(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回動軸(38)の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッド(2)の重心(G)が、回動軸(38)の中心を通る垂直軸(V)に対して偏寄させてある請求項1に記載の電気かみそり。
かみそりヘッド(2)のヘッド中心軸(P1)が、回動軸(38)の軸端と正対する向きから見るときの本体ケース(1)のグリップ中心軸(P2)に対して、重心(G)側へ傾斜している請求項2から4のいずれかひとつに記載の電気かみそり。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電気かみそりは、本体ハウジングを軸支ボスの回りに回動して、かみそりヘッドを使用姿勢にできる。しかし、かみそりヘッド自体が本体ハウジングに対して傾動できる構造ではないので、かみそりヘッドの切断刃面を、肌面の変化に追随させるのが難しい。こうした、不具合を解消するために、近年の電気かみそりにおいては、特許文献2に例示したように、かみそりヘッドを前後、左右、あるいは斜めに傾動させて、かみそりヘッドの肌面に対する追随性を向上している。
【0006】
しかし、かみそりヘッドの自由な傾動を追求するあまり、必要以上にかみそりヘッドが傾動して、ひげ切断を効果的に行えないことがある。例えば、傾動する必要のない肌面においては、かみそりヘッドを肌面に限界位置まで強く押付けて、傾動を規制した状態にしないとひげ切断を安定した状態で行えないことがある。また、かみそりヘッドの傾動方向の自由度が高い分だけ、かみそりヘッドを傾動可能に支持するための浮動構造が複雑化するため、部品点数と組立に要する手間の増加を避けることができず、電気かみそりの製造に要するコストが嵩むのを避けられない。
【0007】
本発明の目的は、傾動構造を簡素化しながら、必要時にはかみそりヘッドを応答よく肌面の変化に追随して傾動させて、ひげ切断を効果的に行うことができる電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1で傾動可能に支持されるかみそりヘッド2を備えている。かみそりヘッド2は回動軸38を中心にして所定方向へ傾動可能に支持されて、本体ケース1とかみそりヘッド2の間に配置した復帰ばね45で傾動待機位置へ向かって復帰付勢してある。そして、回動軸38が、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して偏寄配置してあることを特徴とする。
【0009】
回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッド2の重心Gは、回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させる。
【0010】
かみそりヘッド2の切断刃面は、回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させる。
【0011】
回動軸38はかみそりヘッド2の下部に配置する。
【0012】
かみそりヘッド2のヘッド中心軸P1は、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときの本体ケース1のグリップ中心軸P2に対して、重心G側へ傾斜させる。
【0013】
かみそりヘッド2の下部に、本体ケース1の上部を左右から挟む門型の連結凹部37を形成する。連結凹部37の対向壁と本体ケース1の間に回動軸38を配置して、かみそりヘッド2を前後傾動可能に支持する。
【0014】
本体ケース1とかみそりヘッド2は、いずれか一方に設けた回動軸38と他方に設けた軸受部39で連結する。回動軸38と軸受部39の嵌合面に、互いに接当してかみそりヘッド2の傾動範囲を規定する傾動規制構造を設ける。
【0015】
かみそりヘッド2にロータリー式の内刃7を配置し、内刃7を回転駆動する駆動構造を本体ケース1の上部から内刃軸7aにわたって配置する。駆動構造は、本体ケース1の内部に設けた前段駆動部T1と、前段駆動部T1の回転動力を内刃軸7aに伝動する次段駆動部T2を備えている。前段駆動部T1は、モーター3と、モーター3を支持するモーターホルダー59と、モーターホルダー59の左右に固定されて同ホルダー59より上方へ突出する一対の駆動部フレーム60と、モーターホルダー59および駆動部フレーム60に組付けたギヤトレインを備えている。かみそりヘッド2は一対の駆動部フレーム60に設けた回動軸38を中心にして前後傾動可能に支持する。
【0016】
駆動部フレーム60は金属製のフレームベース64と、プラスチック成形品からなるフレーム枠65を一体化して形成する。フレーム枠65に回動軸38を一体に形成する。
【0017】
本体ケース1の上部にかみそりヘッド2を傾動待機位置へ向かって復帰付勢する復帰ばね45を設ける。復帰ばね45は、本体ケース1およびかみそりヘッド2の左右中心に配置する。
【0018】
本体ケース1およびかみそりヘッド2の左右中心の前後いずれか一方に復帰ばね45を配置し、他方に復帰ばね45へ向かって先すぼまり状のクリーニング空間Sを形成する。
【0019】
クリーニング空間Sの前部に臨んで水ガイド面137を形成し、水ガイド面137の両側端に、洗浄水をクリーニング空間Sの中央へ向かって案内する導水面138を斜めに形成する。
【0020】
捩じりコイルばねからなる復帰ばね45をばねホルダー46に装着する。ばねホルダー46は、本体ケース1の上部に設けた締結座52にビス51で締結固定してある。
【0021】
かみそりヘッド2は、ヘッドブロック22と、ヘッドブロック22の左右に固定した一対のサイドフレーム23・24を備えている。ヘッドブロック22は、ベース体27と、ベース体27の上面に配置した金属板製の補強プレート28と、補強プレート28の上面を覆うカバー体29を備えていて、補強プレート28およびカバー体29をベース体27にねじ込んだビス34で締結固定する。
【0022】
前段駆動部T1は回転動力をギヤトレインの出力軸77を介して次段駆動部T2へ伝動する。ギヤトレインの出力軸77は駆動部フレーム60に設けた回動軸38で軸支する。かみそりヘッド2は、前段駆動部T1と次段駆動部T2の間に位置する回動軸38を中心にして前後傾動する。
【0023】
