(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の第一の複層塗膜形成方法は、工程(1)〜(3)を順次行うことによって複層塗膜を形成する方法である。
[工程(1)]
工程(1)では、被塗物上に、着色塗料(A)を塗装してL*a*b*表色系における明度L*値が2〜50、好ましくは2〜40、さらに好ましくは2〜25の範囲内となる着色塗膜を形成する。
被塗物
着色塗料(A)を塗装する被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0018】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0019】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0020】
上記塗膜が形成された被塗物としては、金属材料やそれから成形された金属表面に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。下塗り塗膜としては、電着塗料、なかでもカチオン電着塗料によって形成された塗膜が好ましい。中塗り塗膜としては公知の中塗り塗膜を用いることができる。
【0021】
上記被塗物は、前記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理、プライマー塗装等を行ったものであってもよい。また、該プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
着色塗料(A)
着色塗料(A)は、それを塗装して得られた塗膜がL*a*b*表色系における明度L*値が2〜50、好ましくは2〜40、さらに好ましくは2〜25の範囲内となるものであれば特に制限なく用いることができる。
【0022】
なお、本発明において、L*値は、多角度分光測色計を用いて、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光から45°の偏角を有する光)についてL*、a*、b*(JIS Z 8729(2004))を測定したときの値である。上記多角度分光測色計としては、例えば、「CM−512m3」(商品名、コニカミノルタ社製)、「MA−68II」(商品名、ビデオジェットエックスライト社製)などを使用することができる。
【0023】
ここで、上記L*値は以下の方法により測定することができる:まず、硬化電着塗膜上に着色塗料(A)を塗装する際に、ポリテトラフルオロエチレン板上にも、同様に、着色塗料(A)を塗装する。次いで、該ポリテトラフルオロエチレン板を、光輝性塗料(B)が塗装される前に回収し、該ポリテトラフルオロエチレン板上の着色塗膜を硬化せしめる。次いで、硬化した着色塗膜を剥離して回収し、予めグレー(マンセルチャートでN−6)の硬化塗膜を形成した塗板上に乗せる。次いで、「CM−512m3」(商品名、コニカミノルタ社製、多角度分光測色計)を使用し、塗膜について、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光に対して45°の角度で受光した光)についてL*値を測定する。
【0024】
着色塗料(A)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分とするそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、例えば中塗り塗料及びベース塗料等が挙げられる。
【0025】
着色塗料(A)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。
【0026】
基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0028】
ポリエステル樹脂としては、多塩基酸、多価アルコール、変性油を常法により縮合反応させて得られるものを使用することができる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β−不飽和酸を付加する方法や、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸やトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法等によって得られるエポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0030】
ウレタン樹脂としては、例えば上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0031】
着色塗料(A)としては、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。着色塗料(A)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有するものを使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0032】
また、上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0033】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物もしくはブロックポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0035】
着色塗料(A)における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者が60〜90質量%、特に70〜85質量%、後者が10〜40質量%、特に15〜30質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
前記顔料は、着色塗料(A)により形成される着色塗膜に色彩、下地隠蔽性を与えるものである。該顔料の種類や配合量を調整することによって、着色塗料(A)によって得られる塗膜のL*値を2〜50、好ましくは2〜40、さらに好ましくは2〜25の範囲内となるように調整することができる。該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、なかでも着色顔料を使用することが好ましく、漆黒性の観点から、黒色顔料を使用することがさらに好ましい。
