特許第6468638号(P6468638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468638
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ロープ式ホーム安全柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20190204BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20190204BHJP
   E05F 15/665 20150101ALI20190204BHJP
【FI】
   B61B1/02
   E01F1/00
   E05F15/665
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-262432(P2014-262432)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-120850(P2016-120850A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉
(72)【発明者】
【氏名】新山 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大根田 慶範
(72)【発明者】
【氏名】金澤 和明
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−502008(JP,A)
【文献】 特開2014−111415(JP,A)
【文献】 特開2013−216136(JP,A)
【文献】 特開2013−199225(JP,A)
【文献】 特許第5459893(JP,B1)
【文献】 特開2004−306976(JP,A)
【文献】 特開2000−234316(JP,A)
【文献】 特表2008−526614(JP,A)
【文献】 特開2014−091410(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0120234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00
E05F 15/665
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームに立設された少なくとも2本の支柱の間の区間においてホーム縁に沿って少なくとも1本のロープを架け渡し、前記支柱に設けた昇降駆動装置により当該少なくとも1本のロープは昇降するように設けられ、前記少なくとも1本のロープの張力を自動的に調整する張力調整装置を、前記支柱に設けた移動機構部に備え、前記張力調整装置は前記移動機構部により昇降可能に設けられることを特徴とするロープ式ホーム安全柵。
【請求項2】
前記張力調整装置は、前記ロープの張力を測定する張力測定手段と、前記張力測定手段から出力される測定信号を入力し、前記張力の適正を判定し、不適正であるとき調整信号を出力する制御手段と、前記制御手段から出力される前記調整信号に基づいて前記ロープの張力を適正に調整する駆動機構とを備えることを特徴とする請求項1記載のロープ式ホーム安全柵。
【請求項3】
測定された前記ロープの張力が適正値より低いときには前記ロープの張力を高めることを特徴とする請求項1または2記載のロープ式ホーム安全柵。
【請求項4】
測定された前記ロープの張力が適正値より高いときには前記ロープの張力を低めることを特徴とする請求項1または2記載のロープ式ホーム安全柵。
【請求項5】
測定された前記ロープの張力がロープ破断値より低いときには警報を発し、制御機器の動作を停止するように制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のロープ式ホーム安全柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロープ式ホーム安全柵に関し、特に、防護柵用のロープの張力を常に適正値になるよう自動的に調整するロープ式ホーム安全柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、駅ホームにおいてロープ式ホーム安全柵が提案されている(引用文献1)。ロープ式ホーム安全柵は昇降式ロープを利用したホームドアの一種である。駅ホームの線路縁部に沿って水平方向に複数本のロープを張り渡し、線路に入線する列車の動きや状態に応じてロープを昇降させ、下降位置に配置されたロープによって駅ホーム上の旅客の転落等を防止し、その安全を図る。