(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鏡裏板が、下縁に前方に延出する下鍔部を備えたものであり、前記内側取付部が、前記下鍔部に貫通孔を設けたものであり、前記第一の態様においては前記貫通孔に前記小さい方の鏡板に設けた係合要素を係合させるようにし、前記第二の態様においては前記貫通孔に前記スペーサーに設けた係合要素を係合させるようにした請求項2記載の引出し。
前記スペーサーが、その下面に前記外側取付部を備えたものであり、前記外側取付部が、前記大きい方の鏡板に設けた係合要素を係合させるための係合凹所を設けたものである請求項2又は3記載の引出し。
前記スペーサーが、その下面に前記大きい方の鏡板の一部に奥端で当接することにより前記大きい方の鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止するための切欠を有している請求項2、3又は4記載の引出し。
【背景技術】
【0002】
従来、前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備えた引出し、及び当該引出しを備えたワゴンといった什器が周知である(例えば、特許文献1参照)。斯かる特許文献に記載された引出しでは、鏡裏板に対して鏡板を正確に取り付けるべく、これまでビスやリベットを用いた取付構造が適用されてきた。
【0003】
ところで現在、スチール製の鏡板においては未だビスやリベット用いた取付構造を適用しているものの、樹脂製の鏡板においては、ビスやリベットを使用しないようにすべく、鏡板の上端を鏡裏板の上端に引っ掛けた状態で鏡板を回動させることにより、鏡板の下端部を前方から鏡裏板の下端部側に接近させて、その鏡板の下端部を鏡裏板の下端部側に鏡板の経過的な弾性変形を利用し止着するようにしたものもある。
【0004】
ここで、上述したようなワゴンの場合、上下方向に複数の引出しを有しているものが一般的であり、これら複数の引出しはそれぞれ上下寸法を異なる態様であることが殆どである。しかし、上下寸法が異なる鏡板を同じ取り付け方を適用して鏡裏板に取り付けようとすると鏡裏板の上下寸法もそれに応じて異なることとなる。また同じ形状をなす鏡裏板に上下寸法が異なる鏡板を取り付けるためには、鏡板の形状や取付けのための仕様を変更しなければならない。
【0005】
すなわち現在では、上下寸法が異なる鏡板を有した引出しを有する什器において、できるだけ共通した取付手順並びに設計手法によって、共通の引出し本体に取り付けたいという要望がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような点に着目したものであり、上下寸法が異なる鏡板を有した引出しを有する什器において、共通した取付手順並びに設計手法によって、共通の引出し本体に取り付けることができる引出し及び当該引出しを有する什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係る引出しは、前端部に鏡裏板を有した引出し本体を備え、前記鏡裏板の前面側に、大きさの異なる少なくとも二種類の鏡板を選択的に装着することが可能な引出しであって、前記引出し本体が、小さい方の鏡板を直接取付けるための内側取付部を有した前記鏡裏板と、この鏡裏板の前記内側取付部に取付け可能に構成され外面側に大きい方の鏡板を直接取付けるための外側取付部を有したスペーサーとを備えたものであり、前記スペーサーを取付けていない前記鏡裏板に前記内側取付部を利用して前記小さい方の鏡板を装着した第一の態様と、前記スペーサーを取付けた前記鏡裏板に前記外側取付部を利用して前記大きい方の鏡板を装着した第二の態様とをとり得るようにしたことを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、上下寸法が違う複数種類の鏡板を、共通の取り付け手順及び設計手法に大きく変更を施すことなく、共通の鏡裏板に取付けることができるようにすることができる。
【0011】
そして鏡板の取付態様の変更を有効に抑え得るための構成として、引出し本体が、鏡裏板の下端にスペーサーを取付けることができるようにしたものであり、小さい方の鏡板が、鏡裏板に対応した上下寸法及び左右幅寸法を有したものであり、大きい方の鏡板が、小さい方の鏡板と同じ左右幅寸法を有した構成を挙げることができる。
