(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド部材の先端側周囲に装着されて前記繰出し手段を収容している筐体と、前記筐体に設けられて前記伸縮部材の先端側を内側から外へ出没させる出入口と、前記出入口を閉じたり筐体内への土砂等の浸入を防ぐための被覆部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載の地中作業装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、既設構造物として、構造物基礎などの地中構造物、河川の樋門樋管や橋脚といった杭式構造物には、その構造物直下に空洞やゆるみ領域が存在し、それに伴う沈下あるいは地震等に起因し構造物が変形したり損傷の恐れがある。ところで、構造物直下を調査する従来方法には、地上あるいは構造物内の路下からレーダー探査を行ったり、地中構造物に穿孔しその孔にレーダーや超小型テレビなどを入れて調査している。しかし、前者では、深度に伴う精度低下や路下作業時期の制約(例えば水路であれば渇水期)などがある。後者では、構造物に孔をあけるため構造物の強度を低下する恐れがある。また、それらの対策例としては特許文献1や2が挙げられる。
【0003】
図11(a)は特許文献1に開示の地下構造物直下の調査方法を示している。この調査方法では、調査対象のフーティング基礎2の外側方近傍位置に掘削形成した立坑内の下部において、金属管5を管ベンダー4の適用により縦方向から横方向に曲げ加工を行いながら該金属管5の横向き部を地中において、基礎2に向けて推進させることにより金属管5先端をその基礎の下端下方に到達させ、その後、金属管5内を通じ基礎下に超小型テレビカメラ8を挿入し、テレビカメラ8から送られてくる映像を目視観察することにより基礎下地盤内の空洞の有無を判別する構成である。また、特許文献1には、この構成に代えて、金属管の横向き部を管ベンダーを介して直線上に推進させる構成も示されている。更に、特許文献1には、金属管5の横向き部の地中に於ける推進を、該金属管の先端に備えた先端ビットの掘削と該ビットの噴孔より噴出される掘削水による削孔とにより案内させる構成、調査で空洞有りと判明した場合には調査に引き続き、金属管5を利用して空洞9内にグラウトを注入充填する構成も開示されている。
【0004】
一方、
図11(b)は、特許文献2に開示の既設構造物直下に壁状遮断壁(固化体)を構築する方法を示している。この構築方法では、立坑2を構築する立坑構築工程と、立坑2から水平方向の地盤中に改良体11を構築する改良体構築工程とからなり、改良体構築工程を繰り返して、鉛直方向に改良体11が複数連続した遮断壁を地盤中に構築する。ここで、改良体構築工程では、立坑2から水平方向の地盤へ先端に噴射改良装置31を備えた推進管4及び後続の推進管4を継ぎ足しながら推進させて所定の距離を掘削する掘削工程と、立坑2にて推進管4を地盤から引き抜くと共に、最後尾に位置する噴射改良装置31から地盤改良材を噴射攪拌して地盤中に改良体11を構築する工程とを繰り返す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献の方法では、例えば、既設構造物直下の状況を文献1のごとく直接に把握するため信頼性が得られ、補修箇所である空洞等に地盤改良材を効率よく充填し修復可能となるが、以下に述べるような観点から未だ満足できない。
【0007】
まず、特許文献1の構成では、立坑内の下部において、金属管の横向き部を管ベンダーを介して曲げ加工を施し直線上つまり水平方向に推進させると言っても、地中に存在する石や岩等の障害物により設計通りに真っ直ぐに前進移動し難い。これは、立坑からフーティング基礎直下までの距離が長くなるほど顕著となる。また、この構成では、金属管の管内からカメラを露出させたり、掘削や地盤改良用流体を管内に挿入されるフレキシブルシャフト等を介して噴射させるため、調査や噴射範囲が極めて狭くなるという制約があり、例えば調査を面的に行うには金属管の前進及び引き抜きを複数箇所で繰り返さなければならない。
