応液を分液し、下層の有機層を2回イオン交換水で洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(MEMP・TFSA)1.50質量部を得た(収率83%)。
【0033】
上記で得られたMEMP・TFSAのTG−DTAを測定した。その結果を
図1に示す。
図1に示されるように、10%分解点は399.7℃であり、350℃付近の高温でも使用可能な熱媒体用基材であることがわかる。
さらに、MEMP・TFSAの25℃での粘度を測定したところ、50cPと低粘度であり、熱媒体用基材として必要な流動性を有していることがわかる。
【0034】
[実施例2]MMMP・FSAの合成
【化8】
【0035】
N−メチルピロリジン(和光純薬工業(株)製)14.4質量部をテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)200質量部に溶かした溶液を氷冷し、撹拌下、クロロメチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)17.1質量部を加えた。一晩反応させた後、析出した固体を、桐山ロートを用い減圧濾過した。得られた白色固体を、真空ポンプを用いて乾燥させ、中間体N−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド26.7質量部を得た(収率96%)。
得られたN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド8.58質量部をイオン交換水10質量部に溶解させた。この溶液をカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(関東化学(株)製)12.5質量部をイオン交換水5質量部に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で撹拌を一晩継続させた後、2層に分かれた反応液を分液し、下層の有機層をイオン交換水で4回洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(MMMP・FSA)を10.2質量部得た(収率63%)。MMMP・FSAの
1H−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0036】
上記で得られたMMMP・FSAのDSCを測定した。その結果を
図3に示す。
図3に示されるように、融点は−33℃であり、−30℃付近まで使用可能な熱媒体用基材であることがわかる。
さらに、MMMP・FSA25℃での粘度を測定したところ20cPであり、さらに粘度が低く、熱媒体用基材として必要な流動性を有していることがわかる。