【0012】
特に、ビスや他の取り付け部材を用いずに上下寸法の異なる鏡板の取り付けを行い得る構成として、鏡裏板が、下縁に前方に延出する下鍔部を備えたものであり、内側取付部が、下鍔部に貫通孔を設けたものであり、第一の態様においては貫通孔に小さい方の鏡板に設けた係合要素を係合させるようにし、第二の態様においては貫通孔にスペーサーに設けた係合要素を係合させるようにした構成を挙げることができる。
【0013】
そして、スペーサーが、その下面に外側取付部を備えたものであり、外側取付部が、大きい方の鏡板に設けた係合要素を係合させるための係合凹所を設けたものであれば、簡素なスペーサーの構成としながら、両鏡板を同じ手法で取り付けることができる。
【0014】
大きい方の鏡板の組付けをより確実に行うようにするためには、スペーサーを、その下面に大きい方の鏡板の一部に奥端で当接することにより大きい方の鏡板の引出し本体に対する後方への移動を禁止するための切欠を有したものとすることが好ましい。
【0015】
そして、上述した引出しを有しながら組み立てを容易に行い得る什器の一例として、前面に開口部を有した什器本体に、少なくとも上段の引出しと下段の引出しとを上下方向に隣接させて収納した什器であって、上段の引出しが、上述した小さい鏡板を有する第一の態様の引出しであり、下段の引出しが、上述した大きい鏡板を有する第二の態様の引出しである什器を挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、共通した取付手順並びに設計手法によって、共通の引出し本体に取り付けることができる引出し及び当該引出しを有する什器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態は、本発明をワゴンとして用いられる什器Wに適用した場合のものである。
【0020】
什器Wは、前面に開口部を有した什器本体W1に、上段の引出し1(P)と下段の引出し1(Q)とを上下方向に隣接させて収納したものである。これら上段の引出し1(P)が小さい方の鏡板3を有しているとともに、下段の引出し1(Q)が大きい方の鏡板3を有している。
【0021】
すなわち、本実施形態に係る引出し1は、前端部に鏡裏板2を有した引出し本体10を備え、鏡裏板2の前面側に、大きさの異なる少なくとも二種類の鏡板3を選択的に装着することが可能な引出し1であって、引出し本体10が、小さい方の鏡板3を直接取付けるための内側取付部Xを有した鏡裏板2と、この鏡裏板2の内側取付部Xに取付け可能に構成され外面側に大きい方の鏡板3を直接取付けるための外側取付部Yを有したスペーサー4とを備えたものであり、スペーサー4を取付けていない鏡裏板2に内側取付部Xを利用して小さい方の鏡板3を装着した第一の態様Pと、スペーサー4を取付けた鏡裏板2に外側取付部Yを利用して大きい方の鏡板3を装着した第二の態様Qとをとり得るようにしたものである。そしてこの実施形態においては、上段の引出し1(P)が、第一の態様Pの引出し1であり、下段の引出し1(Q)が、第二の態様Qの引出し1である。
【0022】
以下、本実施形態に係る引出し1の構成を、第一の態様Pである上段の引出し1(P)、第二の態様Qである下段の引出し1(Q)の順に説明していく。
【0023】
上段の引出し1(P)は、
図2〜
図10に示すように、前端部に鏡裏板2を有した引出し本体10と、この引出し本体10の前面側に装着されるスチール製の鏡板3とを備え、鏡板3の一端部である下端部を前方から鏡裏板2の一端部である下端部側に接近させて、その鏡板3の下端部を鏡裏板2の下端部側に止着するようにしたものである。なお
図3及び
図8については図示の便宜上鏡板3を破断して示している。
【0024】
詳述すれば、引出し本体10は、上方に開放された収容空間を形成する箱体11と、この箱体11の前端に設けた鏡裏板2とを備えたものである。箱体11は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施して作られたスチール製のもので、底板12と、この底板12の左右両側縁から上方に延びる左右の側板13と、これら両側板13の後端及び底板12の後端を閉塞する背面板14とを備えている。
【0025】
