特許第6468906号(P6468906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧 ▶ 三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000002
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000003
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000004
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000005
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000006
  • 特許6468906-過給機付エンジン 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6468906
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】過給機付エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20190204BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20190204BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20190204BHJP
【FI】
   F02B37/00 400E
   F02B37/00 301G
   F02D13/02 B
   F01N13/10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-61602(P2015-61602)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180376(P2016-180376A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】佐古 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】中務 泰成
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 祥一
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 健吾
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−112020(JP,U)
【文献】 実開平02−063037(JP,U)
【文献】 特開平02−125926(JP,A)
【文献】 特開2010−229829(JP,A)
【文献】 特開2002−309950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−39/16
F02D 13/02
F01N 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体に、排気ガスを排出する排気口を互いに対向させる状態で一対の過給機が設けられ、
一方の前記排気口から排出された一方側排気ガスと他方の前記排気口から排出された他方側排気ガスとを受け入れて、一方の前記排気口から他方の前記排気口へ向かう方向及び他方の前記排気口から一方の前記排気口へ向かう方向である対向方向とは異なる排出方向に前記一方側排気ガスと前記他方側排気ガスとが合流した排気ガスを排出する排気ガス集合部が一対の前記排気口の間に設けられた過給機付エンジンであって、
前記排気ガス集合部に、前記一方側排気ガスと前記他方側排気ガスとが合流した排気ガスを前記排出方向に流動させる合流管と、一方の前記排気口と前記合流管とを接続する一方側排気流動方向変更配管と、他方の前記排気口と前記合流管とを接続する他方側排気流動方向変更配管が設けられ、
前記一方側排気流動方向変更配管が、前記一方側排気ガスの少なくとも一部を、前記対向方向において一対の前記排気口の中央部よりも他方の前記排気口側に導きつつ、当該一方側排気ガスの流れ方向を前記対向方向から前記排出方向へ変更させる状態でかつ前記合流管の軸心周りで旋回させる状態で案内するように構成され、
前記他方側排気流動方向変更配管が、前記他方側排気ガスの少なくとも一部を、前記対向方向において前記中央部よりも一方の前記排気口側に導きつつ、当該他方側排気ガスの流れ方向を前記対向方向から前記排出方向へ変更させる状態でかつ前記合流管の軸心周りで前記一方側排気ガスの旋回方向と同じ方向に旋回させる状態で案内するように構成され、