ロープ式ホーム安全柵では、水平方向に張られたロープに対して、旅客が寄り掛かった場合には、線路側に飛び出さないようにするため、ロープに必要な一定の張力(テンション)を与えている。従来、ロープに一定の張力を与えるためには、例えば、支柱内に設けた連結部との間にバネ等を設け、当該バネの有する復元力を利用している。またロープの端部に錘を結合し、当該錘の重さを利用して張力を与える構成も採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−111415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロープ式ホーム安全柵では、ロープの芯軸の材料として用いられるステンレス等の金属製のワイヤは、その周囲温度の変化に応じて伸縮する特性を有している。ワイヤの伸縮量がバネの変形量を超えてしまう場合には、ロープに必要な張力を与える機構が働かず、ロープに適切な張力を与えられないという事態が生じる。このような事態が生じると、駅ホーム上の旅客を安全に保護することができなくなる。このような問題を解決する手法として、バネの変形量を大きくとり、ロープの伸縮による張力の変化を緩やかにすることが考えられる。しかしながら、このような手法の場合には、バネの長さを大きくする必要があり、通常的にはスペースの確保が極めて困難であるという問題が提起される。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、安全柵として懸架されたロープの張力の変化を検出して当該張力を適正値に自動的に調整するようにしたロープ式ホーム安全柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロープ式ホーム安全柵は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0007】
第1のロープ式ホーム安全柵(請求項1に対応)は、駅ホームに立設された少なくとも2本の支柱の間の区間においてホーム縁に沿って少なくとも1本のロープを架け渡し、支柱に設けた昇降駆動装置により当該少なくとも1本のロープは昇降するように設けられ、少なくとも1本のロープの張力を自動的に調整する張力調整装置を、支柱に設けた移動機構部に備え、張力調整装置は移動機構部により昇降可能に設けられることによって構成される。
【0008】
上記のロープ式ホーム安全柵では、駅ホームに立設された少なくとも2本の支柱の間の区間においてホーム縁に沿って少なくとも1本のロープを架け渡し、支柱に設けた昇降駆動装置により当該少なくとも1本のロープは昇降するように設けられており、さらに、 少なくとも1本のロープの張力を自動的に調整する張力調整装置を、支柱に設けた移動機構部に備え、このような張力調整装置を設けることにより、予め設定された適正張力を付加して張り渡された少なくとも1本のロープの張力が、環境温度等が起因して適正値から変化したときに、当該張力の変化を検知してロープの張力が再び適正値になるように自動的に調整する。これによって、ロープが安全防護柵として機能するとき、常に適正な張力でロープを保持することができるため、旅客の安全性を確実に保つことができる。さらに、ロープに破断や伸び等の異常が生じたとき、異常対策として迅速に適切に対応することができる。
【0009】
第2のロープ式ホーム安全柵(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、張力調整装置は、ロープの張力を測定する張力測定手段(張力センサ31)と、張力測定手段から出力される測定信号を入力し、張力の適正を判定し、不適正であるとき調整信号を出力する制御手段(制御部34)と、制御手段から出力される調整信号に基づいてロープの張力を適正に調整する駆動機構(ロープ巻取機構32とアクチュエータ33)とを備えることを特徴としている。
【0010】
第3のロープ式ホーム安全柵(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、測定されたロープの張力が適正値より低いときにはロープの張力を高めることを特徴としている。
【0011】
第4のロープ式ホーム安全柵(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、測定されたロープの張力が適正値より高いときにはロープの張力を低めることを特徴としている。
【0012】
