(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
端子の底部の一部から突出する芯線圧着片が電線の芯線のうち絶縁被覆から露出している端部に対して圧着され、前記芯線の前記端部のうち露出部に防食処理がされている端子付電線の製造方法であって、
前記芯線の前記露出部を覆うように前記露出部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記端子の前記底部の外側面を避けて前記芯線の前記露出部のうち前記底部から離れる方向を向いている上面露出部を覆うように前記上面露出部への接着をなされ得る大きさの接着膜を、前記芯線の前記露出部を覆うように塗布された前記接着剤の上に前記接着が可能な配置で載せる接着膜載置工程と、
前記芯線の前記上面露出部と前記接着膜との間に存在する前記接着剤の量と、前記端子の前記底部の前記外側面に付着している前記接着剤の量とを減らす接着剤減少工程と、
を備える、端子付電線の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の端子付電線には、熱収縮チューブが露出芯線部と端子との接続部分の全周を覆うことによって端子付電線の太さが増大するため、コネクタハウジングとの間のクリアランスが不足するといった問題がある。
【0005】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、端子付電線の芯線の露出部を防食しつつ、端子付電線の太さの増大を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係る端子付電線は、芯線と、前記芯線の端部を避けて前記芯線の外周を覆う絶縁被覆とを含む電線と、底部と、前記底部の一部から突出する芯線圧着片とを含み、前記芯線圧着片が前記芯線の前記端部に圧着されている端子と、前記端子の前記底部の外側面を避けて前記芯線の前記端部のうち露出部を覆っている接着剤と、前記芯線の前記露出部のうち前記底部から離れる方向を向いている上面露出部を覆っている前記接着剤によって、前記端子の前記底部の外側面を避けて前記上面露出部に接着されている接着膜と、を備える。
【0007】
第2の態様に係る端子付電線は、第1の態様に係る端子付電線であって、前記芯線の前記上面露出部を覆っている前記接着剤は、前記接着膜が前記芯線の前記上面露出部に沿った形状となるように前記接着膜と前記上面露出部とを接着している。
【0008】
第3の態様に係る端子付電線は、第1または第2の態様に係る端子付電線であって、前記芯線の先端部分は、前記端子の前記芯線圧着片から前記絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、前記接着膜の一部は、前記芯線の前記先端部分から前記絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、前記芯線の前記露出部のうち前記芯線の先端面を覆う前記接着剤は、前記接着膜の前記一部にも接着している。
【0009】
第4の態様に係る端子付電線は、第3の態様に係る端子付電線であって、前記接着膜の一部は、前記芯線の前記先端部分から前記絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、前記接着膜の前記一部は、前記芯線の前記先端面側に曲がっている。
【0010】
第5の態様に係る端子付電線の製造方法は、端子の底部の一部から突出する芯線圧着片が電線の芯線のうち絶縁被覆から露出している端部に対して圧着され、前記芯線の前記端部のうち露出部に防食処理がされている端子付電線の製造方法であって、前記芯線の前記露出部を覆うように前記露出部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記端子の前記底部の外側面を避けて前記芯線の前記露出部のうち前記底部から離れる方向を向いている上面露出部を覆うように前記上面露出部への接着をなされ得る大きさの接着膜を、前記芯線の前記露出部を覆うように塗布された前記接着剤の上に前記接着が可能な配置で載せる接着膜載置工程と、前記芯線の前記上面露出部と前記接着膜との間に存在する前記接着剤の量と、前記端子の前記底部の前記外側面に付着している前記接着剤の量とを減らす接着剤減少工程と、を備える。
【0011】
第6の態様に係る端子付電線の製造方法は、第5の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記芯線の先端部分は、前記端子の前記芯線圧着片から前記絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、前記接着膜載置工程は、前記芯線の前記露出部を覆うように塗布された前記接着剤の上に、前記接着膜の一部が前記芯線の先端部分から前記絶縁被覆とは反対側にはみ出すように、前記接着膜を載せる工程である。
【0012】