前記一方側排気流動方向変更配管における前記一方側排気ガスの旋回角度、及び、前記他方側排気流動方向変更配管における前記他方側排気ガスの旋回角度が、前記合流管の軸心方向視において40°以上180°以下の範囲に設定されている過給機付エンジン。
【請求項2】
前記排気ガス集合部において、前記一方側排気流動方向変更配管の下流側部位の管壁の一部と、前記他方側排気流動方向変更配管の下流側部位の管壁の一部とが、前記排出方向に沿う共通の配管壁で構成されている請求項1記載の過給機付エンジン。
【請求項3】
前記排気ガス集合部において、前記一方側排気流動方向変更配管と、前記他方側排気流動方向変更配管とが前記排出方向側から見て巴状に組み合わされている請求項1又は2に記載の過給機付エンジン。
【請求項4】
前記排出方向が、前記対向方向に直交する方向である請求項1〜3の何れか1項に記載の過給機付エンジン。
【請求項5】
前記排気ガス集合部が、一対の前記過給機の前記排気口に直接接続されている請求項1〜4の何れか1項に記載の過給機付エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体に、排気ガスを排出する排気口を互いに対向させる状態で一対の過給機が設けられ、一方の排気口から排出された一方側排気ガスと他方の排気口から排出された他方側排気ガスとを受け入れて、一方の排気口から他方の排気口へ向かう方向及び他方の排気口から一方の排気口へ向かう方向である対向方向とは異なる排出方向に一方側排気ガスと他方側排気ガスとが合流した排気ガスを排出する排気ガス集合部が一対の排気口の間に設けられた過給機付エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる過給機付エンジンは、一つのエンジン本体に対して一対の過給機を設けて過給機を小型化することで、過給機内のタービン翼の回転の立ち上がりを向上するものである。そして、夫々の過給機から排出される排気ガスを合流して外部に排出する排気ガス集合部が設けられ、排気管の構成の簡素化が図られている。
【0003】
かかる過給機付エンジンの従来例として、排気ガス集合部が、一対の過給機に設けられた排気口同士を接続する排気管と、その排気管の中央部に排気管に直交する状態で接続された集合排気管とにより構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1には、一方の排気口から排出された排気ガスが、排気管内を他方の排気口に向かって流れ、他方の排気口から排出された排気ガスが、排気管内を一方の排気口に向かって流れるので、排気管の中央部において、一方の排気口から排出された排気ガスと他方の排気口から排出された排気ガスとが衝突する状態で合流し、その合流した排気ガスが排気管に直交する状態で接続された集合排気管に流入して排出するように構成されている。
【0005】
尚、特許文献1には過給機を設ける位置についての詳細な記載はないが、エンジン本体に一対の過給機を備える構成において、一対の過給機の配置状態に関しては、設置スペースの関係から、一対の過給機が近接してエンジン本体に設けられる構成が採用される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−180562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される過給機付エンジンでは、夫々の排気口から排出された排気ガスの流れが排気管の中央部において互いに対向する状態で衝突するので、排気管内の排気ガスの流れに大きな乱れが発生して排気ガスが円滑に流れることが阻害され、圧力損失が増加する虞がある。
【0008】
また、合流した排気ガスが流入する集合排気管が、排気管の中央部において排気管に直交する状態で接続されているので、排気管と集合排気管との接続部における流路形状が直角に屈曲する流路となり、排気管から集合排気管に排気ガスが流入する際に、その屈曲部において排気ガスの流れに剥離流が発生して排気ガスが円滑に流れることが阻害され、圧力損失が増加する虞がある。
【0009】
ちなみに、排気管と集合排気管との接続部において、排気管を排出方向に曲げた状態で集合排気管に接続するように構成して排気ガスを円滑に流すことが考えられるが、上述の如く、一対の過給機は、設置スペースの関係から、近接して設けられることが多く、このような場合においては、一対の排気口が近接することとなるので、排気口に接続された排気管を緩やかに曲げた状態で集合排気管に接続することができず、排気管の曲率が大きくなり、排気管内の排気ガスの流れに剥離流が発生して圧力損失が増加することになる。
