【文献】
Myriam Pire, et al.,Imidazole-promoted acceleration of crosslinking in epoxidized natural rubber/dicarboxylic acid blend,Polymer,ELSEVIER,2011年,vol. 52,5243-5249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
調査研究の続行中、本出願法人は、今回、タイヤ用の特定の組成物を、ジエンエラストマーをベースとする通常の加硫組成物と対比して簡単な方法で製造し得ること、並びにこれらの混合物が剛性およびヒステリシスの双方において改良を示し得ることを見出した。
【0008】
結果として、本発明の主題は、主要エラストマーとしての、エポキシド官能基を含む少なくとも1種のエチレン系エラストマー;少なくとも1種の補強用充填剤;並びに、下記の一般式(I):
【化1】
(式中、Aは、共有結合、または少なくとも1個の炭素原子を有し、必要に応じて置換され且つ必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている炭化水素基を示す)
のポリカルボン酸と、下記の一般式(II):
【化2】
(式中、・R
1は、炭化水素基または水素原子を示し;
・R
2は、炭化水素基を示し;
・R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素基を示し;
・或いは、R
3およびR
4は、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)
のイミダゾールとを含む架橋系をベースとするゴム組成物を含むタイヤである。
【0009】
好ましくは、本発明の主題は、Aが、共有結合、または1〜1800個の炭素原子、好ましくは2〜300個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す、上記で定義したようなタイヤである。さらに好ましくは、Aは、2〜100個の炭素原子、好ましくは2〜50個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す。さらにより好ましくは、Aは、3〜50個の炭素原子、好ましくは5〜50個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す、さらにより好ましくは、Aは、8〜50個の炭素原子、好ましくは10〜40個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す。
【0010】
この場合も好ましくは、本発明の主題は、Aが、脂肪族もしくは芳香族タイプの2価の基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基である、上記で定義したようなタイヤである。好ましくは、Aは、脂肪族タイプの2価の基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基である。この場合も好ましくは、Aは、飽和または不飽和脂肪族タイプの2価の基である。極めて好ましくは、Aは、アルキレン基である。
【0011】
好ましくは、本発明の主題は、Aが、酸素、窒素およびイオウ、好ましくは酸素から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子によって遮断されている、上記で定義したようなタイヤである。
【0012】
この場合も好ましくは、本発明の主題は、Aが、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノおよびカルボニル基から選ばれる少なくとも1個の基によって置換されている、上記で定義したようなタイヤである。好ましくは、Aは、1個以上のカルボン酸官能基によっておよび/またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールまたはアラルキル基から選ばれ、これらの基自体1個以上のカルボン酸官能基によって置換されている1個以上の炭化水素基によって置換されている。また、この場合も好ましくは、Aは、他のカルボン酸官能基を含んでいない。
【0013】
好ましくは、本発明の主題は、ポリ酸の含有量が、0.2〜100phr、好ましくは0.2〜50phrの範囲内である、上記で定義したようなタイヤである。さらに好ましくは、ポリ酸の含有量は、0.4〜30phrの範囲内である。
【0014】
好ましくは、本発明の主題は、下記であるところの、上記で定義したようなタイヤである:
・R
1は、水素原子或いは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基を示し、これらの基は、必要に応じて、1個以上のヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよく;
・R
2は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基を示し、これらの基は、必要に応じて、1個以上のヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよく;
・R
3およびR
4は、個々に、水素或いは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれる同一または異なる基を示し、これらの基は、必要に応じて、ヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよく;或いは、R
3およびR
