(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイヤのリード部を仮止めするための仮止め片が、前記接続片とは別に、前記継線用立上片の上端側に一体的に形成してある請求項1〜5のいずれかに記載のコイル装置。
前記ワイヤのリード部の先端と前記接続片とを接続するために、前記第1軸方向側面に対して交差する方向から、前記接続片と前記ワイヤのリード部の先端に向けて、レーザ光が照射される場合に、前記レーザ光が前記磁性コアに照射されることを遮蔽する前記遮蔽部材が、前記継線用立ち上げ片に一体に形成してある請求項1〜7のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、強固で確実なワイヤの継線処理が可能であり、しかも磁性コアへのダメージが少ないコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
コイルを形成するようにワイヤが巻回される巻芯部を持つ磁性コアと、
前記巻芯部の巻軸方向端部に形成してある鍔部の巻軸方向外側端面に取り付けられる端子電極と、を有するコイル装置であって、
前記端子電極は、
前記鍔部の巻軸方向外側端面に接触する取付片と、
前記取付片の長手方向の一端から、前記鍔部の第1軸方向側面に沿って一体的に立ち上げられる継線用立上片と、
前記継線用立上片の上端側に一体的に形成され、前記ワイヤのリード部がレーザ溶接により接続される溶接玉が形成された接続片と、を有し、
前記溶接玉と前記磁性コアとの間には、レーザ遮蔽部材が配置してある。
【0010】
本発明に係るコイル装置では、レーザ溶接により巻線用ワイヤのリード部と端子電極との接続を行っている。そのため、強固で確実なワイヤの継線処理が可能である。
【0011】
また本発明のコイル装置では、溶接玉が形成される予定の接続片と磁性コアとの間には、レーザ遮蔽部材が配置してあることから、レーザ溶接に際しては、そのレーザ光または反射光が、磁性コアには、照射されない。そのため、装置のコンパクト化を図って、接続片を磁性コアの近くに配置したとしても、レーザ溶接時のレーザー光やその反射により磁性コアがダメージを受けるおそれがなくなる。したがって、熱衝撃によるコアの破損、割れ、欠けなどが発生しなくなる。
【0012】
好ましくは、前記遮蔽部材が、前記溶接玉と前記磁性コアとの間の空間に保持してある。このように構成することで、前記溶接玉が作られる際のレーザ光の熱的影響を、磁性コアに伝達し難くなり、磁性コアのダメージをさらに低減することができる。
【0013】
好ましくは、前記遮蔽部材が、前記端子電極と一体に形成してある。このように構成することで、遮蔽部材を、別途準備する必要がなくなり、部品点数の削減に寄与する。なお、遮蔽部材は、セラミックや金属などで構成し、磁性コアの必要箇所のみに装着しても良く、あるいは一体成形しても良い。
【0014】
好ましくは、前記溶接玉から成るリード接続部が、前記鍔部の厚みの範囲内に形成してある。このような構成を採用することで、コイル装置のコンパクト化を実現することができる。
【0015】
好ましくは、前記ワイヤが巻回してある巻芯部の周囲が、外装樹脂で覆われている。外装樹脂で覆われることにより、コイル部を有効に保護することができると共に、ショート不良なども抑制することができる。また、外装樹脂は、磁性体含有樹脂で構成してあることが好ましい。このように構成することで、磁性体含有の外装樹脂が、磁場の通り道となり、コイル装置の磁気特性が向上する。
【0016】
好ましくは、前記ワイヤのリード部を仮止めするための仮止め片が、前記接続片とは別に、前記継線用立上片の上端側に一体的に形成してある。仮止め片を形成することで、レーザ溶接作業が容易になる。
【0017】
好ましくは、前記鍔部の第1軸方向側面には、前記継線用立上片に対向して前記接続片の位置決めを行う立上片対向平面と、前記立上片対向平面から内側に凹んで前記形成用立上片との間に隙間を形成する端子隙間用凹部とが形成してある。このように構成することで、端子電極の接続片は、磁性コアの鍔部に対して、良好に位置決めされ、ワイヤのリード端をレーザ照射により確実に端子電極に接続することができる。
