【文献】
CAI XU-WEI、外9名,Baseline Plasma Proteomic Analysis to Identify Biomarkers That Predict Radiation-Induced Lung Toxicity in Patients Receiving Radiation for Non-Small Cell Lung Cancer,Journal of Thoracic Oncology,2011年 6月,Vol.6,No.6,Page.1073-1078
【文献】
SKVORTSOVA IRA、外10名,Intracellular Signaling Pathways Regulating Radioresistance of Human Prostate Carcinoma Cells,Proteomics,2008年11月,Vol.8,No.21,Page.4521-4533
【文献】
STENMARK MATTHEW H、外8名,Combining Physical and Biologic Parameters to Predict Radiation-Induced Lung Toxicity in Patients with Non-Small-Cell Lung Cancer Treated with Definitive Radiation Therapy,International Journal of Radiation Oncology,2012年10月,Vol.84,No.2,Pgae.e217-e222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの化合物の存在またはレベルが、免疫検出に基づく方法、ウエスタンブロットに基づく方法、質量分析に基づく方法、クロマトグラフィーに基づく方法、フローサイトメロリーに基づく方法、および核酸の存在またはレベルの特異的検出のための方法からなる群において選択される少なくとも1つの方法によって判定される、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
対象が放射線治療による処置に対して感受性の疾患の影響を受けており、前記疾患が、癌、バセドウ病、下垂体腺腫、髄膜腫、および距骨痛からなる群において選択される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシン1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸分子、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の特異的検出のための少なくとも1つの試薬、ならびに細胞アポトーシスの検出のための試薬を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法に適したキット。
ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシン1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも2つの化合物の検出のための少なくとも複数の試薬、ならびに細胞アポトーシスの検出のための試薬を含む、請求項16記載のキット。
【背景技術】
【0002】
放射線治療の成功は主に、総投与線量に依る。電離放射線による損傷に対する組織の感受性は個体で広く異なる。毎年、約400万人が世界中で放射線治療によって処置されている。現在の推計では、放射線治療を受けている患者の5〜10%が過敏性による有害反応を示すと示唆されている。電離放射線に過敏な患者は、重要な放射線誘発性の副作用を発症しうる。これらの副作用の予測は、現在、依然として不可能であり、リスクのために投与される線量を制限し、患者に対する治療効果を低下させてしまっている。放射線感受性を評価するための検査室手法は、これまで、面倒過ぎて大集団では検査できなかった。
【0003】
しかしながらこれまでに、放射線毒性を予測するためのいくつかの試験が開発されたが、それらのどれも臨床ルーチンにおいて使用することができない。
【0004】
クローン原性試験では、照射後のリンパ球の増殖能の喪失を評価する(West et al., 1995)。その他の試験は、照射後の小核の検出に基づく(Floyd and Cassoni, 1994)。しかしながら、これらの試験のルーチン実施は、限られており、それらのどれも臨床的に用いられていない。
【0005】
放射線誘導リンパ球アポトーシス(RILA)アッセイ法では、フローサイトメトリーによって照射(0.5〜8 Gy)後のCD4およびCD8 Tリンパ球におけるアポトーシスを測定する(Ozsahin et al., 1997, Azria et al., 2009)。患者399人のコホートについて結果を確認した(Ozsahin et al., 2005)。この指標は、アポトーシスに付随する特異的クロマチン変化による核DNA蛍光の減少に基づいており、過敏症患者を同定することができる。RILAアッセイ法の陽性予測値は低く、集団の患者の80%が、いずれの遅発性の毒性も呈しない弱いアポトーシスレベルで検出される。RILAアッセイ法は、0.70の感受性および0.50を下回る特異性を有する(Ozsahin et al., 2005)。
【0006】
いくつかの遺伝的ばらつき、例えば単一ヌクレオチド多型(SNP)、コピー数多型(CNV)または後成的修飾と、放射線毒性との間の相関関係が研究されている(Azria et al., 2008, Azria et al., 2012)。酸化的ストレスの間のまたは炎症中のDNA修復と関係があるいくつかの遺伝子が同定されており、早発性または遅発性の毒性と関連付けられている。しかしながら、これまで、遺伝子型と放射線毒性との間に関連性のないことや、放射線毒性の強力な遺伝子マーカーのないことが示されている。
【0007】
プロテオーム研究のなかには、放射線感受性マーカーの判定に暫定的に取り組んだものもある。WO 2013/001507には、放射線治療に供された患者に対する処置計画を立てる段階または適応する段階を含む方法が記述されており、前記方法は、放射線毒性を示す患者の一連の血清ポリペプチドに基づいている。α1抗トリプシン、APOA1および補体C3は、電離放射線に曝露されたマウスモデルの血清において上方制御されていることが見出された(Guipaud et al., 2007)。Caiら(2011)は、非小細胞肺癌に向けて放射線を受けている患者のプロテオーム分析について開示している。補体C3、C4b結合タンパク質α鎖およびビトロネクチンが、放射線による肺毒性悪性度2超の患者の小コホートにおいて上方制御されていることも見出された(Cai et al., 2010; Cai et al., 2011)。Skvortsovaら(2008)は、前立腺癌細胞株の、および放射線耐性前立腺癌細胞株のプロテオームプロファイルについて開示している。Stenmarkら(2011)は、放射線治療を受けている患者の循環血中サイトカインレベルについて開示している。最後に、Ohらは、オリジナルのコンピュータによる解析を提唱し、肺癌患者における放射線誘発性の肺炎症のリスクの増大と潜在的に関連するものとしてα-2-マクログロブリンを同定したが、この結果を独立したコホートにおいて検証していない(Oh et al., 2011)。
【0008】
放射線感受性に対する既存の予測試験のどれも、2つの主な欠点: i) 十分な陽性予測値も陰性予測値のいずれも有しない、感受性および/または特異性の欠如、ii) 技術的な実現可能性の欠如、ならびに長時間遅延の要件、高度な訓練を受けた施術者、その高い費用および生体サンプルの侵襲的収集の要件のため、臨床ルーチンにおいて使用することができない。
【0009】
それゆえ、対象の放射線感受性の高い陽性予測値および陰性予測値を示す簡単、迅速かつ確実な方法が依然として必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、例証としてのみ与えられ、かつ本発明の意図する範囲を限定するものではない、本明細書において示される詳細な説明から、および添付図面からさらに十分に理解されるようになるであろう。
【0016】
本発明はまず第一に、以下の段階を含む、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法に関する:
a) 細胞を含む生体サンプルの第1の画分に対して外因的ストレスを誘導する段階、
b) 段階a)の画分において少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを判定する段階、
c) 前記外因的ストレスに供されていない前記生体サンプルの第2の画分において前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを判定する段階、
d)前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルの判定の前記第1の画分における結果と前記第2の画分における結果を比較する段階、かつ前記第1の画分と前記第2の画分との間で差次的に発現される少なくとも1つの化合物を選択する段階、
