特許第6469070号(P6469070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469070第1の基板を第2の基板から剥離する方法および可撓性の基板保持装置の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469070
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】第1の基板を第2の基板から剥離する方法および可撓性の基板保持装置の使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190204BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/02 B
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-247465(P2016-247465)
(22)【出願日】2016年12月21日
(62)【分割の表示】特願2014-547725(P2014-547725)の分割
【原出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-85135(P2017-85135A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィンプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ブルクグラーフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ミッテンドルファー
【審査官】 高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02398040(EP,A1)
【文献】 特表2011−510495(JP,A)
【文献】 特表2005−528779(JP,A)
【文献】 特開2010−135682(JP,A)
【文献】 特開2006−278807(JP,A)
【文献】 特表2010−505651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/68−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の基板に接合された第1の基板を第2の基板から剥離方向(L)で剥離する方法であって、前記両基板はフュージョンボンディングされていて熱処理されておらず、当該方法は、以下のステップ、即ち、
基板保持装置による第2の基板の保持、及び前記剥離方向(L)で可撓性の基板保持装置による第1の基板の保持のステップと、
第1の基板を曲げながら第1の基板を第2の基板から剥離するステップと、を有し、
第1の基板と第2の基板との間のボンディング力が0.2J/m2よりも大きい場合に、前記剥離を行
前記方法は、さらに、剥離前に、品質基準が、規定された基準を相応に満たしていない又は完全には満たしていないかどうか、ボンディングされた基板対をチェックするチェックステップを有し、
前記品質基準は、前記両基板の互いの位置調整精度を意味している、
第1の基板を第2の基板から剥離方向(L)で剥離する方法。
【請求項2】
ファンデルワールス力によるボンディング後、第1の基板及び/又は第2の基板の再結晶温度以上の温度への第1の基板及び第2の基板の加熱前に、第1の基板の剥離を行う、請求項記載の方法。
【請求項3】
第1の基板と第2の基板との間のボンディング力が1.0J/m2よりも小さい場合に、前記剥離を行う、請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の可撓性の基板保持装置、及び、請求項2に記載の第1の基板を第2の基板から剥離方向Lで剥離する装置、請求項9記載の第1の基板を第2の基板から剥離方向Lで剥離する方法、請求項12及び13記載の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、構造ウェハ若しくは製品ウェハはしばしば、処理を可能にするために、支持ウェハ(キャリアウェハ)若しくは第1の基板に一時的にボンディングされる。製品ウェハの処理後、この製品ウェハをできるだけ簡単かつ迅速かつ安価かつクリーンに第1の基板から取り外すのが望ましい。製品ウェハを支持ウェハにボンディングするためにしばしば使用される方法では、両基板のうちの一方(又は両方)に付着層を設け、圧力下で接触させる。剥離(デボンディング)する際には、接着剤の付着力(温度、UV照射等)を減じた後、支持ウェハを製品ウェハから、例えばウェアを互いに平行に摺動させることにより剥がす。 ウェハはこの場合、いわゆるチャックを介して負圧によって保持される。ウェハは極めて頻繁に、フュージョンボンディング(主として、ファンデルワールス力)と、次いで行われる熱処理(再結晶温度以上への加熱)によっても永久接合される。
