(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含窒素キレート配位子が、2,2’−ビピリジルの部分構造を有する化合物、1,10−フェナントロリンの部分構造を有する化合物、またはN、N、N'、N'−テトラメチルエチレンジアミンの部分構造を有する化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1において、銅化合物の配合量を増加させても、ポリエステルの酸価低減効果は頭打ちとなり、銅化合物の配合量を増加させることによりヘイズが増大する課題があった。
【0010】
また、特許文献2において、アルカリ金属ハロゲン化物は分解してハロゲンが揮発しやすいため、環境面での課題があった。
【0011】
さらに、特許文献3に記載された、金属と配位子との組み合わせでは、酸価を低減する効果は期待できない。
【0012】
本発明の目的は、耐加水分解性および透明性に優れたポリエステル樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、銅を含む化合物と含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する化合物とを併用することにより、耐加水分解性および透明性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0015】
(1)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、およびジオールを主原料として
、重縮合によって得られるポリエステル樹脂に、銅を含む化合物ならびに、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素
キレート配位子を配合してなるポリエステル樹脂組成物
であって、銅を含む化合物を、銅原子基準でポリエステル樹脂100gあたり0.001〜0.3mmol配合し、ポリエステル樹脂組成物2gを20mlのフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの3/2(容積比)混合溶液に溶解し、光路長20mmのセルを用いて測定したポリエステル溶液ヘイズが2.3%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【0017】
(
2)前記含窒素
キレート配位子を、ポリエステル樹脂100gあたり0.001〜10mmol配合してなる(1
)に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0018】
(
3)銅を含む化合物の銅原子に対して、前記含窒素
キレート配位子を、0.001〜4のモル比(含窒素
キレート配位子/銅を含む化合物の銅原子)で配合してなる(1)
または(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0019】
(
4)銅を含む化合物が、有機銅塩、無機銅塩、銅ハロゲン化物、銅酸化物、および銅水酸化物から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0021】
(
5)前記含窒素キレート配位子が、2,2’−ビピリジルの部分構造を有する化合物、1,10−フェナントロリンの部分構造を有する化合物、またはN、N、N'、N'−テトラメチルエチレンジアミンの部分構造を有する化合物である
(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0022】
(
6)前記含窒素キレート配位子が、2,2’−ビピリジル、または1,10−フェナントロリンであることを特徴とする(
5)に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0023】
(
7)前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種である(1)〜(
6)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0024】
(
8)前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が5000〜100000である(1)〜(
7)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0025】
(
9)前記ポリエステル樹脂の酸価が13eq/t以下であることを特徴とする(1)〜(
8)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0027】
(1
0)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、およびジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させて、
(1)記載のポリエステル樹脂を製造する際に、エステル化反応、エステル交換反応、および重縮合反応のいずれかの工程で、銅を含む化合物ならびに含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素
キレート配位子を配合するポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0028】
(1
1)得られるポリエステル樹脂100gあたり、銅を含む化合物を銅原子基準で、0.001〜
0.3mmol配合する(1
0)に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0029】
(1
2)得られるポリエステル樹脂100gあたり、前記含窒素
キレート配位子を、0.001〜10mmol配合する(1
0)または(1
1)に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0030】
(1
3)銅を含む化合物に含まれる銅原子に対して、前記含窒素
キレート配位子を0.001〜4のモル比
