(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、新たに建設されるマンションや戸建て住宅等においては、24時間換気が義務づけられており、室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路及び給気手段を備えると共に、室内空間の空気を室外空間へ排気する排気通路及び排気手段が設けられている。
更に、このような24時間換気システムにおいて、換気する空気の温湿度を調整するべく、一つ以上のデシカントロータを備えた空調システムが知られている。
図2に示すように、当該空調システム200は、基本的な構成として、
図2に示すように、室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路R1と、当該給気通路R1へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる第1ファンF1と、室内空間から取り込んだ空気を室外空間へ排気する排気通路R2と、当該排気通路R2へ室内空間から取り出した空気を通流させる第2ファンF2と、給気通路F1に配置される給気領域Daと排気通路R2に配置される排気領域Dbとの間で通気性吸湿体から成るデシカントロータDrを回転駆動して、給気領域Daを通過する空気の除湿と排気領域Dbを通過する空気におけるデシカントロータDrの再生とを行うロータ部Dと、給気通路R1における給気領域Daの下流側を通流する空気と排気通路R2における排気領域Dbの上流側を通流する空気とを熱交換する顕熱熱交換器EX1と、排気通路R2における顕熱熱交換器EX1と排気領域Dbとの間を通流する空気を、熱媒ポンプ(図示せず)にて供給される熱媒との熱交換により加熱する加熱部EX2とを、備えて構成されている(以下、従来技術1と呼ぶことがある。また、基本的な構成であるため、先行技術文献を開示できない)。
当該従来技術1では、室外空間から取り込まれた空気が、デシカントロータDrの給気領域Daにて除湿され、当該除湿に伴って発生する吸着熱を顕熱熱交換器EX1で放熱する形態で降温された後に、空調空気として室内空間へ供給する。
尚、当該従来技術1において、一定の除湿量(例えば、6〜7g/kg’の除湿量)を確保しようとすると、デシカントロータDrの排気領域Dbへ十分高い温度の空気を通流させる必要があるため、加熱部EX2においては約80℃以上の温水を媒体として用いなければならなかった。このため、従来技術では、加熱部EX2において、排熱として豊富に存在する(有効に利用されていない)中温(例えば、50℃以上70℃以下、より詳しくは60℃程度)の温水を熱媒として用いることはできなかった。
【0003】
一方、デシカントを用いる他の空調システムとしては、特許文献1に記載の如く、比較的低い再生温度で再生できる空冷デシカント素子を用いたものが知られている(以下、従来技術2と略称することがある)。
図3に示すように、当該従来技術2に係る空調システム300は、室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路R1と、当該給気通路R1へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる給気手段F1と、室内空間から取り込んだ空気を室外空間へ排気する排気通路R2と、当該排気通路R2へ室内空間から取り出した空気を通流させる排気手段F2とを備えると共に、通過する吸着空気の水分を吸着すると共に通過する再生空気へ水分を脱着する調湿部DSと、通過する冷却空気にて前記調湿部の吸着に伴う吸着熱を吸収する冷却部CSとを、前記調湿部DSにて水分を吸着しているときに前記冷却部CSにて吸着熱を吸収可能に備えた調湿素子D1と調湿素子D2を一対備えている。
更に、当該従来技術2は、圧縮機(図示せず)と凝縮器Gと膨張弁(図示せず)と蒸発器Jとに冷媒を循環させるヒートポンプ装置を備えると共に、一方側の調湿素子D1への空気の通流状態と、他方側の調湿素子D2への空気の通流状態とを、一定時間毎に切り替える切換機構Kが設けられている。
説明を追加すると、切換機構Kは、
図3に示すように、給気通路R1を、室外空間から取り込んだ空気が、一方側の調湿素子D1の調湿部DSを通流する状態とし、排気通路R2を、室内空間から取り出した空気が、蒸発器Jと、一方側の調湿素子D1の冷却部CSと、凝縮器Gと、他方側の調湿素子D2の調湿部DSとを、記載の順に通流する状態とする第1通流状態と、図示は省略するが、給気通路R1を、室外空間から取り込んだ空気が、他方側の調湿素子D2の調湿部DSを通流する状態とし、排気通路R2を、室内空間から取り出した空気が、蒸発器Jと、他方側の調湿素子D2の冷却部CSと、凝縮器Gと、一方側の調湿素子D1の調湿部DSとを、記載の順に通流する状態とする第2通流状態とを、切換可能に構成されている。
