【文献】
S. Mi and N. Lu,Impact of substitution on the reorganization energy of bis-triarylamine derivatives,Journal of Molecular Structure: THEOCHEM,2009年10月 9日,Vol. 940,p.1-5
【文献】
C. Liu, et al.,Selective C4-F bond cleavage of pentafluorobenzene: synthesis of N-tetrafluoroarylated heterocyclic compounds,Tetrahedron Letters,2013年 6月21日,Vol. 54,p.4649-4652
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて
1Hであってもよいし、一部または全部が
2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0015】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の発光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
【化7】
一般式(1)において、R
1、R
3およびR
5がフッ素原子を表すか、R
1、R
2、R
4およびR
5がフッ素原子を表し、残りのR
1〜R
6が各々独立に下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基を表す。すなわち、R
1、R
3およびR
5がフッ素原子であるとき、残りのR
2、R
4およびR
6は各々独立に下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基である。また、R
1、R
2、R
4およびR
5がフッ素原子であるとき、残りのR
3、R
6は各々独立に下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基である。
残りのR
1〜R
6は、すべてが一般式(2)〜(6)のいずれか1つの一般式で表されるものであってもよいし、互いに異なる一般式で表されるものであってもよい。
残りのR
1〜R
6のすべてが一般式(2)〜(6)のいずれか1つの一般式で表される場合は、残りのR
1〜R
6のすべてが同じ構造を有する基であることが好ましい。残りのR
1〜R
6のすべてが同じ構造を有する基であるとき、一般式(1)で表される化合物は回転対称構造を有することになる。残りのR
1〜R
6のすべてが同じ構造を有する化合物は、例えばドーパントとして用いる場合などに有用である。
一方、残りのR
1〜R
6の一部または全部が異なる構造である化合物も有用である。そのような化合物は、例えばその化合物のみからなる層(ニート膜)を形成して発光層として用いる場合などに有用である。
【0017】
一般式(2)〜(6)において、L
14〜L
18は単結合、または置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。L
14〜L
18がアリーレン基であるとき、アリーレン基としては炭素数6〜18のアリーレン基であることが好ましい。炭素数6〜18のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、トリフェニレニレン基等を挙げることができ、より好ましい連結基はフェニレン基であり、さらに好ましい連結基は1,4−フェニレン基である。アリーレン基が置換基を有するときの置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR
31〜R
38等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、L
14〜L
18は単結合であることも好ましい。
R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。一般式(2)〜(6)のそれぞれにおいて、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78のうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数1〜20のジアルキル置換アミノ基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0019】
R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、R
35とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
3aとR
3b、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
45とR
46、R
46とR
47、R
47とR
48、R
51とR
52、R
52とR
53、R
53とR
54、R
55とR
56、R
56とR
57、R
57とR
58、R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
65とR
66、R
66とR
67、R
67とR
68、R
71とR
72、R
72とR
73、R
73とR
74、R
75とR
76、R
76とR
77、R
77とR
78は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
【0020】
R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78は、各々独立に上記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基であることも好ましい。また、R
3aおよびR
3bは置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。一般式(2)〜(6)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(2)であればR
32〜R
37、R
3a、R
3bのいずれかであることが好ましく、R
3aおよびR
3bの少なくともいずれかであることがより好ましい。一般式(3)であればR
42〜R
47のいずれかであることが好ましく、一般式(4)であればR
52〜R
57のいずれかであることが好ましく、一般式(5)であればR
62〜R
67のいずれかであることが好ましく、一般式(6)であればR
72〜R
77のいずれかであることが好ましい。
【0021】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例として、R
1、R
3およびR
5がフッ素原子であるか、R
1、R
2、R
4およびR
5がフッ素原子であり、残りのR
1〜R
6のすべてが一般式(2)または(4)で表される基である化合物を挙げることができる。
【0022】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化9】
【0023】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0024】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR
2、R
3、R
4、R
6のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしを反応させることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0025】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(7)または(8)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化10】
【0026】
一般式(7)または(8)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L
1およびL
2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X
11−L
11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X
11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L
11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(7)または(8)において、R
101、R
102、R
103およびR
104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
L
1およびL
2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR
2、R
3、R
4、R
6のいずれか、一般式(2)の構造のR
31〜R
38、R
3a、R
3bのいずれか、一般式(3)の構造のR
41〜R
48、R
4aのいずれか、一般式(4)の構造のR
51〜R
58のいずれか、一般式(5)の構造のR
61〜R
68のいずれか、一般式(6)の構造のR
71〜R
78のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0027】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(9)〜(12)で表される構造を挙げることができる。
【化11】
【0028】
これらの式(9)〜(12)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR
2、R
3、R
4、R
6のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化12】
【0029】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0030】
[一般式(1’)で表される化合物]
下記一般式(1’)で表される化合物は新規化合物である。
【化13】
