特許第6467939号(P6467939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467939
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】車両用シートリフター装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20190204BHJP
   F16D 41/18 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B60N2/16
   F16D41/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-10060(P2015-10060)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132423(P2016-132423A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康明
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255837(JP,A)
【文献】 特開平08−138434(JP,A)
【文献】 特開平11−342036(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0184554(US,A1)
【文献】 特開2001−197954(JP,A)
【文献】 特開2002−120610(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
F16D 41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを昇降動作させるリンク機構と、
前記リンク機構に設けられた駆動入力ギヤに歯合するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤの回転を制御する回転制御装置と、を備え、
前記回転制御装置は、
前記ピニオンギヤに同期して回転する回転軸と、
前記回転軸とともに回転する第1噛合部材と該第1噛合部材に噛合することにより前記回転軸の回転を規制する第2噛合部材とを有した回転規制機構と、
前記回転軸の回転範囲を制限する回転範囲制限機構と、を備え、
前記回転範囲制限機構は、
前記回転軸と一体に回転する軸側回転規制部と、
第1及び第2の中間回転規制部を有して前記回転軸と同軸に設けられた中間回転体と、
前記第2噛合部材の支持部材側に設けられた支持側回転規制部と、を備え、
前記第1の中間回転規制部と前記支持側回転規制部との係合関係に基づき前記支持部材に対する前記中間回転体の相対回動範囲を制限するとともに、
前記第2の中間回転規制部と前記軸側回転規制部との係合関係に基づき前記中間回転体に対する前記回転軸の相対回動範囲を制限するものであって、
前記回転軸は、前記ピニオンギヤと一体に設けられるとともに、前記第1噛合部材及び前記軸側回転規制部は、前記回転軸と一体に設けられている、車両用シートリフター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートリフター装置において、
前記回転範囲制限機構は、
一方の回転規制部が形成する第1及び第2の当接点間において他方の回転規制部が周方向に相対移動可能な範囲内に、
前記支持部材に対する前記中間回転体の相対回動範囲、及び該中間回転体に対する前記回転軸の相対回動範囲を制限すること、を特徴とする車両用シートリフター装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートリフター装置において、
前記回転規制機構は、前記シートが上方移動する方向における前記回転軸の回転を許容しつつ前記シートが下方移動する方向における前記回転軸の回転を規制するラチェット機構であること、を特徴とする車両用シートリフター装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートリフター装置において、
前記リンク機構による前記シートの昇降動作における最も下端側の位置において、前記回転規制機構の前記第1噛合部材と前記第2噛合部材とが噛合すること、
を特徴とする車両用シートリフター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートリフター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、上下方向における車両用シートの位置調整を可能とするシートリフター装置は、シートを昇降動作させるリンク機構と、このリンク機構に設けられた駆動入力ギヤに歯合するピニオンギヤと、このピニオンギヤの回転を制御する回転制御装置と、を備えている。更に、手動式のシートリフター装置の場合、回転制御装置には、その操作ハンドルに対する操作入力を上記ピニオンギヤの回転軸に伝達する操作入力伝達機構が設けられている。そして、このようなシートリフター装置には、その回転軸とともに一体回転する第1噛合部材と、この第1噛合部材に噛合する第2噛合部材と、を有して回転軸の回転を規制する回転規制機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
即ち、噛合部材の噛み合いに基づく有段ロック構造を採用することで、より安定的に、その上下方向におけるシート位置(リフト位置)を保持することができる。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。
【0004】
また、多くの場合、シートリフター装置のリンク機構には、当該リンク機構を構成するリンク部材の可動範囲を制限するストッパが設けられている。そして、これにより、その上下方向におけるシートの調整範囲を規定する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−224692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、リンク機構に設けられた駆動入力ギヤとピニオンギヤとの間には、減速比が設定されている。このため、上記従来技術では、シートを調整範囲の端点位置(下端位置又は上端位置)に移動させた場合において、その回転規制機構を構成する噛合部材を正しく噛み合せるためには、高い水準の公差管理及び組付精度が要求される。そして、これにより生ずる作業工程の煩雑化が製造コストの上昇を招く一因となっていることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、シート調整範囲の端点位置においても安定的にシートを支持することのできる車両用シートリフター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用シートリフター装置は、シートを昇降動作させるリンク機構と、前記リンク機構に設けられた駆動入力ギヤに歯合するピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの回転を制御する回転制御装置と、を備え、前記回転制御装置は、前記ピニオンギヤに同期して回転する回転軸と、前記回転軸とともに回転する第1噛合部材と該第1噛合部材に噛合することにより前記回転軸の回転を規制する第2噛合部材とを有した回転規制機構と、前記回転軸の回転範囲を制限する回転範囲制限機構と、を備え、前記回転範囲制限機構は、前記回転軸と一体に回転する軸側回転規制部と、第1及び第2の中間回転規制部を有して前記回転軸と同軸に設けられた中間回転体と、前記第2噛合部材の支持部材側に設けられた支持側回転規制部と、を備え、前記第1の中間回転規制部と前記支持側回転規制部との係合関係に基づき前記支持部材に対する前記中間回転体の相対回動範囲を制限するとともに、前記第2の中間回転規制部と前記軸側回転規制部との係合関係に基づき前記中間回転体に対する前記回転軸の相対回動範囲を制限するものであって、前記回転軸は、前記ピニオンギヤと一体に設けられるとともに、前記第1噛合部材及び前記軸側回転規制部は、前記回転軸と一体に設けられている
