(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連係機構は、前記植播系作業装置による苗又は種籾の一つの供給位置を第1基準位置とするとともに、その第1基準位置に最も近い位置の前記粉粒体供給装置による肥料又は薬剤の供給位置を第2基準位置として、かつ、前記第1基準位置から前記第2基準位置までの離間距離が、前記第1基準位置に対して前記進行方向の前後で隣り合う箇所の苗又は種籾の供給位置から前記第2基準位置までの離間距離、及び前記第1基準位置に対して左右方向で隣り合う箇所の苗又は種籾の供給位置から前記第2基準位置までの離間距離よりも短くなるように、前記間欠供給機構の供給作動を制御するように構成されている請求項1記載の水田作業機。
前記連係機構が装備される前記種籾繰り出し部の入力ギヤ、及び前記繰り出し用連係機構が装備される前記種籾繰り出し部の入力ギヤよりも伝動上手側に、前記間欠供給機構及び前記粉粒体繰り出し部への動力伝達を同時的に断続する少数条クラッチが設けられている請求項5記載の水田作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、苗植付装置によって苗が植え付けられた圃場に肥料を点播状態で散布することができるので、肥料の散布量を節減し得る可能性がある点で有用なものと思われる。
しかしながら、この構造のものでは、苗の1株が植え付けられるに連動して肥料が1度供給されるように関連づけられているが、その苗が植え付けられる箇所と肥料が点播される箇所との相対的な位置関係については特に考慮されているものではない。
このため、点播することにより、条播する場合に比べては肥料を集中的に散布することができるものではあるが、その集中的に散布された肥料の総てが、条播された場合に肥料よりも個々の苗株に対して必ずしもより有効に作用するとは限らない場合があり、結局、肥料の節減に繋がる効果を有効に発揮させられない場合がある。
【0005】
上記の構成では、苗植付装置によって苗が植え付けられた圃場に肥料を点播状態で散布することができるので、肥料の散布量を節減し得る点で有用なものと思われる。
しかしながら、この構造のものでは、苗が植え付けられた箇所と肥料が点播された箇所との相対的な位置関係については特に考慮されていないため、圃場全体としては適切な量の肥料が供給されたとしても、特定の植付株に対する肥料の供給量が、苗株毎にバラついて、個々の苗株に適正な量の肥料を供給するにあたり、その肥料の総和も少なくて済むように構成することは行われていなかった。
【0006】
本発明は、個々の苗又は種籾の圃場への供給位置に対する肥料又は薬剤の圃場への供給位置を適正にして、各供給位置の苗又は種籾に対する肥料又は薬剤の圃場への供給量を節減可能な水田作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために講じた本発明における水田作業機の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0008】
〔解決手段1〕
圃場を走行移動可能な走行機体と、
播種用又は苗植え付け用の植播系作業装置と、
前記植播系作業装置よりも前記走行機体の前後方向における前側に位置しており、肥料又は薬剤を圃場に供給する粉粒体供給装置とを備え、
前記植播系作業装置は、苗又は種籾の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成してあり、
前記粉粒体供給装置は、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に間欠供給機構が介在されていて、肥料又は薬剤の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成され、
前記間欠供給機構は前記植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されており、
前記植播系作業装置は、種籾ホッパーに収容された種籾を所定量づつ繰り出して圃場に点播する播種装置であり、前記種籾ホッパーの下部に種籾繰り出し部を備え、この種籾繰り出し部の回転動力が前記連係機構を介して
、前記走行機体の前後方向における前側に向かって、前記間欠供給機構へ伝達されるように構成されたものであり、
前記粉粒体供給装置は、粉粒体を貯留する粉粒体ホッパーと、その粉粒体ホッパー内の粉粒体を所定量づつ下方へ繰り出して前記間欠供給機構が存在する各供給経路へ送り出す粉粒体繰り出し部を備えており、
前記粉粒体繰り出し部は、前記種籾繰り出し部よりも上方に位置しているように構成されたものであることである。
【0009】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる発明によると、
種籾繰り出し部の回転動力を間欠供給機構の駆動力として有効利用し、種籾の供給箇所と肥料又は薬剤の供給位置とを適切に設定して、種籾に対する肥料又は薬剤の効用を有効に発揮させることができ、肥料又は薬剤の供給量を節減し得る利点がある。
しかも、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に介在された間欠供給機構が、植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されているので、間欠供給機構に対する動力伝達構造を簡素化し易いという利点もある。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、
前記連係機構は、前記植播系作業装置による苗又は種籾の一つの供給位置を第1基準位置とするとともに、その第1基準位置に最も近い位置の前記粉粒体供給装置による肥料又は薬剤の供給位置を第2基準位置として、かつ、前記第1基準位置から前記第2基準位置までの離間距離が、前記第1基準位置に対して前記進行方向の前後で隣り合う箇所の苗又は種籾の供給位置から前記第2基準位置までの離間距離、及び前記第1基準位置に対して左右方向で隣り合う箇所の苗又は種籾の供給位置から前記第2基準位置までの離間距離よりも短くなるように、前記間欠供給機構の供給作動を制御するように構成されていることである。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる発明によると、