第7の態様に係る端子付電線の製造方法は、第5または第6の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記接着剤減少工程は、前記端子の前記底部に対して前記芯線の前記露出部とは反対側から前記接着膜の周りの雰囲気を吸引して前記接着膜を前記芯線の前記上面露出部に押しつけることによって前記上面露出部と前記接着膜との間に存在する前記接着剤の量を減らす工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る発明によれば、端子付電線は、端子の底部の外側面を避けて電線の芯線の露出部を覆っている接着剤と、露出部を覆っている接着剤によって、芯線の露出部のうち端子の底部から離れる方向を向いている上面露出部に、端子の底部の外側面を避けて接着されている接着膜とを備える。従って、端子の底部の外側面への接着剤と接着膜との付着が抑制され、芯線の露出部が接着剤によって覆われる。また、上面露出部は、接着膜に覆われるので、上面露出部の外部への露出を抑制しつつ、上面露出部と接着膜とに挟まれる接着剤の量を減らすことができる。これにより、芯線の露出部を防食しつつ、端子付電線の太さの増大を抑制できる。
【0014】
第2の態様に係る発明によれば、接着剤は、接着膜が芯線の上面露出部に沿った形状となるように接着膜と上面露出部とを接着している。従って、上面露出部と接着膜とに挟まれる接着剤の量をさらに減らすことができる。
【0015】
第3の態様に係る発明によれば、芯線の先端部分は、端子の芯線圧着片から絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、接着膜の一部が芯線の先端部分から絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、接着剤のうち芯線の先端面を覆う部分は、接着膜の当該一部にも接着している。従って、芯線の先端において、接着剤は、接着膜と、芯線の先端面との双方に接した状態となるので安定して保持され、芯線の先端面に付着した接着剤の減少を抑制できる。これにより、芯線の先端の防食効果を向上できる。
【0016】
第4の態様に係る発明によれば、接着膜の一部が芯線の先端部分から絶縁被覆とは反対側にはみ出している。接着膜の当該一部は、芯線の先端面側に曲がっている。従って、芯線の先端において、接着剤は、接着膜の曲がった部分と、芯線の先端面との双方に挟まれた状態となるのでさらに安定して保持され、芯線の先端面に付着した接着剤の減少をさらに抑制できる。これにより、芯線の先端の防食効果をさらに向上できる。
【0017】
第5の態様に係る発明によれば、芯線の露出部を覆うように露出部に接着剤が塗布され、端子の底部の外側面を避けて芯線の露出部のうち当該底部から離れる方向を向いている上面露出部を覆うように上面露出部への接着をなされ得る大きさの接着膜が、接着剤の上に当該接着が可能な配置で載せられる。そして、芯線の上面露出部と接着膜との間に存在する接着剤の量と、端子の底部の外側面に付着している接着剤の量とが減らされる。従って、端子の底部の外側面への接着剤と接着膜との付着が抑制され、芯線の露出部が接着剤によって覆われる。また、上面露出部と接着膜とに挟まれる接着剤の膜厚を抑制することができる。これにより、製造される端子付電線の芯線の露出部を防食しつつ、端子付電線の太さの増大を抑制できる。
【0018】
第6の態様に係る発明によれば、芯線の先端部分は、端子の芯線圧着片から絶縁被覆とは反対側にはみ出しており、接着膜の一部が芯線の先端部分から絶縁被覆とは反対側にはみ出すように、接着剤の上に載せられる。従って、芯線の先端において、接着剤は、接着膜の一部と、芯線の先端面との双方に接した状態となるので安定して保持され、芯線の先端面に付着した接着剤の減少を抑制できる。これにより、芯線の先端の防食効果を向上できる。
【0019】
第7の態様に係る発明によれば、接着膜の周りの雰囲気が、端子の底部に対して芯線の露出部とは反対側から吸引されて、接着膜が芯線の上面露出部に押しつけられることによって上面露出部と接着膜との間に存在する接着剤の量が減らされる。従って、芯線の露出部と接着膜との間の接着剤の膜厚をより効率的に減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る端子付電線及びその製造方法について説明する。
【0022】
<端子付電線>
まず製造対象となる実施形態に係る端子付電線について
図1乃至
図4を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態に係る端子付電線10を示す概略側面図である。
図2は、端子付電線10を示す概略平面図である。
図3は、端子付電線10のA1−A1切断面における断面図である。
図4は、端子20を示す概略斜視図である。
【0023】
この端子付電線10は、電線12と、端子20と、接着剤18、フィルム19とを備える。
【0024】
電線12は、芯線13と、芯線13の端部13aを避けて芯線13の外周を覆う被覆(「絶縁被覆」)14とを備える。芯線13は、線状の導体であり、ここでは、複数の素線が撚り合わされることによって芯線13が形成されている。被覆14は、樹脂等の絶縁材料によって形成されている。被覆14は、例えば、芯線13の周りに軟化した樹脂を押出被覆等することによって形成される。
【0025】