【0010】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、過給機から排出された排気ガスが流れる配管において発生する圧力損失を低減できる過給機付エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するための本発明に係る過給機付エンジンは、
エンジン本体に、排気ガスを排出する排気口を互いに対向させる状態で一対の過給機が設けられ、
一方の前記排気口から排出された一方側排気ガスと他方の前記排気口から排出された他方側排気ガスとを受け入れて、一方の前記排気口から他方の前記排気口へ向かう方向及び他方の前記排気口から一方の前記排気口へ向かう方向である対向方向とは異なる排出方向に前記一方側排気ガスと前記他方側排気ガスとが合流した排気ガスを排出する排気ガス集合部が一対の前記排気口の間に設けられた過給機付エンジンであって、その特徴構成は、
前記排気ガス集合部に、前記一方側排気ガスと前記他方側排気ガスとが合流した排気ガスを前記排出方向に流動させる合流管と、一方の前記排気口と前記合流管とを接続する一方側排気流動方向変更配管と、他方の前記排気口と前記合流管とを接続する他方側排気流動方向変更配管が設けられ、
前記一方側排気流動方向変更配管が、前記一方側排気ガスの少なくとも一部を、前記対向方向において一対の前記排気口の中央部よりも他方の前記排気口側に導きつつ、当該一方側排気ガスの流れ方向を前記対向方向から前記排出方向へ変更させる状態でかつ前記合流管の軸心周りで旋回させる状態で案内するように構成され、
前記他方側排気流動方向変更配管が、前記他方側排気ガスの少なくとも一部を、前記対向方向において前記中央部よりも一方の前記排気口側に導きつつ、当該他方側排気ガスの流れ方向を前記対向方向から前記排出方向へ変更させる状態でかつ前記合流管の軸心周りで前記一方側排気ガスの旋回方向と同じ方向に旋回させる状態で案内するように構成され、
前記一方側排気流動方向変更配管における前記一方側排気ガスの旋回角度、及び、前記他方側排気流動方向変更配管における前記他方側排気ガスの旋回角度が、前記合流管の軸心方向視において40°以上180°以下の範囲に設定されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、一方側排気流動方向変更配管が、一方の排気口側で一方側排気ガスを受け入れて、一方側排気ガスの少なくとも一部を、一対の排気口の中央部よりも他方の排気口側に導きつつ、一方側排気ガスの流れ方向を排出方向に変更する。つまり、少なくとも一部の一方側排気ガスの流れ方向を緩やかに対向方向から排出方向へ変更させることができる。よって、一方側排気流動方向変更配管を流れる一方側排気ガスの流れ中に剥離流等が発生することを抑制して、円滑に一方側排気ガスの流れ方向を対向方向から排出方向へ変更できる。
【0013】
同様に、他方側排気流動方向変更配管が、他方の排気口側で他方側排気ガスを受け入れて、他方側排気ガスの少なくとも一部を、一対の排気口の中央部よりも一方の排気口側に導きつつ、他方側排気ガスの流れ方向を排出方向に変更する。つまり、少なくとも一部の他方側排気ガスの流れ方向を、対向方向から排出方向へ緩やかに変更させることができる。よって、他方側排気流動方向変更配管を流れる他方側排気ガスの流れ中に剥離流等が発生することを抑制して、円滑に他方側排気ガスの流れ方向を対向方向から排出方向へ変更できる。
【0014】
また、上記特徴構成によれば、一方側排気ガス及び他方側排気ガスの流れ方向が、合流管の軸心周りで同一の方向に旋回させる状態で対向方向から排出方向に変更され、しかも、一方側排気ガスの旋回角度、及び、他方側排気ガスの旋回角度が、合流管の軸心方向視において40°以上180°以下の範囲に設定されているので、一方側排気ガス及び他方側排気ガスが、一方側排気流動方向変更配管及び他方側排気流動方向変更配管から排出方向に向かう状態、かつ、同一回転方向に旋回する状態で合流管に円滑に排出される。
【0015】
これにより、合流管において、一方側排気ガスの流れ方向と他方側排気ガスの流れ方向とが対向する状態、すなわち、一方側排気ガスの流れと他方側排気ガスの流れとが対向方向で衝突する状態となることを回避できる。よって、合流管において合流した排気ガスの流れ中において大きな乱れが発生して排気ガスの円滑な流れが阻害されることを防止できる。
【0016】
