(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、ヒドロキシ置換芳香族化合物を用いて変性させて得られる、請求項1に記載のシアン酸エステル化合物。
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を更に含む、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す。)について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施形態のみに限定されない。
【0019】
本実施形態は、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化して得られるシアン酸エステル化合物、及び、該シアン酸エステル化合物を含んでなる硬化性樹脂組成物である。
【0020】
また、本実施形態の別の態様においては、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、前記硬化性樹脂組成物を含んでなる封止用材料、繊維強化複合材料、接着剤及び積層板も提供される。
【0021】
≪シアン酸エステル化合物≫
本実施形態のシアン酸エステル化合物は、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化して得られる。
<変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂>
本実施形態のシアン酸エステル化合物の原料となる変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を例えば式(2)で表されるようなヒドロキシ置換芳香族化合物により変性させて得ることが好ましい。このような変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を原料として用いると、難燃性、低吸水性、吸湿耐熱性、耐熱性、低熱膨張等を備えた、シアン酸エステル化合物単体の硬化物が得られる傾向にある。
ここで、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とは、ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとを、酸性触媒の存在下で縮合反応させて得られる樹脂である。また、脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とは、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、水及び酸性触媒存在下で処理することにより得られる樹脂である。
【0022】
【化2】
(式(2)中、Ar
1は芳香環を表す。R
2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。前記芳香環の置換基は任意の位置を選択できる。aはヒドロキシ基の結合個数を表し、1〜3の整数である。bはR
2の結合個数を表し、「Ar
1の結合可能な個数−(a+1)」である。)
【0023】
以下、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂、脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂及び変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法について述べる。
【0024】
<ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法>
ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとを、酸性触媒の存在下で縮合反応させることにより得られる。
【0025】
前記縮合反応に用いられるナフタレン化合物は、ナフタレン及び/又はナフタレンメタノールである。ナフタレン及びナフタレンメタノールは、特に限定されず、工業的に入手できるものを利用することができる。
【0026】
前記縮合反応に用いられるホルムアルデヒドは、特に限定されず、通常工業的に入手可能な、ホルムアルデヒドの水溶液が挙げられる。その他には、パラホルムアルデヒド及びトリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物等も使用可能である。ゲル化抑制の観点から、ホルムアルデヒド水溶液が好ましい。
【0027】
前記縮合反応における、ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとのモル比(ナフタレン化合物:ホルムアルデヒド)は、1:1〜1:20、好ましくは1:1.5〜1:17.5、より好ましくは1:2〜1:15、更に好ましくは1:2〜1:12.5、特に好ましくは1:2〜1:10である。前記縮合反応における、ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとのモル比をこのような範囲とすることで、得られるナフタレンホルムアルデヒド樹脂の収率を比較的高く維持でき、且つ、未反応で残るホルムアルデヒドの量を少なくすることができる。
【0028】
前記縮合反応に用いられる酸性触媒は、周知の無機酸、有機酸を使用することができる。当該酸性触媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。これらの中でも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0029】
前記酸性触媒の使用量は、ナフタレン化合物及びホルムアルデヒドの合計量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜100質量部、より好ましくは0.001〜85質量部、更に好ましくは0.001〜70質量部である。前記酸性触媒の使用量をこのような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、且つ、反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。また、酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0030】
前記縮合反応は、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流、又は、生成水を留去させながら行うことが好ましい。反応圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0031】
また、必要に応じて、縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。該溶媒としては、特に限定されないが、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル系溶媒、酢酸等のカルボン酸系溶媒、等が挙げられる。
【0032】
前記縮合反応は、特に限定されないが、アルコールが共存する場合、樹脂の末端がアルコールで封止され、低分子量で低分散(分子量分布の狭い)ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られ、変性後も溶剤溶解性が良好で低溶融粘度の樹脂となる観点から、アルコール共存下で行うことが好ましい。前記アルコールは、特に限定されず、例えば、炭素数1〜12のモノオールや炭素数1〜12のジオールが挙げられる。前記アルコールは単独で添加してもよいし、複数を併用してもよい。ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の生産性の観点から、これらのうち、プロパノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノールが好ましい。アルコールが共存する場合、アルコールの使用量は、特に限定されないが、例えば、ナフタレンメタノール中のメチロール基1当量に対して、アルコール中のヒドロキシル基が1〜10当量が好ましい。
【0033】
前記縮合反応は、ナフタレン化合物、ホルムアルデヒド及び酸性触媒を反応系に同時に添加する縮合反応としてもよいし、ナフタレン化合物をホルムアルデヒド及び酸性触媒が存在する系に逐次添加する縮合反応としてもよい。前記の逐次添加する方法は、得られる樹脂中の酸素濃度を高くし、後の変性工程においてヒドロキシ置換芳香族化合物とより多く反応させることができる観点から好ましい。
【0034】
前記縮合反応における、反応時間は0.5〜30時間が好ましく、0.5〜20時間がより好ましく、0.5〜10時間が更に好ましい。前記縮合反応における、反応時間をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に有利に得られる。
【0035】
前記縮合反応における、反応温度は80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃が更に好ましい。前記縮合反応における、反応温度をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に有利に得られる。
【0036】
反応終了後、必要に応じて前記溶媒を更に添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相とを分離した後、更に水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0037】
前記反応によって得られるナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレン環の少なくとも一部が下記一般式(3)及び/又は下記一般式(4)で架橋されていることが好ましい。
【0038】
【化3】
(式(3)中、cは1〜10の整数を表す。)
【0039】
【化4】
(式(4)中、dは0〜10の整数を表す。)
【0040】
また、ナフタレン環の少なくとも一部は、上記一般式(3)で示される結合と下記一般式(5)で示される結合とがランダムに配列されている結合、例えば、下記一般式(6)、(7)、(8)等で架橋されていてもよい。
【0041】
【化5】
(式(5)中、dは0〜10の整数を表す。)
【0045】
<脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法>
脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、水及び酸性触媒存在下で処理することにより得られる。本実施形態において、この処理を脱アセタール化と称する。