また、電線12の端部では、所定長の被覆14が芯線13から皮剥されている。これにより、電線12の端部に、芯線13が所定長に亘って露出する端部13aが設けられる。
【0026】
端子(「金属端子」)20は、導電性板材である金属板材をプレス加工等することにより形成された部材であり、相手側の電気的接続要素としての相手側導体Cと直接接触する相手側接続部28とその相手側接続部28と繋がる電線接続部22とを備える。
【0027】
電線接続部22は、先端側連結部23、芯線圧着部24、中間連結部25及び被覆圧着部26を備える。これらの先端側連結部23、芯線圧着部24、中間連結部25及び被覆圧着部26は、直線方向に沿って一列に並んで形成されている。なお、本実施形態では、本端子20において、相手側接続部28側を端子20の先端側、電線接続部22側を端子20の基端側として説明する。
【0028】
被覆圧着部26は、加締められることにより、電線12の被覆14の端部に圧着される部分である。被覆圧着部26は、底板部26aと、その底板部26aの両側に立設されて対向する一対の被覆圧着片26bとを備えている。
図3に示す例では、一対の被覆圧着片26bは、底板部26aに垂直に立設されているが、必ずしもその必要はない。例えば、一対の被覆圧着片26bのうち本端子20の先端側の縁部は、各被覆圧着片26bの立設方向先端側に向けて端子20の基端側に傾斜する形状に形成されていることも考えられる。
【0029】
中間連結部25は、被覆圧着部26と芯線圧着部24とを繋ぐ部分である。中間連結部25は、底板部25aと、その底板部25aの両側に立設されて対向する一対の側壁部25bとを備える。
【0030】
芯線圧着部24は、加締められることにより、芯線13の端部13aに圧着される部分である。芯線圧着部24は、底板部24aと、その底板部24aの両側に立設されて対向する一対の芯線圧着片24bとを備える。
【0031】
なお、本実施形態では、一対の芯線圧着片24bが対向する方向が端子20の幅方向であるとして説明する。また、底板部24aに対して一対の芯線圧着片24bが立設された方向が端子20の高さ方向であるとして説明する。また、端子20の幅方向および高さ方向の双方に直交する方向(先端側連結部23、芯線圧着部24、中間連結部25及び被覆圧着部26が一列に並ぶ方向)が端子20の長さ方向であるとして説明する。
【0032】
先端側連結部23は、芯線圧着部24と相手側接続部28とを繋ぐ部分である。先端側連結部23は、底板部23aと、その底板部23aの両側に立設されて対向する一対の側壁部23bとを備える。
【0033】
電線接続部22における各底板部23a、24a、25a、26aは、全体として板状に連なる形状に形成されており、全体として電線接続部22の底部22a、すなわち端子20の底部20aの一部を成している。内側面20bは、底部20aの一方の主面である。内側面20bのうち電線接続部22の底部22aに対応する部分には、端子20に圧着される電線12が載せられる。外側面20cは、底部20aの他方の主面である。また、電線接続部22における幅方向の一方の側の側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bは、全体として板状に連なる形状に形成されている。同様に、電線接続部22における幅方向の他方の側の側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bも、全体として板状に連なる形状に形成されている。
【0034】
また、電線12に対して加締められる(曲げられる)部分である被覆圧着部26の被覆圧着片26b及び芯線圧着部24の芯線圧着片24bは、中間連結部25及び先端側連結部23の各々の側壁部25b、23bよりも高さ方向において長く形成されている。被覆圧着片26b、芯線圧着片24bが加締められる前の状態において、電線接続部22における幅方向の一方の側の側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bの立設方向先端と、当該幅方向の他方の側の側壁部23b、芯線圧着片24b、側壁部25b、被覆圧着片26bの立設方向先端とは、電線接続部22の底部22aと略同じサイズの開口22dを形成している。
【0035】
また、被覆圧着片26b、芯線圧着片24bは、底板部26a、24aから端子20の高さ方向に沿って同じ側に突出している。底板部26a、24aは、それぞれ、電線接続部22の底部22aの一部、すなわち端子20の底部20aの一部である。芯線圧着片24bは、芯線13のうち被覆14から露出している端部13aに対して圧着されている。
【0036】
また、相手側接続部28は、相手側の電気的接続要素としての相手側導体Cと直接接触し、相手側導体Cに接続される部分(端子接続部)である。ここでは、相手側接続部28は、相手側端子C1が嵌め入れられる孔である端子挿入孔28hが形成された筒状の部分である。本実施形態では、相手側接続部28は、角筒状に形成されており、内部に相手側端子C1と接触して弾性変形する接触片29が設けられている。
【0037】
ここでは、相手側接続部28が筒形状の端子形状(いわゆるメス端子形状)に形成された例で説明するが、相手側接続部28は、細長棒状又は細長板状の端子形状(いわゆるオス端子形状)を含む形状に形成されていてもよい。また、相手側接続部28は、ボルト締め可能な形状、つまり平板状の本体部に貫通孔が形成された形状に形成されていてもよい。
