(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468861
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20190204BHJP
B65D 1/46 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/46
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-14604(P2015-14604)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-137927(P2016-137927A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】久保 徳晃
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−132998(JP,A)
【文献】
実開昭57−199511(JP,U)
【文献】
特開2012−030851(JP,A)
【文献】
特開2005−070323(JP,A)
【文献】
特開平08−276924(JP,A)
【文献】
実開平07−011516(JP,U)
【文献】
特開2009−298485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、前記口部に装着したキャップにより前記胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルであって、
前記胴部は、コーナー部を介して周方向に連設された4つの平坦壁部を備えて四角筒状に形成され、前記コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成され、前記胴部の各平坦壁部に、該胴部の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部が設けられているものにおいて、
前記パネル部が隠れるように前記胴部の外面に周方向に巻回され、何れか1つの前記コーナー部で両端が貼着されたフィルム状のロールラベルと、
前記平坦壁部と前記コーナー部との境界位置又は当該境界位置の近傍に設けられて前記ロールラベルの上下方向幅より小さい範囲で上下方向に延びる縦ビードと、
前記平坦壁部における前記パネル部の上方と下方との少なくとも一方に、横方向に直線状に延びる溝状の横ビードと、
前記パネル部の上方位置であって前記胴部の上縁から下方に所定距離を存した位置に、前記胴部の全周にわたって連続する溝状の環状ビードとを備え、
前記横ビードは、両端部が当該平坦壁部の両側に隣接する夫々の前記コーナー部で開放されており、
前記コーナー部の前記環状ビードは、その深さ及び上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が他の部分より大とされており、更に、下側内面の外側端縁が、前記コーナー部以外の前記環状ビードよりも下方に位置するように形成されていることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の口部と、口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、肩部の下端から下方に連続する胴部と、胴部の下端を閉塞する底部とを備え、胴部の内部には飲料等の内容物が充填され、口部に装着したキャップにより胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製ボトルとして角型ボトルと称されるものが知られており、この種の角型ボトルは、胴部が、コーナー部を介して周方向に連設された4つの平坦壁部を備えて四角筒状に形成され、コーナー部が、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
胴部の各平坦壁部には、胴部の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部が設けられている。パネル部により、胴部の内圧変化に伴う変形が吸収されてボトルの外形が良好に維持される。
【0004】
また、近年では、胴部にフィルム状のロールラベルを巻回して装着することが行われている。角型ボトルの場合、胴部の外面のうち何れか1つのコーナー部でロールラベルの両端が重合接着されると共にこの接着部分がコーナー部の外面に貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−175625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、合成樹脂製ボトルにおいて、内容物の高温充填の後、冷却した際、胴部の内圧変化が比較的大きくなるため、内圧変化に伴う胴部の変形をパネル部のみに集中させることができず、コーナー部に変形が生じてしまう場合がある。このため、ロールラベル貼着の際、ロールラベルに皺が発生したり、ロールラベルの両端の貼着部分が剥がれたり、ずれるおそれがあった。