(含窒素キレート配位子/銅を含む化合物の銅原子)で配合する(1
0)〜(1
2)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0031】
(1
4)ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体、並びにジオールを主原料と
し、重縮合によって得られるポリエステル樹脂と、銅を含む化合物と、含窒素複素環構造と3級アミン構造との少なくとも一方を有する含窒素
キレート配位子と、を含むポリエステル樹脂組成物
であって、銅を含む化合物を、銅原子基準でポリエステル樹脂100gあたり0.001〜0.3mmol配合し、ポリエステル樹脂組成物2gを20mlのフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの3/2(容積比)混合溶液に溶解し、光路長20mmのセルを用いて測定したポリエステル溶液ヘイズが2.3%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、耐加水分解性および透明性に優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、およびジオールを主原料として得られるポリエステル樹脂に、銅を含む化合物ならびに、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を配合してなるポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【0034】
(1)ポリエステル樹脂
本発明の実施形態で使用されるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、およびジオールを主原料として重縮合して得られる。ここで、主原料とは、ポリマー中のジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体、およびジオールとの構成単位が、合計で80モル%以上であることを示す。この構成単位の合計は、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0035】
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は特に限定しないが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル−4,4'−ジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0036】
ここで言うエステル形成性誘導体とは、先に述べたジカルボン酸の低級アルキルエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物等である。ジカルボン酸の低級アルキルエステルとして、メチルエステル、エチルエステル、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル等が好ましく用いられる。ジカルボン酸の酸無水物として、シカルボン酸同士の無水物、ジカルボン酸と酢酸との無水物等が好ましく用いられる。ジカルボン酸のハロゲン化物として、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等が好ましく用いられる。
【0037】
本発明の実施形態で使用されるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、得られるポリエステル樹脂が耐熱性に優れる点で、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体が好ましい。芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、またはそれらのジメチルエステルがより好ましい。
【0038】
本発明の実施形態で使用されるジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、得られるポリエステル樹脂が耐熱性に優れる点で、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0039】
また、ジカルボン酸、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、およびジオールをそれぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。本発明で使用されるポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート等が挙げられる。ここで、「/」は共重合体を表す。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが耐熱性に優れる点でより好ましい。
【0040】
本発明の実施形態で使用されるポリエステル樹脂について、数平均分子量は5000〜100000であることが好ましい。数平均分子量はより好ましくは、7000〜80000、さらに好ましくは9000〜50000である。数平均分子量が5000より大きい場合には機械的強度が大きい傾向がある。一方、数平均分子量が100000以下の場合には、溶融加工が容易となる傾向がある。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めることができる。
【0041】
(2)銅を含む化合物
本発明の実施形態では、ポリエステル樹脂を製造する際に銅を含む化合物を配合することが重要である。この銅を含む化合物は後述する含窒素化合物とともに銅錯体を形成することで本発明の効果を発現すると考えられる。
【0042】