e) 前記対象由来の細胞を含む生体試験サンプルに対して外因的ストレスを誘導する段階、
f) 段階d)において選択された前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを段階e)の試験サンプルにおいて判定する段階、
g) 段階f)における前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルの判定の結果を、生体参照サンプルにおける同化合物の存在またはレベルと比較する段階、ならびに
h) 段階g)の比較から前記対象の放射線感受性を判定する段階。
【0017】
「放射線感受性」という用語は、致死性または亜致死性のいずれかの、有害な電離放射線による損傷に対する細胞、組織、器官および/または生物に固有の感受性に関する。本発明による方法において、電離放射線への曝露は、治療用放射線電離の間に行われ、「放射線治療(radiotherapy)」または「放射線治療(radiation therapy)」とも呼ばれる。患者は臨床実践にしたがって標的細胞を制御または殺処理するために電離放射線の医学的使用に供されており、照射線量に特有なことは広く記述されており、医師および放射線治療士に周知である。
【0018】
本発明はまず第一に、対象に固有の放射線感受性の判定および/または予測のための方法に関する。
【0019】
組織における電離の影響の基礎となる機構には、特にDNAおよび原形質膜を標的化し、遊離基の形成および二本鎖DNA切断をもたらす、分子損傷、ならびに細胞防御、アポトーシス、ストレス応答および修復プロセスのような、多数の細胞機構が関与する(Lacombe et al., 2013)。
【0020】
本発明による方法において、「外因的ストレス」は、電離放射線または放射線類似物質により、細胞、組織および/または器官に対して誘導されるストレスである。本発明による方法において、「細胞を含む生体サンプル」は、ヒト身体から単離され、外因的ストレスは、細胞を含む生体サンプルに対してエクスビボで誘導される。
【0021】
本発明による方法の特定の局面において、「細胞を含む生体サンプル」は、あらゆる種類の細胞を含み、ここで前記細胞は好ましくは、血球、より好ましくは白血球、さらにより好ましくはリンパ球、およびさらにより好ましくはCD4+ Tリンパ球またはCD8+ Tリンパ球からなる群において選択される。
【0022】
本発明による方法の特定の局面において、段階a)、b)、c)およびd)で、細胞を含む生体サンプルは、放射線感受性を判定することが望まれる対象とは異なる、対象から、または対象の群から単離される。本発明による方法のこの特定の局面によれば、細胞を含む生体サンプルは、ヒトの身体から単離される。本発明による方法の特定の局面において、段階a)、b)、c)およびd)で、細胞を含む生体サンプルは、放射線感受性を判定することが望まれる対象よりも、同じ病気に罹患している対象の群から単離される。
【0023】
本発明による方法において、段階b)、c)、d)、f)およびg)のいずれか1つによる化合物は、好ましくは細胞内化合物である。本発明の特定の態様において、化合物はタンパク質であり、前記タンパク質はそのアミノ酸配列によって定義される。さらに特定の態様において、本発明は、前記タンパク質のまたはその特異的断片の存在またはレベルの検出を含む。「その特異的断片」とは、例えば前駆体の細胞内切断から生じる断片、タンパク質がプレプロタンパク質のおよびプレタンパク質の断片であることが意図される。特定の態様において、「特異的断片」は、抗体のような、タンパク質のリガンドによって特異的に認識されるタンパク質の断片またはエピトープである。別の特定の態様において、本発明は、前記タンパク質をコードする核酸分子の存在またはレベルの検出を含み、前記分子は、好ましくはmRNAまたはcDNA分子であり、かつそのヌクレオチド配列によって定義される。
【0024】
化合物の「存在」の判定は、サンプル中のその有無の指標につながる。化合物の「レベル」の判定は、サンプル中のその量の推定につながりうる。サンプル中の化合物のレベルは、参照サンプルと比較して、例えば比率もしくは割合として表されうる。また、前記レベルは前記判定に使われる方法によって、シグナルの強度または局在として表されうる。前記レベルはまた、サンプル中の前記化合物の濃度として表されうる。選択的に、サンプル中の前記化合物の濃度は、前記サンプル中の関連化合物の全濃度の規準化後に表される。本発明による方法において、生体サンプルにおける第1の画分中の化合物のレベルを前記生体サンプルの第2の画分中の同化合物のレベルと比較し、ここで前記比較は場合により、第1および第2の画分中の前記化合物の比率の推定として、または画分の一方における前記化合物のレベルの割合として表される。好ましい態様において、各画分中の前記化合物の定量的レベルを、当業者によって知られる方法により、統計的に比較して、前記2つの画分内の化合物の差次的発現を示す。
【0025】
本発明による方法において、前記化合物のレベルは、前記対象由来の試験サンプルにおいて(段階f)で)判定される。特定の態様において、前記試験サンプルは、差次的に発現された化合物を選択するために(段階d)で)用いられる生体サンプルよりも、同じ性質の生体サンプルである。例として、段階d)およびf)のサンプルは、同じ方法によって回収および調製されうる。別の特定の態様において、段階f)の試験サンプルおよび段階d)のサンプルは、異なる方法によって調製される生体サンプルである。
【0026】
本発明による方法の態様において、参照サンプルは、任意の外因的ストレスの誘導前に同じ対象から調製されたサンプルであり、好ましくは、外因的ストレスに供されていない前記対象由来の生体試験サンプルの画分である。別の態様において、参照サンプルは、例えば臨床検出により、放射線感受性が判定される異なる対象由来のサンプルである。
【0027】
特定の態様において、本発明は、以下の段階を含む、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法に関する:
a) 前記対象由来の細胞を含む生体試験サンプルに対して外因的ストレスを誘導する段階、
b) ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシン1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択されるタンパク質である、少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを、段階a)のサンプルにおいて判定する段階、
c) 前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを参照サンプルにおける同化合物の存在またはレベルと比較する段階、ならびに
d) 段階c)の比較から、前記対象の放射線感受性を判定する段階。
【0028】
本発明による方法の態様において、外因的ストレスに供された、または供されなかった生体サンプルにおいて差次的に発現される少なくとも1つの化合物は、代謝、エネルギー生産、アポトーシス、カルシウム結合タンパク質、DNA損傷修復を含む機構に関与する、ならびに細胞内活性酸素種(ROS)のレベルの調節に関与するタンパク質の中から選択される。別の特定の態様において、外因的ストレスに供された、または供されなかったサンプルにおいて差次的に発現される少なくとも1つの化合物は、ミトコンドリアタンパク質の中から選択される。特定の態様において、細胞内活性酸素種(ROS)のレベルの調節に関与するタンパク質は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、APEX、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)および熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)からなる群において選択される。
【0029】
特定の態様によれば、本発明は、ストレスに対する細胞応答に関与することが知られているタンパク質からなる群において選択されるタンパク質の少なくとも1つのレベルの生体試験サンプルにおける判定を含む。さらに特定の態様において、ストレスに対する細胞応答に関与するタンパク質は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)および熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)からなる群において選択される。
【0030】
ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (NADP+) (アミノ酸配列: SEQ ID NO: 1、mRNA配列: SEQ ID NO: 6、GeneID: 3418; UniProt ID: P48735)は、IDH2、ICD-M、IDP、NADP+特異的ICDH、オキサロコハク酸デカルボキシラーゼとしても定義されており、または遺伝子名IDH2によって設計される。これは、N末端ミトコンドリアシグナルペプチドを含み、ミトコンドリアに局在する。これは、複数の組織でのTCA回路の調節において重要な役割を果たし、イソクエン酸のα-ケトグルタル酸へのおよびNADP+のNADPHへの可逆的変換を触媒している。このように、IDH2はミトコンドリア抗酸化経路の極めて重要な構成成分である。というのは、NADPHが、ROS損傷の抑止に関与する主要な抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)の再生に必要だからである(Lee et al., 2004)。IDH2は、IDH2を脱アセチル化し、かくして活性化しうるSIRT3により調節され、NADPHレベルの増大および還元型グルタチオンの酸化型グルタチオンに対する比率の増大をミトコンドリアにおいて引き起こす(Someya et al., 2010)。IDH2はまた、電離放射線によって誘導されるアポトーシスの調節において重要な役割を果たしうる(Lee et al., 2007)。
【0031】
APEX1 (アミノ酸配列: SEQ ID NO: 2、mRNA配列: SEQ ID NO: 7、GeneID: 328; UniProt ID: P27695)は、APEXヌクレアーゼ(APEN)、脱プリン-脱ピリミジンエンドヌクレアーゼ1 (APエンドヌクレアーゼ1, APE-1)、REF-1、レドックス因子-1と名付けられており、または遺伝子名APEX1、APE、APE1、APEX、APX、HAP1もしくはREF1によって設計される。APEX1は真核細胞における主な脱プリン/脱ピリミジンエンドヌクレアーゼであり、これは一本鎖切断を含めて、全てのDNA損傷(ウラシル、アルキル化および酸化、ならびに脱塩基部位)のDNA塩基除去修復経路において極めて重要な役割を果たし、また、普遍的転写因子(すなわち、AP-1、Egr-1、NF-κB、p53およびHIF)ならびに組織特異的転写因子(すなわち、PEBP-2、Pax-5およびPax-8、ならびにTTF-1)のいずれかによって直接的に調節される遺伝子発現を調節することにより同時転写活性を有する。加えて、APEX1は、膜非貪食性NAD(P)Hオキシダーゼ系の調節サブユニットRac1に及ぼすその阻害作用を通じて活性酸素種(ROS)生成を阻害することにより、細胞内レドックス状態を制御する(Tell et al., 2009)。これらの活性は、2つの機能的に異なるドメインの中に位置付けられる: N末端はレドックス活性に主に向けられるが、C末端はDNAの脱塩基部位に対して酵素活性を及ぼす。いくつかの研究によって、APEX1の機能的多型が放射線誘発性の予測バイオマーカーとして働きうることが実証された。Yinらは、APEX1の多型が根治的放射線治療で処置された非小細胞肺癌を有する患者において放射線肺臓炎のリスクを予測しうることを明らかにした(Yin et al., 2011)。Chang-Claudeらは、APE1
148Glu対立遺伝子が放射線治療後の急性副作用の発生を防ぎうることを実証した(Chang-Claude et al., 2005)。
【0032】
熱ショック同族71 kDaタンパク質(アミノ酸配列: SEQ ID NO: 3、mRNA配列: SEQ ID NO: 8、GeneID: 3312; UniProt ID: P11142)は、熱ショック同族70 kDaタンパク質8と名付けられており、または遺伝子名HSPA8、HSC70、HSP73もしくはHSPA10によって設計される。熱ショック同族71 kDaタンパク質は、熱ショックタンパク質70 (HSP70)ファミリーに属する構成的に発現される分子シャペロンである。HSC70は、HSP70と構造的および機能的類似性のいくつかを共有するだけでなく、HSP70および他の熱ショックファミリーメンバーと比べて異なる特性を有しもする。HSC70は、コシャペロンの協調によってその全機能を果たす。それは、同様に多くの他の分子と相互作用し、さまざまな細胞機能を調節する(Liu et al., 2012)。それはまた、さまざまな疾患に関与しており、診断用のバイオマーカー、ならびにさまざまな疾患を処置するための新規の薬物の設計、発見および開発のための潜在的な治療標的になりうる(Liu et al., 2012)。HSC70の過剰発現が内因性および外因性の両方の生成ROSに対する防御効果を与えることが、研究によって実証されている(Chong et al., 1998)。HSC70は、Noxタンパク質のユビキチン化および分解を促進し、それゆえ、ROS生成を低減する(Chen et al., 2012)。
【0033】
別の特定の態様において、本発明は、少なくとも1つの化合物のレベルの検出に関し、前記化合物は、アデニル酸キナーゼ(AK2)およびアネキシンA1 (ANX1)からなる群において選択されるタンパク質である。
【0034】
アデニル酸キナーゼ2 (アミノ酸配列: SEQ ID NO: 4、mRNA配列: SEQ ID NO: 9、GeneID: 204; UniProt ID: P54819)は、AK 2、ATP-AMPトランスホスホリラーゼ2と名付けられており、または遺伝子名AK2もしくはADK2によって設計される。アデニル酸キナーゼ2は、アデニンヌクレオチドレベルを制御するミトコンドリア膜間腔に局在している。AK2は、可逆反応ATP + AMP = 2ADPを触媒する、細菌からヒトにまで存在する、古くからのタンパク質ファミリーの一員である。AKの機能は、アデノシンヌクレオチドの一定濃度および固定比率の維持、ならびに維持および細胞増殖に不可欠であるヌクレオチドセンシングおよびシグナル伝達を通じた細胞エネルギー状態のモニタリングであることが古くから記述されている。AK2はまた、小胞体ストレス応答(UPR)に必要とされることが、最近の研究によって示唆されている(Burkat et al., 2011)。小胞体(ER)恒常性の変化は、ER中に誤って折り畳まれた/折り畳まれていないタンパク質の蓄積を引き起こすので、ER恒常性を維持するため、細胞はUPRを進化させてきた。UPRは、代謝的、酸化的ストレスに応答する不可欠な適応性細胞内シグナル伝達経路、および炎症応答経路である。
【0035】
ANX1 (アミノ酸配列: SEQ ID NO: 5、mRNA配列: SEQ ID NO: 10、GeneID: 301; UniProt ID: P04083)は、アネキシンI、アネキシン-1、カルパクチンII、カルパクチン-2、クロモビンディン-9、リポコルチンI、ホスホリパーゼA2阻害タンパク質、p35と名付けられており、または遺伝子名ANXA1、ANX1またはLPC1によって設計されている。ANX1は1970年代後半に最初に記述された。この37 kDaのカルシウムおよびリン脂質結合タンパク質は、グルココルチコイド誘導性のエイコサノイド合成およびPLA2の強力な阻害剤である。この興味深い分子の生物学的活性における最近の関心から、種々の炎症経路における、細胞増殖機序に関する、細胞死シグナル伝達の調節における、アポトーシスを起こしている(apoptosing)細胞の貪食性排除における、および最も重要なことには発癌のプロセスにおけるアネキシン1の重要な機能的属性が解明された(Lim et al., 2007)。
【0036】
表1は、同定されたタンパク質およびその参照を要約している。
【0038】
本出願において、タンパク質は、特定のアミノ酸配列により、および好ましくはmRNAまたはcDNA核酸配列である、対応する特異的な核酸配列により定義される。本発明は、SEQ ID NO: 1〜SEQ ID NO: 5からなる群において選択される配列を有するタンパク質の任意の天然変種、またはSEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列を有する核酸分子の変種を含めて、タンパク質または核酸の検出を含む。本発明はまた、SEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列の断片に対応する配列を有する核酸分子の特異的断片の検出を含み、ここで前記核酸断片は前記核酸分子のコード断片に対応し、または前記核酸断片は、SEQ ID NO: 1〜SEQ ID NO: 5からなる群において選択される配列を有するタンパク質の特異的断片をコードする。
【0039】
本発明による方法は、SEQ ID NO: 1〜SEQ ID NO: 5からなる群において選択される配列と少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%およびさらにより好ましくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含むまたは有するタンパク質の変種の検出を含む。本発明は、SEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列と少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%およびさらにより好ましくは98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むまたは有するmRNAの変種の検出を含む。本明細書において用いられる場合、「同一性」という用語は本明細書において、2つのアミノ酸配列、または核酸配列が比較ウィンドウにわたって同一である(すなわちアミノ酸ごとに、または核酸ごとに)ことを意味する。
