特許第6468130号(P6468130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468130
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】回路構成体および電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20190204BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H05K7/06 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-168956(P2015-168956)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-46526(P2017-46526A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−119607(JP,A)
【文献】 特開2005−228799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続用開口部を有する回路基板と、
前記回路基板の表面側には、電子部品が実装され、裏面側には複数のバスバーが配置されるともに、前記電子部品は複数の接続端子を有し、前記複数の接続端子の少なくとも一個の接続端子が前記接続用開口部を通して前記回路基板の裏面側のバスバーに接続され、
前記複数のバスバーの、前記電子部品が接続される面とは反対の面側に、絶縁性および伝熱性を有する絶縁伝熱部材を介して設けられた放熱部材と、
前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う前記絶縁伝熱部材の移動を規制する規制部材と、
を備え
前記規制部材は、絶縁性を有するフレーム板によって構成され、
前記フレーム板は、
平面視において前記電子部品の配置位置に対応して設けられ、前記電子部品に対する前記絶縁伝熱部材を塗布するための塗布用開口部と、
前記塗布用開口部の周囲に形成され、前記放熱部材側に突出する突出部を有するフレーム部と、を含み、
前記放熱部材は、前記フレーム部の前記突出部が埋め込まれる溝を有する、回路構成体。
【請求項2】
請求項1に記載の回路構成体において、
前記規制部材は、さらに、前記複数のバスバーと前記フレーム板との間に設けられ、前記複数のバスバー間の隙間を覆う絶縁シートであって、前記電子部品の直下から前記隙間への前記絶縁伝熱部材の移動を規制する絶縁シートを含む、回路構成体。
【請求項3】
接続用開口部を有する回路基板と、
前記回路基板の表面側には、電子部品が実装され、裏面側には複数のバスバーが配置されるともに、前記電子部品は複数の接続端子を有し、前記複数の接続端子の少なくとも一個の接続端子が前記接続用開口部を通して前記回路基板の裏面側のバスバーに接続され、
前記複数のバスバーの、前記電子部品が接続される面とは反対の面側に、絶縁性および伝熱性を有する絶縁伝熱部材を介して設けられた放熱部材と、
前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う前記絶縁伝熱部材の移動を規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記複数のバスバー間の隙間を覆う絶縁シートであって、前記電子部品の直下から前記隙間への前記絶縁伝熱部材の移動を規制する絶縁シートによって構成される、回路構成体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の回路構成体において、
前記絶縁シートは、接着剤を含む、回路構成体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回路構成体において、
前記絶縁伝熱部材は、常温硬化型接着剤によって構成される、回路構成体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の回路構成体と、
前記回路構成体を収納するケースと、