本発明の実施形態でポリエステル樹脂に配合する銅を含む化合物に含まれる銅の価数は、0価、1価、2価のいずれであっても良い。ポリエステル樹脂への分散性、酸価低減効果が高い点で、銅の価数は、1価、2価であることがより好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂に配合する際の銅を含む化合物は、特に限定されないが、銅塩が好ましい。銅塩は特に限定されないが、例えば、ギ酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ウンデシル酸銅、ラウリン酸銅、トリデシル酸銅、ミリスチン酸銅、ペンタデシル酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、ノナデシル酸銅、アラキジン酸銅、ヘンイコシル酸銅、ベヘン酸銅、トリコシル酸銅、リグノセリン酸銅、セロチン酸銅、モンタン酸銅、メリシン酸銅、安息香酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、フタル酸銅、サリチル酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅等の有機銅塩、硫酸銅、炭酸銅、硝酸銅等の無機銅塩、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅等の銅ハロゲン化物、水酸化銅等の銅水酸化物、酸化銅等の銅酸化物が挙げられる。これらの銅塩の銅の価数は、1価、2価のいずれでも良く、2種以上の銅塩を併用しても良い。これらの銅塩は、水和物であっても良い。酸価低減効果が高い点で、銅ハロゲン化物が好ましく、ヨウ化銅が特に好ましい。また、ポリエステル樹脂組成物の透明性を高くできる点で、硫酸銅が好ましい。
【0044】
本発明の実施形態において、銅を含む化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で0.001mmol以上配合することが好ましい。銅を含む化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で0.001mmol以上とすることで、酸価低減効果が大きくなる。銅を含む化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で0.005mmol以上とすることがより好ましく、0.01mmol以上とすることがさらに好ましい。また、銅を含む化合物をポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で10mmol以下配合することが好ましい。銅を含む化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で10mmol以下とすることで、透明性の低下や色調の悪化を抑制できるので好ましい。銅を含む化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり銅原子基準で0.5mmol以下とすることがより好ましく、0.15mmol以下とすることがさらに好ましく、0.045mmol以下とすることが最も好ましい。ここで、ポリエステル樹脂の重縮合時に銅を含む化合物を配合する場合には、原料がすべて重縮合したと仮定した場合の理論ポリマー量を基準として、銅を含む化合物の配合量を計算することができる。
【0045】
銅を含む化合物を、溶融したポリエステル樹脂に配合する場合には、銅を含む化合物の銅原子以外の成分が揮発することがある。ただし、銅原子は揮発しないため、銅を含む化合物を配合したポリエステル樹脂組成物中の銅原子含有量は、基本的に配合量と一致する。銅原子含有量は、原子吸光分析法、蛍光X線分析法等で定量する事ができる。
【0046】
(3)含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物
上記銅を含む化合物を配合することで、ポリエステル樹脂の酸価低減効果および耐加水分解性向上効果が期待できることは知られているが、銅を含む化合物を配合するだけでは、脱炭酸活性が低く、配合量を増やしても十分な酸価低減効果および耐加水分解性向上効果が得られないことがある。本発明では、銅に配位能力のある含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を配合し、銅錯体とすることで、脱炭酸活性、およびポリエステル樹脂への分散性が向上することが見出された。その結果、発明者らは、ポリエステル樹脂の酸価が低くなることにより、耐加水分解性と透明性に優れるポリエステル樹脂を得ることに成功した。
【0047】
含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物は、特に限定されない。含窒素複素環構造を有する化合物としては、例えば、N―メチルアゾリジン、N―メチルピペリジン、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、2,2’−ビピリジル、テルピリジン、1,10−フェナントロリン、1,8−ナフチリジン、ニコチン酸、イソニコチン酸、またはこれらの部分構造を有する誘導体等が挙げられる。3級アミン構造を有する化合物としては、例えば、N、N、N'、N'−テトラメチルエチレンジアミン、N、N、N'、N''、N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、N―メチルアゾリジン、N―メチルピペリジン、またはこれらの部分構造を有する誘導体等が挙げられる。これらの含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物は、水和物であっても良い。含窒素化合物としては、複素環を構成する窒素が3級アミンを構成している化合物であっても良い。つまり、含窒素化合物は、含窒素複素環構造と3級アミン構造との両方を有していてもよい。
【0048】
