特許第6468900号(P6468900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6468900-インクジェット記録装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468900
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20190204BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B41J2/18
   B41J2/175 501
   B41J2/175 121
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-54833(P2015-54833)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-175186(P2016-175186A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 利佐
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−336020(JP,A)
【文献】 特開2011−168039(JP,A)
【文献】 特開2009−274386(JP,A)
【文献】 特開2009−234150(JP,A)
【文献】 特開2009−045919(JP,A)
【文献】 特開2012−152931(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0201734(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0279495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色のインクを貯留する第一タンクと、
前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記第一タンクと前記インクジェットヘッドの間にあって前記インクジェットヘッドにインクを供給する第二タンクと、
前記第一タンクと第二タンクとを繋ぎ、前記第一タンクから前記第二タンクに前記インクを供給する供給流路と、
前記インクジェットヘッドと前記第一タンクとを繋ぎ、前記インクジェットヘッドから前記第一タンクに前記インクを回収する回収流路と、
前記第二タンクと前記インクジェットヘッドを載せ置くキャリッジと、を備えるインクジェット記録装置において、
前記回収流路の間には、前記第一タンクに回収される前記インクを貯留する第三タンクを備え、
前記第一タンクは、内部空間における圧力を加圧と大気圧に調整する機構を有し、
前記第二タンクは、内部空間における圧力を加圧と負圧に調整する機構を有し、
前記第三タンクは、内部空間における圧力を負圧に調整する機構を有し、
前記第三タンクの液面が前記第一タンクの液面に対して鉛直方向上側となるように調整されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドと前記第三タンクとの間に開閉弁を有し、及び/又は、
前記第一タンクと前記第二タンクとの間に開閉弁を有することを特徴とする請求項1のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第三タンクに液面検知機構を有することを特徴とする請求項1〜2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第三タンクと前記第一タンク間の前記回収流路に、前記第一タンクから第三タンクへのインクの逆流を防止する逆流防止機構を備えることを特徴とする請求項1〜3に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットに関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、インクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置は、ラインヘッドと、インクタンクと、インク温度調整装置と、第1のポンプと、第2のポンプと、制御手段を備える。インクタンクは、ラインヘッドに供給されるインクを貯留している。インク温度調整装置は、インクタンクからラインヘッドへのインク供給路の途中に配置される。第1のポンプと第2のポンプは、ラインヘッドからインクタンクへのインク回収路の途中に配置される。制御手段は、第1のポンプと第2のポンプをコントロールする。制御手段からの信号によって第1のポンプと第2のポンプが駆動すると、インクタンクからインクが供給され、インク温度調整装置をインクが通過する。インク温度調整装置を通過するインクは所定の温度に調整されて、ラインヘッドへ供給される。ラインヘッド内部のインク流路を経て排出されたインクは、第1のポンプ又は第2のポンプを経て、インクタンクへ回収される。