【0046】
脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とは、脱アセタール化を行うことによって、ナフタレン環を介さないオキシメチレン基同士の結合が減り、上記一般式(3)におけるc及び/又は上記一般式(4)におけるdが小さくなったナフタレンホルムアルデヒド樹脂を指す。このようにして得られた脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂に比較して、変性後に得られる樹脂の熱分解時の残渣量が多くなる、即ち、質量減少率が低くなる。
【0047】
前記脱アセタール化には、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を使用できる。
【0048】
前記脱アセタール化に用いられる酸性触媒は、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。当該酸性触媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、あるいはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。これらの中でも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0049】
前記脱アセタール化は、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)において、使用する水を系内に滴下或いは水蒸気として噴霧しながら行うことが好ましい。系内の水は留去しても還流させてもよいが、アセタール結合を効率良く除去できるため、反応で発生するホルムアルデヒド等の低沸点成分と共に留去した方が好ましい。反応圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0050】
また必要に応じて、脱アセタール化に不活性な溶媒を使用することもできる。該溶媒としては、特に限定されないが、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル系溶媒、酢酸等のカルボン酸系溶媒、等が挙げられる。
【0051】
前記酸性触媒の使用量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜100質量部、より好ましくは0.001〜85質量部、更に好ましくは0.001〜70質量部である。前記酸性触媒の使用量をこのような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、且つ、反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。また、酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0052】
前記脱アセタール化に用いられる水は、工業的に使用し得るものならば特に限定しないが、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水又は超純水等が挙げられる。
【0053】
前記水の使用量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.1〜10000質量部が好ましく、1〜5000質量部がより好ましく、10〜3000質量部が更に好ましい。
【0054】
前記脱アセタール化における、反応時間は、0.5〜20時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、2〜10時間が更に好ましい。前記脱アセタール化における、反応時間をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に得られる。
【0055】
前記脱アセタール化における、反応温度は80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃が更に好ましい。前記脱アセタール化における、反応温度をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に得られる。
【0056】
脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂と比較して酸素濃度が低くなり、軟化点が上昇する。例えば、前記記載の酸性触媒使用量0.05質量部、水の使用量2000質量部、反応時間5時間、反応温度150℃で脱アセタール化すると、酸素濃度は0.1〜8.0質量%程度低くなり、軟化点は3〜100℃程度上昇する。
【0057】
<変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法>
変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は前記脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂と、例えば下記一般式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物とを酸性触媒の存在下で加熱し、変性縮合反応させることにより得られる。本実施形態においては、この反応を変性と称する。
【0058】
【化9】
(式(2)中、Ar
1は芳香環を表す。R
2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。前記芳香環の置換基は任意の位置を選択できる。aはヒドロキシ基の結合個数を表し、1〜3の整数である。bはR
2の結合個数を表し、「Ar
1の結合可能な個数−(a+1)」である。)
【0059】
上記一般式(2)において、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が例示されるが、これらに特に限定されない。また、R
2のアルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖状又は分枝状のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示されるが、これらに特に限定されない。更に、R
2のアリール基としては、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、アントリル基等が例示されるが、これらに特に限定されない。上記一般式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、2,6−キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0060】
前記ヒドロキシ置換芳香族化合物の使用量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の含有酸素モル数1モルに対して、0.1〜5モルが好ましく、0.2〜4モルがより好ましく、0.3〜3モルが更に好ましい。前記ヒドロキシ置換芳香族化合物の使用量をこのような範囲とすることで、得られる変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の収率を比較的高く維持でき、且つ、未反応で残るヒドロキシ置換芳香族化合物の量を少なくすることができる。得られる変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の分子量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の含有酸素モル数、及び、ヒドロキシ置換芳香族化合物の使用量の影響を受け、共に多くなると、分子量は減少する。ここで、含有酸素モル数は、有機元素分析によりナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の酸素濃度(質量%)を測定し、下記計算式に従って算出することができる。
含有酸素モル数(mol)=使用樹脂量(g)×酸素濃度(質量%)/16
【0061】
前記変性反応に用いられる酸性触媒は、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。当該酸性触媒の具体例としては、特任限定されないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、あるいはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。
これらの中でも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0062】
前記酸性触媒の使用量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜100質量部、より好ましくは0.001〜85質量部、更に好ましくは0.001〜70質量部である。前記酸性触媒の使用量をこのような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、且つ、反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。また、酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0063】
前記変性反応は、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流、又は生成水を留去させながら行うことが好ましい。反応圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0064】
また必要に応じて、変性反応に不活性な溶媒を使用することもできる。該溶媒としては、特に限定されないが、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル系溶媒、酢酸等のカルボン酸系溶媒、等が挙げられる。
【0065】
前記変性反応における、反応時間は、0.5〜20時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、2〜10時間が更に好ましい。前記変性反応における、反応時間をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に得られる。
【0066】
前記変性反応における、反応温度は80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃が更に好ましい。前記変性反応における、反応温度をこのような範囲とすることで、目的の性状を有する樹脂が経済的に、且つ、工業的に得られる。
【0067】