【0037】
黒色顔料としては例えば、インク用、塗料用及びプラスチック着色用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができる。例えば、複合金属酸化物顔料、黒色酸化鉄顔料、黒色酸化チタン顔料、ペリレンブラック顔料、カーボンブラック顔料等を挙げることができるが、複層塗膜の色調の点から、カーボンブラック顔料が好ましい。中でも一次粒子径が、3〜20nmのカーボンブラック顔料が特に好ましく、より好ましくは5〜15nmのものである。具体的には、Monarch1300(商品名、CABOT社製、一次粒子径:13nm)、Raven5000(商品名、BIRLA CARBON社製、一次粒子径:11nm)等の市販品が挙げられるが、特に限定されるものではなく、求める色調に応じて1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
着色塗料(A)においては、隠蔽性、漆黒性等の観点から前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)を基準として上記黒色顔料を1質量部以上、特に1〜5質量部、好ましくは2〜4質量部含有することができる。
【0039】
メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛粉、リン化鉄、パール状金属コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄、後述するアルミナフレーク(a)、後述するアルミナフレーク(a)以外のアルミナフレーク等を挙げることができる。
【0040】
防錆顔料としては、例えば、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート、鉛シアナミド、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛等を挙げることができる。黒色顔料以外の着色顔料としては例えば、二酸化チタン(酸化チタン)、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、イエロー、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アンスラキノンレッド、キナクリドンレッド、バイオレット等を挙げることができる。体質顔料としては例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白、マイカ粉を挙げることができる。これらの顔料はそれぞれ単独で使用することができ、また2種以上併用してもよい。
【0041】
着色塗料(A)によって得られる塗膜のL*値が2〜50、好ましくは2〜40、さらに好ましくは2〜25の範囲内となるように、上記顔料の種類及び配合量を調節することができる。該顔料としてカーボンブラックを使用する場合には、漆黒性、隠蔽性等の観点から、着色塗料(A)におけるカーボンブラックの含有量は、着色塗料(A)に含まれる樹脂固形分100質量部を基準として1〜5質量部、好ましくは2〜4質量部が適当である。
【0042】
該顔料として後述するアルミナフレーク(a)を使用する場合には、漆黒性、隠蔽性等の観点から、着色塗料(A)における後述するアルミナフレーク(a)の含有量は、着色塗料(A)に含まれる樹脂固形分100質量部を基準として0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部が適当である。
【0043】
顔料は、光線透過率、下地の隠蔽性、所望の色彩等に応じて適宜の組合せで使用することができ、その使用量は下地隠蔽性、耐候性等の観点から、着色塗料(A)により形成される膜厚が15μmの硬化塗膜における波長400〜700nmの範囲での光線透過率が10%以下、好ましくは5%以下となるような量が適当である。
【0044】
なお、塗膜の光線透過率は、塗料をガラス板に硬化塗膜に基づいて所定膜厚となるように塗装し、硬化させてから、60〜70℃の温水に浸漬し、該塗膜を剥離し、乾燥することにより得られる塗膜を試料として、自記分光光度計(日立製作所製、EPS−3T型)を用いて400〜700nmの波長の範囲で測定した時の分光透過率である。測定する波長(400〜700nm)により差がある時は、最大数値をもって光線透過率とする。
【0045】
着色塗料(A)には、必要に応じて有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のエステル系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系;ブタノール、プロパノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール等のアルコール系;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系の有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
上記のうち、エステル系、エーテル系、アルコール系、ケトン系の有機溶剤が溶解性の観点から好ましい。
【0047】
光線透過率、下地の隠蔽性及び仕上り外観の観点から、着色塗料(A)により得られる着色塗膜の硬化膜厚は、15μm以上であり、好ましくは15〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。
【0048】
着色塗料(A)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(A)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(A)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を10〜60質量%程度、粘度を200〜5000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記のカチオン電着塗料による硬化電着塗膜面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。
【0049】
