特許第6468800号(P6468800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6468800アミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
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  • 特許6468800-アミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 図000027
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468800
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】アミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/91 20060101AFI20190204BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190204BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C07D307/91CSP
   C09K11/06 690
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-220210(P2014-220210)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-84333(P2016-84333A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】渕脇 純太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 光進
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−049539(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059099(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/088047(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/091471(WO,A1)
【文献】 特表2013−525346(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/032304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

下記一般式(1)で表されることを特徴とするアミン誘導体。
【化1】
[式(1)中、式中、n1以上以下の整数でありn2以上以下の整数であり、n1+n2以上である。]
【請求項2】
前記式(1)中、n1及びn2は1であることを特徴とする請求項1に記載のアミン誘導体。
【請求項3】
前記式(1)中、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、前記窒素原子と結合する前記アリーレン基に対してパラ位となることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミン誘導体。
【請求項4】
前記式(1)中、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、前記窒素原子と結合する前記アリーレン基に対して全てがパラ位となることを特徴とする請求項3に記載のアミン誘導体。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一に記載のアミン誘導体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項6】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、青色発光領域において高い発光効率を示す有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置に応用するにあたり、有機エレクトロルミネッセンス素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が求められている。有機エレクトロルミネッセンス素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化を実現するために、正孔輸送層の定常化、安定化などが検討されている。正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては芳香族アミン系化合物が知られているが、そのキャリア耐性の低さから有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命に課題があった。有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化に有利な材料として、例えば、ヘテロアリール環で置換したアミン誘導体が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献1及び2の正孔輸送材料は、発光効率が十分であるとは言い難い。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、赤色発光領域及び緑色発光領域に比べて、特に、青色発光領域の発光効率が低い傾向にあることから、青色発光領域の発光効率の向上が望まれる。また、特許文献1及び2の正孔輸送材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の高温耐性が十分ではなく、新規な材料の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−267255号公報
【特許文献2】特開2009−029726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するものであって、発光効率が高く、高温耐性を有するアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0008】
特に、本発明は、青色発光領域において、発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる発光効率が高く、高温耐性を有するアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、下記一般式(1)で表されるアミン誘導体が提供される。
【化1】
式(1)中、n1は1以上4以下の整数でありn2は2以上4以下の整数であり、n1+n2は4以上である。
【0010】
本発明の一実施形態に係るアミン誘導体は、3−置換ジベンゾフランをアミンに導入することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができる。
【0011】
前記アミン誘導体において、前記式(1)中、n1及びn2は2であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係るアミン誘導体は、3−置換ジベンゾフラン及び2つのターフェニル基をアミンに導入することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができる。
【0013】
前記アミン誘導体において、前記式(1)中、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、前記窒素原子と結合する前記アリーレン基に対してパラ位となってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係るアミン誘導体は、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、パラ位で結合することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができる。
【0015】
前記アミン誘導体において、前記式(1)中、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、前記窒素原子と結合する前記アリーレン基に対して全てがパラ位となってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係るアミン誘導体は、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、全てパラ位で結合することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のアミン誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記のアミン誘導体を含むことにより、発光効率が高く、高温耐性の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態によると、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に3−置換ジベンゾフランをアミンに導入した有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、高い発光効率と、高温耐性を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、発光効率が高く、高温耐性を有するアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。特に、本発明によると、青色発光領域において、発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる発光効率が高く、高温耐性を有するアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。本発明は、3−置換ジベンゾフランをアミンに導入することで、高発光効率化と高温耐性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、アミン誘導体において、3−置換ジベンゾフランをアミンの窒素原子と直接結合させることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の高発光効率化と高温耐性を実現することができることを見出した。