反応終了後、必要に応じて前記溶媒を更に添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、更に水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0068】
変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ホルムアルデヒド樹脂と比較して、熱分解時の残渣量が多くなり(質量減少率が低くなり)、且つ、水酸基価が上昇する。例えば、前記記載の酸性触媒使用量0.05質量部、反応時間5時間、反応温度200℃で変性すると、熱分解時の残渣量は1〜50%程度多くなり、且つ、水酸基価は1〜300程度上昇する。
【0069】
上記製造法によって得られた、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(9)で表される変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂であることが好ましい。
【0070】
【化10】
(式(9)中、Ar
1は芳香環を表し、R
1は各々独立にメチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基又はオキシメチレン基を表し、これらが連結していてもよい。R
2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R
3は各々独立に水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチレン基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上の整数を表す。m及びnが異なる化合物の混合物であってもよい。lはヒドロキシ基の結合個数を表し、1〜3の整数である。xはR
2の結合個数を表し、「Ar
1の結合可能な個数−(l+2)」である。yは各々独立して0〜4の整数を表す。)。
【0071】
上記一般式(9)において、各繰り返し単位の配列は任意である。即ち、式(9)の化合物はランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。なお、mの上限値は、好ましくは50以下、より好ましくは20以下である。nの上限値は、好ましくは20以下である。
【0072】
前記変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法において、主生成物は、例えば、変性時にホルムアルデヒドがメチレン基となり、このメチレン基を介して、ナフタレン環及び/又はヒドロキシ置換芳香族化合物の芳香環同士が結合した化合物である。尚、変性後に得られる変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、通常、ホルムアルデヒドがナフタレン環及びヒドロキシ置換芳香族化合物の芳香環に結合する位置、ヒドロキシ基の結合する位置、重合数等が一致しないため、多くの化合物の混合物として得られる。
【0073】
例えば、ナフタレン又はナフタレンメタノールとホルマリン水溶液から得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂をフェノールで変性したフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、具体的には下記一般式(10)〜(17)で示される化合物を代表組成とする混合物となる。
【0074】
また、ナフタレン又はナフタレンメタノールとホルマリン水溶液とから得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂を脱アセタール化した後、フェノールで変性したフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、具体的には下記一般式(10)、(11)、(12)、(14)、(15)、(16)、(17)で示される化合物を代表組成とする混合物となる。
【0083】
これらのうち、上記式(17)のような構造中にヒドロキシ基を持たない芳香族炭化水素化合物は、シアネート化することができないため、事前に蒸留分離する等して除去してもよい。
【0084】
取扱性をより高めるとともに、得られる硬化性樹脂組成物及び硬化物の難燃性をより高める観点から、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、JIS−K1557−1に基づいて求められるOH価が、140〜560mgKOH/g(OH基当量は100〜400g/eq.)であることが好ましく、より好ましくは160〜470mgKOH/g(OH基当量は120〜350g/eq.)である。
【0085】
<シアン酸エステル化合物の製造方法>
本実施形態のシアン酸エステル化合物は、例えば、上記の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が有するヒドロキシ基をシアネート化することで得られる。シアネート化方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とハロゲン化シアンとを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させる方法、溶媒中、塩基の存在下で、ハロゲン化シアンが常に塩基より過剰に存在するようにして、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とハロゲン化シアンとを反応させる方法(米国特許3553244号)や、塩基として3級アミンを用い、これをハロゲン化シアンよりも過剰に用いながら、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂に溶媒の存在下、3級アミンを添加した後、ハロゲン化シアンを滴下する、或いは、ハロゲン化シアンと3級アミンを併注滴下する方法(特許3319061号公報)、連続プラグフロー方式で、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂、トリアルキルアミン及びハロゲン化シアンとを反応させる方法(特許3905559号公報)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とハロゲン化シアンとを、tert−アミンの存在下、非水溶液中で反応させる際に副生するtert−アンモニウムハライドを、カチオンおよびアニオン交換対で処理する方法(特許4055210号公報)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、水と分液可能な溶媒の存在下で、3級アミンとハロゲン化シアンとを同時に添加して反応させた後、水洗分液し、得られた溶液から2級または3級アルコール類もしくは炭化水素の貧溶媒を用いて沈殿精製する方法(特許2991054号)、更には、ナフトール類、ハロゲン化シアン、および3級アミンを、水と有機溶媒との二相系溶媒中で、酸性条件下で反応させる方法(特許5026727号公報)等により、本実施形態のシアン酸エステル化合物を得ることができる。
【0086】
上記した、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とハロゲン化シアンとを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させる方法を用いた場合、反応基質である変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、ハロゲン化シアン溶液又は塩基性化合物溶液のどちらかに予め溶解させた後、ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液とを接触させることが好ましい。
該ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液とを接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、(A)撹拌混合させたハロゲン化シアン溶液に塩基性化合物溶液を注下していく方法、(B)撹拌混合させた塩基性化合物溶液にハロゲン化シアン溶液を注下していく方法、(C)ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液とを連続的に交互に又は同時に供給していく方法等が挙げられる。
前記(A)〜(C)の方法の中でも副反応を抑制し、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができるため、(A)の方法で行うことが好ましい。
また、前記ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液との接触方法は、半回分形式又は連続流通形式のいずれでも行うことができる。
特に(A)の方法を用いた場合、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が有するヒドロキシ基を残存させずに反応を完結させることができ、かつ、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができることから、塩基性化合物を分割して注下するのが好ましい。分割回数は特に制限はないが、1〜5回が好ましい。また、塩基性化合物の種類としては、分割ごとに同一でも異なるものでもよい。
【0087】
本実施形態で用いるハロゲン化シアンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン及び臭化シアンが挙げられる。ハロゲン化シアンは、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させる方法等の公知の製造方法により得られたハロゲン化シアンを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させて得られたハロゲン化シアンを含有する反応液をそのまま用いることもできる。
【0088】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際にハロゲン化シアンを用いる場合、該ハロゲン化シアンの変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂に対する使用量は、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のヒドロキシ基1モルに対して好ましくは0.5〜5モルであり、より好ましくは1.0〜3.5である。
その理由は、未反応の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を残存させずにシアン酸エステル化合物の収率を高めるためである。
