(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469078
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ドロスピレノン調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07J 21/00 20060101AFI20190204BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20190204BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20190204BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
C07J21/00
A61K31/585
A61P15/18
C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-507067(P2016-507067)
(86)(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公表番号】特表2016-516095(P2016-516095A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】IB2013052918
(87)【国際公開番号】WO2014167386
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2016年1月13日
【審判番号】不服2018-976(P2018-976/J1)
【審判請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】515243198
【氏名又は名称】インドゥスティアーレ キーミカ エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンナ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バルビエーリ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ルオーニ,マリア ジョヴァンナ
(72)【発明者】
【氏名】ノセダ,モニカ
【合議体】
【審判長】
佐々木 秀次
【審判官】
瀬良 聡機
【審判官】
齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/12955(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/146042(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/137050(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2005/192450(US,A1)
【文献】
Takahiro Nishimura、外3名,J.Org.Chem.,1999,64,p.6750−6755
【文献】
Takahiro Nishimura、外3名,Tetrahedron Letters ,1998,39,p.6011−6014
【文献】
Bradley A.Steinhoff,外2名,J.Org.Chem.,2006,71,p.1861−1868
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J1/00-75/00
C07B61/00
REGISTRY STN,CA STN
CASREACT STN
JSTPLUS JDREEAM III
JMEDPLUS JDREAM III
JST7580 JDREAM III
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロスピレノン(I)製造のためのプロセスであって、17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)(単独又はそのラクトールとの混合物)、及び3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトン(III):
【化1】
から選択される化合物を、
80と
120℃の間の温度において、
20〜60時間、反応条件下では不活性な有機溶媒中で、
酢酸パラジウム(Pd(C2H3O2)2)、
ピリジン、及び
孔径3オングストロームのモレキュラーシーブの存在下に酸素ガスを用いて、単一工程で変換することを含んでなる該プロセス。
【請求項2】
酸素が、純粋酸素、空気、又は不活性ガスと酸素との混合物の形態で、1と10バールの間の圧力において使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酢酸パラジウムが、化合物(II)又は化合物(III)対し1重量%から100重量%の範囲の量で使用される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ピリジンが、用いる酢酸パラジウムの量の0.5倍以上の量で使用される、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ピリジンの重量が、用いる酢酸パラジウムの量の0.5と25倍の間である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