含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物としては、安定な銅錯体を形成するキレート配位子となる含窒素化合物(「含窒素キレート配位子」とも呼ぶ)が好ましい。安定な銅錯体を形成する含窒素キレート配位子となる含窒素化合物の具体例としてはN、N、N'、N'−テトラメチルエチレンジアミン、N、N、N'、N''、N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、2,2’−ビピリジル、テルピリジン、1,10−フェナントロリン、1,8−ナフチリジン、またはこれらの部分構造を有する誘導体等が挙げられる。含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物としては、含窒素二座キレート配位子となるN、N、N'、N'−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、1,8−ナフチリジン、またはこれらの部分構造を有する誘導体がより好ましく、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリンがさらに好ましい。なお、ここで含窒素キレート配位子とは、分子中に少なくとも1つの窒素原子を含む複数の配位座を持つ化合物であり、複数の配位座が金属1原子に対して、同時に配位できる位置にある化合物である。また、ここで含窒素二座キレート配位子とは、分子中に窒素原子を含む二つ以上の配位座を持つ化合物であり、その中の窒素原子を含む二つの配位座が金属1原子に対して、同時に配位できる位置にある化合物である。配位座の一つが窒素原子であれば、その他の配位座が酸素原子、硫黄原子であってもよい。本発明の実施形態においては、含窒素二座キレート配位子、または含窒素三座キレート配位子が好ましく、含窒素二座キレート配位子が特に好ましい。
【0049】
本発明の実施形態において、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり0.001mmol以上配合することが好ましい。含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり0.001mmol以上とすることで、ポリエステル樹脂の酸価低減効果が大きくなり、ポリエステル樹脂の透明性を改善する効果も発現する。含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり0.005mmol以上とすることがより好ましく、0.01mmol以上とすることがさらに好ましい。また、前記含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり、10mmol以下配合することが好ましい。前記含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり、10mmol以下とすることで、加水分解を促進させることがないので好ましい。前記含窒素化合物を、ポリエステル樹脂100gあたり、0.5mmol以下とすることがより好ましく、0.2mmol以下とすることがより好ましい。含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する化合物の含有量は、NMR、あるいは、ポリエステル樹脂を加水分解処理後の分解物から前記含窒素化合物を抽出し、HPLCやGC等で定量する事ができる。
【0050】
本発明では、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を、銅を含む化合物と併用することで、銅を含む化合物の配合量が少量であっても酸価を十分に低減させることが可能となる。このことは、ポリエステル樹脂の透明性を確保するという点でも有利である。
【0051】
ここで、ポリエステル樹脂の重縮合時に含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する化合物を配合して、本発明のポリエステル樹脂組成物を得る場合には、原料がすべて重縮合したと仮定した場合の理論ポリマー量を基準として、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する化合物の配合量を計算することができる。
【0052】
(4)配合割合
本発明の実施形態において、効率的に酸価を低減させるためには、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を、銅を含む化合物の銅原子を基準として0.001〜4のモル比(含窒素化合物/銅を含む化合物の銅原子)でポリエステル樹脂に配合することが好ましい。モル比(含窒素化合物/銅を含む化合物の銅原子)は、0.01以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.4以上が最も好ましい。モル比(含窒素化合物/銅を含む化合物の銅原子)は、2以下がより好ましく、1以下がさらに好ましく、0.4以下が最も好ましい。モル比(含窒素化合物/銅を含む化合物の銅原子)を0.001以上とすることで、ポリエステル樹脂組成物のヘイズが大きくなるのを抑制できるので好ましい。一方、モル比(含窒素化合物/銅を含む化合物の銅原子)を4以下とすることで、銅に対する含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物が過剰となることがなく、ポリエステルの加水分解性を抑制させることができるので好ましい。
【0053】
(5)ポリエステル樹脂組成物の製造方法
本発明の実施形態で使用されるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、およびジオールを主原料として得られるポリエステル樹脂の製造方法は、次の2段階の工程から成る。以降、エステル形成誘導体としてジカルボン酸アルキルエステルを用いた場合を記載する。すなわち、(A)エステル化反応、または(B)エステル交換反応からなる1段階目の工程と、それに続く(C)重縮合反応からなる2段階目の工程である。
【0054】
1段階目の工程のうち、(A)エステル化反応の工程は、ジカルボン酸とジオールを所定の温度でエステル化反応させ、所定量の水が留出するまで反応を行い、低重縮合体を得る工程である。また、(B)エステル交換反応の工程は、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールを所定の温度でエステル交換反応させ、所定量のアルコールが留出するまで反応を行い、低重縮合体を得る工程である。
【0055】
