(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自転車室の天井付近の突出物の下端よりも上のスペースに駐輪スペースの少なくとも一部がある最上段の保管棚、及び前記突出物の下端よりも下に駐輪スペースがある最下段の保管棚を含む上下二段以上の保管棚と、
自転車を前記保管棚へ荷置きし、前記保管棚から荷取りするための移載装置が搭載される昇降体と、
前記昇降体が上下するためのガイドとなり、上端が前記突出物の下端よりも低い一定高さのマストフレームと、
前記マストフレームを支持し、前記突出物の下方を下部レールに沿って水平方向に走行する走行台車と、
前記走行台車の水平方向の位置を検出する検出装置と、
前記昇降体の上下方向の位置を検出する検出装置と、
制御装置と、を備え、
前記昇降体が前記マストフレームに沿って上下することによって、前記移載装置が前記最上段の保管棚にも前記最下段の保管棚にも自転車を荷置きし、又は荷取り可能であり、
前記走行台車は、サーボモータによって回転駆動される車輪と補助車輪を有し、
前記車輪と前記補助車輪とで前記下部レールを上下方向に挟み、
前記マストフレームの上部をガイドする上部レールが設けられておらず、
前記制御装置は、前記走行台車が前記突出物の下方を通過するときは自転車が前記突出物に干渉しないよう、目的の保管棚の位置では前記移載装置が自転車を荷置きできるよう、前記走行台車の位置に応じて前記昇降体の上昇及び下降を制御する機械式駐輪設備。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の機械式駐輪設備を詳細に説明する。ただし、本発明の機械式駐輪設備は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1は本発明の第一の実施形態の機械式駐輪設備の平面図を示す。添付の図面及び以下の明細書を通して、同一の構成には同一の符号を附す。本実施形態では、多数の自転車が収容される自転車室1と自転車の入出庫口2とが、建築物の同一のフロアに配置される。ただし、自転車室1と入出庫口2のレイアウトはこの実施形態に限られることはなく、入出庫口2を地上の1階に配置し、自転車室1を地下又は地上の2階以上に配置する等、さまざまなレイアウトを選択することができる。入出庫口2と自転車室1との階が異なる場合、これらの間には自転車を昇降させるエレベータが設けられる。
【0014】
入出庫口2は、利用者が入庫時に自転車をセットするところであり、かつ出庫時に自転車が出されるところである。入出庫口2には、利用者が自転車をセットし易いように、自転車を案内するための溝、自転車の後輪を挟んで自立させるためのローラ又は板ばねが設けられる。
【0015】
自転車室1は、例えば平面視で一方向に細長い長方形に形成される。自転車室1は、例えばコンクリート製の建築物からなり、柱・梁構造である。自転車室1には、走行台車3が走行する左右一対の下部レール4a,4bが自転車室1の長さ方向に配置される。なお、以下においては、説明の便宜上、走行台車3が走行する方向から見たときの方向、すなわち
図1ないし
図3に示す左右方向、前後方向、上下方向を用いて機械式駐輪設備の構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、下部レール4a,4bの左右には、下部レール4a,4bに沿って前後方向に多数列、上下方向に複数段の保管棚5a,5bが配列される。
図3に示すように、保管棚5a,5bは、鋼材からなる柱・梁に支持される。保管棚5a,5bは、自転車の車輪が嵌まる断面V字形の細長部材6と、保管棚5a,5bで自転車を自立させるために自転車の後輪を挟む板ばね等の後輪支持部7と、を備える。上下方向に二段の保管棚5a,5bのうち、上段の保管棚5aは、自転車室1の梁8の下端(
図3中梁8の下端を破線で示す)よりも上のスペースに少なくとも駐輪スペースの一部を持つ。ここで、駐輪スペースは、機械式駐輪設備が取り扱い対象とする自転車の最大寸法に対応するスペースである。すなわち、走行台車3の走行方向から見たとき、荷置きされた自転車の一部が梁8の下端よりも上に位置する。また、下段の保管棚5bは、梁8の下端よりも下に駐輪スペースを持つ。なお、保管棚5a,5bの段数は二段に限られることはなく、三段以上にすることもできる。三段以上であっても、最上段の保管棚が梁の下端よりも上のスペースに少なくとも駐輪スペースの一部を持ち、最下段の保管棚が梁の下端よりも下に駐輪スペースを持てばよい。
【0017】
図1に示すように、走行台車3には、入出庫口2に自転車を出し入れする移載装置9が設けられる。この移載装置9は、保管棚5a,5bにも自転車を荷置きし、かつ荷取りする。
