特許第6469092号(P6469092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469092イミダゾリジンジオン化合物及び薬物組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469092
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】イミダゾリジンジオン化合物及び薬物組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20190204BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190204BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C07D401/04
   A61K31/454
   A61P43/00 111
   A61P17/14
   A61P17/10
   A61P35/00
   A61P13/08
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-515632(P2016-515632)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2016-524612(P2016-524612A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】CN2014078528
(87)【国際公開番号】WO2014190895
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】201310205281.X
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515329931
【氏名又は名称】ヒノバ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユアンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴン ユイ
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−531439(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/103202(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/056547(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/067142(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101032483(CN,A)
【文献】 KUSHNER DJ,PHARMACOLOGICAL USES AND PERSPECTIVES OF HEAVY WATER AND DEUTERATED COMPOUNDS,CANADIAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY AND PHARMACOLOGY,カナダ,1999年 2月 1日,V77 N2,P79-88
【文献】 HARBESON, Scott L., et al., Annual Reports in Medicinal Chemistry, 46, 403-417, DOI:10.1016/B978-0-12-386009-5.0003-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミダゾリジンジオン化合物であって、
前記化合物は、以下の化合物のいずれか一つであることを特徴とするイミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記化合物は、以下に示す化合物であることを特徴とする請求項1に記載のイミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項3】
請求項1に記載の前記化合物14,17,20の製造方法であって、以下のステップを含み、
(1)酸性溶媒において、シアンの存在下で、化合物5aとRC(O)Rとを反応させて、化合物6aを形成し、
ただし、
前記シアンは、TMSCN、シアン化ナトリウム又はシアン化カリウムであり、
(2)非プロトン性溶媒において、酸性条件の下、化合物2aと化合物6aを反応させて、前記化合物14,17,20を形成する
ことを特徴とする化合物の製造方法。
ただし、
及びRは、それぞれ、独自に水素、重水素、C〜Cアルキル基又は部分的若しくは完全に重水素化されたC〜Cアルキル基から選択されたものであり、R及びRは、同時に水素であることはなく、
、R、R、R、R、R11は水素、重水素又はハロゲンであり、
及びRは、それぞれ、独自にC〜Cアルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC〜Cシクロアルキル基を形成し、
10は、C〜Cアルキル基、部分的若しくは完全に重水素化されたC〜Cアルキル基、又は部分的若しくは完全にハロゲンで置換されたC〜Cアルキル基から選択されたものであり、
Xは、S又はOである。
【請求項4】
請求項に記載の製造方法であって、化合物5aを、以下のステップで製造することが可能であり、
(1−1) 不活性溶媒において、化合物3aとNHRとを反応させて、化合物4aを形成し、
(1−2) 不活性溶媒において、化合物4aを化合物5aに還元する
ことを特徴とする製造方法である。
【請求項5】
請求項に記載の製造方法であって、式2aの化合物を、以下のステップで製造し、式7の化合物と式8の化合物とを反応させ、式2aの化合物を生成し、
式8の化合物は、ホスゲン又はチオホスゲンであることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
アンドロゲン受容体拮抗薬の製造に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項7】
抜け毛、髪の再生、吹き出物、ニキビ又は前立腺癌を治療する薬物に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前記イミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のイミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を活性成分とし、薬学的に許容される助剤又は/及び補助性成分を加えて製造されたものであることを特徴とする薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、具体的には、イミダゾリジンジオン化合物及びその用途に関するものであり、より具体的には、イミダゾリジンジオン化合物及びその化合物をアンドロゲン受容体拮抗薬とすること、又は、アンドロゲン受容体に関わる疾病の治療及び予防に用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(prostatic carcinoma,prostatic cancer、略記:PCa)は、男性生殖系においてよく見られる悪性腫瘍であり、発病が年齢とともに増加し、その発病率の違いは、地域によって明らかであり、欧米で高く、肺癌に次ぐもので、男性の癌死亡の第二位になっている。従来、前立腺癌は、中国の腫瘍リストにおける軽い疾病であるため、十分に重視されていない。しかし、中国の発展や進歩とともに、社会の高齢化、都市化、食生活の西洋化、検査技術の進歩などによって、中国での前立腺癌の発病率は明らかに増える傾向にある。国連世界保健機構(WHO)の報道によると、2012年において、前立腺癌は、全癌患者の中で4番目によく見られる癌であり、男性癌患者においては2番目である。2012年に、世界で110万人が前立腺癌と診断され、かつ、30.7万人が死亡した。中国における前立腺癌の発病率は、年とともに急激に増加しており、国家癌センター及び衛生計画生育委員会の疾病予防コントロール庁は、2014年1月に『中国腫瘍』という雑誌で発表された「中国2010年悪性腫瘍の発病及び死亡」という研究報告にて、以下のことを指摘している。即ち、「前立腺癌は、中国の都会における男性の癌発病率の7番目で、死亡率が8番目の悪性腫瘍となっている。また、「2013年腫瘤登録のまとめ」における統計データによると、前立腺癌は、中国男性の癌発病率が7番目で、死亡率が10番目の悪性腫瘍であるということが示されている。