【0003】
デボンディングの際には、多数の危険因子を考慮しなければならず、最優先事項は、前加工により極めて高価な損傷し易い製品ウェハにかかる応力をできるだけ僅かにし、このウェハを損傷させないことにある。第1の基板の剥離は、他方では安価かつ迅速に、僅かなエネルギコストで行われるのが望ましい。公知の幾つかの剥離プロセスでは、特に、ウェハ間の付着層の付着特性を解消するために、支持ウェハと構造ウェハ/製品ウェハとから成る「スタック」(積層体)を、接着剤のために特有の温度まで加熱する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、冒頭で述べた形式の、第1の基板から剥離する装置及び方法を改良して、慎重かつ同時に著しく迅速に剥離が行えるようにすることである。同時に消費エネルギが減じられるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1、2、9、12及び13の特徴部に記載の構成により解決される。本発明の有利な別の構成は従属請求項に記載されている。明細書、請求の範囲及び/又は図面に記載された少なくとも2つの特徴から成る全ての組み合わせも本発明の範疇にあるものである。値範囲については、記載した範囲内にある値も制限値として開示されたとみなすべきであって、任意の組み合わせで請求の範囲とすることができる。
【0006】
本発明の基本思想は、第1の基板を第2の基板から剥離する際に第1の基板を保持する基板保持装置を、基板保持装置が第1の基板の曲げを許容するように構成することにある。本発明によれば基板保持装置は、第1の基板を第2の基板から、特に持ち上げにより剥離し、特に専ら第1の基板の縁部から剥離する剥離力を発生させる十分な曲げ剛性を有している。この場合、本発明によれば、特に45°よりも小さい、好適には40°よりも小さい、さらに好適には30°よりも小さい、特に好適には20°よりも小さい、極めて好適には10°よりも小さい、最も好適には5°よりも小さい曲げ角度で僅かな屈曲のみを行うのが望ましい。屈曲は特に、制御可能な力の負荷により、かつ/又は剥離速度の制御により、特に基板保持装置の周囲で制御される。このようにして、所定の、特に基板保持装置と同様の曲げ剛性を有した第1の基板と、とりわけ第2の基板とが損傷から保護される。屈曲により、剥離力の大部分は、特に第1の基板の縁部から中心に向かう方向で移動する剥離前線に作用する。さらに本発明による態様は、(相対的に)高いボンディング力を有した基板を互いに分離するのに適している。
【0007】
従って、第1の基板及び第2の基板が、本発明による、特に制御可能な屈曲により剥離の際に丁寧に扱われるので、本発明は特に、フュージョンボンディングにより接合された2つの基板を剥離する際にも使用可能である。
【0008】
従って、本発明の核心は、第1の基板を第2の基板から剥離する際に第1の基板を保持する可撓性の基板保持装置にあり、この場合、第1の基板を曲げながら第2の基板を剥離する剥離手段が基板保持装置に設けられている。
【0009】
即ち本発明によれば、特に所定の弾性若しくは曲げ剛性を備えたポリマから成る、リング状ではなく全面的な基板保持装置の構成も考えられる。このような構成は、第1の基板の位置固定及び収容のために真空通路を有している。この場合、特に付加的に、保持力を高めるために、第1の基板を基板保持装置に静電気的に位置固定することができる。
【0010】
基板保持装置は、少なくとも部分的に、金属、セラミック、又は複合材料から形成されていて良い。使用材料は、本発明による機能性のみを許容しなければならない。
【0011】
独立請求項記載の本発明としてさらに、第1の基板を第2の基板から剥離方向で剥離する装置が設けられており、該装置は以下の特徴、即ち、
第1の基板を保持する、前記剥離方向Lで可撓性の第1の基板保持装置と、
第2の基板を保持する第2の基板保持装置と、