因みに、切換機構Kが、空気の通流状態を、第1通流状態に切り換えている場合には、室外空気OAは、調湿素子D1の調湿部DSを通過することで除湿されつつ、冷却部CSを通過する室内空気RAにて冷却され、空調空気SAとして室内空間へ供給される。一方、調湿素子D2の調湿部DSは、凝縮器Gで加熱された室内空気RAが供給されるため、再生される。
以上の構成にあっては、調湿素子D1の吸湿部DSでは、空調空気SAとして供給される室外空気OAが、冷却部CSを通流する室内空気RAにて吸着熱を吸熱されながら、除湿されるため、従来技術1に比べ、高い除湿能力を発揮できるから、調湿素子D2での吸湿部DSを再生するために供給する空気の温度を低下できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術1に示される空調システムでは、デシカントロータDrにて必要な除湿量を確保できる程度にデシカントロータDrを再生するために、デシカントロータDrを再生するために、80℃以上の熱媒(湯水)を加熱器EX2に供給する必要があり、排熱として豊富に存在する中温の湯水を再生熱源として用いることはできなかった。
【0006】
一方で、特許文献1に係る空調システムにおいては、温湿度を調整する運転を実行する場合、消費電力の大きい圧縮機を働かせてヒートポンプ装置を駆動する必要があり、経済性の観点で問題があった。また、ヒートポンプ装置の機械的な可動部の耐久性が要求される観点からも、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、豊富に存在する中温の排熱を有効に利用できつつ、電力の使用を十分に抑制して、経済性を確保しつつ、実質的な意味でのCOPを向上し得る空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための空調システムは、
室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路と、
当該給気通路へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる給気手段と、
室内空間から取り出した空気を室外空間へ排気する排気通路と、
当該排気通路へ室内空間から取り出した空気を通流させる排気手段と、
通過する吸着空気の水分を吸着すると共に通過する再生空気へ水分を脱着する調湿部と、通過する冷却空気にて前記調湿部の吸着に伴う吸着熱を吸収する冷却部とを、前記調湿部にて水分を吸着しているときに前記冷却部にて吸着熱を吸収可能に備えた調湿素子を一対備えた空調システムであって、その特徴構成は、
室外空間から取り込んだ空気を室外空間へ送り出す作用通路と、
前記作用通路へ室外空間から取り出した空気を通流させる作用空気供給手段と、
二流体の顕熱を熱交換させる顕熱熱交換部と、
排熱を保有する熱媒との熱交換により空気を加熱する加熱部とを備え、
一方側の前記調湿素子への空気の通流状態と、他方側の前記調湿素子の空気の通流状態とを互いに切り替え可能な切換機構を備え、
前記切換機構が、
前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として一方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とし、
前記排気通路を、室内空間から取り出した空気が、前記顕熱熱交換部及び前記加熱部を記載の順に通流した後に、再生空気として他方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流する状態とし、
前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として一方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第1通流状態と、
前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として他方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とし、