【0003】
特許文献2には、圧力室と連通する上流ポート及び下流ポートを有するインクジェットヘッドと、上流ポートを介してインクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な上流側タンクと、下流ポートを介してインクジェットヘッドと連通し、インクを貯留可能な下流側タンクと、下流側タンクから上流側タンクへインクを戻す循環ポンプと、を連通して構成される循環系を備え、少なくとも下流側タンク液面を大気圧に開閉可能な開放弁を持ち、開放弁を閉じて循環ポンプを駆動し、下流側タンク液面を負圧にするとともに帰還流路を介して下流側タンクから上流側タンクへインクを戻してインクを循環させるインク供給機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−107389号公報
【特許文献2】特開2008−162262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録装置の中には、インクの乾燥防止、染料や顔料等のインクの色材成分の沈降防止等を目的として、例えば、特許文献1や特許文献2のように、インクを循環させる機構を有しているものがある。しかしながら、インクを循環させる機構を設計しようとした場合、インクを循環させない時と比べ、装置の部品点数が多くなってしまい、インクジェット記録装置が大型化、高額化してしまうということがある。このような問題に対して、発明者は、インクの循環について検討をおこなった。
【0006】
本発明は、インクの循環と装置の小型化を実現できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、所定の色のインクを貯留する第一タンクと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記第一タンクと前記インクジェットヘッドの間にあって前記インクジェットヘッドにインクを供給する第二タンクと、前記第一タンクと第二タンクとを繋ぎ、前記第一タンクから前記第二タンクに前記インクを供給する供給流路と、前記インクジェットヘッドと前記第一タンクとを繋ぎ、前記インクジェットヘッドから前記第一タンクに前記インクを回収する回収流路と、前記第二タンクと前記インクジェットヘッドを載せ置くキャリッジと、を備えるインクジェット記録装置において、前記回収流路の間には、前記第一タンクに回収される前記インクを貯留する第三タンクを備え、前記第一タンクは、内部空間における圧力を加圧と大気圧に調整する機構を有し、前記第二タンクは、内部空間における圧力を加圧と負圧に調整する機構を有し、前記第三タンクは、内部空間における圧力を負圧に調整する機構を有し、前記第三タンクの液面が前記第一タンクの液面に対して鉛直方向上側となるように調整されているインクジェット記録装置である。
【0008】
本発明の他の側面は、前記インクジェットヘッドと前記第三タンクとの間に開閉弁を有し、及び/又は、前記第一タンクと前記第二タンクとの間に開閉弁を備えるインクジェット記録装置である。また、前記第三タンクに液面検知機構を備えるインクジェット記録装置である。さらに、前記第三タンクと前記第一タンク間の前記回収流路に、前記第一タンクから第三タンクへのインクの逆流を防止する逆流防止機構を備えるインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの循環と装置の小型化を実現できるインクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】第一タンクとインクジェットヘッド間のインク循環の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0012】
インクジェット記録装置10について、図1を参照して説明する。インクジェット記録装置10では、記録媒体11が搬送され、記録媒体11の記録面12に画像が記録される。インクジェット記録装置10では、各種の記録媒体11を対象として画像が記録される。記録媒体11としては、例えば、布帛又は建築用資材が例示される。本実施形態では、記録媒体11が長尺状の布帛である場合を例に説明する。また、画像の記録に用いられるインク色は、ブラック、マゼンタ、イエロー及びシアンの4色とする。インク色は、これら以外の色であってもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。図1で搬送方向の下流側に図示された記録媒体11の部分に付した網点模様は、記録媒体11に記録された画像に対応する。
【0013】
インクジェット記録装置10は、図1に示すように、搬送部20と、記録部30と、移動部40と、第一タンク50K,50M,50Y,50Cと、供給流路51K,51M,51Y,51Cと、回収流路52K,52M,52Y,52Cを備える。
【0014】