植播系作業装置による苗又は種籾の一つの供給位置を第1基準位置とし、その第1基準位置に最も近い位置の前記粉粒体供給装置による肥料又は薬剤の供給位置を第2基準位置としたときの、第1基準位置と第2基準位置との間隔が、第1基準位置に対して前後や左右で隣り合う箇所の苗又は種籾の供給位置と、第2基準位置との間隔よりも短くなるように、間欠供給機構の供給作動が制御される。
これにより、第1基準位置と第2基準位置との間隔を短くして、つまり、苗又は種籾の供給位置と肥料又は薬剤の供給位置とを極力近づけて、苗株又は種籾に対する肥料又は薬剤の効用を有効に発揮させることができ、肥料又は薬剤の供給量を節減し得る利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記間欠供給機構は、前記種籾繰り出し部とほぼ同じ高さ位置に前記供給経路を開閉する弁体を備えたものであるということである。
【0013】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3にかかる発明によると、間欠供給機構に備えた供給経路を開閉するための弁体を種籾繰り出し部とほぼ同じ高さ位置に配設するという、部品点数の増加を伴うものでもない簡単な構成によって、種籾と肥料又は薬剤との圃場への落下タイミングを合わせ易い。これによって、種籾の供給位置と肥料又は薬剤の供給位置とを所期通りに設定するための構成を構造簡単にし易いという利点がある。
【0014】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、
圃場を走行移動可能な走行機体と、
播種用又は苗植え付け用の植播系作業装置と、
肥料又は薬剤を圃場に供給する粉粒体供給装置とを備え、
前記植播系作業装置は、苗又は種籾の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成してあり、
前記粉粒体供給装置は、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に間欠供給機構が介在されていて、肥料又は薬剤の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成され、
前記間欠供給機構は前記植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されており、
前記植播系作業装置は、種籾ホッパーに収容された種籾を所定量づつ繰り出して圃場に点播する播種装置であり、前記種籾ホッパーの下部に種籾繰り出し部を備え、この種籾繰り出し部の回転動力が前記連係機構を介して前記間欠供給機構へ伝達されるように構成されたものであり、
前記連係機構は、前記種籾繰り出し部に対して動力を伝達する入力ギヤの側面に、その入力ギヤの回転軸心から半径方向外方側に離れた位置で前記入力ギヤと一体的に回動するように備えた駆動用ピンと、前記入力ギヤの回転に伴って回動する前記駆動用ピンとの接触で揺動作動するリンク部材と、前記リンク部材の揺動作動に伴って前記間欠供給機構に備えた開閉用の弁体を開閉操作する操作アームとが設けられたもので
あることである。
【0015】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4にかかる発明によると、
種籾繰り出し部の回転動力を間欠供給機構の駆動力として有効利用し、種籾の供給箇所と肥料又は薬剤の供給位置とを適切に設定して、種籾に対する肥料又は薬剤の効用を有効に発揮させることができ、肥料又は薬剤の供給量を節減し得る利点がある。
しかも、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に介在された間欠供給機構が、植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されているので、間欠供給機構に対する動力伝達構造を簡素化し易いという利点もある。
また、種籾繰り出し部への入力ギヤを利用して、その入力ギヤの側面に駆動用ピンを設けるとともに、駆動用ピンとの接触で揺動作動するリンク部材や操作アームを利用することで、間欠供給機構の弁体開閉操作を行うための機構を構造簡単に構成し得る利点がある。
【0016】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、
圃場を走行移動可能な走行機体と、
播種用又は苗植え付け用の植播系作業装置と、
肥料又は薬剤を圃場に供給する粉粒体供給装置とを備え、
前記植播系作業装置は、苗又は種籾の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成してあり、
前記粉粒体供給装置は、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に間欠供給機構が介在されていて、肥料又は薬剤の圃場への供給位置が前記走行機体の進行方向で所定間隔おきに点在するように構成され、
前記間欠供給機構は前記植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されており、
前記植播系作業装置は、種籾ホッパーに収容された種籾を所定量づつ繰り出して圃場に点播する播種装置であり、前記種籾ホッパーの下部に種籾繰り出し部を備え、この種籾繰り出し部の回転動力が前記連係機構を介して前記間欠供給機構へ伝達されるように構成されたものであり、
前記粉粒体供給装置は、粉粒体を貯留する粉粒体ホッパーと、その粉粒体ホッパー内の粉粒体を所定量づつ下方へ繰り出して前記間欠供給機構が存在する各供給経路へ送り出す粉粒体繰り出し部を備え、
この粉粒体繰り出し部は前記種籾繰り出し部に対して動力を伝達する入力ギヤに繰り出し用連係機構を介して連動され、前記入力ギヤの回転にともなって前記粉粒体繰り出し部から所定量の粉粒体が繰り出されるように構成されており、
前記種籾繰り出し部は左右方向で複数個が併設されていて、各種籾繰り出し部毎に入力ギヤが装備され、
左右方向で隣り合う位置の一方の種籾繰り出し部の入力ギヤに前記間欠供給機構への前記連係機構が装備され、他方の種籾繰り出し部の入力ギヤに前記繰り出し用連係機構が装備されているとともに、
前記連係機構は、左右方向で隣り合う箇所に位置する一対の前記間欠供給機構に対して駆動力を伝達し、前記繰り出し用連係機構は、左右方向で隣り合う箇所に位置する一対の前記粉粒体繰り出し部に対して駆動力を伝達するように構成されていることである。