前記排気通路を、室内空間から取り出した空気が、前記顕熱熱交換部及び前記加熱部を記載の順に通流した後に、再生空気として一方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流する状態とし、
前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として他方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第2通流状態
とを切り換え
、
前記加熱部は、前記給気通路にて前記顕熱熱交換部へ導かれる空気の温度よりも高く、且つ排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値より低い温度の熱媒を、空気と熱交換するように構成されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、空冷式のデシカント素子として一対の調湿素子を備えた構成を採用しており、当該一対の調湿素子で、吸湿側として働く調湿素子では、その調湿部を通過する空気の湿分を吸着するときに冷却部にて吸着熱を吸熱するから、例えば、一対の調湿素子で、被再生側の調湿素子へ供給される再生空気の温度が比較的低い場合であっても、高い除湿能力を発揮できる。
この様な構成に加え、排熱を保有する熱媒との熱交換により空気を加熱する加熱部が、被再生側の調湿素子へ供給される再生空気を加熱するように構成されているから、例えば、当該加熱部へ、排熱として豊富に存在する中温(例えば、50℃以上70℃以下、より詳しくは60℃程度)の熱媒を供給して、被再生側の調湿素子を良好に再生できる。
尚、中温の熱媒(例えば、成層貯湯される貯湯槽の中間部に貯湯される湯水)は、従来有効に使われずに捨てられていた場合が多かった点から考えると、当該構成によれば、加熱部に対する入力熱量を零とみなすことができ、この場合には、実質的な意味でのCOPを向上できているとみなすことができる。
また、除湿側の調湿素子にて除湿された後の空気は、更に、顕熱熱交換部にて、夏場においては室外空気よりも温度が低い場合が多い室内空気と熱交換して冷却されるから、低湿・低温の空気を、空調空気として、室内空間へ供給できる。
このような構成にあっては、消費電力が大きく且つ機械的な耐久性が問題となる場合があるヒートポンプ装置を備えない構成とでき、豊富に存在する中温の排熱を有効に利用できつつ、電力の使用を十分に抑制して、経済性を確保しつつ、実質的な意味でのCOPを向上し得る空調システムを実現できる。
更に、上記特徴構成によれば、加熱部は、給気通路にて顕熱熱交換部へ導かれる空気の温度よりも高く、且つ排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値温度より低い温度の熱媒を、空気と熱交換するように構成されているから、加熱部では、顕熱熱交換部にて給気通路から導かれる空気と熱交換した空気を良好に加熱できる。また、排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値(例えば、65℃程度)より低い温度の熱媒を用いて空気を加熱するから、これまで、排熱として有効に利用されない場合が多かった温度の熱媒を用いて空気を加熱し、当該加熱された空気により、被再生側の調湿素子を再生できる。
【0012】
空調システムの更なる特徴構成は、
前記加熱部は、湯水を成層貯湯する貯湯槽の下方領域と上方領域との間の中間領域から取り出される湯水を熱媒として、空気と熱交換するように構成されている点にある。
【0013】
当該構成によれば、加熱部へ熱媒として導かれる湯水を、成層貯湯される貯湯槽の中間領域から取り出す構成を採用するから、従来、排熱として豊富に存在すると共にその利用先が限定されていた中温の湯水を積極的に取り出して、本発明の空調システムの熱源として有効に利用できる。
【0014】
空調システムの更なる特徴構成は、
前記作用通路は、前記給気通路の最上流部位から分岐した分岐通路であり、当該分岐通路は、前記排気通路で前記排気手段の上流側に接続される通路であり、
前記作用空気供給手段と前記排気手段とを、単一のファンから構成する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、作用通路を、給気通路の最上流部位から分岐した分岐通路として構成し、当該分岐通路を、排気通路で排気手段の上流側に接続される通路として構成することで、排気通路の排気手段を働かせることにより、当該作用通路に空気を通流させることができる。