【0003】
アンドロゲン(アンドロゲン受容体:androgen receptor)は、110,000ダルトンの分子量であるリガンド依存性のトランス転写(trans−transcriptional)調節タンパク質である。アンドロゲンは、前立腺癌の病原及びその悪化中、例えばニキビなどの男性ホルモンによる疾病、男性の抜け毛などにおいて重要な作用を及ぼしている。
【0004】
従来の前立腺癌の治療方法は、手術又は例えばビカルタミド(bicalutamide,Casodex)などのアンドロゲン(androgen receptor)拮抗薬で治療するものである。しかしながら、患者は、2〜4年の治療を受けた後に薬への耐性を生じるとともに、ビカルタミドに癌の増殖を刺激する副作用があるため、患者は、ビカルタミドの使用を中止しなければならない。最近の研究によると、ビカルタミドは、アンドロゲン受容体を活性化する作用(agonist)があるため、癌の増殖を刺激し、増殖させている。
【0005】
従って、当該分野においては、前立腺癌の治療が可能な新化合物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンドロゲン受容体の拮抗作用を有する新型化合物及びその製造方法並びに用途を提供することにある。
【0007】
本発明は、式(I)に示すイミダゾリジンジオン化合物を提供する。
【0008】
ただし、
1及びR2は、それぞれ、独自に水素、重水素、C1〜C4アルキル基又は部分的若しくは完全に重水素化されたC1〜C4アルキル基から選択されたものであり、R1及びR2は、同時に水素であることはない、
3は水素、重水素又はハロゲンであり、
4、R5、R6、R9、R11は水素、重水素又はハロゲンであり、
7及びR8は、それぞれ、独自にC1〜C4アルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC1〜C4アルキル基から選択されたものであり、或いは、R7及びR8は連結されたCとともにC3〜C6シクロアルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC3〜C6シクロアルキル基を形成し、
10は、C1〜C4アルキル基、部分的若しくは完全に重水素化されたC1〜C4アルキル基、又は部分的若しくは完全にハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル基から選択されたものであり、
Xは、S又はOである。
【0009】
又は、イミダゾリジンジオン化合物の結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を提供する。
【0010】
但し、R1及びR2のうちの少なくとも一つがC1〜C4アルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC1〜C4アルキル基であり、
さらに、R1が水素である場合、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11のうちの少なくとも一つは、重水素化されたアルキル基又は重水素であり、
さらに、R1及びR2がともにメチル基の場合、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11のうちのいずれか一つの官能基が重水素又は重水素化されたアルキル基、又は水素若しくは非重水素化のアルキル基であり、
又は、R7及びR8は連結されたCとともにC3〜C6シクロアルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC3〜C6シクロアルキル基を形成し、
さらに、R1はHであり、R6はハロゲンであり、R7及びR8は、連結されたCとともにC4〜C6シクロアルキル基、又は部分的若しくは完全に重水素化されたC4〜C6シクロアルキル基を形成し、
10は、完全にハロゲンで置換されたC1〜C4アルキル基から選択されたものである。
【0011】
そのうち、前記ハロゲンはFであり、さらに、前記C1〜C4アルキル基は、メチル基又はメチル基から選択されたものである。
【0012】
さらに、前記C1〜C4アルキル基は、メチル基から選択されたものであり、前記部分的若しくは完全に重水素化されたC1〜C4アルキル基は、一重水素化メチル基(mono−deuterated methyl)、二重水素化メチル基(bi−deuterated methyl)又は三重水素化メチル基(tri−deuterated methyl)から選択されたものである。
【0013】
前記化合物は、以下の化合物のうちの一つであることが好ましい。
【0014】
本発明では、化合物14、17、27を用いることが好ましく、化合物14を用いることがさらに好ましい。
【0015】
本発明では、前記式(I)に示す化合物の製造方法も提供し、以下のステップが含まれる。
【0016】
(1) 酸性溶媒において、シアンの存在下で、化合物5aとRC(O)Rとを反応させて、化合物6aを形成し、
【0017】
ただし、前記シアンは、TMSCN、シアン化ナトリウム又はシアン化カリウムであり、
(2) 非プロトン性溶媒において、酸性条件の下、化合物2aと化合物6aを反応させて、式(I)の化合物を形成し、
【0018】
但し、ステップ(1)では、酸性溶媒は、ギ酸、酢酸、1〜5質量%の塩酸水溶液又は1〜5質量%の硫酸水溶液である。
【0019】
ステップ(2)では、非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はCH3CNであり、
ステップ(2)では、酸性条件は、塩酸又は硫酸が存在する条件である。
【0020】
さらに、化合物5aは、以下のステップで製造されてもよい。
【0021】
(1−1) 不活性溶媒において、化合物3aとNHRとを反応させて、化合物4aを形成し、
【0022】
(1−2) 不活性溶媒において、化合物4aを化合物5aに還元する。
【0023】
さらに、還元剤は、鉄粉、亜鉛粉又はその組み合わせであり、前記不活性溶媒は、反応におけるその他の物質と反応しない溶媒であり、本発明では、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はアセトニトリルを選択することができる。
【0024】
さらに、前記化合物2aの製造方法は、以下の通りである。
【0025】
式7の化合物と式8の化合物とを反応させ、式2aの化合物を生成し、
【0026】
式8の化合物は、ホスゲン又はチオホスゲンである。
【0027】
本発明の前記イミダゾリジンジオン化合物又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物は、アンドロゲン受容体拮抗薬の製造に用いられる。
【0028】
本発明の前記イミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物は、抜け毛、髪の再生、吹き出物(Acne)、ニキビ又は前立腺癌の薬に用いられる。
【0029】
