特許第6469086号(P6469086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469086
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/22 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   C08F8/22
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-511942(P2016-511942)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060173
(87)【国際公開番号】WO2015152260
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-73767(P2014-73767)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224949
【氏名又は名称】徳山積水工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 健一
(72)【発明者】
【氏名】増野 典和
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/081133(WO,A1)
【文献】 特開2005−036196(JP,A)
【文献】 特開2001−151815(JP,A)
【文献】 特開2000−119333(JP,A)
【文献】 特開平11−035627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F6/00−301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な反応容器内において、塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル水懸濁液からなる反応液を熱塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、
前記反応液を度55〜70℃に加熱して反応容器内に塩素を導入して熱塩素化を開始する工程1、
前記工程1の後に行う工程であって、前記反応容器内の温度を部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度に保ちながら昇温する工程2、及び、
前記工程2の後に行う工程であって、前記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が55.8重量%以下のときは90℃以上の温度で熱塩素化を行わず、塩素含有率が58重量%以上となった後に85℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化する工程3を有し、
前記工程1〜3において、熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)を反応液1m当たり0.2〜2.5kw/mとする
ことを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
工程3において、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上、60重量%未満となった後に85℃以上、95℃未満の所定温度で熱塩素化することを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
工程3において、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が60重量%以上、62重量%未満となった後に95℃以上、105℃未満の所定温度で熱塩素化することを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項4】
工程3において、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が62重量%以上となった後に105℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化することを特徴とする請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を用いて得られる塩素化塩化ビニル系樹脂を含有することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂成型体。
【請求項6】
塩素化塩化ビニル系樹脂を80〜95重量%含有することを特徴とする請求項5記載の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期着色性、耐熱安定性が高く、熱安定性に優れ、透明な成形品を得ることが可能な塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂を後塩素化することで製造されており、塩化ビニル系樹脂の長所である優れた耐候性、難燃性、耐薬品性等の性能を有し、塩化ビニル系樹脂より熱変形温度が20〜40℃も高いので、耐熱パイプ、耐熱継手、耐熱バルブ、耐熱プレート等の耐熱性が100℃を要求される用途に好適に使用されている。
【0003】
しかしながら、塩素化塩化ビニル系樹脂は熱変形温度が高いので、耐熱パイプ、耐熱継手、耐熱バルブ、耐熱プレート等に成型加工するには高温で加熱溶融しなければならず、熱安定性(初期着色性、耐熱安定性)等が悪いと透明な成形品が得られないという欠点があった。
【0004】
従来、塩化ビニル系樹脂を後塩素化するには、密閉可能な反応容器内において、塩化ビニル系樹脂の水懸濁液を作成し、塩素を圧入すると共に紫外線を照射する方法が採用されてきたが、最近は熱安定性の優れた塩素化塩化ビニル系樹脂を得るために紫外線を照射せず、加熱のみで塩素化する方法(熱塩素化)が提案され、更に、反応時間を短縮するために、熱塩素化において過酸化水素を添加する塩素化方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、密閉可能な容器内でポリ塩化ビニルを水性媒体中に懸濁させ、減圧した後、塩素を容器内に導入して90〜140℃の温度でポリ塩化ビニルを塩素化する方法において、塩素化の過程で、反応中のポリ塩化ビニルの塩素含有率が60重量%以上に到った時点で、ポリ塩化ビニルに対し5〜50ppm/hrの速度で過酸化水素の添加を開始する方法が提案されている。