【0009】
即ち、ピニオンギヤに同期して回転する回転軸の回転範囲を制限することによっても、そのリンク機構によるシート位置の調整範囲を規定することができる。そして、これにより、そのリンク機構側の駆動入力ギヤとピニオンギヤとの間に設定された減速比の影響を低減することで、シートをリンク機構による調整範囲の端点位置(下端位置又は上端位置)に移動させた場合においても、その回転規制機構を構成する第1噛合部材と第2噛合部材とを正しく噛み合せることができる。その結果、シート調整範囲の端点位置においても、安定的にシートを支持することができる。
【0010】
また、上記構成によれば、回転範囲制限機構による回転軸の回転制限範囲を、当該回転軸の一回転を超えた360°以上の回転角度に設定することができる。即ち、ピニオンギヤに同期して回転する回転軸が第2噛合部材の支持部材に対して相対回転可能な範囲は、その支持部材に対して中間回転体が相対回動可能な所定角度と、その中間回転体に対して回転軸が相対回動可能な所定角度と、を足し合わせた回転角度になる。そして、これにより、リンク機構により調整可能なシート位置の上下方向範囲を拡張することで、高い設計自由度を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用シートリフター装置は、前記回転範囲制限機構は、一方の回転規制部が形成する第1及び第2の当接点間において他方の回転規制部が周方向に相対移動可能な範囲内に、前記支持部材に対する前記中間回転体の相対回動範囲、及び該中間回転体に対する前記回転軸の相対回動範囲を制限することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、簡素な構成にて、より確実に回転軸の回転範囲を制限することができる。
上記課題を解決する車両用シートリフター装置は、前記回転規制機構は、前記シートが上方移動する方向における前記回転軸の回転を許容しつつ前記シートが下方移動する方向における前記回転軸の回転を規制するラチェット機構であることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、シートをリンク機構による調整範囲の上限まで移動させた場合に、回転規制機構を構成する第1噛合部材と第2噛合部材とが正しく噛み合わない場合であっても、そのシート荷重に基づいて、これらの第1噛合部材と第2噛合部材とが正しく噛み合う位置までシートが下方移動する。そして、この位置をリンク機構による調整範囲の上端として安定的にシートを支持することができる。つまり、リンク機構による調整範囲の下端位置についてのみ、その回転規制機構を構成する第1噛合部材と第2噛合部材とが正しく噛み合うように調整すればよい。そして、これにより、その回転制御装置の組み付け作業を容易化することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用シートリフター装置は、前記リンク機構による前記シートの昇降動作における最も下端側の位置において、前記回転規制機構の前記第1噛合部材と前記第2噛合部材とが噛合することが好ましい。
【0015】
即ち、リンク機構による調整範囲の下端位置において回転規制機構の第1噛合部材と第2噛合部材とが正しく噛み合うように調整されていれば、自動的に、その第1噛合部材と第2噛合部材とが正しく噛み合う最も上方のシート位置がリンク機構による調整範囲の上端になる。従って、上記構成によれば、シートを安定的に支持し、及び組み付け作業の容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート調整範囲の端点位置においても安定的にシートを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】シートリフター装置の側面図(車幅方向外側視)。
図2】シートリフター装置の側面図(車幅方向内側視)。
図3】操作ハンドル及びシートリフター装置を構成する回転制御装置の斜視図。
図4】回転軸と一体に形成されたピニオンギヤ及び爪車の側面図。
図5】回転制御装置の側面図。
図6】回転制御装置の正面図。
図7】回転制御装置の斜視図。
図8】回転制御装置の分解斜視図。
図9】回転制御装置の分解斜視図。
図10】回転制御装置の断面図(図6におけるX−X断面)。
図11】回転制御装置の断面図(図6におけるXI−XI断面)。
図12】回転制御装置の断面図(図10におけるXII−XII断面)。
図13】回転制御装置の断面図(図11におけるXIII−XIII断面)。
図14】回転制御装置の断面図(図10におけるXIV−XIV断面)。
図15】操作入力伝達機構(送り機構)の動作説明図(引き上げ操作時)。
図16】操作入力伝達機構(送り機構)の動作説明図(押し下げ操作時)。
図17】回転規制機構の動作説明図(アンロック状態)。
図18】回転制御装置の断面図(図10におけるXVIII−XVIII断面)。
図19】解除機構の動作説明図(引き上げ操作時)。
図20】解除機構の動作説明図(押し下げ操作時)。
図21】回転制御装置の断面図(図11におけるXXI−XXI断面)。
図22】リング部材の係合突部と第1支持部材の規制突部との係合関係を示す図。
図23】リング部材の係合溝と爪車の係合ピンとの係合関係を示す図。
図24】別例のリング部材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用のシートリフター装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に対して傾動自在に設けられたシートバック3と、を備えている。本実施形態では、車両の床部4には、車両前後方向に延びる左右一対のロアレール5が設けられている。また、これら各ロアレール5には、それぞれ、その延伸方向に沿って当該ロアレール5上を相対移動可能なアッパレール6が装着されている。尚、本実施形態のロアレール5は、床部4に設けられたブラケット7上に支持されている。そして、本実施形態のシート1は、これらのロアレール5及びアッパレール6が形成するシートスライド装置8の上方に支持されている。
【0019】
また、本実施形態のシート1は、シートリフター装置10を介して各アッパレール6に固定されている。そして、車両の乗員は、このシートリフター装置10の機能を利用することにより、その上下方向におけるシート1の位置調整(シートクッション2の高さ調整)を行うことが可能となっている。
【0020】
詳述すると、図2に示すように、本実施形態のシートリフター装置10は、回動自在に設けられた複数のリンク部材11を介して上方にシート1を支持するリンク機構12を備えている。具体的には、このリンク機構12は、シートクッション2の骨格を構成するサイドフレーム13の前端部(図2中、左側の端部)及びアッパレール6に設けられたベース部材14の前端部に対して回動可能に連結された前方リンク11aを備えている。また、このリンク機構12は、サイドフレーム13の後端部(図2中、右側の端部)及びベース部材14の後端部に対して回動可能に連結された後方リンク11bと、を備えている。即ち、本実施形態のリンク機構12には、周知の平行リンク機構が用いられている。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、このリンク機構12を構成する各リンク部材11の回動によって、その上方に支持するシート1を昇降動作させることが可能になっている。
【0021】
尚、本実施形態では、サイドフレーム13に対する前方リンク11a及び後方リンク11bの各連結点X1,X2は、ベース部材14に対する前方リンク11a及び後方リンク11bの各連結点X3,X4よりも車両後方側(図2中、右側)に配置されている。即ち、本実施形態のリンク機構12は、サイドフレーム13側の各連結点X1,X2が車両前方(同図中、左側)に移動する方向に各リンク部材11が回動することによって(同図中、反時計回りの回動)、これら各リンク部材11の上方に支持されたシート1が上方に移動する。そして、各連結点X1,X2が車両後方側に移動する方向に各リンク部材11が回動することによって(同図中、時計回りの回動)、各リンク部材11の上方に支持されたシート1が下方に移動するように構成されている。