本発明では、前記イミダゾリジンジオン化合物、又はその結晶型、薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を活性成分とし、薬学的に許容される助剤又は/及び補助性成分を加えて製造された薬物組成物を提供している。
【0030】
定義
本明細書では、「ハロゲン」とは、F、Cl、Br又はIを指し、さらに好ましくは、ハロゲン原子をF、Cl及びBrの中から選択する。
【0031】
本明細書では、「アルキル基」は、直鎖状又は分枝状のアルキル基を含み、好ましくは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などのC1〜C4アルキル基である。
【0032】
本明細書では、「重水素化」とは、化合物又は官能基のうちの一つ又は複数の水素が重水素で置換されたものである。「重水素化」は、1つの置換でもよく、2つ、複数又は完全に置換されても良い。その他の好ましい例では、重水素が重水素の置き換えられた位置における重水素同位素の含有量は、天然の重水素の同位素の含有量(0.015%)よりも大きく、50%よりも大きいことがより好ましく、75%、95%、97%、99%、99.5%の順番でそれよりも大きいことがさらに好ましい。
【0033】
活性成分
本明細書では、技術用語である「本発明の化合物」とは、式(I)に示す化合物のことを指す。当該技術用語は、式(I)の化合物の各種の結晶型、薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和物も含む。
【0034】
本明細書では、技術用語である「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物が酸又はアルカリとで形成された薬物として用いるのに適した塩のことである。薬学的に許容される塩は、無機塩と有機塩を含んでいる。好ましくは、本発明の化合物と酸によって形成された塩である。塩の形成に適した酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、及びアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸を含むが、これらに限られるものではない。
【0035】
補助性成分
前記薬学的に許容される補助性成分は、所定の生理学的な活性を有するが、添加しても、前記薬物組成物の疾病の治療中における主導的な地位を変えることなく、補助的な効能のみを発揮する。これらの補助的な効能は、当該成分の既知の活性を利用するだけであり、医薬分野でもよく用いられる補助的な治療方法である。前記補助性成分と本発明における薬物組成物とを組み合わせて用いた場合も、本発明の保護範囲に属するものである。
【0036】
薬物組成物及び使用方法
本発明の化合物は、優れたアンドロゲン受容体拮抗作用を持っているため、本発明の化合物及びその各種の結晶型、薬学的に許容される無機又は有機塩、水和物又は溶媒和物、本発明の化合物を主活性成分として含む薬物組成物は、アンドロゲンによる疾病を治療、予防、緩和することができる。従来の技術によると、本発明の化合物は、抜け毛、髪の再生、吹き出物、ニキビ、前立腺癌などの疾病の治療に用いることができる。
【0037】
本発明の薬物組成物は、安全かつ有効な量の範囲内における本発明の化合物又はその薬理的に許容される塩、薬理的に許容される形状付与剤又は担持体を含む。ただし、「安全かつ有効な量」とは、ひどい副作用を引き起こすことがなく、疾病を十分に治療することができる程度の量である。通常、薬物組成物は、本発明の化合物/剤を1〜2000mg含んでおり、より好ましくは、本発明の化合物/剤を10〜200mg含んでいることである。また、前記「1剤」は1つのカプセル剤又は錠剤であることが好ましい。
【0038】
「薬学的に許容される担持体」は、互換性のある、1種又は複数種の固体又は液体フィラー又はゲル物質を言い、人間が使用することに適しており、かつ、十分な純度を有し、毒性は十分低くなければならない。ここで、「互換性」とは、化合物の有効性を著しく低下させることなく、組成物における各成分が本発明の化合物と相互に混ざり合い、及び、当該各成分が相互に混ざり合うことを言う。薬学的に許容される担持体の部分は、例えば、セルロース及びその誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体の潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(例えば、吐温登録商標)、湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水(pyrogen−free water)などが挙げられる。
【0039】
本発明の化合物又は薬物組成物の使用方法は、特に制限されないが、代表的な使用方法は、経口飲用、胃腸外(静脈内、筋肉内又は皮下)及び局部への投与などがある。しかし、これらに限られるものではない。
【0040】
経口飲用する固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。これらの固体剤形には、活性化合物が通常の、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなどの非活性の形状付与剤(又は担持体)の少なくとも1つと混合しており、又は、下記の成分:(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などのフィラー又は相溶化剤、(b)例えば、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアなどの接着剤、(c)例えば、グリセリンなどの保湿剤、(d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカ澱粉、アルギン酸、一部の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)例えば、ワックスなどの溶解遅延剤、(f)例えば、第四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、(h)例えば、カオリンなどの吸着剤、(i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、又はこれらの混合物、と混合している。カプセル剤、錠剤及び丸剤では、剤形がバッファ剤を含んでも良い。
【0041】
例えば、錠剤、糖丸、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤などの固体剤形は、コーティングおよびシェル材料を用いて製造することができる。例えば、腸溶コーティング及び当該技術分野のその他の公知材料である。それらは非透明剤を含んでもよく、かつ、この組成物における活性化合物又は化合物の放出は、遅延の形で、胃腸のある部分において放出してもよい。採用可能な組み込みコンポーネントの実例は、ポリマーおよびワックスである。必要に応じて、活性化合物は、前記の形状付与剤のうちの1種又は複数種とマイクロカプセルを形成しても良い。
【0042】
経口服用のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、またはチンキ剤を含む。液体剤形は、活性化合物のほか、当該技術分野においてよく用いられる非活性希釈剤、例えば、水又はその他の溶媒、相溶化媒及びエマルジョンである。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールメカイヒカルカルボキサミド及び油であり、特に、綿実油、ピーナツ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油又はこれらの物質の混合物などである。
【0043】
組成物は、これらの非活性希釈剤以外に、例えば、湿潤剤、エマルジョン、懸濁剤、甘味剤、香味剤及びスパイスなどの添加剤を含んでも良い。
