特許第6468145号(P6468145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468145
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】携帯情報端末および情報読取システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20190204BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G06K7/10 184
   G06K7/10 100
   G06K7/10 260
   H04B5/02
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-184919(P2015-184919)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-59106(P2017-59106A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】浅原 英行
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−161483(JP,A)
【文献】 特開2014−232395(JP,A)
【文献】 特開2010−247906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグと無線通信することで前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る携帯情報端末であって、
前記RFIDタグに対して電磁波を送信する電磁波送信手段と、
前記電磁波送信手段による電磁波の送信に応じて前記RFIDタグから送信される電磁波を受信する電磁波受信手段と、
前記電磁波受信手段により受信した電磁波に応じて前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る処理を行う情報処理手段と、
読取範囲の境界に位置していることを示す所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られているか否かについて判定する判定手段と、
前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を調整する電波強度調整手段と、
次の前記RFIDタグを読み取るための当該携帯情報端末の移動を検知する移動検知手段と、
を備え、
前記電波強度調整手段は、
前記情報処理手段による処理が開始されると前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を所定の値に調整し、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されるまで、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値から徐々に大きくするように調整し、
前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値から徐々に大きくするように調整している状態で、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されると、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値に向けて小さくするように調整し、
前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値に向けて小さくするように調整した状態で、前記移動検知手段により次の前記RFIDタグを読み取るための当該携帯情報端末の移動が検知されると、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されるまで、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を徐々に大きくするように調整することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯情報端末と、
前記所定の情報が記憶されたRFIDタグとして機能する電波強度調整用タグと、を備え、
前記電波強度調整用タグは、所定の読取位置から前記携帯情報端末を用いて読取対象となる複数のRFIDタグを読み取るとき、当該複数のRFIDタグが配される読取範囲のうち前記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように配置されることを特徴とする情報読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグと無線通信することでRFIDタグに記憶されている情報を読み取る携帯情報端末および情報読取システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDリーダ等の携帯情報端末を用いて商品等の複数の管理対象にそれぞれ付されたRFIDタグを読み取る棚卸し作業を行うことで、効率的に商品等の管理を行っている。ところで、例えば、上記携帯情報端末を用いて各RFIDタグを読み取るシステムを複数店舗が隣接するショッピングモール等の店舗に導入する場合、携帯情報端末から出力される電磁波の電波強度によっては管理対象外である隣の店舗のRFIDタグを誤って読み取ってしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解決する技術として、例えば、下記特許文献1に開示されるRFIDリーダが知られている。このRFIDリーダでは、まず、読み取りたいRFIDタグを読み取り可能なエリア内の位置に配置し、読み取りたくないRFIDタグをエリア外の位置に配置する。そして、電波出力(電磁波の電波強度)を段階的に下げることで、読み取りたくないRFIDタグの情報が読み取れなくなる電波出力と、読み取りたいRFIDタグの情報が読み取れなくなる電波出力とを、上限値と下限値として求め、その上限値と下限値の中間値に電波出力を設定する。これにより、読み取る必要のないRFIDタグの読み取りを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−060042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような構成では、以下のような問題がある。読取作業者が別のRFIDタグを読み取ろうと移動する場合、移動前に電磁波の電波強度を調整した際の携帯情報端末とRFIDタグとの距離関係をその別のRFIDタグとの間で保つ必要がある。