また、特許文献1の実施例1には、所定量の脱イオン水とPVCを投入、攪拌してPVCを水中に分散させた後、加熱、減圧を行い、塩素を導入し反応を開始すると同時に昇温して、塩素含有率が61重量%に到達した後、所定量の過酸化水素水を添加し、塩素含有率が65重量%に達した時点で塩素化を終了してCPVCを得る方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、上記塩素化方法においては、反応器内に塩素を導入して塩素化を開始してから反応温度まで昇温する間の温度を制御せず、単に反応温度までできるだけ早く昇温していたので、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性(初期着色性、耐熱安定性)等が悪く透明な成形品が得られないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−151815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、初期着色性、耐熱安定性が高く、熱安定性に優れ、透明な成形品を得ることが可能な塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、密閉可能な反応容器内において、塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル水懸濁液からなる反応液を熱塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、前記反応液を度55〜70℃に加熱して反応容器内に塩素を導入して熱塩素化を開始する工程1、前記工程1の後に行う工程であって、前記反応容器内の温度を部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度に保ちながら昇温する工程2、及び、前記工程2の後に行う工程であって、前記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が55.8重量%以下のときは90℃以上の温度で熱塩素化を行わず、塩素含有率が58重量%以上となった後に85℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化する工程3を有し、前記工程1〜3において、熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)を反応液1m当たり0.2〜2.5kw/mとする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【0010】
本発明者は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法において、熱塩素化時の温度を所定の範囲とし、かつ、正味撹拌動力を所定の範囲内とすることによって、初期着色性、耐熱安定性が高く、熱安定性に優れ、透明な成形品を得ることが可能な塩素化塩化ビニル系樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、密閉可能な反応容器内において、塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル水懸濁液からなる反応液を熱塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【0012】
上記密閉可能な反応容器としては、ガラスライニングを施した耐圧容器で、攪拌装置と加熱冷却用ジャケットが設置されている反応容器が好ましい。
【0013】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニル単量体と上記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体も含む。
また、上記塩化ビニル単量体と上記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との塩化ビニル共重合体は、塩化ビニル単量体を50重量%以上含むことが好ましい。
【0014】
上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は一般に600〜2000である。
【0015】
上記塩化ビニル水懸濁液は、塩化ビニル系樹脂と水とを含有する懸濁液である。
塩化ビニル系樹脂を水に懸濁させた状態とするには、水媒体中に塩化ビニル系樹脂粉末を添加攪拌して分散させ懸濁させればよい。なお、塩化ビニル系樹脂が水懸濁重合で得られた場合は、塩化ビニル系樹脂が水懸濁状態になっているのでそのまま使用できる。
【0016】
上記塩化ビニル系樹脂粉末の平均粒子径は小さくなると取り扱いが難しくなり、大きくなると塩素化に長時間かかるため、100〜200μmであることが好ましい。
【0017】
本発明では、上記反応液を加熱して温度55〜70℃で反応容器内に塩素を導入して熱塩素化を開始する工程1を行う。
なお、本発明において、熱塩素化とは、紫外線照射することなく加熱して熱塩素化する反応である。
【0018】
上記熱塩素化を行うには、密閉可能な反応容器内において、反応容器内を減圧して酸素を除去すると共に加熱し、反応液の温度が55〜70℃となったときに塩素を反応容器内に導入して熱塩素化を開始することが好ましい。
【0019】
上記減圧を行う場合は、真空ポンプにより吸引して脱気するのが好ましい。吸引は、例えば、反応容器内の気圧が、その時の水の蒸気圧に水銀柱20mmの圧力を加えた程度の圧力に達するまで行い、その圧力に数分間維持することによって最初の脱気を行い、その後、反応容器内に窒素を圧入して暫く放置した後、再度真空ポンプによって吸引脱気を行って酸素を除くという操作を繰り返して、反応容器内の酸素量を100ppm以下にするのが好ましい。
【0020】
上記加熱はジャケットに蒸気又は熱水を供給して行なうのが好ましく、水懸濁液温度が熱塩素化を開始する温度になったとき、即ち、55〜70℃になったときに塩素を反応容器内に導入して熱塩素化を開始する。
【0021】
上記熱塩素化において使用する塩素は純度が高いものが好ましいが、1000ppm以上の酸素を含んでいる市販の塩素そのまま使用してもよい。
【0022】
上記工程1では、上記反応液の温度が55〜70℃で反応容器内に塩素を導入して熱塩素化を開始する。
上記反応液の温度が55℃未満であると、熱塩素化は殆ど進まず、非効率となる。上記温度が70℃を超えると、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性が低下し、成形体の透明性が低下する。
好ましくは57〜67℃である。
【0023】
本発明では、次いで、上記反応容器内の温度を部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度に保ちながら昇温する工程2を行う。
上記工程2では、所定の温度に保ちながら、熱塩素化工程を行う。
なお、本発明で「部分塩素化塩化ビニル系樹脂」とは、塩素化工程の途中における塩素化塩化ビニル系樹脂をいうものである。
また、本発明で「部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度」とは、塩素含有率から推定されるガラス転移温度をいう。
【0024】
上記工程2において、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度に保ちながら昇温する方法としては、例えば、反応容器内の部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率を測定することで、ガラス転移温度を求め、該ガラス転移温度以下の温度に昇温する方法が挙げられる。
【0025】
上記工程2では、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度に保ちながら昇温するが、特に部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度−2℃以下とすることが好ましい。
【0026】
上記工程2に掛ける時間(昇温時間ともいう)は、塩素化反応時間全体に対して、5〜40%に相当する時間とすることが好ましい。昇温時間を上記範囲内とすることで、均一に塩素化が進行し、熱安定性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂とすることができる。
【0027】
本発明では、上記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上となった後に85℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化する工程3を行う。
このような工程3を行うことで、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性が低下し、透明性に優れる成形体を作製可能な塩素化塩化ビニル系樹脂とすることができる。
なお、本明細書では、特に「85℃以上、115℃未満の所定温度」を「熱塩素化温度」ともいう。
【0028】
上記工程3では、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上となった後に、85℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化すればよいが、塩素化される塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以上の温度で熱塩素化されると得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性が低下し、成形体の透明性が低下する傾向があるので、塩素含有率が58重量%以上となった後の熱塩素化も、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度で熱塩素化するのが好ましい。
【0029】
上記工程3では、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上となった後に上記の所定温度で熱塩素化する。
上記塩素含有率が58重量%未満において、上記所定温度で熱塩素化した場合、一気に反応が進行し、均一な塩素化反応することができなくなる。なお、工程3において、上記塩素含有率は72重量%以下とすることが好ましい。
【0030】
上記工程3において、上記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は58重量%以上であれば特に限定されないが、上記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上、60重量%未満となった後に85℃以上、95℃未満の所定温度で熱塩素化することが好ましい(工程3−1)。
また、上記工程3では、上記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が60重量%以上、62重量%未満となった後に95℃以上、105℃未満の所定温度で熱塩素化することが好ましい(工程3−2)。
更に、上記工程3では、上記部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が62重量%以上となった後に105℃以上、115℃未満の所定温度で熱塩素化することが好ましい(工程3−3)。
このように塩素含有率に合わせて熱塩素化温度を変化させることで、昇温時間は長くなるが、熱塩素化温度が高くなるので熱塩素化速度は速くなり、全体の熱塩素化時間は短縮される。又、熱塩素化温度を高くしても得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性(初期着色製及び耐熱安定性)が低下することはない。
なお、上記工程3−1、工程3−2及び工程3−3は、何れか1のみを行ってもよく、2以上を重複して行ってもよい。
【0031】
本発明では、上記工程1〜3において、反応容器内の正味撹拌動力(Pv)を反応液1m当たり0.2〜2.5kw/mとする。
上記正味撹拌動力が、0.2kw/m未満であると、充分な撹拌が得られずジャケット近傍と中心部の温度に分布ができ不均一な塩素化反応となる。上記正味撹拌動力が、2.5kw/mを超えると、撹拌が強すぎて気泡を溶液中に巻き込んでしまい、均一な塩素化反応ができなくなる。上記正味撹拌動力Pvは、反応液1m当たり0.3〜2.0kw/mであることが好ましい。
【0032】
上記正味撹拌動力(Pv)は、「Pv=(Np×ρn/10)×v×gc」の式で表される。
ここで、Npは動力数、ρは反応容器の内容物の密度(kg/m)、nは撹拌翼の回転数(1/秒)、dは翼長(m)、vは反応容器内の液量(m)、gcは重力換算係数を、それぞれ示す。
通常一定の攪拌回転数では重合開始後の系の粘度上昇と共にPvは大きくなり、その後一定となるがその上昇は僅かである。攪拌回転数は反応期間中一定でも良いし、また途中で変更しても良いが、工程1〜3において、上記正味撹拌動力が0.2〜2.5kw/mの範囲内でなければならない。
【0033】
本発明において、攪拌を行う撹拌翼としては、例えば、ねじり格子翼、ダブルヘリカル翼、リボン翼、パドル翼等が挙げられ、ねじり格子翼(例えば、日立製作所社製)及びダブルヘリカル翼を用いることが好ましい。ねじり格子翼には、撹拌に直接効果のないシャフト(主軸)がないため、シャフト付近での滞留が起こらず、また、重合溶液の粘度が高くなるほど滞留時間が短くなり、効率のよい撹拌を達成することができる。
【0034】
本発明では、熱塩素化の速度を向上させ、反応時間を短縮するために、過酸化水素を添加してもよい。但し、上記過酸化水素を昇温中に添加すると反応速度が速くなって温度が上昇し、反応温度を制御しにくくなることがある。
従って、上記過酸化水素は、反応容器内の部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58重量%以上となった後に添加することが好ましい。
【0035】
上記過酸化水素の添加速度は、塩化ビニル系樹脂に対して3〜40ppm/Hrが好ましい。上記添加速度が3ppm/Hr未満であると、反応速度の促進効果が発揮されないことがあり、40ppm/Hrを超えると、得られた塩素化塩化ビニル系樹脂の熱安定性が損なわれることがある。
なお、上記過酸化水素の添加は、連続的であってもよく、断続的であってもよい。
また、上記過酸化水素の全添加量は、塩化ビニル系樹脂に対して10〜300ppmが好ましく、より好ましくは、20〜200ppmである。上記過酸化水素の全添加量が10ppm未満であると、反応速度の促進効果が発揮されないことがあり、300ppmを超えると、熱安定性が損なわれることがある。
【0036】
本発明では、上記工程1〜3に掛ける時間(全熱塩素化時間ともいう)は、6〜12時間とすることが好ましい。昇温時間を上記範囲内とすることで、均一に塩素化され、効率良く樹脂を生産することができる。
【0037】
本発明では、上記工程1〜3を終了した後、塩素化塩化ビニル系樹脂中の塩素含有率が所定の重量%に到達した時に、残存塩素を排ガスし、冷却して、塩素化反応を停止することが好ましい。
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を含有するスラリーを水洗して塩酸を除去し、必要に応じて中和剤等を加え、脱水、乾燥することにより所定の塩素含有率の塩素化塩化ビニル系樹脂粉末を得ることができる。
【0038】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を用いて塩素化塩化ビニル系樹脂を得ることができる。また、このような塩素化塩化ビニル系樹脂を用いて、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及び塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を作製することができる。
