特許第6468863号(P6468863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468863
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/60 20060101AFI20190204BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   E06B1/60
   E06B1/56 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-16078(P2015-16078)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-141941(P2016-141941A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】竹長 宰児
(72)【発明者】
【氏名】湯原 慶子
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−100680(JP,A)
【文献】 実開昭58−019092(JP,U)
【文献】 特開平07−224577(JP,A)
【文献】 特開平05−079146(JP,A)
【文献】 特開2004−204496(JP,A)
【文献】 実開昭52−047436(JP,U)
【文献】 特開2009−174269(JP,A)
【文献】 特開2002−038823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部に設置される建具の開口枠と、
前記開口枠を構成する縦枠を躯体に固着する固着手段と、
前記縦枠の外側に装着され、前記開口枠を前記躯体開口部に配置したとき、前記縦枠と前記躯体間の隙間を覆うアタッチメントと、を有し、
前記アタッチメントの内側に、縦枠の挿通穴から挿入された固着手段を挿通及び支持する案内穴を有する案内片が前記アタッチメントに一体に設けられ、
前記アタッチメントは、前記縦枠に設けられた2条の突条に係合する2条の突条と、前記躯体との当接面となる側壁面と、を有し、
前記案内片は、前記アタッチメントの2条の突条と前記側壁面との間に突設され
前記アタッチメントが、前記縦枠と前記躯体間の隙間の幅に応じて、前記アタッチメントの2条の突条が設けられた部分と前記案内片が突設された部分の間で、その幅方向において分割可能であることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載された建具において、
前記案内片は、前記案内穴の周りに、前記縦枠から挿入された固着手段の先端部を前記案内穴に案内するテーパー部を有することを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記案内穴は長穴であることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体開口部に設ける建具に関し、とくに、開口枠を構成する縦枠と躯体間の装着部に特徴を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
躯体開口部に建具を設置する場合、躯体開口部に左右一対の縦枠と一対の上及び下枠で構成した開口枠を取り付け、その開口枠に開き戸又は引戸などが取り付けられる。開口枠を躯体に取り付ける取付構造としては、例えば縦枠の開口面側から躯体に向かって取付用のねじを挿入し、挿入したねじを下穴のない躯体に螺入して固定する取り付け構造が知られている(1例として特許文献1参照)。
ところで、左右縦枠と上下枠で構成する開口枠は、各開口枠の種別ごとに一定の寸法に形成されるが、躯体の開口部の寸法は施工条件などにより変わることがある。そのため、開口枠は躯体開口部に対して適度の隙間をもって設置できる寸法に設定される。
【0003】
したがって、躯体開口部内に開口枠を設置するに当たり、躯体開口部に対して左右一方側の縦枠を基準にして配置すると、他方側の縦枠とそれに対向する躯体との距離(幅)は一方側のそれよりかなり長く(広く)なる。
そのため、縦枠を躯体にねじ止めするに当たり、他方側の縦枠を躯体に取り付けるために、縦枠を躯体間の広い隙間に合わせてとくに長くしたねじ(テクスねじ)が用いられている。
【0004】