2段階目の工程である(C)重縮合反応は、(A)エステル化反応または(B)エステル交換反応で得られた低重縮合体を、加熱、減圧にすることにより脱ジオール反応を進行させ、高分子量のポリエステル樹脂を得る工程である。一般に、この時の重縮合反応温度は、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、280℃以上が最も好ましい。また、この時の重縮合反応温度は、300℃以下が好ましい。重縮合反応温度を230℃以上とすることにより、脱炭酸反応速度が速くなるため、酸価低減効果が高い傾向にある。300℃より重縮合反応温度が低い場合には、得られるポリエステル樹脂の劣化を引き起こすことを抑制できる傾向にある。ポリエチレンテレフタレートを重縮合する場合は、280〜300℃が好ましく、290℃がより好ましい。ポリブチレンテレフタレートを重縮合する場合は、240〜260℃が好ましく、250〜260℃がより好ましい。
【0056】
本発明の実施形態で使用されるポリエステル樹脂の製造方法において、エステル化反応に用いられる触媒は、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム等の化合物を用いても良く、または無触媒であっても良い。また、エステル交換反応に用いられる触媒としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物が用いられる。また、重縮合反応に用いられる触媒としては、アンチモン、チタン、アルミニウム、スズ、ゲルマニウム等の化合物等が用いられる。
【0057】
アンチモン化合物としては、アンチモンの酸化物、アンチモンカルボン酸、アンチモンアルコキシド等が挙げられる。具体的には、アンチモンの酸化物として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられ、アンチモンカルボン酸として、酢酸アンチモン、シュウ酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリウム等が挙げられ、アンチモンアルコキシドとして、アンチモントリ−n−ブトキシド、アンチモントリエトキシド等が挙げられる。
【0058】
チタン化合物としては、チタン錯体、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0059】
アルミニウム化合物としては、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート化合物、塩基性アルミニウム化合物等が挙げられる。具体的には、アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、塩基性酢酸アルミニウム等が挙げられる。
【0060】
スズ化合物としては、モノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズオキサイド、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド等が挙げられる。
【0061】
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウムの酸化物、ゲルマニウムアルコキシド等が挙げられる。具体的には、ゲルマニウムの酸化物として、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムアルコキシドとして、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド等が挙げられる。
【0062】
マグネシウム化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0063】
マンガン化合物としては、具体的には、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン等が挙げられる。
【0064】
カルシウム化合物としては、具体的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0065】
コバルト化合物としては、具体的には、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0066】
亜鉛化合物としては、具体的には、酸化亜鉛、亜鉛アルコキシド、酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0067】
これら金属化合物は、水和物であっても良い。
【0068】
本発明の実施形態で使用されるポリエステル樹脂には、安定剤としてリン化合物が添加されても良い。具体的には、安定剤として、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト等が挙げられる。
【0069】
また、必要に応じて、色調調整剤として樹脂等に用いられる染料が添加されても良い。特にCOLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104やSOLVENT BLUE 45等の青系の色調調整剤、SOLVENT VIOLET 36等の紫系色調調整剤が高温での耐熱性が良好で発色性に優れるため好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0070】
さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤又はその他の添加剤等を必要に応じて配合しても良い。
【0071】