したがって、一対の過給機の夫々の排出口から排出された一方側排気ガス及び他方側排気ガスの流れの方向が、一方側排気流動方向変更配管及び他方側排気流動方向変更配管において円滑に対向方向から排出方向へ変更され、その排出方向に流れ方向が変更された後の一方側排気ガス及び他方側排気ガスが合流管において円滑に合流するので、排気ガス集合部において発生する圧力損失を低減できる。
【0017】
本発明に係る過給機付エンジンの更なる特徴構成は、
前記排気ガス集合部において、前記一方側排気流動方向変更配管の下流側部位の管壁の一部と、前記他方側排気流動方向変更配管の下流側部位の管壁の一部とが、前記排出方向に沿う共通の配管壁で構成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、一方側排気流動方向変更配管の下流側部位の管壁の一部と他方側排気流動方向変更配管の管壁の一部とが共通の配管壁にて一体に形成されているので、排気ガス集合部をコンパクトに形成することができる。また、排出方向に沿う共通の配管壁が設けられているので、配管壁の一方側を流れる一方側排気ガスと配管壁の他方側を流れる他方側排気ガスとを排出方向に向かう流れとすることができる。
【0019】
本発明に係る過給機付エンジンの更なる特徴構成は、
前記排気ガス集合部において、前記一方側排気流動方向変更配管と、前記他方側排気流動方向変更配管とが前記排出方向側から見て巴状に組み合わされている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、一方側排気流動方向変更配管及び他方側排気流動方向変更配管から、一方側排気ガス及び他方側排気ガスが同一回転方向に旋回する旋回流となって合流管に排出されるので、合流管において一方側排気ガスの流れと他方側排気ガスの流れとを対向方向で衝突させることなく合流させることができる。
【0021】
本発明に係る過給機付エンジンの更なる特徴構成は、
前記排出方向が、前記対向方向に直交する方向である点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、排出方向を対向方向に直交する方向とすることで、夫々の排出口から排出された排気ガスの流れ方向を対向方向から排出方向へ変更する一方側排気流動方向変更配管と他方側排気流動方向変更配管との曲率を同じものとすることができる。その場合、一方側排気流動方向変更配管及び他方側排気流動方向変更配管において発生する流路抵抗が同等のものとなるので、一方側排気ガス及び他方側排気ガスの両方の流れ状態を良好な状態としつつ、一方側排気ガス及び他方側排気ガスの両方の流れ方向を排出方向に方向転換することができるので、合流管において発生する圧力損失の増加を抑制することができる。
【0023】
本発明に係る過給機付エンジンの更なる特徴構成は、
前記排気ガス集合部が、一対の前記排気口に直接接続されている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、過給機の排出口から排気された排気ガスを排気ガス集合部まで通流させるための配管部材等を設ける必要がないので、過給機付エンジンの構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】過給機付エンジンの概略上面図
図2】過給機付エンジンの概略側面図
図3】一対の過給機及び排気ガス集合部の概略上面図
図4】一対の過給機及び排気ガス集合部の概略正面図
図5】排気ガス集合部の横断上面図
図6】排気ガス集合部の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明に係る過給機付エンジンの実施形態を説明する。本実施形態においては、本発明に係る過給機付エンジンを過給機付V型エンジンに適用する場合の例を示す。
図1に示すように、エンジン本体としてのV型エンジン本体1は、一対のバンク2の夫々に8個の燃焼室4が設けられた16気筒のエンジンで構成され、各燃焼室4には、燃焼室4に空気Aを供給する吸気マニホールド6と、燃焼室4から排出される排気ガスEが流れる排気マニホールド5とが接続されている。なお、本発明に係る過給機付エンジンは、例えば、都市ガス等を燃料とするガスエンジンとされる。なお、図1における紙面の手前方向をV型エンジン本体1の上方向、紙面の奥方向を同じく下方向とし、紙面左方を同じく後方向、紙面右方を同じく前方向とし、紙面上方を同じく左方向、紙面下方を同じく右方向とする。
【0027】
そして、図1及び図2に示すように、V型エンジン本体1には、一対の過給機3が設けられている。一対の過給機3は、V型エンジン本体1の夫々のバンク2の後方側、かつ、夫々のバンク2の上方側に設けられている。V型エンジン本体1の夫々のバンク2は互いに近接するものであるので、夫々のバンク2の後方側に近接して設けられた夫々の過給機3も互いに近接して配置されることとなる。