反応条件下で不活性である前記有機溶媒が、メチルt−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロベンゼン、N−メチル−ピロリドン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド合成のためのプロセス、及びとりわけドロスピレノンを工業規模で調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の式(I)の化合物は、その化学名が6β,7β;15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−17α−プレグナ−4−エン−21,17−カルボラクトンであり、一般にはドロスピレノンと称される:
【0003】
【化1】
【0004】
ドロスピレノンは、プロゲストゲン、抗鉱質コルチコイド、及び抗アンドロゲン性の作用をもつ合成ステロイドである;これらの特性を理由に、それは長い間、経口投与用の避妊作用をもつ医薬組成物の調製に使用されてきた。
【0005】
ドロスピレノン調製のための様々なプロセスが、文献において知られている。
【0006】
特許文献1に記載されたプロセスは、17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオールを、ピリジン/水/酸化クロム(VI)の混合物とともに加熱下で酸化することにより最終生成物ドロスピレノンを得る。この工程は、このプロセスにおける実質的な欠点を示している:実際、酸化クロム(VI)は、全てのCr(VI)化合物と同様、確立された発癌物質であり、その使用は法的規制を受け、この製品の使用及び廃棄の間に必要とされる措置が上記の工業的プロセスの放棄につながった。
【0007】
特許文献2のプロセスについても同様な状況が生じ、これにおいてドロスピレノンは、ピリジン/水/酸化クロム(VI)の混合物を用いて、3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナン−21,17−カルボラクトンを加熱下で酸化することにより得られる。
【0008】
ドロスピレノン調製のための別のプロセスは、特許文献3に記載されており;この文献のプロセスでは、ドロスピレノンはなお17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオールから、2つの別個の工程において、かつ例えば臭素酸カリウムなどの酸化剤を、触媒としてのルテニウム塩の存在下に使用することによって得られるが、該触媒は最終的には生成物から完全に除去されねばならない。
【0009】
特許文献4は、さらなるプロセスを開示しており、ここでは酸化工程は、次亜塩素酸カルシウムを酸化剤として用いて、触媒としての2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル又はその誘導体の存在下に行われる;この特許のプロセスでは、反応が完了するまで酸化剤が分割添加される。このプロセスは、亜塩素酸カルシウムが非発癌性試薬であることでも、また2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカルが最終生成物の精製を必要とする金属触媒ではないことでも、先行技術の不利点を克服している;しかしながら、逐次的な試薬添加及び反応工程における分析管理の必要性は、単純ではあるとはいえ、連続的若しくはほぼ連続的に行われるべき規格化生産を妨害する。結果として、この特許の方法もまた工業生産に関してはプロセス欠陥を有する。
【0010】
したがって、先行技術の限界を克服することを可能にする、ドロスピレノン製造のための単純なプロセスが引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第075189号明細書
【特許文献2】米国特許第4,416,985号明細書
【特許文献3】欧州特許第918791号明細書
【特許文献4】欧州特許第1828222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故本発明の目的は、危険であるか又は工業規制により制限される試薬を使用することなくドロスピレノンを調製すること、及びプロセス自体を通じて作業員介入を最小限にすることを可能にする工業プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、ドロスピレノン製造のためのプロセスに関する本発明により達成され、該プロセスは、17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール、及び3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトンから選択される化合物を、60と140℃の間の温度において、反応条件下では不活性な有機溶媒中で、+2の酸化状態にあるパラジウム化合物、有機塩基、及びモレキュラーシーブの存在下にガス状酸素を用いて、単一工程で変換することを含んでなる。以下の式(II)を有する17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオールを使用する場合、該化合物は、上記の特許文献4の実施例6に記載されたように、そのラクトールの一方又は双方との混合物であり得る。反応スキーム(反応スキーム1)は、以下の通りであり、ここで、ラクトールは括弧内に示されて、それらが存在してもしなくてもよいことを示しており、またラクトールの式中の下記記号
【0014】
【化2】
【0015】