【0017】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5にかかる発明によると、
種籾繰り出し部の回転動力を間欠供給機構の駆動力として有効利用し、種籾の供給箇所と肥料又は薬剤の供給位置とを適切に設定して、種籾に対する肥料又は薬剤の効用を有効に発揮させることができ、肥料又は薬剤の供給量を節減し得る利点がある。
しかも、肥料又は薬剤の圃場への供給経路の途中に介在された間欠供給機構が、植播系作業装置の駆動系に連係機構を介して連動されているので、間欠供給機構に対する動力伝達構造を簡素化し易いという利点もある。
また、間欠供給機構よりも上方側に粉粒体繰り出し部が設けられていて、この粉粒体繰り出し部で粉粒体の繰り出し量が所定範囲に調節された状態で繰り出されるので、間欠供給機構の上流側の供給経路に、粉粒体ホッパー内に貯留されている粉粒体が大量に流れ込んで必要以上に堆積した状態となることを避けられる。したがって、間欠供給機構の上流側の供給経路に供給された粉粒体が自身の重量や機体振動などで密度が増して詰まりやすくなるというような事態の発生を避けやすい利点がある。
また、種籾繰り出し部の回転動力を粉粒体繰り出し部の駆動力として有効利用し、駆動構造を簡素化し易い点でも有利である。
また、左右方向で隣り合う位置の一方の種籾繰り出し部の入力ギヤから左右方向で隣り合う箇所の間欠供給機構への動力が取り出され、他方の種籾繰り出し部の入力ギヤから左右方向で隣り合う箇所の粉粒体繰り出し部への駆動力を取り出すことができる。
したがって、一つの入力ギヤから間欠供給機構と粉粒体繰り出し部との両方への動力を取り出すように構成する場合に比べて、動力伝達構造を簡素化し易いという利点がある。
【0020】
〔解決手段
6〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記連係機構が装備される前記種籾繰り出し部の入力ギヤ、及び前記繰り出し用連係機構が装備される前記種籾繰り出し部の入力ギヤよりも伝動上手側に、前記間欠供給機構及び前記粉粒体繰り出し部への動力伝達を同時的に断続する少数条クラッチが設けられていることである。
【0021】
〔解決手段
6にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段
6にかかる発明によると、連係機構が装備される種籾繰り出し部の入力ギヤや繰り出し用連係機構が装備される種籾繰り出し部の入力ギヤよりも、伝動上手側に少数条クラッチを設けることによって、少ない少数条クラッチを用いて、間欠供給機構と粉粒体繰り出し部との両方に対する動力伝達を同時的に断続することができる。
したがって、動力伝達の断続のための構造を簡素化し得る利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の一例を、図面の記載に基づいて説明する。
【0024】
〔全体構成〕
図1及び
図2は、本発明にかかる水田作業機の一例である乗用型直播機の全体を示す。乗用型直播機は、乗用型の4輪駆動形式に構成した走行機体1の後部に播種用の作業ユニットAを備えている。作業ユニットAは、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ14Aの作動によって上下揺動することにより上下位置変更可能に、走行機体1に対して上下揺動式のリンク機構14を介して昇降可能に連結されている。
【0025】
走行機体1は、その前部にエンジン4を搭載してあり、エンジン4からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)、及び、副変速装置として備えたギア式変速装置(図示せず)、などを介して、左右の前輪5、及び、左右の後輪6に伝達するように構成してある。
走行機体1の後部側には、搭乗ステップ7、前輪操舵用のステアリングホイール8、及び、前後方向に位置調節可能な運転座席9、などを配備した搭乗運転部10が設けられている。走行機体1の左右には、搭乗面積を左右に拡張する左右の拡張ステップ11が配備されている。搭乗運転部10の後方には、リンク機構14及び左右の後輪6などの上方において走行機体1の後部から作業ユニットAに向けて延出する後部ステップ12、及び、後部ステップ12に対する移動などの際に使用する手摺13が配備されている。
【0026】
〔作業ユニット〕
図1〜
図5に示すように、作業ユニットAは、リンク機構14の後端部にローリング可能に連結されたユニット台枠2を備えている。このユニット台枠2に、播種用の作業装置としての6条用の播種装置15(植播系作業装置に相当する)、肥料を圃場に供給する6条用の施肥装置16、薬剤を圃場に供給する6条用の施薬装置17(粉粒体供給装置に相当する)が搭載されている。
そして、これらの播種装置15、施肥装置16、及び施薬装置17に対して駆動力を伝達する伝動装置18が備えられ、さらに作業用の前進走行時に作業対象の圃場泥面を整地する平面視T字状の3つの整地フロート19、及び、作業用の前進走行に伴って圃場に排水溝を形成する左右の溝切り具19C、などを備えてユニット化されたものである。
【0027】
図3〜7に示すように、ユニット台枠2は、リンク機構14の後端部に連結された取付枠2Aと、その取付枠2Aの左右両側へ延出された横長の下部横フレーム20と、その下部横フレーム20の下面側で前後方向に延出された複数本の前後フレーム21とを備えている。
さらに前後フレーム21の前部上面側には、上下方向に立設された縦フレーム22Aと、その上端側で左右方向に架設された上部横フレーム22Bとで門型に形成された前部支持枠22が立設されている。前後フレーム21の後部上面側には、上下方向に立設された縦フレーム23Aと、その上端側で左右方向に架設された上部横フレーム23Bとで門型に形成された後部支持枠23が立設されている。
前部支持枠22は、上部横フレーム22Bの高さが、後部支持枠23の上部横フレーム23Bの高さよりも高い位置にあり、肥料ホッパー28を種籾ホッパー24よりも高い位置で支持している。
【0028】
図1〜
図5に示すように、肥料ホッパー28は、ユニット台枠2の前部支持枠22に対して、前部支持枠22の縦フレーム22Aよりも前方側に位置する状態で上部横フレーム22Bに取り付けてある。