【0044】
懸濁液は、活性化合物以外に、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタノールアルミニウムおよび寒天、又は、これらの混合物を含んでも良い。
【0045】
胃腸外の注射のための組成物は、生理上許容される無菌で水含有又は無菌で水非含有溶液、分散液、懸濁剤又はエマルジョンと、無菌の注射可能な溶液又は分散液となるように新たに溶解する無菌粉末を含んでも良い。適した水含有及び水非含有担持体と、希釈剤、溶媒又は形状付与剤は、水、エタノール、ポリオール及び適宜の混合物を含む。
【0046】
局部的に投与するための本発明の化合物の剤形は、軟膏剤、散剤、貼り付け剤、噴射剤、吸入剤を含む。活性成分は、無菌の条件下で、生理上許容される担持体と、いずれかの防腐剤、バッファ剤と混合され、又は、必要時に使われる増進剤と混合されている。
【0047】
本発明の化合物は、単独で投与されてもよく、又は、その他の薬学的に許容される化合物、例えば、ドセタキセル、オキサリプラチンなどと組み合わせて投与されてもよい。
【0048】
薬物組成物を用いる場合、安全かつ有効な量の本発明の化合物を、治療を必要とする哺乳動物(例えば、人間)に投薬する。用量は、薬学的に考えられる有効投薬量であり、体重60kgの人間であれば、日当たりの投薬量は、通常1〜2000mgであり、好ましくは、10〜500mgである。当然、具体的な投薬量は、投薬経路、患者の健康状態などを考慮する必要があり、これらは、すべて熟練医師に任せることである。
【0049】
製造方法
以下、本発明の式(I)の構造である化合物の製造方法をさらに具体的に説明する。但し、これらの具体的な方法は、本発明に対して何ら制限をかけるものではない。本発明の化合物は、本明細書に記載された各種合成方法又は、当該分野でよく知られた各種合成方法の組み合わせで容易に製造される。これらの組み合わせは当業者によって容易に行い得るものである。
【0050】
本発明における式(I)の化合物は、例えば、以下の合成式で製造可能である。一般に、製造プロセスにおいて、各反応は、通常、溶媒において、室温〜回流温度(例えば0℃〜120℃、好ましく0℃〜80℃)で行われる。反応時間は、通常0.1h〜60hであり、好ましくは、0.5〜48hである。
【0051】
対応する重水素化される化合物の製造は、対応する重水素化の出発化合物又は対応する重水素化の薬剤を原料とし、同様のルートで合成可能である。例えば、重水素化メチルアミン、重水素化アセトンである。ベンゼンにおける重水素化原料は、例えば、以下の方法、又は文献に記載の方法で合成可能である(Org Letter,2008,4351−4353)。
【0052】
以下、実施例を用いて本発明についてさらに説明する。なお、これらの実施例は、本発明の説明に用いるのみであり、本発明の範囲を限定するものではない。説明しない限り、割合及びパーセンテージは重量部及び重量%である。
【0053】
前記「reflux」は、還流のことを指し、「M.W.」は、マイクロ波であり、「Con HCl」は濃塩酸を指す。
【0054】
本発明では、重水素化で元の化合物の構造に修飾を加えている。1975年に発表された重水素化薬物の研究記述(Studies with deuterated drugs, Journal of Pharmaceutical Sciences, 1975, 64(3):367−391)において、重水素化後の薬物半減期又は活性の変化は、予測不可能性があると指摘されている。しかしながら、本発明の実験から以下のことが予想外に発見された。即ち、得られた重水素化化合物の薬動力学的特性及び薬動態活性は元の化合物よりも明らかに優れ、予期せぬ技術的効果を奏し、アンドロゲン受容体拮抗薬として適しており、アンドロゲンに関わる疾病(例えば、抜け毛、髪の再生、前立腺癌、ニキビなど)を治療する薬物の製造にも適している。
【0055】
なお、本発明の範囲内において、本発明における各構成要件と、以下(例えば実施例)において詳細に記載する各構成要件とは、互いに組み合わせることが可能であり、それにより、新規の又は好ましい技術方案が構成される。ここでは、重複を避けるため、説明を省略する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実施例1 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物10)の合成
【0057】
5−ニトロ−3−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシピリジン(中間体2)の合成
【0058】
氷浴において、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルピリジン(25g,0.15mol)を冷たい濃硫酸(150ml)に添加し、その後、濃硝酸(58ml)をピリジンが添加された濃硫酸に滴下する。次に、室温まで上昇させ、室温下で4h攪拌し、混合物を1リットルの氷に注入し、氷が溶けるまで攪拌し、濾過して白い固体が得られる。綺麗な水で固体を2回洗浄し、赤外ランプを照射して乾燥させ、化合物2(16.97g)が得られる。濾液を10Mの水酸化ナトリウムで弱酸性に調整し、酢酸エチルを200ml用いて3回抽出し、有機相を混合し、無水物である硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーで浄化して(流動相、DCM)、化合物2(6.81g)が得られる。全収率は74.5%である。
【0059】
5−ニトロ−3−トリフルオロメチル−2−ブロモ−ピリジン(中間体3)の合成
【0060】
化合物2(2.5g、12mmol)とPOBr3(10g、34.8mmol)との混合物に、DMFを0.5ml添加し、前記混合物を110oCまで加熱し、4h反応させ、反応混合物を100gの氷に注入し、pHを中性まで調整し、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を混合し、無水物である硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーで浄化して(流動相、PE)、化合物3(3.2g)が得られる。収率は98%である。1H NMR(CDCl3、400MHz):δ(ppm)9.09(1H,d,J=2.8Hz)、8.60(1H,d,J=2.8Hz)。
【0061】
5−ニトロ−3−トリフルオロメチル−2−シアノピリジン(中間体4)の合成
【0062】
化合物3(2.55g、9.4mmol)をDMF(10ml)に溶解し、100oCまで加熱し、CuCN(1.01g、11.2mmol)を添加し、反応混合物を110oCまで温度上昇させ、4h反応させる。氷水を100ml添加し、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を混合し、无水物である硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーによる精製で、化合物4(1.15g)が得られる。収率は52.5%である。
【0063】
5−アミノ−3−トリフルオロメチル−2−シアノピリジン(中間体5)の合成
【0064】
化合物4(1.15g、4.9mmol)を、酢酸エチルと酢酸(20ml+4ml)との溶液に溶解する。鉄粉を890mg添加し、還流させ、ひと晩放置し(16h)、室温まで冷却する。固体を濾過して、酢酸エチルで固体を3回洗浄し(3×10ml)、有機相を混合し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して茶色の固体が得られる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(DCM:MeOH=50:1)、薄い茶色の固体である化合物5(540mg)が得られる。收率は54.5%である。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm) 8.23(1H,d,J=2.8Hz)、7.20(1H,d,J=2.8Hz)、4.51(2H,br)。