これにより、作用空気供給手段と排気手段とを単一のファンから構成することができる。
【0016】
空調システムの更なる特徴構成は、
少なくとも、一対の前記調湿素子と、前記加熱部とを第1ユニットとして構成し、
少なくとも、前記顕熱熱交換部を前記第1ユニットとは別の第2ユニットして構成している点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、例えば、第1ユニットと第2ユニットとを各別に配設することができるから、第1ユニットを室外ユニットとして室外に配設し、第2ユニットを室内の床下等に配置するような構成を採用できる。
尚、上記特徴構成にあっては、給気手段、排気手段、及び作用空気供給手段は、第1ユニットと第2ユニットの何れに設けていても構わない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る空調システム100は、豊富に存在する中温(例えば、50℃以上70℃以下、より詳しくは60℃程度)の排熱を有効に利用しつつ、電力の使用を十分に抑制して、経済性を確保しつつ、実質的な意味でのCOPを向上し得るものに関する。
当該空調システム100は、
図1に示すように、主要な機器構成として、比較的低温の再生温度でも良好に温湿度調整を実行できる空冷式の一対の調湿素子D1、D2と、当該一対の調湿素子D1、D2への空気の通流状態を切り換える形態で、一対の調湿素子D1、D2を、吸湿側と被再生側とに所定時間毎(例えば、5分毎)に交互に切り替える切換機構Kと、二流体の顕熱を交換可能な顕熱熱交換器EX1(顕熱熱交換器の一例)と、熱媒通流路R4を通流する熱媒と空気とを熱交換する熱交換器として構成され且つ排熱を保有する熱媒との熱交換により空気を加熱する加熱器EX2(加熱部の一例)とを備えるものである。
一対の調湿素子D1、D2の夫々は、
図1に示すように、通過する吸着空気の水分を吸着すると共に通過する再生空気へ水分を脱着する平板状の調湿部DSと、通過する冷却空気にて調湿部DSの吸着に伴う吸着熱を吸収する平板状の冷却部CSとを、交互に積層して構成されている。
調湿部DSと冷却部CSとには、アルミやポリプロピレン等の薄板を波板状に加工した波板部材が波面が板面に沿う状態で配設されており、調湿部DSに配設される波板部材と、冷却部CSに配設される波板部材とは波面の波が互いに直交する状態で配設されている。
尚、調湿部DSに配設される波板部材には吸湿材が塗布されており、当該調湿部DSを通流する空気の湿分を吸着可能に構成されている。
これにより、調湿素子D1、D2には、調湿部DSと冷却部CSの積層方向視で、調湿部DSに対し特定方向から空気を通流させて吸湿している状態で、冷却部CSに対し特定方向と直交する方向から空気を通流させて調湿部DSでの吸湿に伴う吸湿熱を回収可能に構成されている。
【0020】
当該実施形態に係る空調システム100にあっては、室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路R1と、当該給気通路R1へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる第1ファンF1(給気手段の一例)と、室内空間から取り込んだ空気を室外空間へ排気する排気通路R2と、排気通路R2へ室内空間から取り出した空気を通流させる第2ファン(排気手段の一例)と、室外空間から取り込んだ空気を室外空間へ送り出す作用通路R3と、作用通路R3へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる第2ファンF2(作用空気供給手段の一例)とが設けられている。詳細な説明は後述するが、当該実施形態においては、排気手段と作用空気供給手段とは、単一の第2ファンF2にて構成されている。
【0021】
切換機構Kは、
図1に示すように、一方側の調湿素子D1を吸湿側とすると共に他方側の調湿素子D2を被再生側とする第1通流状態と、図示は省略するが、他方側の調湿素子D2を吸湿側とすると共に一方側の調湿素子D1を被再生側とする第2通流状態とを、切り換え可能に構成されていれている。
説明を追加すると、第1通流状態は、
図1に示すように、給気通路R1を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として一方側の調湿素子D1の調湿部DSを通流した後に、顕熱熱交換器EX1を通流する状態とし、排気通路R2を、室内空間から取り出した空気が、顕熱熱交換器EX1及び加熱器EX2を記載の順に通流した後に、再生空気として他方側の調湿素子D2の調湿部DSを通流する状態とし、作用通路R3を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として一方側の調湿素子D1の冷却部CSを通流する状態とするものである。