【0028】
一対の過給機3は、夫々のバンク2の燃焼室4から排出された排気ガスEにより回転駆動されるタービン翼(図示せず)を内部に収容するタービン部30と、このタービン翼と一体的に回転することで空気Aを圧縮して燃焼室4に供給するコンプレッサ翼(図示せず)を内部に収容するコンプレッサ部40とを夫々備えている。
【0029】
図3に基づいて、一対の過給機3について説明を加える。
夫々の過給機3のコンプレッサ部40には、外部より空気Aを吸入する外部空気入口41と、圧縮した空気Aを排出する圧縮空気出口42とが設けられている。外部空気入口41は外部の空気Aを取り込む空気導入管等(図示せず)と接続され、圧縮空気出口42はインタークーラー(図示せず)を介して吸気マニホールド6と接続されている。
【0030】
また、夫々の過給機3のタービン部30には、燃焼室4から排出された排気ガスEが流入する排気ガス入口31と、タービン部30から排気ガスEを排出する排気ガス出口32(排気口に相当)とが設けられている。
【0031】
排気ガス出口32は互いに対向する状態で一対設けられている。つまり、一方の過給機3のタービン部30から排気ガスEを排出する一方の排気口としての一方側排気ガス出口32aと、他方の過給機3のタービン部30から排気ガスEを排出する他方の排気口としての他方側排気ガス出口32bとが互いに対向する状態で設けられている。
【0032】
また、一方側排気ガス出口32aから排出される排気ガスEとしての一方側排気ガスE1、及び、他方側排気ガス出口32bから排出される排気ガスEとしての他方側排気ガスE2が対向方向Xに沿う方向に排出される。対向方向Xとは、一方側排気ガス出口32aから他方側排気ガス出口32bへ向かう方向及び他方側排気ガス出口32bから一方側排気ガス出口32aへ向かう方向である。本実施例においては、一対の排気ガス出口32の軸心が一致させて、夫々の排気ガス出口32が設けられているので、対向方向Xは、一対の排気ガス出口32の軸心方向となる。
【0033】
一方側排気ガス出口32a及び他方側排気ガス出口32bは、後述する排気ガス集合部10に設けられた排気受入部位11に直接接続されている。また、夫々の排気ガス入口31は、夫々のバンク2に設けられた排気マニホールド5に接続されている。
【0034】
次に、図3図6に基づいて、排気ガス集合部10について説明する。なお、図3には排気ガス集合部10の上面図が示され、図4には排気ガス集合部10の正面図が示され、図5には集合管15の横断上面図が示され、図6には排気ガス集合部10の縦断側面図が示されている。
【0035】
図3及び図4に示すように、排気ガス集合部10は、一対の排気ガス出口32の間の中央位置に位置する中央部Cに排気ガス集合部10の中心Dを位置させた状態で設けられている。
【0036】
また、この排気ガス集合部10は、一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2の流れの方向を対向方向Xから排出方向Yに方向転換する集合管15と、排気ガス集合部10に、一方側排気ガスE1と他方側排気ガスE2とが合流した合流排気ガスE3を排出方向Yに流動させる合流管14とが設けられている。なお、排出方向Yは対向方向Xに直交する方向であり、本実施例においては、V型エンジン本体1の上側に向かう方向とされる。
【0037】
具体的には、集合管15は、一方側排気ガス出口32aと合流管14とを接続する一方側排気流動方向変更配管12と、他方側排気ガス出口32bと合流管14とを接続する他方側排気流動方向変更配管13とで構成されている。
一方側排気流動方向変更配管12には、一方側排気ガス出口32aから一方側排気ガスE1を受け入れる一方側排気受入部位11aと、一方側排気流動方向変更配管12を通過した一方側排気ガスE1を合流管14に排出する一方側排気ガス排出口14aが設けられている。一方、他方側排気流動方向変更配管13には、他方側排気ガス出口32bから他方側排気ガスE2を受け入れる他方側排気受入部位11bと、他方側排気流動方向変更配管13を通過した他方側排気ガスE2を合流管14に排出する他方側排気ガス排出口14bが設けられている。
【0038】
一方側排気流動方向変更配管12が、一方側排気ガスE1の少なくとも一部を、対向方向において中央部Cよりも他方の他方側排気ガス出口32b側に導きつつ、一方側排気ガスE1の流れ方向を対向方向Xから排出方向Yへ変更させる状態でかつ合流管14の軸心周りで旋回させる状態で案内するように構成されている。