このため、読取作業者が上記別のRFIDタグに近づき過ぎた場合、読取範囲外のRFIDタグまで誤って読み取ってしまう可能性がある。この場合には、読取作業者は、読取範囲外のRFIDタグから離れるか、携帯情報端末における電磁波の電波強度を調整するための作業を再度行う必要がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、読取範囲内のRFIDタグを適切に読み取りつつ読取範囲外のRFIDタグの読み取りを防止し得る携帯情報端末および情報読取システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、RFIDタグ(60)と無線通信することで前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る携帯情報端末(10)であって、前記RFIDタグに対して電磁波を送信する電磁波送信手段(30)と、前記電磁波送信手段による電磁波の送信に応じて前記RFIDタグから送信される電磁波を受信する電磁波受信手段(30)と、前記電磁波受信手段により受信した電磁波に応じて前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る処理を行う情報処理手段(21)と、読取範囲の境界に位置していることを示す所定の情報が記憶されたRFIDタグ(72,72a,72b)が前記情報処理手段により読み取られているか否かについて判定する判定手段(21)と、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を調整する電波強度調整手段(21)と、次の前記RFIDタグを読み取るための当該携帯情報端末の移動を検知する移動検知手段と、を備え、前記電波強度調整手段は、前記情報処理手段による処理が開始されると前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を所定の値(D0)に調整し、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されるまで、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値から徐々に大きくするように調整し、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値から徐々に大きくするように調整している状態で、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されると、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値に向けて小さくするように調整し、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を前記所定の値に向けて小さくするように調整した状態で、前記移動検知手段により次の前記RFIDタグを読み取るための当該携帯情報端末の移動が検知されると、前記判定手段により前記所定の情報が記憶されたRFIDタグが前記情報処理手段により読み取られていると判定されるまで、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を徐々に大きくするように調整することを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の情報読取システム(1)は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯情報端末(10)と、前記所定の情報が記憶されたRFIDタグとして機能する電波強度調整用タグ(72,72a,72b)と、を備え、前記電波強度調整用タグは、所定の読取位置から前記携帯情報端末を用いて読取対象となる複数のRFIDタグを読み取るとき、当該複数のRFIDタグが配される読取範囲のうち前記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように配置されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、情報処理手段による処理が開始されると、電波強度調整手段にて電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が所定の値に調整され、判定手段により読取範囲の境界に位置していることを示す所定の情報が記憶されたRFIDタグ(以下、電波強度調整用タグともいう)が情報処理手段により読み取られていると判定されるまで、電波強度調整手段にて電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が上記所定の値から徐々に大きく調整される。
【0010】
これにより、電波強度調整用タグを、読取対象となる複数のRFIDタグが配される読取範囲のうち携帯情報端末から最も遠くなる位置に配置していると、情報処理手段による処理開始時に所定の値に調整された電磁波の電波強度を徐々に大きく調整することで電波強度調整用タグを読み取ったタイミングでは、上記読取範囲を読み取るために適した電磁波の電波強度となっている。したがって、電波強度調整用タグを読み取った際の電磁波の電波強度をそれ以上大きくしないことで、読取範囲内のRFIDタグを適切に読み取りつつ読取範囲外のRFIDタグの読み取りを防止することができる。
【0011】
特に、電波強度調整手段にて、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が上記所定の値から徐々に大きくなるように調整されている状態で、判定手段により所定の情報が記憶されたRFIDタグが情報処理手段により読み取られていると判定されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が上記所定の値に向けて小さくなるように調整される。
【0012】
これにより、電波強度調整用タグを読み取ったタイミングでは、上記読取範囲を読み取るために適した電磁波の電波強度となっているため、電磁波の電波強度を上記所定の値に向けて小さくすることで、確実に読取範囲外のRFIDタグの読み取りを防止することができる。特に、電波強度調整用タグを読み取ったタイミングでは、上記読取範囲のRFIDタグも読み取られているので、不要に大きな電波強度の電磁波の送信を抑制でき、無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0013】