特に曲げ力に関して制御されて、第1の基板を曲げながら第1の基板を第2の基板から剥離する剥離手段と、を有している。
【0012】
この場合、敏感な、特に薄い(好適には製品ウェハである)基板を収容するために第2の基板保持装置が使用されると特に好適である。
【0013】
剥離方向Lは本発明によれば、第1の基板及び/又は第2の基板の表面に対してほぼ、好適には正確に、垂直である。基板保持装置、及び/又は基板保持装置によって収容された第1の基板の屈曲の屈曲軸線は、剥離方向Lに対して垂直である。曲げ軸線は特に、第2の基板及び/又は第1の基板の表面に対して平行である。本発明によれば、基板の周囲に沿って複数の、特に半径方向対称的な剥離方向が設けられていることが考えられ、これにより複数の曲げ軸線が設けられている。このような構成は、両基板が工具の係合により、特に保持リングにより、周囲に沿って互いに分離される場合に生じる。
【0014】
本発明による装置は、好ましい構成では、負圧によって基板保持装置に位置固定された第1の基板をさらに強力に基板保持装置に位置固定するために、過圧を負荷することができる圧力室を有することができる。この圧力室の圧力は、この場合1barよりも高く、好適には2barよりも高く、さらに好適には5barよりも高く、さらに好適には10barよりも高く、特に100barよりも小さくて良い。
【0015】
本発明の好適な構成によれば、第1の基板を収容するための基板保持装置は剥離方向Lで弾性的に変形可能である。基板保持装置の弾性により、本発明によれば、特に制御可能な引張力は第1の基板の周面にのみ加えられるにもかかわらず、剥離力はそれぞれ、移動する剥離前線に集中させることができる。
【0016】
本発明の別の好適な構成では、剥離手段により、第2の基板を収容するための基板保持装置の周面に作用する少なくとも1つの引張力と、基板保持装置の周面に作用する前記引張力に抗して作用する少なくとも1つの対抗力とを、剥離前線に沿って剥離モーメントを発生させるために加えることができる。これにより、特に剥離の開始時における負荷全体を減じることができる。このようにして第1の基板及び第2の基板はさらに著しく丁寧に扱われる。この場合特に、引張力は、基板保持装置の周囲に引張力を特に同様に付与することにより、基板保持装置の中央で合力としての引張力にまとめられ、対抗力は、1つの合力としての対抗力となり、基板保持装置の縁部に加えられ、相応の剥離モーメントが移動する剥離前線で合力となる。従って基板保持装置は基板保持装置に対して傾けられる。
【0017】
特に極めて敏感又は極めて高価な第2の基板の場合に、第2の基板をさらに丁寧に扱うために、本発明によれば、第2の基板保持装置を、剛性的な、特に第2の基板を全面的に収容する収容体として形成している。
【0018】
本発明のさらに好適な構成によれば、第1の基板保持装置及び/又は第2の基板保持装置が、調節可能な内径Diを備えた、特に開かれたリングとして形成されている。リング形状により、曲げ剛性は、リングジオメトリ、特にリング直径Da及び/又はリングの高さにH対するリング幅によって、良好に第1の基板に合わせて調節することができる。リング形状によりさらに、リング開口の範囲で、第1の基板のより大きな運動自由度が許容されるので、基板保持装置の曲げ剛性と第1の基板の曲げ剛性の協働が得られる。この場合、基板保持装置の曲げ剛性は特に、第1の基板の曲げ剛性と少なくとも同じであるか、又はこれよりも大きい。好適には、第2の基板保持装置は、第1の基板保持装置と異なるように形成されていて、特に開かれたリングとしては構成されておらず、好適には全面的な基板収容体、特にチャックとして形成されている。
【0019】
第1の基板保持装置の曲げ剛性は、本発明によれば好適には、第1の基板の曲げ剛性の1/20〜20倍、特に1/10〜10倍、好適には1/5〜5倍、さらに好適には1/2〜2倍であるように選択されている。第1の基板としては特に、500〜750μmの、好適には600μmの厚さdを有したシリコーンから成るウェハが適している。このウェハは200又は300mmの直径Dtを有することができる。
【0020】
この場合、特にばね弾性的に戻る周方向肩部の形の、特にリング全周にわたって延在する保持手段が設けられていると特に好適である。これにより、安価に製造可能な単純な形状的な構成によって、剥離力が第1の基板、特に第1の基板の全周に加えられ、剥離の開始時に剥離前線の特に臨界的な誘発が、キャリア基板の周面の1つ又は複数の個所に集中させられる。