本体ケース1の内部に、モーター動力を減速するギヤトレインを含む前段駆動部T1を設ける。かみそりヘッド2の内部に、ギヤトレインの出力軸77に固定される駆動プーリー82と、従動プーリー83と、これら両プーリー82・83に巻掛けたベルト84を含む巻掛け伝動機構からなる次段駆動部T2を設ける。
【0024】
一方のサイドフレーム24に、ベルト84の直線移行部の外側面を受止める規制プレート85を装着する。規制プレート85に、動力伝動時におけるベルト84の直線移行部の左右方向の揺れを規制するベルト受壁98を形成する。
【0025】
規制プレート85にプーリー受壁97を設ける。駆動プーリー82と従動プーリー83の少なくとも一方の外側面をプーリー受壁97で受止める。
【0026】
規制プレート85の上下にプーリー受壁97を設ける。駆動プーリー82および従動プーリー83の外側面を受止めるプーリー受壁97の中央に放熱穴99を開口する。
【0027】
サイドフレーム24は、フレーム枠24aと枠カバー24bで構成する。フレーム枠24aの外側面に配置した巻掛け伝動機構の側外方を枠カバー24bで覆う。放熱穴99と正対する枠カバー24bの壁面に、放熱穴102を形成する。
【0028】
内刃軸7aと従動プーリー83は、互いに係合する軸継手を介して連結する。従動プーリー83のプーリーボス91の内部に、内刃軸7aを軸支する軸受穴106を設ける。軸継手は、内刃軸7aの軸端に設けた少なくとも一つの平坦面を備えた継手軸部109と、軸受穴106の内奥に設けられて継手軸部109と係合する継手穴部108とで構成する。
【0029】
プーリーボス91の軸受穴106の開口端側に、内刃軸7aの軸端を軸受穴106へ向かって係合案内する導入ガイド穴107をテーパー状に形成する。
【0030】
従動プーリー83のプーリーボス91は、サイドフレーム24に設けた軸受体40で軸支する。従動プーリー83のベルト巻装部90の内部中央において継手軸部109と継手穴部108が係合して、従動プーリー83の強度を内刃軸7aで補強する。
【0031】
内刃軸7aの一端をヘッドブロック22のカバー体29に装着した内刃ホルダー9で軸支して、内刃7が内刃ホルダー9で片持ち支持されている。内刃軸7aの継手軸部109をプーリーボス91の継手穴部108に連結した状態において、内刃ホルダー9をカバー体29で支持する。内刃ホルダー9とカバー体29の間に、内刃7および内刃ホルダー9が従動プーリー83から遠ざかる向きへ移動するのを阻止する内刃ロック構造を設ける。
【0032】
内刃ホルダー9とカバー体29の間に、内刃7を片持ち支持した状態の内刃ホルダー9をスライド装着する内刃係合構造を設ける。内刃係合構造は、カバー体29の上面に設けた前後一対の支持枠114と、支持枠114の対向面に形成した枠支持体115と、内刃7の下方に配置されて内刃ホルダー9から内刃軸7aと平行に突設される連結体116を備えている。支持枠114の一側から差込んだ連結体116を枠支持体115に係合して、内刃ホルダー9をカバー体29と一体化する。内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法Lを、内刃ホルダー9から内刃軸7aの継手軸部109の突端までの寸法L1より小さく設定する。
【0033】
内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法Lを、内刃7の切断刃面の左右長さL2より小さく設定する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る電気かみそりでは、かみそりヘッド2を回動軸38を中心にして所定方向へ傾動可能に支持して、復帰ばね45で傾動待機位置へ向かって復帰付勢するようにした。そのうえで、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して、回動軸38を偏寄配置するようにした。このように、回動軸38をかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して敢えて偏寄配置すると、かみそりヘッド2を傾動しやすい不安定な状態で支持できる。さらに、切断刃面を肌面に押付けるとき、回動軸38の偏寄量に相当するモーメントアームを含む傾動モーメントを、かみそりヘッド2に作用させることができる。従って、切断刃面を肌面に押付けるとき、かみそりヘッド2をより小さな力で傾動させながら、肌面の変化に追随して応答よく傾動させることができ、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0035】
かみそりヘッド2の重心Gを回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させると、自重による傾動モーメントをかみそりヘッド2に作用させることができるので、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができる。
【0036】
かみそりヘッド2の切断刃面を回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させると、切断刃面が垂直軸V上にある場合に比べて、切断刃面と垂直軸Vの偏寄量に相当するモーメントアームを含む傾動モーメントを、かみそりヘッド2に作用させることができる。従って、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができ、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0037】
回動軸38をかみそりヘッド2の下部に配置すると、かみそりヘッド2の切断刃面から回動軸38の中心までの距離を大きくでき、その分だけかみそりヘッド2に作用する傾動モーメントを大きくすることができる。従って、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができ、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0038】
かみそりヘッド2のヘッド中心軸P1を、本体ケース1のグリップ中心軸P2に対して重心G側へ傾斜させると、重心Gの位置を回動軸38からさらに遠ざけて、かみそりヘッド2の自重による傾動モーメントをさらに大きくすることができる。また、自重による傾動モーメントが大きくなる分だけ、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0039】