【0022】
また、本実施形態では、上記リンク機構12を構成する上記各リンク部材11のうちの一つ、右側のサイドフレーム13に連結される後方リンク11bには、その連結点X2を回動中心とする駆動入力ギヤ(セクターギヤ)16が形成されている。即ち、この駆動入力ギヤ16は、後方リンク11bと回動軸Q1を共有して一体に回動する。尚、本実施形態では、左右のサイドフレーム13(の後端部13b)間を連結するトルクロッド17が後方リンク11bの回動軸Q1を構成する。そして、本実施形態のリンク機構12は、この駆動入力ギヤ16を介して後方リンク11bが駆動されることにより、その上方に支持するシート1を昇降動作させることが可能となっている。
【0023】
更に、本実施形態のシートリフター装置10は、上記のように構成されたリンク機構12の駆動入力ギヤ16に歯合するピニオンギヤ18を備えている。また、図1及び図3に示すように、本実施形態では、シートクッション2の側方(図1中、紙面手前側)には、操作ハンドル20が設けられている。そして、図2及び図3に示すように、本実施形態のシートリフター装置10は、この操作ハンドル20に対する操作入力に基づいてピニオンギヤ18の回転を制御する回転制御装置21を備えている。
【0024】
詳述すると、図4に示すように、本実施形態のシートリフター装置10において、ピニオンギヤ18は、その回転軸22と一体に形成されている。そして、図5図11に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、このピニオンギヤ18の回転軸22を回転自在に支持する第1支持部材23及び第2支持部材24を備えている。
【0025】
図8図10に示すように、第1支持部材23は、略平板状の外形を有している。また、第2支持部材24は、この第1支持部材23に対向する平板部25を備えている。尚、本実施形態の第2支持部材24は、複数(本実施形態では、2つ)の脚部26を有しており、これらの脚部26が第1支持部材23に固定されることで、その平板部25が第1支持部材23に対向して配置されるようになっている。そして、これら第2支持部材24の平板部25及び第1支持部材23には、それぞれ、ピニオンギヤ18の回転軸22が挿通される挿通孔27,28が形成されている。
【0026】
具体的には、図4に示すように、本実施形態のピニオンギヤ18は、回転軸22の一端側(第1端部22a、同図中、右側の端部)に形成されている。そして、この回転軸22には、ピニオンギヤ18に連続して軸線方向中央側(同図中、左側)に延びる大径部22cが設けられている。
【0027】
一方、図10に示すように、第1支持部材23に形成された挿通孔28の内径は、上記ピニオンギヤ18の回転軸22に設けられた大径部22cの外径と略等しく(僅かに大きく)設定されている。また、第2支持部材24の平板部25に形成された挿通孔27の内径は、ピニオンギヤ18の反対側に位置する回転軸22の他端側(第2端部22b、同図中、左側の端部)の外径と略等しく(僅かに大きく)設定されている。即ち、本実施形態の回転制御装置21において、ピニオンギヤ18の回転軸22は、その大径部22cが第1支持部材23に保持されるとともに、その第2端部22bが第2支持部材24の平板部25に保持される。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、その第1支持部材23の裏面23b側(同図中、右側)からピニオンギヤ18が突出した状態で、当該ピニオンギヤ18の回転軸22を回転自在に支持する構成になっている。
【0028】
図2図3及び図8に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、その第1支持部材23の裏面23bを固定面としてシートクッション2の骨格を構成するサイドフレーム13に固定される。具体的には、本実施形態のシート1において、そのサイドフレーム13には、当該サイドフレーム13をシート幅方向(図2中、紙面に直交する方向)に貫通する貫通孔30が形成されている。また、上記リンク機構12側の駆動入力ギヤ16は、この貫通孔30に臨む位置に設けられている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、この貫通孔30内に、その第1支持部材23の裏面23bから突出したピニオンギヤ18を挿入する態様で、シート1のサイドフレーム13に固定される構成になっている。
【0029】
また、図4図8及び図9に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、ピニオンギヤ18の回転軸22には、当該回転軸22とともに回転する第1噛合部材としての爪車31が設けられている。尚、本実施形態では、この爪車31は、回転軸22の略中央部分に設けられている。そして、図8及び図9に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、この爪車31に係合することにより当該爪車31及びピニオンギヤ18が設けられた回転軸22の回転を規制可能な複数のロック部材32を備えている。
【0030】
詳述すると、図10及び図12に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、これらの各ロック部材32は、第1支持部材23に設けられたロック保持部33に保持されることにより、周方向移動不能な状態で、爪車31の径方向外側に配置されている。具体的には、本実施形態の回転制御装置21は、爪車31を挟んで周方向に約180°離間した位置に配置された一対のロック部材32を備えている。また、本実施形態のロック部材32は、一端に爪車31に対する噛合部32aを有した略平板状に形成されている。そして、第1支持部材23の表面23aには、これら各ロック部材32のロック保持部33を構成する複数の保持突部34が形成されている。
【0031】
具体的には、本実施形態の回転制御装置21において、各ロック保持部33は、それぞれ、所定の間隔で爪車31の周方向に並ぶ一対の保持突部34により構成されている。そして、各ロック部材32は、そのロック保持部33を構成する2つの保持突部34間に挟み込まれることにより、その爪車31周りの周方向移動が規制される構成になっている。
【0032】
また、本実施形態のロック保持部33は、その保持するロック部材32の径方向移動、即ち当該ロック部材32の噛合部32aが爪車31に対して接離する方向の相対移動を許容する。更に、本実施形態の回転制御装置21は、各ロック部材32を付勢して爪車31に押し当てる付勢部材としてのリングバネ35を備えている。即ち、このリングバネ35は、略円弧状(略C字状)に湾曲したバネ本体35cを有している。そして、各ロック部材32は、このリングバネ35が縮径する方向の弾性力(弾性復元力)に基づいて、それぞれ、径方向内側に相対移動することにより、その噛合部32aが爪車31に噛合する構成になっている。
【0033】
ここで、本実施形態では、爪車31及び各ロック部材32の噛合部位形状(爪形状)は、その爪車31が、図12中、反時計回り方向に回転した場合において、当該爪車31に噛合する各ロック部材32が径方向外側に移動する、即ち各ロック部材32を爪車31から脱離する方向に移動させる押圧力が発生するように設計されている。そして、本実施形態の回転制御装置21においては、これにより、そのシート1が上方移動する方向における回転軸22の回転を許容しつつ、シート1が下方移動する方向における回転軸22の回転を規制するラチェット式の回転規制機構40が形成されるようになっている。
【0034】
即ち、本実施形態のシートリフター装置10は、ピニオンギヤ18の回転軸22が、爪車31と一体に、図12中、反時計回り方向に回転することにより、そのリンク機構12に支持されたシート1が上方移動する構成になっている。また、このとき、回転規制機構40においては、爪車31に噛合する各ロック部材32が、その両者間の噛合部位形状に基づいて、リングバネ35の付勢力に抗して径方向外側に移動する。そして、本実施形態の回転規制機構40は、これにより、その爪車31に噛合する各ロック部材32が、一爪ずつ爪車31の爪部を乗り越える態様で、そのリンク機構12の上方に支持されたシート1が上方移動する方向における回転軸22の回転を許容する構成になっている。