第5のロープ式ホーム安全柵(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、測定されたロープの張力がロープ破断値より低いときには警報を発し、制御機器の動作を停止するように制御されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロープ式ホーム安全柵において、少なくとも1本のロープの張力を自動的に調整する張力調整装置を備え、当該ロープの張力を常に適正値に自動調整して保持するようにしたため、ロープが安全防護柵として機能するとき、周辺温度等が変化したとしても常に適正な張力でロープを保持することができ、旅客の安全性を確実に保つことができる。またメンテナンス時の張力調整が不要になり、さらにロープに破断や伸び等の異常が生じたとき迅速にかつ適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るロープ式ホーム安全柵の全体的構成の正面図を示し、(A)はロープ下降状態(閉状態)を示す正面図であり、(B)はロープ上昇状態(開状態)を示す正面図である。
図2】ロープ式ホーム安全柵の側面図を示し、(A)はロープ下降状態を示す側面図であり、(B)はロープ上昇状態を示す側面図である。
図3】ロープ式ホーム安全柵の昇降駆動装置と張力付加装置に関する要部構成を説明する図である。
図4】ロープ式ホーム安全柵のロープ張力の制御に関する要部の構成を示すブロック図である。
図5】ロープ式ホーム安全柵のロープ張力の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1図3を参照してロープ式ホーム安全柵の全体的な構成を概念的に説明する。
【0017】
図1図2の各々において、(A)の状態はロープが下降して防護安全柵として機能する閉状態を示し、(B)の状態はロープが上昇して開状態を示している。ロープが下降して閉状態にある場合は、列車が進入・停車するとき、列車が発車するとき、線路(軌道)に列車が存在しない場合であり、当該閉状態によって、旅客が線路に落下したり、列車に接触すること等を防止する。ロープが上昇して開状態にある場合は、列車が駅ホームに完全に停車し、開いた車両ドアを介して旅客の乗降が行われる場合である。
【0018】
図1では、ロープ式ホーム安全柵の一部の区間を示している。当該区間は、一例として3本の支柱(またはポスト)が配置された区間である。支柱間の距離は、例えば列車の一車両の長さに応じた距離であるが、図1の図示例では、説明の便宜上、ロープおよび駅ホーム等の途中を切断して一部を省略した状態で示している。またロープの左部分も切断し省略して示している。
【0019】
図1において、基本的な構成の一例として、ロープ式ホーム安全柵は、3本の支柱(またはポスト)で構成されている。図1は、ホーム側から線路(軌道)側に向かって見たロープ式ホーム安全柵を示している。ロープ式ホーム安全柵は、複数本の支柱(図示例では、例えば3本の支柱11A,11B,11C)を駅ホーム12の線路側の縁の全体に沿って所要の間隔で立設した状態で設けている。支柱の本数は、駅ホームの長さ、列車の長さ、一両の車両の長さ等に応じて決められる。図1では、右端に位置する支柱11Aと、当該支柱11Aの左側に向かって続く2本の支柱11B,11Cが示されている。図1で示した最も左側の支柱11Cの左側にはさらに複数本の支柱が並べて設置されているが、図1中での図示は省略されている。3本の支柱11A,11B,11Cにおいて、11Aは右端に位置する支柱(以下では「右端支柱」と記す)であり、11B,11Cは両端の支柱の間に設置される支柱(以下では「中間支柱」と記す)である。中間支柱(例えば11B,11C)は前述のごとく駅ホームの長さ等に応じて所要の個数が設けられる。
【0020】
右端支柱11Aと左端支柱(図示せず)の間では、複数本の中間支柱11B,11Cにのロープ支持構造によるロープの支持に基づいて、複数本のロープ13が架け渡されている。複数本のロープ13は、図2に示すように、一例として、ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bとから構成されている。ロープ13に関する構成は、これに限定されない。ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bは、図2に示すごとく、前後に位置をずらせて配置されている。ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bは、それぞれ、所要数の複数本のロープ13が例えば水平にかつ等間隔で架け渡されている。ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bの各々におけるロープ13の本数は任意であり、この本数は、例えば14本が好ましいが、この図示例では、説明の便宜上、5本の例で説明する。