は、−OH基が分子平面の上又は下のいずれかに検出され得る(即ち、それぞれβ−又はα−配置にある)ことを示す:
【0016】
【化3】
【0017】
前記反応は、ドロスピレノンを単一のプロセス工程で直接得られるようにし、変換を完了するためにその後さらなる試薬を添加する必要性が排除される。
【0018】
3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトン(以下の式(III))を出発化合物として用いる場合、反応は以下のスキーム(反応スキーム2)に従って起こる:
【0019】
【化4】
【0020】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な記載から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願者らは、極めて単純な新規プロセスであって、17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)から、又は3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトン(III)から、非酸化性有機溶媒中で、+2の酸化状態にあるパラジウム化合物、有機塩基、及びモレキュラーシーブを含んでなる系の存在下に、酸素を用いてドロスピレノンを得ることを可能にする該プロセスを開発した。
【0022】
本プロセスの第1の可能な反応基質、即ち化合物17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β,15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)(又はその対応するラクトールとの混合物)は、市販の製品から当業者に公知の方法を用いて取得され得る。好ましくは、前記化合物は特許文献4に記載の工程a)からf)に従って得られる。
【0023】
本プロセスの第2の可能な反応基質、即ち化合物3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトン(III)は、特許文献2の実施例5(b)に記載の手順に従って取得可能である。
【0024】
以下に記載される反応条件は、化合物(II)から出発するか又は化合物(III)から出発するかにかかわらず適用される。
【0025】
本発明の酸化系の第1の成分は、ガス状酸素である。ガス状酸素は純粋酸素、空気、又は酸素と不活性ガスとの合成混合物(例えば、医療分野で広く使用される、いわゆる合成空気)として、反応容器内へ供給され得る;酸素は、上記のいずれの形態においても、静的条件下、即ち酸素若しくは含酸素雰囲気中の閉じた容器内で、又は同じガス状雰囲気中の緩流条件下で使用され得る。動作気圧は、室圧(1バール)と10バールの間である。
【0026】
酸化系の第2の成分は、+2の酸化状態にあるパラジウムの誘導体であり、これは酸化基質に対し1重量%から100重量%の範囲の量で使用される。
【0027】
本発明の目的に適するパラジウム化合物の例は、酢酸塩(Pd(C
2H
3O
2)
2)、アセチルアセトネート(Pd(C
5H
7O
2)
2)、トリフルオロ酢酸塩(Pd(C
2O
2F
3)
2)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート(Pd(C
5HO
2F
6)
2)、プロピオン酸塩(Pd(C
3H
5O
2)
2)、塩化物(PdCl
2)、臭化物(PdBr
2)、ヨウ化物(PdI
2)、シアン化物(Pd(CN)
2)、硝酸塩(Pd(NO
3)
2)、硫化物(PdS)、酸化物(PdO)、及び水酸化物(Pd(OH)
2)を含む;これらの化合物の中では、酢酸塩が好ましく、これはまた以降、Pd(OAc)
2(化学において使用される一般的な略語)とも称される。
【0028】
酸化系の第3の成分は、有機塩基であって:ピリジン及びそのアルキル誘導体、トリエチルアミン、アニリン、ピロリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、並びに、2個以上の窒素原子を含有する環式化合物(芳香族及び非芳香族の双方)から選択され得;好ましい塩基はピリジンである。使用される有機塩基の重量は、パラジウム化合物の量に比較して少なくとも0.5倍であり、好ましくは前記化合物の重量の0.5と25倍の間である。
【0029】
使用され得るモレキュラーシーブは、孔径3、4、及び5オングストローム、好ましくは3オングストローム(3Aモレキュラーシーブ)の、微粉末として及びビーズ若しくはペレットの形態の双方で、一般に市販されているものである。
【0030】
反応用の溶媒としては、有機溶媒は、沸点が少なくとも60℃の、反応条件下で必ず不活性であるものが使用され得る。かかる溶媒は、メチルt−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロベンゼン、N−メチル−ピロリドン、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0031】
反応は、60と140℃の間、好ましくは80と120℃の間の温度範囲において、18と72時間の間、好ましくは20と60時間の間にわたり行われ得る。
【0032】
このプロセスによって得られた粗ドロスピレノンは、当業者には公知でありかつ刊行物及び特許に開示された技術により精製され得る;例えば、精製は特許文献4に記載されたように酢酸イソプロピルからの結晶化によるか、又は特許文献1に記載されたようにクロマトグラフィーによって達成され得る。
【0033】