【0008】
特許文献2の構成では、立坑内で多数の推進管を継ぎ足しながらジャッキにより構造物直下まで推進させるため、立坑の孔径をかなり大きく構築しなければならず、また各推進管を互いに連結又は連結解除したりジャッキ操作を繰り返し行う関係で複雑かつ作業性に欠けていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、比較的簡易な構成により例えば構造物直下の調査、その調査結果又は施工設計に基づいて地盤改良用固化体などを造成できる地中作業装置及び方法を提供することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、
図1〜
図4を参照して特定すると、地表側より地盤内に略縦方向に貫入配置したり引き抜かれるガイド部材2と、前記ガイド部材に支持された状態に設けられてガイド部材の先端側周辺から地中の略水平方向に伸縮される伸縮部材4を有した繰出し手段3と、前記伸縮部材の先端側に設けられて、前記ガイド部材に沿って地表側より供給経路を介して移送され
てくる掘削や地盤改良用流体を噴射する噴射ノズル7、又は/及び、地中の状況をカメラ等で観察したりセンサ等で感知する調査機器8Aや8Bからなる作業手段8とを備え
、また、前記伸縮部材は、前記繰出し手段の繰出し動作により可撓性の部材を互いに一体に結合して繰出し方向に順次伸張しかつ流体用供給管等の長尺物を挿通可能な中空部を形成しつつ剛体化すると共に、前記繰出し手段の縮小動作により分割又は折畳み状態に収納空間に収まる一対の単位リンク連結体からなることを特徴と
する地中作業装置である。
【0011】
以上の本発明において、ガイド部材は、地表側より地中に貫入配置したり引き抜かれると共に、繰出し手段を支持している。繰出し手段は、ガイド部材に支持された状態でガイド部材の先端側周辺から伸縮部材をモータ等の回転駆動機構やピストン機構等により略水平方向に伸長したり縮小する。伸縮部材としては、
図2や
図3に挙げた特願2014−28169号に記載の噛合式構造(以下、これに記載の発明を先願1とい
う)などがある。勿論、それ以外でもよい。
【0012】
作業手段は、ガイド部材に沿って地表側より供給される各種材料を噴射する噴射ノズルと、地中の状況を観察したり感知(検出)する調査機器とに大別される。噴射ノズルとしては、例えば各種材料を供給される高圧エアーに同伴させる構成、それに類似の構成を含む。調査機器としては、超小型カメラつまり例えばボアホールカメラやファイバースコープを用いた目視探査、地中レーダー探査つまり電磁波を地中へ照射しその反射波のパターンを利用した地質状況の探査、先端コーンを用いて貫入抵抗からの探査、更には赤外線、圧力、比抵抗、押出し抵抗などを感知する機器であり、これらの一種或いは複数を有している。
【0013】
以上の本発明は、請求項2から
4のように具体化したり展開されることが好ましい。
(1)前記ガイド部材の先端側周囲に装着されて前記繰出し手段を収容している筐体と、前記筐体に設けられて前記伸縮部材の先端側を内側から外へ出没させる出入口と、前記出入口を閉じたり筐体内への土砂等の浸入を防ぐための被覆部材とを有している構成である(請求項2)。この被覆部材は、伸縮部材の伸縮作動を阻害せず、良好な伸縮作動を維持するため関係箇所を覆う部材であり、
図2(a)に例示のごとく開閉蓋構造や刷毛構造
、蛇腹や伸縮性素材を用いた構造などが考えられる。
(2)前記噴射ノズルは、前記伸縮部材の先端又は両側に設けられている構成である(請求項3)。
【0014】
(3)前記繰出し手段は、図7に例示のごとく前記ガイド部材に略対向して設けられた一対からなる構成である(請求項4)。
【0015】
以上の本発明は、請求項
5から7の地中作業方法に用いられることが好ましい。
(4)請求項1から