さらに、電波強度調整手段にて、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が上記所定の値に向けて小さくなるように調整された状態で、移動検知手段により次のRFIDタグを読み取るための当該携帯情報端末の移動が検知されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなるように調整される。
【0014】
次のRFIDタグを読み取るための携帯情報端末の移動が検知されると、他の読取範囲のRFIDタグを読取対象としていることが推定されるので、上記所定の値に向けて小さくなるように調整されていた電磁波の電波強度を徐々に大きくすることで、他の読取範囲のRFIDタグを読み取りやすい状態に迅速に移行することができる。特に、電磁波の電波強度は、上記所定の値に向けて小さくなるように調整されていた状態から徐々に大きく調整されるので、急に大きく調整されたために読取範囲外のRFIDタグや1度読み取った電波強度調整用タグを誤って読み取ることを防止することができる。
【0015】
請求項の発明では、請求項に記載の携帯情報端末と、上記所定の情報が記憶されたRFIDタグとして機能する電波強度調整用タグと、を備えている。そして、電波強度調整用タグは、所定の読取位置から携帯情報端末を用いて読取対象となる複数のRFIDタグを読み取るとき、当該複数のRFIDタグが配される読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように配置される。
【0016】
これにより、携帯情報端末を用いて読取範囲内のRFIDタグを適切に読み取りつつ読取範囲外のRFIDタグの読み取りを防止することができる等の作用効果を奏する情報読取システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る情報読取システムの構成概要を示す説明図である。
図2】単位読取範囲ごとに配置される物品等と電波強度調整用タグとの配置関係を例示する説明図である。
図3】2つの単位読取範囲での物品等と電波強度調整用タグとの配置関係を例示する説明図である。
図4図1の携帯情報端末の構成概要を示す説明図であり、図4(A)は平面図を示し、図4(B)は側面図を示す。
図5図5(A)は、図1の携帯情報端末の電気的構成を例示するブロック図であり、図5(B)は、図5(A)の無線タグ処理部を概略的に例示するブロック図であり、図5(C)は、図5(A)の情報コード読取部を概略的に例示するブロック図である。
図6図1の無線タグの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
図7図1のサーバの電気的構成を例示するブロック図である。
図8】第1実施形態に係る携帯情報端末の制御部による棚卸処理の流れを例示するフローチャートである。
図9】第2実施形態において各単位読取範囲を読み取る位置に携帯情報端末を移動させる過程を説明する説明図である。
図10】第2実施形態において上側の単位読取範囲を読み取る位置から下側の単位読取範囲を読み取る位置に携帯情報端末を移動させる状態を説明する説明図である。
図11】第2実施形態に係る携帯情報端末の制御部による棚卸処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る携帯情報端末および情報読取システムについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る情報読取システム1は、図1に示すように、複数のRFIDタグ(無線タグ)60と、これら各RFIDタグ60と通信可能な携帯情報端末10と、携帯情報端末10と通信可能な管理サーバ2とを備えている。この情報読取システム1は、携帯情報端末10を用いて管理対象となる各物品のそれぞれに付されるRFIDタグ60に記録される情報を読み取って所定のネットワークNを介して管理サーバ2に送信することで、各物品の配置状況等を管理サーバ2にて管理するためのシステムである。なお、図1では、便宜上、複数のRFIDタグ60のうち2つのみ図示している。
【0019】
特に、情報読取システム1は、複数箇所の棚等にそれぞれ配置された複数の物品(資産)について棚卸作業等の際に各物品の配置状況を管理するためのシステムとして構成されている。本実施形態では、図2に例示するように、各物品を販売する店舗において、それぞれの棚等に配置されている物品に付されたRFIDタグ60を棚等の単位読取範囲ごとに携帯情報端末10を利用して読み取ることで、棚卸作業を行っている。例えば、図3では、上側の棚と下側の棚とにより上側の単位読取範囲と下側の単位読取範囲との2つを示しており、それぞれの単位読取範囲にて携帯情報端末10を利用した読み取りがなされる。なお、図2では、便宜上、1つの単位読取範囲に配置されてそれぞれRFIDタグ60が付された物品等をまとめて符号50としてそれぞれ図示している。
【0020】
本実施形態では、複数のRFIDタグ60は、図3に示すように、上述のように物品に付される物品特定用タグ71と、棚等の単位読取範囲ごとに物品等50の奥側に配置される電波強度調整用タグ72とにより構成される。物品特定用タグ71には、付されている物品を特定するための物品特定情報が記憶されている。
【0021】
電波強度調整用タグ72は、単位読取範囲の境界に位置していることを示す所定の情報(以下、単位境界情報ともいう)が記憶されている。この電波強度調整用タグ72は、図3からわかるように、対応する単位読取範囲において、所定の読取位置から携帯情報端末10を用いて物品等50の全ての物品特定用タグ71を読み取るとき、当該単位読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように配置されている。すなわち、その単位読取範囲において上記所定の読取位置から携帯情報端末10を用いて電波強度調整用タグ72が読み取られる程度の電波強度にて電磁波が送信されていると、物品等50の全ての物品特定用タグ71を読み取ることができる。このため、電波強度調整用タグ72は、携帯情報端末10による読取範囲を所望の範囲に限定するためのRFIDタグ60として機能する。なお、電波強度調整用タグ72は、対応する単位読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように、商品棚や床、壁面等に設置することができる。
【0022】
なお、上記所定の読取位置は、対応する単位読取範囲に配置される各物品特定用タグ71を読み取る際に、読取作業者が後述する読取キーを押圧操作するときの携帯情報端末10の位置を想定して設定される。また、電波強度調整用タグ72には、単位境界情報として同一の情報が記憶されてもよいし、その単位読取範囲を他の単位読取範囲と区別可能な固有の情報が単位境界情報として記憶されてもよい。