【0018】
また、端子隙間用凹部により、ワイヤのリード端を端子電極の継線部にレーザ溶接する際の熱衝撃が緩和され、コアの破損、割れ、欠けなどを有効に防止することができる。また、鍔部の側面と継線用立ち上げ片との間に隙間があるために、端子電極に作用する外力が吸収され、外力によるワイヤの断線やコアの破損などを有効に防止することができる。さらに、鍔部の側面と端子電極の継線用立上片との間に隙間があるために、放熱性にも優れている。
【0019】
好ましくは、前記ワイヤのリード部の先端と前記接続片とを接続するために、前記第1軸方向側面に対して交差する方向から、前記接続片と前記ワイヤのリード部の先端に向けて、レーザ光が照射される場合に、前記レーザ光が前記磁性コアに照射されることを遮蔽する前記遮蔽部材が、前記継線用立ち上げ片に一体に形成してある。このように構成することで、遮蔽部材の形成が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1A〜
図1Fに示す本発明の一実施形態に係るコイル装置2は、たとえばチョークコイル、ノイズフィルタなどとして用いられ、特に好ましくは、車載用として用いられるコイル装置である。
【0022】
このコイル装置2は、
図2に示すように、磁性コアとしてのドラムコア20を有する。ドラムコア20を構成する磁性材料としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。ドラムコア20は、コイル部10を構成するワイヤ12が、コア20の巻軸方向に沿って巻回してある巻芯部30を有する。
【0023】
ワイヤ12が巻回してある巻芯部30の周囲は、外装樹脂15で覆われていることが好ましい。外装樹脂15で覆われることにより、コイル部10を有効に保護することができると共に、ショート不良なども抑制することができる。また、外装樹脂15は、磁性体含有樹脂で構成してあることが好ましい。このように構成することで、磁性体含有の外装樹脂15が、磁場の通り道となり、コイル装置2の磁気特性が向上する。外装樹脂15に含まれる磁性体としては、特に限定されないが、コア20を構成する磁性体粉と同様な磁性体粉、あるいはその他の磁性体粉が例示される。
【0024】
ワイヤ12としては、特に限定されず、たとえば銅などで構成される平角線、丸線、撚り線、リッツ線、編組線などの導電性芯線、あるいはこれらの導電性芯線を絶縁被覆してあるワイヤなどを用いることができる。具体的には、AIW(ポリイミドワイヤ)、UEW(ポリウレタンワイヤ)、UEW、USTCなどの公知の巻線を用いることができる。ワイヤ12の線径は、特に限定されず、たとえば0.1〜0.5mmである。
【0025】
巻芯部30の巻軸方向(Z軸方向)の両端部には、それぞれ第1鍔部40および第2鍔部50が一体的に形成してある。これらの第1鍔部40および第2鍔部50は、巻芯部30に対して、X−Y軸平面に突出している。なお、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸は、巻き軸の軸方向に一致している。
【0026】
巻芯部30の横断面(X−Y軸平面の断面)は、特に限定されず、正方形断面、長方形断面、円形断面、あるいは、その他の断面形状であっても良いが、本実施形態では、
図3に示すように、略円形状となっている。
【0027】
図2に示すように、第2鍔部50は、第2軸方向外側端面52と、その反対側に位置する第2軸方向内面53とを有する。第2軸方向内面53に、コイル部10のZ軸方向上端が位置するようになっている。なお、
図2では、ワイヤ12を巻芯部30の回りに二重巻きしてコイル部10が形成してあるが、巻き層数は、特に限定されず、2重巻以上に巻回してあっても良い。また、ワイヤ12の巻き方も特に限定されない。
【0028】
本実施形態では、