を備えた、電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、回路構成体および当該回路構成体を備えた電気接続箱に関し、詳しくは、回路構成体に含まれる電子部品によって発生した熱を放熱させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載電装品等の回路構成体に含まれる電子部品による発熱を放熱させる技術として、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1には、電子部品による発熱を、バスバーおよび絶縁伝熱部材を介してヒートシンク(放熱部材)に伝え、ヒートシンクから放熱する技術が開示されている。その際、従来、絶縁伝熱部材として、加熱硬化型接着剤が使用されていた。また、加熱のための昇温や、冷却時間を含めた加熱硬化に要する工程を省くために、加熱硬化型接着剤に代えて常温硬化型接着剤が使用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−99071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁伝熱部材として常温硬化型接着剤を使用する場合、常温硬化型接着剤は、加熱硬化型接着剤と比べて一般的に硬度が低いため、バスバーと放熱部材との間に配置された常温硬化型接着剤が、冷熱サイクルに起因して、電子部品の直下からその周辺に逃げ出す虞がある。すなわち、常温硬化型接着剤の高温時に常温硬化型接着剤が軟化あるいは膨張した場合、剛性の大きいバスバーと放熱部材との間に挟まれた常温硬化型接着剤は、電子部品の直下からその周辺に押し出されることになる。この場合、常温硬化型接着剤の温度が低下した際に発熱体である電子部品の直下の常温硬化型接着剤が不足する。それによって、例えば、バスバーと放熱部材との界面が剥離する虞があった。バスバーと放熱部材との界面が剥離すると、バスバーから放熱部材への伝熱が低減され、放熱部材による放熱効果が低下することとなる。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、本明細書は、回路構成体に含まれる放熱部材による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減されることを抑制できる回路構成体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される回路構成体は、接続用開口部を有する回路基板と前記回路基板の表面側には、電子部品が実装され、裏面側には複数のバスバーが配置されるともに、前記電子部品は複数の接続端子を有し、前記複数の接続端子の少なくとも一個の接続端子が前記接続用開口部を通して前記回路基板の裏面側のバスバーに接続され、前記複数のバスバーの、前記電子部品が接続される面とは反対の面側に、絶縁性および伝熱性を有する絶縁伝熱部材を介して設けられた放熱部材と、前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う前記絶縁伝熱部材の移動を規制する規制部材と、を備え、前記規制部材は、絶縁性を有するフレーム板によって構成され、前記フレーム板は、平面視において前記電子部品の配置位置に対応して設けられ、前記電子部品に対する前記絶縁伝熱部材を塗布するための塗布用開口部と、前記塗布用開口部の周囲に形成され、前記放熱部材側に突出する突出部を有するフレーム部と、を含み、前記放熱部材は、前記フレーム部の前記突出部が埋め込まれる溝を有する
【0007】
本構成によれば、絶縁伝熱部材の温度の上昇に伴う絶縁伝熱部材の移動を規制する規制部材が、複数のバスバーと放熱部材との間に設けられている。そのため、絶縁伝熱部材の温度の上昇時に、絶縁伝熱部材として、例えば常温硬化型接着剤を使用し、常温硬化型接着剤が軟化あるいは膨張した場合であっても、規制部材によって、複数のバスバーと放熱部材との間において絶縁伝熱部材が電子部品の直下からその周辺に逃げ出すことが規制される。それによって、絶縁伝熱部材の温度が低下した際に発熱体である電子部品の直下の絶縁伝熱部材が不足することがなく、絶縁伝熱部材によるバスバーから放熱部材への伝熱は維持される。その結果、回路構成体に含まれる放熱部材による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減されることを抑制できる。
なお、ここで、「絶縁伝熱部材の移動」には、絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う絶縁伝熱部材の膨張、あるいは変位・ズレ等も含まれる。
【0008】