一方、第2通流状態は、図面としては、
図1において一方側の調湿素子D1と他方側の調湿素子D2とが入れ替えた状態であり、給気通路R1を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として他方側の調湿素子D2の調湿部DSを通流した後に、顕熱熱交換器EX1を通流する状態とし、排気通路R2を、室内空間から取り出した空気が、顕熱熱交換器EX1及び加熱器EX2を記載の順に通流した後に、再生空気として一方側の調湿素子D1の調湿部DSを通流する状態とし、作用通路R3を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として他方側の調湿素子D2の冷却部CSを通流する状態とするものである。
以上より、第1通流状態にあっては、一方側の調湿素子D1が吸湿側として働くと共に他方側の調湿素子が被再生側となり、第2通流状態にあっては、一方側の調湿素子D1が被再生側となり、他方側の調湿素子D2が吸湿側として働くこととなる。
尚、以下の説明では、特に記載がない限り、切換機構Kが第1通流状態に切り換えている状態にあるとして説明する。
【0022】
作用通路R3について説明を追加すると、作用通路R3は、その上流端を給気通路R1で一方側の調湿素子D1の上流側に上接続すると共に、その下流端を排気通路R2で他方側の調湿素子D2の下流側で第2ファンF2の上流側に接続する形態で、備えられている。作用通路R3には、第2ファンF2に吸引されることにより空気が通流することとなり、当該空気は、吸湿側としての一方の調湿素子D1の冷却部CSを通過する。即ち、当該実施形態では、第2ファンF2が作用空気供給手段として働く。
【0023】
当該実施形態にあっては、第1ファンF1は、給気通路R1において、一方の調湿素子D1と顕熱熱交換器EX1との間に設けられ、第2ファンF2は、排気通路R2において、他方の調湿素子D2の下流側に設けられている。
【0024】
作用通路R3について説明を追加すると、作用通路R3は、給気通路R1の第1ファンF1よりも上流側の最上流部位から分岐した分岐通路であり、当該分岐通路は、排気通路R2で第2ファンF2の上流側で他方側の調湿素子D2の下流側に接続される流路である。当該構成により、排気通路R2に設けられる第2ファンF2を働かせることで、作用通路R3としての分岐通路に対し、給気通路R1から空気を取り込むことができる。
【0025】
以上のような構成を採用することで、給気通路R1を通流する空気は、吸湿側の一方の調湿素子D1の調湿部DSを通過するときに、冷却部CSを通過する空気にて吸着熱を吸収されながら除湿されることになるから、例えば、従来技術1に比べ、比較的低い再生温度で調湿素子D1、D2を再生したとしても、高い除湿能力を発揮できる。
即ち、当該実施形態に係る加熱器EX2では、再生空気を比較的低い温度である中温(例えば、50℃以上70℃以下、より詳しくは60℃程度)に加熱できれば良いから、例えば、湯水を成層貯湯する貯湯槽(図示せず)の下方領域と上方領域との間の中間領域に貯留される中温の湯水を熱媒として利用可能に構成されている。
これにより、加熱器EX2では、例えば、給気通路R1にて顕熱熱交換器EX1へ導かれる空気の温度よりも高く、排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値(例えば、60℃)よりも低い温度の湯水(熱媒)を、調湿素子D1、D2の再生熱源として利用している。
【0026】
尚、図示は省略するが、当該実施形態に係る空調システム100は、少なくとも、一対の調湿素子D1、D2と加熱器EX2とを第1ユニットとして構成し、顕熱熱交換器EX1を第1ユニットとは別の第2ユニットとして構成している。当該実施形態にあっては、第1ファンF1及び第2ファンF2は、第1ユニットに含んで構成している。
【0027】
以下、当該実施形態に係る空調システム100の能力を検証するべく、上述した従来技術1に係る空調システム200、従来技術2に係る空調システム300、及び当該実施形態に係る空調システム100に対して行ったシミュレーション結果を、記載の順に示す。
【0028】
〔従来技術1に係るシミュレーションの説明〕