図1Fに示すように、第1鍔部40と第2鍔部50との平面形状が、相互に異なり、第2鍔部50の外形サイズが、第1鍔部40の外形サイズよりも大きい。第2鍔部50の具体的な平面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、
図1Eに示すように、全体として四角形状を有し、4つの角部に、それぞれR部54が形成してある。R部54は、
図5に示すドラムコア20の成形時に、第1鍔部40、第2鍔部50および巻芯部30と共に一体に形成されるが、一体成形後に、切削加工または研磨加工などにより形成されても良い。
【0029】
第2鍔部50の平面形状は、
図1Eに示すように、第2鍔部50の第2軸方向外側端面52からZ軸方向にドラムコア20を見た場合には、第1鍔部40は第2鍔部50の内側に位置して見えなくなっている形状である。
【0030】
図2に示すように、第1鍔部40は、巻軸方向外側端面42と、その反対側に位置する巻軸方向内面43とを有する。巻軸方向内面43に、コイル部10のZ軸方向下端が位置するようになっている。第1鍔部40の巻軸方向外側端面42におけるY軸方向の両端には、第1端子電極60および第2端子電極70が接着剤などにより接着してある。
【0031】
第1端子電極60および第2端子電極70は、それぞれX軸に対称な形状を有し、その詳細については後述するが、それらは、たとえばタフピッチ鋼、リン青銅、黄銅、鉄、ニッケルなどの導電性金属で構成してある。
【0032】
第1鍔部40の具体的な平面形状は、特に限定されないが、本実施形態では、
図1Fおよび
図4に示すように、X−Y軸平面において第2鍔部50と重心位置が略同じ(巻芯部30とも略同じ)形状である。しかも、この第1鍔部40は、4つの角部において、第2鍔部50の4つの角部に比較して大きく凹んでいる切り欠き44を有している形状である。
【0033】
図5に示すように、第1鍔部40のY軸方向の最大幅Ly1は、第2鍔部50のY軸方向の最大幅Ly2と略同一またはそれ以下であり、第1鍔部40におけるY軸方向の両側面40aは、第2鍔部50におけるY軸方向の両側面50aと略一致またはY軸方向に引っ込んでいる。
【0034】
また、第1鍔部40のX軸方向の最大幅Lx1は、第2鍔部50のX軸方向の最大幅Lx2と略同一またはそれ以下であり、第1鍔部40におけるX軸方向の両側面40bは、第2鍔部50におけるX軸方向の両側面50bに対して、Y軸方向の中央部以外は、切り欠き部44に対応する部分で、X軸方向に引っ込んでいる。
【0035】
図4に示すように、第1鍔部40におけるX軸方向の両側面40bには、Y軸方向の中央部においてX軸方向の外側に突出する台形状凸部40b1が形成してある。また、各凹部44には、立上片対向平面45a,45bまたは反対側平面46a,46bと、これらから内側に凹んでいる端子隙間用凹部47a,47bまたは反対側凹部48a,48bとが形成してある。平面45a,45b,46a,46bと、凹部47a,47b,48a,48bと、端子電極60,70との関係については後述する。
【0036】
図5および
図6に示すように、第1端子電極60および第2端子電極70は、それぞれX軸方向に細長い板状の取付片61,71を有する。これらの取付片61,71は、
図2に示すように、第1鍔部40の巻軸方向外側端面42のY軸方向両端に対して接着剤などによりそれぞれ接着される。取付片61,71が接着される第1鍔部40の外側端面42には、取付片61,71の形に合わせた端子取付溝が形成してあっても良い。
【0037】
端子取付溝の溝深さは、取付片61,71の各厚みよりも小さくしてあることが好ましく、取付片61,71の底面が、巻軸方向外側端面42よりも突き出ていることが好ましい。このようにすることで、コイル装置2の取付片61,71を、回路基板などの電極パターンに接続する際の実装作業が容易になる。
【0038】
図5および
図6に示すように、取付片61および取付片71のX軸方向の一端には、それぞれ継線用立上片62,72がZ軸方向に立ち上がるように一体に形成してあり、他端には、立上片が形成されていない。