【0021】
別の構成では、本発明によれば、基板保持装置は第1の基板をほぼ全体的に、特に、全周の少なくとも98%まで、好適には少なくとも99%まで、さらに好適には少なくとも99.5%まで側方から取り囲むように形成されている。これにより第1の基板はほぼ全周にわたって支持される。基板保持装置は特に、その全周の好適には少なくとも98%まで、さらに好適には少なくとも99%まで、さらに好適には少なくとも99.5%まで周方向で閉じられたリングとして形成されている。このリングは、個別セグメントから構成されていても良い。
【0022】
好適な構成によれば、剥離手段は、剥離方向Lで第1の基板を収容するための基板保持装置の少なくとも1つの周面区分の並進運動を行わせる並進的な駆動手段を有している。
【0023】
独立請求項記載の本発明としては、第1の基板を第2の基板から剥離方向Lで剥離する方法が設けられており、該方法は以下のステップ、特に以下の経過、即ち、
第2の基板保持装置による第2の基板の保持、及び前記剥離方向Lで可撓性の第1の基板保持装置による第1の基板の保持のステップと、
第1の基板を曲げながら第1の基板を第2の基板から剥離するステップと、を有している。
【0024】
さらに本発明によれば、第1の基板を第2の基板から剥離する際に、第1の基板を保持するために使用する、可撓性の第1の基板保持装置の使用が提案されている。特に第2の基板保持装置として、可撓性の基板保持装置も使用される。
【0025】
本発明の好適な構成では、剥離が、200℃よりも低い、好適には100℃よりも低い、さらに好適には50℃よりも低い温度で、理想的には室温で、特に全面的な加熱手段なしに行われる。本発明によれば剥離は特に、第1の基板及び/又は第2の基板の永久接合が、特に基板の再結晶温度のもとで行われる温度よりも低い温度で行われる。
【0026】
本発明による方法の別の構成では、ファンデルワールス力によるボンディング後、第1の基板及び/又は第2の基板の永久接合が行われる温度以上の温度に第1の基板及び第2の基板が加熱される前に、第1の基板の剥離を行う。
【0027】
好適には接合形式は、剥離が、0.2J/m2よりも大きい、好適には0.4J/m2よりも大きい、さらに好適には0.8J/m2よりも大きいボンディング力まで行われるように形成されている。SiO2バルクの破断強度はこの場合、約2.0〜2.5J/m2である。
【0028】
本発明によれば、局所的に剥離前線に、剥離手段、特に分離手段により作用することにより、特に剥離前線における剥離を加速することが考えられる。分離手段は、機械的な分離及び/又は局所的な加熱、好適には方向付けられた加熱空気流を含む。具体的には、分離楔、分離ブレード、又は剥離前線に向けられた好適には高温の圧縮空気噴流を個別に又は組み合わせて使用することができる。このような類似の技術はこの業界ではいわゆる「割断加工(Cleaving)」を実施するために使用されている。割断加工は主に、薄い層及び極めて薄い層を移送するために、弱められた領域に沿って、基板を、主としてSi又はGeのような極めて脆い基板を分割するものである。本発明による構成は、このような割断加工にも使用することができる。
【0029】
分離楔とは、好適にはv字型のプロフィールを備えた工具を意味する。分離ブレードとは、極めて鋭いエッジを備えた工具を意味する。分離ワイヤは、中間層の平面で緊張状態で相応の装置により中間層に押し込まれる、極めて細い、好適には強度の高いワイヤである。分離ワイヤは、特に加熱ワイヤとして、即ち、加熱可能に形成されている。
【0030】
本発明によれば、剥離前線がいわば螺旋状に、第2の基板の周囲に沿って剥離する間に、中心に向かって内側に延在する構成も考えられる。これは、周面に作用する剥離力が、周囲を取り囲むように上昇することにより得られる。
【0031】
独立請求項として記載された本発明は、特に専らファンデルワールス力によって第2の基板に接合された第1の基板を、第2の基板から剥離するための、支持体保持装置の使用、又は装置、又は方法である。これは特に、まだ熱処理されていない、又はそのボンディング力がまだ1.0J/m2よりも小さいような、フュージョンボンディングされた基板に該当する。
【0032】
第1の基板及び/又は第2の基板としては特に、加工されたSiO2ウェハが使用される。
【0033】