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係るアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。但し、本発明のアミン誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
本発明に係るアミン誘導体は、下記一般式(1)で示される3−置換ジベンゾフランをアミンの窒素原子に直接結合するジフェニルアミン構造を有する。
【化2】
【0026】
式(1)中、n1は1以上4以下の整数でありn2は2以上4以下の整数であり、n1+n2は4以上である。アミンの窒素原子にペンタフェニル基よりも大きな置換基が結合すると、蒸着での膜形成に用いる材料としては好ましくない。
【0027】
また、n1及びn2はそれぞれ2であることが好ましい。すなわち、一実施形態において、2つのターフェニル基を有するアミン誘導体であることが好ましい。本発明に係るアミン誘導体は、3−置換ジベンゾフラン及び2つのターフェニル基をアミンに導入することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができる。
【0028】
また、一実施形態において、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、窒素原子と結合するアリーレン基に対してパラ位となることが好ましく、前記窒素原子と結合する前記アリーレン基に対して全てがパラ位となることがより好ましい。本発明に係るアミン誘導体は、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、パラ位で結合することで、発光効率が高く、高温耐性を有することができ、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、全てパラ位で結合することで、発光効率及び高温耐性をより高くすることができる。
【0029】
本発明において、式(1)に示したアミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として利用することができる。本発明係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上述した構造を有するアミン誘導体を含み、発光効率が高く、高温耐性の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0030】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化3】
【0031】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化4】
【0032】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化5】
【0033】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化6】
【0034】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化7】
【0035】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化8】
【0036】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化9】
【0037】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化10】
【0038】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化11】
【0039】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化12】
【0040】
本発明に係るアミン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化13】
【0041】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記のような例示化合物を含むことで、発光効率が高く、高温耐性の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に好適に用いることができる。なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は青色領域にも対応可能な広いエネルギーギャップを有しているため、緑色〜赤色領域への適用も可能である。
【0042】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば、基板102、陽極104、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、電子輸送層112、電子注入層114及び陰極116を備える。また、一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。
【0043】
例えば、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送層108に用いる場合について説明する。基板102は、例えば、透明ガラス基板や、シリコン等から成る半導体基板、樹脂等のフレキシブルな基板であってもよい。陽極104は、基板102上に配置され、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いて形成することができる。正孔注入層106は、陽極104上に配置され、例えば、4,4′,4′′-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine(2-TNATA)、N,N,N′,N′-Tetrakis(3-methylphenyl)-3,3′-dimethylbenzidine(HMTPD)等を含む。正孔輸送層108は、正孔注入層106上に配置され、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて形成される。一実施形態において、正孔輸送層108の厚さは3nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0044】
発光層110は、正孔輸送層108上に配置され、縮合多環芳香族の誘導体を含有することが好ましく、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオラレンテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体及びトリフェニレン誘導体から選択されることが好ましい。特に、発光層110は、アントラセン誘導体又はピレン誘導体を含有することが好ましい。発光層110に用いるアントラセン誘導体としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【化14】
【0045】
式(2)中、R11〜R20は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子あるいは重水素原子である。また、c及びdは0以上5以下の整数である。なお、隣接した複数のR11〜R20は結合し、飽和もしくは不飽和の環を形成してもよい。
【0046】
R11〜R20に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、R11〜R20に用いる炭素数1以上15以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0048】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層110に用いるアントラセン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化15】
【0049】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層110に用いるアントラセン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化16】
【0050】