【0031】
一般式(1’)において、R
1’、R
3’およびR
5’がフッ素原子を表すか、R
1’、R
2’、R
4’およびR
5’がフッ素原子を表し、残りのR
1’〜R
6’が各々独立に下記一般式(2’)〜(6’)のいずれかで表される基を表す。
【0032】
【化14-1】
【化14-2】
一般式(2’)〜(6’)において、L
14’〜L
18’は単結合、または置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、*は一般式(1)におけるベンゼン環への結合部位を表す。R
31’〜R
38’、R
3a’、R
3b’、R
41’〜R
48’、R
4a’、R
51’〜R
58’、R
61’〜R
68’、R
71’〜R
78’は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
31’とR
32’、R
32’とR
33’、R
33’とR
34’、R
35’とR
36’、R
36’とR
37’、R
37’とR
38’、R
3a’とR
3b’、R
41’とR
42’、R
42’とR
43’、R
43’とR
44’、R
45’とR
46’、R
46’とR
47’、R
47’とR
48’、R
51’とR
52’、R
52’とR
53’、R
53’とR
54’、R
55’とR
56’、R
56’とR
57’、R
57’とR
58’、R
61’とR
62’、R
62’とR
63’、R
63’とR
64’、R
65’とR
66’、R
66’とR
67’、R
67’とR
68’、R
71’とR
72’、R
72’とR
73’、R
73’とR
74’、R
75’とR
76’、R
76’とR
77’、R
77’とR
78’はそれぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(1’)におけるR
1'〜R
6'と、一般式(2’)〜(6’)におけるL
14’〜L
18’、*、
R
31’〜R
38’、R
3a’、R
3b’、R
41’〜R
48’、R
4a’、R
51’〜R
58’、R
61’〜R
68’、R
71’〜R
78’の説明と好ましい範囲については、一般式(1)で表される化合物の説明を参照することができる。
【0033】
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、一般式(1’)のR
1’、R
2’、R
4’、R
5’がフッ素原子であり、R
3’、R
6’が一般式(2’)で表される基であり、L
16’が1,4−フェニレン基である化合物は、以下の2つの化合物を反応させることにより合成することが可能である。
【化15】
【0034】
上記の反応式におけるR
31’〜R
38’、R
3a、R
3bの説明については、一般式(1’)における対応する記載を参照することができる。Xはフッ素原子以外のハロゲン原子を表し、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、臭素原子が好ましい。
上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1’)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0035】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0036】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0037】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層として成膜したとき、その膜形成面に対して良好な配向性を示す傾向がある。化合物の膜形成面に対する配向性が優れていると、化合物が発した光の進行方向が揃えられ、発光層からの光取り出し効率を向上させやすいという利点がある。
【0038】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図1に示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0039】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0040】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0041】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0042】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0043】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0044】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0045】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0046】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0047】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0048】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0049】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0050】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0051】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
【0052】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0058】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0060】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0067】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0069】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0071】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0075】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0077】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0079】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0080】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0081】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ハイパフォーマンス紫外可視近赤外分光光度計(パーキンエルマー社製:Lambda950)、蛍光分光光度計(堀場製作所社製:FluoroMax−4)、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製:C11347)、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。また、分子配向の測定は、エリプソメーター(J.A.ウーラム社製
M-2000)を用いて行った。光学モデルの構築、光学モデルと実測値の平均二乗誤差を最小にするためのフィッティング等は、エリプソメトリーデータ解析用ソフトであるWASE32(J.A.ウーラム社製)を用いて行った。配向性の度合いを評価するためのオーダーパラメーターSは、次式で定義した。
【数1】
θは基板の法線方向と分子がなす角度の平均値、k
o,k
eはそれぞれ基板に対して水平方向および法線方向に遷移双極子を持つ分子の消衰係数である。
【0082】
(合成例1) 化合物1の合成
【化35】
【0083】
1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(0.240g,0.78mmol)、2−(4−(9H−フェノキサジン−9−イル)フェニル−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(0.05g,0.13mmol)、テトラヒドロフラン(17ml)、Pd(PPh
3)
4(0.08g,0.07mmol)、2MのK
2CO
3aq(5mL)を50ml三口フラスコに入れて脱気した。脱気した溶液を、窒素気流下で66℃に昇温し、さらに2−(4−(9H−フェノキサジン−9−イル)フェニル−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(550g,1.4mmol)をテトラヒドロフラン5mlに溶かした溶液を10時間かけて滴下し、温度を66℃に保ちつつ40時間撹拌した。この反応溶液を室温に戻した後、エバポレーターを用いて反応溶液からテトラヒドロフランを除去し、沈殿物を得た。この沈殿物をジクロロメタン150mlに加えて溶液とした。この溶液を、水150mlと飽和食塩水150mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、エバポレートを用いて溶媒を除去した。得られた残渣をジクロロメタン/n−ヘキサンの混合溶媒で再結晶させ、白色固体(化合物1)として1,4−ビス(4−(9H−フェノキサジン−9−イル)フェニル−1−イル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンを収量90mg(0.14mmol)、収率18%で得た。
1H−NMR(500MHz,DMSO−d6):δ=5.96(m,4H;ArH),6.71−6.80(m,12H;ArH),7.68(dd,J
ortho=6.6Hz,J
meta=1.9Hz,4H;Ar
H),7.92(d,J=8.2Hz,4H;ArH).