従って本発明によれば、特にチェックステップを設けた場合(方法)、又はチェック装置を設けた場合(装置)の、既に少なくとも部分的にボンディングされた基板対の分離が考えられる。ボンディングされた基板対(第1及び第2の基板)のチェックが、品質基準が、規定された基準を相応に満たしていない又は完全には満たしていないことを示すと、本発明による剥離は行われる。品質基準とは、それだけではないが主として、物理的及び/又は化学的ボンディング強度、両基板の互いの位置調整精度、又は全面的なボンディングインターフェース、即ちボンディングされていない個所はないボンディングインターフェースを意味している。しかしながらここでは詳しく言及されていないが、別の形のいずれにせよ望ましくない状態又は過程が発見されると、かつ/又は生じると、必然的に本発明による剥離が行われる。従って第1の基板及び/又は第2の基板は、仕上げ作業のために供給することができ、今や場合によっては、第1の基板及び第2の基板の新たな組み合わせでもボンディングすることができる。従って、製造プロセスのその後の時点までの再加工及び/又は再磨きが本発明により可能である。再加工及び/又は再磨きにより、相応のエラーなしに基板の新たなボンディングが可能であり、製造プロセスの歩留まりが劇的に高まる。
【0034】
記載した特徴は、本発明による装置、本発明による方法、本発明による使用について同様に該当する。
【0035】
本発明のさらなる利点、特徴、詳細は、図示した好適な実施態様の説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】切断線A−Aを有する本発明による基板保持装置を示した平面図である。
図2図1のA−A線に沿った基板保持装置の横断面を示した図である。
図3図1の基板保持装置を下方から見た図である。
図4図2の細部Eを示した詳細図である。
図5a】第1の基板、接合層、第2の基板からなるスタックを示す側面図である。
図5b】第1の基板、接合層、第2の基板からなるスタックを示す平面図である。
図6】基板保持装置の第1の構成を示す図4と同様の詳細図である。
図7】基板保持装置の第2の構成を示す図4と同様の詳細図である。
図8】フィルムフレームに固定されたスタックを示す平面図である。
図9図9a〜図9dは、本発明による4つの方法ステップを有する第1の実施形態に基づき本発明の装置を示した図である。
図10図10a〜図10dは、4つの方法ステップを有する本発明による装置の第2の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面において同じ又は同じ機能を有する構成部分には同じ符号を付与する。
【0038】
図1には、半自動で使用することができる基板保持装置1が示されており、この装置では、第1の基板13(ここでは:より安定的な支持基板)の受容が手動で基板保持装置1によって行われる。基板保持装置1は、第1の基板13を、接合層12によって第1の基板13に接合された第2の基板11(ここでは:製品基板)から剥離するために用いられる。
【0039】
基板保持装置1は、周面区分26に配置された保持グリップ2と、この保持グリップ2の反対側で開かれたリング3とから成っている。リング3の開口部3oにはそれぞれ、リング3の互いに向かい合って位置する端部24,24´に、両端部24,24´間の間隔Aを調整するためのスペーサ手段25が設けられている。間隔Aを調節することにより、リング3の内径Diと外径Daとを調節することができる。スペーサ手段25はこの実施態様では、レバー4,5から成っており、レバー4は端部24に、レバー5は端部24´に取り付けられている。レバー4,5は調節エレメント14によって貫通されており、この調節エレメント14はこの場合、手動で操作することができる。本発明では、上記手動の運動機構を自動化されたものに置き換えることが考えられる。
【0040】
リング3への保持グリップ2の取り付けは、固定エレメント10、特にねじによって行われる。リング3の材料は本発明によれば、所定のジオメトリ(リング高さH、リング幅B、外径Da、内径Di)の場合、リング3がスペーサ手段25によって弾性的に曲げられるように、即ち、曲げ剛性により生じる力に抗して曲げられるように選択される。
【0041】