鏡裏板2は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施すことによって作られたスチール製のもので、起立した平板状をなす裏板本体20と、この裏板本体20の下縁に一体に設けられた下鍔部21と、裏板本体20の上縁に一体に設けられた上鍔部22と、裏板本体20の左右両側縁にそれぞれ一体に設けられた側鍔部23とを備えている。下鍔部21は、裏板本体20の下縁から前方に延出する平板状のものである。上鍔部22は、裏板本体20の上縁から前方に延出する下延出部分22aと、この下延出部分22aの前縁から上方に起立する起立部分22bと、この起立部分22bの上縁から前方に延びる上延出部分22cとを備えた段付きフレーム状のものである。側鍔部23は、裏板本体20の両側縁から前方に延出する内延出部分23aと、この内延出部分23aの前縁から外側方に延びる拡開部分23bと、この拡開部分23bの外縁から前方に延びる外延出部分23cとを備えたものである。これら側鍔部23の内延出部分23aの外面側には箱体11の側板13の前端部が溶接により固着されているとともに、下鍔部21の下面後半部分には、箱体11の底板12の前端部が溶接により固着されている。
【0026】
この鏡裏板2の下鍔部21には、鏡板3の下端部を前方への移動を禁止した状態で取付けるための係合凹所24を設けるとともに、鏡板3の下端部を後方への移動を禁止した状態で位置決めするための切欠25を設けている。係合凹所24は、平面視左右方向に延びる長方形をなす貫通孔状のもので、下鍔部21の前半部分に左右方向に間隔を空けて複数個設けられている。ここで、鏡裏板2の下鍔部21に貫通孔状の係合凹所24を設けたものが、本実施形態に係る内側取付部Xである。切欠25は、前方に開放された前後方向に細長い平面視長方形状のもので、前端部分に前方に向かって漸次幅広となるように拡開する突起35案内用の傾斜案内面29を有している。切欠25の奥端は、後述する突起35を係止するための係止面28を有しており、板金素材の素材端面を露出させてある。
【0027】
鏡裏板2の上鍔部22には、鏡板3の上端部を上下方向に回動可能なように掛けるためのスチール用の掛け孔26が設けてある。すなわち、スチール用の掛け孔26は、スチール製の鏡板3を取付けるためのもので、上鍔部22の下延出部分22a及び起立部分22bに亘って形成された貫通孔状のものである。また、上鍔部22には、後述する樹脂製の鏡板3の上端部を上下方向に回動可能に掛けるための樹脂用の掛け孔22dも設けられている。樹脂用の掛け孔22dは、上鍔部22の起立部分22b及び上延出部分22cに亘って形成された貫通孔状のものである。
【0028】
鏡板3は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施すことによって作られたスチール製のもので、起立した平板状をなす鏡裏板2に対応した上下寸法及び左右幅寸法を有する鏡板本体30と、この鏡板本体30の下縁に一体に設けられた下鍔部31と、鏡板本体30の上縁に一体に設けられた上鍔部32と、鏡板本体30の左右両側縁にそれぞれ一体に設けられた側鍔部33とを備えている。下鍔部31は、鏡板本体30の下縁から後方に延出する概ね平板状のものである。すなわち、下鍔部31は、鏡板本体30の下縁に連続する下延出部分31aと、この下延出部分31aの後縁に連続する隆起部分31bとを備えたもので、隆起部分31bは、組立状態において鏡裏板2の下鍔部21の下面に添接し得るように隆起している。上鍔部32は、鏡板本体30の上縁から後方に延出する延出部分32aと、この延出部分32aの後縁から下方に垂下する垂下部分32bとを有したものである。側鍔部33は、鏡板本体30の両側縁に連続する湾曲部分33aと、この湾曲部分33aの後縁から後方に延びる延出部分33bとを備えたものである。
【0029】
鏡板3の下鍔部31には、鏡裏板2の係合凹所24と協働して弾性係合手段を構成する係合爪34と、鏡裏板2の切欠25と協働して位置決め手段を構成する突起35とが設けられている。すなわち、弾性係合手段は、鏡裏板2の下鍔部21に設けられた係合凹所24と、鏡板3の下鍔部31に設けられ部材の弾性変形を利用して係合凹所24に係合する係合爪34とを備えたものであり、係合状態において鏡板3の引出し本体10に対する前方への移動を禁止するものである。位置決め手段は、鏡裏板2の下鍔部21に設けられた切欠25と、鏡板3の下鍔部31に設けられ切欠25に侵入して当該切欠25の奥端に係止される突起35とを備えたものであり、係止状態において鏡板3の引出し本体10に対する後方への移動を禁止するものである。