着色塗料(A)は、色安定性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が20μm以下、好ましくは8〜17μm、さらに好ましくは10〜15μmであることが好適である。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600−4−1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で形成される着色塗膜上に、光輝性塗料(B)を塗装して光輝性塗膜を形成する。
【0050】
上記着色塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。本明細書において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0051】
上記着色塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0052】
上記加熱は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜170℃、そしてさらに好ましくは120〜160℃の温度で、好ましくは10〜60分間、そしてより好ましくは15〜40分間実施される。
【0053】
上記着色塗膜を未硬化塗膜とする場合には、光輝性塗料(B)を塗装する前に、着色塗膜を塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことができる。
【0054】
上記プレヒートは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、そしてさらに好ましくは60〜80℃の温度で、好ましくは30秒間〜15分間、より好ましくは1分間〜10分間、そしてさらに好ましくは2分間〜5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0055】
着色塗膜は、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の向上並びにワキの抑制の観点から、光輝性塗料(B)を塗装する前に、塗膜の固形分含有率が、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、そしてさらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
光輝性塗料(B)
本発明の複層塗膜形成方法において用いられる光輝性塗料(B)は、特定のアルミナフレーク顔料(a)を含み、硬化塗膜として15μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の、波長400〜700nmの光線透過率が10〜85%、好ましくは20〜80%さらに好ましくは30〜75%であるである。
【0056】
光輝性塗料(B)は、漆黒性、耐候性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が15μm以上、好ましくは15〜500μm、さらに好ましくは15〜300μmであることが好適である。
【0057】
アルミナフレーク顔料(a)
アルミナフレーク顔料(a)は、平均粒子径が15〜25μm、好ましくは17〜23μm、さらに好ましくは18〜22μmである。ここで平均粒子径とは、アルミナフレーク顔料(a)の一次粒子の、レーザー回折式粒度分布測定における、体積平均粒子径D50をさす。
【0058】
アルミナフレーク顔料(a)は、黒色である。本明細書においてアルミナフレーク顔料(a)が黒色であるとは、ビヒクル形成樹脂固形分100質量部を基準として、顔料としてアルミナフレーク顔料(a)のみを15質量部含有する塗料を、L*値が20である鋼板上に15μmになるように塗装して得られた塗膜のL*75値が25以下であることをいう。
【0059】
アルミナフレーク顔料(a)はアルミナフレーク基材に少なくとも1層の金属酸化物が被覆され、該金属酸化物の少なくとも一部にチタン酸鉄(FeTiO
3)を含む。
【0060】
また、アルミナフレークを被覆する金属酸化物の種類は2種以上であることが好ましい。チタン酸鉄(FeTiO
3)以外の金属酸化物は、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、錫、クロム、ジルコニウム等から任意に選ばれる1または2種類以上の金属を含む金属酸化物であることが好ましい。
【0061】
アルミナフレーク基材に少なくともチタン酸鉄を含む金属酸化物を被覆する方法としては既知の方法を特に制限なく用いることができる。例えばチタン酸鉄を含む金属酸化物を被覆することもできるし、予め少なくとも1層の金属酸化物を被覆したアルミナフレークを還元することによってチタン酸鉄を含む金属酸化物とすることもできる。得られる塗膜の漆黒性の観点からは金属酸化物層は2層以上であることが好ましい。アルミナフレーク基材は、金属酸化物以外の層が被覆されていてもよい。また、上記アルミナフレーク顔料(a)は表面処理が施されていてもよい。
【0062】
光輝性塗料(B)は、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。
【0063】
光輝性塗料(B)は、ビヒクル形成樹脂を含むことが好ましい。光輝性塗料(B)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂であってもよいが熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。基体樹脂としては例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用でき、これらは単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。基体樹脂は水酸基などの架橋性官能基を有することが好ましい。
【0064】
架橋剤としては例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
架橋剤は、ビヒクル形成樹脂固形分100質量部を基準として固形分で5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部の範囲内で使用されることが望ましい。
【0066】
ビヒクル形成樹脂は有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散させて使用することができる。