リング3は、リングオフセット部6から突出し、段部9を形成する周方向肩部7を有している。段部9はZ字状に延在しており、リング中心に向いた内側の角度45°<I<90°、特に<80°、好適には<70°を有しており、これにより、特に環状の傾斜壁17を形成しており、この傾斜壁17は鋭角的な内側縁部8で終わっている。内側縁部8は同時に、リングオフセット部6に対して平行に延在する、周方向肩部7の端面7sの構成部分である。端面7sはリングオフセット部6に対して等距離の間隔Mを有している。本発明によれば間隔Mは、第1の基板13の厚さdよりも、最大でも僅かにしか大きくないように、特に最大でも接合層12の厚さ分だけしか大きくないように選択されている(図7参照)。好適には間隔Mは図6に示したように、第1の基板13の厚さdよりも小さいように選択されている。好適には間隔Mは、第1の基板13の厚さdの少なくとも半分の大きさである。
【0042】
スペーサ手段25によって、内側縁部8によって形成される、内径Diと外径Daとの間に位置する、第1の基板13を収容するための直径Dkを拡大することができ、第1の基板13が、内側縁部8によって形成される開口(直径Dk)を通ってリングオフセット部6まで挿入可能となるまで拡大することができる。次いで、第1の基板13の周縁13uが周方向肩部7の斜面17に当接し、周方向肩部7によって位置固定されるようになるまで、スペーサ手段25によって直径Dkを再び減じる。これにより第1の基板13は、撓むことができる基板保持装置1によって保持される。保持はいわばクランプ及び/又は形状接続によって行われる。第1の基板13が斜面17にクランプされる際には、締め付けを制御するためのダイナモメータを、特に作動手段14に設けることができる。
【0043】
第2の基板11(ここでは:製品基板)は接合層12を介してのみ基板保持装置1に取り付けられている。基板保持装置1と第2の基板11との間に直接的なコンタクトはない。基板保持装置1と第2の基板11との間のコンタクトが阻止されると、第2の基板11は極めて丁寧に扱われ、汚染又は損傷は実際には排除されている。
【0044】
第2の基板11は、接合層12と第1の基板13と共に1つのスタック19(第1の基板・第2の基板複合体)を形成する。本発明は、第1の基板と第2の基板とから成りその間に接合層を有していない複合体のためにも適しており、ウェハが特にファンデルワールス力によって互いに付着する、特にいわゆるプレボンディングの際にも適している。
【0045】
鋭角的な内側縁部8は、図7で示した態様において、スタック19を基板保持装置1に位置固定する際に働くと同時に、内側縁部8の先端を、接合層12の周縁で接合層12内に進入させることにより、分離手段として、若しくは剥離の開始のためにも用いられる。
【0046】
特にフュージョンボンディングされたウェハにおいて、接合層12を有さない基板対で使用する場合、ここに記載した接合層12は、基板対の間の(ファンデルワールス力が作用する)境界面である。
【0047】
基板保持装置1は、第1の基板13を、リング開口3oを例外として、実質的に完全に取り囲んでいる。
【0048】
図8には、フィルムフレーム23上のスタック19が示されており、第2の基板11は、フィルムフレーム23に接合されたフィルム21に接合されている。スタック19、フィルムフレーム23、フィルム21は1つのフィルムフレーム複合体20を形成している。
【0049】
保持グリップ2を用いて、第2の基板11又はフィルムフレーム23が位置固定されていることにより、基板13を第2の基板11から引き剥がすことができる。この場合、引張力は、保持グリップ2が片側に配置されていることにより、第1の基板13に側方から、即ち、周面区分26に加えられる。内側縁部8が接合層12内に進入することにより誘導されて、第1の基板13とリング3とを(曲げ剛性により生じる力に抗して)変形させながら、第1の基板13は、周面区分26を起点として反対側に位置する面へとゆっくりと剥がされる。この場合、剥離前線は、第1の基板13の周面区分26から反対の側まで接合層12を通って移動する。従って、剥離前線に沿って、保持グリップ2からの剥離前線の距離と、保持グリップ2に作用する剥離力とに応じて規定されるトルクが作用する。
【0050】
オートメーション化された形では、これは、図9a〜図9dの第1の態様及び図10a〜図10dの第2の態様で示されており、これについては以下に詳しく説明する。
【0051】
両態様において共通しているのは、第1の基板13を保持するための上述した(第1の)基板保持装置1をオートメーション化に適した形で使用することである。
【0052】
本発明の重要な側面は、剥離開始時に、即ち剥離の誘導時に、特に接合層の周面若しくはその縁部の機械的剥離の実施により特に丁寧な処理を行うことにある。