19F−NMR(500MHz,DMSO−d6):δ=−143.8.
【0084】
(合成例2) 化合物2の合成
【化36】
【0085】
1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(0.308g,1mmol)、2−(4−(9H−10,10−ジメチルアクリジン−9−イル)フェニル−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(0.10g,0.2mmol)、テトラヒドロフラン(50ml)、Pd(PPh
3)
4(0.20g,0.17mmol)、2MのK
2CO
3aq(12mL)を200ml三口フラスコに入れて脱気した。脱気した溶液を、窒素気流下で66℃に昇温し、さらに1,4−{4−(9H−10,10−ジメチルアクリダン−9−イル)フェニル−1−イル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(755g,1.7mmol)をテトラヒドロフラン10mlに溶かした溶液を8時間かけて滴下し、温度を66℃に保ちつつ40時間撹拌した。この反応溶液を室温に戻した後、エバポレーターを用いて反応溶液からテトラヒドロフランを除去し、沈殿物を得た。この沈殿物をジクロロメタン150mlに加えて溶液とした。この溶液を、水150mlと飽和食塩水150mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、エバポレートを用いて溶媒を除去した。得られた残渣をジクロロメタン/n−ヘキサンの混合溶媒で再結晶させ、白色固体(化合物2)として1,4−ビス(4−(9H−10,10−ジメチルアクリジン−9−イル)フェニル−1−イル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンを収量332mg(46mmol)、収率46%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=1.72(s,12H;C
H3),6.37(dd,J
ortho=8.2Hz,J
meta=1.2Hz,4H;Ar
H),6.96(dt,J
ortho=7.4Hz,J
meta=1.2Hz,4H;Ar
H),7.04(dt,J
ortho=7.4Hz,J
meta=1.5Hz,4H;Ar
H),7.49(dd,J
ortho=7.8Hz,J
meta=1.5Hz,4H;Ar
H),7.52(td,J
ortho=8.5Hz,J
meta=1.9Hz,4H;Ar
H),7.83(d,J=8.2Hz,4H;Ar
H).
19F−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=-143.57.Anal.Calcd for C
48H
36F
4N
2:C,80.43;H,5.06;N,3.91%.Found:C,80.54;H,5.06;N,3.95%.
【0086】
(比較合成例1) 比較化合物1の合成
【化37】
【0087】
1,3,5−トリブロモ−2,4,6−トリフルオロベンゼン(0.738g,2mmol)、2−{4−(9H−カルバゾリル−9−イル)フェニル−1−イル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(0.52g,1.4mmol)、テトラヒドロフラン(55ml)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4:0.30g,0.26mmol)、および2MのK
2CO
3aq(15mL)を200ml三口フラスコに入れて脱気した。脱気した溶液を、窒素気流下で66℃に昇温し、さらに1,4−{4−(9H−カルバゾリル−9−イル)フェニル−1−イル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1.70g,4.6mmol)をテトラヒドロフラン20mlに溶かした溶液を12時間かけて滴下し、温度を66℃に保ちつつ6日間撹拌した。この反応溶液を室温に戻した後、エバポレーターを用いて反応溶液からテトラヒドロフランを除去し、沈殿物を得た。この沈殿物をろ取した後、水で洗浄し、真空乾燥した。得られた固体物を、加熱したジクロロメタン200mlに加えて溶液とし、この溶液をろ過した後濃縮した。得られた濃縮物にn−ヘキサンを加えて白色粉末を析出させ、析出した白色粉末(中間体1)をろ取した。以上の工程により、比較化合物1の1,3,5−(4−(9H−カルバゾリル−9−イル)フェニル−1−イル)−2,4,6−トリフルオロベンゼンを収量683mg(0.80mmol)、収率40%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=7.33(t,J=7.4Hz,6H;Ar
H),7.46(dt,J
ortho=7.6Hz,J
meta=1.0Hz,6H;Ar
H),7.55(d,J=8.2Hz,6H;Ar
H),7.76(d,J=8.4Hz,6H;Ar
H),7.84(d,J=8.2Hz,6H;Ar
H),8.17(d,J=7.8Hz,6H;Ar
H).
19F−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=-115.32.