かみそりヘッド2の下部に門型の連結凹部37を形成し、同凹部37の対向壁と本体ケース1の間に回動軸38を配置した電気かみそりによれば、前後傾動するかみそりヘッド2の動きを明確に目視できるので、従来にない興趣に富む電気かみそりとすることができる。また、かみそりヘッド2の下面を親指と人差し指で支持して、前後傾動を規制した状態でひげ切断を効果的に行うことができる。
【0040】
本体ケース1とかみそりヘッド2を回動軸38と軸受部39で連結し、回動軸38と軸受部39の嵌合面に傾動規制構造を設けると、かみそりヘッド2が過剰に傾動するのを規制できる。また、かみそりヘッド2の傾動範囲が傾動規制構造によって規定されるので、復帰ばね45に過剰な力が作用することもなく、かみそりヘッド2を常に適正に傾動待機位置へ復帰操作できる。
【0041】
ロータリー式の内刃7を前段駆動部T1と次段駆動部T2からなる駆動構造で回転駆動する電気かみそりにおいて、構造強度が高いモーター3およびモーターホルダー59と駆動部フレーム60を支持構造にして前段駆動部T1のギヤトレインを構成した。こうした駆動構造によれば、ギヤトレインを構成するギヤ同士の噛合い精度を高度化して、モーター3の回転動力を効率よく内刃7に伝動できる。また、駆動部フレーム60に設けた一対の回動軸38でかみそりヘッド2の左右を支持するので、かみそりヘッド2を安定した状態で前後に傾動できるうえ、グリップ中心軸P2回りの外力に対するかみそりヘッド2の強度を向上できる。
【0042】
金属製のフレームベース64と、プラスチック成形品からなるフレーム枠65で駆動部フレーム60を構成すると、例えばプラスチック成形品のみで駆動部フレーム60を構成した場合に比べて、駆動部フレーム60の構造強度を増強できる。また、回動軸38をフレーム枠65と一体に形成することにより、回動軸38の構造強度を向上して、かみそりヘッド2を安定した状態で適正に前後傾動できる。
【0043】
復帰ばね45を本体ケース1およびかみそりヘッド2の左右中心に配置すると、復帰ばね45のばね力を、かみそりヘッド2に対して左右に偏りのない状態で作用させることができるので、前後傾動時にかみそりヘッド2がグリップ中心軸P2の回りにこじれようとするのを良く防止できる。また、こじれに伴うモーター3の駆動負荷の増加を解消できる。
【0044】
本体ケース1およびかみそりヘッド2の前後いずれか一方に復帰ばね45を配置し、他方にクリーニング空間Sを形成すると、同空間Sに入り込んだ毛屑や塵埃を洗浄水で簡単に洗い流すことができる。また、クリーニング空間Sに送給した洗浄水を復帰ばね45の周囲に流動させて、復帰ばね45の洗浄も併せて行うことができる。
【0045】
クリーニング空間Sの前部に水ガイド面137と導水面138を形成すると、洗浄水をクリーニング空間Sの左右中央に集中させて、より強い水流で毛屑や塵埃を確実に洗い流すことができる。また、クリーニング空間Sの中央を流れる洗浄水で復帰ばね45をさらに確実に洗浄できる。
【0046】
復帰ばね45が装着されたばねホルダー46を、本体ケース1の締結座52にビス51で締結固定すると、復帰ばね45をばねホルダー46に対して、予め適正な姿勢でしかも位置決めした状態で組んだのち、ばねホルダー46をビス51で締結固定すればよいので、復帰ばね45の組付け作業を簡便に行える。
【0047】
かみそりヘッド2のヘッドブロック22を、ベース体27と、金属板製の補強プレート28と、カバー体29などで構成し、これら3者をベース体27にねじ込んだビス34で締結固定すると、ヘッドブロック22の構造強度を増強できる。また、内刃7を支持する左右一対のサイドフレーム23・24を、構造強度に優れたヘッドブロック22で強固に支持して、内刃7およびサイドフレーム23・24が歪むのを確実に防止できるので、内刃7の切れ味を安定化できる。
【0048】
前段駆動部T1が回転動力をギヤトレインの出力軸77を介して次段駆動部T2へ伝動する伝動構造において、ギヤトレインの出力軸77を回動軸38で軸支すると、両駆動部T1・T2の間の回動軸38を中心にして、かみそりヘッド2を前後傾動できる。こうした電気かみそりによれば、前段駆動部T1から次段駆動部T2への回転動力の伝導を円滑に行えるうえ、出力軸77を次段駆動部T2の駆動軸としてそのまま利用できるので、伝動構造が複雑になるのを防止して構造の簡素化を実現できる。
【0049】
本体ケース1の内部にギヤトレインを含む前段駆動部T1を設け、かみそりヘッド2の内部に、巻掛け伝動機構からなる次段駆動部T2を設けると、前段駆動部T1と次段駆動部T2を、個々の駆動部ごとに分けて組むことができるので、伝動構造の組立を簡便に行える。
【0050】
一方のサイドフレーム24に規制プレート85を装着し、同プレート85にベルト受壁98を形成すると、動力伝動時におけるベルト84の直線移行部の左右方向の揺れをベルト受壁98で規制して、巻掛け伝動機構の伝導効率を向上できる。また、ひげ切断時の切断負荷が大きい場合でも、従動プーリー83および内刃7を円滑に回転駆動して、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0051】
規制プレート85にプーリー受壁97を設け、駆動プーリー82と従動プーリー83の少なくとも一方の外側面をプーリー受壁97で受止めると、駆動プーリー82または従動プーリー83の軸方向の移動を規制して、巻掛け伝動機構の伝導効率をさらに向上できる。
【0052】
規制プレート85の上下にプーリー受壁97を設け、駆動プーリー82および従動プーリー83の外側面を受止めるプーリー受壁97の中央に放熱穴99を開口すると、プーリー受壁97と各プーリー82・83の間で生じた摩擦熱を、放熱穴99から効率よく放出して、各プーリー82・83が過熱状態に陥るのを防止できる。
【0053】
フレーム枠24aと枠カバー24bでサイドフレーム24を構成するかみそりヘッド2において、放熱穴99と正対する枠カバー24bに放熱穴102を形成すると、放熱穴99から放出された摩擦熱を、放熱穴102を介して枠カバー24bの外へ放出できる。そのため、プーリー受壁97の周辺部分に熱がこもるのを解消して、各プーリー82・83が過熱されるのをさらに確実に防止できる。
【0054】