また、本構成によれば、規制部材が、絶縁伝熱部材を塗布するための塗布用開口部と、放熱部材側に突出する突出部を有するフレーム部とを含む、フレーム板によって構成されている。また、フレーム部の突出部は放熱部材の溝に埋め込まれる。そのため、絶縁伝熱部材の温度上昇時に、絶縁伝熱部材として、例えば常温硬化型接着剤を使用し、常温硬化型接着剤が軟化あるいは膨張した場合であっても、塗布用開口部内に塗布された常温硬化型接着剤が電子部品の直下からその周辺に逃げ出すことを抑制できる。
【0009】
その際、前記規制部材は、さらに、前記複数のバスバーと前記フレーム板との間に設けられ、前記複数のバスバー間の隙間を覆う絶縁シートであって、前記電子部品の直下から前記隙間への前記絶縁伝熱部材の移動を規制する絶縁シートを含むように構成してもよい。
この場合、絶縁シートによって、絶縁伝熱部材の温度上昇時に、さらに、絶縁伝熱部材が電子部品の直下から複数のバスバー間の隙間に移動することを規制することができる。それによって、冷熱サイクルに起因した、回路構成体に含まれる放熱部材による放熱効果の低減をさらに抑制できる。
【0010】
本明細書に開示される回路構成体は、接続用開口部を有する回路基板と、前記回路基板の表面側には、電子部品が実装され、裏面側には複数のバスバーが配置されるともに、前記電子部品は複数の接続端子を有し、前記複数の接続端子の少なくとも一個の接続端子が前記接続用開口部を通して前記回路基板の裏面側のバスバーに接続され、前記複数のバスバーの、前記電子部品が接続される面とは反対の面側に、絶縁性および伝熱性を有する絶縁伝熱部材を介して設けられた放熱部材と、前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う前記絶縁伝熱部材の移動を規制する規制部材と、を備え、前記規制部材は、前記複数のバスバーと前記放熱部材との間に設けられ、前記複数のバスバー間の隙間を覆う絶縁シートであって、前記電子部品の直下から前記隙間への前記絶縁伝熱部材の移動を規制する絶縁シートによって構成される。
本構成によれば、絶縁伝熱部材の温度上昇時に、絶縁伝熱部材が電子部品の直下から複数のバスバー間の隙間に移動することを規制することができる。それによって、放熱部材による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減することを抑制できる。

【0011】
また、上記回路構成体において、前記絶縁シートは、接着剤を含む構成としてもよい。
本構成によれば、絶縁シートを複数のバスバーに固着することができる。それによって、絶縁シートのズレ等を防止して、絶縁シートを複数のバスバーと放熱部材との間に安定して保持できる。
【0012】
また、上記回路構成体において、前記絶縁伝熱部材を常温硬化型接着剤によって構成することが好ましい。
本構成によれば、絶縁伝熱部材を常温硬化型接着剤によって構成することによって、加熱のための昇温や、冷却時間を含めた加熱硬化に要する工程を省くことができるとともに、絶縁伝熱部材の温度上昇時における、規制部材による絶縁伝熱部材の移動規制効果を、より大きく利用できる。
【0013】
また、本明細書に開示される電気接続箱は、上記のいずれかに記載の回路構成体と、前記回路構成体を収納するケースとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示された技術によれば、回路構成体に含まれる放熱部材による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の電気接続箱の中の概略的な平面図
図2図1のA−A線における断面図
図3図2の一部拡大断面図
図4】回路構成体の裏面からの、放熱板、絶縁シート、および接着シートを除いた平面図
図5】回路構成体の裏面からの、放熱板を除いた平面図
図6】回路構成体の裏面からの平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態を図1から図6を参照して説明する。
【0017】
1.電気接続箱の構成
本実施形態の電気接続箱1は、図1に示すように、回路構成体10と、回路構成体10を収容する合成樹脂製のケース2とを備える。電気接続箱1は、さらに、回路構成体10を覆う金属製のカバー(図示せず)を備える。
【0018】
2.回路構成体の構成
回路構成体10は、回路基板20、NチャネルMOSFET(以下、単に「MOSFET」と記す)30、接着シート40、複数のバスバー50、絶縁シート60、フレーム板70、および放熱板90等を備える。回路構成体10は、本実施形態では、車両に搭載されるDC−DCコンバータである。なお、回路構成体10は、これに限られない。MOSFET30は、電子部品の一例である。