搬送部20は、記録媒体11を、記録媒体11の長手方向に沿って搬送する。搬送部20によって搬送される記録媒体11は、記録部30を通過する。本実施形態では、搬送部20によって記録媒体11が搬送される方向を「搬送方向」という。搬送方向は、記録媒体11の長手方向に沿った方向であって、記録媒体11の短手方向に直交する方向である。記録媒体11の短手方向は、記録媒体11の幅方向であって、後述するように記録部30が移動部40により往復移動される方向(主走査方向)に一致する。本実施形態では、搬送方向及びこれと反対方向を、記録媒体11の長手方向に準じ「長手方向」という。なお、搬送方向及びこれと反対方向は、前述した主走査方向に対して「副走査方向」と称されることもある。搬送方向及びこれと反対方向のそれぞれに直交する方向を、記録媒体11の短手方向に準じ「短手方向」という。
【0015】
記録部30は、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cと、キャリッジ32を備える。インクジェットヘッド31Kは、ブラックインクを吐出し、ブラックインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Mは、マゼンタインクを吐出し、マゼンタインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Yは、イエローインクを吐出し、イエローインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Cは、シアンインクを吐出し、シアンインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、同様の構成を有する。本実施形態では、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「インクジェットヘッド31」という。
【0016】
キャリッジ32には、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cが所定の位置に位置決めされた状態でそれぞれ搭載される。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、短手方向に隣り合った状態でキャリッジ32に搭載される。各色用のインクジェットヘッド31の配列順序は、図1とは異なる順序としてもよい。これらの配列順序は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0017】
移動部40は、記録部30を短手方向に往復移動させる。移動部40は、2個のプーリ41,42と、タイミングベルト43を含む。2個のプーリ41,42は、搬送部20を基準として、短手方向の両側にそれぞれ設けられる。例えば、プーリ41にはモータ(不図示)が連結され、プーリ42は、回転自在に支持される。プーリ41は、モータの回転に伴い回転する。タイミングベルト43は、張力が作用した状態でプーリ41,42に架け渡される。タイミングベルト43には、キャリッジ32に固定された支持部44を介して記録部30が取り付けられる。
【0018】
インクジェット記録装置10で画像が記録される場合、プーリ41に連結されたモータが時計回りと反時計回りに往復して回転する。そして、モータの回転に伴い、プーリ41が左右両側に往復して回転する。図1でプーリ41の内側に示す「弧状の矢印」は、プーリ41の回転方向を示す。モータが所定の方向に回転することでプーリ41が左回転すると、タイミングベルト43も左回転する。プーリ42は、左回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、短手方向の第二側から第一側に移動する。記録部30が短手方向の第一側の移動端に到達すると、モータの回転方向は反転し、プーリ41は、右回転する。プーリ41が右回転すると、タイミングベルト43も右回転する。プーリ42は、右回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、短手方向の第一側から第二側に移動する。記録部30が短手方向の第二側の移動端に到達すると、モータの回転方向は再度反転し、プーリ41は、再度左回転する。移動部40による記録部30の短手方向への往復移動は、画像の記録が終了するまで繰り返される。
【0019】
第一タンク50Kは、ブラックインクを貯留するメインタンクである。供給流路51Kは、第一タンク50Kとインクジェットヘッド31Kを繋ぐ。回収流路52Kは、インクジェットヘッド31Kと第一タンク50Kを繋ぐ。ブラックインクは、第一タンク50Kから流出し、供給流路51Kを流れて、インクジェットヘッド31Kに供給される。また、インクジェットヘッド31Kに供給されたブラックインクの一部は、回収流路52Kを流れて、第一タンク50Kに回収される。第一タンク50Mは、マゼンタインクを貯留するメインタンクである。供給流路51Mは、第一タンク50Mとインクジェットヘッド31Mを繋ぐ。回収流路52Mは、インクジェットヘッド31Mと第一タンク50Mを繋ぐ。マゼンタインクは、第一タンク50Mから流出し、供給流路51Mを流れて、インクジェットヘッド31Mに供給される。また、インクジェットヘッド31Mに供給されたマゼンタインクの一部は、回収流路52Mを流れて、第一タンク50Mに回収される。