【0065】
2−フルオロ−N−メチル−4−ニトロ−ベンズアミド(中間体7)の合成
【0066】
2−フルオロ−N−メチル−4−ニトロ−安息香酸(25g、135.06mml)のジクロロメタン溶液(200ml)に、CDI(32.8g、202.28mmol)を添加し、反応混合物を室温で1h攪拌する。メチルアミン塩酸塩(10.94g、162.12mmol)のジクロロメタン溶液(50ml)にトリエチルアミン(20.47g、202.29mmol)を添加し、白い懸濁液が得られ、室温で0.5h攪拌した後、当該懸濁液を徐々に反応混合物に添加し、当該混合物をさらに1h攪拌した後、水(100ml)を添加し、反応を完了させ、有機相を分離し、ジクロロメタンで水相を2回抽出して(2×50ml)、有機相を混合し、それぞれ、1Mの塩酸(2×50ml)と1Mの水酸化ナトリウム水溶液(2×50ml)で2回洗浄する。飽和食塩水で1回洗浄(100ml)し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧濃縮することで、白い固体7(中間体が7、14.61gで、55%の收率)が得られる。MS:199.2(M+H+)。
【0067】
2−フルオロ−N−メチル−4−アミノ−ベンズアミド(中間体8)の合成
【0068】
化合物7(14.6g、73.7mmol)を酢酸エチルと酢酸(50ml+50ml)との溶液に溶解する。鉄粉を39g添加し、還流させ、ひと晩放置し(16h)、室温まで冷却する。固体を濾過して、酢酸エチルで固体を3回洗浄し(3×50ml)、有機相を混合し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させることで、黄色の固体が得られ、カラムクロマトグラフィーによる精製で(DCM:MeOH=50:1)、浅い黄色の固体である化合物8(7.62g、61.5%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)7.92(1H,m)、6.60(1H,s)、6.49(1H,d,J=8.4Hz)、6.32(1H,d,J=14Hz)、4.10(2H,s)、2.99(3H,s)。
【0069】
4−(1−シアノ−シクロブチルアミン)−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体9)の合成
【0070】
TMSCN(1.77g、17.84mmol)と、シクロブタノン(0.89ml、11.89mmol)と、化合物8(1g、5.95mmol)とを酢酸(10ml)に溶解し、80oCでひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、水(10ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、茶色の固体化合物9(1.32g、90%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)7.99(1H,m)、6.70(1H,s)、6.49(1H、d、J=8.8Hz)、6.30(1H,d,J=14.4Hz)4.62(1H,s)、3.01(3H,d,J=4.8Hz)、2.84(2H、m)、2.40(2H,m)、2.27(1H,m)、2.20(1H,m)。
【0071】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物10)の合成
【0072】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物9(66mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)と濃塩酸(2ml)とを添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮する。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物10(51.3mg)が得られ、その收率は40.4%である。1H NMR(CD3OD、400MHz):δ(ppm)9.17(1H、d、J=2.0Hz)、8.65(1H、d、J=2.0Hz)、7.95(1H、m)、7.41(2H、m)、2.98(3H、s)、2.73(2H、m)、2.60(2H、m)、2.16(1H、m)、1.67(1H、m)。MS:478.1(M+H+)。
【0073】
実施例2 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物14)の合成
【0074】
フルオロ−N−三重水素化メチル−4−ナイトロ−ベンズアミド(中間体11)の合成
【0075】
化合物6(5.25g、28.37mml)のジクロロメタン溶液(20ml)にCDI(4.62g、28.37mmol)を添加し、反応混合物を室温で1h攪拌する。三重水素化メチルアミン塩酸塩(2g、28.76mmol)のジクロロメタン溶液(20ml)にトリエチルアミン(3.27g、32.36mmol)を添加し、白い懸濁液が得られ、室温で0.5h攪拌した後、当該懸濁液を徐々に反応混合物に添加し、当該混合物をさらに1h攪拌した後、水(10ml)を添加して反応を完了させ、有機相を分離し、その後、ジクロロメタンで水相を2回抽出して(2×20ml)、有機相を混合し、それぞれ、1Mの塩酸(2×10ml)及び1Mの水酸化ナトリウム水溶液(2×10ml)で2回洗浄する。飽和食塩水で1回洗浄し(10ml)、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧濃縮することで、白い固体11(中間体11、5.1g、88.2%の收率)が得られる。MS:202.1(M+H+
2−フルオロ−N−三重水素化メチル−4−アミノ−ベンズアミド(中間体12)の合成
【0076】
化合物11(5.1g、25.37mmol)を酢酸エチルと酢酸(15ml+15ml)との溶液に溶解する。鉄粉を15g添加し、還流させ、ひと晩放置し(16h)、室温まで冷却する。固体を濾過して、酢酸エチルで固体を3回洗浄し(3×20ml)、有機相を混合し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮することで、黄色の固体が得られる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(DCM:MeOH=50:1)、薄い黄色の固体である化合物12(2.22g、51.2%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)7.92(1H,m)、6.59(1H,s)、6.49(1H,d,J=8.4Hz)、6.32(1H,d,J=14.4Hz)、4.10(2H,s)。
【0077】
4−(1−シアノ−シクロブチルアミン)−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(中間体13)の合成
【0078】
TMSCN(1.77g、17.54mmol)と、シクロブタノン(0.89ml、11.88mmol)と、化合物12(1g、5.95mmol)とを酢酸(10ml)に溶解し、80oCでひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、水(10ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、茶色の固体化合物13(1.31g、90%の收率)が得られる。1H NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)7.79(1H,s)、7.56(1H,m)、7.36(1H,s)、6.46(1H,d,J=8.4Hz)、6.31(1H,d,J=13.6Hz)、2.76(2H,m)、2.36(2H,m)、2.07(2H,m)。MS:251.1(M+H+)。