【0039】
立上片62,72は、
図4に示すように、第1鍔部40の一方の側面40bに形成してある立上片対向平面45a,46aにそれぞれ接触可能になっていると共に、端子隙間用凹部47a,48aとの間で隙間を形成する。第1鍔部40の他方の側面40bに形成してある反対側平面45b,46bおよび反対側凹部47b,48bでは、端子電極60および70は何ら係合していない。
【0040】
立上片対向平面45aに継線用立上片62が接触することで、第1端子電極60は、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。第1端子電極60は、導電性金属で構成され、バネ性を有することが好ましい。なお、立上片対向平面45aと継線用立上片62との間には、多少の隙間があっても良い。
【0041】
また同様に、立上片対向平面46aに立上片72がそれぞれ接触することで、第2端子電極70は、第1鍔部40に対してX軸方向の位置決めが成される。第2端子電極70は、導電性金属で構成され、バネ性を有することが好ましい。なお、立上片対向平面46aと立上片72との間には、多少の隙間があっても良い。
【0042】
取付片61,71のX軸方向の一端に形成してある継線用立上片62,72のZ軸方向の上端には、継線部としての把持片64,74がそれぞれ一体に形成してある。これらの把持片64,74は、
図3に示すように、第1鍔部40の巻軸方向内面43と略面一(またはそれよりもZ軸方向下方)となるように立上片62,72に対して折り曲げて形成してある。
【0043】
図1Aに示すように、継線部としての把持片64は、仮止め片65と接続片66とから成る。仮止め片65は、接続片66に対して、Y軸方向の内側に位置し、第1鍔部40のX軸方向側面40bの中央に位置する台形状凸部40b1に近い位置に位置する。台形状凸部40b1と仮止め片65との間には、ワイヤ12のリード部12aを通すことができる隙間が形成してある。また、仮止め片65と接続片66との間には、X軸方向およびZ軸方向に伸びるスリット67が形成してある。スリット67のY軸方向幅は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0044】
仮止め片65は、ワイヤ12の一方の端であるリード部12aを、継線用立上片62との間で挟み込み、後述するリード部12aのレーザ溶接前に仮固定している。接続片66は、ワイヤ12の一方の端であるリード部12aを、継線用立上片62との間で挟み込み、しかも、そのY軸方向の外側に形成してあるリード接続部68aにて一体化され、リード部12aに電気的に接続してある。
【0045】
なお、
図5〜
図9に示すように、リード接続部68aが形成される前の接続片66の先端には、その基端部よりも幅が広い幅広部68が形成してあり、その部分が主としてリード接続部68aとなる。ただし、幅広部68は、必ずしも形成しなくとも良い。また、本実施形態では、仮止め片65のY軸方向幅と接続片66のY軸方向幅が略等しいが、ワイヤ12のリード部12aの線径などに応じて、異ならせても良い。
【0046】
また、同様に、把持片74には、仮止め片75と接続片76とが形成してある。仮止め片75と接続片76との間には、X軸およびZ軸方向に伸びるスリット77が形成してある。スリット77のY軸方向幅は、スリット67と同様であるが、必ずしも同一である必要はなく異なっていても良い。
【0047】
リード接合部78aが形成される前の接続片76の先端にも、その基端部よりも幅が広い幅広部78が形成してあり、その部分が主としてリード接続部78aとなる。ただし、幅広部78は、必ずしも形成しなくとも良い。また、本実施形態では、仮止め片75のY軸方向幅と接続片76のY軸方向幅が略等しいが、ワイヤ12のリード部12bの線径などに応じて、異ならせても良い。
【0048】