【0035】
更に、本実施形態の回転規制機構40は、図12中、時計回り方向に爪車31が回転した場合には、当該爪車31及び各ロック部材32の噛合部位形状に基づいて、その爪車31と各ロック部材32との間の噛み合いが強まる(噛み込む)ように構成されている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、リンク機構12の上方に支持されたシート1が下方移動する方向における回転軸22の回転を規制することで、そのシート荷重に抗してシート位置を保持することが可能となっている。
【0036】
また、図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、操作ハンドル20に連動して回動する略平板状の入力部材41を備えている。本実施形態では、この入力部材41は、ピニオンギヤ18の回転軸22(の第2端部22b)が挿通される挿通孔41aを有している。尚、本実施形態のシートリフター装置10は、この入力部材41に対して操作ハンドル20が直接的に固定される構成になっている。そして、本実施形態の入力部材41は、これにより、そのピニオンギヤ18と同軸位置において、操作ハンドル20と一体に回動するように構成されている。
【0037】
図1及び図3に示すように、本実施形態の操作ハンドル20は、先端部分をハンドル部20aとして車両前方側(図1中、右側)に向かって延びるレバー形状を有している。また、本実施形態のシートリフター装置10において、この操作ハンドル20は、そのハンドル部20aが車両の床部に対して略水平となる位置を中立位置P0として、シートクッション2の側方に配置される。そして、そのハンドル部20aが上方に引き上げられる方向(図1中、反時計回り方向、第1方向)及び下方に押し下げられる方向(同図中、時計回り方向、第2方向)に、回動操作される構成になっている。
【0038】
ここで、図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、上記第2支持部材24は、回転軸22の径方向外側を包囲する態様で平板部25と脚部26との間の位置に配置される扁平略円筒状の筒状部42を有している。また、この筒状部42の内側には、上記回転規制機構40の付勢部材を構成するリングバネ35(図12参照)と同様、略円弧状(略C字状)に湾曲したバネ本体43cを有するリングバネ43が設けられている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、このリングバネ43の弾性力(弾性復元力)に基づいて、その入力部材41に連結された操作ハンドル20を中立位置P0に復帰させるハンドル戻し機構44を備えている。
【0039】
詳述すると、図7図8及び図11に示すように、本実施形態の入力部材41には、その周縁部から回転軸22の軸線方向に沿って第1支持部材23側(図11中、右側)に向かって延びる接続片45が設けられている。また、図11及び図13に示すように、本実施形態のリングバネ43は、そのバネ本体43cの両端部から径方向内側に折り曲げられた折曲部43a,43bを有している。そして、上記入力部材41に設けられた接続片45の先端は、これらの両折曲部43a,43bの間に配置されている。
【0040】
即ち、本実施形態の回転制御装置21は、操作ハンドル20に対する操作入力に基づき入力部材41が回動することによって、その接続片45が上記リングバネ43の両端に設けられた折曲部43a,43bの何れか一方を周方向に押圧するように構成されている。尚、本実施形態では、接続片45の先端は、後述する解除部材65の接続片74に嵌合する構成になっており、リングバネ43の各折曲部43a,43bは、この解除部材65の接続片74を介して入力部材41の接続片45に押圧される。そして、本実施形態のハンドル戻し機構44は、これにより生ずるリングバネ43の弾性力に基づいて、その入力部材41の接続片45を回動前の周方向位置、即ち操作ハンドル20の中立位置P0に対応する周方向位置に復帰させる構成になっている。
【0041】
具体的には、本実施形態の回転制御装置21は、操作ハンドル20の引き上げ操作、即ちハンドル部20aを上方に引き上げる方向の回動操作に基づいて、その入力部材41が、図6中、反時計回り方向に回動するように構成されている。そして、本実施形態の入力部材41は、これにより、その接続片45が、図13中、反時計回り方向に周方向移動することで、リングバネ43の第1折曲部43aを押圧する構成になっている。
【0042】
一方、操作ハンドル20の押し下げ操作、即ちハンドル部20aを下方に押し下げる方向の回動操作が入力された場合、入力部材41は、図6中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、その入力部材41の接続片45が、図13中、時計回り方向に周方向移動することで、リングバネ43の第2折曲部43bを押圧するように構成されている。
【0043】
また、図6図11及び図13に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、第2支持部材24には、リングバネ43の各折曲部43a,43bに対する係合部46が形成されている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、この係合部46に対する係合関係に基づいて、上記入力部材41の接続片45が各折曲部43a,43bを押圧する方向とは反対方向における当該各折曲部43a,43bの周方向移動を規制する構成になっている。
【0044】
具体的には、入力部材41の接続片45に押圧されたリングバネ43の第1折曲部43aが、図13中、反時計回り方向に周方向移動するとき、他方側の第2折曲部43bは、上記係合部46に当接することによって、その反時計回り方向の周方向移動が規制される。また、入力部材41の接続片45に押圧されたリングバネ43の第2折曲部43bが、図13中、時計回り方向に周方向移動するとき、他方側の第1折曲部43aは、その時計回り方向の周方向移動が規制される。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、入力部材41に対するリングバネ43の連れ回りを抑えることで、そのリングバネ43の弾性復元力に基づいて、入力部材41に固定された操作ハンドル20を中立位置P0に復帰させることが可能になっている。
【0045】
また、図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、軸線方向に延びる係合部47cを有してピニオンギヤ18の回転軸22に固定された第1連結部材47と、ピニオンギヤ18の回転軸22が挿通される挿通孔48aを有して回動可能に設けられた伝達ギヤ48と、を備えている。そして、この伝達ギヤ48には、上記第1連結部材47に係合することにより伝達ギヤ48の回転をピニオンギヤ18の回転軸22に伝達する第2連結部材49が固定されている。
【0046】
更に、図8図9及び図14に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、ピニオンギヤ18の回転軸22と同軸位置において回転自在に設けられた回動支持部材51と、この回動支持部材51に支持されることにより偏心位置において回動可能に設けられた送り部材52と、を備えている。また、その送り部材52は、入力部材41に係合するとともに、当該入力部材41が回動することにより伝達ギヤ48に係合するように構成されている。そして、本実施形態では、これにより、操作ハンドル20に対する操作入力をピニオンギヤ18の回転軸22に伝達する操作入力伝達機構(送り機構)53が形成されている。
【0047】