このような塩素化塩化ビニル系樹脂成型体もまた本発明の1つである。
【0039】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体は、塩素化塩化ビニル系樹脂を80〜95重量%含有することが好ましい。これにより、耐熱安定性に優れた成形体とすることができる。
また、本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体は、厚さ5mmの板状とした場合の透明度が1〜10であることが好ましい。これにより、透明性が必要とされる工業板やパイプ等に好適に用いることができる。
なお、上記透明度は、例えば、ヘイズメーターを用いて測定することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、初期着色性、耐熱安定性が高く、熱安定性に優れ、透明な成形品を得ることが可能な塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0042】
(実施例1)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0043】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように1.1時間かけて90℃まで昇温した。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0044】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.2重量%となった後は、水懸濁液の温度90℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から9.8時間熱塩素化を継続した(このときの温度を熱塩素化温度という)後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は0.6kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.2重量%となった時点でのガラス転移温度は91.1℃であった。即ち、熱塩素化開始から90℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていることが分かった。
【0045】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.9重量%であった。
【0046】
得られた塩素化塩化ビニル樹脂にブチル錫マレート系安定剤、ブチルステアレート、MBS(メチルメタクリレートーブタジエンースチレン)樹脂、アクリル系加工助剤(ポリメタクリル酸メチル)を添加し、塩素化塩化ビニル樹脂含有量が92.5重量%、ブチル錫マレート系安定剤含有量が1.9重量%、ブチルステアレート含有量が0.5重量%、MBS樹脂含有量が4.6重量%、アクリル系加工助剤含有量が0.5重量%となるように塩素化塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつけた後、1分間ロール混練し、次いで185℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧することで、厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0047】
(実施例2)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0048】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように1.4時間かけて95℃まで昇温した。
【0049】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が60.7重量%となった後は、水懸濁液の温度95℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から8.2時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は0.5kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が60.7重量%となった時点でのガラス転移温度は105.8℃であった。即ち、熱塩素化開始から95℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていたことが分かった。
【0050】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は65.0重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0051】
(実施例3)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0052】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように2.0時間かけて100℃まで昇温した。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0053】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が61重量%となった後は、水懸濁液の温度100℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から6.5時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は1.2kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が61重量%となった時点でのガラス転移温度は108.0℃であった。即ち、熱塩素化開始から100℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていることが分かった。
【0054】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.8重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0055】
(実施例4)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0056】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように2.6時間かけて110℃まで昇温した。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0057】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が62.5重量%となった後は、水懸濁液の温度110℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から4.2時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は1.8kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が62.5重量%となった時点でのガラス転移温度は118.6℃であった。即ち、熱塩素化開始から110℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていることが分かった。