【0079】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物14)の合成
【0080】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物13(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加して、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、クロマトグラフィーを作成して、白い固体である化合物14(52.3mg)が得られ、その收率は43.6%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.17(1H,d,J=2.0Hz)、8.65(1H,d,J= 2.0Hz)、7.95(1H,m)、7.41(2H,m)、2.73(2H,m)、2.60(2H,m)、2.16(1H,m)、1.67(1H,m)。MS:481.2(M+H+)。
【0081】
実施例3 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物17)の合成
【0082】
3,5−二重水素化−4−アミノ−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体15)の合成
【0083】
濃塩酸(0.5ml,6.0mmol)を、化合物8(1g,6.0mmol)を重水(10ml)で懸濁液にしたものに添加することで、化合物5の塩酸塩の重水溶液を形成する。前記混合物をパワー75Wのマイクロウェーブで125oCまで加熱し、30min反応させる。その後、反応溶液用1MのNaOH水溶液をアルカリ性に調整することで、白い固体が析出する。濾過して、水で固体を洗浄し(20ml×3)、乾燥させることで、白い固体である化合物15(0.8g、79.0%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)7.92(1H,d,J=8.8Hz)、6.62(1H,s)、4.10(2H,s)、2.99(3H,s)。
【0084】
4−(1−シアノ−シクロブチルアミン)−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体16)の合成
【0085】
TMSCN(1.77g、17.54mmol)と、シクロブタノン(0.89ml、11.88mmol)と、化合物15(1g、5.95mmol)とを酢酸(10ml)に溶解し、80oCでひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、水(10ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、茶色の固体化合物16(1.31g、90%の收率)が得られる。1H NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)7.79(1H,s)、7.56(1H,d,J=8.8Hz)、7.36(1H,s)、2.76(2H,m)、2.36(2H,m)、2.07(2H,m)。MS:250.1(M+H+)。
【0086】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物17)の合成
【0087】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物16(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮する。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物17(38.4mg)が得られ、その收率は32%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.17(1H,d,J=2.0Hz)、8.65(1H,d,J=2.0Hz)、7.96(1H,d,J=8.0Hz)、2.98(3H,s)、2.73(2H,m)、2.60(2H,m)、2.16(1H,m)、1.67(1H,m)。MS:480.1(M+H+)。
【0088】
実施例4 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物20)の合成
【0089】
3,5−二重水素化−4−アミノ−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(中間体18)の合成
【0090】
濃塩酸(0.5ml,6.0mmol)を、化合物12(1g,6.0mmol)が重水(10ml)で懸濁液したものに添加することで、化合物12の塩酸塩の重水溶液を形成する。前記混合物をパワー75Wのマイクロウェブで125oCまで加熱し、30min反応させる。その後、反応溶液用1MのNaOH水溶液をアルカリ性に調整することで、白い固体が析出する。濾過して、水で固体を洗浄し(20ml×3)、乾燥させることで、白い固体である化合物18(0.8g、79.0%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)7.92(1H,d,J=8.8Hz)、6.62(1H,s)、4.10(2H,s)。
【0091】
4−(1−シアノ−シクロブチルアミン)−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(中間体19)の合成
【0092】
TMSCN(1.77g、17.54mmol)と、シクロブタノン(0.89ml、11.88mmol)と、化合物18(1g、5.95mmol)とを酢酸(10ml)に溶解し、80oCでひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、水(10ml)を加え、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、茶色の固体化合物19(1.31g、90%の收率)が得られる。1H NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)7.79(1H,s)、7.56(1H,d,J=8.8Hz)、7.36(1H,s)、2.76(2H,m)、2.36(2H,m)、2.07(2H,m)。MS:253.1(M+H+)。
【0093】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−3,5−二重水素化−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物20)の合成
【0094】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物19(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、クロマトグラフィーを作成して、白い固体である化合物20(48mg)が得られ、その收率は40%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.17(1H,d,J=2.0Hz)、8.65(1H,d,J=2.0Hz)、7.95(1H,d,J=8.0Hz)、2.73(2H,m),2.60(2H,m)、2.16(1H,m)、1.67(1H,m)。MS:483.3(M+H+)。
【0095】
実施例5 4−[1,1,3,3−四重水素化−7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物23)の合成