そして、ユニット台枠2の前部支持枠22には、その縦フレーム22Aよりも後方側に位置させた状態で施薬装置17の薬剤繰り出し部34(粉粒体繰り出し部に相当する)及び薬剤ホッパー33(粉粒体ホッパーに相当する)が取り付けられている。
この薬剤ホッパー33は、肥料ホッパー28や種籾ホッパー24よりも容量の小さいもので構成されており、前後方向で肥料ホッパー28と種籾ホッパー24との間に位置し、上下方向でも肥料ホッパー28と種籾ホッパー24との中間的な高さ位置に配設されている。
【0029】
このように構成された作業ユニットAは、
図1及び
図3に示すように、リンク機構14の後端部に前記ユニット台枠2が連結され、このユニット台枠2が、走行機体1からの動力を受け入れる入力部46の軸心(図示せず)回りで左右揺動可能に構成されている。
【0030】
〔播種装置〕
図1〜5及び
図8に示すように、播種装置15は、種籾の一例である鉄コーティング処理が施された種籾を貯留する貯留部として3条分ずつの種籾を貯留する左右の種籾ホッパー24を備えている。この種籾ホッパー24の下部には、種籾ホッパー24から所定量の種籾を間欠的に下方に繰り出すことによって点播する6つの種籾繰り出し部25が備えられている。さらに、種籾繰り出し部25が下方に繰り出した種籾を、該種籾繰り出し部25の真下に位置する整地後の圃場泥面に向けて落下供給する供給部としての6つの種籾供給部26、などを備えている。
そして、外部伝動軸27及び伝動装置18などを介して伝達される走行機体1からの作業用の動力によって各種籾繰り出し部25が作動することにより、所定量の種籾を1株分として前後方向に所定間隔をあけた状態で圃場の泥土表面に最大6条分の播種を行う6条用の泥面点播式に構成している。
【0031】
播種装置15において、左右の種籾ホッパー24は、それらの下端に3つの種籾排出口(図示せず)を左右方向に一定間隔をあけて整列形成している。そして、各種籾ホッパー24における種籾排出口形成箇所のそれぞれに種籾繰り出し部25を連接している。各種籾繰り出し部25は、それらの種籾排出側となる下端部分のそれぞれに種籾供給部26を連接している。そして、各種籾供給部26も、対応する種籾繰り出し部25及び種籾排出口とともに左右方向に一定間隔をあけて整列配備された状態となるように、左右の種籾ホッパー24を配備している。
【0032】
〔施肥装置〕
図1〜8に示すように、施肥装置16は、肥料の一例である粒状の肥料を3条分ずつ貯留する左右の肥料ホッパー28、対応する肥料ホッパー28から所定量の肥料を間欠的に繰り出す6つの肥料繰り出し部29、対応する肥料繰り出し部29が繰り出した肥料を流下案内する肥料案内管としての6本の施肥ホース30、及び、対応する施肥ホース30が案内した肥料を圃場に供給する6つの肥料供給部31、などを備えている。
そして、外部伝動軸27及び伝動装置18などを介して伝達される走行機体1からの作業用の動力によって各肥料繰り出し部29が作動することにより、所定量の肥料を前後方向に所定間隔をあけた状態で最大6条分の施肥を行う6条用に構成している。
【0033】
左右の肥料ホッパー28は、それらの下端に3つの肥料排出口(図示せず)を左右方向に一定間隔をあけて整列形成している。そして、各肥料ホッパー28における肥料排出口形成箇所のそれぞれに肥料繰り出し部29を連接している。各肥料繰り出し部29は、対応する肥料ホッパー28に連接した状態において左右方向に所定間隔をあけて並ぶように構成している。
【0034】
各肥料供給部31は、後方を開放する平面視U字状に形成した施肥用の作溝器32により整地後の圃場泥面に作溝して溝内に肥料を供給する作溝式に構成している。そして、対応する種籾供給部26よりも機体前側の位置で、かつ、対応する種籾供給部26から機体横幅方向に所定間隔をあけた位置に位置するように、対応する整地フロート19の前端側部分に備えた左右の張り出し領域における左右中心寄りの部位に固定装備している。
【0035】
〔施薬装置〕
図1〜5及び
図7,8に示すように、施薬装置17は、粉粒体の一例である粉状の除草剤や防病剤などの薬剤を2条分ずつ貯留する3つの薬剤ホッパー33を備えている。薬剤ホッパー33の下部には、薬剤ホッパー33から所定量の薬剤を繰り出す6つの薬剤繰り出し部34が連設されている。薬剤繰り出し部34が繰り出した薬剤を流下案内する供給経路としての6本の施薬ホース35、及び、対応する施薬ホース35が案内した薬剤を圃場に供給する6つの薬剤供給部36、などを備えている。
さらに、この施薬装置17には、供給経路としての施薬ホース35の途中箇所に、薬剤繰り出し部34から繰り出されて流下する薬剤を、薬剤繰り出し部34よりも圃場面に近い位置で、間欠的に下方に送り出すための間欠供給機構70が設けられている。
【0036】
上記の薬剤繰り出し部34及び間欠供給機構70には、後述する連動機構50(繰り出し用連係機構に相当する)、及び間欠連係機構80(連係機構に相当する)を介して、播種装置15の種籾繰り出し部25における駆動力が伝達されるように構成してある。
播種装置15の種籾繰り出し部25には、前述したように、外部伝動軸27及び伝動装置18などを介して伝達される走行機体1からの作業用の動力が伝達されているので、播種装置15の種籾繰り出し部25の動力を利用して駆動される薬剤繰り出し部34及び間欠供給機構70も、走行機体1からの作業用の動力によって駆動されることになる。
【0037】
各薬剤ホッパー33は、それらの下端に2つの薬剤排出口(図示せず)を左右方向に所定間隔をあけて整列形成している。そして、各薬剤ホッパー33における薬剤排出口形成箇所のそれぞれに薬剤繰り出し部34を連接している。各薬剤繰り出し部34は、対応する薬剤ホッパー33に連接した状態において左右方向に所定間隔をあけて並ぶように構成している。
【0038】
各薬剤供給部36は、後方を開放する平面視U字状に形成した施薬用の作溝器37により整地後の圃場泥面に作溝して溝内に薬剤を供給する作溝式に構成している。そして、対応する肥料供給部31よりも機体前側の位置で、かつ、対応する種籾供給部26との機体横幅方向でのほぼ同じ位置に位置するように、対応する整地フロート19の前述した左右の張り出し領域における左右の外端寄りの部位に固定装備している。
【0039】