4の何れかに記載の地中作業装置を使用して構造物直下の調査を目的とした地中作業方法であって、前記ガイド部材を地中所定深度まで略垂直に貫入配置するガイド部材建込み工程と、前記伸縮部材を所定長さ伸長すると共に、前記調査用機器で地中の状況を観察したり感知する調査工程と、 前記調査工程で判明した地中の低密度部ないしは空洞部、又は及び、前記伸縮部材の縮小作動により生じる低密度部ないしは空洞部に前記噴射ノズルから地盤改良用流体を噴射する充填工程とを経る構成である(請求項
5)。
【0016】
(5)請求項1から
4の何れかに記載の地中作業装置を使用して地盤中に壁状の固化体を造成する地中作業方法であって、前記ガイド部材を前記固化体の下端又は上端に対応した地中所定深度まで略垂直に貫入配置した後、前記伸縮部材を伸長、又は及び、縮小しながら前記噴射ノズルから地盤改良用流体を噴射し略水平方向に固化部分を造成する固化部分造成操作を、前記ガイド部材を前記固化体の上端又は下端に対応した深さまで略定距離づつ引き抜いたり貫入する毎に繰り返し行うことにより目的大の固化体を造成する構成である(請求項
6)。
(6)前記ガイド部材は、請求項
5と6において、回転手段及び掘削手段を有し、前記回転手段の回転により前記掘削手段を介して縦孔を掘削しつつ地盤内に貫入配置される構成である(請求項
7)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、ガイド部材及びガイド部材に設けられて略水平方向に伸縮される伸縮部材を有した繰出し手段、並びに伸縮部材の先端側に設けられたノズルや調査機器からなる作業手段を備えた地中作業装置であり、以下のような利点を有している。
(ア)本発明の地中作業装置は、繰出し手段がガイド部材を介して地中の所定深度に貫入配置された状態で、伸縮部材の伸縮作動時の応力などをガイド部材を介して受け止めたり、伸縮部材の先端側に設けられた作業手段を利用可能なため、特許文献1や2に比べ作業性及び取扱性に優れている。
(イ)すなわち、本発明装置を用いて、請求項
5や6に挙げたような地中作業を実施できる。このため、特許文献1の金属管を管ベンダーにより曲げ加工を施す構成に比べ地中に貫入配置したガイド部材が構造物から多少離れていても、繰出し手段により伸縮部材を効率よく水平方向に伸縮でき、特許文献2の立坑内で多数の推進管をジャッキにより継ぎ足す構成に比べガイド部材を地中の所定深度に貫入配置するための孔径を大幅に小さくでき、繰出し手段及び作業手段により効率的な作業を実現できる。
【0018】
(ウ)また、この発明では、噴射ノズルへの供給経路や調査機器に接続されるケーブル等の長尺物を伸縮部材の中空部内に沿って配置できるため、伸縮部材の外面に沿って配置する構成を減らしてトラブル要因を減少できる。
【0019】
請求項2の発明では、筐体の出入口から伸縮部材の先端側を外へ出没させる構成だと、筐体内へ土砂等が浸入し易くなるが、被覆部材によりその土砂等の浸入を防ぐことにより良好な伸縮作動を維持できる。
【0020】
請求項3の発明では、伸縮部材の先端に設けられた噴射ノズルにより伸長過程で掘削用流体を高圧噴射したり、調査で見つかった地中の低密度部ないしは空洞部、更には伸縮部材の後退により生じる低密度部ないしは空洞部に地盤改良用材料を噴射することができる。同時に、伸縮部材の両側に設けられた噴射ノズルにより壁状の固化体として壁の肉厚寸法を大きくすることも可能となる。
【0021】
請求項4の発明では、前記繰出し手段がガイド部材に対向して設けられた一対からなるため、ガイド部材にバランスよく装着できる点、各伸縮部材に設けられる噴射ノズルにより請求項3よりも固化体として壁の肉厚寸法を更に大きくしたり、各伸縮部材に設けられる調査機器により広い範囲を同時に探査可能となる。
【0022】
【0023】
請求項
5の発明では構造物直下の調査を目的とした地中作業方法として、請求項
6の発明では地盤中に壁状の固化体を造成する地中作業方法として、以上述べたような利点を具備できる。
【0024】
請求項
7の発明では、請求項