図4にも示すように、継線用立上片62のY軸方向の外側には、遮蔽部材としての遮蔽片63が一体に形成してある。遮蔽片63は、継線用立上片62と略同一のZ軸方向幅を有している。また、遮蔽片63のY軸方向の先端は、端子隙間用凹部47aに向けてX軸方向に曲折してあり、第1鍔部40のY軸方向の一方の側面40aと略面一となることが好ましい。後述するような遮蔽片63によるレーザ光の遮蔽効果と装置のコンパクト性とを両立させるためである。
【0049】
なお、遮蔽片63のY軸方向の先端は、第1鍔部40のY軸方向の側面40aよりもY軸方向の外側に多少突出していても良いし、Y軸方向の内側に多少引っ込んでいても良い。折り曲げられている遮蔽片63の先端は、第1鍔部40の端子隙間用凹部47aの中に入り込むが、第1鍔部40を含むドラムコア20には接触しないようになっている。
【0050】
継線用立上片72のY軸方向の外側にも、遮蔽片63と同様な遮蔽片73が一体に形成してある。遮蔽片73は、継線用立上片72と略同一のZ軸方向幅を有している。また、遮蔽片73のY軸方向の先端は、端子隙間用凹部48aに向けてX軸方向に曲折してあり、第1鍔部40のY軸方向の他方の側面40aと略面一となることが好ましい。後述するような遮蔽片73によるレーザ光の遮蔽効果と装置のコンパクト性とを両立させるためである。
【0051】
なお、遮蔽片73のY軸方向の先端は、第1鍔部40のY軸方向の側面40aよりもY軸方向の外側に多少突出していても良いし、Y軸方向の内側に多少引っ込んでいても良い。折り曲げられている遮蔽片73の先端は、第1鍔部40の端子隙間用凹部48aの中に入り込むが、第1鍔部40を含むドラムコア20には接触しないようになっている。
【0052】
図5および
図6に示すように、各端子電極60,70の取付片61,71には、それぞれY軸方向の外側端でX軸方向の途中位置に、フィレット形成片69,79が各々一体的に形成してある。フィレット形成片69,79は、第1鍔部40におけるY軸方向の両側面40aに形成してある嵌合凹部40a1にそれぞれ嵌合して接触するようになっている。なお、嵌合凹部40a1は、必ずしも設けなくても良い。また、フィレット形成片69,79のZ軸方向の立ち上げ高さは、第1鍔部40のZ軸方向厚みと略同一、またはそれよりも低いことが好ましい。
【0053】
次に、
図1A〜
図4に示すコイル装置2の製造方法について説明する。まず、
図5に示すドラムコア20を成形する。ドラムコア20の成形方法は、特に限定されないが、圧縮成形、CIM(セラミックインジェクションモールディング)成形、MIM(メタルインジェクションモールディング)成形などが考えられる。成形後に焼成されて焼結体となる。
【0054】
次に、ドラムコア20の第1鍔部40における巻軸方向外側端面42に、第1端子電極60および第2端子電極70を取り付ける。なお、第1端子電極60および第2端子電極70は、一枚の金属板(たとえば銅板)を打ち抜き成形および折り曲げ加工することで容易に成形が可能である。端子電極60および70をドラムコアに取り付けた後、またはその前に、
図5に示すドラムコア20の巻芯部30にワイヤ12を巻回してコイル部10を形成する。
【0055】
巻芯部30にコイル部10を形成した状態で、コイル部10を構成するワイヤの両端であるリード部12a,12bは、
図7に示すように、第1端子電極60の把持片64および第2端子電極70の把持片74のZ軸方向下に位置させる。その状態で、次に、
図8に示すように、仮止め片65および75のみを曲げて、各リード部12a,12bを、仮止め片65および75と立上片62,72との間で挟み込み、把持片64,74の下に仮固定する。
【0056】
その状態で、
図8に示すリード部12aおよび12bを、X軸方向の正面側から見れば、仮止め片65,75からY軸方向の外側に伸びるリード部が、接続片68により隠されないで見ることができる。
【0057】
その状態で、各仮止め片65,75から突出しているリード部12a,12bに向けて、X軸方向の正面側から被覆層剥離用レーザ光を照射すれば、リード部12a,12bを構成するワイヤの外周に形成してあるポリアミドイミドなどの被覆層を剥離することができる。
【0058】