【0021】
図2は、右端支柱11Aの左側側面を見るように描いた側面図である。図2において、ホーム側ロープユニット13Aは駅ホーム12の側の位置で昇降するように設けられ、線路側ロープユニット13Bは線路領域14の側の位置で昇降するように設けられている。ホーム側ロープユニット13Aと線路側ユニット13Bのそれぞれは、個別に、右端支柱11Aと中間支柱11B,11Cの各々で上下方向に形成されたスリット15を通して昇降するように、設けられている。
【0022】
このロープ式ホーム安全柵において、ホーム側ロープユニット13Aと線路側ユニット13Bのそれぞれに対しては、図3に示すように、個別に、昇降駆動装置16と張力付加装置17が設けられている。この実施形態の構成では、以下に説明するように、例えば、昇降駆動装置16は中間支柱11Bの内部に設けられ、張力付加装置17は右端支柱11Aの内部に設けられている。
【0023】
右端支柱11Aは、その内部に、各ロープ13の一端を引っ張り、当該ロープ13の一端に張力(テンション)を付加する上記の張力付加装置17を備えると共に、張力が付加された状態のロープ13の昇降動作を円滑に可能にする移動機構部18を備えている。張力付加装置17は、ロープ13に加わる張力を適切に調整するための各ロープ13の端部を引っ張る機構部が内蔵され、さらに、後述するごとく、各ロープ13の張力を自動的に調整する張力調整装置を含んでいる。移動機構部18は、上側プーリ19、下側プーリ20、それらの間に架け渡されたベルト21から構成される。張力付加装置17は移動機構部18のベルト21に固定されている。
【0024】
中間支柱11Bは、5本のロープ13の各々を支持するロープ支持昇降部材22を備えている。ロープ支持昇降部材22は、その上下方向に移動可能な構造に基づいて取り付けられている。すなわち、中間支柱11Bの内部には上記の昇降駆動装置16が設けられている。昇降駆動装置16は、駆動モータ23と、駆動モータ23の回転力に基づいてロープ支柱昇降部材22を昇降させる動力伝達機構24とから構成される。動力伝達機構24は例えばベルト機構やチェーン機構等で構成される。制御装置25から提供される制御信号に基づいて駆動モータ23が適宜に回転動作することにより、ロープ支持昇降部材22が上下方向D1に昇降し、ロープ13を昇降させる。駆動モータ23の設置の向きや動力伝達機構24の設置位置等は任意である。
【0025】
また一例として、右端支柱11Aの内部には、ロープ13の端部の高さ位置を検出する高さ位置検出器26が設けられている。高さ位置検出器26としては、具体的に、例えば、光学式位置検出器や移動距離計測カウンタ、ロータリエンコーダ等を用いられる。右端支柱11Aの内部の高さ位置検出器26から出力された位置信号は制御装置25に入力される。制御装置25では、中間支柱11Bにおいて高さ方向に昇降するロープ支持昇降部材22の昇降動作を制御するとき、中間支柱11Bでのロープ13の高さ位置と、右端支柱11Aでのロープ13の端部の高さ位置とが一致するように、ロープ支持昇降部材22の高さ位置を制御する。
【0026】
本実施形態に係るロープ式ホーム安全柵において、閉状態にあるとき(図1図2の(A)の状態)、ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bのいずれも下降する。そして、例えば、線路側ロープユニット13Bは最下位の位置に下降し、ホーム側ロープユニット13Aは中間的に位置に下降する。この状態で、ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bは防護柵として機能し、駅ホーム12にいる旅客の安全性を保つ。ロープ式ホーム安全柵が開状態にあるときには(図1図2の(B)の状態)、ホーム側ロープユニット13Aと線路側ロープユニット13Bのいずれも上昇し、最上位の位置に移動する。その結果、駅ホーム12の線路領域14に添ったホーム縁部が開放され、旅客が列車に対して乗降を行うことができる。
【0027】
なお、上記の各ロープ13は、通常、必要な強度を有しかつ可撓性を有するロープである。しかし、その他に、ワイヤロープ、またはロープに類似する架線された長い帯状のものであってもよい。上位概念としては、人の行動を禁止、規制、または制止する長尺な部材である。