5,6においてガイド部材を地中所定深度まで貫入配置する操作を掘削手段により地盤に孔を掘削しつつ連続して自動的に行えるため施工工数及び施工費を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した形態例及びその変形例を図面を参照して説明する。この説明では、
図1〜
図4に示した装置構造、及びそれを用いた
図5に示した地中作業方法と、
図6の地中作業方法、
図7の変形例1の順に詳述する。なお、図面は一部を省略したり模式化されている。
【0027】
(装置構造)地中作業装置9は、
図1〜
図4に示されるごとく、先端側にリーダー10を立設支持しているベースマシン1と、リーダー10に沿って昇降されて地表側から地盤内に向けて縦方向に貫入配置したり引き抜かれるガイド部材2と、ガイド部材2に支持されて該ガイド部材の先端側周辺より地盤内の略水平方向に向けて伸縮部材4を伸縮駆動する繰出し手段3と、伸縮部材4の先端側に設けられてガイド部材2に沿って地表側より供給管23などを介して移送されくる掘削や埋戻し兼地盤改良用流体を噴射する噴射ノズル7、又は/及び、地中の状況をカメラ等で観察したりセンサ等で感知する調査機器8Aや8Bからなる作業手段8とを備えている。
【0028】
ここで、
図1や
図7の例は、構造物として、地下構造物Aの直下に空洞部Bや弛みが生じているか調査機器8Aや8Bにより調べた後、調査で確認された空洞部Bを埋め戻すと共に空洞部Bを含む構造物直下に地盤改良材などを噴射ノズル7から噴射して地盤改良する設定である。装置の細部は以下の通りである。
【0029】
図1において、ベースマシン1は、リーダー10を起立状態に支持したり、運転室に各種機器類を制御する制御装置等を搭載している。リーダー10には、可動支持体12がラック・ピニオン等の昇降機構13によりリーダーの上下方向に移動可能に配設されている。可動支持体12は、昇降機構13を構成してリーダー10側の固定側機構部と噛み合っている不図示の可動側機構部と、上記ガイド部材2(後述する外筒21)の上側を支持する不図示のホルダー機構と、ガイド部材2(後述する内筒20)を回転する回転機構14とを保持している。
【0030】
また、リーダー13には、下側に設けられてガイド部材2の振れを規制する振止具11と、上側に設けられて管路18の上側を支えるガイド具16と、不図示の油圧装置側に接続されている作動油用管路(導入路及び排出路)19などを有している。管路18の上端は、スイベル15等を介し供給管22や23の上端に接続されている。管路19の上端は、スイベル15等を介してガイド部材2(の内筒20と外筒21との間の隙間)に配管されている不図示の油圧用ホースに接続されている。この油圧ホースは、繰出し手段3を構成して伸縮部材4を伸長したり縮小する油圧モータ等の回転駆動手段(図示を省略)に接続されている。なお、符号25は供給管23及び後述するケーブル24又は24aを束ねている拘束部材である。この拘束部材25は省略されることもある。
【0031】
ガイド部材2は、
図1(b)に示されるごとく内筒20及び外筒21からなる。内筒20は、下側に連結された掘削手段26と、筒内に沿って配管されて掘削や埋戻し用流体などを移送する供給管22とを有している。また、掘削手段26は、複数の掘削刃で構成されると共に、掘削刃の近くに設けられて供給管22に接続された不図示の噴射ノズルを有している。そして、掘削や埋戻し用流体は、内筒20の上部に設けられたスイベル15を介して供給管22から前記噴射ノズルに送られて噴射される。外筒21は、内筒20との間に所定の隙間を保つよう設けられている。そして、この例では、
図4のごとくその隙間を利用して伸縮部材4の先端側に設けられる噴射ノズル7に掘削や埋戻し用流体などを移送する供給管23と、上記した油圧ホース24とを配置している。また、前記隙間には、図示を省いたが、供給管23やホース24に加えて後述する調査機器用のケーブル24aや24bも配置している。但し、供給管23、ホース24、ケーブル24a,24bなどはこの例以外でも、外筒21の外周面に沿って配置してもよい。