【0039】
他方側排気流動方向変更配管13が、他方側排気ガスE2の少なくとも一部を、対向方向Xにおいて中央部Cよりも一方の一方側排気ガス出口32a側に導きつつ、他方側排気ガスE2の流れ方向を対向方向Xから排出方向Yへ変更させる状態でかつ合流管14の軸心周りで一方側排気ガスE1の旋回方向と同じ方向に旋回させる状態で案内するように構成されている。
【0040】
図5に示すように、この集合管15において、排出方向Y側から見た状態で、一方側排気流動方向変更配管12の中央部Cよりも一方側排気ガス出口32a側の配管部位である一方側配管上流側部位12a、及び、他方側排気流動方向変更配管13の中央部Cよりも他方側排気ガス出口32b側の配管部位である他方側配管上流側部位13aについては、一方側配管上流側部位12aを他方側配管上流側部位13aよりもV型エンジン本体1の後方側(図5では下側)に位置する状態で、V型エンジン本体1の前後方向に並設して設けられている。
【0041】
また、図3及び図6に示すように、一方側排気流動方向変更配管12の、中央部Cよりも他方側排気ガス出口32b側の配管部位である一方側配管下流側部位12b及び他方側排気流動方向変更配管13の中央部Cよりも一方側排気ガス出口32a側の配管部位である他方側配管下流側部位13bについて、一方側配管下流側部位12bの管壁の一部と、他方側配管下流側部位13bの管壁の一部とが、排出方向Yに沿う共通の配管壁としての共通配管壁17で構成されている。
【0042】
つまり、この共通配管壁17は、一方側排気流動方向変更配管12の下流側部位としての一方側配管下流側部位12b、他方側排気流動方向変更配管13の下流側部位としての他方側配管下流側部位13bが、一体的に構成された集合管下側部位16の内部において、排出方向Yに延びる状態で形成されている。よって、この共通配管壁17の一方側には一方側排気ガスE1が流れ、共通配管壁17の他方側には他方側排気ガスE2が流れる流路が別々に形成されることとなる。
【0043】
また、この共通配管壁17は、排出方向Yにおいて、集合管15の排気ガスEが排出される側の端部位置と同じ位置まで形成されている。よって、一方側排気流動方向変更配管12を流れる一方側排気ガスE1と、他方側排気流動方向変更配管13を流れる他方側排気ガスE2とが合流して混ざることがなく、集合管15より排気ガスEの下流側に設けられた合流管14において一方側排気ガスE1と他方側排気ガスE2とが合流して混ざることとなる。
【0044】
また、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13とが、排出方向Y側から見て巴状に組み合わされて構成されている。つまり、上述の如く、一方側排気流動方向変更配管12及び他方側排気流動方向変更配管13とを、夫々の配管の上流側において、一方側配管上流側部位12aを他方側配管上流側部位13aよりもV型エンジン本体1の後方側に位置する状態で、V型エンジン本体1の前後方向に並設して設け、また、夫々の配管の下流側において、一方側配管下流側部位12b及び他方側配管下流側部位13bが組み合わされた状態で集合管下側部位16の中心軸Pの周囲を回転する状態で上方に延びる形状として、排出方向Y側から見て巴状に組み合わされて構成されている。
【0045】
一方側配管下流側部位12b及び他方側配管下流側部位13bにおいては、集合管下側部位16の内部に設けられた共通配管壁17を湾曲して形成することで、一方側配管下流側部位12bと他方側配管下流側部位13bとを巴状に組み合わされた状態としている。これにより一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2が排出方向Yに向かい、且つ、同一方向に旋回する旋回流となって合流管14に排出されるように構成されている。
【0046】
さらに、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13とは、集合管下側部位16の中心軸Pまわりで対称となるように組み合わされて構成されている。つまり、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13との配管長さが同じ長さに形成されている。これにより、流れ方向が排出方向Yに変更された一方側排気ガスE1と他方側排気ガスE2とが、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13とから、同じ速度で同じ方向に旋回する状態で合流管14に排出されるように構成されている。
【0047】