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、胴部の特にコーナー部の変形を抑えることによりロールラベルの装着状態を確実に維持することができる合成樹脂製ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、 円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡開する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、前記口部に装着したキャップにより前記胴部の内部が封止される合成樹脂製ボトルであって、前記胴部は、コーナー部を介して周方向に連設された4つの平坦壁部を備えて四角筒状に形成され、前記コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成され、前記胴部の各平坦壁部に、該胴部の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部が設けられているものにおいて、前記パネル部が隠れるように前記胴部の外面に周方向に巻回され、何れか1つの前記コーナー部で両端が貼着されたフィルム状のロールラベルと、前記平坦壁部と前記コーナー部との境界位置又は当該境界位置の近傍に設けられて前記ロールラベルの上下方向幅より小さい範囲で上下方向に延びる縦ビードと、前記平坦壁部における前記パネル部の上方と下方との少なくとも一方に、横方向に直線状に延びる溝状の横ビード
と、前記パネル部の上方位置であって前記胴部の上縁から下方に所定距離を存した位置に、前記胴部の全周にわたって連続する溝状の環状ビードとを備え、前記横ビードは、両端部が当該平坦壁部の両側に隣接する夫々の前記コーナー部で開放されて
おり、前記コーナー部の前記環状ビードは、その深さ及び上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が他の部分より大とされており、更に、下側内面の外側端縁が、前記コーナー部以外の前記環状ビードよりも下方に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記縦ビードを設けたことにより、内圧変化に伴うコーナー部の変形を抑えることができるので、胴部に装着されたロールラベルの皺の発生や、胴部からの剥離、貼着部のずれを防止することができる。
【0010】
即ち、ボトル内部の圧力変化に伴う胴部の変形を防止するために、胴部の平坦壁部には膨出変形或いは没入変形するパネル部が形成されている。本発明においては、この平坦壁部に隣接するコーナー部との境界に設けられた縦ビードにより、パネル部だけでなく平坦壁部においても変形が得られる。よって、比較的大きな圧力変化がボトル内部に生じても、確実に平坦壁部の範囲で胴部の変形を吸収することができ、コーナー部の変形を抑制することことができる。
【0012】
更に、前記横ビードを設けたことにより、胴部が横方向からの荷重(例えば、自動販売機のコラム内に横倒姿勢で複数段に積み上げた際の荷重)を受けた場合に、平坦壁部の不用意な変形が防止できるので、胴部に巻回したロールラベルの弛みや皺の発生を防止することができる。
【0014】
また、前記環状ビードを胴部に設けることにより、胴部の横方向からの荷重に対する強度を向上させることができる。しかも、コーナー部の環状ビードにおいては、その深さ及び上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離が他の部分より大とされていると共に、下側内面の外側端縁が、コーナー部以外の環状ビードよりも下方に位置する形状となっているので、コーナー部のうち、環状ビードの上方のコーナー部外面を狭めることなく環状ビードを設けることができる。これにより、ロールラベルを貼着するための接着剤を塗布するコーナー部の貼着面が確実に確保でき、ロールラベルの強固な貼着状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の合成樹脂製ボトルを示す側面図。
【
図2】ロールラベルを取り除いた状態の本実施形態の合成樹脂製ボトルを示す側面図。
【
図4】Aは平坦壁部に位置する環状ビードの断面図、Bはコーナー部に位置する環状ビードの断面図。
【
図5】胴部のコーナー部の1つを拡大し横断面視してロールラベルの貼着状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の合成樹脂製ボトル1(以下、ボトル1という)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるプリフォーム(図示せず)をブロー成形により二軸延伸してなる略円筒状のPETボトルであり、
図1に示すように、キャップ2を螺着することにより封止される口部3(
図2参照)と、該口部3から下方に向かって次第に拡径する肩部4を介して更にその下方に連設された胴部5と、該胴部5の下部を閉塞する底部6とを備えている。
【0017】
また、
図1に示すように、胴部5には、ロールラベル7が装着されている。ロールラベル7は、帯状に形成された薄手の合成樹脂シートであり、内容物の表示等の印刷が施されている。
【0018】
胴部5は、
図2及び
図3に示すように、コーナー部8を介して周方向に連設された4つの平坦壁部9を備えて四角筒状に形成されている。
【0019】
各平坦壁部9には、胴部5の内圧変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部10が形成されている。各コーナー部8は、互いに隣り合う平坦壁部9の周方向端縁同士を繋ぐ湾曲面で構成されている。