【0028】
次に、図4図5を参照して、上記ロープ式ホーム安全柵の張力調整装置について説明する。張力調整装置はロープ13の張力を自動的に適正値に調整する機能を有している。張力調整装置は上記の張力付加装置17の内部に設けられる。
【0029】
図4は、一例として、1本のロープ13の右端部に設けられた張力調整装置の要部の構成を示す。このロープ13は、好ましくは、ロープ式ホーム安全柵が閉状態(図1図2の(A)に示した状態)にあるときの一番上のロープ、すなわち、ホーム側ロープユニット13Aの一番上のロープ13である。また張力調整装置は、張力付加装置17の内部に内に設けられている。
【0030】
張力調整装置では、ロープ13の右端部付近の適宜な場所に張力センサ31が付設される。張力センサ31は、例えば、電気抵抗値の変化で歪みを測定・検知するように構成されたロードセルが使用される。この張力センサ31は、ロープ13に加わる力(荷重)に基づいて発生するロープ13の張力を測定し、検知する。ロープ13の右端部はロープ巻取機構32に連結されている。ロープ巻取機構32は、例えば、回転可能なホイール状部材を有している。ロープ巻取機構32は、張力調整用のアクチュエータ33によって回転駆動される。アクチュエータ33は例えばモータである。アクチュエータ33がロープ巻取機構32を駆動し、ロープ巻取機構32をD2方向(反時計方向)に回転動作させると、ロープ13の右端部がロープ巻取機構32の周りに巻き取られ、ロープ13で生じる張力が増加し高くなる。ロープ巻取機構32をD2方向とは反対の方向(時計方向)に回転動作させると、ロープ13の右端部の巻取り状態が戻され、ロープ13の張力が減少し、低くなる。アクチュエータ33の動作は、制御部34によって制御される。制御部34は、コンピュータで構成される制御処理手段である。制御部34は、張力センサ31から出力されるロープ張力(T)に係る検知信号SIG1を入力し、この検知信号SIG1に基づいて、アクチュエータ33の回転動作を制御する制御信号SIG2をアクチュエータ33に与える。また制御部34は、必要に応じて、監視装置35にアラーム信号SIG3を与える。
【0031】
図5のフローチャートを参照して、検知信号SIG1に基づいて実行される制御部34の張力調整の制御内容を説明する。
【0032】
先ず最初に、張力調整回数の変数(t:回)が設定され、当該張力調整回数tについて、t=0と設定される(ステップS1)。
【0033】
次にロープ13のロープ張力(T[N])が測定される(ステップS2)。張力測定のステップS2において、制御部34は、張力センサ31から出力された検知信号S1(ロープ張力T)を取り込む。制御部34は、取り込んだロープ張力Tが「T0よりも小さいか否か」または「T3よりも大きいか否か」を判断する(判断ステップS3)。「T0」は、ロープ張力Tがこの値よりも小さくなった場合にはロープ13が切断したと判断するための張力値である。「T3」は、ロープ張力Tがこの値よりも大きくなった場合にはロープ張力が異常であると判断するための張力値である。判断ステップS3おいて、YESの場合にはエラー出力のための処理ステップ(ステップS18)に移行し、NOの場合には次の判断ステップS4に移行する。
【0034】
判断ステップS4では、ロープ張力Tが「T2<T<T3」の条件を満たすか否かを判断する。ここで、「T2」は張力正常値(適正値)の上限値[N]である。ロープ13のロープ張力Tを減少させて自動的に適正値に調整するための条件としては「T2<T<T3」の条件を満たすことが必要となる。判断ステップS4でYESである場合には、ロープ張力TがT2よりも大きいので、T2よりも小さくなるように調整を行うための判断ステップSS6に移行し、NOである場合には次の判断ステップS5に移行する。
【0035】
判断ステップS5では、ロープ張力Tが「T0<T<T1」の条件を満たすか否かを判断する。ここで、「T1」は張力正常値(適正値)の下限値[N]である。ロープ13のロープ張力Tを増加させて自動的に適正値に調整するための条件としては「T0<T<T1」の条件を満たすことが必要となる。判断ステップS5でYESである場合には、ロープ張力TがT1よりも小さいので、T1よりも大きくなるように調整を行うための判断ステップS14に移行し、NOである場合にはロープ張力Tが「T1≦<T≦T2」の条件を満たし、ロープ張力Tは適正な張力に保持されているので、張力制御は終了される。
【0036】