内刃軸7aと従動プーリー83を互いに係合する軸継手で連結すると、内刃軸7aの継手軸部109を、プーリーボス91の内部の軸受穴106に差込んで継手穴部108に係合するだけで、内刃7と従動プーリー83を簡単に連結できる。また、内刃軸7aが従動プーリー83から分離する向きに内刃7を引張り操作するだけで、内刃7を従動プーリー83から簡単に分離できるので、内刃7の交換を簡便に行うことができる。従動プーリー83の回転動力は、互いに係合する継手穴部108と継手軸部109が同行回転することで内刃軸7aに伝動される。
【0055】
軸受穴106の開口端側に導入ガイド穴107がテーパー状に形成してあると、軸端を導入ガイド穴107にあてがった状態で内刃軸7aを差込み操作することにより、軸端を軸受穴106へ向かって係合案内できるので、内刃7の従動プーリー83に対する組立を簡便に行うことができる。
【0056】
従動プーリー83のベルト巻装部90の内部中央において継手軸部109と継手穴部108を係合させると、内刃軸7aと従動プーリー83の係合深さをできるだけ大きくして、内刃軸7aによって従動プーリー83の構造強度を増強できる。従って、ひげ切断時の切断負荷が急激に増加するような場合でも、内刃7を確実に回転駆動してひげ切断を確実に行える。
【0057】
内刃7を内刃ホルダー9で片持ち支持するかみそりヘッド2において、内刃ホルダー9とカバー体29の間に内刃ロック構造を設けると、落下衝撃が作用するような場合であっても、内刃7および内刃ホルダー9が従動プーリー83から分離するのを確実に防止して電気かみそりの信頼性を向上できる。
【0058】
カバー体29に設けた一対の支持枠114と、支持枠114に形成した枠支持体115と、内刃7の下方に配置した連結体116などで内刃係合構造を構成すると、支持枠114の一側から差込んだ連結体116を枠支持体115に係合して、内刃ホルダー9をカバー体29と一体化できる。また、連結体116と枠支持体115が係合することで、内刃ホルダー9を位置決めし固定できるので、片持ち支持された内刃7を内刃ホルダー9で適正に回転支持できる。内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法Lを、内刃ホルダー9から内刃軸7aの継手軸部109の突端までの寸法L1より小さく設定するのは、内刃交換を容易化するためである。詳しくは、新規な内刃7の内刃軸7aを従動プーリー83に連結するとき、連結体116を枠支持体115に仮係合しながら、内刃軸7aを従動プーリー83の導入ガイド穴107から軸受穴106内へ差込み連結できるので、内刃交換を容易にしかも確実に行える。
【0059】
内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法Lを、内刃7の切断刃面の左右長さL2より小さく設定するのは、片持ち支持された内刃7がぐら付いて連結体116に接当するのを防ぐためである。こうした、内刃係合構造によれば、内刃7の組付け時に継手軸部109の側がぐら付いたとしても、内刃7の切断刃面が連結体116に接当して刃面が傷つくのを解消できる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(実施例)
図1ないし
図19は、本発明に係る電気かみそりの実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。
図2において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1で前後傾動可能に支持したかみそりヘッド2を備えている。本体ケース1の内部には、モーター3、2次電池4、および制御基板5などの電装品が配置してある。制御基板5には、モーター3への通電状態をオンオフするスイッチ6や、運転状態を発光表示するLEDなどが実装してある。かみそりヘッド2には水平軸周りに回転駆動されるロータリー式の内刃7と逆U字状の外刃8が配置してある。
図5に示すように内刃7は、交換を容易化するために内刃ホルダー9で片持ち支持してあり、内刃軸7aを後述する従動プーリー83に組んだ状態において両持ち支持される。
【0062】
(本体ケースの概略構造)
図4において本体ケース1は、前後に分割された前ケース11および後ケース12と、前ケース11の前面を覆うグリップケース13で構成してあり、前後ケース11・12の分割線に沿ってグリップケース13が前ケース11の表面を覆っている。前ケース11は、上下に分割した前上ケース11aと、前下ケース11bで構成してあり、後ケース12に対してビス14で固定してある。グリップケース13は、その上部および上下中途部が前ケース11に係合された状態で、ケース下端が後ケース12の側からねじ込んだビス15で後ケース12に固定してある。グリップケース13の下部には上部および下部が尖った舟形のスイッチパネル16が配置されて、その上端寄りに先のスイッチ6を切換え操作するスイッチボタン17が配置してある。本体ケース1の後面側には、きわ剃り刃18と、きわ剃り刃18を駆動位置へ押し上げ操作するスライドノブ19が設けてある。
【0063】
(かみそりヘッドの概略構造)
図5においてかみそりヘッド2は、ヘッドブロック22と、ヘッドブロック22の左右に固定したサイドフレーム23・24と、内刃7および外刃8と、ヘッドブロック22に対して着脱される内刃ホルダー9と、サイドフレーム23・24に着脱される外刃ホルダー26などで構成してある。
図6および
図7に示すようにヘッドブロック22は、角皿状のベース体27と、ベース体27の上面に配置した金属板製の補強プレート28と、補強プレート28の上面を覆うカバー体29などで構成して、補強プレート28によってヘッドブロック22の構造強度を増強している。また、構造強度に優れたヘッドブロック22で左右一対のサイドフレーム23・24を強固に支持できるので、内刃7およびサイドフレーム23・24が歪むのを確実に防止して内刃7の切れ味を安定化できる。
【0064】
ヘッドブロック22の内部には、LED基板30とパッキン31と透明な導光板32が収容してある。LED基板30には3個の光源(LED)33が実装してあり、これらの光源33から紫外線を照射して、内刃7の周面や外刃ホルダー26の内面などに付着している毛屑や皮脂を殺菌する。補強プレート28には、各光源33に対応する透光窓28aが形成してある。補強プレート28およびカバー体29はビス34でベース体27に締結固定してあり(
図7参照)、LED基板30はビス35で導光板32に締結固定してある(
図8参照)。
図18に示すように、外刃8の前後縁には外刃枠56が固定してあり、後側の外刃枠56を圧縮ばね57で押し下げ付勢することにより、外刃8を内刃7に密着させている。
【0065】