【0096】
2,2,4,4−四重水素化シクロブタノン(中間体21)の合成
【0097】
シクロブタノン(2g,28.6mmole)を1,4−ジオキサン及び重水(30ml+10ml)の混合溶媒に添加して、炭酸カリウム(10g,72.5mmole)をさらに添加し、管に密封して75oCまで加熱し、24h反応させ、室温まで冷却した後、上層の有機相を分離してそのまま次の反応に用いる。
【0098】
4−((2,2,4,4−四重水素化−1−シアノ - シクロブチル)アミノ)−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体22)の合成
【0099】
化合物8(70mg,0.42mmole)とTMSCN(0.5ml)とを、上のステップで得られた化合物21(1,4−ジオキサンに溶解する)(5ml)に添加して、80oCまで加熱し、ひと晩放置する。減圧して溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことにより、白い固体である化合物22(54mg)が得られ、収率は52%である。1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)8.00(1H,m),6.62(1H,br),6.49(1H,d,J=8.4Hz),6.30(1H,d,J=14Hz),4.51(1H,br),3.01(3H,s),2.23(1H,d,J=12Hz),2.16(1H,d,J=12Hz)。
【0100】
4−[1,1,3,3−四重水素化−7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−8−オキソ−6−チオ−5,7−ジアザスピロ[3,4]−5−オクタル]−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物23)の合成
【0101】
チオホスゲン(25.6mg、0.21mmol)を化合物22(54mg、0.21mmol)と化合物5(37mg、0.21mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加して、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物23(40mg)が得られ、その收率は39.6%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.17(1H,d,J=1.6Hz)、8.65(1H,d,J=1.6Hz)、7.95(1H,m)、7.41(2H,m)、2.98(3H,s)、2.13(1H,m)、1.64(1H,m)。MS:482.2(M+H+)。
【0102】
実施例6 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物25)の合成
【0103】
4−(2−シアノ−2−プロピルアミノ)−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体24)の合成
【0104】
TMSCN(5g、50.4mmol)と、化合物8(2g、11.9mmol)とを酢酸(10ml)とアセトンの混合溶媒に溶解し、80oCで、管に密封して、ひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、減圧してアセトンを蒸発除去し、水(20ml)を添加して、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、白い固体である化合物24(2.6g、91.5%の收率)が得られる。1H NMR(CDCl3,400 MHz):δ(ppm)7.97(1H,m)、6.65(1H,s)、6.62(1H,d,J=5.2Hz)、6.59(1H,d,J=14.8Hz)、4.40(1H,s)、3.01(3H,d,J=4Hz)、1.76(6H,s)。
【0105】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物25)の合成
【0106】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物24(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物25(48mg)が得られ、その收率は40%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.19(1H,d,J=1.6Hz)、8.70(1H,d,J=1.6Hz)、7.91(1H,m)、7.40(2H,m)、2.97(3H,s)、1.63(6H,s)。MS:465.1(M+H+)。
【0107】
実施例7 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物27)の合成
【0108】
4−(2−シアノ−2−プロピルアミノ)−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(中間体26)の合成
【0109】
TMSCN(4g、40.3mmol)と、化合物12(1.5g、8.8mmol)とを酢酸(10ml)とアセトン(10ml)の混合溶媒に溶解し、80oCで、管に密封して、ひと晩(16h)反応させる。室温まで冷却し、減圧してアセトンを蒸発除去し、水(20ml)を添加して、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、白い固体である化合物26(2.0g、93.4%の收率)が得られる。
【0110】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物27)
【0111】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物26(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物27(48mg)が得られ、その收率は40%である。1H NMR(CD3OD,400MHz): δ(ppm)9.19(1H,d,J=1.6Hz),8.70(1H,d=1.6Hz)7.91(1H,m),7.39(2H,m),1.63(6H,s)。MS:469.2(M+H+)。
【0112】
実施例8 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−三重水素化メチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物29)の合成
【0113】
4−(2−シアノ−2−六重水素化プロピルアミノ)−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(中間体28)の合成
【0114】
TMSCN(2.1g、21.2mmol)と、化合物8(0.7g、4.2mmol)と、重水素化アセトンとの混合物を、マイクロウェーブの反応管に投入し、パワーは50Wのマイクロウェーブで80oCまで加熱し、3h反応させ、室温まで冷却し、減圧して重水素化アセトンを蒸発除去し、水(20ml)を添加して、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、白い固体である化合物28(870mg、86.6%の收率)が得られる。
【0115】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−二(三重水素化メチル)−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−メチル−ベンズアミド(化合物29)の合成