【0088】
(比較合成例2) 比較化合物2の合成
1,3,5−トリブロモ−2,4,6−トリフルオロベンゼンの代わりに1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン用いる以外は比較合成例1の比較化合物1の合成工程と同様にして比較化合物2を合成した。
【化38】
【0089】
(実施例1) 化合物1を用いた溶液の作製と評価
Ar雰囲気のグローブボックス中で化合物1のトルエン溶液を調製した。337nm励起光による発光スペクトルを測定した。測定された発光スペクトルを
図2に示す。化合物1のトルエン溶液の最大発光波長は505nmであり、フォトルミネッセンス量子効率は、空気中で17.2%、脱気後で45.4%であった。
また、化合物1のトルエン溶液について過渡減衰曲線を測定したところ、空気中での発光寿命τは8.22nsであった。脱気後のトルエン溶液の過渡減衰曲線では2種類の蛍光(即時蛍光、遅延蛍光)を観測することができ、即時蛍光の発光寿命τ
1が19.6ns、遅延蛍光の発光寿命τ
2が8.52μsであった。
【0090】
(実施例2) 化合物2を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに化合物2を用いた点を変更して、化合物2のトルエン溶液を調製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度4.0x10
-4Pa以下の条件にて化合物2の薄膜を50nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
これとは別に、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度4.0x10
-4Pa以下の条件にて化合物2とmCPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物2の濃度が6.0重量%である薄膜を50nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
また、これとは別に、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度4.0x10
-4Pa以下の条件にて化合物2とDPEPOとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物2の濃度が6.0重量%である薄膜を
50nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物2のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子についてエリプソメトリー分光法により配向性を測定したところ、化合物2の膜形成面に対する分子の配向角は16.0°であった。
また、これらの化合物2を用いたサンプルについて、337nm励起光による発光スペクトルを測定した。トルエン溶液の吸収発光スペクトルを
図3に示す。化合物2のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子の吸収スペクトルを
図4に示し、発光スペクトルを
図5に示す。化合物2とmCPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図6に示す。化合物2とDPEPOの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図7に示し、蛍光スペクトルおよびりん光スペクトルを
図8に示す。
トルエン溶液では、最大発光波長が457nm、フォトルミネッセンス量子効率が、空気中で11.5%、脱気後で18%であった。有機フォトルミネッセンス素子のフォトルミネッセンス量子効率は、化合物2のみの薄膜を有する素子で31.1%、化合物2とmCPの薄膜を有する素子で30%、化合物2とDPEPOの薄膜を有する素子で48%であった。また、化合物2とDPEPOの薄膜を有する素子について、蛍光スペクトルとりん光スペクトルから求めた励起一重項状態でのエネルギーと励起三重項状態でのエネルギーの差ΔEstは0.351eVであった。
また、化合物2のトルエン溶液について過渡減衰曲線を測定した結果を
図9に示し、化合物2とDPEPOの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について過渡減衰曲線を測定した結果を
図10に示す。これらの過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。化合物2の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物2は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された。トルエン溶液では、空気中での発光寿命τが4.79ns、脱気後の発光寿命τ
1が6.51nsであった。化合物2とDPEPOの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子では、2種類の蛍光(即時蛍光、遅延蛍光)を観測することができ、即時蛍光の発光寿命τ
1が4.64ns、遅延蛍光の発光寿命τ
2が2.9msであった。
【0091】
(比較例1) 比較化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに比較化合物1を用いた点を変更して、比較化合物1のジクロロメタン溶液と、比較化合物1のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製した。
脱気したジクロロメタン溶液の発光波長ピークは363nmで、発光量子収率は48%であった。発光寿命τは4.795 nsで、遅延成分は観測されなかった。ニート薄膜の発光波長ピークは381nmで、発光量子収率は30%であった。発光寿命は4.993nsであり、遅延成分は観測されなかった。
【0092】
(比較例2) 比較化合物2を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1のかわりに比較化合物2を用いた点を変更して、比較化合物2のジクロロメタン溶液、比較化合物2のみの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子、を作製した。
脱気したジクロロメタン溶液の発光波長ピークは447nmで、発光量子収率は92%であった。発光寿命τは2.133nsで、遅延成分は観測されなかった。ニート薄膜の発光波長ピークは429nmで、発光量子収率は30%であった。発光寿命は1.296nsであり、遅延成分は観測されなかった。
【0093】
(実施例3) 化合物2を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを40nmの厚さに形成した。次に、化合物2とDPEPOを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物2の濃度は6.0重量%とした。次に、DPEPOを5nmの厚さに形成し、TPBiを30nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.5nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図11に示し、電圧−電流密度特性を
図12に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図13に示す。化合物2を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は8.3%の高い外部量子効率を達成した。仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。化合物2を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している点で極めて優れている。
【0094】
【化39】