図9に示すように、左右のサイドフレーム23・24は、それぞれビス36でベース体27に締結固定されるフレーム枠23a・24aと、同枠の外側面を覆う枠カバー23b・24bで中空ケース状に構成してある。サイドフレーム23・24をベース体27に固定した状態では、フレーム枠23a・24aの下側がベース体27より下方に突出している。これにより、ヘッドブロック22とサイドフレーム23・24の3者で、本体ケース1の上部を左右から挟む門型の連結凹部37を形成している(
図7参照)。左右のサイドフレーム23・24の対向面には、後述する回動軸38に連結される軸受部39が形成してある。
図5に向かって右側のサイドフレーム24は、その上半部分がベース体27より上方に突出しており、この突出部分の上部に従動プーリー83を回転自在に支持するための軸受体(ボス)40が装着してある(
図7参照)。軸受体40はポリアセタール樹脂で形成してある。サイドフレーム23・24には、外刃ホルダー26をロック保持するロック爪41とロックばね42が組み付けてある。ロック爪41は、外刃ホルダー26の側壁内面に設けた係合凹部43(
図18参照)と係合する向きにロックばね42で付勢してある。
【0066】
(首振り構造)
かみそりヘッド2は、本体ケース1の側に設けた回動軸38を中心にして前後方向へ傾動可能に支持してあり、本体ケース1とかみそりヘッド2の間に配置した復帰ばね45で傾動待機位置(
図8に示す状態)へ向かって復帰付勢してある。回動軸38の中心軸は正面から見て水平になっており、かみそりヘッド2が傾動待機位置にあるとき、回動軸38は、その軸端と正対する向き(側面)から見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して後側へ偏寄配置してある(
図1参照)。また、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッドの重心Gは、回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して前側へ偏寄させてあり、さらに、かみそりヘッド2のヘッド中心軸P1は、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときの本体ケース1のグリップ中心軸P2に対して重心G側(前側)へ傾斜している。この実施例においては、重心Gをヘッド中心軸P1上に位置させている。回動軸38は連結凹部37の対向壁と本体ケース1の間に配置してある。
【0067】
上記のように、回動軸38をかみそりヘッド2の下部に配置すると、かみそりヘッド2の外刃8(切断刃面)から回動軸38の中心までの距離を大きくできるので、その分だけかみそりヘッド2に作用する傾動モーメントを大きくできる。従って、かみそりヘッド2を軽快に傾動させて、外刃8(切断刃面)を肌面の変化に応答よく追随させることができ、ひげ切断を効果的に行うことができる。また、前後傾動するかみそりヘッド2の動きを明確に目視できるので、従来にない興趣に富む電気かみそりとすることができる。さらに、かみそりヘッド2の下面を親指と人差し指で支持して、前後傾動を規制した状態でひげ切断を効果的に行うことができる。
【0068】
復帰ばね45は捩じりコイルばねからなり、ばねホルダー46に装着した状態で、本体ケース1およびかみそりヘッド2の左右中心に配置されて、本体ケース1に組付けてある。
図7に示すように復帰ばね45は、左右一対のコイル部47と、両コイル部47同士を繋ぐ門形のばね腕48と、対向する係止部49を一体に備えている。ばねホルダー46は側面視が銀杏葉状に形成してあり(
図8参照)、その左右にコイル部47を収容するばね室50が形成してある。
【0069】
復帰ばね45をばねホルダー46に組付けた状態において、ばね腕48の上部はばねホルダー46の上方に突出している(
図7および
図8参照)。また、ばねホルダー46をビス51で本体ケース1の上部に設けた締結座52に締結した状態においては、ばね腕48の上部がベース体27の下面中央に突設したばね受座53に接当して、かみそりヘッド2の全体を
図8において時計回転方向へ復帰付勢している。復帰ばね45とばね受座53は、ヘッド中心軸P1より後側へ偏寄した状態で配置してある。組立時には、復帰ばね45をばねホルダー46に対して、適正な姿勢でしかも位置決めした状態で予め組んだのち、ばねホルダー46をビス51で締結固定すればよいので、復帰ばね45の組付け作業を簡便に行える。
【0070】
上記のように、サイドフレーム23・24に設けた軸受部39を回動軸38に連結することにより、かみそりヘッド2は前後傾動できるが、この傾動範囲を規定するために回動軸38と軸受部39の嵌合面に傾動規制構造を設けている。詳しくは、
図9に示すように、回動軸38の周面に角リブ状の規制突起54を設け、軸受部39にサイドフレーム23・24の傾動範囲を規定する規制溝55を設けている。かみそりヘッド2が前側へ傾動するときサイドフレーム23・24は同行傾動するが、規制溝55の溝端が規制突起54に接当したら、それ以上傾動することはできない。因みに、かみそりヘッド2の傾動角度は15度である。以上のように傾動規制構造を設けると、かみそりヘッド2が過剰に傾動するのを規制できる。また、かみそりヘッド2の傾動範囲が傾動規制構造によって規定されるので、復帰ばね45に過剰な力が作用することもなく、かみそりヘッド2を常に適正に傾動待機位置へ復帰操作できる。
【0071】
(内刃の駆動構造)
上記のように、首振り可能に支持したかみそりヘッド2の内刃7を回転駆動するために、本体ケース1の上部から内刃軸7aにわたって内刃7の駆動構造を配置している。内刃7の駆動構造は、本体ケース1の内部に設けた前段駆動部T1と、前段駆動部T1の回転動力を内刃軸7aに伝動する次段駆動部T2で構成する。
【0072】
(前段駆動部T1の構造)
図10および
図11において、前段駆動部T1は、モーター3と、モーター3を支持するモーターホルダー59と、モーターホルダー59の左右に固定される一対の駆動部フレーム60と、モーターホルダー59および駆動部フレーム60に組付けたギヤトレインなどで構成する。