【0032】
繰出し手段3は、上記した先願1に記載の伸縮装置と基本的に同じくし、筐体37に収納されて、ガイド部材2の外筒21に筐体37を固定支持した状態で、ガイド部材の先端側周辺つまり筐体37に設けられた出入口37aより伸縮部材4を略水平方向に伸長したり縮小する。伸縮部材4は、可撓性を有し、繰出し手段3の繰出し動作により一体に結合して繰出し方向に順次伸長しつつ剛体化すると共に、繰出し手段3の縮小動作により分割又は折畳み状態に収納空間に収まる一対のリンク連結体(先願1の単位リンク部材連結体と同じ)4A,4Bからなる。また、伸縮部材4は、リンク連結体4A,4B同士の結合による伸縮部材の形成時に、内側に供給管23等の長尺物を長手方向に挿通配置可能な中空部40を形成する構成である。
【0033】
図2〜
図4において、筐体37には、一対の支持基台35が内部に対向配置されていると共に、側壁に設けられて伸縮部材4の先端側を内側から外へ出没させる出入口37aが設けられている。両支持基台35には、繰出し手段3として、第1及び第2リンク連結体4A,4Bをそれぞれ巻き上げ又は送り出すための第1及び第2回転体30,30と、各回転体30から送り出された第1及び第2リンク連結体4A,4Bを上下から押圧する圧着手段である一対のローラー38とが支持されている。また、この構造では、外壁に上縁部を装着した状態に設けられた蓋部材6Aにより出入口37aを開閉されることにより、また、内壁に装着された刷毛部材6Bにより伸縮部材4に付着した土砂等を落とすことにより、筐体内への土砂等の浸入を防ぐようにしている。
【0034】
換言すると、繰出し手段3は、伸縮部材4を構成している単位リンク部材41の複数個を、ヒンジ42を用いて回転可能に順次連結して形成された第1及び第2リンク連結体4A,4Bと、両リンク連結体4A,4Bをそれぞれ巻き上げ又は送り出す上下一対の第1及び第2回転体30,30と、各回転体30の回転体駆動軸33と、一方の回転駆動軸33に作動連結されて油圧モーター等で回転駆動する不図示の回転駆動手段とを備えている。符号36は筐体37内にあって、回転体駆動手段の概略的な配置箇所を示している。
【0035】
また、リンク連結体4A,4Bは、先端が結合体45に連結されると共に、ヒンジ42で連結される連結面41aと、連結面41aの反対側である非連結面(凹部43や凸部44を形成している面)をそれぞれ有し、回転体30から送り出されたリンク連結体4A,4Bの前記した非連結面を互いに凹部43及び凸部44の係合を介して当接する構成である。更に、連結面41aには、回転体30の外周に設けられた凸部32と係合する凹部46が設けられている。
【0036】
更に、以上のリンク連結体4A,4Bは、
図3(b)に模式的に示したが、第1及び第2回転体30,30に螺旋状に巻き取られるようにして必要な長さに形成可能である。この場合、第1及び第2回転体30,30は、螺旋巻きが行える奥行き幅を有すると共に、回転体30外周にあって凸部32が螺旋状に対応する箇所に形成される。また、単位リンク部材41は、リンク連結体4A,4Bが螺旋巻きされるよう、連結する2つの単位リンク部材41同士がそれぞれ傾斜角度αで結合されている。この細部は先願1の関連箇所の記載を参照されたい。
【0037】
結合体45は、内部空洞で偏平な矩形状となっていると共に、
図4(a)に示されるごとく噴射ノズル7及び作業手段8を有している。噴射ノズル7は、結合体45の先端面に内部空洞から噴射口を前方に向けて突設している。そして、噴射ノズル7の後端には、結合体45内にあって上記した供給管23の先端と連結されている。この構造では、地表側に設けられた掘削用流体製造プラントから高圧流体が管路18、スイベル15、供給管23を通して噴射ノズル7より高圧噴射され地盤を掘削したり、埋戻し用流体製造プラントから埋戻し材や改良材が管路18、スイベル15、供給管23を通して噴射ノズル7より噴射される。