【0040】
「配列同一性の割合」という用語は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較し、同一のアミノ酸塩基が両方の配列に現れて、適合した位置の数を生ずる位置の数を判定し、適合した位置の数を比較ウィンドウ(すなわち、ウィンドウサイズ)内の位置の総数で除し、結果に100を乗して配列同一性の割合を得ることにより計算される。アミノ酸配列の配列同一性の割合は、BLASTソフトウェアをデフォルトまたはユーザー定義のパラメータで用いて計算することもできる。ポリペプチドに適用される場合、実質的な同一性という用語は、2つのペプチド配列が、最適に整列された場合に、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性またはそれ以上の配列同一性(例えば、99%の配列同一性)を共有することを意味する。本明細書において用いられる場合、「誘導体」または「に由来する配列」とは、少なくとも80%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性およびさらにより好ましくは少なくとも95%の同一性またはそれ以上の同一性、例えば99%の同一性を有するアミノ酸配列をいう。
【0041】
好ましい態様によれば、本発明は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0042】
別の態様によれば、本発明は、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0043】
別の態様によれば、本発明は、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0044】
別の態様によれば、本発明は、アデニル酸キナーゼ(AK2)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0046】
別の好ましい態様によれば、本発明は、以下の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む:
- ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物、ならびに
- DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物。
【0047】
別の好ましい態様によれば、本発明は、以下の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む:
- DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物、ならびに
- ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物。
【0048】
別の好ましい態様によれば、本発明は、以下の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む:
- 熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物、ならびに
- ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物。
【0049】
別の好ましい態様によれば、本発明は、以下の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む:
- アデニル酸キナーゼ(AK2)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物、ならびに
- ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)および熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物。
【0050】
別の好ましい態様によれば、本発明は、以下の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む:
- アネキシンA1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物、ならびに
- ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも1つの化合物。
【0051】
特定の態様によれば、本発明による方法は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択されるタンパク質である、少なくとも2つの化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0052】
特定の態様によれば、本発明による方法は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択されるタンパク質である、少なくとも3つの化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0053】
特定の態様によれば、本発明による方法は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択されるタンパク質である、少なくとも4つの化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0054】
特定の態様によれば、本発明による方法は、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシンA1 (ANX1)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群のタンパク質である、5つの化合物の存在またはレベルの生体サンプルにおける判定を含む。
【0055】
別の態様において、本発明は、以下の段階を含む、対象の放射線感受性の判定のための方法に関する:
a) 前記対象由来のリンパ球を含む生体試験サンプルに対して外因的ストレスを誘導する段階、
b) 前記生体試験サンプルにおいて誘導されたアポトーシスのレベルを判定する段階、
c) 同じ対象由来の生体試験サンプルに対して外因的ストレスを誘導する段階、ならびにミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、アネキシン1 (ANX1)、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを判定する段階、
d) 前記少なくとも1つの化合物の存在またはレベルを参照サンプルにおける同化合物の存在またはレベルと比較する段階、ならびに
e) 段階b)の誘導されたアポトーシスのレベルおよび段階d)の比較から、前記対象の放射線感受性を判定する段階。
【0056】
この特定の態様によれば、本発明による方法は、外因的ストレスにより誘導されたリンパ球のアポトーシスの検出および本発明の方法による対象の放射線感受性の判定を含む。本発明のさらに特定の態様において、リンパ球のアポトーシスは電離放射線によって誘導される。さらにいっそう特定の態様において、放射線誘発性のリンパ球のアポトーシスの検出は、Ozsahin et al. (2005)において記述されているようなRILAアッセイ法によって行われる。別の特定の態様において、アポトーシスは、ADN断片化の検出(Cometアッセイ法、TUNELアッセイ法)およびミトコンドリア経路の検出(カスパーゼ3の検出、チトクロームCの検出)において選択される方法によって検出される。
【0057】
特定の態様において、リンパ球のアポトーシスの検出および本発明の方法による対象の放射線感受性の判定は、同じ対象由来の異なる生体サンプルに対して行われる。別の特定の態様において、リンパ球のアポトーシスの検出および本発明の方法による対象の放射線感受性の判定は、同じ性質の生体サンプル、例えば血液由来の白血球抽出物に対して行われる。さらにいっそう特定の態様において、本発明による方法およびRILAアッセイ法は、対象由来のリンパ球を含む同じ生体サンプルの異なる画分に対して行われる。
【0058】
別の特定の態様において、本発明は、以下を含む、対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法に関する:
- 本発明による対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法、ならびに
- 前記少なくとも1つの化合物が前記生体試験サンプルに存在し、かつ前記参照サンプルに存在しない場合、および/または前記生体試験サンプルにおける前記少なくとも1つの化合物のレベルが前記参照サンプルにおける同化合物のレベルを上回っている場合に、前記対象の遅発性の放射線誘発毒性に対する感受性を予測する段階。
【0059】