【0030】
具体的に説明すれば、下鍔部31には、係合凹所24に対応する数の係合爪34が設けられている。これら各係合爪34は、下鍔部31にプレス加工により一体に形成されたもので、前端が最も高く、後方に向かって漸次低くなる傾斜面を有した形態をなしている。すなわちこれら各係合爪34は、下鍔部31に左右に延びるスリットを形成し、そのスリットに隣接する後側の部分をプレス加工により上方に膨出させることにより形成されている。そのため、これら係合爪34の前端側はスリットに対応した素材端面により形成され、当該素材端面を係合凹所24に係り合う係合面37としている。なお、この実施形態においては中央よりの2つの係合爪34aは係合凹所24に対応した幅寸法を有したものであり、左右両側近傍の2つの係合爪34bは係合凹所24よりも小さな幅寸法を有したものである。
【0031】
また、下鍔部31には、切欠25に対応する数の突起35が設けられている。これら各突起35は、下鍔部31にプレス加工により一体に形成されたもので、まず、下鍔部31に左右に延びるスリットを形成し、そのスリットと、下鍔部31の後縁との間に位置する部分をプレス加工により上方に膨出させることにより形成されている。そのため、これら突起35の後端側は下鍔部31の後縁に対応した素材端面により形成され、鏡裏板2に設けられた係止面28に当接する当接面38となっている。
【0032】
鏡板3の上鍔部32には、鏡裏板2のスチール用の掛け孔26に掛けるための掛け爪36が設けられている。具体的には、上鍔部32の垂下部分32bの下縁に掛け孔26に対応する数の掛け爪36が一体に突設されている。掛け爪36は、素材厚み寸法に対応する厚み寸法を備えたものであり、これら掛け爪36が係わり合うスチール用の掛け孔26は、スチール製の鏡板3の素材の厚み寸法に対応した前後寸法を有している。これにより
図4に示すように、組み付け状態においては鏡板3の上端部はこれら掛け爪36と掛け孔26との係合により引出し本体10に対して前後移動し得ないように保持されるようになっている。
【0033】
なお、この引出し1には、上述した鏡裏板2及び鏡板3に関連して施錠機構やラッチ操作機構が設けられるのは勿論であるが、これら施錠機構やラッチ操作機構は通常のものであるため、図示及び説明を省略する。
【0034】
次いで、この鏡板3を鏡裏板2に取付ける手順を説明する。本実施形態に係る引出し1は、鏡板3の鏡裏板2に対する組付けを、工具を要することなく取付け得るよう、ビスや別体の部品を何ら用いない、所謂ノンビスによりおこなうことができる。すなわち本実施形態に係る引出し1は、鏡裏板2の上鍔部22に鏡板3の上鍔部32を回動可能に係わり合わせた上で、鏡板3をその下鍔部31が鏡裏板2の下鍔部21が平面視において重なり合う位置まで回動させ、下鍔部同士21、31を弾性係合手段と位置決め手段とによって直接取付けることができる。詳述すれば、まず、
図9に示すように、鏡板3を仰向け姿勢にした上でその鏡板3の掛け爪36を鏡裏板2のスチール用の掛け孔26に係合させる。その状態から
図10に示すように鏡板3を鏡裏板2に接近する方向に回動させて、鏡板3の下端部を鏡裏板2の下端部に接近させ、最終的に鏡板3の下鍔部31を鏡裏板2の下鍔部21の下面側に重なり合わせる。その際に、係合要素たる係合爪34が両下鍔部21、31の厚み方向の一時的な弾性変形を利用して対応する貫通孔たる係合凹所24にそれぞれ係合するとともに、突起35が切欠25に侵入してその奥端に設けられた係止面28に当接して係止され、鏡板3の取付が完了する。この取付け状態においては、弾性係合手段及び位置決め手段が、板金素材の素材端面同士を当接させることにより鏡板3の引出し本体10に対する前後方向の位置決めを行うものである。言い換えれば、前述した取付け状態においては係合爪34の前端を構成する素材端面である係合面37が係合凹所24の内周面27を形成する素材端面に当接して鏡板3の引出し本体10に対する前方への移動を禁止するとともに、突起35の後端を形成する素材端面が切欠25の係止面28を構成する素材端面に当接して鏡板3の引出し本体10に対する後方への移動を禁止するようになっている。