【0019】
回路基板20は、MOSFET30等の電子部品を所定のバスバー50に接続するための複数の接続用開口部21を有する。図1に示されるように、MOSFET30、コイル35、コンデンサ36、抵抗37等の発熱する電子部品の、複数の接続端子の少なくとも1個の接続端子が、対応する接続用開口部21を介して、例えば半田によって対応するバスバー50に接続されている。
【0020】
例えば、MOSFET30は、半導体で構成され合成樹脂によってモールドされた本体部31と、複数の接続端子としてのゲート端子32、ドレイン端子33、およびソース端子34とを有する。そのドレイン端子33とソース端子34が、それぞれ、対応するバスバー50に接続されている。なお、ゲート端子32は、回路基板20の表面20Aに形成された配線(図示せず)に接続されている。すなわち、MOSFET30は、回路基板20の表面側に実装されている。ここで、回路基板20の表面20Aとは、図2の矢印「上」で示される側の面である。
【0021】
また、コイル35、コンデンサ36、抵抗37は、それぞれ2個の接続端子が、対応する接続用開口部21を介して、対応するバスバー50に接続されている。
【0022】
複数のバスバー50は、回路基板20の裏面20B側に設けられている。ここで、回路基板20の裏面20Bとは、図2の矢印「下」で示される側の面である。複数のバスバー50は、グランド電位とされるグランドバスバー、電源電位とされる電源バスバー等を含む。複数のバスバー50は、例えば、金属板材を所定形状にプレス加工してなる。バスバー50は概ね矩形状をなしており、隣り合うバスバー50との間に隙間Sを介して所定のパターンで配置されている。
【0023】
詳しくは、図3に示されるように、回路基板20と複数のバスバー50との間には、回路基板20と複数のバスバー50とを接着する接着シート40が設けられている。すなわち、各バスバー50は、接着シート40を介して回路基板20の裏面20Bに接着されている。
【0024】
なお、接着シート40は、図1および図3に示されるように、各電子部品の接続端子を所定のバスバー50に接続させるためのシート開口部41を有する。接着シート40の平面形状は、回路基板20の平面形状とほぼ等しい。また、シート開口部41の大きさは、回路基板20の接続用開口部21より大きい(図1および図3参照)。
【0025】
絶縁シート60は、図3に示されるように、複数のバスバー50とフレーム板70との間に設けられる。絶縁シート60の平面形状は、回路基板20の平面形状とほぼ等しく、絶縁シート60は、複数のバスバー50間の隙間Sを覆う(図4および図5参照)。絶縁シート60は、複数のバスバー50間の隙間Sを覆うことによって、絶縁伝熱部材80の温度上昇に伴って絶縁伝熱部材80がMOSFET30の直下から隙間Sへ移動することを規制する。絶縁シート60は、「規制部材」の一例である。
【0026】
フレーム板70は、図2および図3に示されるように、複数のバスバー50と放熱板90との間に設けられている。詳しくは、フレーム板70は、絶縁シート60と放熱板90との間に設けられ、放熱板90に設けられた溝91に嵌め込まれている。
【0027】
フレーム板70は、図4等に示されるように、塗布用開口部71とフレーム部72とを含む。塗布用開口部71は、平面視においてMOSFET30等の放熱が必要な電子部品の配置位置に対応して設けられている。フレーム部72は、塗布用開口部71の周囲に形成され、放熱板90側に突出する突出部72Aを有する。突出部72Aは、図3に示されるように、フレーム板70が放熱板90の溝91に嵌め込まれた際、溝91の底に当接し、溝91を閉鎖する。それによって、突出部72Aは、絶縁伝熱部材80の温度上昇に伴って絶縁伝熱部材80が他の塗布用開口部71へ移動することを規制する。フレーム板70は、「規制部材」の一例である。
【0028】
また、フレーム板70が放熱板90の溝91に嵌め込まれた際、図3に示されるように、フレーム板70の突出部72Aは、放熱板90の上面90Aから絶縁伝熱部材80の厚みTHだけ飛出す飛出部72Bを有するように形成されている。この飛出部72Bは、放熱板90の上面90Aにおいてフレーム板70の塗布用開口部71内に絶縁伝熱部材80を塗布する際に、絶縁伝熱部材80の仕切りとなる。
【0029】
なお、本実施形態では、絶縁伝熱部材80は、常温硬化型接着剤によって構成されている。常温硬化型接着剤80は、絶縁性かつ熱伝導性を有する接着剤であり、常温で硬化する。これに限られず、絶縁伝熱部材は、例えば、高温硬化接着剤によって構成されてもよいし、あるいは接着性を有さない放熱グリースによって構成されてもよい。