テクスねじを用いる場合、それを縦枠の穴(ねじ穴)を通して挿通したとき、ねじの先端部を所定の位置に安定した状態で維持するのは容易ではない。とくに下穴のない躯体に対してセルフタッピングでねじ止めする場合、正しい位置にねじ止めするのは位置決めに労力が掛かる。
そこで、従来から、縦枠にねじ用のガイド部材を取り付けて、縦枠のねじ穴から通したねじの先端部をガイド部材により案内して、躯体の所定の螺合位置に位置決めしている。
【0005】
テクスねじを用いて縦枠を躯体に取り付ける1例として、図6は、特許文献に記載されたものではないが、従来の縦枠10とガイド部材20とを示した斜視図である。
縦枠10は、ここでは、図示のように一対の側壁10a、10bと底壁10cから成る断面溝形に形成されている。また、縦枠10の開口側の側壁10aにはねじ挿入用の穴10dが、例えば上下に二つ設けられている。ガイド部材20は、材料は任意であるが、例えばプラスチックなどで構成された円環状の部材であり、縦枠10の躯体側の側壁10bに開放端側から切り欠いた切欠き10eから縦枠10内に収容される。その状態で、側壁10a側から挿入したねじ(テクスねじ)50Aが挿通される。ガイド部材20はこれにより穴10dと切欠き10eで保持される。
【0006】
ガイド部材20を通り抜けたねじ(テクスねじ)50Aは、その先端から躯体30に螺入され、縦枠10は躯体30に固定される。
このように、従来の縦枠10の躯体30への取り付け手法では、ガイド部材20を用いることで、ねじ50Aの長さに関係なく、縦枠10を躯体30に容易に取付固定することができる。
ただ、この取付手法では、必ずガイド部材20を別途用意しなければならず、また、別途用意したガイド部材20を縦枠10に装着する作業も必要となる。そのためコスト上及び作業負担上の問題がある。
そこで、ガイド部材20を省略してコストを低減することが望まれている。
【0007】
一方、縦枠10と躯体30との間の隙間を覆うため、従来から開口枠に沿って上下左右にパネル(ここではアタッチメントという)を装着することが行われている。ここで、縦枠10と躯体30との間の隙間の幅は、開口枠の左右側で異なっている場合、左右縦枠に装着されるアタッチメントの左右幅(見付け幅)も左右で異なったものが用いられる。
アタッチメントは、通常アルミ合金などの金属又は合成樹脂で板状に成型されるが、従来は、アタッチメントの製造において、異なる幅のアタッチメントを成型するため、それぞれ異なる成形型が使用されている。そのため、アタッチメントの加工のためのコスト及び作業負担が大きく、その抑制が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09―291758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明(第1の発明)は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の発明の目的は、縦枠を躯体にねじで取り付ける際に、従来別途作成されたガイド部材及びガイド部材を縦枠に装着する作業をなくすことで、建具の躯体開口部への設置コストを低減することである。
第2の発明の目的は、前記アタッチメントをその見付け方向における任意の幅で分割可能にすることで、従来別々に成型していたアタッチメントを共通化してその成型コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明は、躯体開口部に設置される建具の開口枠と、前記開口枠を構成する縦枠を躯体に固着する固着手段と、前記縦枠の外側に装着され、前記開口枠を前記躯体開口部に配置したとき、前記縦枠と前記躯体間の隙間を覆うアタッチメントと、を有し、前記アタッチメントの内側に、縦枠の挿通穴から挿入された固着手段を挿通及び支持する案内穴を有する案内片が前記アタッチメントに一体に設けられ、前記アタッチメントは、前記縦枠に設けられた2条の突条に係合する2条の突条と、前記躯体との当接面となる側壁面と、を有し、前記案内片は、前記アタッチメントの2条の突条と前記側壁面との間に突設され、前記アタッチメントが、前記縦枠と前記躯体間の隙間の幅に応じて、前記アタッチメントの2条の突条が設けられた部分と前記案内片が突設された部分の間で、その幅方向において分割可能であることを特徴とする建具である
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、縦枠を躯体にねじで取り付ける際に、従来別途作成されたガイド部材及びガイド部材を縦枠に装着する作業をなくすことで建具の躯体開口部への設置コストを低減することができる。