薬剤繰り出し部34及び間欠供給機構70を経て間欠的に施薬ホース35の下端側の薬剤供給部36に送り出された薬剤は、所定量の薬剤が前後方向に所定間隔をあけた状態で供給される。この施薬装置17では、最大6条分の施薬を行う6条用に構成されている。
【0040】
図3〜5及び
図8に示すように、各整地フロート19は、それらに備えた左右の薬剤供給部36が形成した施薬溝のそれぞれを埋め戻して整地する左右の施薬用覆土部材42を、前後に並ぶ薬剤供給部36と種籾供給部26との間に位置するように備えている。又、それらに備えた左右の肥料供給部31が形成した施肥溝のそれぞれを埋め戻して整地する左右の施肥用覆土部材43を備えている。
【0041】
各施薬用覆土部材42は、それらが埋め戻す各施薬溝に隣接する施肥溝とは反対側に備えた第1固定部となる各整地フロート19における左右の張り出し領域の外端部19Aから埋め戻す施薬溝に向けて、それらの延出端側が埋め戻す施薬溝に達するように、斜め後ろ向きの傾斜姿勢で延出している。
【0042】
これにより、作業用の前進走行時に行われる各薬剤供給部36の作溝に伴って左右方向に押し出される圃場泥土のうちの各整地フロート19の横外側に押し出される圃場泥土などを、後続する各施薬用覆土部材42によって各施薬溝に案内することができる。その結果、圃場の泥土が硬くて施薬溝に流れ込み難い場合や、作業速度が速くて先行する各薬剤供給部36が作溝してから後続の各種籾供給部26が播種するまでの間における施薬溝の埋め戻しに要する時間の確保が難しくなる場合などにおいても、各施薬溝の埋め戻しを速やかにかつ確実に行うことができ、各施薬溝の埋め戻しが不十分な状態で播種が行われることをより確実に防止することができる。
【0043】
図3、
図4及び
図8に示すように、施肥用の各作溝器32及び施薬用の各作溝器37のそれぞれは、それらの前端から前方に延出して各作溝器32,37による作溝を補助する作溝補助具38,39を連結装備している。各作溝補助具38,39は、前端側ほど反り上がった状態になる底面を有するように形成している。これにより、各作溝器32,37による作溝を、抵抗少なく円滑に行うことができる。
【0044】
〔動力伝達構造〕
上記の作業ユニットAにおける動力伝達構造について説明する。
図3〜7及び
図9に示すように、作業ユニットAの伝動装置18は、外部伝動軸27などを介して走行機体1からの動力が伝達される入力部46を備えている。
この入力部46に伝達された動力は、入力部46から左右に分配する動力分配軸47に伝えられる。動力分配軸47の左端部からは播種装置15の各種籾繰り出し部25に対して、低速の動力を伝達する低速伝動系48を介して伝達される。また、動力分配軸47の右端部からは施肥装置16の各肥料繰り出し部29に対して、高速の動力を伝達する高速伝動系49を介して伝達される。
【0045】
さらに、この伝動装置18には、
図9に示すように、播種装置15側における1つの種籾繰り出し部25と、施薬装置17側における2つの薬剤繰り出し部34とを連動連結する連動機構50と、播種装置15側における1つの種籾繰り出し部25と、施薬装置17側における2つの間欠供給機構70とを連動連結する間欠連係機構80とが備えられている。
これらの連動機構50及び間欠連係機構80は、それぞれが3箇所に設けられている。
つまり、施薬装置17側では、2つの薬剤繰り出し部34を一組とする3組の薬剤繰り出し部34、及び2つの間欠供給機構70を一組とする3組の間欠供給機構70が備えられている。そして、各組の薬剤繰り出し部34に対して、対応する箇所の播種装置15側における2つの種籾繰り出し部25のうちの一方が連動機構50を介して連係されている。
また、各組の間欠供給機構70に対して、対応する箇所の播種装置15側における2つの種籾繰り出し部25のうちの他方が間欠連係機構80を介して連係されている。
【0046】
この伝動装置18では、播種装置15の各種籾繰り出し部25と施薬装置17の各薬剤繰り出し部34とを低速伝動系48を介した低速動力によって低速連動させることから、播種装置15の各種籾繰り出し部25による種籾の繰り出しタイミングと、施薬装置17の各薬剤繰り出し部34による薬剤の繰り出しタイミングとを合わせ易くなる。これにより、機体前後方向での播種装置15の播種位置と施薬装置17の施薬位置とを合わせ易くなる。そして、機体前後方向での播種位置と施薬位置とを合わせ易いことにより、少量の薬剤を種籾の近くに安定して供給することが可能になる。その結果、施薬量の削減を図りながら、種籾に対する防病や防虫などの薬効を効果的に得ることができる。
【0047】
又、施肥装置16の肥料繰り出し部29と施薬装置17の薬剤繰り出し部34とを連動させる場合には、機体前後方向での播種装置15の播種位置と施薬装置17の施薬位置とを合わせる上において必要になる減速構造を不要にすることができ、これにより、伝動装置18における構成の簡素化を図ることができる。
【0048】
図3〜
図7及び
図9〜
図11に示すように、伝動装置18において、低速伝動系48は、動力分配軸47からの動力を減速するチェーン式減速機構51、チェーン式減速機構51から減速後の動力を取り出す左右向きの第1中継軸52、第1中継軸52に備えた6つの第1少数条クラッチ53、及び、対応する第1少数条クラッチ53から種籾繰り出し部25に伝動する6つの第1ギヤ式伝動機構54、などを備えている。
【0049】
高速伝動系49は、動力分配軸47の回転運動を揺動運動に変換する第1変換機構55、第1変換機構55による変換後の揺動運動を正回転運動に変換する第2変換機構56、第2変換機構56による変換後の正回転運動を正回転動力として取り出す左右向きの第2中継軸57、第2中継軸57に備えた3つの第2少数条クラッチ58、及び、各第2少数条クラッチ58から対応する2つの肥料繰り出し部29に伝動する3つの第2ギヤ式伝動機構59、などを備えている。
【0050】
各連動機構50は、対応する第1ギヤ式伝動機構54の回転運動を揺動運動に変換する第1変換部60、及び、第1変換部60による変換後の揺動運動を正回転運動に変換する第2変換部61、などを備えて、第2変換部61による変換後の正回転運動を正回転動力として対応する2つの薬剤繰り出し部34に伝達するように構成している。
【0051】