4は、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5〜12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選ばれる環を形成する。
【0015】
好ましくは、本発明の主題は、R
1が、2〜12個の炭素原子を有するアルキル基または7〜13個の炭素原子を有するアラルキル基を示し、これらの基が、必要に応じて、置換されていてもよい、上記で定義したようなタイヤである。
【0016】
この場合も好ましくは、本発明の主題は、R
1が、7〜13個の炭素原子を有する必要に応じて置換されたアラルキル基を示し;R
2が、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基である、上記で定義したようなタイヤである。さらに好ましくは、R
1は、7〜9個の炭素原子を有する必要に応じて置換されたアラルキル基を示し;R
2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0017】
好ましくは、本発明の主題は、R
3およびR
4が、個々に、水素或いは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜24個の炭素原子を有するアリール基または7〜13個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれる同一または異なる基を示し、これらの基は、必要に応じて、置換されていてもよい、上記で定義したようなタイヤである。
【0018】
この場合も好ましくは、本発明の主題は、R
3およびR
4が、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒に、ベンゼン、シクロヘキセンまたはシクロペンテン環を形成する、上記で定義したようなタイヤである。
【0019】
好ましくは、本発明の主題は、上記イミダゾールの含有量が、一般式(I)のポリカルボン酸上に存在するカルボン酸官能基に対して、0.5〜4モル当量、好ましくは0.5〜3モル当量の範囲内である、上記で定義したようなタイヤである。さらに好ましくは、上記イミダゾールの含有量は、一般式(I)のポリカルボン酸上に存在するカルボン酸官能基に対して、0.5〜2.5モル当量、好ましくは0.5〜2モル当量、さらにより好ましくは0.5〜1.5モル当量の範囲内である。
【0020】
好ましくは、本発明の主題は、エポキシド官能基を含む上記エチレン系エラストマーが、50%と95%の間(モル%)、さらに好ましくは65%と85%の間(モル%)の量のエチレンを含む、上記で定義したようなタイヤである。
【0021】
好ましくは、本発明の主題は、エポキシド官能基を含む上記エチレン系エラストマーが、0〜70phr、好ましくは0〜50phrの1種以上の少量非エポキシ化エラストマーとのブレンドとして、30〜100phr、好ましくは50〜100phrを示す、上記で定義したようなタイヤである。さらに好ましくは、エポキシド官能基を含む上記エチレン系エラストマーは、100phrのエラストマーの全てを示す、
【0022】
好ましくは、本発明の主題は、上記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、上記で定義したようなタイヤである。好ましくは、本発明の主題は、補強用充填剤の含有量が、20phrと200phrの間の量である、上記で定義したようなタイヤである。
【0023】
本発明に従うタイヤは、特に、乗用車用;さらに、二輪車(オートバイ、自転車);バン類、“大型車両”(即ち、地下鉄、バス、大型道路輸送車(例えば、トラック、トラクターまたはトレイラー)または道路外車両(大型農業用車両または地ならし機)、飛行機、および他の輸送または操作車両から選ばれる産業用車両用を意図する。
【0024】
本発明およびその利点は、以下の説明および実施例に照らせば容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I. 試験
上記ゴム組成物か、硬化後、これら組成物の機械的および動的性質によって特性決定する;また、これらの組成物を、以下で示すように、これら組成物の架橋特性によっても特性決定する。
【0026】
I. 1. 機械的性質:引張試験
これらの引張試験は、弾性応力および破断点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46−002に従って実施する。また、引張記録の加工は、モジュラス曲線を伸びの関数としてプロットすることも可能にする;使用するモジュラスは、この場合、1回目の伸びで測定し、試験標本の初期断面まで減じることによって算出した公称(または見掛け)割線モジュラスである。2回目の伸びにおいて(即ち、測定自体においてもたらされる伸長速度での順応サイクル後に)、公称割線モジュラス(即ち、MPaでの見掛け応力)を10%伸び(ASM10で示す)または50%伸び(ASM50で示す)において測定する。順応割線モジュラスを判定する引張測定は、23℃±2℃の温度において、さらに、標準の湿度測定条件(50±5%の相対湿度)下に実施する。これらの値は、剛性を代表する:上記モジュラスの値が高いほど、剛性は高い。
【0027】
破壊応力(MPaでの)および破断点伸び(%での)は、規格 NF T 46−002に従って23℃±2℃で測定し、対照に対する基本点100で表し得る。
【0028】
I. 2. 動的特性
動的特性G*およびtan(δ)maxを、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦波剪断応力に10Hzの周波数で供した架橋組成物のサンプル(4mmの厚さおよび400mm