【0038】
一方、作業手段8は、結合体45の上面中央に装着されているボアホールレーダ8Aの例である。このボアホールレーダ8Aは、掘削した孔内に電磁波を送受信可能なダイホールアンテナ等を挿入し、掘削孔の周辺の状況を探査する構成である。このレーダーシステムは、電磁波の反射を利用しており、掘削孔周辺1〜2m程度の範囲の反射断面記録による視覚的な探査結果が得られ、磁気探査等の他の手法と比較して高分解能であるとされる。符号24aはボアホールレーダ8Aに接続されたケーブルであり、伸縮部材4内に沿って配置されて地表側へ導かれている。ケーブル24aは、必要に応じて供給管23と共に拘束部材25で拘束される。
【0039】
図4(b)は、同(a)に対し噴射ノズル7の配置を変更し、又、作業手段8としてボアホールカメラ8Bを用いた例である。噴射ノズル7は、結合体45の両側部に対して、その噴出口を前方に向くよう配置されると共に、ブラケット47を介して固定されている。各噴射ノズル7の後端には、接合具7aを介して上記した供給管23の先端が連結されている。そして、この構造では、地表側に設けられた掘削用流体製造プラントから高圧流体が、或いは埋戻し用流体製造プラントから埋戻し材や改良材が管路18、スイベル15、供給管23を通して噴射ノズル7よりそれぞれ噴射される。ボアホールカメラ8Bは、結合体45に対し前方に向くよう配置されたものと、上向きに配置されたもの、合計2つ用いられているが、何れか一方だけでもよい。ボアホールカメラ8Bは、地盤中の空洞の存在や地質状況を観察したり、不連続面の傾斜などを測定でき、更に亀裂の開口程度や亀裂面の状況も知ることができる。符号24bはボアホールカメラ8Bに接続されたケーブルであり、伸縮部材4内に沿って配置されて地表側へ導かれている。このケーブル24bも必要に応じて供給管23と共に拘束部材25で拘束される。
【0040】
(地中作業方法1)次に、以上の地中作業装置9を用いて、
図1及び
図5に示した構造物直下の調査を目的とした地中作業方法について説明する。この方法では、ガイド部材2を調査箇所に貫入配置するガイド部材建込み工程と、伸縮部材4を所定長さ伸長してボアホールレーダ8A(又はボアホールカメラ8B)で地中の状況を探査する調査工程と、調査工程で判明した地中の低密度部ないしは空洞部Bなどに噴射ノズル7から地盤改良用流体を噴射する充填工程とを経る。
【0041】
すなわち、ガイド部材建込み工程では、ガイド部材2が
図1及び
図5(a)に示したごとく対象地盤の調査箇所に位置決めされた状態から、回転機構14の掘削用モータを駆動させると共に、昇降機構13の昇降用モータを駆動させて可動支持体12を介して下降されて掘削刃26により地盤を掘削する。その際は、掘削用流体が管路18、スイベル15を介して供給管22から掘削刃26の近辺に設けられた噴射ノズルに送られて噴射される。但し、この噴射は省略可能である。そして、この工程では、
図5(a)のごとく掘削刃26が地下構造物Aの近くで、底版A1より下方の所定深度に到達したらガイド部材2を静止状態となるよう支持し、かつ、上記した掘削用流体の供給を停止したり、上記した回転機構14の掘削用モータ及び昇降機構の昇降用モータを停止する。
【0042】
調査工程では、
図5(b)のごとく繰出し手段3の上記した回転駆動手段の油圧モータ等を正転させ、伸縮部材4を所定長さまで伸長させると共に、必要に応じて掘削用流体を噴射ノズル7から噴射し掘削を助ける。また、伸縮部材4が目的の距離だけ伸長したら、ボアホールレーダ8A(又はボアホールカメラ8B)で地中の状況を観察したり感知し、その感知データがケーブル24等を介して地表側の測定機器本体に送信され、探査記録として表示されたり印刷される。この探査結果から、地中に低密度部ないしは空洞部Bが確認されたときは、例えば、次の充填工程において地盤改良用流体を噴射ノズル7から噴射するよう制御される。
【0043】