【0067】
光輝性塗料(B)では、前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)を基準として上記アルミナフレーク顔料(a)を1〜17質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは2〜13質量部含有することができる。
【0068】
本発明の光輝性塗料組成物は、さらに(a)成分以外の鱗片状光輝性顔料を含有することができる。その他の鱗片状光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を金属で被覆したガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆したりした着色マイカ顔料、アルミナフレーク顔料(a)以外のアルミナフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレーク顔料などの二酸化チタン被覆鱗片状顔料、板状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料、オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられる。
【0069】
上記その他の鱗片状光輝性顔料を使用する場合、その配合量は、前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)に対して0.1〜15質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲内が適当である。
【0070】
本発明の光輝性塗料組成物は、上述の光線透過率を実現できる範囲で着色顔料を含有することができる。
【0071】
着色顔料としては例えば、着色塗料(A)の欄に記載した黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルトバイオレット、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛等の白色顔料等を挙げることができる。上記着色顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
上記着色顔料を使用する場合、その配合量は、塗装して得られる塗膜の隠蔽性や、明度・色相の点から、前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)に対し0.01〜15質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量部、そしてさらに好ましくは0.01〜5質量部の範囲内が適当である。
【0073】
上記着色顔料として黒色顔料を使用する場合、その配合量は、塗装して得られる塗膜の隠蔽性や、明度・色相の点から、前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)に対し0.01〜1質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部の範囲内が適当である。
【0074】
光輝性塗料(B)は、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤を含有することができる。
【0075】
光輝性塗料(B)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、5〜60質量%、好ましくは15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
【0076】
光輝性塗料(B)の塗装方法としては、公知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機等が挙げられ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。光輝性塗料(B)は、好ましくは5〜80μm、より好ましくは8〜60μm、そしてさらに好ましくは10〜50μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
[工程(3)]
工程(3)では、光輝性塗料(B)によって形成された光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(C)が塗装される。
【0077】
上記光輝性塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。
【0078】
上記光輝性塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0079】
上記加熱は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜170℃、そしてさらに好ましくは120〜160℃の温度で、好ましくは10〜60分間、そしてより好ましくは15〜40分間実施される。
【0080】
上記光輝性塗膜を未硬化塗膜とする場合には、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、光輝性塗膜は、クリヤー塗料(C)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、そしてさらに好ましくは60〜80℃の温度で、好ましくは30秒間〜15分間、より好ましくは1分間〜10分間、そしてさらに好ましくは2分間〜5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0081】
光輝性塗膜は、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、そしてさらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0082】
クリヤー塗料(C)としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物が挙げられる。クリヤー塗料(C)としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0083】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。上記基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0084】