従来技術1に係るシミュレーションの条件としては、デシカントロータDrの圧損が100Pa、除湿効率(定義は後述)が73.5%とし、顕熱熱交換器EX1の交換効率が80%で圧力損失が100Paとし、第1ファンF1を効率が50%で350Pa昇圧するものとし、給気通路R1の機外静圧を150Paとし、室内空間の圧力を101.3kPaとし、排気通路R2の機外静圧を150Paとし、加熱器EX2は、当該加熱器EX2にて加熱された空気が50℃となる熱量を供給するものとし、加熱器EX2の圧損が100Paとし、第2ファンF2の効率が50%で450Pa昇圧するものとした。また、前提として、給気通路R1を通流する空気量と、排気通路R2を通流する空気量とは同一であるとし、除湿過程、再生過程において比エンタルピは一定とした。
この場合、
図2のP1〜P9における空気の状態は、以下の〔表1〕、〔表2〕に示す通りである。尚、表において「h」は、比エンタルピを意味するものである。
また、前記除湿効率は、理論的な最大除湿量(給気空気のデシカントロータDr通過前の絶対湿度と、給気空気の比エンタルピと再生空気の相対湿度で状態が決定される理想的なデシカントロータDr通過後の空気の絶対湿度との差)に対する実際除湿量の比で計算される値である。
【0031】
この場合、デシカントロータDrの除湿量は5.0g/kg’となり、第1ファンF1の必要動力は0.023kWとなり、加熱器EX2の交換熱量は0.306kWとなり、第2ファンF2の必要動力は0.03kWとなった。
即ち、熱エネルギのインプットは0.306kWであり、電気エネルギのインプットは0.053kWであり、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)は0.451kWであった。
ここで、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)を、上述したインプットで除算した値をCOPとする場合、熱インプットのみに基づくCOPは1.5となり、電気インプットのみに基づくCOPは8.4であり、総合COPの一次エネルギ換算値(温水製造効率80%、受電端効率36.9%)は0.9であった。
因みに、加熱器EX2において排熱として通常捨ててしまう中温の湯水を用いる場合で熱インプットを零と見なす場合の総合COP'は3.1となる。
【0032】
〔従来技術2に係るシミュレーションの説明〕
従来技術2に係るシミュレーションの条件としては、第1ファンF1の効率を50%で250Pa昇圧するものとし、調湿素子D1、D2の圧損が100Paとし、調湿素子D1、D2を通過する給気空気の除湿量および温度上昇は、給気空気の温湿度、再生空気の温湿度および冷却空気の温度における比較的標準的な性能を想定して除湿量が7.0g/kg’、温度上昇が−0.5degとした。また、給気通路R1の機外静圧を150Paとし、室内空間の圧力を101.3kPaとし、排気通路R2の機外静圧を150Paとし、蒸発器Jの圧損を50Paとし、凝縮器Gの圧損を50Paとし、第2ファンF2の効率が50%で450Pa昇圧するものとした。
また、前提として、給気通路R1を通流する空気量と、排気通路R2を通流する空気量とは同一であるとした。
この場合、
図3のP1〜P9における空気の状態は、以下の〔表3〕、〔表4〕に示す通りである。
【0035】
この場合、第1ファンF1の必要動力は0.017kWとなり、蒸発器Jの交換熱量は0.4kWとなり、凝縮器Gの交換熱量は0.471kWとなり、第2ファンF2の必要動力は0.03kWとなった。
尚、図示しないヒートポンプ装置の圧縮機の消費電力は、0.084kWとし、ヒートポンプ装置としては、冷媒にR410Aを選択し、蒸発温度50℃、凝縮温度15℃と仮定して、投入圧縮仕事に対する冷却能力の成績係数として5.63を導出した。当該成績係数に、断熱効率0.7と機械効率0.85を積算して、電気インプットに対する冷却能力の成績係数を3.35とした。
【0036】
当該従来技術2にあっては、熱エネルギのインプットは0kWであり、電気エネルギのインプットは0.130kWであり、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)は0.661kWであった。
ここで、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)を、上述したインプットで除算した値をCOPとする場合、熱インプットのみに基づくCOPは、熱インプットが零のため計算できないが、電気インプットのみに基づくCOPは5.1であり、受電端効率36.9%を加味した一次エネルギ換算のCOPは1.9であった。