次に、一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2の旋回角度について説明する。
本発明に係る過給機付エンジンにおいては、一方側排気流動方向変更配管12における一方側排気ガスE1の旋回角度、及び、他方側排気流動方向変更配管13における他方側排気ガスE2の旋回角度が、合流管14の軸心方向視において40°以上180°以下の範囲に設定されている。
【0048】
図3に基づいて一方側排気ガスE1の旋回角度αを例として具体的に説明する。旋回角度αは、一方側排気受入部位11aの開口の中心位置H1に位置する一方側排気ガスE1が、一方側排気ガス排出口14aの中心位置H2まで移動する間に、合流管14の軸心方向視において合流管14の軸心周りに回転する角度であり、本実施形態では一方側排気ガスE1の旋回角度αは120°となる。
【0049】
なお、一方側排気受入部位11aの開口の中心位置H1とは、本実施形態においては、合流管14の軸心方向視にて、開口幅の中央に対応する位置である。
また、一方側排気ガス排出口14aの中心位置H2とは、一方側排気ガス排出口14aの幾何学的中心に相当する位置であり、幾何学的中心に相当する位置とは、本実施形態においては、半円状の一方側排気ガス排出口14aの円弧部分の中央位置と合流管14の軸心を結んだ線の中央位置である。
【0050】
そして、本実施形態においては、上述の如く、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13とは、集合管下側部位16の中心軸Pまわりで対称となるように組み合わされて構成されているので、他方側排気ガスE2の旋回角度についても同じ角度となる。なお、本実施形態では、合流管14の軸心方向は排出方向Yと一致するように構成される。
【0051】
つまり、この旋回角度は、一方側排気ガスE1が一方側排気受入部位11aにおいて一方側排気流動方向変更配管12に流入してから一方側排気受入部位11aにおいて一方側排気流動方向変更配管12を流出するまでに、一方側排気ガスE1が合流管14の軸心方向視において合流管14の軸心周りに回転する角度とされる。
同様に、他方側排気ガスE2の旋回角度については、他方側排気ガスE2が他方側排気流動方向変更配管13に流入してから流出するまでに、合流管14の軸心方向視において合流管14の軸心周りに回転する角度とされる。
【0052】
合流管14は、図4に示すように、排出方向Yに延びる円筒管であり、集合管15の集合管下側部位16の排出方向Y側の端部に接続されている。合流管14の内径は、集合管下側部位16の内径と同じ寸法に構成されている。
【0053】
よって、一方側排気流動方向変更配管12と他方側排気流動方向変更配管13とから、合流管14に排出された一方側排気ガスE1と他方側排気ガスE2とが、合流管14において旋回しつつ排出方向Yに向かう状態で合流して合流排気ガスE3となる。そして、一方側排気ガスE1と他方側排気ガスE2とが合流した合流排気ガスE3が、合流管14の下流側に排出される。
【0054】
過給機付エンジンは上述のように構成されて、一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2の流れの方向を一方側排気流動方向変更配管12及び他方側排気流動方向変更配管13において円滑に対向方向Xから排出方向Yへ変更することができ、排出方向Yに流れ方向が変更された一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2が合流管14において円滑に合流するので、排気ガス集合部10において発生する圧力損失の増加を抑制することができる。
【0055】
そして、本実施例に係る過給機付エンジンでは、圧力損失を低減することができるので、例えば、一対の過給機からの排気ガスが対向方向において衝突する状態となる従来の過給機付エンジンに比べて、エンジンの負荷率を100%とした運転条件において、過給機効率が1.1%程度改善されることを確認した。また、このように過給機性能が改善されるので、従来の過給機付エンジンに比べて、エンジンの負荷率のほぼ全域にわたって、タービン翼の回転数が低くなることを確認し、ブースト圧が増加することを確認した。例えば、従来の過給機付エンジンに比べて、エンジンの負荷率を100%とした運転条件において、タービン翼の回転数が600rpm程度低くなることを確認し、ブースト圧が2.5%増加することを確認した。
【0056】
さらに、本実施例に係る過給機付エンジンを原動機として設けた発電設備においても、従来の過給機付エンジンを原動機として設けた発電設備に比べ、エンジンの負荷率を100%とした運転条件において、発電効率が0.15%増加することを確認した。