検知信号SIG1に基づいて実行される制御部34によるロープ張力の自動調整制御は、ロープ13のロープ張力Tが「T1≦<T≦T2」の条件を満たすように実行される。ロープ張力Tが張力正常値の下限値T1と上限値T2の間の値となるときには適正値として判断される。
【0037】
ロープ張力Tが「T2<T<T3」の条件を満たす場合には(判断ステップS4でYESの場合)、判断ステップS6では、張力調整回数tが5よりも大きいか否かが判断される。判断ステップS6でNOのときには、すなわち張力調整回数tが5以下であるときには、当該ロープ張力Tと適正値とのズレ量を計算し(ステップS7)、このズレ量に応じてモータ回転角を計算し(ステップS8)、当該モータ回転角に係る制御信号SIG2を出力してアクチュエータ33を駆動し、ロープ巻取機構32をD2方向とは反対方向に回転駆動し、ロープ13のロープ張力Tを低減する(ステップS9)。こうしてロープ張力Tは低められる。その後、張力調整回数tを1増し(ステップS10)、ステップS2に戻る。判断ステップS6でYESのときには、すなわち張力調整回数tが5より大きいときには、ロープ張力Tの自動調整が適切に行われないとしてエラー信号が出力され(ステップS11)、当該エラー信号は制御部34に送信され(ステップS12)、制御部34はエラー信号に基づいて監視装置35に対してアラーム信号SIG3を与える(ステップS13)。こうしてロープ張力Tの自動調整制御を終了する。
【0038】
また、ロープ張力Tが「T0<T<T1」の条件を満たす場合には(判断ステップS5でYESの場合)、判断ステップS14では、張力調整回数tが5よりも大きいか否かが判断される。判断ステップS14でNOのときには、すなわち張力調整回数tが5以下であるときには、当該ロープ張力Tと適正値とのズレ量を計算し(ステップS15)、このズレ量に応じてモータ回転角を計算し(ステップS16)、当該モータ回転角に係る制御信号SIG2を出力してアクチュエータ33を駆動し、ロープ巻取機構32をD2方向に回転駆動し、ロープ13のロープ張力Tを増加する(ステップS17)。こうしてロープ張力Tは高められる。その後、張力調整回数tを1増し(ステップS10)、ステップS2に戻る。判断ステップS14でYESのときには、すなわち張力調整回数tが5より大きいときには、ロープ張力Tの自動調整が適切に行われないとしてエラー信号が出力され(ステップS11)、当該エラー信号は制御部34に送信され(ステップS12)、制御部34はエラー信号に基づいて監視装置35に対してアラーム信号SIG3を与える(ステップS13)。こうしてロープ張力Tの自動調整制御を終了する。
【0039】
上記のステップS2〜S5,S6〜S9,S10,S14〜S17を繰り返すことにより、最終的にロープ13のロープ張力Tが「T1≦<T≦T2」の条件を満たすように、複数の段階に分けて制御される。ロープ張力Tの自動調整を5回試みても適正値に調整できない場合には、エラーとして当該自動調整の制御は終了される。
【0040】
次に判断ステップS3でYESの場合には、前述した通り、ステップS18に移行する。ステップS18では、ロープ式ホーム安全柵のロープ13で異常状態(破断、伸び等)が発生しているとしてエラー信号が出力され、その後、当該エラー信号は制御部34に送信され(ステップS19)、制御部34はエラー信号に基づいて監視装置35に対してアラーム信号SIG3を与える(ステップS20)。その後、ロープ式ホーム安全柵の装置全体の機器の動作を停止する(ステップS21)。このようにして、ロープ13のロープ張力Tを常時監視することで、ロープ13に異常が発生した場合に迅速に対応することができる。
【0041】
前述の張力調整の制御は、ホーム側ロープユニット13Aの一番上のロープ13に対して適用されたが、他のロープに適用することもできる。
【0042】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るロープ式ホーム安全柵は、昇降するロープを利用して駅ホームに入線しまたは出発する列車に対する旅客の安全性を確保し、ロープの張力を適正に保持することにより旅客の安全性を確実に保ち、メンテナンスフリーの機構を有することに利用される。
【符号の説明】
【0044】
11A 支柱(右端支柱)
11B,11C 支柱(中間支柱)
12 駅ホーム
13 ロープ
13A ホーム側ロープユニット
13B 線路側ロープユニット
14 線路領域
15 スリット
16 昇降駆動装置
17 張力付加装置
18 移動機構部
22 ロープ支持昇降部材
23 駆動モータ
24 動力伝達機構
25 制御装置
31 張力センサ
32 ロープ巻取機構
33 アクチュエータ
34 制御部
図1
図2
図3
図4
図5