2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を、規格ASTM D 1349−99に従う標準温度条件(23℃)下に或いは必要に応じて異なる温度において記録する。歪み振幅掃引を、0.1%から100%まで(前向きサイクル)、次いで、100%から0.1%まで(戻りサイクル)実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数tan(δ)である。戻りサイクルにおいて、tan(δ)maxで表す観察されたtan(δ)の最高値が示される。この値は、材料のヒステリシスを、本発明の場合は、転がり抵抗性を代表する:tan(δ)maxの値が低いほど、転がり抵抗性は低い。23℃において測定したG*の値は、剛性、即ち、歪みに対する抵抗性を代表する:G*の値が高いほど、材料の剛性は高く、従って、耐摩耗性は高い。
【0029】
I. 3. 架橋特性:流動度測定
測定を、規格DIN 53529−パート3 (1983年6月)に従い、振動ディスクレオメーターによって150℃にて実施する。時間の関数としての流動度トルクの変化は、架橋反応の結果としての組成物の剛性化の変化を説明する。測定値を、規格DIN 53529−パート2 (1983年3月)に従って処理する:
・tiは、誘導期間、即ち、架橋反応の開始に必要な時間である;
・t
α(例えば、t
90)は、α%の変換、即ち、最低トルクと最高トルク間の差のα%(例えば、9%)を達成するのに必要な時間である;
・達成された最高トルク:試験条件下での架橋最適化に相当する、試験中の組成物において達成された最高トルクのdN.mで測定した値。
【0030】
I. 4. 熱酸化特性:熱酸化に対する耐性試験
硬化後、熱酸化に対する耐性特性を評価すべきである組成物に相応するゴムブロックを、50%の相対湿度下85℃の温度のオーブン内で4週間エージングする。
その後、上記で説明した機械的および動的性質を再評価し得る。得られた新たな値は、各組成物におけるエージング前の初期値に対する基本点100において表し得る;熱酸化に対する耐性は、得られる値が100に近づくにつれて上昇する。
【0031】
II. 本発明のタイヤの組成物
本発明に従うタイヤは、主要エラストマーとしての、エポキシド官能基を含む少なくとも1種のエチレン系エラストマー;少なくとも1種の補強用充填剤;および、一般式(I)のポリカルボン酸と一般式(II)のイミダゾールを含む架橋系をベースとするゴム組成物を含む。
【0032】
“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものとして理解すべきである;これらのベース構成成分の数種は、組成物の製造の各種段階において、特に、組成物の架橋または加硫中に少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図する。
【0033】
“モル当量”なる表現は、当業者にとっては周知であり、参照化合物のモル数に関連した化合物のモル数の商を意味するものと理解すべきである。即ち、化合物Aに対する化合物Bの2当量は、1モルの化合物Aを使用するときの2モルの化合物Bを示す。
【0034】
“主要”化合物に言及する場合、この言及は、本発明の意味の範囲内において、この化合物が上記組成物中の同じタイプの化合物のうちで主要であること、即ち、この化合物が同じタイプの化合物のうちで最大の質量による量を示す化合物であることを意味するものと理解されたい。即ち、例えば、主要エラストマーは、上記組成物中のエラストマーの総質量に対して最大質量を示すエラストマーである。同様に、“主要”充填剤は、上記組成物の充填剤のうちで最大質量を示す充填剤である。例えば、1種のみのエラストマーを含む系においては、このエラストマーが、本発明の意味の範囲内において主要であり、また、2種のエラストマーを含む系においては、主要エラストマーは、これらのエラストマーの質量の半分よりも多くを示す。
上記に対し、“少量”化合物は、同じタイプの化合物のうちで最大質量画分を示さない化合物である。
【0035】
本説明においては、特に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量パーセント(%)である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外される)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0036】
II. 1. エポキシド官能基を含むエチレン系エラストマー(または、エポキシ化エチレン系エラストマー)
上記エポキシ化エチレンタイプのエラストマーまたはゴム(これら2つの用語は、知られている通り、同義で且つ互換可能である)は、エポキシド官能化エラストマーを意味するものと理解すべきこと、即ち、上記エラストマーはエポキシド官能基を担持し、そのエラストマー鎖は、エチレン[−CH
2−CH
2−]モノマー単位(Eで示す)を主として含む(50%よりも多いモル含有量)炭素鎖であることを思い起こすべきである。さらに好ましくは、Eのモル含有量は、50%と95%の間、さらにより好ましくは65%と85%の間の量である。従って、このエチレン系エラストマーは、5〜50モル%の非エチレン単位(即ち[−CH
2−CH
2−]と異なる、即ちEと異なる)を含むコポリマーでもある。これらの非エチレン単位は、本発明の前提条件にとって必要なエポキシド官能基を担持する単位(Rで示す)から部分的にまたは完全になる。全部ではない上記非エチレン単位がR単位である場合、他の単位(A’で示す)が、炭素鎖中に、R+A’のモル比が厳格に50%未満であるような形で存在する。
【0037】
