【実施例】
【0092】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0093】
[実施例1]
【0094】
【化11】
【0095】
[式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基;n-BuLiはn−ブチルリチウム;NBSはN−ブロモスクシンイミド;THFはテトラヒドロフラン;TMSはテトラメチルシリル基;iPrはイソプロピル基;Meはメチル基;Mesはメシチル基;以下同様である。]
【0096】
化合物23
化合物13(370 mg, 0.785 mmol)の脱水THF(1.5 mL)溶液に対し、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.62 M, 1.00 mL, 1.62 mmol)を-78℃で加え、-78℃を保ったまま1.5時間アルゴン雰囲気下で撹拌した。続いてN-ブロモスクシンイミド(290 mg, 1.63 mmol)の脱水THF(2.5 mL)溶液を-78℃で加え、その温度のまま6.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで昇温したのち、水を加え、酢酸エチル(5.0 mL)で三回抽出したのち、有機層を飽和食塩水(2.0 mL)で一回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水、濾過した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフフィー(PSQ100B, ヘキサン/酢酸エチル = 1/1, R
f = 0.20)で精製することで、化合物23を無色固体として得た(290 mg, 0.462 mmol, 収率60%)。
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 6.67 (s, 2H), 6.06 (s, 2H), 2.61 (sept, J = 6.4 Hz, 1H), 2.32-2.48 (m, 4H), 2.11-2.14 (m, 4H), 1.28-1.42 (m, 4H), 1.04 (s, 9H), 0.84 (d, J = 6.4 Hz, 6H);
13C{
1H} NMR (100 MHz, C
6D
6) δ 148.4, 143.6, 132.4, 131.1, 127.7, 116.4, 110.6, 83.6, 53.0, 51.6, 30.4, 28.1, 27.2, 18.4; HRMS (APCI) Calcd. for C
26H
33Br
2N
2O
2S
2+: 629.0325 ([M+H]
+). Obsd. 629.0305。
【0097】
化合物24
化合物23(428 mg, 0.682 mmol)、Pd(PPh
3)
4(40.0 mg, 34.6μmol)及びヨウ化銅(I)(16.4 mg, 86.1μmol)の脱水ジイソプロピルアミン(2.0 mL)溶液に対し、トリメチルシリルアセチレン(200μL, 1.44 mmol)を室温で加え、アルゴン雰囲気下、70℃で1.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷した後、水と酢酸エチル(5.0 mL)を加え、酢酸エチル(5.0 mL)で三回抽出した後、有機層を飽和食塩水(5.0 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水、濾過した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフフィー(PSQ100B、ヘキサン/酢酸エチル = 1/1, R
f= 0.43)で精製することで、化合物24を薄黄色固体として得た(426 mg, 0.642 mmol, 収率94%)。
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 7.07 (s, 2H), 6.03 (s, 2H), 2.51-2.60 (m, 3H), 2.31-2.39 (m, 2H), 2.07-2.11 (m, 4H), 1.28-1.43 (m, 4H), 1.00 (s, 9H), 0.81 (d, J = 6.4 Hz, 6H), 0.21 (s, 9H);
13C{
1H} NMR (100 MHz, C
6D
6) δ 148.4, 142.8, 135.3, 131.8, 128.0, 121.8, 116.5, 99.0, 98.9, 83.6, 53.0, 51.6, 30.5, 28.1, 27.2, 18.4, 0.01; HRMS (APCI) Calcd. for C
36H
51N
2O
2S
2Si
2+: 663.2945 ([M+H]
+). Obsd. 663.2913。
【0098】
化合物25
化合物24(197 mg, 0.297 mmol)のTHF(1.0 mL)溶液に対し、ナトリウムメトキシド(340 mg, 6.30 mmol)のメタノール(1.0 mL)懸濁溶液を室温で加え、80℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷した後、水と酢酸エチル(4.0 mL)を加え、酢酸エチル(5.0 mL)で三回抽出した後、有機層を飽和食塩水(5.0 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水、濾過した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフフィー(PSQ100B, 酢酸エチル, R