【0035】
下段の引出し1(Q)は、
図11〜
図17に示すように、上段の引出し1(P)の鏡板3(以下「小さい方の鏡板3」と称する)と同じ左右幅寸法を有する一方、当該小さい方の鏡板3よりも上下方向寸法が大きい方の鏡板3を有したもので、この下段の引出し1(Q)の引出し本体10は上段の引出し1(P)本体にスペーサー4を装着したものであり、上段の引出し1(P)と同一又は相当する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
スペーサー4は、
図11〜
図17に示すように、樹脂により一体に成形されたもので、上壁42の上面42aに鏡裏板2の係合凹所24に係合する係合要素46を有するとともに、下面に係合凹所24及び切欠25にそれぞれ対応する部位に代替の係合凹所44及び代替の切欠45を有している。スペーサー4の上下方向寸法は大きい方の鏡板3と小さい方の鏡板3の寸法差を埋める寸法を有している。
【0037】
詳述すれば、スペーサー4は、上壁42、前壁43、下壁41及び端壁40を備えた後方に開放された側断面視コの字状をなすものである。係合要素46は、上壁42の上面42aに一体に突設された起立部分46aと、この起立部分46aの上端に連続して設けられ一側方に向けて延出する側方延出部分46bとを備えた正面視鉤型をなすもので、側方延出部分46bと上壁42との間には鏡裏板2の下鍔部21と箱体11の底板12との合計素材厚み寸法に対応する隙間sが形成されている。起立部分46aの前後面には、係合凹所24の内周面27に密着するがたつき防止用の突条46dが一体に形成されている。また、側方延出部分46bの下面には下鍔部21の上面42aを押圧するための膨出部分46cが下方へ向けて膨出している。なお、起立部分46aの左右幅寸法は係合凹所24の左右幅寸法よりも小さく設定されており、係合状態においては起立部分46aが係合凹所24の内周面27のうち一側縁に当接するようにしてある。上壁42には斯かる係合状態において係合凹所24の内周面27のうち他側縁に係わり合ってスペーサー4の左右方向の動きを抑制する位置決め用の戻り防止リブ42bが設けてある。すなわち、このスペーサー4は、
図14に示すように、鏡裏板2に下側から接近させながら係合要素46の側方延出部分46bを係合凹所24に貫入させ、しかる後に一側方にスライドさせることにより、鏡裏板2にワンタッチで取付けることができるようになっている。また代替の係合凹所44と代替の切欠45は、このスペーサー4の下壁41に設けられている。詳述すれば、代替の係合凹所44は、下壁41における貫通孔状の係合凹所24に対応する部位に設けられたもので、下壁41の後縁を後方に開放するように切り欠かれた形状をなしている。ここで、スペーサー4の下壁41に代替の係合凹所44を設けたものが、本実施形態に係る外側取付部Yである。代替の切欠45は、下壁41における鏡裏板2の切欠25に平面視対応する部位に設けられたもので、下壁41の前縁を前方に開放するように切り欠かれた形状をなしている。このスペーサー4の両端壁40は、大きい方の鏡板3の下鍔部31の左右両側端近傍部分に当接するように下方に突出させてある。さらに、前壁43の前面には、大きい方の鏡板3の背面に当接する当接リブ43aが設けられているが、位置決め用の代替の切欠45で大きい方の鏡板3の突起35を位置決めするようにした場合には、この当接リブ43aは必ずしも必要なものではない。また、このスペーサー4の左右方向中央部分には、下壁41を後方に向かって開口するように切り欠くことによって形成されたキャスタ取付用の凹陥部4cが設けられている。下壁41の下面におけるこの凹陥部4cよりも前側には鏡板3組み付け時に当該鏡板3の下鍔部31を下方に一時的に弾性変形させるための案内リブ41aが突設されている。
【0038】
この大きい方の鏡板3は、小さい方の鏡板3と同じ手順で鏡裏板2の前面に取付けられるものであり、取付けた状態においては大きい方の鏡板3の係合爪34がスペーサー4の代替の係合凹所44に係合するとともに、大きい方の鏡板3の突起35がスペーサー4の代替の切欠45に侵入して係止されるようになっている。大きい方の鏡板3の下鍔部31と下鍔部31の中央部下面には周知な構成のキャスタ(図示せず)が取付けられる。2h、4hは、キャスタを取付けるための取付け孔である。