ドロスピレノンの1及び2位脱水素に起因する不純物として1,2−デヒドロドロスピレノンを生成する可能性は、この不純物を、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中でパラジウム炭素を用いた水素化によりドロスピレノンに戻すことによって容易に克服され得る;水素化は、酸素除去後などの反応混合物に対し、又は回収生成物に対して実施され得る。
【0034】
Pd(OAc)
2によるアルコール酸化は公知であり、かつ論文、T.Nishimuraら著、「Palladium(II)−Catalyzed Oxidation of Alcohols to Aldehydes and Ketons by Molecular Oxygen」、J.Org.Chem.1999年、第64巻、p.6750−6755に記載されている。しかしながら、この論文を読んだ後、式(II)又は(III)の出発物質の1つからドロスピレノンを合成することを目指している化学者は、前記論文に記載された方法を適用するべく仕向けられることはなかったであろう。
【0035】
実際、中間体(II)からドロスピレノン生成を導くプロセスは、3つの酸化工程を包含するが、1つは環化であり、そして1つは以下の略図に描かれたように、所望の化合物を生じるために特定の順序で起きねばならない脱水である:
【0037】
とりわけ、3位の第二級OH基の酸化の後になって初めて、5位の第三級OH基は脱水を受けねばならないのに対し、17位の第三級OH基は、ラクトン環を生じるために脱水素を受けるべきではない。5位のOH基の「早期の」脱水は、論文、Y.Itoら著、「Synthesis of α,β−unsaturated carbonyl compounds by palladium(II)−catalyzed dehydrosilylation of silyl enol ethers」、J.Org.Chem.1978年、第43巻、第5号、p.1021、エントリー12に記載されたように、周知のジエン生成を導くこととなる。
【0038】
T.Nishimuraらによる上述の論文は、表3において、もっぱらアルデヒドをもたらす、脂肪族第一級アルコール酸化の例を開示する。この論文の表4は、ジオールのラクトンへの酸化の例を示している;とりわけ対称ジオール(エントリー1、2、3)及び非対称ジオール(エントリー4);本発明に関連する例、即ち、2つのOH基のうちの一方が第三級であり、したがって脱水を含む第三級アルコールの反応を受ける非対称ジオールの酸化、については開示されていない。この論文の表5は、第二級アルコールの酸化を示す。実施例7は、ステロイドに関連するが、しかしながらこれにおいて、唯一の官能基は3位のOH基である。ここで再び、例えば、何ら第三級OH基はなく、これはしかしながら本発明の化合物(II)では5及び17位において検出される。第6753頁において筆者らは、それに記載された酸化システムの限界に焦点を合わせている。興味深いことに、表6の実施例6及び7で観察された挙動と
図2の分子5との間で筆者らによって議論された比較から、また
図2の分子6と表2のエントリー10との比較から分かるように、構造上の小さい差異が、予測できない反応性の変化を引き起し、結果として低い反応速度及び多数の副産物をもたらす。加えて、筆者らによれば、
図2の分子2は酸化を受けない:この論文に記載されたような条件下で酸化を受けない分子2に、本発明の化合物においても検出され得るC
5ラクトン環があることは容易に明らかである。最後に、論文の第6751頁では、触媒は、酸化反応がトルエンの沸点、即ちT=110−111℃において行われた場合、失活されると報告されている;対照的に本発明者らは、この現象が本発明の場合には起こらないばかりでなく、トルエン中で100℃と溶媒の沸点との間の温度範囲において行われる酸化反応が、100℃未満の温度で行われる場合よりも速いことに気付いた。上記の全ての理由から、当業者がNishimuraらによる論文からの教示を、本発明の目的に適用するべく動機付けられることはなかったであろう。
【0039】
特許文献4及び特許文献3の開示とは対照的に、本発明においては、全ての試薬は単一工程で反応容器内へ装填され、反応工程においてさらなる措置の必要がなく、かつ上記の反応は全て単一のプロセス相で起こる。
【0040】
本発明は、例として提供されかつ本発明を制限することを意図したものではない以下の実施例によってさらに例証される。実施例において使用された試薬は、一般に市販されており、予め精製することなく使用される。
【実施例1】
【0041】
【化6】
【0042】
50mlフラスコに室温で、224mgのPd(OAc)
2(1mmol)、10mlのトルエン、0.26mlのピリジン(255mg)、及び500mgのモレキュラーシーブ3Aを添加する。それを酸素雰囲気中で80℃に10分間加熱する。
【0043】
次に、500mgの93% 17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)を添加する。反応混合物を、さらに酸素雰囲気中に、80−85℃において撹拌下で16時間置く。
【0044】
この時間の後、塩化メチレンでフィルタを洗浄することにより、有機相をペーパー上に濾取し、減圧下で蒸留することにより乾燥濃縮する(ロータリーエバポレータ装置を使用)。
【0045】
シリカゲルクロマトグラフィー及び一定の重量になるまでの乾燥の後、粗生成物は346mgのドロスピレノンを産生する(245nmで測定されるHPLCの純度は99.01%である)。
【実施例2】
【0046】
【化7】
【0047】
1リットルのフラスコに室温で、1.3gのPd(OAc)