【0089】
ハロゲン化シアン溶液に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサノン、シクロぺンタノン、2−ブタノンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、水溶媒など何れも用いることができ、反応基質に合わせて、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際に塩基性化合物を用いる場合、該塩基性化合物としては、有機、無機塩基いずれでも使用可能である。
【0091】
有機塩基としては、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−n−ブチルアミン、メチルジ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の3級アミンが好ましい。これらの中でも、収率よく目的物が得られることなどから、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0092】
前記有機塩基の使用量は、フェノール樹脂のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは0.1〜8モルであり、より好ましくは1.0〜3.5モルである。
その理由は、未反応の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を残存させずにシアン酸エステル化合物の収率を高めるためである。
【0093】
無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。アルカリ金属の水酸化物としては、特に限定されないが工業的に一般的に用いられる水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。安価に入手できる点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0094】
前記無機塩基の使用量は、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、より好ましくは1.0〜3.5モルである。
その理由は、未反応の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を残存させずにシアン酸エステル化合物の収率を高めるためである。
【0095】
本実施形態において、塩基性化合物は上述した通り、溶媒に溶解させた溶液として用いることができる。溶媒としては、有機溶媒又は水を用いることができる。
【0096】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒の使用量としては、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を塩基性化合物溶液に溶解させる場合、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.5〜50質量部である。
塩基性化合物溶液に用いる溶媒の使用量としては、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を塩基性化合物溶液に溶解させない場合、塩基性化合物1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.25〜50質量部である。
【0097】
塩基性化合物を溶解させる有機溶媒は、該塩基性化合物が有機塩基の場合に好ましく用いられる。塩基性化合物を溶解させる有機溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒などを塩基性化合物、反応基質及び反応に用いられる溶媒に合わせて適宜選択することができる。これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
塩基性化合物を溶解させる水は、該塩基性化合物が無機塩基の場合に好ましく用いられ、特に制約されず、水道水であっても、蒸留水であっても、脱イオン水であってもよい。効率良く目的とするシアン酸エステル化合物を得る上では、不純物の少ない蒸留水や脱イオン水の使用が好ましい。
【0099】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒が水の場合、界面活性剤として触媒量の有機塩基を使用することが反応速度を確保する観点から好ましい。中でも副反応の少ない3級アミンが好ましい。3級アミンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミン何れでもよい。3級アミンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−n−ブチルアミン、メチルジ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンなどが挙げられる。これらの中でも、水への溶解度、収率よく目的物が得られることなどから、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0100】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際に溶媒を用いる場合、該溶媒の総量としては、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂1質量部に対し、2.5〜100質量部とすることが変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を均一に溶解させ、シアン酸エステル化合物を効率良く製造する観点から好ましい。
【0101】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際、反応液のpHは特に限定されないが、pHが7未満の状態を保ったまま反応を行うことが好ましい。pHを7未満に抑えることで、例えば、イミドカーボネートやシアン酸エステル化合物の重合物等の副生成物の生成が抑制されて、効率的にシアン酸エステル化合物を製造できるためである。反応液のpHが7未満の状態を保つには酸を添加する方法が好ましい。酸の添加方法としては、特に限定されないが、例えば、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する直前のハロゲン化シアン溶液に酸を加えておくこと、反応中適宜pH計で測定しながら反応系に酸を添加し、pH7未満の状態を保つようにすることが好ましい。
その際に用いる酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等の無機酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられる。
【0102】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際の反応温度は、イミドカーボネート、シアン酸エステル化合物の重合物、及びジアルキルシアノアミド等の副生物の生成、反応液の凝結、及び、ハロゲン化シアンとして塩化シアンを用いる場合は塩化シアンの揮発、を抑制する観点から、好ましくは−20〜+50℃、より好ましくは−15〜15℃、さらに好ましくは−10〜10℃である。
【0103】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際の反応圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
また、本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際の反応時間は特に限定されないが、前記接触方法が(A)及び(B)の場合の注下時間及び(C)の場合の接触時間として1分〜20時間が好ましく、3分〜10時間がより好ましい。更にその後10分〜10時間反応温度を保ちながら撹拌させることが好ましい。当該反応時間をこのような範囲とすることで、目的とするシアン酸エステル化合物が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0104】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する際の反応の進行度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。副生するジシアンやジアルキルシアノアミド等の揮発成分は、ガスクロマトグラフィーで分析することができる。
【0105】
本実施形態において、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化する反応終了後は、通常の後処理操作、及び、所望により分離・精製操作を行うことにより、目的とするシアン酸エステル化合物を単離することができる。具体的には、反応液からシアン酸エステル化合物を含む有機溶媒層を分取し、水洗後、濃縮、沈殿化又は晶析、或いは、水洗後、溶媒置換すればよい。洗浄の際には、過剰のアミン類を除去するため、薄い塩酸などの酸性水溶液を用いる方法も採られる。充分に洗浄された反応液から水分を除去するために、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどの一般的な方法を用いて乾燥操作をすることができる。濃縮及び溶媒置換の際には、シアン酸エステル化合物の重合を抑えるため、減圧下90℃以下の温度に加熱して有機溶媒を留去することが好ましい。沈殿化又は晶析の際には、溶解度の低い溶媒を用いることができる。例えば、エーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤又はアルコール系溶剤を反応溶液に滴下する、又は逆注下する方法を採ることができる。得られた粗生成物を洗浄するために、反応液の濃縮物や沈殿した結晶をエーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤、又はアルコール系の溶剤で洗浄する方法を採ることができる。反応溶液を濃縮して得られた結晶を再度溶解させた後、再結晶させることもできる。また、晶析する場合は、反応液を単純に濃縮又は冷却して行ってもよい。
【0106】
上記製造方法によって得られたシアン酸エステル化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)で表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
【0107】
【化19】
(式(1)中、Ar
1は芳香環を表し、R