【0020】
各平坦壁部9と各コーナー部8との境界位置には、上下方向に延びる溝状の縦ビード11が形成されている。縦ビード11は、パネル部10の上下方向の長さと略同等の長さに形成されている。なお、本実施形態においては、縦ビード11を平坦壁部9とコーナー部8との境界位置に設けているが、当該境界位置の近傍に縦ビード11を設けてもよい。
【0021】
このように各縦ビード11がパネル部10の横方向両側に沿って設けられていることにより、パネル部10のみの変形では吸収し切れない胴部5の内圧変化が生じても、各縦ビード11の間の平坦壁部9全面が変形して吸収することができる。しかも、縦ビード11の溝形状は胴部5の強度を向上させる作用を有しているので、胴部5の強度を低下させることなく平坦壁部9の変形許容範囲を拡大することができる。よって、比較的大きな変形が平坦壁部9に生じても、このときの変形が各コーナー部8に波及することが殆ど無く、胴部5の内圧変化に伴うコーナー部8の変形を抑制することができる。
【0022】
また、
図2に示すように、胴部5の各平坦壁部9には、パネル部10の上方と下方とに夫々位置して横方向に直線状に延びる溝状の横ビード12が形成されている。横ビード12は、パネル部10の横方向の長さよりも長く、その横方向両端の夫々が、各コーナー部8で開放されている。
【0023】
各平坦壁部9に横ビード12を形成したことにより、胴部5が横方向からの荷重(例えば、自動販売機のコラム内に横倒姿勢で複数段に積み上げ際の荷重)を受けた場合に、平坦壁部9の不用意な変形が防止できる。更に、各横ビード12は、その横方向両端がコーナー部8で開放された形状であるため、胴部5にパネル部10、縦ビード11、及び横ビード12等による比較的複雑な凹凸面が存在しても、ブロー成形の際に胴部5の肉厚を均一として良好な胴部5が形成される。なお、横ビード12はパネル部10の上方と下方との何れか一方のみに設けておけばよい。
【0024】
また、
図2に示すように、胴部5には、その全周にわたって連続する溝状の上部環状ビード13と下部環状ビード14とが形成されている。
【0025】
上部環状ビード13は本発明の環状ビードに相当するものであり、胴部5の上縁(肩部4との境界)から下方に所定距離を存した位置に形成されている。この位置に配置された上部環状ビード13は、各平坦壁部9の横ビード12とパネル部10との間を通って周方向に延びる。
【0026】
上部環状ビード13を設けることによって胴部5の横方向からの荷重に対する強度を向上させることができるが、本実施形態では、更に、
図4Aに示した上部環状ビード13における平坦壁部9に位置する部分の深さD1及び外側上下幅W1(上側内面の外側端縁と下側内面の外側端縁との間の距離)よりも、
図4Bに示した上部環状ビード13におけるコーナー部8に位置する部分の深さD2及び外側上下幅W2が大とされている。
【0027】
これによれば、コーナー部8の剛性が飛躍的に向上する。コーナー部8の剛性が高いことにより、例えば、自動販売機の払い出し口に設けられているストッパ機構によるコーナー部8の係止を確実に行うことができ、ストッパ機構のすり抜けによるボトル1の複数同時払い出し等の発生を防止することができる。
【0028】
胴部5にはロールラベル7が装着され、ロールラベル7によって、パネル部10、縦ビード11、横ビード12、上部環状ビード13及び下部環状ビード14が覆い隠される。
【0029】
ロールラベル7をボトル1の胴部5に装着するときには、先ず、一端部を胴部5のコーナー部8の1つに接着剤を介して貼着し、胴部5の周方向に巻回した後、
図5に示すように、当該一端部に他端部を重合させて接着剤を介して接合する。このときの接着剤の接着力は適宜選択されるものであるが、ボトル1のリサイクルの際に分別を容易とするために、一般には、手作業で剥離することが容易な接着剤が使用される。
【0030】
本実施形態のボトル1は、ロールラベル7を装着するために好適な構成を有している。即ち、上述した通り、上部環状ビード13は、
図4Bに示すように、コーナー部8に位置する部分の深さD2と外側上下幅W2が大きいが、その下側内面の外側端縁が、平坦壁部9に位置する(コーナー部8以外の)部分よりも下方に位置し、その上側内面の外側端縁の位置は、平坦壁部9に位置する部分と同じに形成されている。
【0031】
これによると、コーナー部8の上縁と上部環状ビード13の上側内面の外側端縁との間の距離が狭くなることがなく、ロールラベル7を貼着するための接着剤の塗布面積が上部環状ビード13によって狭くなることがない。よって、コーナー部8の剛性を向上させながら、ロールラベル7の貼着状態を強固に維持することができる。
【0032】
また、上述した通り、縦ビード11によって胴部5の内圧変化に伴うコーナー部8の変形が抑制されるから、胴部5に装着されたロールラベル7の皺の発生や、胴部からの剥離を防止することができる。
【0033】
また、上述した通り、横ビード12によって胴部5の横方向からの荷重に対する強度が向上しているから、これによっても、胴部5に装着されたロールラベル7の弛みや皺の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…合成樹脂製ボトル、2…キャップ、3…口部、4…肩部、5…胴部、6…底部、7…ロールラベル、8…コーナー部、9…平坦壁部、10…パネル部、11…縦ビード、12…横ビード、13…上部環状ビード(環状ビード)。