レーザ光を照射したとしても、立上片62,72および遮蔽片63,73があるために、レーザ光は、ドラムコア20には照射されず、ドラムコアの劣化を防止することができる。また、リード部12a、12bは、仮止め片65,75で仮固定された状態でレーザ照射されるため、ワイヤの被覆層の剥離の影響は、仮止め片65,75までとなり、不必要な範囲で剥離層が除去されることも無い。なお、ワイヤ12として、被覆層を剥がす必要がないワイヤを用いている場合には、このようなレーザ照射による被覆層の剥離工程は不要となる。
【0059】
次に、
図9に示すように、接続片66,76(幅広部68,78含む)を折り曲げて、リード部12a,12bの先端部を挟み込み仮固定する。その状態では、リード部12a,12bの先端12a1,12b1は、幅広部68,78のY軸方向外側端よりも少しはみ出しており、第1鍔部40のY軸方向の側面40aよりもはみ出してもよい。
【0060】
その状態で、X軸方向の正面側から、リード部12a,12bの先端12a1,12b1と幅広部68、78の一部を含む照射範囲LB(たとえば円形の照射範囲)に向けて溶接用レーザ光を照射する。その結果、
図1Bに示すように、少なくともリード部12aの先端と接続片66(幅広部68含む)とが一体化されてリード接続部68aが形成される。同様に、少なくともリード部12bの先端と接続片76(幅広部78含む)とが一体化されてリード接続部78aが形成される。これらのリード接続部68a,78aのY軸方向外側端は、レーザ溶接の結果、第1鍔部40のY軸方向側面40aと略面一、または、それよりもY軸方向に引っ込むことになる。
【0061】
溶接用レーザ光を照射したとしても、立上片62,72および遮蔽片63,73があるために、レーザ光は、ドラムコア20には照射されず、ドラムコアの劣化を防止することができる。レーザ溶接に際しては、
図9に示すように、レーザ光が出射する方向から見て、リード部12a,12bの手前側に、幅広部68,78が位置することが好ましい。
【0062】
このように構成することで、レーザ光の照射により、リード部12a,12bの先端12a1,12b1がまず溶けてY軸方向の内側に縮み、幅広部68,78と一体化されて
図1Bに示す球形に近い溶接玉から成るリード接続部68a,78aを作りやすい。なお、溶接玉の外径は、特に限定されないが、好ましくは0.35〜0.45mmである。溶接玉から成るリード接合部68a,78aは、そのX軸方向の背後に位置する遮蔽片63,73および立上片62,72とは一体化されないで離れていることが好ましい。さらに好ましくは、遮蔽片3,73が、溶接玉から成るリード接合部68a,78aとコア20の第1鍔部40との間の空間に保持してある。ただし、これらは、多少接触していても良い。
【0063】
なお、図では、リード部12a,12bの先端と幅広部68,78とのみが一体化されてリード接続部68a,78aが形成されているように描いてある。レーザ照射のエネルギー量によっては、リード部12a,12bの先端と接続片66,76とが一体となって玉状のリード接続部68a,78aとなる場合もある。また、場合によっては、仮止め片65,75も、玉状のリード接続部68a,78aに、それぞれ一体化されてもよい。
【0064】
本実施形態に係るコイル装置2では、
図4に示すように、第1鍔部40のX軸方向の一方の側面40bには、端子電極60,70の立上片62,72に対向して継線部の位置決めを行う立上片対向平面45a,46aが形成してある。このため、端子電極60,70の継線部の一部である把持片64,74は、ドラムコアの第1鍔部40に対して、良好に位置決めされ、把持片におけるワイヤ12のリード部12a,12bをレーザ照射により確実に端子電極60,70に接続することができる。そのため、強固で確実なワイヤの継線処理が可能である。
【0065】