第2の発明によれば、前記アタッチメントをその見付け方向における任意の幅で分割可能にすることで、従来別々に成型していたアタッチメントを共通化してその成型コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の建具の1実施形態である浴室用の折り戸全体を示す正面図である。
図2図1に示す浴室用の折り戸の平断面図である。
図3図2に示す右側縦枠、アタッチメント及びねじをそれぞれ拡大して示した分解拡大図である。
図4】アタッチメントに設けた案内片により、縦枠から挿入されたねじを支持及び案内する状態を示す断面図である。
図5図4に示すアタッチメントの全体を内側からみた斜視図である。
図6】従来の縦枠とガイド部材とを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る建具の設置構造について説明する。
図1は、本発明の建具の1実施形態である浴室用の折り戸全体を示す正面図、図2は、図1に示す浴室用の折り戸1の平断面図、図3は、図2に示す右側縦枠、アタッチメント及び固着手段、ここではねじ(テクスねじ)50Aをそれぞれ拡大して示した分解拡大図である。
なお、図2中、下側は浴室側(内側という)、上側は脱衣室側(外側という)を示し、図1は脱衣室側から見た折り戸を示す。
折り戸1を収容する開口枠は、左右一対の縦枠10及び上下枠(図示せず)を組み合わせて構成される開口枠に収容されており、開口枠は、躯体30に固着具、ここではねじ50A、50Bで取り付けられる。
【0014】
図2において右側の縦枠10は、図3の断面図で示すように、中空部10(1)に続くフランジ部10(2)及びフランジ部10(2)の外側(図中上側)には、幅広側のアタッチメント40(1)を取り付けるための楔型部分をその先端側に備えた2条の突条10(3)が一体に設けられている。なお、左右の縦枠10は互いに対称形であり、左側の縦枠10も同じ構造である。
図3に示すように、左右の縦枠10の開口側(図中左側)からそのねじ穴10(4)にねじ50A、50Bが挿通され、そのねじ50A、50Bの先端側は左右の躯体30に螺合される。なお、ねじ50Aは、既に述べたテクスねじであり、図2に示すように通常のねじ50Bよりも遥かに長い。
【0015】
アタッチメント40(1)は、図3に示すように、その外側は、躯体30の開口部に開口枠(建具開口枠)を配置したときに縦枠10と躯体30間の隙間を覆うパネルとして構成されている。一方、その内側には、一端部(図中左側、つまり開口側端部)に縦枠10の楔型端部を備えた突条10(3)に係合する2条の突条40(1)aが設けられている。また、この2条の突条40(1)aと図中右側端部の躯体30との当接面となる側壁面40(1)bとの間の適所に、内側方向に突設されたフランジ又は案内片42bが設けられている。
【0016】
図4は、アタッチメント40(1)に設けた案内片42a、42bにより、縦枠10の挿通穴から挿入されたねじ50Aを支持及び案内する状態を示す断面図であり、図4A図4Bではそれぞれ異なる案内片42a、42bを示している。
即ち、図4Aに示す案内片42aは、縦枠10内側方向に延在する部分が平板状を成し、その内側方向先端部と基端部間の中間位置に貫通する案内穴(長穴)44aが設けられている。この案内穴44aは、縦枠10を躯体30に取り付ける際に、その取付用のねじ50Aを案内及び支持する。
また、縦枠10の開口側から挿入され、案内穴44bを貫通したねじ50Aの軸部分が案内穴44bの縁部分に当接し、その縁部分がねじ50Aの支持及び案内を行う。したがって、ねじ50Aを押し込んだとき、ねじ50Aは安定した状態で先端部が直進して躯体30の所定位置(取付位置)に当接する。その状態で、ねじ50Aを躯体30にねじ込むことで縦枠10は躯体30に固定される。
【0017】
図4Bに示す案内片42bは、図示のようにその内側端部と基端部間の中間位置に、縦枠10に対向する面が凹状となるテーパー部46が形成されている。また、そのテーパー部46の中央部には、図4Aに示した案内穴44aと同様の長穴で構成された案内穴44bが設けられている。案内穴44bは、縦枠10側からねじ50Aが押し込まれたとき、図4Aの案内穴44aと同様にそのねじ50Aの案内及び支持を行う。
【0018】