【0030】
放熱板90は、複数のバスバー50の、回路基板20に対向する面50Aと反対の面50B側に、常温硬化型接着剤80を介して設けられている。詳細には、放熱板90は、常温硬化型接着剤80および絶縁シート60を介して複数のバスバー50の下面50Bに取付けられている(図3参照)。
【0031】
放熱板90は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなる板状部材であり、MOSFET30等の発熱する電子部品において発生した熱を放熱する機能を有する。放熱板90は、ここでは常温硬化型接着剤80によってバスバー50の裏面側に接着されている。
【0032】
また、図6に示されるように、放熱板90には複数の取付けねじ穴90Hが形成されており、また、回路基板20には、複数の取付けねじ穴90Hに対応した位置に複数の取付け穴20Hが形成されている(図1参照)。また、複数の取付け穴20Hに対応した位置において、接着シート40には貫通孔40H、所定のバスバー50には貫通孔50H(図4参照)、絶縁シート60(図5参照)には貫通孔60H、およびフレーム板70には貫通孔70H(図4,5参照)が、それぞれ複数形成されている。そして、回路基板20の複数の取付け穴20Hから、各貫通孔を介して、放熱板90の複数の取付けねじ穴90Hに対して、ネジ(図示せず)止めすることによって、回路基板20から放熱板90までが一体化して固定される。
【0033】
また、回路基板20の上部に金属製のカバー(図示せず)を取り付けることによって、回路基板20が遮蔽されている。具体的には、金属製のカバーを複数のバスバー50に含まれるグランドバスバーに固定することによって、回路基板20上のMOSFET30等の電子部品が静電遮蔽されている。
【0034】
3.電気接続箱の概略的な製造工程
続いて、本実施形態に係る電気接続箱1の製造工程の一例を説明する。まず、表面にプリント配線技術により導電路が形成された回路基板20の下面20Bに、所定の形状に切断された接着シート40を重ね合わせるとともに、複数のバスバー50を所定のパターンで並べた状態で加圧する。これにより、回路基板20および複数のバスバー50は接着シート40を介して互いに接着・固定される。この状態において、複数のバスバー50の上面の一部(MOSFET30の接続端子33,34が接続される領域等)は、回路基板20の接続用開口部21および接着シート40のシート開口部41を通して露出された状態とされている。
【0035】
続いて、スクリーン印刷により回路基板20の所定の位置にはんだを塗布する。その後、所定の位置にMOSFET30等の電子部品を載置し、リフローはんだ付けを実行する。
【0036】
次に、放熱板90の上面90Aの溝91にフレーム板70を嵌め込む。そして、フレーム板70の塗布用開口部71を介して放熱板90の上面90Aに常温硬化型接着剤80を塗布する。次いで、電子部品および複数のバスバー50を配した回路基板20を、絶縁シート60を介して上方から重ね合わせ、回路基板20から放熱板90までを一体化して、例えば、ネジによってネジ止めする。この時、バスバー50の間の隙間Sは、絶縁シート60により覆われているから、常温硬化型接着剤80が隙間Sに進入することはない(図3参照)。また、常温硬化型接着剤80は、フレーム板70の各塗布用開口部71の領域内に収まる。最後に、放熱板90が重ねられた回路基板20(回路構成体10)をケース2内に収容し、電気接続箱1とする。
【0037】
4.本実施形態による効果
本実施形態では、上記したように、常温硬化型接着剤80の温度上昇に伴う常温硬化型接着剤80の移動を規制する絶縁シート60およびフレーム板70が、複数のバスバー50と放熱板90との間に設けられている。そのため、回路構成体10が設置された場所の温度上昇に伴う常温硬化型接着剤80の温度上昇時に、常温硬化型接着剤80が軟化あるいは膨張した場合であっても、絶縁シート60およびフレーム板70によって、複数のバスバー50と放熱板90との間において常温硬化型接着剤80がMOSFET(電子部品)30の直下からその周辺に逃げ出すことが規制される。それによって、常温硬化型接着剤80の温度が低下した際に発熱体である電子部品、例えば、MOSFET30の直下の常温硬化型接着剤80が不足することがなく、常温硬化型接着剤80による複数のバスバー50から放熱板90への熱の伝達(伝熱)は維持される。その結果、回路構成体10に含まれる放熱板90による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減されることを抑制できる。