伝動装置18は、左側の2つの種籾繰り出し部25及び左側の2つの薬剤繰り出し部34への伝動を断続する左側の2つの第1少数条クラッチ53が同じ作動状態に切り替わり、左右中央側の2つの種籾繰り出し部25及び左右中央側の2つの薬剤繰り出し部34への伝動を断続する左右中央側の2つの第1少数条クラッチ53が同じ作動状態に切り替わり、右側の2つの種籾繰り出し部25及び右側の2つの薬剤繰り出し部34への伝動を断続する右側の2つの第1少数条クラッチ53が同じ作動状態に切り替わるように、対応する2つの第1少数条クラッチ53を連動連結する3つの第1連係機構62を備えている。
【0052】
又、左側の2つの第1少数条クラッチ53と左側の2つの肥料繰り出し部29への伝動を断続する左側の第2少数条クラッチ58とが同じ作動状態に切り替わり、左右中央側の2つの第1少数条クラッチ53と左右中央側の2つの肥料繰り出し部29への伝動を断続する左右中央側の第2少数条クラッチ58とが同じ作動状態に切り替わり、右側の2つの第1少数条クラッチ53と右側の2つの肥料繰り出し部29への伝動を断続する右側の第2少数条クラッチ58とが同じ作動状態に切り替わるように、対応する第1連係機構62と第2少数条クラッチ58とを連動連結する3つの第2連係機構63を備えている。
【0053】
作業ユニットAは、左右方向への揺動操作が可能な3本の操作レバー64を、ユニット台枠2の前上部における各第2少数条クラッチ58との対応箇所に分散配備している。
そして、左側の操作レバー64の左右方向への揺動操作に伴って左側の第2少数条クラッチ58の作動状態が切り替わり、左右中央側の操作レバー64の左右方向への揺動操作に伴って左右中央側の第2少数条クラッチ58の作動状態が切り替わり、右側の操作レバー64の左右方向への揺動操作に伴って右側の第2少数条クラッチ58の作動状態が切り替わるように構成している。
【0054】
つまり、走行機体1から各操作レバー64を任意に揺動操作することにより、作業ユニットAの作業状態を、全ての種籾繰り出し部25と肥料繰り出し部29と薬剤繰り出し部34とを作動させる6条作業状態、左側の4つの種籾繰り出し部25と肥料繰り出し部29と薬剤繰り出し部34とを作動させる左4条作業状態、左側の2つの種籾繰り出し部25と肥料繰り出し部29と薬剤繰り出し部34とを作動させる左2条作業状態、右側の4つの種籾繰り出し部25と肥料繰り出し部29と薬剤繰り出し部34とを作動させる右4条作業状態、及び、右側の2つの種籾繰り出し部25と肥料繰り出し部29と薬剤繰り出し部34とを作動させる右2条作業状態に切り替えることができる。
【0055】
図9及び
図11に示すように、作業ユニットAは、連動する状態で隣り合う2つの種籾繰り出し部25の間から連動する状態で隣り合う2つの薬剤繰り出し部34の間にわたる空間65を3箇所備えている。そして、これらの空間65を有効利用して、各空間65に対応する連動機構50を配備することにより、作業ユニットAの小型化を図るようにしている。
【0056】
〔間欠供給機構〕
施薬装置17における薬剤の供給経路としての施薬ホース35の途中箇所に設けられる間欠供給機構70は次のように構成されている。
間欠供給機構70は、粉粒体としての薬剤を貯留する薬剤ホッパー33から離れた下方側に位置するように設けてあり、供給経路内で流下途中の薬剤を圃場面に近い低位置で一旦受け止め、かつ間欠的に落下供給することにより、薬剤が圃場に点播された状態とするためのものである。
このとき間欠供給機構70によって、薬剤が一旦受け止められ、かつ、その受け止め位置から落下供給を開始する薬剤の落下開始高さH1は、播種装置15の種籾繰り出し部25からの種籾の落下供給高さH2よりも所定高さH3だけ高い位置(
図12参照)に設定されているが、これはほぼ同じ高さ位置に設定することも可能である。
【0057】
図9及び
図12乃至
図15に示すように、薬剤ホッパー33の下部に連設された薬剤繰り出し部34から所定量ずつ繰り出されて流下する薬剤を流下案内する施薬ホース35の流下路の途中箇所に、その施薬ホース35の上流側管路35aよりも流路断面積の大きい弁箱部71(弁装着管部分に相当する)が設けられており、この弁箱部71内に操作軸72(支軸に相当する)を介して板状の弁体73が装備されている。
【0058】
施薬ホース35の上流側管路35aを構成する合成樹脂製の可撓性ホースの下端側に金属製の弁箱部71の上方連結部71aが差し込まれている。この上方連結部71aの内径は、それよりも上方側の可撓性ホースの内径とほぼ同径に形成され、一連の上流側管路35aを構成している。
上方連結部71aの下端側に、上流側管路35aよりも流路断面積の大きい下方連結部71bが一体に形成されていて、この下方連結部71bの内部に弁体73が操作軸72の軸心回りで揺動開閉可能に支持されている。
【0059】
下方連結部71bの下部には、合成樹脂製の下部接続管74が外嵌されている。この下部接続管74は、内部に下流側管路35bを有して施薬ホース35の下端部を構成するものであり、外側に蛇腹状筒部分74aを有し、内側に円筒状案内筒部分74bを有した二重筒状に構成されている。
下部接続管74の下部側には、先細り管75(絞り部に相当する)が接続されており、この先細り管75の下部外側に作溝器37が連結されている。
先細り管75は、その下端側開口75aが上端側開口75bよりも小径に形成された先細り形状のもので構成され、かつ
図14に仮想線で示すように、下端側開口75aが平面視で作溝器37の前壁及び左右の横壁から離れて、作溝器37のほぼ中央に位置した状態で設けられている。
【0060】
図14に示すように、平面視で上流側管路35aの下端部は、作溝器37の前壁から距離L5だけ離れた後方寄りに位置している。
上記のように先細り管75を用いた場合には、薬剤の供給位置は、下端側開口75aの直下に落下供給されることになるが、例えば、先細り管75を用いずに、下部接続管74の下部に作溝器37を直接的に接続した場合には、
図14に仮想線で示す上流側管路35aの下端部に相当する位置から薬剤が落下供給される。
しかも、弁体73は、後述するように、後傾姿勢で薬剤を受け止めており、
図13の仮想線で示すように弁体73を開くと、薬剤は上流側管路35aの中心部よりも後方側寄りに偏った状態で落下し、
図14の仮想線で示す上流側管路35aの後方側寄り箇所に供給される状態となるので、作溝器37の前壁から大きく離れて前壁への付着を避けやすい状態で供給される。
【0061】