つまり、充填工程では、同(c)に示したごとく前記油圧モータ等を逆転させて伸縮部材4を縮小すると共に、地盤改良用流体を噴射ノズル7から噴射する。この噴射は、地盤改良用流体の必要量により空洞部Bが埋まるよう制御されると共に、伸縮部材4の縮小作動により生じる低密度部ないしは空洞部にも噴射ノズル7から地盤改良ないしは埋戻し用流体を噴射して埋戻す。そして、この構造では、以上のごとく伸縮部材4が縮小して筐体37にほぼ収まった収納位置になったら、繰出し用油圧モータ等が自動的に停止されたり、前記埋戻し用流体の供給が停止される。
【0044】
次に、ガイド部材2は、昇降機構13の昇降用モータを逆駆動させて可動支持体12を介し上昇されて
図1(a)のごとく地表側の上昇位置に移動される。その際は、埋戻し用流体が管路18、スイベル15を介して供給管22から掘削刃26の近辺に設けられた噴射ノズルに送られて噴射される。この噴射は、ガイド部材2が設定された上昇位置に達すると自動的に供給停止される。同時に、昇降用モータも停止される。
【0045】
(地中作業方法2)次に、以上の地中作業装置9を用いて、
図6に例示した構造物直下など地盤中に壁状の固化体を造成する地中作業方法について説明する。この方法では、ガイド部材2を目的の箇所に貫入配置するガイド部材建込み工程と、
図6(a)〜(c)のごとく伸縮部材4を伸長したり縮小しながら噴射ノズル7から地盤改良用流体を噴射し略水平方向に固化部分を造成する固化部分造成操作を繰り返し行うことにより目的大の固化体を造成する固化体造成工程とからなる。
【0046】
すなわち、ガイド部材建込み工程は上記した地中作業方法1と同じ。固化体造成工程では、ガイド部材2が目的の深さまで貫入配置された状態において、
図5(b)と同じく繰出し手段3の上記した回転駆動手段の油圧モータ等を正転させ、伸縮部材4を所定長さまで伸長させると共に、必要に応じて掘削用流体を噴射ノズル7から噴射し掘削を助ける。また、伸縮部材4が目的の距離だけ伸長したら、今度は
図6(a)に示したごとく前記油圧モータ等を逆転させて伸縮部材4を縮小すると共に、地盤改良用流体を噴射ノズル7から噴射して所定長さの固化体部分d1を造成する。この場合は、地盤改良用流体が伸縮部材4の縮小作動により生じる低密度部ないしは空洞部にも満たされるよう制御されたり、噴射力として伸縮部材4の最大突出距離Nから更に前方へ噴射される距離nを考慮して制御される。
【0047】
この構造では、以上のごとく伸縮部材4が縮小して筐体37にほぼ収まった収納位置になったら、繰出し用油圧モータ等が自動的に停止されたり地盤改良用流体の供給が停止される。その後、ガイド部材2は、昇降機構13の昇降用モータを逆駆動させて可動支持体12を介し所定高さ(この例では、最下端の第1段目の固化体部分d1から第2段目の固化体部分として造成する高さ分だけ)上昇される。その際は、埋戻し兼用の地盤改良用流体が管路18、スイベル15を介して供給管22から掘削刃26の近辺に設けられた噴射ノズルに送られて噴射される。この噴射は、ガイド部材2が設定された目的の上昇位置に達すると自動的に供給停止される。同時に、昇降用モータも停止される。
【0048】
その後は、前述と同じく
図6(b)のごとく繰出し手段3の油圧モータ等を正転させ、伸縮部材4を所定長さまで伸長させると共に、必要に応じて掘削用流体を噴射ノズル7から噴射し掘削を助ける。また、伸縮部材4が目的の距離だけ伸長したら、今度も前記油圧モータ等を逆転させて伸縮部材4を縮小すると共に、地盤改良用流体を噴射ノズル7から噴射して所定長さの固化体部分を造成する。
図6(c)は、以上の固化部分造成操作を予め決められた回数繰り返し行うことで目的大の固化体Dを造成した状態を示している。なお、最上段の固化体部分の造成が終了した後は、埋戻し兼用の地盤改良用流体が管路18、スイベル15を介して供給管22から掘削刃26の近辺に設けられた噴射ノズルに送られて噴射される。この噴射は、ガイド部材2が地表に近い上昇位置に達すると自動的に供給停止される。同時に、昇降用モータも停止される。なお、地中作業方法2では、固化体Dとして、最下端の固化体部分から上段の固化体部分を順に積み上げるよう造成したが、最上段の固化体部分から下段の固化体部分を順に追加するよう造成してもよい。