【0038】
端子20は次のようにして電線12の端部に接続されている。すなわち、被覆14の端部が被覆圧着部26における一対の被覆圧着片26bの間に位置し、芯線13の端部13aが芯線圧着部24における一対の芯線圧着片24bの間に位置するように端子20に対して電線12が配置される。この状態で、被覆圧着部26の被覆圧着片26bは、底板部26a上の被覆14側(内側)へ曲げられる(加締められる)。
【0039】
さらに、芯線圧着部24の芯線圧着片24bは、底板部24a上の端部13a側(内側)へ曲げられる(加締められる)。これにより、被覆圧着部26において、底板部26aと2つの被覆圧着片26bとが被覆14の端部に圧着された状態でこれを保持し、芯線圧着部24において、底板部24aと2つの芯線圧着片24bとが端部13aに圧着された状態でこれを保持する。この際、被覆14の先端側縁部は、中間連結部25の位置に位置し、一部が側壁部25bの間から露出している。同様に、芯線13の端部13aの先端側縁部は、先端側連結部23の位置に位置し、一部が側壁部23bの間から露出している。
【0040】
ここで、電線12の芯線13(素線)と、端子20とは、互いに標準電極電位(平衡電極電位)が異なる異種の金属によって構成されている。例えば、芯線13は、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金によって構成されている。一方、端子20は、銅若しくは銅を主成分とする銅合金(黄銅等)によって構成された部材、あるいはそれらの部材に錫(Sn)メッキ若しくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された部材である。従って、芯線13と端子20との接続部分では、異種金属が接触した状態となっており、この部分に塩水等の電解液が付着すると、異種金属接触腐食が発生し得る。
【0041】
また、端子20と電線12との接続部分では、芯線13の端部13aは次の各部で外部に露出している。すなわち、芯線圧着部24と被覆圧着部26との間で、端部13aの基端部が露出している。また、芯線圧着部24と相手側接続部28との間で、端部13aの先端部が露出している。さらに、芯線圧着部24の一対の芯線圧着片24bが端部13aに加締められた状態で、一対の芯線圧着片24bの突出方向における先端部間に隙間が生じ得るため、この一対の芯線圧着片24bの間で端部13aの中間部分が露出し得る。
【0042】
接着剤(「樹脂層」)18は、端子20と電線12との接続部分に供給された流動状態(未硬化状態)の接着剤(「防食剤」)18B(
図12、
図13参照)が形成する被膜が硬化した(粘度が高くなった)ものである。接着剤18(接着剤18B)は、端子20の底部20aの外側面20cを避けて芯線13の端部13aのうち露出部QAを覆っている。これにより、露出部QAに防食処理がされている。
【0043】
芯線13の露出部QAは、芯線13の被覆されていない端部13aのうち端子20(より詳細には、電線接続部22)から露出している部分である。具体的には、露出部QAは、芯線13の端部13aのうち芯線圧着部24に対して被覆圧着部26側に露出する基端側部分Q1と、端部13aのうち一対の芯線圧着片24bの立設方向の先端部同士の間に露出する部分Q2と、端部13aのうち芯線圧着部24に対して被覆圧着部26とは反対側に露出する先端側部分Q3とを合わせた部分である。
【0044】
すなわち、基端側部分Q1は、芯線圧着部24と、被覆14の先端との間にある芯線13の外周のうち中間連結部25と接触していない部分である。一対の芯線圧着片24bの突出方向における先端部間に隙間が生じない場合は、部分Q2も生じない。芯線13の先端部分(先端側縁部)は、端子20の芯線圧着片24bから被覆14とは反対側にはみ出しており、先端側部分Q3は、芯線13の先端部分の外周面のうち先端側連結部23と接触していない部分と、芯線13の先端面S1である。
【0045】
露出部QAは、上述のように各部分Q1、Q2、Q3を合せた部分である。芯線の断面形状は略円形若しくは略楕円形であることから、露出部QAは、電線接続部22の底部22aを向いた下面露出部QLと、底部22a(20a)と反対方向を向いた上面露出部QUとを合せた部分でもある。上面露出部QUは、換言すれば、露出部QAのうち底部22a(20a)から離れる方向を向いている部分である。さらに換言すれば、上面露出部QUは、露出部QAのうち芯線13の端部13aに対して底部22a(20a)とは反対側から見て露出している部分である。
【0046】
接着剤18は、接着対象領域R1を覆い、接着対象領域R1に接着した状態で硬化している。接着対象領域R1は、少なくとも露出部QAを含んでいる。接着対象領域R1が露出部QAよりも広い領域であってもよい。
【0047】
図1、