クリヤー塗料(C)における基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい例として挙げられる。
【0085】
また、クリヤー塗料(C)は、一液型塗料、又は二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であることができる。
【0086】
また、クリヤー塗料(C)は、所望により、透明性を阻害しない程度に、アルミナフレーク顔料(a)を含有することができる。かかる場合、アルミナフレーク顔料(a)の含有量は、クリヤー塗料の樹脂固形分100質量部を基準として0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜4質量部、さらに好ましくは0.01〜3質量部であることが好適である。
【0087】
また、クリヤー塗料(C)は、所望により、透明性を阻害しない程度に、着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有することができ、そして体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等をさらに含有することができる。
【0088】
クリヤー塗料(C)は、光輝性塗料(B)から形成された、光輝性塗膜上に、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。クリヤー塗料(C)は、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μm、そしてさらに好ましくは20〜50μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【0089】
また、クリヤー塗料(C)の塗装後、所望により、室温で1〜60分間のインターバルをあけるか、又は40〜80℃の温度で1〜60分間プレヒートすることができる。
【0090】
上記クリヤー塗料(C)が熱硬化性の場合、該クリヤー塗料を塗装後、得られた塗膜は加熱硬化される。加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられる。加熱温度は、60〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0091】
本発明の第二の複層塗膜形成方法は、工程(4)〜(7)を順次行うことによって複層塗膜を形成する方法である。
[工程(4)]
工程(4)は、前記工程(1)と同様に行うことができる。
[工程(5)]
工程(5)は工程(4)で形成される着色塗膜上に、第1クリヤー塗料(C1)を塗装して第1クリヤー塗膜を形成する。
【0092】
上記着色塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。
【0093】
上記着色塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0094】
上記加熱は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜170℃、そしてさらに好ましくは120〜160℃の温度で、好ましくは10〜60分間、そしてより好ましくは15〜40分間実施される。
【0095】
上記着色塗膜を未硬化塗膜とする場合には、第1クリヤー塗料(C1)を塗装する前に、着色塗膜を塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことができる。
【0096】
上記プレヒートは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、そしてさらに好ましくは60〜80℃の温度で、好ましくは30秒間〜15分間、より好ましくは1分間〜10分間、そしてさらに好ましくは2分間〜5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0097】
着色塗膜は、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の向上並びにワキの抑制の観点から、第1クリヤー塗料(C1)を塗装する前に、塗膜の固形分含有率が、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、そしてさらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
第1クリヤー塗料(C1)
本発明の複層塗膜形成方法において用いられる第1クリヤー塗料(C1)は、水酸基価が80〜200、好ましくは90〜170、さらに好ましくは100〜150である水酸基含有樹脂、及びメラミン樹脂を含有する。
【0098】
第1クリヤー塗料(C1)において使用される水酸基含有樹脂の樹脂種には、特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0099】
本発明においては、なかでも、耐水性、耐候性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂が好適に用いられる。
【0100】
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0101】
前記メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂を使用することができる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、なかでもホルムアルデヒドを好適に使用することができる。また、前記部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂も使用することができる。
【0102】
第1クリヤー塗料(C1)は、さらにエポキシ基含有樹脂を含有することができる。エポキシ基含有樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、例えば、ビスフェノール類のグリシジルエーテル化物や、エポキシ基含有アクリル樹脂などがあげられ、これらの配合量は水酸基含有樹脂とメラミン樹脂との合計100重量部を基準として10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部の範囲内が適している。