【0116】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物28(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)と濃塩酸(2ml)とを添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物29(48mg)が得られ、その收率は40%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.19(1H,d,J=1.2Hz),8.70(1H,d=1.2Hz)7.91(1H,m),7.39(2H,m),2.97(3H,s)。MS:472.2(M+H+)。
【0117】
実施例9 4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−三重水素化メチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物31)の合成
【0118】
4−(2−シアノ−2−六重水素化プロピルアミノ)−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(中間体30)の合成
【0119】
TMSCN(2.1g、21.2mmol)と、化合物12(0.7g、4.2mmol)と、重水素化アセトン(1.5g、23.4mmol)との混合物を、パワー50Wであるマイクロウェブの反応管に投入し、80oCまで加熱し、3h反応させ、室温まで冷却し、減圧して重水素化アセトンを蒸発除去し、水(20ml)を添加して、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、石油エーテル(10ml)で得られた固体を洗浄し、濾過することで、白い固体である化合物30(870mg、86.6%の收率)が得られる。
【0120】
4−[7−(6−シアノ−5−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5,5−三重水素化メチル−4−オキソ−2−チオイミダゾリル−2−フルオロ−N−三重水素化メチル−ベンズアミド(化合物31)の合成
【0121】
チオホスゲン(32mg、0.26mmol)を化合物30(68mg、0.26mmol)と化合物5(50mg、0.26mmol)とのDMA(10ml)溶液に滴下し、60oCまで加熱し、ひと晩放置する(16h)。メタノール(10ml)、水(10ml)及び濃塩酸(2ml)を添加し、1h加熱還流する。酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる。カラムクロマトグラフィーによる精製で(PE:EA/1:1)、茶色の固体が得られる。さらに、分取クロマトグラフィーにより精製して、白い固体である化合物31(48mg)が得られ、その收率は40%である。1H NMR(CD3OD,400MHz):δ(ppm)9.19(1H,d,J=1.6Hz)、8.70(1H,d=1.6Hz)7.91(1H,m)、7.39(2H,m)。MS:475.1(M+H+)。
【0122】
化合物33、35、36、37、38、40、41、42、43は、化合物14の製造方法で合成する。
【0123】
以下、試験例を通じて、本発明の有益な効果について詳細に説明する。
【0124】
試験例1:マウスの薬動力学(pharmacokinetics)の評価について
健康な雄の昆明種のマウス(体重は18〜20gである)に対して、各被試験化合物をそれぞれ胃腸内に10mg/kg投入し、DMSO:PEG400:H2O=1:5:14の比率で溶解した。投薬体積は10ml/kgである。試験前に、12h絶食させ、水は自由に摂取させた。投薬してから2h経過後に摂食させた。投薬後の0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、24hの各タイミングで、3匹のマウスの眼球後ろの静脈叢から血を0.3ml抽出し、へバリン化チューブに注入した。その後、4℃かつ3500rpmで、10分間遠心処理し、血漿を分離し、−20(Cの冷蔵庫で凍結する。自動分注器で血清を100μ吸出して、清潔なプラスチック製の遠心チューブに入れ、化合物の名称やタイミングを明記した。その後、アセトニトリル(CH3CN)を入れて希釈すると共に、遠心分離を行い、その後、LC−MSで薬物の濃度を分析した。分析した結果を表1に示す。血清は、LC−MS分析を行う前に−80℃で保存した。
【0125】
【表1】
【0126】
表1のデータから、重水素化合物のTmaxは、非重水素化合物とほぼ一致しており、表に示す重水素化合物のCmax及びAUC0-tは、共に非重水素化合物よりも高く、より優れた薬物動態学的特性を示していることが判る。
【0127】
試験例2:ラットの薬動力学(pharmacokinetics)の評価について
雄のSDラットで(体重は180〜220gである)に対して、被試験化合物を胃腸内に投入した。投薬量は10mg/kgであり、投薬体積は10mL/kgである。通常の測定方法で評価をした。その結果を以下に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2のデータから、重水素化合物のTmaxは、非重水素化合物とほぼ等しくなるが、半減期が長くなり、Cmax及びAUC(露出量)はともに非重水素化合物よりも良くなっていることが判る。
【0130】
試験例3:試験管テスト
テスト対象である化合物は、前立腺癌の細胞の生長を抑制する能力について
まず、構築された人間の前立腺癌の細胞であるLNCap/AR細胞を、チャコール処理(charcoal stripped)された牛胎児血清(CCS)を10%含んだRPMI1640培養液に転送(transfer)し、細胞が対数増殖期になるまで培養し、トリプシンで細胞を消化し、トリパンブルー染色法で細胞をカウントした後、細胞をプレート化した。各孔には、細胞懸濁液を100μL加え、4000個の細胞を含んでいる。エッジ効果を回避するために、細胞板の周りに、培養基を200μL加えた。
【0131】
細胞を24hプレートした後、対応する濃度の薬物を製造するために、DHT(−/+)濃度が0nM/L又は200nM/Lの、CSSを10%含むRPMI1640培養基を製作した。薬を加える前に、薬物の濃度がそれぞれ(20nM、100nM、200nM、1000nM、2000nM、10000nM、20000nM)である薬物含有培養基を製作し、細胞板における各孔に、対応する濃度の化合物を100μL入れ、薬物の濃度が均一になるように軽く振った。細胞板を細胞培養ケースに30min放置し、各孔に4nMのR1881を10μL加え、均一になるよう混合した。R1881を入れた後、96孔の板を細胞培養ケースに入れ、37℃、5%CO2の下で、6日間培養した。各孔にCCK−8薬剤を15μL加え、37℃で2h培養した。マイクロプレートリーダーを用いて、490nmの波長でプレートを読み出し、単位はODとした。以下の式を用いて、テスト対象である化合物の抑制率を計算した。
【0132】
IR(%)=(OD対照−OD見本)/(OD対照 −OD空白)×100%
GraphPad Prism 5.0を用いてテスト対象である化合物の抑制率の曲線を描く。当該ソフトは、50%の抑制率、即ちIC50(nM)を計算することができる。
【0133】
【表3】
【0134】
この結果から、本発明の化合物は、前立腺癌細胞の生長に対して良好な抑制能力を有するとともに、重水素化されていない化合物10よりも明らかに優れているということが判る。
【0135】
以上のように、本発明の化合物は、より優れた薬動力学性能及び/又は薬動態性能(pharmacokinetic and/ orpharmacodynamicproperties)を有し、アンドロゲン受容体拮抗薬として用いられることができ、さらに、アンドロゲンに関わる疾病(例えば、癌など)を治療するための薬物の製造に適用することができる。