【0053】
図9及び図10にはそれぞれ、ベース27と、安定的な基礎構造を設け、かつ本発明による装置の、以下に説明する別の構成部分を取り付けるための、前記ベース27上に設置されたフレーム22とが示されている。フレーム22及び/又はベース27には、特にフレーム22のカバー22dと、ベース27によって形成された底面27bとの間に、(第1の)基板保持装置1若しくは基板保持装置1の周面区分の並進的な(特に駆動される)運動のための駆動手段15´と、スタック19又はフィルムフレーム複合体20を収容する(第2の)基板保持装置18(収容部)の並進的な(特に駆動される)運動のための駆動手段15とが設けられている。駆動手段15´は、並進運動方向でフリーホイールを有していて良く、このフリーホイールは特に浮動ベアリングによって形成することができる。
【0054】
基板保持装置18は、図9及び図10の両実施例において、剥離方向Lで、即ち図平面において上方及び/又は下方に向かって並進運動可能である。基板保持装置18を駆動するための複数の駆動手段15は、この場合、特に同期的に移動することができ、好適には、中央の制御装置によって制御されるモータ、特にステップモータによって駆動される。
【0055】
図9の態様では、基板保持装置1のためには1つの駆動手段15´のみが、基板保持装置1の、周面区分26とは直径方向で反対側に設けられており、周面区分26には、ジョイントベアリング16が設けられているので、基板保持装置1はジョイントベアリング16を中心として旋回可能であるが、剥離方向Lでは位置固定されている。従って以下の方法の経過が生じる。
【0056】
図9aに示した方法ステップでは、フィルムフレーム複合体20に、特に第1の基板13に適合された基板保持装置1を、上方の駆動手段15´及びジョイントベアリング16に取り付ける。同時に、又は事前に、又は続いて、フィルムフレーム複合体20を基板保持装置18に、特に真空負荷により位置固定する。基板保持装置18を、駆動手段15によって剥離方向Lで動かすことができる。
【0057】
本発明によればこの場合、選択的に、基板保持装置1の周面に複数の、特に2つの駆動手段15´を一方の側に設け、複数の、特に2つのジョイントベアリング16を反対の側に設けることが考えられる。
【0058】
基板保持装置1はそれぞれリング周面3uに配置された保持手段28によって駆動手段15´とジョイントベアリング16とに位置固定可能である。基板保持装置18は、保持手段29によって駆動手段15に位置固定可能である。
【0059】
次いで基板保持装置18は、図9bに示された位置に(即ち、剥離方向Lで基板保持装置1に向かって)移動され、この場合、駆動手段15は、第1の基板13の上面13oがリングオフセット部6に当接するまで、基板保持装置18の同期的な並進運動を行わせる。制御は中央の制御装置を介して行われ、この場合、リングオフセット部6に第1の基板13が到達したことは、特に基板保持装置18に組み込まれたダイナモメータによって検知される。好適には基板保持装置18の周面には、360°/nの角度間隔で分配されたn個のロードセルが配置されている。
【0060】
第1の基板13を基板保持装置1に収容できるようにするためには、第1の基板13の外側輪郭が(特に直径Dtを備えた円形の外側輪郭が)基板保持装置1に収容可能であるように、事前に、リング3の内側縁部8に直径Dkを相応に適合させておく必要がある。内径Diは、第1の基板13を収容した場合、第1の基板13の直径Dtよりも小さいので、第1の基板13が滑脱することはない。図9bに示した位置に達するとすぐに、内径Diを、第1の基板13が基板保持装置1において位置固定されるまで(図6及び図7参照)、即ち、傾斜壁17に当接するまで減じることができる。
【0061】
図9bに示された位置に達するとすぐに、位置固定可能な上方の駆動手段15´は解除され、これにより駆動手段15´は剥離方向Lでの自由度を有し、基板保持装置1の、駆動手段15´に取り付けられた側は剥離方向Lで運動可能である。この構成では、駆動手段15´は駆動されないように形成されている。しかしながら本発明によれば、中央の制御装置によって運動を制御することも考えられ、これにより駆動手段15´は(好適な実施態様におけるもののように)受動的なものではなく、アクティブなものとして形成される。
【0062】