【0023】
また、電波強度調整用タグ72は、単位読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように1つ配置されることに限らず、図2の符号72aにて例示するように、単位読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように複数配置されてもよい。また、電波強度調整用タグ72は、図2の符号72bにて例示するように、隣の店舗側の壁面等、電磁波の送信を抑制したい方向に配置されてもよい。
【0024】
次に、携帯情報端末10の構成について、図面を参照して説明する。
図4(A),(B)に示す携帯情報端末10は、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯型の情報端末として構成されており、アンテナを介して送受信される電磁波を媒介としてRFIDタグ60に記憶されている情報を読み書きするRFIDタグリーダライタとしての無線通信機能に加えて、バーコードや二次元コードなどの情報コードを読み取る情報コードリーダとしての機能を兼ね備え、読み取りを二方式で行いうる構成となっている。
【0025】
図4(A),(B)に示すように、携帯情報端末10は、ABS樹脂等の合成樹脂材料により形成される上側ケース11aおよび下側ケース11bが組み付けられて構成される長手状の筐体11によって外郭が形成されている。また、上側ケース11aには、所定の入力情報等を入力する際に操作されるファンクションキーおよびテンキー等のキー操作部25や、所定の表示情報等を表示するための表示部24等が配置されている。また、下側ケース11bには、下方に向けて開口する読取口12が形成されている。
【0026】
図5(A)に示すように、携帯情報端末10の筐体11内には、携帯情報端末10全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ22とともに情報処理装置を構成している。メモリ22には、後述する棚卸処理を実行するための所定のプログラム等が制御部21により実行可能に予め格納されている。また、制御部21には、LED23、表示部24、キー操作部25、バイブレータ26、ブザー27、加速度センサ28、外部インタフェース29などが接続されている。
【0027】
キー操作部25は、制御部21に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。また、LED23、表示部24、バイブレータ26およびブザー27は、制御部21によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部21からの指令を受けて動作する。
【0028】
加速度センサ28は、3軸方向の加速度を検出可能な公知の3軸加速度センサ(3軸モーションセンサ)であって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの方向の加速度を検出し、この検出結果に応じた加速度信号を制御部21に出力するように構成されている。この加速度センサ28により、3軸方向(X軸方向、Y軸方向,Z軸方向)の加速度が検出されることで、当該携帯情報端末10の3軸方向に関する位置や移動状態をそれぞれ検出(算出)することができる。
【0029】
外部インタフェース29は、管理サーバ2等の外部機器との間で上記ネットワークN等を介してデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体11内には、図略の電源部が設けられており、この電源部やバッテリ等によって制御部21や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0030】
また、制御部21には、無線タグ処理部30および情報コード読取部40が接続されている。
まず、無線タグ処理部30について、図5(B)を用いて説明する。
無線タグ処理部30は、アンテナ34および制御部21と協働してRFIDタグ60との間で電磁波による通信を行ない、RFIDタグ60に記憶されるデータの読取り、或いはRFIDタグ60に対するデータの書込みを行なうように機能するものである。この無線タグ処理部30は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図5(B)にて概略的に示すように、送信回路31、受信回路32、整合回路33などを有している。
【0031】
送信回路31は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定の周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御部21に接続されており、当該制御部21より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を、整合回路33を介してアンテナ34に出力している。このようにしてアンテナ34に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ34より外部に放射される。なお、無線タグ処理部30は、「電磁波送信手段」の一例に相当し得る。
【0032】
一方、アンテナ34によって受信された応答信号は、整合回路33を介して受信回路32に入力される。この受信回路32は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ34を介して受信された応答信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御部21に出力している。なお、無線タグ処理部30は、「電磁波受信手段」の一例に相当し得る。また、無線タグ処理部30により受信した電磁波に応じてRFIDタグ60に記憶されている情報を読み取る処理を行う制御部21は、「情報処理手段」の一例に相当し得る。
【0033】
ここで、携帯情報端末10の読取対象となるRFIDタグ60の電気的構成について、図6を参照して説明する。
図6に示すように、RFIDタグ60は、アンテナ61,電源回路62,復調回路63,制御回路64,メモリ65,変調回路66などによって構成されている。電源回路62は、アンテナ61を介して受信した携帯情報端末10からの送信信号(キャリア信号)を整流、平滑して動作用電源を生成するものであり、その動作用電源を、制御回路64をはじめとする各構成要素に供給している。
【0034】