1は各々独立にメチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基又はオキシメチレン基を表し、これらが連結していてもよい。R
2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R
3は各々独立に水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチレン基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上の整数を表す。m及びnが異なる化合物の混合物であってもよい。lはシアナト基の結合個数を表し、1〜3の整数である。xはR
2の結合個数を表し、「Ar
1の結合可能な個数−(l+2)」である。yは各々独立して0〜4の整数を表す。)
上記一般式(1)で表されるシアン酸エステル化合物であると、難燃性、低吸水性、吸湿耐熱性、耐熱性、低熱膨張等を備えた、シアン酸エステル化合物単体の硬化物が得られる傾向にある。
【0108】
上記一般式(1)において、各繰り返し単位の配列は任意である。即ち、式(1)で表される化合物はランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。なお、mの上限値は、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下である。nの上限値は、好ましくは20以下である。
【0109】
具体的に例示すると、上記一般式(10)〜(16)で示される変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とハロゲン化シアンとを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させることにより、下記一般式(18)〜(24)で示される化合物を代表組成とするシアン酸エステル(混合物)を得ることができる。
【0117】
本実施形態のシアン酸エステル化合物の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、200〜25000であることが好ましく、より好ましくは250〜20000であり、更に好ましくは300〜15000である。なお、本実施形態において、シアン酸エステル化合物の重量平均分子量Mwは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0118】
得られたシアン酸エステル化合物の同定は、NMR等の公知の方法により行うことができる。シアン酸エステル化合物の純度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。シアン酸エステル化合物中のジアルキルシアノアミド等の副生物や残存溶媒等の揮発成分は、ガスクロマトグラフィーで定量分析することができる。シアン酸エステル化合物中に残存するハロゲン化合物は、液体クロマトグラフ質量分析計で同定することができ、また、硝酸銀溶液を用いた電位差滴定又は燃焼法による分解後イオンクロマトグラフィーで定量分析することができる。シアン酸エステル化合物の重合反応性は、熱板法又はトルク計測法によるゲル化時間で評価することができる。
【0119】
≪硬化性樹脂組成物≫
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述したシアン酸エステル化合物を含む。本実施形態の硬化性樹脂組成物において、上述したシアン酸エステル化合物の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、3〜90質量部であることがより好ましく、5〜80質量部であることがさらに好ましい。ここで、「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、溶剤及び無機充填材を除いた成分をいう。また、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における溶剤及び無機充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述したシアン酸エステル化合物を前記範囲で含むことにより、熱膨張率が低く、且つ、優れた難燃性を有する硬化物を得ることができる。
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、上述したシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物(以下、「他のシアン酸エステル化合物」ともいう。)、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有していてもよい。
【0120】
他のシアン酸エステル化合物としては、シアナト基が少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する化合物であれば特に限定されない。例えば一般式(25)で表されるシアン酸エステル化合物が挙げられる。
【化27】
(式(25)中、Ar
2はフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表す。Raは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが混合された基を表す。芳香環の置換基は任意の位置を選択できる。pはシアナト基の結合個数を表し、各々独立に1〜3の整数である。qはRaの結合個数を表し、Ar
2がフェニレン基の時は4−p、ナフチレン基の時は6−p、ビフェニレン基の時は8−pである。tは0〜50の整数を示すが、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、単結合、炭素数1〜20の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい)、窒素数1〜10の2価の有機基(−N−R−N−など(ここでRは有機基を表す。))、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO
2−)、2価の硫黄原子又は酸素原子のいずれかを表す。)
【0121】
一般式(25)のRaにおけるアルキル基は、鎖状構造、環状構造(シクロアルキル基等)どちらを有していてもよい。
また、一般式(25)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、シアノ基等で置換されていてもよい。
前記アルキル基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
前記アリール基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、o−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。更にアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(25)のXにおける2価の有機基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、フタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、シアノ基等で置換されていてもよい。
一般式(25)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0122】
また、一般式(25)中のXとしては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(26)又は下記式で表される構造が挙げられる。
【化28】
(式(26)中、Ar
3はフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表す。Rb、Rc、Rf、Rgは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基が少なくとも1個置換されたアリール基を表す。Rd、Reは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はヒドロキシ基を表す。uは0〜5の整数を示すが、同一でも異なってもよい。)
【化29】
(式中、jは4〜7の整数を表す。Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(26)のAr
3の具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,4’−ビフェニレン基、2,2’−ビフェニレン基、2,3’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基等が挙げられる。
一般式(26)のRb〜Rfにおけるアルキル基及びアリール基は一般式(25)で記載したものと同様である。
【0123】
一般式(25)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、例えば、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メチルナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar
3−(CH
2Y)
2で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒もしくは無触媒で反応させたものやAr
3−(CH
2OR)
2で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物やAr
3−(CH
2OH)
2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂等のフェノール樹脂を上述と同様の方法によりシアネート化したもの等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのシアン酸エステル化合物は1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0124】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。エポキシ樹脂の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、或いはこれらのハロゲン化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0125】