【0103】
第1クリヤー塗料(C1)は、着色塗料(A)から形成された、着色塗膜上に、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。第1クリヤー塗料(C1)は、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μm、そしてさらに好ましくは20〜50μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【0104】
また、第1クリヤー塗料(C1)の塗装後、所望により、室温で1〜60分間のインターバルをあけるか、又は40〜80℃の温度で1〜60分間プレヒートすることができる。
【0105】
上記第1クリヤー塗料(C1)が熱硬化性の場合、該クリヤー塗料を塗装後、得られた塗膜は加熱硬化される。加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられる。加熱温度は、60〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
[工程(6)]
工程(6)は、被塗物が第1クリヤー塗膜であること以外は、前記工程(2)と同様に行うことができる。
[工程(7)]
工程(7)では、光輝性塗料(B)によって形成された光輝性塗膜上に、第2クリヤー塗料(C2)が塗装される。
【0106】
上記光輝性塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。
【0107】
上記光輝性塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0108】
上記加熱は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜170℃、そしてさらに好ましくは120〜160℃の温度で、好ましくは10〜60分間、そしてより好ましくは15〜40分間実施される。
【0109】
上記光輝性塗膜を未硬化塗膜とする場合には、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、光輝性塗膜は、第2クリヤー塗料(C2)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、そしてさらに好ましくは60〜80℃の温度で、好ましくは30秒間〜15分間、より好ましくは1分間〜10分間、そしてさらに好ましくは2分間〜5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0110】
光輝性塗膜は、第2クリヤー塗料(C2)を塗装する前に、所望により、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、そしてさらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0111】
第2クリヤー塗料(C2)としては、カルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有化合物を含有するクリヤー塗料、もしくは水酸基含有樹脂及びイソシアネート基含有化合物を含有するクリヤー塗料である。得られる塗膜の付着性の観点から水酸基含有樹脂及びイソシアネート基含有化合物を含有するクリヤー塗料であることが好ましい。
【0112】
また、第2クリヤー塗料(C2)は、一液型塗料、又は二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であることができる。得られる塗膜の付着性の観点から二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型であることが好ましい。
【0113】
また、第2クリヤー塗料(C2)は、所望により、透明性を阻害しない程度に、アルミナフレーク顔料(a)を含有することができる。かかる場合、アルミナフレーク顔料(a)の含有量は、クリヤー塗料の樹脂固形分100質量部を基準として0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜4質量部、さらに好ましくは0.01〜3質量部であることが好適である。
【0114】
また、第2クリヤー塗料(C2)は、所望により、透明性を阻害しない程度に、着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有することができ、そして体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等をさらに含有することができる。
【0115】
第2クリヤー塗料(C2)は、光輝性塗料(B)から形成された、光輝性塗膜上に、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。第2クリヤー塗料(C2)は、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μm、そしてさらに好ましくは20〜50μmの範囲の硬化膜厚を有するように塗装される。
【0116】
また、第2クリヤー塗料(C2)の塗装後、所望により、室温で1〜60分間のインターバルをあけるか、又は40〜80℃の温度で1〜60分間プレヒートすることができる。
【0117】
上記第2クリヤー塗料(C2)が熱硬化性の場合、該クリヤー塗料を塗装後、得られた塗膜は加熱硬化される。加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられる。加熱温度は、60〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。
【0118】
本発明の複層塗膜形成方法によって得られた複層塗膜のL*a*b*表色系における
L*25値は、25以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、
L*75値は、35以下、好ましくは25以下、さらに好ましくは15以下であり、
フリップフロップ値(FF値)は、20以上、好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、