【0038】
また、フレーム板70は、常温硬化型接着剤80を塗布するための塗布用開口部71と、放熱板側に突出する突出部72Aを有するフレーム部72とを含む。また、フレーム部72の突出部72Aは、放熱板90の溝91に埋め込まれる。そのため、常温硬化型接着剤80の温度上昇時に、常温硬化型接着剤80が軟化あるいは膨張した場合であっても、所定の塗布用開口部71内に塗布された常温硬化型接着剤80がMOSFET30の直下からその周辺に、例えば、他の塗布用開口部71に逃げ出すことは、突出部72Aによって防止される。
【0039】
また、規制部材として、さらに、複数のバスバー50とフレーム板70との間に、複数のバスバー50間の隙間Sを覆う絶縁シート60が設けられている。そのため、絶縁シート60によって、常温硬化型接着剤80の温度上昇時に、さらに、常温硬化型接着剤80がMOSFET30の直下から複数のバスバー50間の隙間Sに移動することを規制することができる。それによって、冷熱サイクルに起因した、放熱板90による放熱効果の低減をさらに抑制できる。
【0040】
また、絶縁伝熱部材が常温硬化型接着剤80によって構成されているため、加熱のための昇温や、冷却時間を含めた加熱硬化に要する工程を省くことができるとともに、常温硬化型接着剤80の温度上昇時における、規制部材であるに絶縁シート60およびフレーム板70による絶縁伝熱部材の移動規制効果を、より大きく利用できる。
【0041】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0042】
(1)上記実施形態では、規制部材として絶縁シート60およびフレーム板70を備える構成を示したが、これに限られない。例えば、絶縁シート60が省略される構成としてもよい。
あるいはフレーム板70が省略される構成としてもよい。すなわち、規制部材を、単に、複数のバスバー50と放熱部材90との間に設けられ、複数のバスバー50間の隙間Sを覆う絶縁シート60によって構成するようにしてもよい。この場合、放熱板90の溝91も省略される。
【0043】
(2)上記実施形態では、絶縁伝熱部材として常温硬化型接着剤80を使用する例を示したが、これに限られない。例えば、絶縁伝熱部材として、高温硬化型接着剤、あるいは伝熱用グリースが使用されてもよい。このような絶縁伝熱部材を使用する場合であっても、規制部材によって絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う絶縁伝熱部材の移動を規制することができ、それによって、放熱板90による放熱効果が、冷熱サイクルに起因して低減されることを抑制できる。なお、ここで、「絶縁伝熱部材の移動」には、絶縁伝熱部材の温度上昇に伴う絶縁伝熱部材の膨張、あるいは変位・ズレ等も含まれる。
【0044】
(3)上記実施形態において、絶縁シート60は、接着剤を含む構成としてもよい。この場合、絶縁シート60を複数のバスバー50に固着することができる。それによって、絶縁シート60のズレ等を防止して、絶縁シート60を複数のバスバー50と放熱板90との間に安定して保持できる。
【0045】
(4)上記実施形態においては、バスバー50に接続され放熱が必要な電子部品(MOSFET)30の実装形態として、電子部品30の一部の接続端子が回路基板20に接続され、電子部品30が回路基板20の表面側に実装される例を示したが、これに限られない。例えば、電子部品のすべての接続端子が回路基板20の接続用開口部21を介してバスバーに接続され、電子部品が接続用開口部21を介してバスバーに実装される形態であってもよい。そのような電子部品の実装形態に対しても、本明細書に開示される規制部材に係る技術を適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1…電気接続箱
2…ケース
20…回路基板
21…接続用開口部
30…NチャネルMOSFET(電子部品)
32、33,34…接続端子
40…接着シート
50…バスバー
60…絶縁シート(規制部材)
70…フレーム板(規制部材)
71…塗布用開口部
72…フレーム部
72A…突出部
80…常温硬化型接着剤(絶縁伝熱部材)
90…放熱板(放熱部材)
91…溝
S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6