また、復調回路63は、送信信号(キャリア信号)に重畳されているデータを復調して制御回路64に出力している。メモリ65は、ROM,EEPROM等の各種半導体メモリによって構成されており、制御プログラムやRFIDタグ60を識別するための識別情報(タグID)、或いはRFIDタグ60の用途に応じたデータなどが記憶されている。制御回路64は、メモリ65から上記情報やデータを読み出し、それを送信データとして変調回路66に出力する構成をなしており、変調回路66は、応答信号(キャリア信号)を当該送信データで負荷変調してアンテナ61から反射波として送信するように構成されている。
【0035】
次に、情報コード読取部40について、図5(C)を用いて説明する。
情報コード読取部40は、情報コードを光学的に読み取るように機能するもので、図5(C)に示すように、CCDエリアセンサからなる受光センサ43、結像レンズ42、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部41などを備えた構成をなしており、制御部21と協働して読取対象Rに付された情報コードC(バーコードや二次元コード)を読み取るように機能する。
【0036】
この情報コード読取部40によって読み取りを行う場合、まず、制御部21によって指令を受けた照明部41から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口12を通って読取対象Rに照射される。そして、照明光Lfが情報コードCにて反射した反射光Lrは読取口12を通って装置内に取り込まれ、結像レンズ42を通って受光センサ43に受光される。読取口12と受光センサ43との間に配される結像レンズ42は、情報コードCの像を受光センサ43上に結像させる構成をなしており、受光センサ43はこの情報コードCの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ43から出力された受光信号は、画像データとしてメモリ22(図5(A))に記憶され、情報コードCに含まれる情報を取得するためのデコード処理に用いられるようになっている。なお、情報コード読取部40には、受光センサ43からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。
【0037】
次に、管理サーバ2の構成について、図7を参照して説明する。
管理サーバ2は、例えばコンピュータとして構成され、図7に示すように、CPU等からなる制御部3、液晶モニタ等として構成される表示部4、ROM、RAM、HDD等からなる記憶部5、マウスやキーボード等として構成される操作部6、通信インタフェースとして構成される通信部7などを備えている。記憶部5には、管理対象の物品に関する情報やその物品に付された物品特定用タグ71の物品特定情報等が関連付けられて更新可能に記憶されるデータベースが構築されており、制御部3は、通信部7を介して携帯情報端末10から受信した情報を上記データベースに記憶するように機能する。
【0038】
次に、携帯情報端末10を利用して各単位読取範囲に配置される各物品の配置状況を確認する作業(棚卸作業)の際に当該携帯情報端末10にて実施される棚卸処理について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
携帯情報端末10を携帯する読取作業者によりキー操作部25に対して所定の操作を行うことで、制御部21により棚卸処理が開始されると、図8のステップS101に示す判定処理にて、キー操作部25の読取キーが押圧操作されているか否かについて判定され、読取キーが押圧操作されるまでNoとの判定が繰り返される。なお、読取キーは、RFIDタグ60を読み取るために所定の電波強度の電磁波を送信する際に押圧操作されるトリガスイッチとして構成されるものである。
【0039】
そして、いずれかの単位読取範囲近傍まで移動した読取作業者によりその単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るために読取キーが押圧操作されると、ステップS101にてYesと判定される。なお、上述のように読取キーが押圧操作された携帯情報端末10は、その単位読取範囲に対して上記所定の読取位置に位置しているものとする。
【0040】
この場合には、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度に関する出力調整フラグFが、その電波強度を徐々に大きく調整することを示す「TRUE」に設定される(S103)。そして、ステップS105に示す初期設定処理がなされ、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度について下限値D0と上限値D1とが予め決められた値に設定される。また、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整される。そして、このように下限値D0に調整された電波強度にて無線タグ処理部30からの電磁波の送信が開始される(S107)。
【0041】
続いて、ステップS109に示す判定処理にて、物品特定用タグ71や電波強度調整用タグ72を含めたRFIDタグ60を読み取っているか否かについて判定される。ここで、上述のように電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整されていることから、1つもRFIDタグ60を読み取れていない場合には、ステップS109にてNoと判定される。
【0042】
そして、ステップS119に示す判定処理にて、出力調整フラグFが「TRUE」に設定されていることからYesと判定されると、ステップS121に示す判定処理にて、出力調整値Dが上限値D1未満であるか否かについて判定される。ここで、上述のように電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整されていることからステップS121にてYesと判定されると、出力調整値Dが所定の変化量ΔDだけ大きくなるように調整される(S123)。なお、ステップS123の処理を行う制御部21は、「電波強度調整手段」の一例に相当し得る。
【0043】
そして、読取キーの押圧操作が維持されていることからステップS125にてYesと判定されると、上記ステップS109からの処理がなされる。そして、RFIDタグ60を読み取るまで、ステップS109でNo、ステップS119でYes、ステップS121でYesとの判定がなされるため、出力調整値Dが所定の変化量ΔDに応じて徐々に大きくなるように調整される。すなわち、RFIDタグ60を読み取るまで、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなるように調整される。
【0044】