図2の例では、接着対象領域R1は、露出部QAの他に、端子20の長さ方向における一対の側壁部23bの基端側部分のうち立設方向先端側部分をさらに含む。また、接着対象領域R1は、一対の芯線圧着片24bの立設方向先端側部分(一対の芯線圧着片24bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)と、中間連結部25の一対の側壁部25bのうち立設方向先端側部分(一対の側壁部25bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)をさらに含んでもよい。また、接着対象領域R1は、被覆14の先端側縁部と、端子20の長さ方向における一対の被覆圧着片26bの先端側部分のうち立設方向先端側部分(一対の被覆圧着片26bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)をさらに含んでもよい。また、接着対象領域R1は、端子20(電線接続部22)の底部20a(22a)を含まない。なお、接着対象領域R1は、通常、後述する塗布対象領域R2に含まれ、塗布対象領域R2よりも小さい領域となる。
【0048】
図3に例として示される先端側連結部23のように、芯線圧着部24、被覆圧着部26が加締められることにより端子20が電線12に圧着された後においても、特に、先端側連結部23と、中間連結部25とは、芯線圧着部24等が加締められる前の形状を略維持する。すなわち、端子20が電線12に圧着された場合においても、先端側連結部23(中間連結部25)の側壁部23b(25b)は、底板部23a(25a)に対して略垂直に立設される。
【0049】
一方、芯線13の断面形状は丸みを帯びている。このため、露出部QAのうち、端子20の先端側連結部23(中間連結部25)に位置する先端側部分Q3(基端側部分Q1)と、先端側連結部23(中間連結部25)との間には、隙間が維持される。
【0050】
芯線13の端部13aは、電線接続部22の底部22aとも接触するため、この接触部分においても異種金属接触腐食が発生し得る。そこで、当該隙間にも流動状態の接着剤18Bが入り込んで硬化し、接着剤18となっている。また、芯線13を構成する素線同士の隙間にも流動状態の接着剤18Bが浸透して硬化し、接着剤18となっている。
【0051】
フィルム(「接着膜」とも称する)19は、接着剤18によって、端子20の底部20aの外側面20cを避けて芯線13の露出部QAの上面露出部QUに接着されている。このことによっても、露出部QAに防食処理がされている。接着剤18は、好ましくは、フィルム19が上面露出部QUに沿った形状となるようにフィルム19と上面露出部QUとを接着している。なお、フィルム19の材質は、合成樹脂に限定されない。
【0052】
図1〜
図3に示される例では、上述のように、接着剤18は、接着対象領域R1に接着している。接着対象領域R1は、少なくとも露出部QAを含んでいる。フィルム19は、当該接着剤18によって、接着対象領域R1のうち上面露出部QUに対応した部分に接着されているとともに、接着対象領域R1のうち一対の側壁部23b、一対の芯線圧着片24b、一対の側壁部25b、一対の被覆圧着片26b、および被覆14の端部に対応した部分にも接着されている。電線12と端子20との接続部分のうちフィルム19が接着されている領域は被覆対象領域R3である。
【0053】
フィルム19の一部は、好ましくは、芯線13の先端部分から被覆14とは反対側にはみ出している。接着剤18のうち芯線13の先端面S1を覆う部分は、フィルム19の当該一部にも接着している。また、フィルム19の当該一部は、好ましくは、芯線13の先端面S1側に曲がっている。
【0054】
<端子付電線の製造工程>
図5は、端子付電線10の製造工程を示すフローチャートである。
図5に示されるように、端子付電線10が製造される場合は、先ず、電線12の端部に端子20が接続された端子付電線10A(
図6、
図7参照)が準備される(ステップS10)。
【0055】
具体的には、電線12と端子20とがそれぞれ用意される。そして、電線12の被覆14の端部が、端子20の被覆圧着部26における一対の被覆圧着片26bの間に位置し、芯線13の端部13aが芯線圧着部24における一対の芯線圧着片24bの間に位置するように端子20に対して電線12が配置される。この状態で、被覆圧着部26の被覆圧着片26bは、底板部26a上の被覆14側(内側)へ曲げられる(加締められる)とともに、芯線圧着部24の芯線圧着片24bは、底板部24a上の端部13a側(内側)へ曲げられる(加締められる)。
【0056】
これにより、被覆圧着部26において、底板部26aと2つの被覆圧着片26bとが被覆14の端部に圧着された状態でこれを保持し、芯線圧着部24において、底板部24aと2つの芯線圧着片24bとが端部13aに圧着された状態でこれを保持する。これにより、防食処理が施されていない端子付電線10Aが製造される。端子付電線10Aにおいて、被覆14の先端側縁部は、中間連結部25の位置に位置し、一部が側壁部25bの間から露出している。同様に、芯線13の端部13aの先端側縁部は、先端側連結部23の位置に位置し、一部が側壁部23bの間から露出している。
【0057】