図13に示すように、薬剤の供給経路の前側に位置させるように、弁箱部71の前方側上部で左右方向に沿う操作軸72を設け、この操作軸72に板状の弁体73の前端側を固定し、弁箱部71の後方側で、前方側の操作軸72よりも低い位置の上方連結部71aの下端に弁受け部71cを形成してある。
これによって、弁箱部71内で弁体73は、上面側が後方側ほど下方に位置する後下がり傾斜姿勢で供給経路を閉塞するように、後傾姿勢で薬剤を受け止める閉塞姿勢となる。
弁体73の上面が弁受け部71cに下方から当接する閉塞姿勢では、
図13に示すように、弁体73の上面で受け止められた薬剤が、上面の傾斜によって後方側へ移行し、かつ、上流側管路35aを構成する上方連結部71aの円弧状の後部内周面に案内されて左右方向での中央側により多く集められた状態となる。
したがって、この状態から
図13に仮想線で示すように弁体73を操作軸72の軸心回りで時計回りに回転させて開放姿勢に切り換えると、弁体73の上面に乗っていた薬剤が上流側管路35aの後方側寄り箇所の延長線に沿った状態で落下し圃場へ点播状態で供給されることになる。
【0062】
前記操作軸72の弁箱部71外への突出部分には、
図15に示すようにアーム部材72aが一体回動可能であるように固定してあり、弁箱部71の前部外側には、側面視L字状のバネ受け金具76が固定してあり、このバネ受け金具76と前記アーム部材72aとにわたってコイルスプリングからなる戻しバネ77が掛張されている。
戻しバネ77は、自由状態で弁体73を弁受け部71c側へ押し付け付勢し、弁体73の上面側に所定量の薬剤が堆積した状態で弁体73の閉塞姿勢を維持するように、
図12、13で反時計回りにアーム部材72aを回動付勢している。そして、間欠連係機構80による駆動力が作用すると、アーム部材72aの時計回りでの回動を許容して、弁体73を
図13の仮想線で示すように開放姿勢に切換可能に構成されている。
この戻しバネ77、及び弁体73を備えて間欠供給機構70が構成され、この間欠供給機構70に、間欠連係機構80を介して種籾繰り出し部25の回転動力伝達されるように構成されている。
【0063】
〔間欠連係機構〕
間欠連係機構80は、
図9、
図12、及び
図15に示すように、第1中継軸52に相対回動自在に枢支された伝動ギヤ52aと噛合する入力ギヤ81を、種籾繰り出し部25の駆動軸25aに一体回動可能に軸支させている。この入力ギヤ81は、第1少数条クラッチ53を介して第1中継軸52の駆動力を断続可能に構成されている。
つまり、第1中継軸52にスプライン嵌合している第1少数条クラッチ53が入り側に操作されて伝動ギヤ52aの側面に咬合すると、その伝動ギヤ52aの外周側で常時噛合する入力ギヤ81に駆動力が伝えられる。第1少数条クラッチ53が切り側に操作されると、伝動ギヤ52aが遊転状態となり、入力ギヤ81側への動力伝達が断たれることになる。
【0064】
入力ギヤ81のうち、
図9に示す左から奇数番目の入力ギヤ81は、
図15に示すように、伝動ギヤ52aに噛合するギヤ部を外周に備えた入力回転体81Aと、その入力回転体81Aの側面に対して止め付けボルト81Cを介して着脱可能に取り付けられた環状回転板81Bとの組み合わせで構成してあり、環状回転板81Bの側面に複数本の駆動用ピン82が突設されている。駆動用ピン82には、カラー82aを遊嵌させてあり、間欠連係機構80のリンク部材83との接触による駆動用ピン82の摩耗を回避し得るように構成してある。
【0065】
入力ギヤ81のうち、
図9に示す左から偶数番目の入力ギヤ81は、上記環状回転板81Bや駆動用ピン82を備えずに、外周側にギヤ部を備えた入力回転体81Aのみで構成されている。
この入力回転体81Aのみで構成された入力ギヤ81は、
図9乃至
図11に示す中継ギヤ66、第1変換部60、及び第2変換部61で構成される連動機構50を介して、隣り合う位置の2つの薬剤繰り出し部34に駆動力を伝達するように構成されている。
【0066】
上記奇数番目の入力ギヤ81は、
図12及び
図15に示すように、リンク部材83、連係ロッド85を介してアーム部材72aに連係されている。
つまり、種籾繰り出し部25の前面側に固定金具87を介して枢支ピン84が取り付けられ、この枢支ピン84の軸心回りでリンク部材83が揺動自在に枢支されている。そして、このリンク部材83には、一端側を前記固定金具87に固定されたコイルスプリングからなる付勢バネ86の他端側が係止されていて、この付勢バネ86の付勢作用により、リンク部材83の後端部83Aが入力ギヤ81側の駆動用ピン82に常時当接する側に向けて弾性付勢されている。
したがって、リンク部材83の後端部83Aは、
図12に示すように、入力ギヤ81の時計回りの回転にともなって、実線に示すように一つの駆動用ピン82のカラー82aに当接した状態から、仮想線で示すように押し上げられ、これに伴ってリンク部材83の前端部83Bが連係ロッド85を引き操作して、アーム部材72aを時計回りに回動させる。これによって弁体73が開放側に揺動されて薬剤が落下供給される。
【0067】
押し上げられたリンク部材83の後端部83Aが、上記の駆動用ピン82のカラー82aから外れると、付勢バネ86の付勢作用により、リンク部材83の後端部83Aは再び実線で示すように、次の駆動用ピン82のカラー82aに当接した状態となる。この状態では、リンク部材83の前端部83Bが連係ロッド85の引き操作を解除して押し戻し、アーム部材72aは戻しバネ77の作用により反時計回りに揺動復帰し、同時に弁体73も閉塞姿勢に復帰する。
【0068】
〔播種位置と薬剤点播位置との関係〕
このように作動する間欠供給機構70による薬剤の点播位置は、播種装置15による播種位置との関係で次のように設定される。
図8に示すように、播種位置を基準にして考えると薬剤の点播位置は、種籾供給部26の前方側で、整地フロート19の左右中央からは少し横外側に位置する状態で施薬用の作溝器37が設けられているように、左右方向では、ほぼ重複する位置ではあるが、整地フロート19の中央からは少しだけ外側寄りの位置にある。
図8では、種籾供給部26の前方側で、整地フロート19の左右中央からは少し横内側に位置する状態で施肥用の作溝器32も設けられているが、施肥装置16は、点播ではなく連続して肥料を供給するものであるから、播種位置の横側箇所に、前後方向で連続した施肥供給ラインが形成される。
【0069】