f = 0.83)で精製することで、化合物25を黄色固体として得た(104 mg, 0.247 mmol, 収率 83%)。
1H NMR (600 MHz, C
6D
6) δ13.0 (br s, 1H), 6.91 (s, 2H), 6.47 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 2.99 (s, 2H), 2.55 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.47 (m, 4H), 1.94 (t, J = 5.4 Hz, 4H), 1.43 (m, 4H), 0.31 (d, J = 6.6 Hz);
13C{
1H} NMR (100 MHz, C
6D
6) δ136.0, 135.4, 133.9, 127.1, 119.6, 111.4, 82.4, 77.6, 47.9, 45.9, 26.9, 25.5, 15.2; HRMS (APCI) Calcd. for C
25H
27N
2S
2+: 419.1610 ([M+H]
+). Obsd. 419.1616。
【0099】
化合物12
化合物25(119 mg, 0.285 mmol)の脱水THF(4.0 mL)溶液に対し、ジメシチルボラン(143 mg, 0.570 mmol)の脱水THF(8.5 mL)懸濁溶液を室温で加え、窒素雰囲気下、遮光条件下、室温で13時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去した後、粗生成物をジエチルエーテルで洗浄することで、化合物12を赤色固体として得た(155 mg, 0.169 mmol, 59%)。
1H NMR (400 MHz, C
6D
6) δ 13.2 (br, 1H), 7.43 (d, J = 17 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 17 Hz, 2H), 6.85 (s, 8H), 6.66 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 6.31 (s, 1H), 2.62 (sept, J = 6.4 Hz, 1H), 2.53 (m, 4H), 2.35 (s, 24H), 2.22 (s, 12H), 2.02 (m, 4H), 1.51 (m, 4H), 0.29 (d, J = 6.4 Hz, 6H);
13C{
1H} NMR (100 MHz, THF-d
8) δ 146.4, 143.1, 141.8, 141.1, 138.8, 137.7, 137.0, 135.4, 135.2, 129.0, 129.0, 112.0, 48.8, 46.6, 27.8, 26.3, 23.6, 21.3, 15.7;
11B{
1H} NMR (100 MHz, THF-d
8) δ30.4; HRMS (APCI) Calcd. for C
61H
72B
2N
2S
2: 918.5336 ([M]
+). Obsd. 918.5300。
【0100】
[試験例1:光物理特性(その1)]
溶媒として、シクロヘキサン、ベンゼン、テトラヒドロフラン又はアセトンに対して、実施例1で得た化合物を1 x 10
-6 ~ 1 x 10
-5 mol/L投入した(pH:7)。
【0101】
これら異なる溶媒を用いた4種の試験液を用いて、実施例1で得た化合物の吸収スペクトルは紫外可視近赤外分光光度計 UV-3150((株)島津製作所)を、蛍光スペクトルはNIR-PMT検出器(浜松ホトニクス(株))が付属した蛍光分光測定装置SPEX Fluorolog 3(HORIBA Scientific)をそれぞれ用いて行った。結果を表1及び
図1に示す。この結果、実施例1で得た化合物は、シクロヘキサン中で549 nmに発光極大をもつ黄色蛍光を示し、極性溶媒中で二重発光特性を示した。また、極性溶媒中では、近赤外領域に大きく広がる比較的強い赤色発光を示しており、特に、アセトンを用いた場合には、700 nm以上という従来の蛍光色素では到達し得ない値であった。
【0102】
【表1】
【0103】
[試験例2:光物理特性(その2)]
溶媒として、テトラヒドロフランに対して、実施例1で得た化合物を1 x 10
-6 ~ 1 x 10
-5 mol/L投入した(pH:7)。
【0104】
この試験液を用いて、リファレンスをローダミン640/メタノール溶液として、二光子誘起蛍光法(TPIF method)により、二光子吸収断面積を測定した。結果を
図2に示す。
【0105】
その結果、実施例1で得た化合物は、800 nm付近に大きな二光子吸収断面積を有しており、830 nmにおいて1448 GMという値が得られた。この値は、同程度のπ共役系の広がりをもつ既知の化合物群と比較しても十分大きな値である。なお、これら既知の化合物群は、以下のとおりである。
【0106】
【化12】
【0107】
また、実施例1で得た化合物は、二光子励起輝度(Two-photon brightness = δ ×φ
F)が高い。この値は実際に二光子励起蛍光を観測する際の明るさを表すパラメータであり、実施例1で得た化合物の二光子励起輝度はライブイメージングに用いられている9E-BMVCの値を大きく上回っている。この輝度の高さに加え、近赤外発光と大きなストークスシフト(アセトン中でΔν = 6570 cm
-1)を考慮すると、本発明の化合物は二光子励起発光材料として優れた性質をもつといえる。