図10に示すように、モーターホルダー59の左右両側には、位置決めピン61を備えた連結座62が形成してあり、駆動部フレーム60を連結座62に接当して2個のビス63で締結することにより、駆動部フレーム60をモーターホルダー59と一体化している。固定状態の駆動部フレーム60はその大半がモーターホルダー59より上方へ突出している。駆動部フレーム60の全体の構造強度を増強し、さらに回動軸38の構造強度を向上するために、駆動部フレーム60は、金属製(ステンレス板材)のフレームベース64と、プラスチック成形品からなるフレーム枠65を一体化して形成してあり、フレーム枠65の成形時にフレームベース64をインサート固定している。また、フレーム枠65の外側面の上部に、回動軸38を一体に形成している。モーター3の下半部は、モーターホルダー59の下部に装着した有底筒状のシール体66で水密状に覆ってある。
【0073】
ギヤトレインは、モーター動力を減速する減速ギヤ機構として構成されており、6個のギヤ68〜73と、水平の第1軸74および第2軸75で構成する。詳しくは、第1ギヤ68はモーター3の出力軸に固定してあり、第2ギヤ69と第3ギヤ70は一体に形成されて、モーターホルダー59で縦軸まわりに回転自在に支持してある。第4ギヤ71と第5ギヤ72は第1軸74に固定してあり、第6ギヤ73は第2軸75に固定してある。第3ギヤ70と第4ギヤ71はベベルギヤからなり、両ギヤ70・71によってモーター3の回転動力を水平の第1軸74まわりの回転動力に変換している。
【0074】
第1軸74の両端は、左右の駆動部フレーム60で回転自在に支持してあり、第2軸75は
図10に向かって右側の駆動部フレーム60に設けた軸受体(ブッシュ)76で回転自在に支持されて、その軸端が回動軸38の外側方に突出している。この突出軸部分がギヤトレインの出力軸77となる。第2ギヤ69の上面には偏心カム78が設けてあり、同カム78で振動子79を往復駆動することにより、きわ剃り刃18の可動刃を往復駆動できるようにしている。軸受体76は銅合金製の含油メタル、あるいはベアリングで構成してある。上記のように、構造強度が高いモーター3およびモーターホルダー59と駆動部フレーム60を支持構造にして前段駆動部T1のギヤトレインを構成した駆動構造によれば、ギヤトレインを構成するギヤ同士の噛合い精度を高度化して、モーター3の回転動力を効率よく内刃7に伝動できる
【0075】
(次段駆動部T2の構造)
次段駆動部T2は、
図9に向かって右側のサイドフレーム24の外側面に配置した巻掛け伝動機構からなる。具体的には、先の出力軸77に固定した駆動プーリー82と、軸受体40で支持した従動プーリー83と、これら両プーリー82・83に巻掛けたタイミングベルト(ベルト)84と、タイミングベルト84の外側面を覆う規制プレート85などで巻掛け伝動機構を構成し、その側外方を枠カバー24bで覆っている。
【0076】
図13に示すように、駆動プーリー82および従動プーリー83の外側面にはフランジ87、88が張出してある。また、従動プーリー83のフランジ88の外面の中央には丸軸状の軸部89が突設され、フランジ87の内面にはギヤ歯を備えたベルト巻装部90とプーリーボス91が一体に形成してある。
図15に示すように枠カバー24bは、その上端に設けた係合爪92をフレーム枠24aの係合段部93に係合し、規制プレート85の上下中途部をビス94でフレーム枠24aに締結することにより、フレーム枠24aと一体化してある。従動プーリー83は、そのプーリーボス91が軸受体40で回転自在に支持してある。軸受体40は
図14に示すように、円筒状の軸受部127と、軸受部127から前後に張出したフランジ壁128を一体に備えている。軸受部127をサイドフレーム24の装着穴129に差込み、フランジ壁128を装着穴129の前後の係合凹部130に係合することにより、軸受体40を回転不能に保持できる。係合凹部130とフランジ壁128には、互いに係合するピン131とピン溝132が形成してある。
【0077】
規制プレート85は、ステンレス板材を素材とするプレス成型品からなる。
図14に示すようにプレート板面の上下端に、フランジ87・88の外側面を受止めるプーリー受壁97が設けてあり、プレート板面の前後にベルト受壁98が設けてある。ベルト受壁98は、タイミングベルト84の直線移行部の外側面を受止めて、タイミングベルト84が左右方向へ揺れるのを規制する。このように、プーリー受壁97で駆動プーリー82および従動プーリー83に軸方向の移動を規制し、さらにベルト受壁98でタイミングベルト84の左右方向への揺れを規制すると、伝動ロスを小さくして巻掛け伝動機構の伝導効率を向上できる。また、ひげ切断時の切断負荷が大きい場合でも、従動プーリー83および内刃7を円滑に回転駆動して、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0078】
上下のプーリー受壁97の中央には、それぞれプーリー受壁97と各プーリー82・83の間で生じた摩擦熱を逃がすための放熱穴99が開口してあり、プレート板面の上下中途部には先のビス94用のねじボスを避けるための逃げ穴100が形成してある(
図14参照)。規制プレート85は、上下の放熱穴99が軸部89および出力軸77に隙間を介して嵌まり込むように組付けられて、サイドフレーム24にねじ込んだビス101で締結固定してある。ビス101で締結されるプレート板面の上下中央部分は、上下のプーリー受壁97に対して段落ち状に凹ませてある。上側の放熱穴99と正対する枠カバー24bの側壁には、放熱穴102が形成してある(
図15参照)。放熱穴102を設けることにより、プーリー受壁97の周辺部分に熱がこもるのを解消して、各プーリー82・83が過熱されるのを確実に防止できる。
【0079】
上記ように、内刃7を前段駆動部T1と次段駆動部T2からなる駆動構造で回転駆動する電気かみそりにおいて、構造強度が高いモーター3およびモーターホルダー59と駆動部フレーム60を支持構造にして前段駆動部T1のギヤトレインを構成するようにした。こうした駆動構造によれば、ギヤトレインを構成するギヤ同士の噛合い精度を高度化して、モーター3の回転動力を効率よく内刃7に伝動できる。また、駆動部フレーム60に設けた一対の回動軸38でかみそりヘッド2の左右を支持するので、かみそりヘッド2を安定した状態で前後に傾動できるうえ、グリップ中心軸P2回りの外力に対するかみそりヘッド2の強度を向上できる。さらに、出力軸77を次段駆動部T2の駆動軸としてそのまま利用できるので、伝動構造が複雑になるのを防止して構造の簡素化を実現できる。
【0080】
また、ギヤトレインの出力軸77を回動軸38で軸支するので、両駆動部T1・T2の間の回動軸38を中心にして、かみそりヘッド2を前後傾動できるので、前段駆動部T1から次段駆動部T2への回転動力の伝動を円滑に行える。さらに、出力軸77を次段駆動部T2の駆動軸としてそのまま利用できるので、伝動構造が複雑になるのを防止して構造の簡素化を実現できる。