詳述すると、図8図9及び図13に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、第1連結部材47の係合部47cは、回転軸22の周方向に沿って湾曲する湾曲略板状に形成されている。また、第2連結部材49は、この第1連結部材47の係合部47cと略等しい径方向位置において当該係合部47cを周方向に挟む二位置に配置される一対の係合部49a,49bを有している。尚、本実施形態では、これら第2連結部材49側の各係合部49a,49bもまた、それぞれ、回転軸22の周方向に沿って湾曲する湾曲略板状に形成されている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これら第2連結部材49側の各係合部49a,49bと第1連結部材47側の係合部47cとが周方向に係合することにより、その伝達ギヤ48の回転がピニオンギヤ18の回転軸22に伝達される構成になっている。
【0048】
具体的には、第2連結部材49の第1係合部49aが第1連結部材47の係合部47cに係合することにより、図13中、反時計周り方向の回転、即ちリンク機構12に支持されたシート1を上方移動させる方向の回転が伝達ギヤ48からピニオンギヤ18の回転軸22に伝達される。そして、第2連結部材49の第2係合部49bが第1連結部材47の係合部47cに係合することにより、図13中、時計周り方向の回転、即ちシート1を下方移動させる方向の回転が伝達ギヤ48からピニオンギヤ18の回転軸22に伝達されるようになっている。
【0049】
ここで、図9及び図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、ピニオンギヤ18の回転軸22に沿った軸線方向において、第1支持部材23と第2支持部材24の平板部25との間に介在される第1中間部材55及び第2中間部材56を備えている。本実施形態の第1中間部材55は、その蓋部55aの中心部分に円孔57を有した扁平略有蓋円筒状に形成されている。また、第2中間部材56は、軸方向の一端側にフランジ部56aを有した略円筒状の外形を有している。そして、これら第1中間部材55及び第2中間部材56は、その円孔57内に第2中間部材56が挿入されることにより、当該第2中間部材56のフランジ部56aが第1中間部材55の蓋部55aに当接する態様で互いに組み付けられる構成になっている。
【0050】
図10及び図14に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、これら第1中間部材55及び第2中間部材56は、その第1中間部材55の円孔57内にピニオンギヤ18の回転軸22が挿通されることにより、当該ピニオンギヤ18の回転軸22と同軸に配置されている。また、操作入力伝達機構53を構成する回動支持部材51は、その第2中間部材56の外径と略等しい(僅かに大きい)内径を有した略円環状の外形を有している。そして、本実施形態の回動支持部材51は、その第2中間部材56の外周に嵌合することにより、ピニオンギヤ18の回転軸22に軸支された上記伝達ギヤ48と同軸位置において回動可能に支持される構成になっている。
【0051】
また、図14に示すように、本実施形態の送り部材52は、回動支持部材51の周縁部に設けられた回動軸58周りに回動可能な状態で支持されている。更に、この送り部材52には、その回動軸58の径方向外側に向かって突出する係合爪60が設けられている。そして、入力部材41には、その回動軸58周りの回動を許容しつつ、送り部材52の係合爪60に係合する係合凹部61が形成されている。
【0052】
具体的には、本実施形態の送り部材52は、均等間隔で周方向に並ぶ二本の係合爪60を備えている。また、本実施形態の送り部材52において、これらの係合爪60は、その送り部材52を支持する回動支持部材51の外周縁よりも径方向外側に向かって突出する態様で設けられている。更に、本実施形態の入力部材41は、この送り部材52の径方向外側に配置される係合連結部62を有している。そして、その送り部材52側の各係合爪60に対する係合凹部61は、この係合連結部62における径方向内側の周縁部に設けられている。
【0053】
また、本実施形態の送り部材52は、その回動軸58を基端として回動支持部材51の周方向に沿うように互いに相反する方向に延びる一対のアーム部63a,63bを有している。そして、これら各アーム部63a,63bには、それぞれ、伝達ギヤ48に対する噛合部64が形成されている。
【0054】
即ち、図15及び図16に示すように、本実施形態の回動支持部材51は、操作ハンドル20に対する操作入力に基づき入力部材41が回動することによって、その入力部材41に係合する送り部材52と一体に、ピニオンギヤ18の回転軸22周りに回動する。また、このとき、送り部材52は、その回動支持部材51に設けられた回動軸58周りに回動する。更に、本実施形態の送り部材52は、その回動軸58周りの回動によって、何れか一方のアーム部63a,63b(の噛合部64)が、径方向内側に位置する伝達ギヤ48に対して係合(噛合)するように構成されている。そして、本実施形態の操作入力伝達機構53は、この状態で入力部材41と伝達ギヤ48とが一体に回動することにより、その操作ハンドル20に対する操作入力をピニオンギヤ18の回転軸22に伝達する構成になっている。
【0055】
具体的には、図15に示すように、本実施形態の操作入力伝達機構53は、操作ハンドル20の引き上げ操作に基づき、同図中、反時計回り方向に入力部材41が回動することによって、その係合連結部62に噛合する送り部材52もまた、回動軸58を中心として、同図中、反時計回り方向に回動するように構成されている。そして、これにより、送り部材52の第1アーム部63aが伝達ギヤ48に噛合することで、同図中、反時計回り方向における入力部材41の回動、即ちシート1を上方移動させる方向の操作入力が、その伝達ギヤ48を介してピニオンギヤ18の回転軸22に伝達される構成になっている。
【0056】
一方、図16に示すように、操作ハンドル20の押し下げ操作に基づき、同図中、時計回り方向に入力部材41が回動した場合もまた、その係合連結部62に噛合する送り部材52は、回動軸58を中心として同図中、時計回り方向に回動する。そして、本実施形態の操作入力伝達機構53は、これにより、その送り部材52の第2アーム部63bが伝達ギヤ48に噛合することで、同図中、時計回り方向における入力部材41の回動、即ちシート1を下方移動させる方向の操作入力が、その伝達ギヤ48を介してピニオンギヤ18の回転軸22に伝達される構成になっている。
【0057】
また、図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、ピニオンギヤ18の回転軸22に沿った軸線方向、上記第1中間部材55の蓋部55aと回転規制機構40を構成する爪車31及び各ロック部材32との間には、上記入力部材41に連動してピニオンギヤ18の回転軸22周りに回動する解除部材65が設けられている。更に、各ロック部材32には、この解除部材65に対する係合部66が形成されている。そして、本実施形態では、これにより、操作ハンドル20に対する操作入力に基づいて、図17に示すように、その第1噛合部材としての爪車31から第2噛合部材としての各ロック部材32を脱離させる解除機構70が形成されている。
【0058】
詳述すると、図8図10に示すように、本実施形態の解除部材65は、略平板状に形成されている。また、解除部材65の中心部分には、ピニオンギヤ18の回転軸22が挿通される挿通孔71が形成されている。尚、本実施形態の回転軸22には、ピニオンギヤ18に連続する上記大径部22cよりも直径の大きな第2大径部22dが形成されており(図4参照)、上記挿通孔71の内径は、この第2大径部22dと略等しく(僅かに大きく)設定されている。更に、解除部材65の周縁部分には、その径方向外側に配置された第1中間部材55の筒状部55bに沿って周方向に延びる周壁部72が形成されている(図12参照)。そして、本実施形態の解除部材65は、これらの各周壁部72を第1支持部材23の表面23a側に向けた状態で、そのピニオンギヤ18の回転軸22周りに回動可能に軸支されている。
【0059】
また、図8図9、及び図18に示すように、本実施形態の解除部材65には、その外周縁から径方向外側に向かって延びる接続片74が設けられている。具体的には、この接続片74は、周方向に離間して設けられた両周壁部72の中間位置に形成されている。更に、図11及び図13に示すように、この接続片74の先端部分には、上記入力部材41に設けられた接続片45の先端部分が嵌合する嵌合凹部74aが形成されている。そして、本実施形態の解除部材65は、これにより、操作ハンドル20に対する操作入力に基づいて、その入力部材41と一体に回動する構成になっている。
