【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
自動車などの車両には、車室内の前部に、
図1に示すようなインストルメントパネル1が設けられている。このインストルメントパネル1を、真空成形によって製造する。
【0013】
この真空成形は、要するに、
図2に示すように、加熱した表皮材2が表面側に当接配置された芯材3を真空成形型4へセットして、芯材3の裏面側から、図に矢印で示すように、真空引きを行うことによって、表皮材2を芯材3の表面に真空圧着させるようにしたものである。芯材3には、
図3、
図4に示すように、表裏両面間を連通する真空引用孔部5が多数形成される。
【0014】
ここで、芯材3は、インストルメントパネル1の形状に合わせて射出成形などによって製造された硬質樹脂製のものとされる。また、表皮材2には、柔軟なシート材や、パウダースラッシュ成形によって成形された柔軟な成形体などが使用される。シート材を用いる場合、表皮材2は、単層または
図2に示すような多層のものを使用することができる。
【0015】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例の真空成形用芯材構造では、以下のような構成を備えるようにしている。
図5の平面図および
図6の断面図に示すように、上記芯材3の表面側に、真空路となる複数の凹溝部11をランダムに形成する。
上記芯材3の表面側に開口された上記真空引用孔部5の開口部5aを、上記複数の凹溝部11によって囲まれた凸状部分12に対し、上記凹溝部11から離して形成する。
更に、上記開口部5aが形成された上記凸状部分12の頂部を、上記凹溝部11の深さに達しない範囲で、他の凸状部分12の頂部よりも低くして、上記凹溝部11と連通される隙間を形成する連通用頂部13とする。
【0016】
ここで、凹溝部11は、芯材3の表面全体に対して形成するようにしても良いし、または、真空引用孔部5の周囲に対して部分的に設けるようにしても良い。凹溝部11は、例えば、25mm〜50mm程度の厚みの芯材3に対し、0.5mm〜1.5mm程度の深さのシボ模様などとして形成される。凸状部分12は、概ね、直径が3.0mm〜5.0mm程度の大きさのものなどとされる。連通用頂部13は、他の凸状部分12に対して0.2mm〜0.4mm程度低いものとされる。
【0017】
そして、上記した芯材3は、
図7に示すような射出成形用の金型21によって成形される。図の場合、金型21は、下型22(コア型またはキャビティ型)と上型23(キャビティ型またはコア型)とによって構成され、両者間には、射出成形用空間24が形成される。射出成形用空間24内では、下型22から上型23へ向かって真空引用孔部5を形成するための孔形成用凸部25が一体に突設されている。この孔形成用凸部25は、上型23に達する高さの円錐台状のものとされる。また、孔形成用凸部25が形成された位置では、上型23から下型22へ向かって凹溝部11を形成するための凹溝形成用凸部26が一体に突設されている。この凹溝形成用凸部26は、下型22に達しないものとされている。更に、上型23から下型22へ向かって連通用頂部13を形成するための連通用頂部形成用凸面部27が一体に突設されている。この連通用頂部形成用凸面部27は、凹溝形成用凸部26と比べて突出量が小さい平らなものとされる。
図7の金型21によって成形された芯材3は、
図8のようなものとなる。なお、射出成形用の金型21は、左右の型であっても良い。
【0018】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0019】
芯材3の表面側に加熱した表皮材2を当接配置し、真空引用孔部5を介して、芯材3の裏面側から真空引きを行うことによって、表皮材2が芯材3の表面に真空圧着される。
【0020】
この際、芯材3の表面側に複数の凹溝部11をランダムに設けると共に、この凹溝部11間にできる凸状部分12に対し凹溝部11から離して真空引用孔部5の開口部5aを設け、更に、開口部5aが形成された凸状部分12の頂部を連通用頂部13とした。これにより、真空引用孔部5から連通用頂部13を介して凹溝部11内を真空引きすることができるようになるので、少ない真空引用孔部5であっても、真空引用孔部5と連通される凹溝部11によって広い範囲を有効に真空引きすることができる。また、凹溝部11によって表皮材2との接触面積が増えるため、芯材3の表面に対して、より強固に表皮材2を真空圧着させることができる。よって、例えば、インストルメントパネル1などのように形状が複雑な製品であっても、芯材3の表面に表皮材2を確実に真空圧着させることができる。
【0021】
そして、各真空引用孔部5の開口部5aが形成された凸状部分12の頂部を、上記凹溝部11と連通される隙間を形成する連通用頂部13としたことにより、真空引きの際に真空引用孔部5が表皮材2によって塞がれ難くなるので、真空引用孔部5が表皮材2で塞がれることによる空気の巻き込みや閉じ込めなどによる空気溜まり31(
図2参照)の発生をなくして、表皮材2をムラなくきれいに真空圧着することができる。更に、上記したように真空引用孔部5の数を減らして、芯材3の剛性低下を防止すると共に、真空引用孔部5の数を減らした分だけ、金型21のコストを削減することができる。
【0022】
更に、上記連通用頂部13を設けたことにより、凹溝部11と真空引用孔部5の開口部5aとが直接重なっていなくても連通できるようになるため、
図7の金型21に示すように、連通用頂部13を形成する孔形成用凸部25の頂部をほぼ平坦面にできるので、芯材3を成形する金型21の形状も単純になる。これにより、連通用頂部13の周辺における金型21の合わせ(相手型とのすり合わせ)構造が簡略化されるので、金型21の加工を容易化し、その分、金型21の製造コストを削減することができる。加えて、上記により、連通用頂部13の位置については金型21間に合わせ隙間ができないので、バリ(薄バリ)などの発生を抑制することができる。
【0023】
これに対し、例えば、連通用頂部13を設けない場合には、凹溝部11と真空引用孔部5の開口部5aとが連通されるように、
図9のような金型21Aを用いて、凹溝部11と真空引用孔部5の開口部5aとを直接重ねて形成する必要が生じ、
図10に示すような芯材3が成形される。しかし、このようにすると、真空引用孔部5の開口部5aと凹溝部11との間の部分における金型21の合わせ(相手型とのすり合わせ)構造に段差部32が発生するため、金型21の合わせ形状が複雑になってしまい、金型21の加工が難しくなって、その分、金型21の製造コストが上昇することになる。加えて、上記段差部32に合わせ隙間が生じる可能性が高くなるので、段差部32の位置にバリ33(薄バリ)などを発生し易いものとなる。
【0024】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。