図2に示すように、走行台車3は、下部レール4a,4b上を転がる車輪12を有する車体11と、車体11に固定されるマストフレーム13と、マストフレーム13に沿って上下する昇降体14と、昇降体14に搭載される移載装置9と、移載装置9を水平面内で旋回させる旋回装置15と、を備える。
【0018】
マストフレーム13は垂直方向に細長い。梁8との干渉を避けるために、マストフレーム13の上端は梁8の下端LLよりも低い。マストフレーム13は、昇降体14が昇降するためのガイドとなり、マストフレーム13には、リニアガイドのレールが取り付けられる。リニアガイドのブロック18は、レール17に長さ方向にスライド可能に組み付けられると共に、昇降体14に固定される。リニアガイドのレール17はマストフレーム13の左右に二つ設けられる(
図3参照)。ブロック18は各レールに上下方向に二つ設けられており、昇降体14は上下の二か所でマストフレーム13に係合する。
【0019】
図2に示すように、昇降体14は、昇降装置21によって駆動される。昇降装置21は、例えばカウンターウェイト方式のエレベータであり、滑車の一方の側にロープを介して昇降体14を吊るし、滑車の他方の側にロープを介しておもりを吊るしたものである。図示しない巻上げサーボモータでロープを巻き上げることによって、昇降体14を昇降させる。
【0020】
昇降体14は、側面視でL字形の鋼材からなり、旋回装置15が取り付けられる自転車支持部14bと、マストフレーム13に係合する案内部14aと、を備える。案内部14aは、自転車支持部14bの上側に配置される。案内部14aには、上記ブロック18が取り付けられる。
【0021】
昇降体14には、旋回装置15を介して移載装置9が搭載される。移載装置9は、自転車が載せられる断面V字形の細長部材22と、自転車の前輪を挟む一対のホルダ23と、ホルダ23を開閉するクランプ機構24と、自転車を細長部材22に沿ってスライドさせる駆動機構25と、を備える。駆動機構25は、例えば無端状のベルトを備え、サーボモータによってベルトを周回させ、ベルトに取り付けられるクランプ機構24を移動させる。
【0022】
旋回装置15は、垂直軸の回りに移載装置9を旋回させる。旋回装置15は、例えば、昇降体14に固定される垂直軸と、移載装置9を垂直軸の回りを旋回可能にする軸受と、移載装置9を垂直軸の回りを回転駆動させるサーボモータと、を備える。サーボモータの回転は、例えば歯車機構を介して移載装置9に伝達される。
【0023】
図3に示すように、走行台車3は、その四隅に下部レール4a,4b上を走行する四つの車輪12を持つ。車輪12はサーボモータによって回転駆動される。
図4の拡大図に示すように、走行台車3の車体11の少なくとも一部は、下部レール4a,4bの上端よりも下側に潜り込む。マストフレーム13の下端の位置を下げ、昇降体14が低い位置まで下降できるようにするためである。また、走行台車3には、下部レール4a,4bを上下方向に挟むように車輪12に対向する補助車輪26が設けられる。補助車輪26も走行台車3の四隅に設けられる。
【0024】
図5は、本実施形態の駐輪設備の制御系統のブロック図を示す。上記のように、昇降装置21には昇降装置21のサーボモータ31が設けられ、移載装置9には移載装置9のサーボモータ32が設けられ、走行台車3には走行台車3のサーボモータ33が設けられる。これらのサーボモータ31,32,33は、昇降装置制御装置34、移載装置制御装置35、及び走行台車制御装置36によって制御される。昇降装置制御装置34、移載装置制御装置35、及び走行台車制御装置36は、走行台車3の車体11に搭載される制御箱30(
図2参照)に配置される。
【0025】
機械式駐輪設備を制御する駐輪設備制御装置37は、昇降装置制御装置34、移載装置制御装置35、及び走行台車制御装置36に位置指令、速度指令を送る。昇降装置制御装置34、移載装置制御装置35、及び走行台車制御装置36は、サーボモータ31,32,33のエンコーダ38,39,40が検出する位置、速度が駐輪設備制御装置37の位置指令、速度指令に一致するようにサーボモータ31,32,33を制御する。なお、走行台車3の位置は、エンコーダ40及び/又は下部レール4a,4bに沿って配置されたリニアスケール41によって検出することもできる。
【0026】
機械式駐輪設備の全体の動作の概略は以下のとおりである。
図1に示すように、利用者が入出庫口2に自転車をセットし、駐輪開始のためのボタンを押すと(又はカードを挿入すると)、自転車室1の扉が開き、扉の中から移載装置9が出てきて自転車の前輪を掴み、自転車を走行台車3上に引き込む。その後、旋回装置15は自転車の向きを90度変える(