本発明の実施形態のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、銅を含む化合物、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を、上記(A)または(B)工程、それに続く(C)工程のいずれかの段階で配合する方法等が挙げられる。高分子量のポリエステル樹脂組成物を効率的に製造するためには(C)工程で添加することが好ましい。また、重縮合触媒、銅を含む化合物、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物、およびその他の添加剤の配合形態としては、それぞれを個々に単独で配合する形態、それぞれを溶媒に溶解または分散させた状態で配合する形態、溶媒中で添加剤を混合してから配合する形態、のいずれの形態でも良い。効率的にポリエステル樹脂の酸価を低減させるためには、銅を含む化合物と含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物を、溶媒中であらかじめ混合して銅錯体とした後に配合するのが好ましい。重縮合触媒、銅を含む化合物、含窒素複素環構造または3級アミン構造を有する含窒素化合物、その他の添加剤を、溶液もしくは分散液として配合する具体例としては、溶媒としてジオールを用い、それぞれジオールに対して重量比1/100〜20/100の割合で混合してから配合するのが好ましい。
【0072】
(6)ポリエステル樹脂組成物
本発明の実施形態のポリエステル樹脂組成物では、先に述べた銅を含む化合物と含窒素化合物を配合することで、ポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂の酸価が13eq/t以下のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。より耐加水分解性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の酸価が10eq/t以下が好ましく、7eq/t以下がより好ましい。最も好ましくは2eq/t以下である。ここで、ポリエステル樹脂の酸価は、通常0eq/t以上である。ここで、ポリエステル樹脂以外の重縮合触媒、銅を含む化合物、含窒素化合物、添加剤等の合計配合量が1重量%未満である場合には、ポリエステル樹脂組成物をオルトクレゾール溶媒に溶解して、0.02規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃で滴定して求めた酸価を、ポリエステル樹脂の酸価と定義する。
【0073】
ポリエステル樹脂組成物に、重縮合触媒、銅を含む化合物、含窒素化合物、添加剤等の合計配合量が合計1重量%以上含まれる場合は、これらの合計配合料が1重量%未満になるように添加剤等を除去した状態で酸価を測定する。
【0074】
ポリエステル樹脂の酸価を13eq/t以下とすることで、本発明のポリエステル樹脂組成物を、121℃、100%RH条件下で24時間処理した後のポリエスエル樹脂の数平均分子量保持率を向上させることができる。数平均分子量保持率は80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。ここで、数平均分子量保持率は、通常100%以下である。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めることができる。
【0075】
本発明の実施形態のポリエステル樹脂組成物は透明性に優れる。透明性の評価は、オルトクロロフェノール/1,1,2,2‐テトラクロロエタンに溶解したポリエステル樹脂組成物をヘイズメーターで測定することにより求めることができる。ヘイズは2.5%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下が特に好ましい。ここで、ヘイズは、通常0%以上である。ポリエステル樹脂組成物に、フィラー等の添加剤が合計1重量%以上含まれる場合には、添加剤を1重量%未満に除去した状態でヘイズを測定する。
【0076】
本発明の実施形態において、さらに高分子量のポリエステル樹脂組成物を得るため、固相重合を行っても良い。固相重合に用いる装置・方法は特に限定されないが、固相重合は不活性ガス雰囲気下または減圧下で加熱処理されることで実施される。不活性ガスは、ポリエステルに対して不活性なものであれば良く、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス等を挙げることができるが、経済性から窒素が好ましく用いられる。また、減圧下としては、より減圧条件にすることが固相重合反応に要する時間を短くできるため有利であるが、110Pa以上を保つことが好ましい。
【0077】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、バッチ重合、半連続重合、連続重合で生産することができる。
【0078】
本発明の実施形態にて得られるポリエステル樹脂組成物は、公知の加工方法で成形加工することができる。本発明の実施形態にて得られるポリエステル樹脂組成物は、繊維、フィルム、ボトル、射出成形品等各種製品に加工することができる。
【0079】
例えば、ポリエステル樹脂組成物を繊維に加工する方法は、通常の溶融紡糸−延伸工程を適用することができる。具体的には、ポリエステル樹脂組成物をポリエステル樹脂の融点以上に加熱して溶融させた後に、ポリエステル樹脂組成物を細孔から吐出し、冷却風にて冷却固化させる。その後、ポリエステル樹脂組成物に油剤を付与して、引き取りローラによって引き取り、引き取りローラ後に配置された巻き取り装置によって巻き取ることで、未延伸糸を採取することができる。
【0080】
このようにして巻き取られた未延伸糸は、加熱された一対以上のローラで延伸する。そして、最後に、未延伸糸に緊張又は弛緩熱処理を施すことで用途に応じた力学特性等の物性が付与された繊維となる。なお、この延伸工程においては、上記した溶融紡糸工程において引き取った後に一旦巻き取ることなく連続して行うことができ、生産性等の工業的な観点では連続延伸とすることができる。ここで、この延伸−熱処理を施すにあたり、延伸倍率、延伸温度および熱処理条件は目標とする繊維の繊度、強度、伸度、収縮率等によって適宜選択することができる。
【0081】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルムに加工する方法について具体的に説明する。ここでは急冷して低密度の未延伸フィルムを作成し、その後、逐次二軸延伸を施した例を示すが、かかる例に限定されるものではない。
【0082】