そして、上述のように無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度が徐々に大きく調整されることで、RFIDタグ60が読み取られると、ステップS109にてYesと判定される。続いて、ステップS111に示す判定処理にて、読み取られたRFIDタグ60が電波強度調整用タグ72であるか否かについて判定される。なお、ステップS111の判定処理を行う制御部21は、「判定手段」の一例に相当し得る。
【0045】
この場合、上記所定の読取位置に対して各物品特定用タグ71は電波強度調整用タグ72よりも近くに配置されているため、最初に読み取られるRFIDタグ60は物品特定用タグ71であることから、ステップS111にてNoと判定される。そして、このように読み取られた1または2以上の物品特定用タグ71の物品特定情報がメモリ22に格納されて記憶される(S113)。そして、上記ステップS119以降の処理がなされ、読み取られたRFIDタグ60が物品特定用タグ71であると、その物品特定情報がメモリ22に格納されて記憶される処理が繰り返される。
【0046】
このようにして物品等50に付された全ての物品特定用タグ71が読み取られても、電波強度調整用タグ72が読み取られるまでステップS109にてNoまたはステップS111にてNoと判定されて、出力調整値Dが変化量ΔDだけ大きくなるように調整される処理が繰り返される。
【0047】
そして、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度がさらに大きく調整されることで、電波強度調整用タグ72の単位境界情報が読み取られると、ステップS111にてYesと判定される。この場合には、出力調整フラグFが、その電波強度を下限値D0に調整することを示す「FALSE」に設定される(S115)。続いて、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整される(S117)。その後、読取キーの押圧操作が維持されている間、ステップS119でNo、ステップS125でYes、ステップS109でNoが繰り返される。このように無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整されるため、この繰り返し処理中では、単位読取範囲外のRFIDタグ60が読み取られることもない。
【0048】
上述のような繰り返し処理中に、各物品特定用タグ71の読み取りを終えたことを把握した読取作業者により読取キーが離されると、ステップS125にてNoと判定される。これにより、無線タグ処理部30からの電磁波の送信が停止されて(S127)、その単位読取範囲における本棚卸処理が終了する。このように棚卸処理が終了すると、上述のように各物品特定用タグ71を読み取ることでメモリ22に記憶された各物品特定情報等が管理サーバ2に送信される。なお、メモリ22に記憶された各物品特定情報等は、棚卸処理終了後に管理サーバ2に送信されることに限らず、棚卸処理中に管理サーバ2に送信されてもよいし、所定数の単位読取範囲にて棚卸処理を終えた後にまとめて管理サーバ2に送信されてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る携帯情報端末10では、制御部21による棚卸処理が開始されると、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が下限値(所定の値)D0に調整され、電波強度調整用タグ72が読み取られていると判定されるまで、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が上記下限値D0から徐々に大きく調整される。
【0050】
これにより、電波強度調整用タグ72を、読取対象となる複数のRFIDタグ60が配される単位読取範囲のうち携帯情報端末10から最も遠くなる上記所定の読取位置に配置していることで、制御部21による棚卸処理開始時に下限値D0に調整された電磁波の電波強度を徐々に大きく調整して、電波強度調整用タグ72を読み取ったタイミングでは(S111でYes)、上記単位読取範囲を読み取るために適した電磁波の電波強度となっている。したがって、電波強度調整用タグ72を読み取った際の電磁波の電波強度をそれ以上大きくしないことで、単位読取範囲内の各物品特定用タグ71を適切に読み取りつつ単位読取範囲外のRFIDタグ60の読み取りを防止することができる。
【0051】
特に、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が下限値D0から徐々に大きくなるように調整されている状態で、電波強度調整用タグ72が読み取られていると判定されると(S111でYes)、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が下限値D0となるように調整される。
【0052】
これにより、電波強度調整用タグ72を読み取ったタイミングでは、上記単位読取範囲を読み取るために適した電磁波の電波強度となっているため、電磁波の電波強度を下限値D0となるように小さくすることで、確実に単位読取範囲外のRFIDタグ60の読み取りを防止することができる。特に、電波強度調整用タグ72を読み取ったタイミングでは、上記単位読取範囲内の各物品特定用タグ71も読み取られているので、不要に大きな電波強度の電磁波の送信を抑制でき、無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0053】
なお、電波強度調整用タグ72が読み取られていると判定されると(S111でYes)、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が直ちに下限値D0となるように調整されることに限らず、下限値D0に向けて徐々に小さくなるように調整されてもよい。また、作業環境等によっては、電波強度調整用タグ72が読み取られていると判定されると(S111でYes)、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなる調整をやめてその電波強度が維持されてもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る情報読取システム1では、上述のように構成される携帯情報端末10と、上記単位境界情報が記憶されたRFIDタグ60として機能する電波強度調整用タグ72と、を備えている。そして、電波強度調整用タグ72は、上記所定の読取位置から携帯情報端末10を用いて読取対象となる複数の物品特定用タグ71を読み取るとき、当該複数の物品特定用タグ71が配される単位読取範囲のうち上記所定の読取位置から最も遠くなる位置となるように配置される。
【0055】