本発明は、対象の組織および/または細胞の放射線感受性または放射線感度を判定するための方法に関し、ここで電離放射線に供される組織および/または細胞は、照射によって特異的に標的化される組織および/または細胞、また、放射線治療によって特異的に標的化されないが、しかし照射を受けた容積の組織および/または細胞に含まれる正常なまたは「健常な」組織および/または細胞を含む。特定の態様において、本発明は、患者の健常組織の放射線感受性または放射線感度を判定するための方法に関し、ここで「健常組織(または細胞)」は、放射線治療によって特異的に標的化されない組織(または細胞)と定義される。「健常組織」は、標的組織に隣接したまたは標的組織周囲の組織または細胞に関する。「遅発性の副作用」または「長期にわたる副作用」または「遅発性の毒性」は、照射から3〜6ヶ月後に初めて現れうる。症状は、多くの場合には線維症、組織壊死、萎縮、血管損傷および非常に重篤な症例では、放射線誘発癌を含めて、多重であり、長い期間をかけて、放射線治療後20〜34年でさえ、悪化を示す(Lacombe et al., 2013)。特定の局面において、遅発性の毒性は、放射線誘発性の肺炎症である。
【0060】
特定の態様において、本発明による方法は、遅発性の放射線過感受性によって影響されやすい患者の検出を可能にする。遅発性の毒性症状の重症度は、悪性度によって分類される。特定の局面において、本発明による方法は、悪性度2およびそれ以上(悪性度3およびそれ以上)の遅発性の放射線感受性の検出を可能にする。
【0061】
特定の態様によれば、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法であって、以下を含む前記方法に関する:
- IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、その特異的断片、それをコードする核酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の存在またはレベルの判定、
- 先行技術において記述されているような放射線感受性の少なくとも別の予測方法。
その他の予測方法はおそらく、RILAアッセイ法またはSNP検出アッセイ法であるが、これらに限定されることはない。
【0062】
特定の態様によれば、本発明は、以下を含む、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法に関する:
- IDH2、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせの存在またはレベルの判定、
- 放射線感受性の少なくとも別の予測方法、好ましくはRILAアッセイ法またはSNP検出アッセイ法(Azria et al., 2008)。
【0063】
別の特定の態様によれば、本発明は、以下を含む、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法に関する:
- IDH2、その特異的断片、それをコードする核酸、およびそれらの組み合わせの存在またはレベルの判定、
- APEX1、HSC70、AK2およびANX1、その特異的断片、それをコードする核酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の存在またはレベルの判定、
- 放射線感受性の少なくとも別の予測方法、好ましくはRILAアッセイ法またはSNP検出アッセイ法。
【0064】
別の特定の態様によれば、本発明は、以下を含む、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための方法に関する:
- 1) IDH2、その特異的断片またはそれをコードする核酸、2) APEX1、その特異的断片またはそれをコードする核酸、3) HSC70、その特異的断片またはそれをコードする核酸、4) AK2、その特異的断片またはそれをコードする核酸、5) ANX1、その特異的断片またはそれをコードする核酸の存在またはレベルの判定、および
- 放射線感受性の少なくとも別の予測方法、好ましくはRILAアッセイ法またはSNP検出アッセイ法。
【0065】
特定の態様において、本発明による放射線感受性の判定のための方法は、誘導リンパ球アポトーシス試験の結果が知れている対象の生体サンプルに対して行われる。いっそう特定の態様において、本発明による放射線感受性の判定のための方法は、RILAアッセイ法の結果が低レベルの誘導アポトーシス、および好ましくは16%を下回る誘導アポトーシスを示唆している対象の生体サンプルに対して行われる。
【0066】
特定の態様において、本発明は、外因的ストレスが、照射および少なくとも1つの放射線類似物質との接触の中から選択される少なくとも1つの方法によって誘導される方法に関する。第一の特定の態様において、外因的ストレスは照射によって生み出される。別の特定の態様において、外因的ストレスは少なくとも1つの放射線類似物質との接触によって生み出される。別の特定の態様において、外因的ストレスは照射によって、かつ少なくとも1つの放射線類似物質との接触によって生み出される。
【0067】
いっそう特定の態様において、外因的ストレスは、照射線量が約0.1〜約16 Gy、好ましくは約2〜約14 Gy、より好ましくは約4 Gyを上回る、好ましくは約4〜約12 Gy、好ましくは約6〜約10 Gy、およびより好ましくは約8 Gyを含む、照射によって誘導される。「約」という用語は、投与された線量の+/-10%の、考えられるバラツキを意味する。本発明による方法において、生体サンプルは8 GyのX線を照射される。
【0068】
特定の態様において、サンプルは1 Gy/分の線量率(dose debit)で8 Gyを浴びる。照射に用いられるパラメータは、指示的であり、当業者によってその実践にしたがいおよび直線加速に用いられる装置にしたがい適応されうる。特定の態様において、照射は15 mm厚のポリスチレン6ウェル細胞培養プレートを通じて行われる。コリメータのところで25×25 cmの照射場および145 cmの線源表面間距離とし、6 MVのビームをサンプルに照射する。一例として、8 Gyの線量を送達するため、「GE Saturne 43」直線加速器を用いる場合、1520 MU (モニタ単位)の線量が加速器によって送達される必要があり、「Varian」直線加速器を用いる場合、1600 MUの線量が加速器によって送達される必要がある。
【0069】
別の特定の態様において、外因的ストレスは、サンプルを少なくとも1つの放射線類似物質と接触させることによって誘導される。「放射線類似物質」は、電離放射線によって引き起こされるものに類似した、細胞に対する物質誘導性の作用であり、放射線類似物質は、細胞に対する電離放射線の作用の少なくとも一部分を「模倣している」と考えられうる。非限定的な例として、放射線類似物質は一本鎖および/もしくは二本鎖DNA切断を引き起こすことがあり、または、細胞内での遊離基の存在をもたらすことがある。特定の態様において、サンプルは単一の放射線類似物質と接触される。別の特定の態様において、サンプルは2つまたはそれ以上の放射線類似物質と接触され、前記物質は同時にまたは連続的に用いられる。本発明による方法に使用可能な放射線類似物質は、アフィジコリン、ブレオマイシン、エンジイン抗生物質、および過酸化水素からなる群において選択されうる。ブレオマイシンは、一本鎖または二本鎖DNA切断を引き起こすことが知られているが、過酸化水素は遊離基を誘導することが知られている。本発明による方法は、特定の放射線類似物質の使用に限定されることはなく、当業者は、本発明による特定の方法を実践するために適応された物質を容易に選択するであろう。特定の態様によれば、放射線類似物質との接触はKennedy et al. (2006)、Adema et al. (2003)、Cloos J et al. (1999)またはTedeschi et al. (2004)において記述されているような条件にしたがって行われる。特定の態様において、本発明による方法におけるリンパ球アポトーシスは、本出願において記述されているような放射線類似物質との接触によって誘導される。
【0070】
別の特定の態様において、本発明による方法は、生体サンプルの調製を含み、前記サンプルは、
全血、細胞を含有する
全血抽出物、白血球を含有する
全血抽出物、リンパ球を含有する
全血抽出物、ならびにCD4+および/またはCD8+ Tリンパ球を含有する
全血抽出物からなる群において選択される。
【0071】
細胞を含有する
全血抽出物は、生物学的試験用に血液サンプルを操作する当技術分野の当業者に周知の方法にしたがって調製される。そのような方法には、例えば、Ficoll勾配上での血液成分の分離、StemCellのRosetteSep(商標)を用いたまたはフローサイトメーターを用いた迅速な血球分離法が含まれうる。
【0072】
本発明による方法は、生体サンプルの調製および前記サンプルの画分に対しての外因的ストレスの誘導を含む。
【0073】
いっそう特定の態様において、本発明は、生体サンプルが以下の方法によって調製される方法に関する:
a) リンパ球を
全血抽出物から単離する方法、
b) 段階a)の単離されたリンパ球に照射する方法、および
c) タンパク質を段階b)のリンパ球から抽出する方法。
【0074】