また、本実施形態に係るコイル装置2では、第1鍔部40の側面40bには、立上片対向平面45a,46aから内側に凹んで立上片62,72(遮蔽片63,73を含む)との間に隙間を形成する端子隙間用凹部47a,48aが、立上片対向平面45a,46aと共に形成してある。このため、ワイヤ12のリード部12a,12bを端子電極60,70の継線部にレーザ溶接する際の熱衝撃が緩和され、コア20の破損、割れ、欠けなどを有効に防止することができる。また、第1鍔部40の側面40bと端子電極の立上片62,72との間に隙間があるために、端子電極60,70に作用する外力が吸収され、外力によるワイヤ12の断線やコア20の破損などを有効に防止することができる。さらに、第1鍔部40の側面40bと端子電極の立上片62,72との間に隙間があるために、継線部の放熱性にも優れている。
【0066】
また本実施形態では、第2鍔部50の外形サイズが、第1鍔部40の外形サイズよりも大きいことで、第1鍔部40の角部に、端子電極60,70の立上片62,72を位置させるための凹部44(
図4参照)を作りやすくなる。
【0067】
すなわち、本実施形態では、鍔部40,50の大きさを維持してインダクタンスを低下させることなく、第2鍔部50に対する端子金具60,70の突出量を必要最小限にすることが可能であり、コイル装置の搬送途中において、端子金具60,70やリード接続部68a,78aが、実装装置などに衝突するおそれが少なくなる。
【0068】
また本実施形態では、把持片64,74には、スリット67,77が形成してある。スリット67,77が形成してあることで、放熱性が良好となる。また、仮止め片65,75と接続片66,76との間にスリット67,77があることで、溶接玉状のリード接続部68a,78aの大きさの制御が容易であり、接続に都合の良いサイズのリード接続部68a,78aを容易に形成することができる。
【0069】
さらに本実施形態では、レーザ溶接(1000°C以上の温度)、すなわち半田フィレットを形成するための温度(230〜280°C)よりも高い温度で、巻線用ワイヤ12のリード部12a,12bと端子電極60,70との接続を行っている。そのため、強固で確実なワイヤ12の継線処理が可能である。
【0070】
また本実施形態のコイル装置2では、取付片61,71のX軸方向の一方の端部にのみ、立上片62,72が形成してあり、他方の端部には、立上片が形成されていない。このため、従来技術に比較して、端子電極60,70のX軸方向に沿っての位置ズレを効果的に防止することができる。
【0071】
ちなみに従来では、他方の端部にも立上片が形成されて、その部分に半田フィレットが形成される。そして、レーザ溶接による接続部68a,78aのために立上片62,72には半田フィレットが形成されない。そのため、従来では、他方の端部に形成してある立上片に付着する半田フィレットによる外力のために、端子電極60,70と共にコイル装置2の全体を、回路基板に対してX軸方向に位置ずれさせるおそれがあった。
【0072】
これに対して、本実施形態では、取付片61,71のX軸方向の他方の端部にには、立上片が形成されていない。その代わりに、取付片61,71の長手方向(X軸方向)に交差する短手方向(Y軸方向)の一端から、第1鍔部40のY軸方向側面40aに沿って一体的に立ち上げられるフィレット形成片69,79に、実装時の半田フィレットが形成される。この半田フィレットにより、実装用回路基板(図示省略)と端子電極60,70とが強固に連結され、端子電極60,70のX軸方向に沿っての位置ズレを効果的に防止することができる。
【0073】
また、これらのフィレット形成片69,79を、各端子電極60および70に設けることで、次に示す作用効果も期待できる。すなわち、コイル装置2を、たとえば回路基板に実装する際に、各端子60および70の下面に付着しているハンダが、フィレット形成片69,79の外表面にも付着し、Z軸方向の上から見た場合に、第2鍔部50に隠れること無く、ハンダの付き具合を確認することができる。
【0074】
なお、第1鍔部40の巻方向外側端面42には、一対の端子電極60,70が装着されることから、端子電極のY方向の位置ズレは、一対の端子電極60,70にそれぞれ形成してあるフィレット形成片69,79に形成される半田フィレットの対向する接合力の相互作用により防止される。