播種位置を基準にした薬剤の前後方向での点播位置は、種籾繰り出し部25での種籾の落下時点における図示しない繰り出しロールの種籾放出位置と、入力ギヤ81における駆動用ピン82との位置関係、駆動用ピン82とリンク部材83との接触位置の関係、種籾繰り出し部25での種籾の落下距離と間欠供給機構70での薬剤の落下距離との関係、種籾と薬剤との質量の関係、及び走行機体1の進行速度との関係等、様々な要因によって変化する。
このため、本発明では、走行機体1の進行速度を予め設定した所定速度とし、所定質量の種籾と薬剤とを用い、かつ、種籾の落下距離と薬剤の落下距離とを所定の関係に設定したものにおいて、間欠連係機構80による繰り出しロールの種籾放出位置と、入力ギヤ81における駆動用ピン82との位置関係、駆動用ピン82とリンク部材83との接触位置の関係を、次のように定めている。
【0070】
つまり、
図16に示すように、種籾繰り出し部25からの種籾の一つの供給位置を第1基準位置P1とし、第1基準位置P1に最も近い位置の施薬装置17による薬剤の供給位置を第2基準位置P2とする。尚、
図16中における丸印は播種位置を示し、黒く塗りつぶした黒丸印は施薬位置を示している。
そして、第1基準位置P1から第2基準位置P2までの離間距離d1が、第1基準位置P1に対して進行方向の前後で隣り合う箇所の種籾の供給位置P1a,P1bから前記第2基準位置P2までの離間距離L1,L2、及び第1基準位置P1に対して左右方向で隣り合う箇所の種籾の供給位置P1c,P1dから前記第2基準位置P2までの離間距離L3,L4よりも短くなるようにしている。
【0071】
このように間欠連係機構80による繰り出しロールの種籾放出位置と、入力ギヤ81における駆動用ピン82との位置関係、及び駆動用ピン82とリンク部材83との接触位置の関係を調整して、ともに点播される播種装置15による播種位置と施薬装置17による薬剤の供給位置とを、比較的近接した所定の位置関係に定めるように構成したものである。
【0072】
〔他の実施形態の1〕
実施の形態では、植播系作業装置として播種装置15を備えた構造の水田作業機を示したが、これに限られるものではない。
例えば、植播系作業装置として苗植付装置を採用した構造の水田作業機であってもよい。
また、播種装置15を採用した場合も、苗植付装置を採用した場合も、6条用に限らず、7条用以上、あるいは5条用以下のものに適用するなど、任意の条数用のものに適用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0073】
〔他の実施形態の2〕
実施の形態では、粉粒体供給装置として、施薬装置17を採用した構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、粉粒体供給装置として、施肥装置16を採用した構造のものであってもよい。
尚、実施の形態では、施肥装置16と施薬装置17との両方を備えて、そのうちの施薬装置17を播種装置15の点播に合わせて点播するようにしたが、これに限らず、施肥装置16と施薬装置17との両方を播種装置15の点播に合わせて点播する、あるいは苗植付装置の苗植付箇所に合わせて点播するようにしてもよい。
また、施肥装置16と施薬装置17とのいずれか一方のみを備えて、その備えた施肥装置16又は施薬装置17を粉粒体供給装置として点播するように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0074】
〔他の実施形態の3〕
実施の形態では、間欠供給機構70として、板状の弁体73を揺動開閉可能に構成した構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。例えば、弁体73として、間欠回転するロータリ弁を用いるなどしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0075】
〔他の実施形態の4〕
実施の形態では、間欠供給機構70として、板状の弁体73を用いて、その上面側が後方側ほど下方に位置する後下がり傾斜姿勢で供給経路を閉塞するように構成された構造のものを例示したがこれに限られるものではない。
例えば弁体73を水平姿勢供給経路を閉塞するように構成したもの、あるいは、前下がり傾斜姿勢で供給経路を閉塞して、前下がり揺動で供給経路を開放する、あるいは、後下がり揺動で供給経路を開放するように構成された構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0076】
〔他の実施形態の5〕
実施の形態では、薬剤の落下開始高さH1が、播種装置15の種籾繰り出し部25からの種籾の落下供給高さH2よりも所定高さH3だけ高い位置に設定された構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、薬剤の落下開始高さH1と種籾の落下供給高さH2とを同一高さ位置に設定する、あるいは、逆に薬剤の落下開始高さH1を種籾の落下供給高さH2よりも低く設定してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0077】
〔他の実施形態の6〕
実施の形態では、播種装置15側における1つの種籾繰り出し部25と、施薬装置17側における2つの薬剤繰り出し部34とを連動連結する連動機構50と、播種装置15側における1つの種籾繰り出し部25と、施薬装置17側における2つの間欠供給機構70とを連動連結する間欠連係機構80とが備えられた構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、播種装置15側における1つの種籾繰り出し部25に対して、施薬装置17側における1つの薬剤繰り出し部34と、施薬装置17側における1つの間欠供給機構70との両方を接続して、1つの種籾繰り出し部25の作動で、1つの施薬装置17側における薬剤繰り出し部34と間欠供給機構70との両方を駆動するように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0078】
〔他の実施形態の7〕
実施の形態では、播種装置15による種籾として鉄コーティング処理が施された種籾を採用した構造のものを例示したが、これに限られるものではない。
例えば、カルパーコーティング処理を施した種籾、コーティング処理を施していない種籾、又は、麦や野菜などの種籾を圃場に播くように構成したものであってもよい。