これにより、携帯情報端末10を用いて各単位読取範囲内の物品特定用タグ71を適切に読み取りつつ上記単位読取範囲外のRFIDタグ60の読み取りを防止することができる等の作用効果を奏する情報読取システム1を実現することができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る携帯情報端末および情報読取システムについて、図面を参照して説明する。
本第2実施形態に係る携帯情報端末および情報読取システムは、携帯情報端末の移動を考慮して電磁波の電波強度を調整する点が、上記第1実施形態に係る携帯情報端末および情報読取システムと異なる。したがって、第1実施形態の携帯情報端末および情報読取システムと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
上記第1実施形態では、電波強度調整用タグ72の単位境界情報が読み取られると(S111でYes)、読取キーの押圧操作が維持されている間(S125でYes)、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整された状態が維持される。このような処理では、複数の単位読取範囲に配置される物品特定用タグ71を順次読み取る棚卸作業を行う場合には不便な場合がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、加速度センサ28により検出される3軸方向の加速度に基づいて当該携帯情報端末10の3軸方向における移動を検知し、この検知結果に応じて無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度を調整する。具体的には、加速度センサ28により検出される3軸方向の加速度に基づいて、電波強度調整用タグ72を読み取った時の携帯情報端末10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置を基準位置X0,Y0,Z0として記憶する。その後、所定周期ごとに携帯情報端末10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置をX1,Y1,Z1として検出した後、X0とX1との差の絶対値、Y0とY1との差の絶対値、Z0とZ1との差の絶対値と所定の閾値Mとを比較する。そして、各絶対値の少なくともいずれか1つが所定の閾値M以上である場合に、当該携帯情報端末10が次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るために移動されていると判断して、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度を徐々に大きく調整する。
【0059】
例えば、図9の位置P1にある携帯情報端末10にて物品等50に付された全ての物品特定用タグ71が読み取られた後に電波強度調整用タグ72が読み取られると、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整され、位置P1からの移動が検知されるまで下限値D0に調整された状態が維持される。そして、読取キーの押圧操作が維持された状態にて読取作業者が次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るために移動することで携帯情報端末10が図9の位置P2に移動すると、その移動が検知されて無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなり、移動先での単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取り可能な状態となる。
【0060】
また、例えば、図10の位置P3にある携帯情報端末10にて上側の単位読取範囲における物品等50に付された全ての物品特定用タグ71が読み取られた後に電波強度調整用タグ72が読み取られると、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整され、位置P3からの移動が検知されるまで下限値D0に調整された状態が維持される。そして、読取キーの押圧操作が維持された状態にて読取作業者が下側の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るために携帯情報端末10を図10の位置P4に移動させると、その移動が検知されて無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなり、移動先での単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取り可能な状態となる。
【0061】
すなわち、本実施形態では、複数の単位読取範囲について、上記第1実施形態のように単位読取範囲ごとに読取キーの押圧操作およびその解除を繰り返すことなく、読取キーを押圧操作したまま例えば図9の矢印の方向に移動することで、移動先での単位読取範囲の各物品特定用タグ71を逐次読み取ることができる。
【0062】
以下、本実施形態において、各単位読取範囲に配置される各物品の配置状況を確認する作業(棚卸作業)の際に携帯情報端末10にて実施される棚卸処理について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
上記第1実施形態と同様に読取キーが押圧操作されることで(図11のS101でYes)、出力調整フラグFが「TRUE」に設定されると(S103)、ステップS105aに示す初期設定処理がなされる。この処理では、上述した下限値D0および上限値D1の設定および出力調整値Dの下限値D0への調整に加えて、上述した所定の閾値Mが、次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るための移動に応じた規定値に設定される。その後、上記ステップS107以降の処理がなされる。
【0063】
そして、上記第1実施形態での棚卸処理と同様にして、物品等50に付された全ての物品特定用タグ71が読み取られた後に電波強度調整用タグ72が読み取られると(S111でYes)、出力調整フラグFが「FALSE」に設定され(S115)、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整される(S117)。そして、ステップS118に示す処理にて、加速度センサ28により検出される3軸方向の加速度に基づいて、電波強度調整用タグ72を読み取った時の携帯情報端末10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置が基準位置X0,Y0,Z0として算出されて、メモリ22に記憶される。
【0064】