2、300mlのトルエン、7.8mlのピリジン(7.65g)、及び15gのモレキュラーシーブ3Aを添加する。
【0048】
それを80℃に加熱し、窒素を用いて内部圧力を4バールに、次いで酸素を用いて4.5バールに調整する。反応をこれらの条件下で、酸素を用いて総圧力を4.5バールに維持しながら20分間撹拌する。
【0049】
次に、15gの93% 17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)を添加する。反応混合物を、さらに4.5バールの酸素/窒素雰囲気中に、撹拌下で80℃で64時間保持する。
【0050】
塩化メチレンでフィルタを洗浄することにより、有機相を濾取し、乾燥濃縮する(ロータリーエバポレータ装置での蒸留)。
【0051】
粗生成物を、酢酸イソプロピルを用いて結晶化し、一定の重量になるまでの乾燥の後、7.5gのドロスピレノンを得る。
【0052】
結晶化の母液から、さらに1.5gのドロスピレノンがクロマトグラフィーにより回収される。
【実施例3】
【0053】
【化8】
【0054】
50mlフラスコに室温で、22mgのPd(OAc)
2、12mlのトルエン、0.4mlのピリジン(392mg)、及び1gのモレキュラーシーブ3Aを添加する。
【0055】
それを酸素雰囲気中で80℃に10分間加熱する。
【0056】
次に、772mgの3β,5−ジヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β,17α−プレグナ−21,17−カルボラクトン(III)を添加する。反応混合物を、さらに酸素雰囲気中に、80℃で撹拌下で36時間置く。
【0057】
塩化メチレンでフィルタを洗浄することにより、有機相をペーパー上に濾取し、乾燥濃縮する(ロータリーエバポレータ装置での蒸留)。
【0058】
シリカゲルクロマトグラフィー及び一定の重量になるまでの乾燥の後、粗生成物は601mgのドロスピレノンを得る(245nmで測定されるHPLCの純度は98.04%)。
【実施例4】
【0059】
【化9】
【0060】
2リットルのフラスコに室温で、1.4gのPd(OAc)
2、1リットルのトルエン、26.1mlのピリジン(25.6g)、及び粉末形態の50gのモレキュラーシーブ3Aを添加する。それを酸素雰囲気中で80℃に加熱する。混合物をこれらの条件下で、酸素雰囲気を維持しながら10分間撹拌する。
【0061】
次に、50gの93% 17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)を添加する。
【0062】
反応混合物を、さらに酸素雰囲気中に、撹拌下で85℃で64時間保持する。
【0063】
トルエンでフィルタを洗浄することにより有機相を濾取し、乾燥濃縮(ロータリーエバポレータ装置での蒸留)する。
【0064】
残渣を、酢酸イソプロピルを用いて結晶化し、32.1gのドロスピレノンを得る。
【0065】
結晶化の母液から、さらに4.5gのドロスピレノンがクロマトグラフィーにより回収される。
【実施例5】
【0066】
【化10】
【0067】
250mlのフラスコに室温で、0.14gのPd(OAc)
2、100mlのトルエン、2.6mlのピリジン(2.55g)、及び5gの粉末形態のモレキュラーシーブ3Aを添加する。それを酸素雰囲気中で80℃に加熱する。混合物をこれらの条件下で、酸素雰囲気を維持しながら10分間撹拌する。
【0068】
次に、5gの93% 17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)を添加する。反応混合物を、さらに酸素雰囲気中に、撹拌下で100−110℃で64時間保持する(暗色のスラリー)。
【0069】
トルエンでフィルタを洗浄することにより有機相を濾取し、乾燥濃縮(ロータリーエバポレータ装置での蒸留)する。
【0070】
残渣を、酢酸イソプロピルを用いて結晶化し、3.1gのドロスピレノンを得る。これはHPLC分析において、主要な不純物として1,2−デヒドロドロスピレノンの存在を示す。
【0071】
試料を、30mlのテトラヒドロフラン中で、5%パラジウム炭素(100mg)の存在下に、T=5℃において1から1.5バールの過剰な水素圧を維持しながら、水素化する。
【0072】
反応完了後、触媒を濾過し、溶媒を減圧下で除去する。
【0073】
さらなるHPLC分析に基づき0.10%未満の1,2−デヒドロドロスピレノン量を示す、2.96gのドロスピレノンが回収される。
【実施例6】
【0074】
【化11】
【0075】
3リットルのフラスコに室温で、1.4gのPd(OAc)
2、1リットルの酢酸ブチル、26.1mlのピリジン(25.6g)、及び50gのペレット形態のモレキュラーシーブ3Aを添加する。それを酸素雰囲気中で80℃に加熱する。混合物をこれらの条件下で、酸素雰囲気を維持しながら20分間撹拌する。
【0076】
次に、50gの93% 17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ジメチレン−5β−アンドロスタン−3β,5,17β−トリオール(II)を添加する。反応混合物を、さらに酸素雰囲気中に、撹拌下で80℃で64時間保持する(黄色のスラリー)。
【0077】
トルエンでフィルタを洗浄することにより有機相を濾取し、乾燥濃縮(ロータリーエバポレータ装置での蒸留)する。
【0078】
残渣を、酢酸イソプロピルを用いて結晶化し、33.1gのドロスピレノンを得る。
【0079】
結晶化の母液から、さらに4.1gのドロスピレノンがクロマトグラフィーにより回収される。