いっそう特定の態様において、本発明は、少なくとも1つの化合物の存在またはレベルが、免疫検出に基づく方法、ウエスタンブロットに基づく方法、クロマトグラフィー、好ましくは液体クロマトグラフィーに基づく方法、質量分析に基づく方法、フローサイトメロリーに基づく方法、および特異的な核酸検出のための方法からなる群において選択される少なくとも1つの方法によって判定される方法に関する。
【0075】
これらの方法は、化合物、特にタンパク質を検出かつ定量化する当技術分野の当業者に周知であり、ここでタンパク質の発現の存在およびレベルは、タンパク質特異的な核酸、特にmRNAを検出することにより、好ましくは定量化することにより核酸レベルで直接判定されることができ、または分析されることができる。
【0076】
第1の段階において、タンパク質および/または核酸が、生体サンプルから単離される。本発明による方法は、周知の生化学法を用いた、タンパク質抽出、精製および特徴付けを含みうる。
【0077】
質量分析に基づくタンパク質の特異的検出のための方法は、選択的反応モニタリング(SRM)および多重反応モニタリング(MRM)を含むが、これらに限定されることはない。フローサイトメトリーに基づく方法は、フローサイトメトリーをマイクロスフェアおよびレーザーと組み合わせている、Luminex(登録商標)XMAPのような多重アッセイ法を含むが、これに限定されることはない。
【0078】
核酸の特異的検出のための方法は、DNAおよびRNA、特にmRNAを分析するための方法を伴う。分子生物学において古くから用いられる方法は、核酸を分析する当技術分野の当業者に周知であり、文献(Maniatis T. et al., Edition 1999)のなかで十分に記述されている。SEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む核酸分子は、好ましくは、遺伝暗号の縮重との関連において、同じアミノ酸配列をコードする配列、または強力なストリンジェンシー条件の下でSEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列と特異的にハイブリダイズできる相補配列である。強力なストリンジェンシー条件は、2つの相補的な核酸分子または断片間のハイブリダイゼーションの維持を可能とするように、温度およびイオン力の条件が選択されることを意味する。1つの態様において、本発明による方法は、SEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10のmRNA分子と特異的にハイブリダイズできる短いオリゴヌクレオチド配列の使用を含む。
【0079】
特定の態様において、本発明による方法は、生体サンプルからのRNAの抽出を含む。Trizol試薬による抽出の後、ゲノム規模での転写応答(transcriptional responses genome wide)を、グローバル・ランオンシークエンシング(global run on sequencing)によって行う。RNA配列決定(RNAseq)を通じたトランスクリプトーム分析によって、転写産物の定量化が可能になる。RNAseqはSNPsだけでなく選択的スプライスによる転写産物の検出を可能にする。さらに、転写調節されるコード遺伝子に加えて、長い非コードRNAまたはマイクロRNAを生み出すものなどの非コード遺伝子を追跡することができる。
【0080】
特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、およびアネキシン1 (ANX1)からなる群において選択されるタンパク質の少なくとも2つの存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。
【0081】
別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)およびDNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)の存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)および熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)の存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)およびアデニル酸キナーゼ(AK2)の存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)およびアネキシン1 (ANX1)の存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。
【0082】
別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、およびアネキシン1 (ANX1)からなる群において選択されるタンパク質の少なくとも3つの存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。
【0083】
別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象において遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するための方法であって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、およびアネキシン1 (ANX1)からなる群由来の5つのタンパク質の存在またはレベルの検出を含む、前記方法に関する。
【0084】
本発明によれば、本方法は、放射線治療によって処置されやすい疾患の影響を受けている対象の放射線感受性の検出を可能にする。特定の態様において、疾患は、癌、バセドウ病(またはグレーブス病)、甲状腺機能亢進症、下垂体腺腫(pituitary adenome)(または腺腫(adenoma))、髄膜腫(meningiome)(または髄膜腫(meningioma))および距骨痛(talalgy)(または距骨痛(talalgia))からなる非限定的な群において選択される。
【0085】
特定の態様において、本発明による方法は、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肺癌、頭頸部癌を含むが、これらに限定されない、癌の影響を受けている対象の放射線感受性を判定することを可能にする。
【0086】
特定の局面によれば、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、およびアネキシン1 (ANX1)、またはそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0087】
別の態様によれば、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象の遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)の使用ならびにAPEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0088】
いっそう特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはそれらの組み合わせからなる群において選択される少なくとも2つの化合物の使用に関する。さらにいっそう特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象における遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも3つの化合物の使用に関する。別の特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象における遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1からなる群において選択される少なくとも4つの化合物の使用に関する。さらにいっそう特定の態様において、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象における遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1の組み合わせの使用に関する。
【0089】
別の態様によれば、本発明は、本発明による方法での、対象の放射線感受性のインビトロ判定のための、または対象における遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するためのマーカーとしての、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはそれらの組み合わせからなる群において選択される、少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0090】