発光層110は、例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-bis[2-(3-N-ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4-(di-p-tolylamino)-4’-[(di-p-tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(diphenylamino)styryl)naphthalen-2-yl)vinyl)phenyl)-N-phenylbenzenamine(N-BDAVBi)、ペリレンおよびその誘導体(例えば、2,5,8,11-tetra-t-butylperylene(TBPe))、ピレンおよびその誘導体(例えば、1,1-dipyrene、1,4-dipyrenylbenzene、1,4-Bis(N,N-Diphenylamino)pyrene)等の2,5,8,11-Tetra-t-butylperylene(TBP)等のドーパントを含み、本発明においては特に限定されない。
【0051】
電子輸送層112は、発光層110上に配置され、例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)や含窒素芳香環を有する材料(例えば、1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzeneのようなピリジン環を含む材料や、2,4,6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazineのようなトリアジン環を含む材料、2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-ylphenyl)-9,10-dinaphthylanthraceneのようなイミダゾール誘導体を含む材料)を含む材料により形成される。
【0052】
電子注入層114は、電子輸送層112上に配置され、例えば、フッ化リチウム(LiF)リチウム−8−キノリナート(Liq)等を含む材料により形成される。陰極116は、電子注入層114上に配置され、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)等の金属や酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明材料により形成される。上記薄膜は、真空蒸着、スパッタ、各種塗布など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0053】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、発光効率が高く、高温耐性を有する正孔輸送層が形成される。なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、TFTを用いたアクティブマトリクスの有機EL発光装置にも適用することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の高発光効率化と高温耐性を実現することができる。
【実施例】
【0055】
(製造方法)
上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【化17】
【0056】
(化合物1の合成)
アルゴン雰囲気下、300mLの三つ口フラスコに、化合物A 3.01gとB 12.10g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)2) 1.19g、トリ−tert−ブチルホスフィン((t-Bu)3P) 2Mトルエン溶液を1.72mL、ナトリウムtert−ブトキシド 6.30gを加えて、105mLのトルエン溶媒中で3時間40分加熱還流した。空冷後、濾過し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を使用)で精製後、トルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物1を5.76g(収率55%)得た。
【0057】
(化合物1の同定)
FAB−MS測定により測定された化合物1の分子量は、639であった。また、H−NMR (CDCl3)測定で測定された化合物1のケミカルシフト値は、1H NMR (CDCl3, δ in ppm) 7.89 (dd, J = 0.25 and 0.00 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 0.27, 1H), 7.67 (m, 12H), 7.59 (m, 4H), 7.43 (m, 11H), 7.29 (m, 3H), 7.21 (dd, J = 0.03 and 0.01 Hz, 1H)であった。
【0058】
(有機エレクトロルミネッセンス素子の作製)
上述した実施例化合物1、4、10、31、48及び76を正孔輸送材料として用いて、上述した製造方法により、実施例1〜6の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【化18】
【0059】
また、下記の比較例化合物82〜86を用いて、比較例1〜5の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【化19】
【0060】
本実施例においては、基板102には透明ガラス基板を用い、150nmの膜厚のITOで陽極104を形成し、60nmの膜厚の2−TNATAで正孔注入層106を形成し、実施例及び比較例の化合物を用いて30nmの膜厚の正孔輸送層108を形成し、ADNにTBPを3%ドープした25nmの膜厚の発光層110を形成し、25nmの膜厚のAlq3で電子輸送層112を形成し、1nmの膜厚のLiFで電子注入層114を形成し、100nmの膜厚のAlで陰極116を形成した。
【0061】
作成した有機エレクトロルミネッセンス素子について、発光効率及び高温耐性を評価した。なお、作製した有機EL素子の発光特性の評価には、浜松ホトニクス製C9920−11輝度配向特性測定装置を用い、電流密度を10 mA/cmとして評価した。有機エレクトロルミネッセンス素子の高温耐性評価は、作成した素子を100℃、200時間保存後、室温に戻して性能評価を行った。変化が無かったものを○、変化が見られたものを×とした。有機エレクトロルミネッセンス素子の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0062】
また、実施例化合物1、4、10、31、48及び76、比較例化合物82〜86についてTg[℃]を確認した。測定には、日立ハイテク社製DSC7020Xを用い、DSC測定を実施した。各化合物のTg[℃]を下記の表2に示す。
【表2】
【0063】
表1を参照すると、実施例1〜6では、比較例1〜5に比べ高い発光効率を有することが明らかとなった。また、実施例1〜6では、有機エレクトロルミネッセンス素子が高温耐性を有するのに対して、比較例では、比較例4以外の化合物において、十分な高温耐性を得ることはできなかった。本実施例の化合物は、3−置換ジベンゾフランをアミンに導入することで、高発光効率化と高温耐性を実現した。また、実施例1〜4と実施例5を比較すると、ビフェニルをターフェニル基にすることで更なる高発光効率化と高温耐性を実現可能であることが明らかとなった。これは、ターフェニル基にアミンに導入することで正孔移動度が上がり、発光層に正孔が流れ込みやすくなったことにより、発光効率が大きく改善したものと考えられる。また、実施例1と実施例3とを比較すると、窒素原子と結合するアリーレン基に結合するアリーレン基及びアリール基が、窒素原子と結合するアリーレン基に対して全てがパラ位となる実施例1は、アリール基がパラ位とならない実施例3に比して、高温耐性を有することが明らかとなった。
【0064】
比較例2の結果から、ジベンゾフランの置換位置が異なるアミン誘導体では、発光効率化、高温耐性ともに満足しない結果となった。2−置換ジベンゾフラン誘導体では、3−置換ジベンゾフラン誘導体に比べて電子のブロック性に劣るため、発光層から正孔輸送層に電子が侵入し、再結合確率の低下と正孔輸送層の劣化を生じるためであると考えられる。
【0065】
また、表2に示したように、実施例化合物1、4、10、31、48及び76ではターフェニル基を導入することにより高いTg[℃]を実現した。これにより化合物の熱耐性も向上していると考えられる。上述したように、実施例化合物1、4、10、31、48及び76の有機エレクトロルミネッセンス素子では高温耐性評価に問題なかったが、比較例化合物82〜86では性能変化が生じた。nは1以上4以下の整数でありnは2以上4以下の整数であり、n+nは4以上となる条件を満たさない比較例化合物84において、Tg[℃]が低くなったことからも明らかである。また、フェニル基が分岐した構造を有する比較例化合物86においても、Tg[℃]が低くなった。一方、比較例化合物85は、Tg[℃]が高いものの、フェニレン基を介してジベンゾフラニル基をアミンの窒素に結合した構造を有するため、発光効率が低下した。
【0066】
以上のように青色領域において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、3−置換ジベンゾフラン及び2つのターフェニル基をアミンに導入することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の高発光効率化と高温耐性化を達成することができることが明らかとなった。本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は青色領域にも対応可能な広いエネルギーギャップを有しているため、緑色〜赤色領域への適用も可能である。
【符号の説明】
【0067】
100 有機EL素子、102 基板、104 陽極、106 正孔注入層、108 正孔輸送層、110 発光層、112 電子輸送層、114 電子注入層、116 陰極
図1