図2参照)。次に、走行台車3は、自転車を目的の保管棚5a,5bに向かって水平方向に搬送する。
【0027】
自転車室1の梁8の位置は、予め駐輪設備制御装置37に記憶されている。駐輪設備制御装置37は、走行台車3が梁8の下方を通過するとき、自転車が梁8に干渉しないように、梁8の位置で昇降体14を下降させ、その後、目的の保管棚5a,5bの位置で目的の保管棚5a,5bの高さに昇降体14を上昇させる。
【0028】
昇降体14が目的の保管棚5a,5bまで上昇したら、移載装置9が目的の保管棚5a,5bに一直線になるように旋回装置15が移載装置9を90度回転させる。そして、
図3に示すように、移載装置9が目的の保管棚5a,5bに自転車を荷置きする。以上により、自転車の入庫が終了する。自転車を出庫するときは上記と逆の動作が行われる。
【0029】
図6(a)に示す従来の機械式駐輪設備では、マストフレーム13の上部をガイドするための上部レール43が梁8下端の全長に渡り配置されており、自転車を上部レール43よりも上に上昇させることができない。このため、梁8下端よりも上に自転車を保管することができないスペースS1が生ずる。これに対し、
図6(b)に示すように、本実施形態では、マストフレーム13の上部をガイドする上部レールは設けられておらず、自転車を梁8下端よりも上のスペースまで上昇させる。このため、
図3に示すように、梁8下端より上のスペースを駐輪スペースとして有効利用し、保管台数を多くすることができる。
【0030】
本実施形態の機械式駐輪設備によれば、さらに以下の効果を奏する。駐輪設備制御装置37が、梁8の位置で自転車が梁8に干渉しないように昇降体14を下降させるので、梁8と自転車との干渉を確実に防止できる。
【0031】
下部レール4a,4bが左右一対設けられ、走行台車3が各下部レール4a,4bを上下方向に挟む車輪12及び補助車輪26を備えるので、マストフレーム13の上部をガイドする上部レールがなくてもマストフレーム13の倒れを防止できる。
【0032】
マストフレーム13を支持する走行台車3の車体11の少なくとも一部が、下部レール4a,4bの上端よりも下に潜り込むので、昇降体14をより下に下降させることができ、下段の保管棚5bにも自転車を荷置き、荷取りできる。
【0033】
昇降体14に移載装置9を水平面内で旋回させる旋回装置15を搭載するので、下部レール4a,4bの左右の保管棚5a,5bに自転車を荷置き、荷取りできる。
【0034】
図7及び
図8は、本発明の第二の実施形態の機械式駐輪設備を示す。
図7は
図2と同一方向から見た第二の実施形態の機械式駐輪設備の断面図を示し、
図8は
図3と同一方向から見た第二の実施形態の機械式駐輪設備の断面図である。
【0035】
第一の実施形態では、上下に二段の保管棚5a,5bが設けられるのに対し、第二の実施形態では、
図7に示すように、上下に四段の保管棚51a〜51dが設けられる。また、第一の実施形態では、マストフレーム13の上部をガイドする上部レールが設けられないのに対し、第二の実施形態では、この上部レールが昇降体14、移載装置及び自転車に干渉しない位置に設けられる。走行台車3、昇降体14、移載装置、下部レール4a,4bの構成は、第一の実施形態と同一なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
第二の実施形態では、四段の保管棚51a〜51dのうち、最上段の保管棚51aには、梁8の下端よりも上に駐輪スペースがあり、二段目以降の保管棚51b〜51dには、梁8の下端よりも下に駐輪スペースがある。
【0037】
保管棚51a〜51dの段数を四段にした分だけ、マストフレーム13の長さが長くなる。マストフレーム13の倒れを防止するために、上部レール52a,52bが設けられる。ただし、上記のように、上部レール52a,52bは、昇降体14、移載装置及び自転車に干渉しない位置に配置される。例えば、
図8に示すように、上部レール52a,52bは左右に二つ設けられていて、最上段の保管棚51aと二段目の保管棚51bとの間に配置される。マストフレーム13の上部から左右に腕53a,53bが張り出していて、腕53a,53bが左右の上部レール52a,52bにガイドされる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな実施形態に変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、突出物が梁の例を説明しているが、突出物は天井付近の配管でもよい。天井が高さの異なる高い天井と低い天井で構成される場合、低い天井を突出物とすることもできる。