【0039】
このような構成のものであれば、上段の引出し1(P)と下段の引出し1(Q)との間で鏡裏板2及び箱体11からなる引出し本体10の主要部を共通化することができる。すなわち鏡裏板2に小さい方の鏡板3を直接取付けることができるとともに、鏡裏板2に大きい方の鏡板3をスペーサー4を介して間接的に取付けることもできる。そして小さい方の鏡板3を直接取付けるための内側取付部Xを利用してスペーサー4を鏡裏板2に取付けることができるようにしているので、スペーサー4取付用の格別な手段を設ける必要もない。しかも、スペーサー4に内側取付部Xに準じた構成をなす外側取付部Yを設けているので、小さい方の鏡板3の下鍔部31と大きい方の鏡板3の下鍔部31とを同一の構造とすることができる。
【0040】
このようにこの実施形態において内側取付部Xは、鏡裏板2の下鍔部21に貫通孔状の係合凹所24を設けたものである。また外側取付部Yは、スペーサー4の下壁41に代替の係合凹所44を設けたものである。
【0041】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る引出し1は、上下寸法が違う複数種類の鏡板3を、共通の取り付け手順及び設計手法に大きく変更を施すことなく、共通の鏡裏板2に取付けることができるようにすることができる。
【0042】
そして鏡板3の取付態様の変更を有効に抑えるために本実施形態では、引出し本体10が、鏡裏板2の下端にスペーサー4を取付けることができるようにしたものであり、小さい方の鏡板3が、鏡裏板2に対応した上下寸法及び左右幅寸法を有したものであり、大きい方の鏡板3が、小さい方の鏡板3と同じ左右幅寸法を有した構成としている。
【0043】
特に、ビスや他の取り付け部材を用いずに上下寸法の異なる鏡板3の取り付けを行い得るようにするために本実施形態では、鏡裏板2が、下縁に前方に延出する下鍔部21を備えたものであり、内側取付部Xが、下鍔部21に貫通孔としての係合凹所24を設けたものであり、第一の態様Pにおいては貫通孔に小さい方の鏡板3に設けた係合要素たる係合爪34を係合させるようにし、第二の態様Qにおいては貫通孔である係合凹所24にスペーサー4に設けた係合要素46を係合させるようにした構成を適用している。
【0044】
そして、スペーサー4が、その下面に外側取付部Yを備えたものであり、外側取付部Yが、大きい方の鏡板3に設けた係合要素たる係合爪34を係合させるための代替の係合凹所44を設けたものとすることよって本実施形態では、簡素なスペーサー4の構成としながら、両鏡板3を同じ手法で取り付けることを実現している。
【0045】
大きい方の鏡板3の組付けをより確実に行うようにするために本実施形態では、スペーサー4を、その下面に大きい方の鏡板3の一部に奥端の係止面48で当接することにより大きい方の鏡板3の引出し本体10に対する後方への移動を禁止するための代替の切欠45を有したものとしている。
【0046】
そして、本実施形態では什器本体W1に、少なくとも上段の引出し1(P)と下段の引出し1(Q)とを上下方向に隣接させて収納した什器Wを、上段の引出し1(P)に第一の態様Pを適用するとともに下段の引出し1(Q)に第二の態様Qを適用しているので、複数の引出し1の組み立て態様を共通化させることによって組み立てが容易な什器Wを実現している。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態ではスチール製の鏡板のみを付け替える態様を開示したが勿論、鏡裏板に樹脂製の小さい方の鏡板を取り付けた第一の態様と、スペーサーを用いて樹脂製の大きい方の鏡板を取り付けることもできる。この場合、スペーサーがスチール及び樹脂によって異なる素材厚み寸法を解消すべく、より薄い方の鏡板を取り付けた場合に、鏡裏板の前端と鏡板との間には、素材厚み寸法の違いを解消するためのクリアランスを設けておく事が必要となる。また鏡板の具体的な形状や家具本体の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0049】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。