【0060】
一方、図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21において、回転規制機構40を構成する各ロック部材32の係合部66は、その軸方向に対向する解除部材65側(図10中、左側)に向かって突出する突起形状を有している。また、図18に示すように、本実施形態の解除部材65には、これら各ロック部材32の係合部66が挿入される一対の係合孔75が形成されている。具体的には、これらの係合孔75は、それぞれ、その解除部材65を軸支する回転軸22の周方向に沿った長孔形状を有している。更に、本実施形態では、各係合孔75における径方向内側の内壁面75aは、解除部材65の回動位置に応じて各ロック部材32の係合部66に当接するカム面76となっている。そして、本実施形態の解除機構70は、これらのカム面76が、解除部材65の回動位置に応じて、各係合孔75内に挿入された各ロック部材32の係合部66を径方向外側に押圧することにより、そのリングバネ35の付勢力に抗して、各ロック部材32をピニオンギヤ18の回転軸22と一体に設けられた爪車31から脱離させる構成になっている。
【0061】
さらに詳述すると、図18に示すように、本実施形態では、各係合孔75における径方向外側の内壁面75bには、それぞれ、径方向内側に向かって突出する規制突部77が形成されている。そして、本実施形態の解除部材65は、入力部材41に固定された操作ハンドル20が中立位置P0にある場合において、これら各規制突部77の先端が各ロック部材32の係合部66と径方向に対向配置されるように構成されている。
【0062】
即ち、本実施形態では、操作ハンドル20が中立位置P0にある場合、これらの各規制突部77が、その径方向外側に向かう各ロック部材32の移動を規制することで、当該各ロック部材32が爪車31から脱離する動作を規制する脱離防止機構78が形成されている。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、操作ハンドル20に対する操作入力のない場合には、そのピニオンギヤ18の回転軸22が回転不能な状態に維持される構成になっている。
【0063】
また、図19に示すように、本実施形態の解除部材65は、操作ハンドル20の引き上げ操作に基づき、同図中、反時計回り方向に回動した場合には、その各係合孔75に設定されたカム面76が、各ロック部材32の係合部66に当接しない構成になっている。更に、本実施形態の解除部材65は、このとき、その各係合孔75における径方向外側の内壁面75bと各ロック部材32の係合部66との間に隙間が形成されるように構成されている。即ち、本実施形態の回転制御装置21は、操作ハンドル20の引き上げ操作時には、各ロック部材32の径方向移動を許容することで、ラチェット機構として構成された回転規制機構40の機能に基づいて、図14中、反時計回り方向にピニオンギヤ18の回転軸22を回転させることが可能になっている。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、これにより、その操作ハンドル20の引き上げ操作に基づいて、リンク機構12に支持されたシート1を上方移動させる構成になっている。
【0064】
一方、図20に示すように、本実施形態の解除部材65は、操作ハンドル20の押し下げ操作に基づき、同図中、時計回り方向に回動した場合には、その各係合孔75に設定されたカム面76が、各ロック部材32の係合部66に当接して径方向外側に押圧するように構成されている。即ち、本実施形態の解除機構70は、この操作ハンドル20の押し下げ操作に基づいて、回転規制機構40による回転軸22の回転規制を解除する。そして、本実施形態の回転制御装置21は、これにより、図17中、時計回り方向にピニオンギヤ18の回転軸22を回転させることが可能になっている。
【0065】
尚、本実施形態の回転制御装置21には、上記回転規制機構40による回転規制が解除された場合において、操作入力に基づき回転軸22を回転駆動することが可能な状態を維持しつつ、そのリンク機構12側からの逆入力に基づく回転軸22の回転を規制可能なセルフロック機構79が設けられている(図13参照)。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、これにより、その操作ハンドル20の押し下げ操作に基づいて、リンク機構12に支持されたシート1を下方移動させる構成になっている。
【0066】
即ち、本実施形態の回転制御装置21は、中立位置P0を始点とした操作ハンドル20に対する一回の操作入力において、その操作入力伝達機構53を構成する送り部材52が伝達ギヤ48に噛合している間の操作量に応じた回転角度、ピニオンギヤ18の回転軸22を回転させる。尚、本実施形態では、この操作入力一回あたりの回転角度は、最大で爪車31の二爪分(二歯分)に設定されている。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、このような操作ハンドル20の引き上げ操作又は押し下げ操作を繰り返すことで、その上下方向のシート位置(リフト位置)を任意に調整することが可能になっている。
【0067】
(回転範囲制限機構)
次に、本実施形態の回転制御装置21に設けられた回転範囲制限機構について説明する。
【0068】
図8図10に示すように、本実施形態の回転制御装置21は、ピニオンギヤ18の回転軸22と同軸位置において回転可能に設けられたリング部材80を備えている。本実施形態の回転制御装置21において、このリング部材80は、ピニオンギヤ18の回転軸22に沿った軸線方向、その回転軸22に設けられた爪車31と上記回転規制機構40を構成する各ロック部材32が支持された第1支持部材23との間に配置されている。更に、本実施形態のリング部材80は、これらの爪車31及び第1支持部材23に対して、それぞれ、係合可能な構成になっている。そして、本実施形態では、このリング部材80と爪車31及び第1支持部材23との間の係合関係に基づいて、その回転軸22の回転範囲を制限する回転範囲制限機構81が形成されている。
【0069】
詳述すると、図21図23に示すように、本実施形態のリング部材80は、径方向外側に突出する係合突部82を備えている。また、第1支持部材23の表面23aには、このリング部材80がピニオンギヤ18の回転軸22周りに回動することによって、その係合突部82に係合する一対の規制突部83(83a,83b)が形成されている。尚、本実施形態では、これらの規制突部83は、その裏面23b側から表面23a側に押し出すかたちで第1支持部材23を塑性加工することにより、上記ロック保持部33を構成する各保持突部34と一体に形成されている。そして、本実施形態のリング部材80は、これにより、その第1支持部材23との間の相対回動範囲が制限されている。
【0070】
即ち、本実施形態では、中間回転体としてのリング部材80に設けられた係合突部82が、第1の中間回転規制部を構成し、各ロック部材32(第2噛合部材)の支持部材を構成する第1支持部材23(の表面23a)に設けられた各規制突部83が、支持側回転規制部を構成する。詳しくは、図22中、リング部材80が時計回り方向に回動した場合に係合する第1規制突部83a(同図中、右側の規制突部)が第1の当接点M1を構成し、そのリング部材80が反時計回り方向に回動した場合に係合する第2規制突部83b(同図中、左側の規制突部)が第2の当接点M2を構成する。そして、本実施形態の回転範囲制限機構81は、これら第1及び第2の当接点M1,M2間をリング部材80の係合突部82が相対移動可能な所定角度θ1の範囲内に、そのリング部材80と第1支持部材23との間の相対回動範囲を制限する構成になっている。
【0071】
また、本実施形態のリング部材80には、周方向に延びる係合溝84が形成されている。更に、上記爪車31には、この係合溝84内に挿入される係合ピン85が設けられている。そして、本実施形態のリング部材80は、これにより、その係合ピン85と一体に回転するピニオンギヤ18の回転軸22との間の相対回動範囲が制限されている。