粒子感(HG値)は、60〜100、好ましくは65〜90、さらに好ましくは70〜80であることが好適である。
【0119】
ここで、L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されている表色系であり、L*は明度を表わす数値である。
【0120】
L*25値とは、ハイライトの明度を指し、多角度分光光度計(「CM−512m3」、商品名、コニカミノルタ社製)を使用して、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に25°の角度で受光した光について測定したL*値である。L*25値が高いほどハイライトが明るいことを意味する。
【0121】
L*75値とは、シェードの明度を指し、多角度分光光度計(「CM−512m3」、商品名、コニカミノルタ社製)を使用して、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に75°の角度で受光した光について測定したL*値である。L*75値が低いほど塗膜のシェードが暗く漆黒性に優れることを意味する。
【0122】
また、フリップフロップ値(以下、FF値と略記することがある)とは、観察角度(受光角度)が変化した時の反射光強度の変化度合をいう。
FF値は、多角度分光測色計(商品名「CM−512m3」)を使用して、L*25値及びL*75(明度)を測定し、下記の式によって算出される。
FF値=L*25値−L*75。
FF値が大きいほど、観察角度(受光角)によるL値(明度)の変化が大きく、フリップフロップ性に優れていることを示す。
【0123】
本発明において、「フリップフロップ性に優れる」とは、メタリック塗膜を目視したとき、正面方向(塗面に対して直角)からは、高明度で、かつキラキラとして光輝感にすぐれて見え、一方、斜め方向からは光輝感は少なく色相がはっきりと見え、両者の明度差が大きいことを意味している。つまり、フリップフロップ値の高い塗膜とはメタリック感に優れた塗膜である。
【0124】
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0〜100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした値である。
【0125】
また、本発明の複層塗膜形成方法によって得られた塗膜はシェードにおいて彩度が低い点で漆黒性に優れる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
被塗物の作製
被塗物1
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。
得られた上記鋼板の電着塗面に、中塗り塗料「TP−65 グレー」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型、L*値60)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめ被塗物1とした。
着色塗料(A)の製造
製造例1〜4
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)75部及びメラミン樹脂25部からなるビヒクル形成樹脂組成物100部あたり着色顔料を固形分として表1に示す量になるように配合して撹拌混合し、適宜有機溶剤を用いて粘度を調整し、着色塗料(A−1)〜(A−4)を得た。得られた塗料を被塗物1に15μmになるように塗装して得られた塗膜のL*値を併せて表1に示した。L*値は「CM−512m3」(商品名、コニカミノルタ社製、多角度分光測色計)を使用し、塗膜について、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光に対して45°の角度で受光した光)を測定して得られた値である。
【0127】
表1に記載した顔料の詳細は以下の通りである。
【0128】
Raven5000:商品名、BIRLA CARBON社製、カーボンブラック
JR−806:商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン
【0129】
【表1】
【0130】
光輝性塗料(B)の製造
製造例5〜15
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)75部及びメラミン樹脂25部からなるビヒクル形成樹脂組成物100部あたり、光輝材及び必要に応じて着色顔料を固形分として表2に示す量になるように配合して攪拌混合し、適宜、有機溶剤を用いて粘度を調整し、光輝性塗料(B−1)〜(B−11)を作成した。得られた光輝性塗料を15μmの膜厚での塗膜の400〜700nmの光線透過率を併せて表2に示した。
【0131】
表2に記載の顔料の詳細は以下の通りである。
【0132】
Xirallic M60−60WNT:商品名、メルク社製、アルミナフレーク基材の表面に少なくとも1層のチタン酸鉄(FeTiO
3)を含む金属酸化物が被覆された光輝性顔料。体積平均粒子径D50が20μm。黒色。なお、本明細書で光輝性顔料が黒色とは、ビヒクル形成樹脂固形分100質量部を基準として、顔料としてアルミナフレーク顔料(a)のみを15質量部含有する塗料を、L*値が20である鋼板上に15μmになるように塗装して得られた塗膜のL*75値が25以下であることをいう。
【0133】
Iriodin 602WNT:商品名、メルク社製、天然雲母基材の表面に少なくとも1層のチタン酸鉄(FeTiO
3)を含む金属酸化物が被覆された光輝性顔料。体積平均粒子径D50が21μm。黒色。
【0134】
Pariocrom L6001:BASF社製、還元酸化チタンコート天然雲母、チタン酸鉄を含まない。体積平均粒子径D50が22μm。ブルーグレー色。なお、本明細書で光輝性顔料がブルーグレー色であるとは、ビヒクル形成樹脂固形分100質量部を基準として、顔料としてアルミナフレーク顔料(a)のみを15質量部含有する塗料を、L*値が20である鋼板上に15μmになるように塗装して得られた塗膜のL*75値が20〜30、b*値が0〜−10であることをいう。
【0135】
Infinite BP15−SO:商品名、資生堂社製、天然マイカ基材の表面に少なくとも1層の低次酸化チタンを含む金属酸化物が被覆された光輝性顔料。該金属酸化物層はチタン酸鉄を含まない。体積平均粒子径D50が17μm。黒色。
【0136】