【0020】
第一タンク50Yは、イエローインクを貯留するメインタンクである。供給流路51Yは、第一タンク50Yとインクジェットヘッド31Yを繋ぐ。回収流路52Yは、インクジェットヘッド31Yと第一タンク50Yを繋ぐ。イエローインクは、第一タンク50Yから流出し、供給流路51Yを流れて、インクジェットヘッド31Yに供給される。また、インクジェットヘッド31Yに供給されたイエローインクの一部は、回収流路52Yを流れて、第一タンク50Yに回収される。第一タンク50Cは、シアンインクを貯留するメインタンクである。供給流路51Cは、第一タンク50Cとインクジェットヘッド31Cを繋ぐ。回収流路52Cは、インクジェットヘッド31Cと第一タンク50Cを繋ぐ。シアンインクは、第一タンク50Cから流出し、供給流路51Cを流れて、インクジェットヘッド31Cに供給される。また、インクジェットヘッド31Cに供給されたシアンインクの一部は、回収流路52Cを流れて、第一タンク50Cに回収される。
【0021】
図1では、供給流路51K,51M,51Y,51C及び回収流路52K,52M,52Y,52Cの図示を簡略化している。供給流路51K,51M,51Y,51C及び回収流路52K,52M,52Y,52Cは、記録部30の短手方向への往復移動に対応可能な状態で設けられる。本実施形態では、第一タンク50K,50M,50Y,50Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「第一タンク50」という。供給流路51K,51M,51Y,51Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「供給流路51」という。回収流路52K,52M,52Y,52Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「回収流路52」という。各色用の供給流路51は、インクジェットヘッド31を形成する複数のヘッドユニットのそれぞれにインクを分配する構成を含むようにしてもよい。各色用の回収流路52は、インクジェットヘッド31を形成する複数のヘッドユニットのそれぞれからのインクを合流させる構成を含むようにしてもよい。
【0022】
図2は、第一タンク50とインクジェットヘッド31間のインク循環の概略構成図である。インクジェット記録装置10は、図2に示すような構成を、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色分だけ備える。従って、以下では、インク色を限定することなく説明する。
【0023】
第一タンク50には供給流路51を介して第二タンク60が接続され、第二タンク60には供給流路51を介してインクジェットヘッド31が接続されている。第二タンク60は、インクジェットヘッド31が搭載されるキャリッジ32上に設けられる。
【0024】
インクジェットヘッド31には回収流路52を介して第三タンク70が接続され、第三タンク70には回収流路52を介して第一タンク50が接続されている。第三タンク70は、インクジェットヘッド31が搭載されるキャリッジ32上ではない別の位置にあり、第三タンク70のインクタンクの液面が第一タンク50のインクタンクの液面に対して鉛直方向上側となるように設けられる。
【0025】
第一タンク50は加圧と大気圧に調整可能な容器となっている。加圧するために、加圧ポンプP1から内部空間に加圧空気が供給されて第一タンク50の内部空間における圧力は正圧(大気圧よりも高い圧力)に設定できるようになっている。一方、第一タンク50には大気を導入可能な開閉弁V3があり大気圧にも調整可能である。第一タンク50から第二タンク60へのインク供給動作は、加圧ポンプP1から供給される加圧空気により制御される。また、第一タンク50内のインク残量が少なくなった場合には、開閉弁V3を操作して第一タンク50内を大気解放状態として、図示せぬ補給管よりインクを補給する。
【0026】
第二タンク60は密閉容器となっており、第二タンク60の内部空間における圧力制御は、加圧ポンプP2、真空ポンプP3及び切換部80を制御することで行われる。加圧ポンプP2と真空ポンプP3は、切換部80を介して第二タンク60に連通するように接続されており、加圧ポンプP2との連通時では第二タンク60の内部空間圧力を正圧に制御し、真空ポンプP3との連通時では第二タンク60の内部空間圧力を負圧(大気圧よりも低い圧力)に制御している。
【0027】
第二タンク60の内部空間圧力は、インクジェット記録装置10においてインク循環を行っているときには、通常、負圧に制御されており、インクジェットヘッド31のヘッドメンテナンスを行うときなどには、適宜、正圧に制御される。