図4Bに示す案内片42bのテーパー部46は、縦枠10の開口側からねじ50Aを挿入したとき、ねじ50Aの先端が案内穴44bから外れてもテーパー部46に当接すればその先端を案内穴44bに案内する。したがって、この案内片42bによれば、案内穴44bを長穴に構成したことと相俟って、ねじ50Aを案内穴44bに一層容易に挿通することができる。
案内穴44bにねじ50Aを挿通した後は、ねじ50Aは縦枠10のねじ穴10(4)と案内穴44bの2点で支えられるため、単に押し込むだけで、その先端部は安定した状態で躯体30の所定位置に当接する。その状態で、ねじ50Aを躯体30にねじ込むことで縦枠10は躯体30に固定される。
【0019】
図5は、以上で説明したアタッチメント40(1)の全体を内側からみた斜視図である。
図示のように、アタッチメント40(1)は、図4Bに示す案内片42bを有しており、また、案内穴44bが上下2箇所設けられている。
【0020】
以上、図2における右側のアタッチメント40(1)について説明したが、図示のように左側の縦枠10と躯体30間の間隔は右側のそれよりも狭いため、縦枠10を躯体30に取り付けるためのねじ50Bの長さもねじ50Aに比べて大幅に短く、また、左側のアタッチメント40(2)の幅(見付け方向幅)はアタッチメント40(1)のそれよりも狭く案内片は形成されていない。
【0021】
ただ、この場合、左右のアタッチメント40(1)、40(2)を成型するために異なる成形型が必要となる。そのため既に指摘したように、アタッチメント40(1)、40(2)の成型コストが増大するという問題が生じる。
そこで、第2の発明の実施形態のアタッチメント40(1)、40(2)は、同じ成形型で成型したアタッチメントを納まりに応じてその幅を調整できるように構成した。
【0022】
アタッチメントの幅の調整は、ここでは、アタッチメント40(1)の2条の突条10(3)が一体に設けられている部分と、案内片42a、42bを備えた部分の間で分割する。本実施形態では、突条10(3)に隣接した部分で分割可能に構成するが、アタッチメント40(1)の分割位置はこれに限定されず、図2の左側のアタッチメント40(2)が必要とする幅に分割できればよい。
分割の手法としては、例えば必要な幅に合わせて切断して分割することで行う。分割の仕方は任意であるが、例えば、分割し易いように、アタッチメント40(1)の見付け方向において所定の間隔で、その長手方向に延在する肉薄部(弱化部)を形成して、必要時にその部分で切断できるようにしてもよい。或いは、予め見付け方向の所定幅(つまり、実施形態では、図1の右側のアタッチメントの幅)のところで分割したアタッチメントを組み合わせておき、必要に応じてその組み合わせを解除して分割する構成でもよい。さらに単にカッターで切断してもよい。
このように、アタッチメント40(1)を予め分割可能に形成しておくことで、見付け方向幅が異なるアタッチメントに対しても、同じ成形型を用いて製造することができ、設備コストを低減することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これによれば、縦枠と躯体間の隙間を覆うアタッチメントに、縦枠を躯体に取り付けるためのねじ(テクスねじ)を支持及び案内するガイド部材を一体に設けたため、従来の別体で構成した取付用のねじ用のガイド部材を不要にでき、部品を削減しコストを低減することができる。
また、左右縦枠形状が異なる納まりである場合においても、アタッチメントは共通とし、単に分割することでその見付け方向幅を調整できるようにした。つまり、共通のアタッチメントを分割することで、案内片を持たないアタッチメントも容易に形成することができようにした。そのため、アタッチメントの加工のための投資や、作業負荷を抑制することができる。
なお、以上の説明では、建具は、左右縦枠の一方側に案内片を備えたアタッチメントを、他方側に案内片を備えていないアタッチメントを装着するものとしたが、当然のことながら、躯体と左右縦枠との位置関係如何によっては、左右縦枠のいずれの側にも案内片を持つアタッチメントを用いる場合もあり得る。
【符号の説明】
【0024】
10・・・縦枠、20・・・ガイド部材、30・・・躯体、40(1)、40(2)・・・アタッチメント、42a、42b・・・案内片、44a、44b・・・案内穴、46・・・テーパー部、50A、50B・・・ねじ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6