【0058】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は65.0重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0059】
(実施例5)
実施例1で得られた塩素化塩化ビニル樹脂にブチル錫マレート系安定剤、ブチルステアレート、MBS樹脂、アクリル系加工助剤を添加し、塩素化塩化ビニル樹脂含有量が88.4重量%、ブチル錫マレート系安定剤含有量が2.6重量%、ブチルステアレート含有量が0.5重量%、MBS樹脂含有量が7.5重量%、アクリル系加工助剤含有量が1.0重量%となるように塩素化塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつき後、1分間ロール混練し、次いで185℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧することで、厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0060】
(実施例6)
実施例1で得られた塩素化塩化ビニル樹脂に塩化ビニル樹脂、ブチル錫マレート系安定剤、ブチルステアレート、MBS樹脂、アクリル系加工助剤を添加し、塩素化塩化ビニル樹脂含有量が82.5重量%、塩化ビニル樹脂2.8重量%、ブチル錫マレート系安定剤含有量が1.9重量%、ブチルステアレート含有量が0.5重量%、MBS樹脂含有量が4.6重量%、アクリル系加工助剤含有量が1.5重量%となるように塩素化塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつき後、1分間ロール混練し、次いで185℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧することで、厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0061】
(実施例7)
実施例1で得られた塩素化塩化ビニル樹脂に塩化ビニル樹脂、ブチル錫マレート系安定剤、ブチルステアレート、MBS樹脂、アクリル系加工助剤を添加し、塩素化塩化ビニル樹脂含有量が78.5重量%、塩化ビニル樹脂14.0重量%、ブチル錫マレート系安定剤含有量が1.9重量%、ブチルステアレート含有量が0.5重量%、MBS樹脂含有量が4.6重量%、アクリル系加工助剤含有量が0.5重量%となるように塩素化塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつき後、1分間ロール混練し、次いで185℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧することで、厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0062】
(実施例8)
実施例1で得られた塩素化塩化ビニル樹脂にブチル錫マレート系安定剤、ブチルステアレート、MBS樹脂、アクリル系加工助剤を添加し、塩素化塩化ビニル樹脂含有量が95.2重量%、ブチル錫マレート系安定剤含有量が0.8重量%、ブチルステアレート含有量が0.5重量%、MBS樹脂含有量が3.0重量%、アクリル系加工助剤含有量が0.5重量%となるように塩素化塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつき後、1分間ロール混練し、次いで185℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧することで、厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0063】
(比較例1)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0064】
次いで、0.5時間かけて95℃まで昇温した。このとき、反応容器内の温度は、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度を超えるものとなっていた。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0065】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.0重量%となった後は、水懸濁液の温度95℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から7.9時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は0.1kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.0重量%となった時点でのガラス転移温度は86.6℃であった。即ち、熱塩素化開始から95℃に昇温するまでの間に、反応容器内の水懸濁液の温度が反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度の温度を超えていたことが分かった。
【0066】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.8重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0067】
(比較例2)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0068】
次いで、0.7時間かけて100℃まで昇温した。このとき、反応容器内の温度は、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度を超えるものとなっていた。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0069】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.9重量%となった後は、水懸濁液の温度100℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から6.1時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は2.8kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.9重量%となった時点でのガラス転移温度は93.0℃であった。即ち、熱塩素化開始から100℃に昇温するまでの間に、反応容器内の水懸濁液の温度が反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度を超えていたことが分かった。
【0070】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.9重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0071】
(比較例3)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0072】