芯線13は複数の素線の束であり、芯線13の端部13aのうち先端部分が芯線圧着部24から端子20の先端側に出ている。芯線圧着部24が端部13aに圧着すると、圧着された部分における各素線は芯線圧着部24によって芯線13の中心方向に押しつけられ、隣接する素線同士は密着する。密着させられた各素線には、互いに離れる方向に反力が作用する。芯線13の先端部分は、先端部分の径方向外側への拡がりを規制されていない。このため、芯線13の先端部分の外周近傍の各素線は、芯線13の径方向外側へ曲げられる。これにより、芯線13の先端部分の径、すなわち先端部分を構成する素線束の径は、芯線13の先端面S1に向かって大きくなる。先端面S1を構成する各素線のうち、特に先端面S1の周縁部分を構成する各素線の間には、大きな好きな隙間が生じる。
【0058】
次に、端子付電線10Aに対して接着剤18Bの塗布が行われる(
図5のステップS20)。より詳細には、芯線13の端部13aのうち端子20から露出している露出部QAを覆うように、流動状態の接着剤18Bが露出部QAに塗布される。
図6(
図7)は、接着剤18Bが、露出部QAを含む塗布対象領域R2を覆うように塗布された状態を示す概略側面図(概略平面図)である。接着剤18Bは、例えば、ディスペンサーなどによって複数の液滴として塗布対象領域R2に順次に供給され、塗布対象領域R2の周縁部へ拡がり、塗布対象領域R2に未硬化状態の防食被膜を形成する。
図6の塗布対象領域R2は、
図1の接着対象領域R1を含み、接着対象領域R1よりも大きい。接着対象領域R1の外部に塗布されている接着剤18Bは、後述するステップS40において、その量が減らされるので、被覆対象領域R3の範囲、および被覆対象領域R3に塗布される接着剤18Bの膜厚は、厳密に設定される必要は無い。塗布対象領域R2は、端子20(電線接続部22)の底部20a(22a)の少なくとも一部を含んでいてもよいが、塗布対象領域R2は、底部20a(22a)を含まないことが好ましい。
【0059】
接着剤18Bとしては、電線12の内部の素線間に浸透して、浸透した場所においても硬化可能な接着剤が採用される。接着剤18Bとして、例えば、湿気硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤、主剤と硬化剤とからなる2液型接着剤などが採用される。湿気硬化型接着剤として、例えば、シリコ−ンやシアノアクリレート等が採用される。シリコーンに添加剤としてシランカップリング剤が添加されてもよい。嫌気硬化型接着剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等アクリレートなどの有機過酸化物が採用される。接着剤18Bとしてエポキシ等を主成分とするカチオン硬化性接着剤が用いられてもよい。
【0060】
接着剤18Bの塗布が行われた後に、塗布されている接着剤18Bの上に、フィルム19が露出部QAのうち上面露出部QUを覆うように載置される(
図5のステップS30)。
図8(
図9)は、フィルム19が、上面露出部QUを含む接着対象領域を覆うように接着剤18B上に載置された状態を示す概略側面図(概略平面図)である。
図8に示されるフィルム19は、端子20の幅方向の中央を通り、底部20aに垂直な切断面における断面によって示されている。
【0061】
ここで、上述のように先端面S1を構成する各素線のうち、特に先端面S1の周縁部分を構成する各素線の間には、大きな好きな隙間が生じる。このため、接着剤18Bの粘度が低い場合は、接着剤18Bは先端面S1、特に先端面S1の周縁部分を構成する各素線の先端に付着しにくい。このため、当該各素線の先端が接着剤18Bによって覆われず、露出してしまうおそれがある。
【0062】
一方、接着剤18Bの粘度が高い場合は、先端面S1において各素線の先端が接着剤18Bから露出するおそれは低下するが、上面露出部QUにおいては、接着剤18Bが形成する膜が厚くなりすぎて、製造される端子付電線10とコネクタハウジングとの間のクリアランスが不足するおそれがある。
【0063】
そこで、上面露出部QUにおいて接着剤18Bが形成する膜が厚くなりすぎず、かつ、芯線13の先端面S1において素線の先端が接着剤18Bから露出しないようにするために、塗布された接着剤18B上にフィルム19が載置される。
【0064】
製造された端子付電線10において、硬化した接着剤18は、接着対象領域R1(
図1、
図2)に接着している。端子付電線10において、フィルム19は、当該接着剤18と略重なり合うように当該接着剤18によって接着されている。より詳細には、フィルム19は、電線12と端子20との接続部分における被覆対象領域R3との間に接着剤18を挟んだ状態で、接着剤18によって被覆対象領域R3に接着される。
【0065】
被覆対象領域R3は、接着対象領域R1のうち上面露出部QUに対応した部分と、接着対象領域R1のうち一対の側壁部23b、一対の芯線圧着片24b、一対の側壁部25b、一対の被覆圧着片26b、および被覆14の端部に対応した部分からなる。被覆対象領域R3は、端子20(電線接続部22)の底部20a(22a)を含まない。
【0066】
図1〜
図3、
図12、