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用できる。オキセタン樹脂の具体例としては、特に限定されないが、例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3’−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、OXT−101(東亞合成製商品名)、OXT−121(東亞合成製商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0126】
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。ベンゾオキサジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学製商品名)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0127】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用できる。重合可能な不飽和基を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、ベンゾシクロブテン樹脂、(ビス)マレイミド樹脂等が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0128】
本実施形態の硬化性樹脂組成物には、上記した化合物ないし樹脂に加えて、更に、シアン酸エステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、重合可能な不飽和基を有する化合物の重合を触媒する化合物(重合触媒)を配合することができる。当該重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄等の金属塩、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、ホスフィン系はホスホニウム系のリン化合物が挙げられる。また、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、又はアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用してもよい。これら触媒は市販のものを使用してもよく、特に限定されないが、例えば、アミキュアPN−23(味の素ファインテクノ社製)、ノバキュアHX−3721(旭化成社製)、フジキュアFX−1000(富士化成工業社製)等が挙げられる。これらの触媒は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0129】
更に、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、無機充填材、硬化触媒、硬化促進剤、着色顔料、消泡剤、表面調整剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、流動調整剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤、シランカップリング剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。また、必要に応じて、溶媒を含有していてもよい。これら任意の添加剤は、1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0130】
無機充填材としては、一般に公知のものを使用できる。無機充填材の具体例としては、特に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、Eガラス、Aガラス、NEガラス、Cガラス、Lガラス、Dガラス、Sガラス、MガラスG20、ガラス短繊維(EガラスやTガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラスなどのガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩、ベーマイト、モリブデン酸亜鉛、シリコーン複合パウダー、シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0131】
溶媒としては、一般に公知のものを使用できる。溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0132】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上述したシアン酸エステル化合物、並びに必要に応じて、他のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び/又は、重合可能な不飽和基を有する化合物や各種添加剤を、溶媒とともに、公知のミキサー、例えば高速ミキサー、ナウターミキサー、リボン型ブレンダー、ニーダー、インテンシブミキサー、万能ミキサー、ディゾルバー、スタティックミキサー等を用いて混合して得ることができる。混合の際の、シアン酸エステル化合物、各種添加剤、溶媒の添加方法は、特に限定されるものではない。
【0133】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、熱や光などによって硬化させることにより硬化物とすることができる。本実施形態の硬化物は、例えば、上述の硬化性樹脂組成物を溶融又は溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、通常の条件で硬化させることにより得ることができる。熱硬化の場合、硬化温度は、低すぎると硬化が進まず、高すぎると硬化物の劣化が起こることから、120℃から300℃の範囲内が好ましい。
【0134】
<硬化性樹脂組成物の用途>
本実施形態のプリプレグは、上記した硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗布し、乾燥させてなる。
具体的には、例えば、上記した硬化性樹脂組成物を無機及び/又は有機繊維基材に含浸または塗布し、乾燥することにより、本実施形態のプリプレグを製造することができる。
【0135】
前記基材は、特に限定されないが、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。プリプレグに要求される性能、例えば、強度、吸水率、熱膨張係数等に応じて、これら公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0136】
前記ガラス繊維基材を構成するガラスは、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。
【0137】
本実施形態のプリプレグを製造する方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、前述した硬化性樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等を適用して、本実施形態のプリプレグを製造することができる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。例えば、硬化性樹脂組成物ワニスを無機及び/又は有機繊維基材に含浸させて乾燥し、Bステージ化してプリプレグを製造する方法等が適用できる。
【0138】
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、金属張積層板及び多層板用途に使用することもできる。これらの積層板等の製造方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記のプリプレグと金属箔とを積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。この時、加熱する温度は、特に限定されないが、通常は65〜300℃が好ましく、120〜270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、通常は2〜5MPaが好ましく、2.5〜4MPaがより好ましい。
【0139】
さらに、本実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて、封止用材料を製造することができる。封止用材料の製造方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した硬化性樹脂組成物と、封止用材料用途で各種公知の添加剤或いは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで封止用材料を製造することができる。なお、混合の際の、シアン酸エステル化合物、各種添加剤、溶媒の添加方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。
【0140】
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて繊維強化複合材料を製造することができる。強化繊維として、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、および炭化ケイ素繊維などの繊維を用いることができる。強化繊維の形態や配列については、特に限定されず、例えば、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、チョップド等から適宜選択できる。また、強化繊維の形態として、特に限定されないが、例えば、プリフォーム(強化繊維からなる織物基布を積層したもの、またはこれをステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物・編組物などの繊維構造物)を適用することもできる。これら繊維強化複合材料の製造方法として、特に限定されないが、例えば、具体的には、リキッド・コンポジット・モールディング法、レジン・フィルム・インフュージョン法、フィラメント・ワインディング法、ハンド・レイアップ法、プルトルージョン法等が挙げられる。これらのなかでも、リキッド・コンポジット・モールディング法の一つであるレジン・トランスファー・モールディング法は、金属板、フォームコア、ハニカムコア等、プリフォーム以外の素材を成形型内に予めセットしておくことができることから、種々の用途に対応可能であるため、比較的、形状が複雑な複合材料を短時間で大量生産する場合に好ましく用いられる。