【0081】
(継手構造)
従動プーリー83に伝動された回転動力を内刃軸7aへ伝動し、さらに内刃7の交換を容易化するために、両者83・7aを互いに係合する軸継手で連結している。
図15ないし
図17に示すように、従動プーリー83のプーリーボス91の内部には、内刃軸7aを軸支する軸受穴106が設けてあり、軸受穴106の開口端側に、内刃軸7aの軸端を軸受穴106へ向かって係合案内する導入ガイド穴107がテーパー状に形成してある。また、軸受穴106の内奥には継手穴部108が形成してある。軸継手は、内刃軸7aの軸端に設けた平行な平坦面を備えた継手軸部109と、この継手軸部109と係合する十文字状の継手穴部108とで構成してある。この実施例では、軸受穴106の内面の4か所に三角形状の突起110を突設して、各突起110の対向面間に継手穴部108を形成した。上記のように、継手穴部108と継手軸部109で構成した継手構造によれば、継手軸部109をプーリーボス91の内部の軸受穴106に差込んで継手穴部108に係合するだけで、内刃7と従動プーリー83を簡単に連結できる。また、内刃軸7aが従動プーリー83から分離する向きに内刃7を引張り操作するだけで、内刃7を従動プーリー83から簡単に分離できるので、内刃7の交換を簡便に行うことができる。
【0082】
図15に示すように、従動プーリー83の構造強度を向上するために、軸受穴106の内奥端をフランジ88の内面を通る垂直平面の近傍に位置させて、従動プーリー83の強度を内刃軸7aで補強している。つまり、従動プーリー83のベルト巻装部90の内部中央において継手穴部108と継手軸部109を係合させることにより、継手穴部108と継手軸部109の係合深さを大きくして、内刃軸7aで従動プーリー83の構造強度を向上している。
【0083】
(内刃係合構造)
図18に示すように、装着前の内刃7は先に説明したように、内刃ホルダー9で片持ち支持されている。この状態の内刃7を従動プーリー83とヘッドブロック22に対して適正に位置決めするために、内刃ホルダー9とヘッドブロック22のカバー体29の間に内刃係合構造を設けている。
図6に示すように内刃係合構造は、カバー体29の上面に設けた前後一対の支持枠114と、支持枠114の対向面に形成した横長リブ状の3個の枠支持体115と、内刃7の下方に配置されて内刃ホルダー9から内刃軸7aと平行に突設した連結体116(
図18参照)で構成する。3個の枠支持体115のうち、左右の枠支持体115は支持枠114の上縁に沿って形成し、中央の枠支持体115は支持枠114の下縁に沿って形成してあり、これら枠支持体115の上下の隙間部分117を連結体116がスライドして枠支持体115と係合する(
図8参照)。
【0084】
連結体116は平面から見て門形のステンレス板材製のプレス成形品からなり、その基端部分に設けた上向きのアーム部118を内刃ホルダー9の成形時にインサートして、内刃ホルダー9と一体化してある。内刃交換を容易化するために、内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法Lを、内刃ホルダー9から内刃軸7aの継手軸部109の突端までの寸法L1より小さく設定している。さらに、内刃ホルダー9から連結体116の突端までの寸法を、内刃7の切断刃面の左右長さL2より小さく設定している。
【0085】
上記のように、各寸法および長さの関係をL<L2<L1とすることにより、連結体116をカバー体29の枠支持体115の間の隙間部分に側方から差込んでスライドするとき、継手軸部109を軸受穴106に係合させ、さらに継手穴部108に係合させることができる。また、連結体116を枠支持体115にスライド係合する過程で、内刃7の遊端側がぐら付くことがあっても、内刃7の切断刃面が連結体116に接当して刃面が傷つくのを解消できる。内刃軸7aを従動プーリー83に完全に連結した状態では、内刃軸7aが従動プーリー83のプーリーボス91と内刃ホルダー9で両持ち状に確りと軸支される。
【0086】
上記のように、カバー体29に装着した内刃ホルダー9が、従動プーリー83から遠ざかる向きへ分離移動するのを阻止するために、内刃ホルダー9とカバー体29の間に内刃ロック構造を設けている。内刃ロック構造は、内刃ホルダー9の内部に組付けた内刃ロック爪121と、内刃ロック爪121を下向きに進出付勢する付勢ばね122と、カバー体29に凹み形成した係合凹部123で構成してある。内刃ホルダー9をカバー体29に組付けた状態においては、内刃ロック爪121が係合凹部123に係合して、内刃7および内刃ホルダー9を分離移動不能に位置保持する。内刃7を取外す場合には、
図18において内刃ホルダー9を左側へスライドさせて、係合凹部123に係合している内刃ロック爪121を付勢ばね122に抗して上方へ退入させ、ロック状態を解除する。さらに、連結体116を枠支持体115から抜き出すことにより、内刃7を取外すことができる。上記のように内刃ロック構造を設けると、落下衝撃が作用するような場合であっても、内刃7および内刃ホルダー9が従動プーリー83から分離するのを確実に防止できる。なお、内刃ロック爪121の外側面に操作片124が設けてある場合には、操作片を操作して内刃ロック爪121を付勢ばね122に抗して押上げ、内刃ホルダー9を抜き出し操作することにより、内刃7を取外すことができる。
【0087】
図8に示すように、かみそりヘッド2を傾動待機位置から前方へ傾動させる必要上、本体ケース1とかみそりヘッド2の間には、傾動角度に相当する隙間が確保してある。詳しくは、ベース体27の下面135と前ケース11の上面136の間に、復帰ばね45へ向かって先すぼまり状の隙間が形成してある。この隙間には毛屑や塵埃が入込みやすいが、隙間に入り込んだ毛屑や塵埃を洗い流すために、隙間をクリーニング空間Sとして利用している。また、クリーニング空間Sの前部に臨んで斜めの水ガイド面137を形成し、その両側端に、洗浄水をクリーニング空間Sの中央へ向かって案内する導水面138を斜めに形成している(
図2参照)。
図19に示すように、導水面138は水ガイド面137より膨出している。
【0088】