Iriodin 103WNT:商品名、メルク社製、天然雲母機材の表面に酸化チタンが被覆された光輝性顔料。体積平均粒子径D50が19μm。銀色。なお、本明細書で光輝性顔料が銀色であるとは、ビヒクル形成樹脂固形分100質量部を基準として、顔料としてアルミナフレーク顔料(a)のみを15質量部含有する塗料を、L*値が20である鋼板上に15μmになるように塗装して得られた塗膜のL*25値が60以上であることをいう。
【0137】
Xirallic T60−10WNT Crystal Silver:商品名、メルク社製、アルミナフレーク基材の顔料に少なくとも1層の二酸化チタンを含む金属酸化物が被覆された光輝性顔料。該金属酸化物層はチタン酸鉄を含まない。銀色。体積平均粒子径D50が19μm
アルミGX40A:商品名、旭化成メタルズ社製、鱗片状アルミニウム顔料
Raven5000:商品名、BIRLA CARBON社製、カーボンブラック
CYANINE BLUE G−314:商品名、山陽色素社製、青色顔料
白黒隠蔽膜厚
JIS K 5600−4−1(2004)に定められた、100mm×200mm以上の大きさであって隣接して白部と黒部が印刷され且つワニスが塗布されていて、溶剤又は水で希釈された塗料で容易にぬれるが浸透しない隠蔽率試験紙の上に、光輝性塗料(B−1)〜(B−11)を塗装し、140℃30分間乾燥硬化させた。白地上と黒地上の色差ΔE*が2.5以下となる最小の硬化膜厚を白黒隠蔽膜厚と定義した。白黒隠蔽膜厚の値が小さいほど、漆黒性に優れることを意味する。
【0138】
【表2】
【0139】
複層塗膜の形成
実施例1
被塗物1に、着色塗料(A−1)を回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化塗膜に基づいて膜厚が15μmになるように塗装した。3分間静置後、80℃で3分間プレヒートを行ない、着色塗膜を形成せしめた。
【0140】
該着色塗膜上に、回転霧化型の静電塗装機を用いて光輝性塗料(B−1)を、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、20℃にて5分間放置した。ついで、その未硬化塗膜上に、クリヤー塗料(C−1)「マジクロンKINO−1210」(関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂系溶剤型)を、ミニベル型回転式静電塗装機を用いて、硬化塗膜として35μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付け乾燥させ、試験板を得た。
【0141】
実施例2〜7、比較例1〜8
実施例1において、着色塗料(A−1)、光輝性塗料(B−1)及びクリヤー塗料(C−1)を、表3に示す塗料に替えて試験板を得た。
【0142】
表3に記載のクリヤー塗料(C−2)の詳細は以下の通りである。
【0143】
クリヤー塗料(C−2):「マジクロンKINO−1210」の樹脂固形分100部を基準として、Xirallic M60−60WNTを0.5部含有する塗料。
【0144】
実施例8
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。得られた上記鋼板の電着塗面に、着色塗料(A−5)として中塗り塗料「TP−65 ブラック」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型、L*値20)を回転霧化型の静電塗装機にて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめた。中塗り塗膜の上に光輝性塗料(B−1)を、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、20℃にて5分間放置した。ついで、その未硬化塗膜上に、クリヤー塗料(C−1)「マジクロンKINO−1210」(関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂系溶剤型)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化塗膜として35μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付け乾燥させ、試験板を得た。
【0145】
実施例9
被塗物1に、着色塗料(A−1)を回転霧化型の静電塗装機を用いて硬化塗膜に基づいて膜厚が15μmになるように塗装し、3分間静置後、80℃で3分間プレヒートして、着色塗膜を形成せしめた。該着色塗膜上に第1クリヤー(C1)としてクリヤー塗料(C−3)「TC−69」(関西ペイント社製、商品名、 アクリルメラミン硬化型、水酸基価が120の水酸基含有アクリル樹脂を含有する)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化塗膜として35μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付け乾燥させ第1クリヤー塗膜を得た。第1クリヤー塗膜の上に光輝性塗料(B−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、20℃にて5分間放置した。ついで、その未硬化塗膜上に、第2クリヤー(C2)としてクリヤー塗料(C−4)「マジクロンKINO−6500」(関西ペイント社製、商品名、2液型アクリルウレタン系溶剤型)を、回転霧化型の静電塗装機を用い、硬化塗膜として35μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付け乾燥させ、試験板を得た。
塗膜の評価
上記で得られた試験板を各評価試験に供した。
上記で得られた試験板について、それぞれ多角度分光光度計(「CM−512m3」商品名、コニカミノルタ社製)にて測色して各測色値、具体的には、ハイライトのL値(L*25値)、シェードの L値(L*75値)、FF(フリップフロップ)値、を得た。HG値は、前述のようにして得た。表3にその結果を示す。
【0146】
ムラ
各試験板に対してハイライト及びシェードの角度からの塗膜のムラを観察した。評価は、色彩開発に3年以上従事するデザイナー2名と技術者3名の計5名が行なった。
◎:非常に良好
○:良好
△:ムラが目立つ
×:非常にムラが目立つ
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】