【0075】
また本実施形態では、ワイヤ12のリード部12a,12bが接続片66,76に接続してあるリード接続部68a,78aが、第1鍔部40の厚みの範囲内に形成してある。このような構成を採用することで、コイル装置2のコンパクト化を実現することができる。
【0076】
さらに本実施形態では、フィレット形成片69,79の立ち上げ高さが、第1鍔部40の巻軸方向厚みよりも低い。このように構成することで、コイル装置2のコンパクト化を実現することができる。また、外装樹脂15がフィレット形成片69,79に付着するおそれが少なくなり、実装時の半田フィレットの形成を阻害しない。
【0077】
また、本実施形態では、第1鍔部40のY軸方向側面40aには、フィレット形成片69,79が入り込む嵌合凹部40a1が形成してある。フィレット形成片69,798嵌合凹部40a1に嵌合することで、端子電極60,70とコア20との位置決めが容易になる。また、外装樹脂15がフィレット形成片69,79に付着するおそれが少なくなり、実装時の半田フィレットの形成を阻害しない。
【0078】
フィレット形成片69,79の外面は、嵌合凹部40a1以外のY軸方向側面40aと面一、または嵌合凹部40a1以外のY軸方向側面40aよりも内側に引っ込んでいる。このように構成することで、実装前のコイル装置2のハンドリング特性が向上する。すなわち、フィレット形成片69,79のエッジ部が他の部品や装置に引っかかることが無く、また他の部品や装置を傷つけることも無い。
【0079】
図9に示すように、ワイヤ12のリード部12a,12bの先端12a1,12b1と接続片66,76の幅広部68,78とを接続するために、X軸方向からレーザ光LBが照射される。リード部12a,12bの先端12a1,12b1と接続片66,76の幅広部68,78との背後には、遮蔽片63,73が配置してある。そのため、レーザ光LBは、遮蔽片63,73がにより遮蔽される。
【0080】
そのため、装置のコンパクト化を図って、接続片66をコア20の近くに配置したとしても、レーザ溶接時のレーザー光やその反射によりコア20がダメージを受けるおそれがなくなる。したがって、熱衝撃によるコア20の破損、割れ、欠けなどが発生しなくなる。
【0081】
また、遮蔽片63,73が、リード接合部68a,78aとコア20の第1鍔部40との間の空間に保持してあることから、溶接玉が作られる際のレーザ光の熱的影響を、コア20に伝達し難くなり、コア20のダメージをさらに低減することができる。
【0082】
さらに、遮蔽片63、73が、端子電極60,70とそれぞれ一体に形成してあることから、遮蔽部材を、別途準備する必要がなくなり、部品点数の削減に寄与する。
【0083】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0084】
たとえば、本発明の遮蔽部材は、セラミックや金属などで構成し、コア20の必要箇所のみに装着しても良く、あるいは一体成形しても良い。
【0085】
上述した実施形態では、
図5および
図7に示すように、レーザ溶接前の段階では、仮止め片65,75と接続片68,78が開いており、その後に、
図8に示すように、仮止め片65,75を折り曲げ、さらにその後に、接続片68,78を折り曲げている。しかしながら、
図6に示すように、仮止め片65,75と接続片68,78は、最初から折り曲げてあっても良い。
【0086】
すなわち、少なくとも仮止め片65,75は、ワイヤ12のリード部12a,12bをZ軸方向下側から収容するようにZ軸方向の上側凸に予め曲げておいてもよい。接続片68,78に関しても同様である。
【0087】
また上述した実施形態の端子電極60および70において、ドラムコア20と接触する表面は、ドラムコアとの接着性を向上させるために、メッキ膜が形成されていないことが好ましいが、回路基板との半田接合面となる裏面には、半田との接合性を向上させるために、錫メッキが成されていても良い。