【0141】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、優れた低熱膨張性、難燃性及び耐熱性を有するため、高機能性高分子材料として極めて有用であり、熱的、電気的および機械物性に優れた材料として、電気絶縁材料、封止材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料のほか、土木・建築、電気・電子、自動車、鉄道、船舶、航空機、スポーツ用品、美術・工芸などの分野における固定材、構造部材、補強剤、型どり材等に好ましく使用される。これらの中でも、低熱膨張性、耐燃性及び高度の機械強度が要求される、電気絶縁材料、半導体封止材料、電子部品の接着剤、航空機構造部材、衛星構造部材及び鉄道車両構造部材に好適である。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【0143】
(シアン酸エステル化合物の重量平均分子量Mwの測定)
シアン酸エステル化合物1gを100gのテトラヒドロフラン(溶媒)に溶解させた溶液10μLを、高速液体クロマトグラフィー(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製高速液体クロマトグラフLachromElite)に注入し分析を実施した。カラムは東ソー株式会社製TSKgel GMH
HR−M(長さ30cm×内径7.8mm)2本、移動相はテトラヒドロフラン、流速は1mL/min.、検出器はRIとした。シアン酸エステル化合物の重量平均分子量Mwは、GPC法によりポリスチレンを標準物質として求めた。
【0144】
(実施例1)フェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化合物(下記式(1a)のシアン酸エステル化合物(代表組成として下記式(27)を有する):以下「NMCN」とも略記する)の合成
【0145】
【化30】
(式(1a)中、R
1、m、nは、上述した式(1)で説明したものと同義である。)
【化31】
【0146】
<ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
37質量%ホルマリン水溶液681g(ホルムアルデヒドとして8.4mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)338gを、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた1−ナフタレンメタノール295g(1.9mol、東京化成工業(株)製)を4時間かけて滴下し、その後更に2時間反応させた。得られた反応液に、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)580g及びメチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)460gを加え、静置後、下相の水相を除去した。更に、反応液について、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及びメチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂332gを得た。
【0147】
<フェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
上記で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂305g(含有酸素モル数2.3mol)及びフェノール536g(5.7mol、和光純薬工業(株)製)を、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)340mgを加え、反応を開始した。160℃まで昇温しながら2時間反応させた。得られた反応液を、混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(質量比))1200gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、下記式(9a)で表される黒褐色固体のフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂550gを得た。得られたフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のOH価は295mgKOH/g(OH基当量は190g/eq.)であった。
【化32】
(式(9a)中、R
1、m、nは、上述した式(9)で説明したものと同義である。)
【0148】
<NMCNの合成>
上記方法で得られた式(9a)で表されるフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂550g(OH基当量190g/eq.)(OH基換算2.90mol)(重量平均分子量Mw600)及びトリエチルアミン439.8g(4.35mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)をジクロロメタン3090gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン285.0g(4.64mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.6モル)、ジクロロメタン665.0g、36%塩酸440.2g(4.35mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、及び水2729.1gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を55分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン263.9g(2.61mol)(ヒドロキシ基1モルに対して0.9モル)をジクロロメタン264gに溶解させた溶液(溶液2)を30分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相とを分離した。得られた有機相を水2000gで4回洗浄した。水洗4回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物NMCN(薄黄色粘性物)を592g得た。得られたシアン酸エステル化合物NMCNの重量平均分子量Mwは970であった。GPCチャートを
図1に示す。また、NMCNのIRスペクトルは2250cm
−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図2に示す。NMCNは、メチルエチルエチルケトンに対し、25℃で50質量%以上溶解することが可能であった。
【0149】
(実施例2)
<硬化性樹脂組成物の調製及び硬化物の作成>
実施例1で得られたシアン酸エステル化合物NMCN100質量部をナス型フラスコに投入し、150℃で加熱溶融させ、真空ポンプで脱気した後、オクチル酸亜鉛(日本化学産業株式会社製、商標ニッカオクチック酸亜鉛、金属含有量18%)を0.05質量部加え1分間振とうさせて混合することで、硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物を、アルミニウム板、銅箔、フッ素コートステンレスで作成した型に流し込み、オーブンに入れ、150℃にて樹脂を均一にした後、220℃にて90分、20kg/cm
2での真空プレスにより硬化させ、その後更に220℃にて6時間加熱し、1辺100mm、厚さ1.5mmの硬化物を得た。
【0150】
(実施例3)フェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化合物(下記式(1b)のシアン酸エステル化合物(代表組成として下記式(28)を有する):以下、「NRCN」とも略記する)の合成
【0151】
【化33】
(式(1b)中、R
1、m、nは、上述した式(1)で説明したものと同義である。)
【化34】
【0152】
<ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
37質量%ホルマリン水溶液3220g(ホルムアルデヒドとして40mol、三菱ガス化学(株)製)、メタノール(三菱ガス化学(株)製)142g及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)1260gを、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させたナフタレン640g(5.0mol、関東化学(株)製)を6時間かけて滴下し、その後更に2時間反応させた。得られた反応液に、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)630g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)630gを加え、静置後、下相の水相を除去した。更に、反応液について、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及びメチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂816gを得た。
【0153】
<脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
上記で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂500gを120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)10mgを加え、1時間で190℃まで昇温した。その後、さらに4時間(計5時間)反応させた。得られた反応液を、エチルベンゼン(関東化学(株)製)500gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂380gを得た。
【0154】
<フェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
フェノール584g(6.2mol、和光純薬工業(株)製)を100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)110mgを加えて反応を開始した。これを190℃まで昇温しながら、上記で得た脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂380g(含有酸素モル数1.2mol)を1時間かけて添加した。その後、さらに3時間反応させた。得られた反応液を、混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(質量比))1000gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、下記式(9b)で表される黒褐色固体のフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂530gを得た。得られたフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のOH価は193mgKOH/g(OH基当量は290g/eq.)であった。