そして、出力調整フラグFが「FALSE」に設定されていることからステップS119にてNoと判定されると、ステップS129に示す処理にて、現時点における携帯情報端末10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置が現在位置X1,Y1,Z1として算出される。続いて、ステップS131に示す判定処理にて、次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るための携帯情報端末10の移動が検知されるか否かについて判定される。
【0065】
ここで、基準位置となる電波強度調整用タグ72を読み取った時の携帯情報端末10の位置(X0,Y0,Z0)と現時点での携帯情報端末10の現在位置(X1,Y1,Z1)との差が所定の閾値M未満、すなわち、X0とX1との差の絶対値、Y0とY1との差の絶対値、Z0とZ1との差の絶対値のいずれもが所定の閾値M未満である場合には、次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るための携帯情報端末10の移動が検知されないとして、ステップS131にてNoと判定される。例えば、携帯情報端末10が図9の位置P1(図10の位置P3)から移動していない場合にはステップS131にてNoと判定される。この場合には、上記ステップS125にてYesと判定された後にステップS109以降の処理がなされ、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0に調整された状態が維持される。
【0066】
その後、読取作業者が次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るために移動すると、この移動に応じた携帯情報端末10のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置がX1,Y1,Z1として算出される(S129)。このため、X0とX1との差の絶対値、Y0とY1との差の絶対値、Z0とZ1との差の絶対値の少なくともいずれか1つが所定の閾値M以上となり、次の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るための携帯情報端末10の移動が検知されたとして、ステップS131にてYesと判定される。例えば、携帯情報端末10が図9の位置P1から位置P2に移動している場合にはステップS131にてYesと判定される。また、例えば、携帯情報端末10が図10の位置P3から位置P4に移動している場合にもステップS131にてYesと判定される。この場合には、出力調整フラグFが「TRUE」に設定されて(S133)、上記ステップS125にてYesと判定された後にステップS109以降の処理がなされる。なお、上記ステップS131を行う制御部21および加速度センサ28は、「移動検知手段」の一例に相当し得る。
【0067】
このように出力調整フラグFが「TRUE」に設定された後には、以降の処理ではステップS119にてYesと判定されて、出力調整値Dが変化量ΔDだけ大きくなるように調整される(S123)。これにより、無線タグ処理部30から送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0から再び徐々に大きくなるように調整された状態で、移動先の単位読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取るためにステップS109以降の処理がなされる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る携帯情報端末10では、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度の出力調整値Dが下限値D0となるように調整された状態で、当該携帯情報端末10の移動が検知されると(S131でYes)、無線タグ処理部30により送信される電磁波の電波強度が徐々に大きくなるように調整される。
【0069】
このように携帯情報端末10の移動が検知されると、他の読取範囲の各物品特定用タグ71を読取対象としていることが推定されるので、下限値D0となるように調整されていた電磁波の電波強度を徐々に大きくすることで、他の読取範囲の各物品特定用タグ71を読み取りやすい状態に迅速に移行することができる。特に、電磁波の電波強度は、下限値D0に調整されていた状態から徐々に大きく調整されるので、急に大きく調整されたために単位読取範囲外のRFIDタグ60や1度読み取った電波強度調整用タグ72を誤って読み取ることを防止することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、加速度センサ28の検出結果に基づいて携帯情報端末10の移動を検知しているが、これに限らず、例えば、ジャイロセンサや振動センサ等の他の移動検知手段による検知結果に基づいて携帯情報端末10の移動を検知してもよい。
【0071】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、上述したように管理サーバ2を利用した情報読取システムに適用されることに限らず、携帯情報端末10単体で上記棚卸処理により物品特定用タグ71から読み取った物品特定情報等に基づいて各物品の配置状況等を管理する構成に適用されてもよい。
【0072】
(2)本発明は、上述したようにアンテナを介して送受信される電磁波を媒介としてRFIDタグ60に記憶されている情報を読み書きするRFIDタグリーダライタとしての無線通信機能に加えて情報コードリーダとしての機能を兼備する携帯情報端末に適用されることに限らず、無線通信機能に特化した携帯情報端末に適用されてもよい。また、本発明は、無線通信機能と異なる他の機能を無線通信機能とともに兼備する携帯情報端末に適用されてもよい。
【0073】
(3)本発明は、上述したように各物品を販売する店舗において棚卸作業等の際に各物品の配置状況を管理するためのシステムに適用されることに限らず、例えば、倉庫に保管される物品の配置状況等について読取範囲を所望の範囲に限定して管理するシステムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…情報読取システム
10…携帯情報端末
21…制御部(情報処理手段,判定手段,電波強度調整手段,移動検知手段)
28…加速度センサ(移動検知手段)
30…無線タグ処理部(電磁波送信手段,電磁波受信手段)
60…RFIDタグ
71…物品特定用タグ
72,72a,72b…電波強度調整用タグ
D0…下限値(所定の値)
D1…上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11