【0028】
第三タンク70は密閉容器となっており、真空ポンプP4により第三タンク70の内部空間における圧力は負圧に設定されている。
【0029】
上記では、インクジェットヘッド31に第三タンク70が回収流路52を介して接続されたものを基本構造として説明したが、インクの回収を効率よく行うために次のような構成としてもよい。インクジェットヘッド31と第三タンク70を接続する回収流路52の間に、流路の開閉を制御する開閉弁V2を設けてもよい。その結果、例えば、第二タンク60のインクが少なくなってきた時には開閉弁V2を閉め、一時的にインクの循環を停止し、そして、第二タンク60のインクが上限値になると開閉弁V2を開き、インクの循環を再開する、といったことが可能となる。さらに、第一タンク50と第二タンク60の間の供給流路51に、流路の開閉を制御する開閉弁V1を設けてもよい。その結果、開閉弁V1と開閉弁V2を閉じることでより確実に第三タンク70から第一タンク50にインクを回収させることが可能となる。第三タンク70には液面検知機構100を取り付けてもよい。その結果、第三タンク70が上限値となった場合により確実に液量を把握しインク循環の作業を行える。また、第三タンク70から第一タンク50までの回収流路52の間には、逆止弁90が設けられてもよい。その結果、第一タンク50から第三タンク70へのインクの逆流を防止することが可能となる。
【0030】
インクジェット記録装置10を以上説明したような構成とすることにより、インクに直接接触する送液ポンプを用いずとも、インクとは直接接触しない加圧ポンプや真空ポンプによる気体の制御によりインク循環を行うことができる。一般的には、加圧ポンプや真空ポンプは送液ポンプより小型で、安価であり、装置の小型化やコストダウンに貢献することができる。
【0031】
なお、この例では、1色単位の構成を例に説明したが、加圧ポンプや真空ポンプは色毎に個別に備える必要はなく、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色で共有とすることもできる。その場合には、電磁弁やレギュレータ等を色毎に設けて個別に制御できるようにすればよい。これによれば、加圧ポンプや真空ポンプの数をさらに少なくすることが可能となり、より装置の小型化やコストダウンに貢献することができる。
【0032】
<変形例>
本実施形態は次のようにすることもできる。
【0033】
(1)上記では、インクジェット記録装置10として、シリアル型インクジェット記録装置を例に説明した。インクジェット記録装置は、ライン型インクジェット記録装置であってもよい。
【0034】
(2)上記では、画像の記録に用いるインクの色として、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックを例に説明した。これとは異なる色のインクを用いてもよい。例えば、これら4色に加え、又は、何れかの色に代えて、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の淡色系であるライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアン、及び/又は、クリアを用いてもよい。この場合、インクジェット記録装置10は、追加又は代替される色のインクに対応した上記同様の構成を備える。
【0035】
(3)上記では、インクジェットヘッド31が搭載されるキャリッジ32上の供給流路51側(インクがインクジェットヘッド31に入る直前の位置)に第二タンク60を1つ設けたものを例に説明したが、インクジェットヘッド31が搭載されるキャリッジ32上の回収流路52側(インクがインクジェットヘッド31から出た直後の位置)に第二タンク60と同様な構成の第四タンクを設け、インクジェットヘッド31の供給流路51側とインクジェットヘッド31の回収流路52側でインクタンクが1つずつ設けられたものとしてもよい。この場合、インクジェットヘッド31のノズル面のメニスカスの微調整がよりし易くなり、インクの吐出精度をより向上させることができる。なお、加圧ポンプP2、真空ポンプP3及び切換部80を第四タンクに接続することで、加圧ポンプP2、真空ポンプP3及び切換部80は第二タンク60と共用とすることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 インクジェット記録装置
11 記録媒体
12 記録面
20 搬送部
30 記録部
31,31K,31M,31Y,31C インクジェットヘッド
32 キャリッジ
40 移動部
41,42 プーリ
43 タイミングベルト
44 支持部
50,50K,50M,50Y,50C 第一タンク
51,51K,51M,51Y,51C 供給流路
52,52K,52M,52Y,52C 回収流路
60 第二タンク
70 第三タンク
80 切換部
90 逆止弁
100 液面検知機構
P1,P2 加圧ポンプ
P3,P4 真空ポンプ
V1,V2,V3 開閉弁
図1
図2