図13に示されるように、被覆対象領域R3は、少なくとも露出部QAの上面露出部QUを含む。被覆対象領域R3は、他に、端子20の長さ方向における一対の側壁部23bの基端側部分のうち立設方向先端側部分をさらに含んでもよい。また、被覆対象領域R3は、好ましくは、一対の芯線圧着片24bの立設方向先端側部分(一対の芯線圧着片24bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)と、中間連結部25の一対の側壁部25bのうち立設方向先端側部分(一対の側壁部25bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)を含んでもよい。被覆対象領域R3は、被覆14の先端側縁部と、端子20の長さ方向における一対の被覆圧着片26bの先端側部分のうち立設方向先端側部分(一対の被覆圧着片26bのうち底部22aの近傍部分を除く部分)を含んでもよい。
【0067】
フィルム19は、接着剤18によって被覆対象領域R3に接着されるため、被覆対象領域R3と重なる大きさを有している。すなわち、フィルム19は、上面露出部QUへの接着を、端子20の底部20aの外側面20cを避けて芯線13の露出部QAのうち上面露出部QUを覆う状態で、なされ得る形状および大きさを有している。また、当該ステップS30において、塗布されている接着剤18Bの上にフィルム19が載置される際には、フィルム19は、被覆対象領域R3に重なり合って接着され得るように配置される。フィルム19は、例えば、作業者がシート状のフィルムを上記の形状および大きさに切断することによって用意され、作業者によって塗布されている接着剤18Bの上に載置される。
【0068】
芯線13の先端部分は、端子20の芯線圧着片24bから被覆14とは反対側にはみ出している。フィルム19は、好ましくは、芯線13の先端部分から被覆14とは反対側にはみ出すように、接着剤18Bの上にフィルム19を載置される。
【0069】
フィルム19としては、例えば、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデンなどから製造されるフィルムが採用される。また、フィルム19の取扱いの容易さと、端子付電線10とコネクタハウジングとの間のクリアランス不足の防止とを考慮して、フィルム19の厚さは、好ましくは、例えば、10μm〜40μmの範囲に設定される。
【0070】
フィルムの載置が完了すると、芯線13の露出部QAとフィルム19との間に存在する接着剤18Bの量と、端子20の底部20aの外側面20cに付着している接着剤18Bの量とを減少させる減少処理が行われる(
図5のステップS40)。
図10(
図11)は、フィルム19が載置された端子付電線10Aに対して当該減少処理が行われている状態を示す概略側面図(概略平面図)である。
図12(
図13)は、
図10、
図11に示される端子付電線10Aに対して当該減少処理が施されて端子付電線10が製造される状態を示す概略側面図(概略平面図)である。
図10、
図12に示されるフィルム19は、端子20の幅方向の中央を通り、底部20aに垂直な切断面における断面によって示されている。また、
図12においては、接着剤18も当該切断面における断面によって示されている。
【0071】
図10、
図11に示されるように、当該減少処理は、具体的には、例えば、工場の真空排気設備(不図示)に接続された吸引装置70などを用いて行われる。吸引装置(「減圧装置」)70は、電線12と端子20との接続部分よりも大きな径の円筒状の吸引口を含んでいる。吸引装置70は、吸引口の開口が端子20の底部20aに対向するように、底部20aに対して芯線13の露出部QAとは反対側に設けられる。
【0072】
図10、
図13に示されるように、吸引装置70の吸引口内が減圧されると、端子付電線10Aの周囲には、雰囲気の気流99が生ずる。当該当該吸引口は、フィルム19の周りの雰囲気を気流99として吸引する。これにより、端子20の幅方向におけるフィルム19の両端部は、吸引装置70側に引っ張られる。そして、フィルム19は、芯線13の上面露出部QUに押しつけられる。この結果、上面露出部QUとフィルム19との間に存在する接着剤18Bは、フィルム19によってフィルム19の当該両端部から外部に排出されて吸引装置70に吸引される。これにより、接着剤18Bの量が減少し、接着剤18Bが形成する膜の厚さが薄くなる。そして、接着剤18Bは、フィルム19が芯線13の上面露出部QUに沿った形状となるようにフィルム19と上面露出部QUとを接着する。また、端子20の底部20aの外側面20cに付着している接着剤18Bなどの、接着剤18Bのうちフィルム19によって覆われていないものも、吸引装置70により吸引される。吸引装置70によって吸引された接着剤18Bは、吸引装置70の底部に接続されたドレイン管(不図示)によって外部に排出される。
【0073】
芯線13は、複数の素線が束ねられることから、その端部13aの断面形状は、通常、略円形または略楕円形となり、端部13aは、先端側連結部23(中間連結部25)の一対の側壁部23b(25b)の突設方向先端側に向けて凸の外周形状を有する。従って、露出部QAの上面露出部QUのうち一対の側壁部23b(25b)の間に露出している部分が、一対の側壁部23b(25b)よりも突設方向先端側に突出していれば上面露出部QUとフィルム19との間に存在する接着剤18Bの排出が容易となるとともに、フィルム19が芯線13の上面露出部QUに沿った形状になり易くなる。