【0072】
即ち、軸側回転規制部としての係合ピン85は、ピニオンギヤ18の回転軸22(に設けられた爪車31)と一体回転することにより、リング部材80に形成された第2の中間回転規制部としての係合溝84内における何れかの周方向端部84a,84bに係合する。また、本実施形態では、図23中、係合ピン85が時計回り方向に回動した場合に係合する係合溝84の第1周方向端部84aが第1の当接点N1を構成し、係合ピン85が反時計回り方向に回動した場合に係合する係合溝84の第2周方向端部84bが第2の当接点N2を構成する。そして、本実施形態の回転範囲制限機構81は、これら第1及び第2の当接点N1,N2間を係合ピン85が相対移動可能な所定角度θ2の範囲内に、その係合ピン85と一体に回動するピニオンギヤ18の回転軸22とリング部材80との間の相対回動範囲を制限する構成になっている。
【0073】
つまり、本実施形態の回転制御装置21において、リング部材80は、第1支持部材23に対する相対回動範囲が所定角度θ1に制限されている。また、ピニオンギヤ18の回転軸22は、このリング部材80に対する相対回動範囲が所定角度θ2に制限されている。従って、そのピニオンギヤ18の回転軸22がシート1のサイドフレーム13に固定された第1支持部材23に対して相対回転可能な範囲(回転制限範囲)は、これら2つの相対回動範囲を足し合わせた所定の回転角度となっている(θ1+θ2)。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、この回転範囲制限機構81による回転軸22の回転制限範囲に基づいて、その上下方向におけるシート1の調整範囲を規定する構成になっている。
【0074】
具体的には、リング部材80の係合突部82が第1支持部材23の第1規制突部83aに係合し、爪車31に設けられた係合ピン85がリング部材80に形成された係合溝84の第1周方向端部84aに係合する状態において、そのリンク機構12の上方に支持されたシート1が下方移動する方向における回転軸22の回転が規制される。そして、本実施形態のシートリフター装置10は、この状態で、そのシート1がリンク機構12による調整範囲の下端位置に配置されるように構成されている。
【0075】
即ち、本実施形態のシートリフター装置10は、リンク機構12によるシート1の昇降動作における最も下端側の位置において、その回転規制機構40を構成する第1噛合部材としての爪車31と第2噛合部材としての各ロック部材32とが正しく噛み合うように調整される。また、本実施形態では、回転範囲制限機構81による回転軸22の回転制限範囲(θ1+θ2)は、上下方向におけるシート1の調整範囲を回転軸22の回転角度に換算した値よりも僅かに大きな値に設定されている。そして、本実施形態では、これにより、そのリンク機構12に回転制御装置21を組み付ける際の調整自由度が確保されている。
【0076】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シートリフター装置10は、シート1を昇降動作させるリンク機構12と、このリンク機構12に設けられた駆動入力ギヤ16に歯合するピニオンギヤ18の回転を制御する回転制御装置21と、を備える。回転制御装置21は、ピニオンギヤ18の回転軸22と一体に回転する爪車31と当該爪車31に噛合することにより回転軸22の回転を規制するロック部材32とを有した回転規制機構40を備える。また、回転制御装置21は、回転軸22の回転範囲を制限する回転範囲制限機構81を備える。更に、回転範囲制限機構81は、ロック部材32が支持された第1支持部材23に設けられた周方向に離間する一対の規制突部83(83a,83b)と、爪車31に設けられた係合ピン85と、両規制突部83の間に配置される係合突部82及び係合ピン85が挿入される係合溝84を有したリング部材80と、を備える。そして、回転範囲制限機構81は、係合突部82と両規制突部83との係合関係に基づき第1支持部材23に対するリング部材80の相対回動範囲を制限するとともに、係合溝84と係合ピン85との係合関係に基づきリング部材80に対する回転軸22の相対回動範囲を制限するように構成される。
【0077】
即ち、ピニオンギヤ18と一体に回転する回転軸22の回転範囲を制限することによっても、そのリンク機構12によるシート位置の調整範囲を規定することができる。そして、これにより、そのリンク機構12側の駆動入力ギヤ16とピニオンギヤ18との間に設定された減速比の影響を低減することで、シート1をリンク機構12による調整範囲の端点位置(下端位置又は上端位置)に移動させた場合においても、その回転規制機構40を構成する爪車31とロック部材32とを正しく噛み合せることができる。その結果、シート調整範囲の端点位置においても、安定的にシート1を支持することができる。
【0078】
また、上記構成によれば、その回転範囲制限機構81による回転軸22の回転制限範囲を、当該回転軸22の一回転を超えた360°以上の回転角度に設定することができる。即ち、ピニオンギヤ18の回転軸22が第1支持部材23に対して相対回転可能な範囲は、リング部材80が第1支持部材23に対して相対回動可能な所定角度θ1と、ピニオンギヤ18の回転軸22がリング部材80に対して相対回動可能な所定角度θ2と、を足し合わせた回転角度になる(θ1+θ2)。そして、これにより、リンク機構12により調整可能なシート位置の上下方向範囲を拡張することで、高い設計自由度を確保することができる。
【0079】
(2)回転範囲制限機構81は、第1支持部材23に設けられた規制突部83(83a,83b)が形成する第1及び第2の当接点M1,M2間をリング部材80の係合突部82が相対移動可能な所定角度θ1の範囲内に、そのリング部材80と第1支持部材23との間の相対回動範囲を制限する。また、回転範囲制限機構81は、リング部材80に設けられた係合溝84の周方向端部84a,84bが形成する第1及び第2の当接点N1,N2間を当該係合溝84内の係合ピン85が相対移動可能な所定角度θ2の範囲内に、その係合ピン85と一体に回動するピニオンギヤ18の回転軸22とリング部材80との間の相対回動範囲を制限する。そして、これにより、簡素な構成にて、より確実に回転軸22の回転範囲を制限することができる。
【0080】
(3)回転規制機構40は、シート1が上方移動する方向における回転軸22の回転を許容しつつ、シート1が下方移動する方向における回転軸22の回転を規制するラチェット機構として構成される。
【0081】
上記構成によれば、シート1をリンク機構12による調整範囲の上限まで移動させた場合に、回転規制機構40を構成する爪車31とロック部材32とが正しく噛み合わない場合であっても、そのシート荷重に基づいて、これらの爪車31とロック部材32とが正しく噛み合う位置までシート1が下方移動する。そして、この位置をリンク機構12による調整範囲の上端として安定的にシート1を支持することができる。つまり、リンク機構12による調整範囲の下端位置についてのみ、その回転規制機構40を構成する爪車31とロック部材32とが正しく噛み合うように調整すればよい。そして、これにより、その回転制御装置21の組み付け作業を容易化することができる。
【0082】
(4)シートリフター装置10は、リンク機構12によるシート1の昇降動作における最も下端側の位置において、その回転規制機構40を構成する第1噛合部材としての爪車31と第2噛合部材としての各ロック部材32とが正しく噛み合うように調整される。
【0083】
上記構成によれば、回転規制機構40を構成する爪車31と各ロック部材32とが正しく噛み合う最も上方のシート位置が、自動的に、そのリンク機構12による調整範囲の上端になる。そして、これにより、シート1を安定的に支持し、及び組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0084】
(5)操作ハンドル20は、中立位置P0を有して引き上げ方向及び押し下げ方向に回動操作される。そして、回転制御装置21は、その回動操作された操作ハンドル20を中立位置P0に復帰させるハンドル戻し機構44と、操作ハンドル20が中立位置P0にある場合にロック部材32が爪車31から脱離する動作を規制する脱離防止機構78と、を備える。