次いで、1.0時間かけて110℃まで昇温した。このとき、反応容器内の温度は、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度を超えるものとなっていた。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0073】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が59.4重量%となった後は、水懸濁液の温度110℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から3.8時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は3.0kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が59.4重量%となった時点でのガラス転移温度は96.5℃であった。即ち、熱塩素化開始から110℃に昇温するまでの間に、反応容器内の水懸濁液の温度が反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度の温度を超えていたことが分かった。
【0074】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.0重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0075】
(比較例4)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を80℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度80℃)。
【0076】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように1.1時間かけて90℃まで昇温した。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0077】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.3重量%となった後は、水懸濁液の温度90℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から9.1時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は0.6kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が58.3重量%となった時点でのガラス転移温度は91.5℃であった。即ち、熱塩素化開始から90℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていることが分かった。
【0078】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.9重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0079】
(比較例5)
内容積300リットルのグラスライニング製反応容器に、脱イオン水200kgと平均重合度600の塩化ビニル樹脂56kgを投入し、攪拌して塩化ビニル樹脂を水中に分散させ水懸濁状態にした後、反応容器内を加熱して水懸濁液を70℃に昇温した。
次いで、反応容器中を減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した後、塩素分圧が0.4MPaになるように塩素(酸素含有量50ppm)を導入して熱塩素化を開始した(塩素化開始温度70℃)。
【0080】
次いで、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度以下の温度となるように1.1時間かけて90℃まで昇温した。
なお、部分塩素化塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠してDSC(示差走査熱量測定)によって求めた。
【0081】
そして、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が55.8重量%となった後は、水懸濁液の温度90℃、塩素分圧を0.4MPaに保ち、塩素導入から10.3時間熱塩素化を継続した後、塩素ガスの供給を停止し、熱塩素化を終了した。熱塩素化開始から熱塩素化終了までの反応容器内の正味撹拌動力(Pv)は0.6kw/mであった。
なお、熱塩素化工程では、塩素含有率が61重量%に到達後、200ppmの過酸化水素水を、塩化ビニル樹脂に対して過酸化水素として15ppm/Hrとなるように塩素化反応終了まで添加した。
また、部分塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率が55.8重量%となった時点でのガラス転移温度は91.3℃であった。即ち、熱塩素化開始から90℃に昇温するまでの間は、反応容器内の水懸濁液の温度は反応容器内の部分塩素化塩化ビニル樹脂のガラス転移温度以下の温度に保たれていることが分かった。
【0082】
次いで、窒素ガスを通気して、未反応塩素を除去し、得られた塩素化塩化ビニル樹脂スラリーを水酸化ナトリウムで中和し、水で洗浄し、脱水した後、乾燥して粉末状の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。得られた塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有率は64.8重量%であった。
得られた塩素化塩化ビニル樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塩素化塩化ビニル樹脂組成物、塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を得た。
【0083】
<評価>
実施例及び比較例で得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物及び塩素化塩化ビニル系樹脂成型体について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0084】
(1)黄変度
得られた厚さ2mmの板状の塩素化塩化ビニル系樹脂成型体を試験片として用い、日本電色工業社製色差計で黄変度を測定した。
【0085】
(2)熱安定性
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を190℃のロールで巻きつき後1分間ロール混練して作製したシートを200℃のギヤオーブン中で加熱し、黒化するまでの時間(分)を測定した。
【0086】
(3)透明性
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を165℃のロールで巻きつき後1分間ロール混練し、165℃のプレスで3分間予熱し、4分間加圧して、厚さ5mmの板状の試験片を得た。得られた試験片を用い、日本電色工業社製HAZE METERで透明度を測定した。
【0087】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、初期着色性、耐熱安定性が高く、熱安定性に優れ、透明な成形品を得ることが可能な塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供することができる。