【0074】
接着剤18Bの当該減少処理は、例えば、フィルム19の上部から気流をフィルム19に吹き付けてフィルム19を上面露出部QUに押しつけることによって行われてもよいし、当該気流の吹き付けと、吸引装置70による吸引とが同時に行われてもよい。
【0075】
接着剤18Bは、ステップS40の減少処理によって、その量が減少された後において、接着剤は未硬化状態である。そこで、接着剤の硬化処理が行われる(
図5のステップS50)。例えば、その硬化方法に応じた放置による硬化処理などを施される。これにより接着剤18Bは、硬化して接着剤18となり、端子付電線10が製造される。
【0076】
上記のように構成された本実施形態に係る端子付電線によれば、端子20の底部20aの外側面を避けて電線12の芯線13の露出部QAを覆っている接着剤18と、接着剤18によって、芯線の露出部のうち端子20の底部20aから離れる方向を向いている上面露出部QUに、底部20aの外側面を避けて接着されているフィルムとを備える。従って、端子20の底部20aの外側面への接着剤18Bとフィルム19との付着が抑制され、芯線13の露出部QAが接着剤18Bによって覆われる。また、上面露出部QUは、フィルム19に覆われるので、上面露出部QUの外部への露出を抑制しつつ、上面露出部QUとフィルム19とに挟まれる接着剤18の量を減らすことができる。これにより、芯線13の露出部QAを防食しつつ、端子付電線の太さの増大を抑制できる。
【0077】
また、上記のように構成された本実施形態に係る端子付電線によれば、接着剤18は、フィルム19が芯線13の上面露出部QUに沿った形状となるようにフィルム19と上面露出部QUとを接着している。従って、上面露出部QUとフィルム19とに挟まれる接着剤18の量をさらに減らすことができる。
【0078】
また、上記のように構成された本実施形態に係る端子付電線によれば、芯線13の先端部分は、端子20の芯線圧着片24bから被覆14とは反対側にはみ出しており、フィルム19の一部が芯線13の先端部分から被覆14とは反対側にはみ出しており、接着剤18のうち芯線13の先端面S1を覆う部分は、フィルム19の当該一部にも接着している。従って、芯線13の先端において、接着剤18Bは、フィルム19と、芯線13の先端面S1との双方に接した状態となるので安定して保持され、芯線13の先端面S1に付着した接着剤の減少を抑制できる。これにより、芯線13の先端の防食効果を向上できる。
【0079】
また、上記のように構成された本実施形態に係る端子付電線によれば、フィルム19の一部が芯線13の先端部分から被覆14とは反対側にはみ出している。フィルム19の当該一部は、芯線13の先端面S1側に曲がっている。従って、芯線13の先端において、接着剤18は、フィルム19の曲がった部分と、芯線13の先端面S1との双方に挟まれた状態となるのでさらに安定して保持され、芯線13の先端面S1に付着した接着剤の減少をさらに抑制できる。これにより、芯線13の先端の防食効果をさらに向上できる。
【0080】
また、上記のような本実施形態に係る端子付電線の製造方法によれば、芯線13の露出部QAを覆うように露出部QAに接着剤18Bが塗布され、端子20の底部20aの外側面を避けて芯線13の露出部QAのうち底部20aから離れる方向を向いている上面露出部QUを覆うように上面露出部QUへの接着をなされ得る大きさのフィルム19が、接着剤18Bの上に当該接着が可能な配置で載せられる。そして、芯線13の上面露出部QUとフィルム19との間に存在する接着剤18Bの量と、端子20の底部20aの外側面20cに付着している接着剤18Bの量とが減らされる。従って、端子20の底部20aの外側面への接着剤18Bとフィルム19との付着が抑制され、芯線13の露出部QAが接着剤18Bによって覆われる。また、上面露出部QUとフィルム19とに挟まれる接着剤18Bの膜厚を抑制することができる。これにより、製造される端子付電線の芯線13の露出部QAを防食しつつ、端子付電線の太さの増大を抑制できる。
【0081】
また、上記のような本実施形態に係る端子付電線の製造方法によれば、芯線13の先端部分は、被覆14とは反対側にはみ出しており、フィルム19の一部が芯線13の先端部分から被覆14とは反対側にはみ出すように、接着剤18Bの上に載せられる。従って、芯線13の先端において、接着剤18Bは、フィルム19の一部と、芯線13の先端面S1との双方に接した状態となるので安定して保持され、芯線13の先端面S1に付着した接着剤の減少を抑制できる。これにより、芯線13の先端の防食効果を向上できる。
【0082】
また、上記のような本実施形態に係る端子付電線の製造方法によれば、フィルム19の周りの雰囲気が、端子20の底部20aに対して芯線13の露出部QAとは反対側から吸引されて、フィルム19が芯線13の上面露出部QUに押しつけられることによって上面露出部QUとフィルム19との間に存在する接着剤18Bの量が減らされる。従って、芯線13の露出部QAとフィルム19との間の接着剤18Bの膜厚をより効率的に減らすことができる。
【0083】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。