上記のように、本体ケース1とかみそりヘッド2の間にクリーニング空間Sを形成すると、同空間Sに入り込んだ毛屑や塵埃を洗浄水で簡単に洗い流すことができる。また、クリーニング空間Sに送給した洗浄水を復帰ばね45の周囲に流動させて、復帰ばね45の洗浄も併せて行うことができる。さらに、クリーニング空間Sに流れ込む洗浄水を水ガイド面137と導水面138で、クリーニング空間Sの左右中央に集中させて、より強い水流で毛屑や塵埃を確実に洗い流すことができる。また、クリーニング空間Sの中央を流れる洗浄水で復帰ばね45をさらに確実に洗浄できる。
【0089】
上記構成の電気かみそりにおいては、かみそりヘッド2が傾動待機位置にある状態において、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して、回動軸38を後側へ偏寄配置した。このように、回動軸38をヘッド中心軸P1に対して敢えて偏寄配置すると、かみそりヘッド2を傾動しやすい不安定な状態で支持できる。また、外刃8を肌面に押付けた状態において、回動軸38の偏寄量に相当するモーメントアームを含む傾動モーメントを、かみそりヘッド2に作用させることができる。従って、モーメントアームの分だけ、かみそりヘッド2を小さな力で傾動させることができるのはもちろん、かみそりヘッド2を肌面の変化に追随して応答よく傾動させて、ひげ切断を効果的に行うことができる。また、かみそりヘッド2は回動軸38の回りに前後傾動するだけであるので、従来の全方位方向へ傾動できる電気かみそりに比べて、傾動構造を著しく簡素化でき、部品点数と組立に要する手間を削減して電気かみそりの製造に要するコストを削減できる利点もある。
【0090】
また、かみそりヘッド2の重心Gを回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させることにより、自重による傾動モーメントをかみそりヘッド2に作用させることができるので、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができる。
【0091】
かみそりヘッド2の切断刃面を回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して偏寄させると、外刃8の切断刃面が垂直軸V上にある場合に比べて、切断刃面と垂直軸Vの偏寄量に相当するモーメントアームを含む傾動モーメントを、かみそりヘッド2に作用させることができる。従って、かみそりヘッド2をさらに軽快に傾動させて、外刃8の切断刃面を肌面の変化に応答よく追随させることができ、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0092】
かみそりヘッド2のヘッド中心軸P1を、本体ケース1のグリップ中心軸P2に対して重心G側へ傾斜させると、重心Gの位置を回動軸38から遠ざけて、かみそりヘッド2の自重による傾動モーメントを大きくすることができる。また、自重による傾動モーメントが大きくなる分だけ、かみそりヘッド2を軽快に傾動させて、ひげ切断を効果的に行うことができる。
【0093】
図20ないし
図22は、それぞれ電気かみそりの別の実施例を示す。
図20は電気かみそりの正面図を示しており、本体ケース1の上部右側にブラケット141を設け、ブラケット141に配置した回動軸38でかみそりヘッド2を左右傾動可能に支持した。また、かみそりヘッド2の内部にモーター3を配置して、その回転動力を図示していないギヤトレインで内刃軸7aに伝動して、内刃7を回転駆動するようにした。かみそりヘッド2は、図示している傾動待機位置から回動軸38の回りに反時計回転方向へ向かって側方傾動できる。この実施例から理解できるように、モーター3は本体ケース1とかみそりヘッド2のどちらの側に設けてあってもよい。
【0094】
この実施例の電気かみそりにおいては、かみそりヘッド2が傾動待機位置にあるとき、回動軸38の軸端と正対する向き(正面)から見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して、回動軸38を右側へ偏寄配置している。また、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッドの重心Gは、ヘッド中心軸P1上にあって、回動軸38の中心を通る垂直軸Vに対して左側へ偏寄させてある。グリップ中心軸P2は、ヘッド中心軸P1の延長上にある。
【0095】
図21は電気かみそりの側面図を示しており、本体ケース1の上部左右にブラケット141を設け、ブラケット141に配置した回動軸38でかみそりヘッド2を前後傾動可能に支持した。また、かみそりヘッド2には内刃7と外刃8を前後一対ずつ設けた。かみそりヘッド2は、図示している傾動待機位置から回動軸38の回りに反時計回転方向へ向かって前方傾動できる。この実施例の電気かみそりにおいては、かみそりヘッド2が傾動待機位置にあるとき、回動軸38の軸端と正対する向き(側面)から見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して、回動軸38を右側へ偏寄配置している。また、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッドの重心Gは、回動軸38の中心を通る垂直軸V上位置させてある。グリップ中心軸P2はヘッド中心軸P1の延長上にある。
【0096】
図22は電気かみそりの側面図を示しており、本体ケース1の上部左右にブラケット141を設け、ブラケット141に配置した回動軸38でかみそりヘッド2を前後傾動可能に支持した。また、かみそりヘッド2には内刃7と外刃8を前後一対ずつ設けた。かみそりヘッド2は、図示している傾動待機位置から回動軸38の回りに反時計回転方向へ向かって前方傾動できる。この実施例の電気かみそりにおいては、かみそりヘッド2が傾動待機位置にあるとき、回動軸38の軸端と正対する向き(側面)から見るときのかみそりヘッド2のヘッド中心軸P1に対して、回動軸38を右側へ偏寄配置している。また、回動軸38の軸端と正対する向きから見るときのかみそりヘッドの重心Gは、ヘッド中心軸P1と回動軸38の中心を通る垂直軸Vとの間に位置しており、垂直軸Vに対して左側へ偏寄させてある。グリップ中心軸P2はヘッド中心軸P1の延長上にある。
【0097】
上記の実施例では、かみそりヘッド2が傾動待機位置から前方、または側方へ傾動する場合について説明したが、かみそりヘッド2は傾動待機位置(中立位置)から前後、あるいは左右双方へ傾動可能に支持してあってもよい。次段駆動部T2はギヤトレインで構成することができる。本発明はロータリー式の電気かみそりに限らず、レシプロ式の電気かみそりにも適用できる。