【0037】
〔本実施形態の空調システムに係るシミュレーションの説明〕
本実施形態に係る空調システムのシミュレーションの条件としては、調湿素子D1、D2の圧損が100Paとした。調湿素子D1、D2を通過する給気空気の除湿量および温度上昇は、給気空気の温湿度、再生空気の温湿度および冷却空気の温度における比較的標準的な性能を想定して除湿量が7.0g/kg’、温度上昇が10degとした。第1ファンF1を効率が50%で350Pa昇圧するものとし、顕熱熱交換器EX1の熱交換効率を80%とし、圧損を100Paとし、給気通路R1の機外静圧を150Paとし、室内空間の圧力を101.3kPaとし、排気通路R2の機外静圧を150Paとし、加熱器EX2を、自身を通過後の空気の温度を50℃に加熱する熱量を供給するものであるとし、圧損を100Paとし、第2ファンF2の効率が50%で275Pa昇圧するものとした。
また、前提として、給気通路R1を通流する空気量と、排気通路R2を通流する空気量とは同一であるとした。
この場合、
図1のP1〜P13における空気の状態は、以下の〔表5〕、〔表6〕に示す通りである。
【0040】
この場合、第1ファンF1の必要動力は0.023kWとなり、加熱器EX2の交換熱量は0.358kWとなり、第2ファンF2の必要動力は0.037kWとなった。
即ち、熱エネルギのインプットは0.358kWであり、電気エネルギのインプットは0.060kWであり、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)は0.663kWであった。
ここで、室外空気OAに対する空調空気SAのエンタルピ差(アウトプット)を、上述したインプットで除算した値をCOPとする場合、熱インプットのみに基づくCOPは1.9であり、電気インプットのみに基づくCOPは11.0であり、熱インプットと電気インプットとの双方に基づく総合COPの一次エネルギ換算値(温水製造効率80%、受電端効率36.9%)は1.1であった。
ここで、加熱器EX2において排熱として通常捨ててしまう中温の湯水を用いる場合で熱インプットを零と見なす場合の総合COP'は4.1となる。
当該総合COP'の値は、従来技術1の総合COP'及び従来技術2の一次エネルギ換算COPの値を凌ぐものであり、高い効率を発揮できることを示している。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態にあっては、第1ファンF1の配設位置を給気通路R1上で特定の位置に限定すると共に、第2ファンF2の配設位置を排気通路R2上で特定の位置に限定した。
しかしながら、第1ファンF1の配設位置は、給気通路R1上であれば、どの位置に設けても良く、第2ファンF2の配設位置は、排気通路R2上であれば、どの位置に設けても構わない。
ただし、作用通路R3の排気通路R2への接続部位は、第2ファンF2の上流側とすることとする。
【0042】
(2)作用通路R3は、別に給気通路R1及び排気通路R2に接続されていなくても構わない。この場合、作用通路R3に、作用空気供給手段として、第2ファンF2とは別に第3ファン(作用空気供給手段の一例)を設けることとなる。
【0043】
(3)上記実施形態では、切換機構Kは、一対の調湿素子D1、D2への空気の通流状態を切り換える形態、即ち、給気通路R1と排気通路R2と作用通路R3を切換弁等により切り換える形態で、一対の調湿素子D1、D2の吸湿側と被再生側とを切り換える、即ち、第1通流状態と第2通流状態とを切り換える例を示した。
しかしながら、切換機構Kは、一対の調湿素子D1、D2自体の配置を、置き換えることで、第1通流状態と第2通流状態とを切り換える構成を採用しても構わない。
【0044】
(4)上記実施形態では、加熱器EX2へは、貯湯槽(図示せず)の中間領域に貯留される湯水を熱媒として通流させる構成例を示した。しかしながら、例えば、当該加熱器EX2へ導かれる熱媒としては、エンジンや燃料電池での発生熱を回収するように循環している冷却水を通流する構成を採用しても構わない
。
【0045】
(5)上記実施形態では、空調システム100に係る構成を、第1ユニットと第2ユニットとに分割して設ける構成を採用したが、別に、分割することなく、一体のユニットして構成しても構わない。
【0046】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。