【化35】
(式(9b)中、R
1、m、nは、上述した式(9)で説明したものと同義である。)
【0155】
<NRCNの合成>
上記方法で得られた式(9b)で表されるフェノール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂526g(OH基当量290g/eq.)(OH基換算1.81mol)(重量平均分子量Mw700)及びトリエチルアミン275.5g(2.72mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)をジクロロメタン2943gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン178.5g(2.90mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.6モル)、ジクロロメタン416.5g、36%塩酸275.7g(2.72mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、及び水1710gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を55分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン110.2g(1.09mol)(ヒドロキシ基1モルに対して0.6モル)をジクロロメタン110.2gに溶解させた溶液(溶液2)を13分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相とを分離した。得られた有機相を水2000gで4回洗浄した。水洗4回目の廃水の電気伝導度は15μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物NRCN(薄黄色粘性物)を556g得た。得られたシアン酸エステル化合物NRCNの重量平均分子量Mwは1000であった。GPCチャートを
図3に示す。また、NRCNのIRスペクトルは2250cm
−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図4に示す。NRCNは、メチルエチルエチルケトンに対し、25℃で50質量%以上溶解することが可能であった。
【0156】
(実施例4)
実施例2において、NMCNを100質量部用いる代わりに、実施例3で得られたNRCNを100質量部用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。
【0157】
(実施例5)ナフトール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化合物(下記式(1c)のシアン酸エステル化合物(代表組成として下記式(29)を有する):以下「NMNCN」とも略記する)の合成
【0158】
【化36】
(式(1c)中、R
1、m、nは、上述した式(1)で説明したものと同義である。)
【化37】
【0159】
<ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
37質量%ホルマリン水溶液1277g(ホルムアルデヒドとして15.8mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)634gを、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた1−ナフタレンメタノール553g(3.5mol、三菱ガス化学(株)製)を4時間かけて滴下し、その後更に2時間反応させた。得られた反応液に、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)500g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)500gを加え、静置後、下相の水相を除去した。更に、反応液について、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂624gを得た。
【0160】
<ナフトール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の合成>
上記で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂500g(含有酸素モル数3.9mol)、ナフトール1395g(9.7mol、スガイ化学工業(株)製)を、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)200mgを加え、反応を開始した。170℃まで昇温しながら2.5時間反応させた。この後、得られた反応液を、混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(質量比))2500gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、下記式(9c)で表される黒褐色固体のナフトール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂1125gを得た。得られたナフトール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂のOH価は232mgKOH/g(OH基当量は241g/eq.)であった。
【化38】
(式(9c)中、R
1、m、nは、上述した式(9)で説明したものと同義である。)
【0161】
<NMNCNの合成>
上記方法で得られた式(9c)で表されるナフトール変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂730g(OH基当量241g/eq.)(OH基換算3.03mol)(重量平均分子量Mw390)及びトリエチルアミン459.8g(4.54mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)をジクロロメタン4041gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン298.4g(4.85mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.6モル)、ジクロロメタン661.6g、36%塩酸460.2g(4.54mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、及び水2853.2gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を72分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン183.9g(1.82mol)(ヒドロキシ基1モルに対して0.6モル)をジクロロメタン184gに溶解させた溶液(溶液2)を25分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相とを分離した。得られた有機相を水2000gで5回洗浄した。水洗5回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物NMNCN(褐色粘性物)を797g得た。得られたシアン酸エステル化合物NMNCNの重量平均分子量Mwは490であった。GPCチャートを
図5に示す。また、NMNCNのIRスペクトルは2260cm
−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図6に示す。NMNCNは、メチルエチルエチルケトンに対し、25℃で50質量%以上溶解することが可能であった。
【0162】
(実施例6)
実施例2において、NMCNを100質量部用いる代わりに、実施例5で得られたNMNCNを100質量部用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。
【0163】
(比較例1)
実施例2において、NMCNを100質量部用いる代わりに、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン(三菱ガス化学製商品名skylex)を100質量部用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を得た。なお、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパンskylexは、メチルエチルエチルケトンに対し、25℃で50質量%以上溶解することが可能であった。
【0164】
上記のようにして得られた各硬化物の特性を、以下の方法により評価した。
熱膨張係数:JIS−K−7197−2012(JIS C6481)に準拠し、熱機械的分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TMA/SS6100)を用い、試験片5mm×5mm×1.5mm、開始温度30℃、終了温度330℃、昇温速度10℃/分、加重0.05N(49mN)において、膨張・圧縮モードでの熱機械分析を実施し、60〜120℃における1℃当たりの平均熱膨張量を測定した。
質量減少率(%):JIS−K7120−1987に準拠し、示差熱熱質量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 TG/DTA6200)を用い、試験片3mm×3mm×1.5mm、開始温度30℃、終了温度500℃、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下において、質量を測定し、450℃における質量減少率を下式に基づき算出した。
質量減少率(%)=(D−E)/I×100
Dは開始温度での質量を、Eは450℃での質量を表す。
ここで、難燃性は、熱分解時の残渣量が多い、即ち、質量減少率が低いほど優れると評価した。
評価結果を表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
表1からも明らかなように、本実施例で得られたシアン酸エステル化合物は、優れた溶剤溶解性を有し、取扱性にも優れることが確認された。また、本実施例で得られたシアン酸エステル化合物を用いた硬化性樹脂組成物の硬化物は、従来品のシアネート化物を用いた場合に比して、熱膨張率が低く、優れた難燃性を有することが確認された。