【0057】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態においては、上記実施形態においては、エンジン本体をV型にシリンダーが配置されたV型エンジン本体1としたが、エンジン本体のシリンダーの配置形態はこれに限られるものではない。例えば、エンジン本体を直列にシリンダーが配置された直列エンジンとしてもよい。また、エンジン本体を16気筒のエンジンとしたが、これに限らず、エンジン本体を16気筒以外の複数の気筒数で構成してもよい。
【0058】
(2)上記実施形態においては、エンジン本体を都市ガス等を燃料とするガスエンジンとしたが、これに限らず、エンジン本体を、軽油等を燃料とするディーゼルエンジンや、ガソリンエンジンで構成してもよい。
【0059】
(3)上記実施形態においては、排気ガス集合部10において、一方側排気流動方向変更配管12の一方側配管下流側部位12bと、他方側排気流動方向変更配管13の他方側配管下流側部位13bとが、集合管下側部位16を排出方向Y側から見て巴状に組み合わされて構成されたが、これに限らず、排気ガス集合部10において、一方側配管下流側部位12bと、他方側配管下流側部位13bとが、排出方向Yに直交する断面が半円状、かつ、排出方向Yに延びる直線状に形成され、これらの配管部位が組み合わされて構成されてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態においては、排気ガス集合部10は、一対の過給機3の中央部Cに排気ガス集合部10の中心Dを位置させた状態で設けられたが、これに限らず、一対の過給機3の中央部Cとは異なる一対の過給機3の間の位置に排気ガス集合部10の中心Dを位置させた状態で設けてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態においては、排気ガス集合部10が、一対の過給機3の排気ガス出口32に直接接続されたが、これに限らず、一対の過給機3の排気ガス出口32と排気ガス集合部10との間に、夫々の排気ガス出口32から排出した排気ガスEが内部を流れる接続管等が設けられていてもよい。
【0062】
(6)上記実施形態においては、排出方向Yが、対向方向Xに直交する方向としたが、これに限らず、排出方向Yを対向方向Xに直交しない方向としてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態においては、対向方向Xに直交する排出方向YがV型エンジン本体1の上方に向かう方向としたが、これに限らず、排出方向Yを、V型エンジン本体1の下方に向かう方向としてもよく、また、V型エンジン本体1の後方又は前方に向かう方向としてもよい。
【0064】
(8)上記実施形態においては、一方側排気ガスE1の旋回角度及び他方側排気ガスE2の旋回角度を120°に設定したが、これに限らず、一方側排気ガスE1及び他方側排気ガスE2の旋回角度を120°以外の40°以上180°以下の範囲に設定してもよい。
【0065】
(9)上記実施形態においては、一方側排気ガスE1の旋回角度及び他方側排気ガスE2の旋回角度を同一の角度としたが、これに限らず、一方側排気ガスE1の旋回角度と他方側排気ガスE2の旋回角度とを異なる角度に設定してもよい。
【0066】
(10)上記実施形態においては、一方側配管下流側部位12bの管壁の一部と、他方側配管下流側部位13bの管壁の一部とが、共通の配管壁としての共通配管壁17で構成されたが、これに限らず、一方側配管下流側部位12bの管壁と、他方側配管下流側部位13bの管壁とが、共通の配管壁を構成しなくてもよい。
【0067】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、過給機から排出された排気ガスが流れる配管において発生する圧力損失の増加を抑制することができる過給機付エンジンを提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 V型エンジン本体(エンジン本体)
3 過給機
10 排気ガス集合部
12 一方側排気流動方向変更配管
12b 下流側部位(一方側配管下流側部位)
13 他方側排気流動方向変更配管
13b 下流側部位(他方側配管下流側部位)
14 合流管
17 配管壁
32 排気口(排気ガス出口)
C 中央部
E 排気ガス
E1 一方側排気ガス
E2 他方側排気ガス
X 対向方向
Y 排出方向
α 旋回角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6