ポリエステル樹脂組成物を180℃で3時間以上真空加熱乾燥させたのち、窒素気流下、あるいは真空下で270〜320℃に加熱された単軸または二軸押出機に供給することにより、ポリマーを可塑化させる。その後、ポリエステル樹脂組成物をスリット状のダイから溶融押出し、キャスティングロール上で冷却固化させることにより、未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網等の素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるために、ギアポンプを設けても良い。続いて、上記のようにして成形されたシート状物を二軸延伸する。つまり、上記のようにして成形されたシート状物を長手方向と幅方向の二軸に延伸して、熱処理する。延伸方法としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う等の逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法等が例示される。延伸工程後の熱処理は、熱膨張係数や熱収縮率を本発明の範囲に制御するには、過度な熱処理による分子鎖配向の緩和を起こさず、効果的に熱処理を施すことが望ましい。
【0083】
本発明の実施形態のポリエステル樹脂組成物を各種製品に加工する際に、各種添加剤を1種以上添加することもできる。各種添加剤としては、例えば、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、核剤、可塑剤、離型剤等が挙げられる。
【0084】
本発明の実施形態のポリエステル樹脂組成物は、耐加水分解性、透明性が良いため、繊維、フィルム、ボトル、射出成形品等各種製品として利用することができる。これらの製品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用である。
【実施例】
【0085】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例において用いた原料、試薬は以下のとおりである。
・SKケミカル社製テレフタル酸ジメチル
・日本触媒社製エチレングリコール
・BASF社製1,4−ブタンジオール
・関東化学社製酢酸マグネシウム4水和物
・関東化学社製三酸化アンチモン
・関東化学社製リン酸トリメチル
・関東化学社製ヨウ化銅
・アルドリッチ社製1,10−フェナントロリン
・STREM CHEMICALS社製酢酸銅(I)
・関東化学社製酢酸銅(II)
・アルドリッチ社製硫酸銅5水和物
・関東化学社製2,2’−ビピリジル
・東京化成工業社製N、N、N'、N''、N''−ペンタメチルジエチレントリアミン
・和光純薬工業社製テトラ−n−ブトキシチタネート
【0086】
なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0087】
(1)数平均分子量
ポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂の数平均分子量は、以下に示す条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した。
【0088】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)に溶解して得られた試料濃度1mg/mL溶液を測定に用いた。測定条件を以下に示した。
ポンプ:Waters 515(Waters製)
検出器:示差屈折率計 Waters 410(Waters製)
カラム:Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LG
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
流速:1.0ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート。
【0089】
(2)酸価(単位:eq/t)
ポリエステル樹脂組成物をオルトクレゾールに30mg/Lの濃度で溶解させ、0.02規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃で自動滴定装置(平沼産業社製、COM−550)にて測定した。
【0090】
(3)耐加水分解性(湿度100%条件下での分子量保持率%)
ポリエステル樹脂組成物を140℃で16時間真空乾燥したペレットを、280℃でプレスし、厚さ1mmのプレートとした後に、高度加速寿命試験装置(エスペック社製、EHS−411)を用いて、121℃、100%RHの高湿度条件下で24時間保持した。処理前の数平均分子量に対する処理後の数平均分子量の保持率(%)を算出した。
【0091】
(4)ヘイズ(単位:%)
ポリエステル樹脂組成物2gを20mlのオルトクロロフェノール/1,1,2,2‐テトラクロロエタンの3/2(容積比)混合溶液に溶解し、光路長20mmのセルを用い、ヘイズメーター(スガ試験機社製 HZ−1)を用いて、積分球式光電光度法にて測定した。
【0092】
実施例1
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部、および酢酸マグネシウム4水和物0.06重量部を混合した。その後、混合物を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら240℃まで4時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、その後、エステル交換反応を行うことにより、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを得た。
【0093】
ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを重縮合して得られるポリマー理論量100gに対して、0.2mmolの三酸化アンチモン、0.1mmolのリン酸トリメチル、0.02mmolのヨウ化銅(I)、0.02mmolの1,10−フェナントロリンをそれぞれ計量した。三酸化アンチモン、リン酸トリメチルのそれぞれの重量に対し、それぞれ15倍量のエチレングリコールを添加し、エチレングリコールとの混合物を調製した。また、ヨウ化銅(I)の重量に対し、15倍量のエチレングリコールを添加した混合物に、1,10−フェナントロリンの重量に対し、15倍量のエチレングリコールを添加し溶解させた溶液を加え、ヨウ化銅(I)、1,10−フェナントロリン、およびエチレングリコールの混合物を調製した。
【0094】
ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを試験管に投入し、250℃で溶融させた後、上述のように調製した三酸化アンチモンとエチレングリコールとの混合物、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液、およびヨウ化銅(I)、1,10−フェナントロリンとエチレングリコールとの混合物を投入し、反応器内を250℃から290℃まで60分かけて徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から130Paまで60分かけて減圧し、290℃、130Paで重縮合反応させた。目標とする試験管攪拌棒にかかるトルクをモニターし、所定のトルクに達した時点で重縮合反応を停止させた。重縮合反応終了後、溶融物をストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステル樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて数平均分子量、酸価、耐加水分解性、ヘイズを測定した。
【0095】
結果を表1に示す。
実施例2〜
13、15〜16および比較例1〜7
、12
銅を含む化合物の種類と配合量および/または含窒素
キレート配位子の種類と配合量を変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0096】
【表1】
【0097】
本願発明の実施例1〜
13、15〜16で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、比較例1〜7
、12で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物と比較して、耐加水分解性、ヘイズともに優れた値を示した。実施例5、8、9で示されるように、銅を含む化合物の銅原子に対する含窒素
キレート配位子のモル比(含窒素
キレート配位子/銅を含む化合物の銅原子)が、0.4〜1の範囲にあると酸化が低く、耐加水分解性がさらに優れることがわかる。また、実施例4は、硫酸銅を用いているため、ヘイズが低く、透明性に優れる。
【0098】
また、実施例1と比較例1の比較から、銅を含む化合物の配合量が同じであっても、含窒素
キレート配位子であるフェナントロリンを併用することで、ヘイズが小さくなることがわかる。
【0099】
実施例17
テレフタル酸100重量部と1,4−ブタンジオール100重量部、およびテトラ−n−ブトキシチタネート0.06重量部を混合した。混合物を100℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら、圧力87kPaの減圧下にてエステル化反応を開始した。その後、混合物を230℃まで昇温し、230℃でエステル化反応を行った。エステル化反応の反応時間を240分間とし、ビス(ヒドロキシブチル)テレフタレートを得た。
【0100】
得られたビス(ヒドロキシブチル)テレフタレートを重縮合して得られるポリマー理論量100gに対して、0.05mmolのテトラ−n−ブトキシチタネート、0.30mmolのヨウ化銅(I)、0.30mmolの1,10−フェナントロリンをそれぞれ計量し、それぞれの重量に対し、それぞれ15倍量のエチレングリコールを添加し混合物を調製した。
【0101】
ビス(ヒドロキシブチル)テレフタレートを試験管に投入し、245℃で溶融させた後、上述のように調製したテトラ−n−ブトキシチタネート、ヨウ化銅(I)、および1,10−フェナントロリンをすべて投入し、圧力を常圧から80Paまで60分かけて減圧した後、245℃、80Paで重縮合反応させた。目標とする試験管攪拌棒にかかるトルクをモニターし、所定のトルクに達した時点で重縮合を停止させた。重縮合反応終了後、溶融物をストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリエステル樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて数平均分子量、酸価、耐加水分解性、ヘイズを測定した。結果を表2に示す。
【0102】
実施例18
銅を含む化合物の配合量を変更し、重縮合反応温度を245℃から255℃に変更した以外は、実施例17と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0103】
比較例8
含窒素化合物を配合しないこと以外は、実施例17と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0104】
比較例9
ヨウ化銅(I)と含窒素化合物を配合しないこと以外は、実施例17と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0105】
比較例10
ヨウ化銅(I)を配合しないこと以外は、実施例17と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0106】
比較例11
重縮合反応温度を245℃から255℃に変更した以外は、比較例9と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。
【0107】
【表2】
【0108】
本願発明の実施例17、18で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、比較例8〜11で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物と比較して、耐加水分解性、ヘイズともに優れた値を示した。