別の特定の態様によれば、本発明は、対象の放射線感受性のインビトロ判定のために、または対象における遅発性の放射線誘発毒性の感受性を予測するために使用可能なキットであって、ミトコンドリアイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ(AK2)、およびアネキシン1 (ANX1)からなる群において選択される少なくとも1つの化合物の特異的検出のための少なくとも1つの試薬、ならびに細胞アポトーシスの誘導および/または検出のための試薬を含む前記キットに関する。細胞アポトーシスの検出のための作用物質は、当業者によりそのような方法において用いられる任意の作用物質でありうる。細胞アポトーシスの検出のために使用可能な方法および作用物質の例は、ADN断片化の検出(Cometアッセイ法、TUNELアッセイ法)、ミトコンドリア経路の検出(カスパーゼ3の検出、チトクロームCの検出)、アネキシンA5である。
【0091】
特定の態様において、本発明によるキット内のIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1からなる群において選択される化合物の少なくとも1つの特異的検出のための試薬は、前記タンパク質、その天然変種などの、またはその特異的断片の1つに特異的な抗体またはリガンドである。別の特定の態様において、本発明によるキット内のIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1からなる群において選択される化合物の少なくとも1つの特異的検出のための試薬は、IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1からなる群において選択されるタンパク質、またはその断片をコードする核酸分子に特異的に結合できる核酸分子である。
【0092】
より具体的な態様において、本発明によるキット内の少なくともIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1の特異的検出のための試薬は、SEQ ID NO: 6〜SEQ ID NO: 10からなる群において選択される配列を含む核酸分子、またはIDH2、APEX1、HSC70、AK2もしくはANX1の特異的断片をコードするその断片と、ストリンジェントな条件においてハイブリダイズする核酸である。
【0093】
より具体的な態様において、本発明は、少なくともIDH2の特異的検出のための試薬、ならびに少なくともAPEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはその特異的断片の特異的検出のための試薬を含むキットに関する。
【0094】
いっそう特定の態様において、本発明は、少なくともIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはその特異的断片からなる群において選択される化合物の少なくとも2つの特異的検出のための試薬を含むキットに関する。
【0095】
いっそう特定の態様において、本発明は、少なくともIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはその特異的断片からなる群において選択される化合物の少なくとも3つの、それぞれの、特異的検出のための試薬を含むキットに関する。
【0096】
いっそう特定の態様において、本発明は、少なくともIDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはその特異的断片からなる群において選択される化合物の少なくとも4つの、それぞれの、特異的検出のための試薬を含むキットに関する。
【0097】
さらにいっそう特定の態様において、本発明は、少なくとも以下の化合物: IDH2、APEX1、HSC70、AK2およびANX1、またはその特異的断片の、それぞれの、特異的検出のための試薬を含むキットに関する。
【0098】
特別の定めのない限り、以下の実施例は、例証のみの目的で本明細書において提供されており、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1: リンパ球アポトーシスアッセイ法
本発明者らはフローサイトメトリーによって、照射(0.5〜8 Gy)後のCD4およびCD8 Tリンパ球におけるアポトーシスを測定するRILA (放射線誘導リンパ球アポトーシス)と呼ばれる、迅速かつ再現可能なアッセイ法を以前に開発した。この尺度は、アポトーシスに付随する特異的なクロマチン変化による核DNA蛍光の減少に基づいている。RILAを、保存外科後の早期乳癌での第II相無作為化試験における主な層別因子として用い、主要エンドポイントを乳房線維症とし、患者150人で術後放射線治療をレトロゾールと同時または順次のいずれかで比較した(Azria et a.., 2010)。16%超のRILAを有する患者は放射線誘発性の遅発作用を示すことが見出されず、この試験の高い陰性適中率が示唆された。悪性度2またはもっと悪い皮下線維症を有する全ての患者が、16%未満のRILAを有し、当試験の適中率を確認するものであった。しかしながら、16%未満のRILAを有する患者のなかで、20%の者が遅発性の放射線毒性に罹患し、80%の者はそうでなかったことから、RILAに対する低い陽性適中率が示唆された。RILAアッセイ法の感度は0.70であるが、この試験の特異性は0.50を下回る。乳癌の処置を受け、かつ低いRILA値を有する患者4人を、上記の前向き研究から選択した。患者2人は、重篤な(悪性度2よりも高い)線維症毒性を発症した(患者番号1および番号2)が、放射線治療の処置の終了から少なくとも4年後に患者は毒性を有していなかった(患者番号3および番号4)。
【0101】
実施例2: 遅発誘導による細胞毒性の予測マーカーの同定
予測マーカーを同定するためのプロトコルを
図1において体系化する。先に述べた患者4人から、全血40 mlをヘパリン化試験管に集めた。Ficoll勾配(GE Healthcare)に先立ち、rosette (RosetteSep(登録商標), StemCell Technology)を製造元の使用説明書にしたがって用い陰性選択によって、全血からTリンパ球を単離した。その後、10% FCSを有するRPMI培地中、37℃および5% CO2で24時間、リンパ球を培養した。リンパ球の半分にその後、インビトロにおいて8 Gyで照射を行った。照射リンパ球および非照射リンパ球を次に、37℃および5% CO2で48時間、再び培養した。このインキュベーション時間の後、各患者由来のリンパ球を次いで、細胞内分画(ProteoExtract(登録商標) Subcellular Proteome Extraction Kit (カタログ番号539790), Merckmillipore)に供し、細胞質画分、膜画分および核画分を単離することを可能にした。これらの画分の各々を次いで、8-plex iTRAQ標識化を用い定量的プロテオミクスワークフローを用いることによって分析した。分析の解像度を最適化するためのいくつかの分画(オフゲル分画、引き続きナノ液体クロマトグラフィー)の後、タンデム質量分析(4800 plus MALDI TOF/TOF)によってタンパク質を同定した。
【0102】
手短に言えば、照射リンパ球および非照射リンパ球からの、各患者由来のタンパク質50 μgを還元し、アルキル化し、トリプシン処理した後にiTRAQタグで標識した。画分(細胞質、膜および核)ごとに、照射リンパ球および非照射リンパ球を有する画分を含む、患者ごとの8つの標識物(labelling)をプールし、液体培地型Offgel中での等電点焦点化法(Agilent 3100 Offgel分画装置)によって分画した。12個の亜画分がそれゆえ、得られた。これらの亜画分の各々を次に、スポッティングオートマット(spotting automat)と連結している逆相高性能液体ナノクロマトグラフィー(HPLC) (Ultimate 3000 LC Systems, Dionex)によって分離する。12個のOffgel亜画分を次に、各々につき600スポットで、MALDIプレートに置いた。HPLCを二つ組で行った。画分(細胞質、膜および核)ごとに8枚のMALDIプレートを用い、計24枚のプレートとなった。次に、質量分析による同定を、システムMALDI TOF/TOF(登録商標) 4800 Proteomics Analyzer d'AbSciexにて行った。1500レーザーインパルジョンを用い、ポジティブモードでm/z 700〜1400スペクトルを得た。シグナル/ノイズ比が50を上回るかまたは50に等しい、10種の最も豊富なペプチドの前駆イオンを、m/z 300〜1500の3500レーザーインパルジョンを用いたMS/MS分析のために選択した。ProteinPilot(登録商標) 2.0ソフトウェアおよびParagon法(Ab Sciex, ソフトウェア改訂番号50861)を用いて、MS/MSスペクトルをEuropean Institute for BioinformaticsからのUniprotタンパク質データベース(uniprot_sprot300108)と比較する。高い信頼区間(95%超)を有する独特なペプチドに対応するタンパク質を、明確に同定されたと見なす。
【0103】
結果:
遅発性の毒性を発症した患者2人といずれの毒性作用も有しない患者2人との間で0 Gyおよび8 Gyにて差次的に発現されるタンパク質間の比率の比較を行った。1300種超の総タンパク質が高い信頼度で同定された(95%, 1つの独特なペプチド)。0 Gyで、135種のタンパク質が、重篤な放射線誘発毒性を有するまたは有しない患者の間で差次的に発現された(p<0.05)。照射Tリンパ球(8 Gy)において、107種のタンパク質が、重篤な放射線誘発毒性を有するまたは有しない患者の間で差次的に発現された(p<0.05)。検証段階のために選択されたタンパク質は、8 Gyで差次的に発現され、最も高いタンパク質発現比(>1.5)を有し、その上、0 Gyの対照において発現比の差異を示さなかったものである。
【0104】
5種のタンパク質: イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2 (NADP+) (IDH2)、DNA-(脱プリンまたは脱ピリミジン部位)リアーゼ(APEX1)、熱ショック同族タンパク質71 kDa (HSC70)、アデニル酸キナーゼ2 (AK2)およびアネキシン1 (ANX1)を連続的検証のために選択した。これらのタンパク質は、代謝およびエネルギー生産、アポトーシス、カルシウム結合タンパク質、ならびにDNA損傷修復を含むいくつかの機構に関与する。
【0105】
実施例3: 放射線治療後のさらに多数の患者でのバイオマーカーの差次的発現の確認
これらの5種のタンパク質をさらに患者18人の集団についてウエスタンブロット分析により検証したところ、患者5人が悪性度2以上の乳房線維症を発症し、患者13人がごく弱い毒性を発症したか、または毒性を発症していなかった。これらの患者10人の全員が低いRILA値を呈した。血液サンプルを集め、照射後のインキュベーションまで、前の実施例において記述されているように処理した。リンパ球をその後、RIPA緩衝液に溶解した。タンパク質を次いで定量化し、その後、ウエスタンブロットのためポリアクリルアミドゲル12%上に各10 μgをのせた。4℃で300 mAにて1時間、PVDF膜への移動および転写の後、膜を次に、PBS-Tween 0.05% - ミルク5%中で2時間飽和させ、関心対象のタンパク質に対する抗体を、同じ飽和用緩衝液中にて撹拌下、4℃で終夜インキュベートした。PBS-Tween 0.05%緩衝液中で5回連続5分間の洗浄の後、二次抗体を次いで、PBS-Tween 0.05%緩衝液中にて室温で1時間加えた。PBS-Tween 0.05%緩衝液中でもう5回、5分間の洗浄の後、ECLによって露出を行った。
【0106】
結果:
これらの5種のタンパク質の全てが、遅発性の毒性のない患者と比べて、重篤な毒性に罹患している患者由来の照射Tリンパ球において過剰発現されたことが結果から明らかである(
図2)。定量的発現分析から、これらの差異の統計的有意性が確認された(表2および
図3)。
【0107】
【表2】
【0108】
結論として、同定された5種のバイオマーカーは患者を識別可能とし、低いRILAで、放射線感度に影響されやすいものとして最初に同定された。それゆえ、本試験は、RILAの結果を確認するだけでなく、さらに高い識別能も実証している。
【0109】
実施例4: 患者由来サンプルのプロテオーム分析
サンプル収集:
好ましくは放射線治療を始める前に、各患者からヘパリン添加全血21 mlを集める。
【0110】
Tリンパ球分離:
速やかに、Tリンパ球を、製造元の推奨にしたがってRosette四量体複合体システム(RosetteSep, StemCell Technologies)を用い陰性選択によって精製する。このプロトコルによって、患者1人あたり細胞750〜1500万個の回収が可能になる。
【0111】
Tリンパ球初代細胞培養:
精製されたTリンパ球を24時間、10% FCSを補充したRPMI 1640培地(Gibco BRL Invitrogen)を含有するディッシュ2枚の中で培養する。
【0112】
Tリンパ球細胞培養照射:
患者ごとに、細胞培養ディッシュ1枚に8 Gyで照射を行い、これを48時間インキュベートする。他方の細胞培養ディッシュに偽照射を行い、これを対照(0 Gy)と見なす。
【0113】
ウエスタンブロット分析:
Tリンパ球タンパク質を、細胞3分の2からRIPA緩衝液によって抽出する(3分の1は補足的研究用に貯蔵することができる)。BCAプロテインアッセイキット(ThermoFisherScientific, Rockford, IL)を製造元のプロトコルにしたがって用い細胞溶解物を定量化する。タンパク質10マイクログラムを次いで、12% SDS-PAGE上に負荷し、12% SDS-PAGE上で分離し、その後、PVDF膜に転写する。膜への非特異的結合を、5%無脂肪乳により室温で1時間ブロッキングする。膜を、以下のように希釈された一次抗体とともに4℃で終夜インキュベートする: AK2 (1/100, sc-28786; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz CA)、アネキシン-1 (1/100, sc-11387; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz CA)、HSC70 (1/200, sc-7298; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz CA)、IDH2 (1/100, sc-134923; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz CA)およびRef-1 (1/200, sc-5572; Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz CA)。膜を次いで、二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG (H+L), G21234; AK2、アネキシン-1、IDH2、Ref-1の場合Invitrogenおよびヤギ抗マウスIgG (H+L), 115-035-146; HSC70の場合Jackson ImmunoResearch)とともに室温で1時間インキュベートする。SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrateキット(Pierce)を使い増強化学発光検出システムにより、免疫ブロットを発色させる。ImageJソフトウェア(National Institutes of Health, Bethesda, MD)を用いて画像分析を行う。
【0114】
5種の候補タンパク質に対するELISAアッセイ法の開発:
信頼性の高い、迅速かつ簡便なアッセイ法を提案するために、ELISA戦略を開発する。抗原ペプチドに対してAbnovaによりタンパク質ごとに2種の抗体を産生する。前記抗体は既に、ELISAの検査を受けている。抗体産生用に使われる抗原を用い、96ウェルの形式でサンドイッチELISAを樹立する。後者は定量標準物質としても役立つ。タンパク質ごとに、一方の抗体が標的を捕捉するように働き、ウェルをコーティングするために用いられる。他方の抗体は、PierceのEZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kitを用いてビオチンに連結されている。適切な基質緩衝液とともにストレプトアビジン-HRPを検出のために用いる。5種の候補タンパク質の濃度をこの試験により、上記で得た細胞抽出物において測定する。
【0115】
タンパク質分析のためのプロトコルは
図4に表示されており、以下の段階: 同定されたタンパク質マーカーの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも、2つ、3つ、4つまたは5つの組み合わせに関する、ウエスタンブロット分析、ELISAおよびRNA配列決定の少なくとも1つ、好ましくは全ての評価を含む。遅発性の毒性を呈している患者および適合ドナーからの、上記で得た細胞の3分の1 (患者1人あたり細胞250〜500万個)は、Trizol試薬でRNAを抽出するのに役立つ。ゲノム規模での転写応答を測定するのに最良の実験は、グローバル・ランオンシークエンシングである。RNA配列決定(RNAseq)を通じたトランスクリプトーム分析を、マイクロアレイである代替試験により、たとえこの最後の技法の感度が低くても、行うことができる。重要なことには、RNAseqはSNPsだけでなく選択的スプライスによる転写産物の検出を可能にする。
【0116】
実施例5: 同定されたタンパク質の予測的役割の確認
標準ガイドラインとしての限局性乳癌に対する乳房温存手術および根治目的の補助放射線治療の後に悪性度2以上の皮下線維症という観点から放射線による遅発性の副作用における5種のタンパク質(AK2、IDH2、ANX1、APEX1およびHSC70)の予測的役割を確認すること。全ての血液サンプルを放射線治療前に採取する。電離照射によるAK2、IDH2、ANX1、APEX1およびHSC70の転写の誘導を研究する。TgFb1での誘導後のAK2、IDH2、ANX1、APEX1およびHSC70の発現を線維芽細胞においておよびヒト平滑間質筋繊維(smooth interstitial muscle fiber)において研究する(
図5Aおよび5B)。
【0117】
書誌参照