【0085】
上記構成によれば、操作ハンドル20の非操作時、ピニオンギヤ18の回転軸22について、その回転が規制された状態に保持することができる。その結果、安定的にシート1を支持することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、リンク機構12の後方リンク11bに対して、そのシート1のサイドフレーム13との連結点X2を回動中心とする駆動入力ギヤ(セクターギヤ)16を設けることとした。しかし、これに限らず、駆動入力ギヤ16の構成については、任意に変更してもよい。例えば、前方リンク11aに駆動入力ギヤ16を設けてもよく、また必ずしもセクターギヤでなくともよい。そして、その駆動入力ギヤ16がリンク部材11と共有する回動中心についてもまた、シート側連結部材としてのサイドフレーム13との連結点(X1,X2)であっても、床側連結部材としてのベース部材14との連結点(X3,X4)であってもよい。
【0087】
・更に、上記実施形態では、各リンク部材11が周知の平行リンク機構を形成することとした。しかし、これに限らず、その駆動入力ギヤ16に噛合するピニオンギヤ18の回転に基づいて、その支持するシート1を昇降動作させることが可能であれば、そのリンク機構12の形式は、リンク部材11の数を含め、任意に変更してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、操作ハンドル20は、入力部材41に対して直接固定される。そして、入力部材41は、その操作ハンドル20が回動操作されることにより、当該操作ハンドル20と一体に回動することとした。しかし、これに限らず、例えば、ギヤ等を介して操作ハンドル20と入力部材41とが連結される構成であってもよい。そして、操作ハンドル20と入力部材41とは、必ずしも同軸に配置されていなくともよい。
【0089】
・更に、上記実施形態では、操作ハンドル20の引き上げ操作を第1方向の回動操作とし、操作ハンドル20の押し下げ操作を第2方向の回動操作としたが、その第1方向及び第2方向の回動操作を反転させた構成であってもよい。そして、その押し下げ操作によりシート1が上方移動し、引き上げ操作によりシート1が下方移動する構成であってもよい。
【0090】
・上記実施形態では、ピニオンギヤ18は、その回転軸22と一体に形成される。そして、回転規制機構40は、シート1が上方移動する方向における回転軸22の回転を許容しつつ、シート1が下方移動する方向における回転軸22の回転を規制するラチェット機構として構成されることとした。しかし、これに限らず、ピニオンギヤに同期して回転する回転軸と、その回転軸とともに回転する第1噛合部材及び当該第1噛合部材に噛合することにより回転軸22の回転を規制する第2噛合部材を有した回転規制機構と、を備えるものであれば、回転制御装置21の構成は、任意に変更してもよい。例えば、回転規制機構を構成する第1噛合部材及び第2噛合部材は、どのようなものであってもよい。また、第1噛合部材が設けられる回転軸は、必ずしもピニオンギヤと一体に形成されるものでなくともよい。更に、例えば、ギヤを介して連結されるもの等、その回転軸は、必ずしもピニオンギヤと同軸に配置されるものでなくともよい。そして、操作入力伝達機構や第1噛合部材から第2噛合部材を脱離させる解除機構等の構成もまた、任意に変更してもよい。
【0091】
・上記実施形態では、中間回転体としてのリング部材80は、径方向外側に突出する第1の中間回転規制部としての係合突部82と、周方向に延びる第2の中間回転規制部としての係合溝84と、を備えることとした。しかし、これに限らず、例えば、図24に示すリング部材80Bのように、径方向外側に突出する係合突部82Bが第1及び第2の中間回転規制部(第1及び第2の当接点N1,N2)を兼ねる構成にする等、その中間回転体の形状は、任意に変更してもよい。
【0092】
・更に、上記実施形態では、第1支持部材23には、リング部材80の係合突部82に係合する支持側回転規制部としての規制突部83(83a,83b)が設けられる。そして、ピニオンギヤ18の回転軸22と一体に回転する爪車31には、リング部材80の係合溝84に係合する軸側回転規制部としての係合ピン85が設けられることとした。しかし、これに限らず、例えば、周方向に延びる係合溝を爪車31に形成するとともに、この係合溝に係合する係合ピンをリング部材80に形成する等、爪車31に設けられた軸側回転規制部が、リング部材80に設けられた第2の中間回転規制部に対する第1及び第2の当接点N1,N2を形成する構成としてもよい。また、リング部材80に設けられた第1の中間回転規制部が、第1支持部材23に設けられた支持側回転規制部に対する第1及び第2の当接点M1,M2を形成する構成としてもよい。そして、軸側回転規制部及び支持側回転規制部の構成についてもまた、その形状や形成部位等、任意に変更してもよい。
【0093】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記第1噛合部材は、前記回転軸と一体に回転する爪車であって、前記軸側規制部は、前記爪車に設けられること、を特徴とする車両用シートリフター装置。これにより構成の簡素化及び装置の小型化を図ることができる。
【0094】
(ロ)操作ハンドルに対する操作入力を前記回転軸に伝達する操作入力伝達機構と、前記操作入力に基づき前記第1噛合部材から前記第2噛合部材を脱離させる解除機構と、を備えること、を特徴とする車両用シートリフター装置。
【0095】
(ハ)前記回転規制機構は、前記第2噛合部を付勢して前記第1噛合部材に噛合させる付勢部材を備えるものであって、前記回転制御装置は、前記シートが下方移動する方向に前記回転軸を回転させる前記操作入力に基づき前記付勢部材に抗して前記第1噛合部材から前記第2噛合部材を脱離させる前記解除機構を備えること、を特徴とする車両用シートリフター装置。これにより、より容易にシートを下方移動させることができる。
【0096】
(ニ)前記操作ハンドルは、中立位置を有して第1方向及び第2方向に回動操作されるものであって、前記回転制御装置は、前記回動操作された前記操作ハンドルを前記中立位置に復帰させるハンドル戻し機構と、前記操作ハンドルが前記中立位置にある場合に前記第2噛合部材が第1噛合部材から脱離する動作を規制する脱離防止機構と、を備えること、を特徴とする車両用シートリフター装置。これにより、操作ハンドルの非操作時、回転軸の回転が規制された状態に保持することができる。その結果、安定的にシートを支持することができる。
【符号の説明】
【0097】
1…シート、10…シートリフター装置、12…リンク機構、13…サイドフレーム、16…駆動入力ギヤ、18…ピニオンギヤ、20…操作ハンドル、21…回転制御装置、22…回転軸、23…第1支持部材(支持部材)、24…第2支持部材、31…爪車(第1噛合部材)、32…ロック部材(第2噛合部材)、33…ロック保持部、34…保持突部、35,43…リングバネ(付勢部材)、40…回転規制機構(ラチェット機構)、41…入力部材、44…ハンドル戻し機構、45…接続片、46…係合部、47…第1連結部材、48…伝達ギヤ、49…第2連結部材、51…回動支持部材、52…送り部材、53…操作入力伝達機構、55…第1中間部材、56…第2中間部材、58…回動軸、60…係合爪、61…係合凹部、62…係合連結部、63a…第1アーム部、63b…第2アーム部、64…噛合部、65…解除部材、66…係合部、70…解除機構、71…挿通孔、72…周壁部、74…接続片、75…係合孔、76…カム面、77…規制突部、78…脱離防止機構、80,80B…リング部材(中間回転体)、81…回転範囲制限機構、82…係合突部(第1の中間回転規制部)、82B…係合突部(第1及び第2の中間回転規制部)、83…規制突部(支持側回転規制部)、83a…第1規制突部、83b…第2規制突部、84…係合溝(第2の中間回転規制部)、84a…第1周方向端部、84b…第2周方向端部、85…係合ピン(軸側回転規制部)、θ1,θ2…所定角度、M1,N1…第1の当接点、M2,N2…第2の当接点、P0…中立位置。
図1
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