次いで、基板保持装置18の互いに向かい合って位置するように設けられた両駆動手段15は、基板保持装置18にそれぞれ、基板保持装置1から離れる方向に向けけられた駆動力F1(引張力)と、特に駆動力F1と同じである駆動力F2(引張力)とを、特に同期的に加えて、基板保持装置1に位置固定された第1の基板13を第2の基板11から剥離する。
【0063】
駆動力F1及びF2に抗して、特にこれらの力に平行に作用するように、ジョイントベアリング16には、対抗力G(又は複数のジョイントベアリング16が設けられている場合には複数の対抗力G)が作用する。
【0064】
これにより、内側縁部8によって誘発される剥離過程は継続され、この場合、基板保持装置1及び第1の基板13の曲がりを増大させながら、ジョイントベアリング16から基板保持装置1の反対の側まで剥離前線が進行する。剥離前線に沿って、駆動力F1及びF2と(接合層12の接合力によって生じる)対抗力Gとが均衡を保ちながら、トルクが、剥離前線に沿って無限小に分布している剥離モーメントK1〜Knとして作用する。
【0065】
図9cに示された位置では、第1の基板13が半分以上まで剥離され、この場合、剥離は、第1の基板13及び第1の基板保持装置1が(基板保持装置1及び第1の基板13の曲げ剛性に抗して)変形されることにより行われる。
【0066】
図9dに示された位置では、第1の基板13は完全に第2の基板11から剥離されている。接合層12は図では第2の基板11に付着しているが、部分的に又は完全に第1の基板13に付着させることもできる。
【0067】
剥離中、基板保持装置1と第1の基板13とは、(特に第1の基板13が第2の基板11から半分剥離した状態で測定して平均的に)1°<W<45°、特にW<35°、ここでは約6°の曲げ角度だけ曲げられている。
【0068】
図10a〜図10dに示した第2の態様では、駆動手段15´の代わりにジョイントベアリング16が基板保持装置1に設けられているので、基板保持装置1は前記周面区分26と、反対側に位置する別の周面区分26´とで(即ちジョイントベアリング16が基板保持装置1の保持手段28に取り付けられているところで)剥離方向Lで位置固定されている(本発明によればより多数のジョイントベアリング16を基板保持装置1の周囲に設けることができる)。これら周面区分26の間の区分で、基板保持装置1がその曲げ可能範囲で、曲げ剛性に抗して可動である。従って、図10cの方法ステップで駆動力がかけられると、ほぼ(波状に)同心的に接合層12の周面から始まる剥離前線が接合層12の中心へと進行する。この場合、基板保持装置1の内側縁部8による開始は、接合層12の初期接合力を克服するために重要である。
【0069】
剥離モーメントK1〜Knは、図10a〜図10dの実施態様では、剥離前線の進行時にそれぞれ、剥離前線に沿った(波状の)円形の区分に主に作用する。図9cでは曲げ角度Wは、ジョイントベアリングとは反対側の側縁に対して測定されたが、図10cでは曲げ角度W´は、周面の全ての側から剥離力Kが作用することにより、第1の基板13の中心から縁部に対して測定され、この場合、基板保持装置1と第1の基板13の材料及び寸法が同じであるならば、曲げ角度W´は、距離が短いほど相応により小さくなる。リング幅B及び/又はリング高さHが減少することにより、リング3の曲げ剛性を減じることができ、これにより曲げ角度W´は増大する。
【符号の説明】
【0070】
1 基板保持装置
2 保持グリップ
3 リング
3o 開口
3u リング周
4 レバー
5 レバー
6 リングオフセット部
7 周方向肩部
7s 端面
8 内側縁部
9 段部
10 固定手段
11 第2の基板
12 接合層
13 第1の基板
13o 表面
13u 周縁
14 作動エレメント
15,15´ 駆動手段
16 ジョイントベアリング
17 斜面
18 基板保持装置
19 スタック
20 フィルムフレーム複合体
21 フィルム
22 フレーム
22d カバー
23 フィルムフレーム
24,24´ 端部
25 スペーサ手段
26 周面区分
27 ベース
27b 底面
28 保持手段
29 保持手段
A 間隔
B リング幅
Di 内径
Da 外径
Dk 直径
H リング高さ
M 間隔
L 剥離方向
I 内側角度
d 厚さ
F1,F2,Fn 駆動力(引張力)
G 対抗力
K1,K2,Kn 剥離モーメント
W,W´ 曲げ角度
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10