【0049】
以上のような地中作業装置及び方法では、繰出し手段3がガイド部材2を介して地中の所定深度に貫入配置された状態で、伸縮部材4の伸縮作動時の応力などをガイド部材2を介して受け止めたり、伸縮部材4の先端側に設けられた作業手段として噴射ノズル7や調査機器8を利用できる。この利点としては、特許文献1の金属管を管ベンダーにより曲げ加工を施す構成に対して、地中に貫入配置したガイド部材2が構造物から多少離れていても、繰出し手段3により伸縮部材4を効率よく水平方向に伸縮できる。特許文献2の立坑内で多数の推進管をジャッキにより継ぎ足す構成に対して、ガイド部材2を地中の所定深度に貫入配置するための孔径を大幅に小さくでき、繰出し手段3及び作業手段8により効率的な調査を実現できる。
【0050】
(変形例1)
図7は上記地中作業装置の変更例1を示し、同(a)と(b)は
図5(b)と(c)に対応した態様で示している。この説明では、上記形態と同じか類似の部材や箇所に同一符号を付して重複記載を省き、変更した点に絞って詳述する。
【0051】
変更点1は、この地中作業装置9では、上記したガイド部材建込み工程において、地盤に縦孔を予め掘削した後、その縦孔にガイド部材2を挿入して縦孔内に静止状態に支持する構成である。そのため、ガイド部材2は、簡易な掘削刃26Aが下端に設けられ、該掘削刃26Aにより縦孔の底面側に不用意に動かないよう位置決め可能となっている。この利点は、ガイド部材2を縦孔に貫入配置するために用いられる吊り装置として、
図1のような複雑高価な装置を使用しなくてもよく全体構成を簡易化できる。
【0052】
変更点2は、上記した繰出し手段3に代えて、
図7(a)に示されるごとく相似形の中空の筒体を大きさの順に内蔵させたテレスコ又はテレスコピック式構造を採用していることである。この例では、伸縮部材4Cとして、ベースマスト50にセカンドマスト51を、セカンドマスト51にサードマスト52を、サードマスト52にトップマスト53をそれぞれ伸縮可能に配置している。ベースマスト50は、筐体37A内に設けられている支持基台35Aに固定されている。トップマスト53の先端には上記結合体45に対応する結合体45Aが装着されている。上記繰出し手段3に対応する構成として、例えば、複数の油圧シリンダ或いは油圧シリンダと連繋して各マスト51〜53に引張り方向の力を付与するシーブとワイヤの組合わせからなる。但し、テレスコピック式構造であればこれ以外の構造でも差し支えない。その例としては、複数の筒部材を入れ子式に配置し、各筒部材を筒内に組み込まれた「ジップチェーンリフタ」(登録商標)又はそれに類似の構造により伸長したり縮小する構造である。
【0053】
変更点3は、繰出し手段3がガイド部材2に対向して設けられた一対からなり、各伸縮部材4Cの係合体45Aに設けられ噴射ノズル7から掘削又は地盤改良用流体を噴射したり、調査機器8により広い範囲を的確に調査可能にしている。すなわち、この構造においては、
図7(a)のY方向から見た模式図に示されるごとく、一対の筐体37Aがガイド部材2の先端筒部に対し紙面の前後に並設されている点、各筐体37Aに内蔵された伸縮部材4Cが地表側からの制御信号により各マスト51〜53を連動して伸長したり縮小可能となっている点で変更されている。
【0054】
なお、以上の形態及び変形例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。その一例として、結合体の形状を目的の作業手段に応じて更に変形したり、
図4のヒンジ4
2として特許第4136905号公報に開示の構成又はそれに類似の構成を採用する様にしてもよい。また、本発明において、例えば「略縦方向」や「略垂直」との構成は厳格なものではなく多少の勾配を持っている場合も含まれること、「略水平」の構成も多少の傾きを持っている態様なども含まれる。