本発明の前提条件において使用するエポキシ化エチレン系エラストマーの本質的な特徴は、上記エラストマーが官能化されて、エポキシド官能基を担持することである。
【0038】
エポキシド官能基は炭素骨格によって直接担持させることができ、その場合、共重合後の当初に存在する炭素・炭素二重結合のエポキシ化によって主として得られる。不飽和ポリマーのこのエポキシ化は、当業者にとって周知であって、例えば、クロロヒドリンまたはブロモヒドリンに基づく方法、直接酸化法または過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシドもしくは過酸(過酢酸または過ギ酸のような)に基づく方法によって実施し得る。
【0039】
また、エポキシド官能基は、ペンダントでもあり得、その場合、エチレンとの共重合に関与するモノマー(このモノマーは、例えば、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルまたはビニルグリシジルエーテルであり得る)中に既に存在しているか或いはペンダント官能基の共重合後変性によって得られる。
【0040】
上記のエポキシ化エチレン系エラストマーのR単位の含有量(モル%)は、本発明の特定の実施態様に従い、大いに、好ましくは0.1%〜50%の範囲内で、好ましくは2%〜50%の範囲内で、さらに好ましくは2%〜20%の範囲内で変動し得る。R単位の含有量が0.1%よりも低い場合、目標とする技術的効果が不十分であるリスクが存在し、一方、50%よりも高いと、上記エラストマーはもはや主としてエチレン系ではない。
【0041】
上記非エチレン単位が全体的にエポキシド官能基を担持するR単位からならない場合、他の非エチレン単位A’は、鎖中に、モノマーE、RおよびA’によって示される総モル含有量が100%に等しいように存在する。上記エポキシ化エチレン系エラストマーの調製において使用する上記非エチレン系モノマーは、重合させたとき、エラストマー鎖中に不飽和をもたらさないモノマーから選択し得るが、ジエンモノマーでもあり得る。
【0042】
不飽和をもたらさない上記非エチレンモノマーは、本質的に、オレフィン系(エチレンを除く)、ビニルおよびアクリル/メタクリルモノマーである。例えば、そのようなモノマーは、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、メチルアクリレートまたはメチルメタクリレートから選択し得る;これらのモノマーは、必要に応じて、アルキルもしくはアリール基または他の官能基によって置換する。
【0043】
例えば、この場合も、共重合によるエチレン系タイプのエラストマーの調製において使用するジエンモノマーは、全て、不飽和エラストマーを形成することが当業者に知られているモノマー、例えば、イソプレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエンまたは2,4−ヘキサジエンから選ばれるモノマーであり得、これらのモノマーは、必要に応じて置換する。
【0044】
上記のエポキシ化エチレン系エラストマーは、知られている通り、周囲温度(20℃)で固体である;固体とは、遅くとも24時間後に、単なる重力の作用下では、周囲温度(20℃)においてはそれが存在する容器の形を実質的に取る能力を有していない任意の物質を意味するものと理解されたい。
【0045】
上記エポキシ化エチレンエラストマーは、極めて大多数の例においてマイナスである(即ち、0℃よりも低い)Tgを有する。上記エラストマーのTgは、DCS (示差走査熱量測定法)により、既知の方法で、例えば、また、特に断らない限りは本特許出願においては、1999年の規格ASTM D3418に従って測定する。
【0046】
上記エポキシ化エチレン系エラストマーは、少なくとも20 000g/モルの、また、多くとも1 500 000g/モルの数平均モル質量(M
n)を示す。多分散性指数PDIは、M
w/M
n (M
wは質量平均モル質量である)に等しく、1.05と9.00の間である。
【0047】
好ましくは、また、要約すれば、エポキシド官能基を含む上記エチレン系エラストマーは、上記したように、少なくとも50%(モル数で)のエチレン[−CH
2−CH
2−]モノマー単位を有し且つ2個以上、好ましくは2〜5個、より好ましくは2個または3個の異なるモノマー単位数を有するコポリマーである。このコポリマーは、共重合によりまたはエラストマーの重合後変性により得ることができる。共重合または重合後変性によって得られた上記エチレン系コポリマーに存在するエポキシド官能基は、調製方法に応じて、例えば、共重合後のエラストマー鎖中に存在するジエン官能基のエポキシ化により或いは任意の他の変性により、鎖骨格によって直接担持されるか或いは側基によって担持されるであろう。
【0048】
エポキシ化エチレン系エラストマーおよびその調製方法は、当業者にとって周知であって、商業的に入手可能である。エポキシド基を担持するエチレン系エラストマーは、例えば、文献EP 0 247 580号およびUS 5 576 080号に記載されている。また、Arkema社は、エポキシ化ポリエチレンを商品名Lotader AX8840およびLotader AX8900として商業的に提供している。
【0049】
本発明のタイヤの組成物は、1種のみのエポキシ化エラストマーまたは数種のエポキシ化エチレン系エラストマーの混合物(その場合、“上記エポキシ化エチレン系エラストマーであるものとして単数で示して上記組成物のエポキシ化エラストマーの総和を表す)を含み得る;上記エポキシ化エチレンエラストマーを任意のタイプの非エポキシ化エラストマー、例えば、ジエンエラストマー、実際にはジエンエラストマー以外のエラストマーと組合せて使用することは可能である。
【0050】
上記エポキシ化エチレン系エラストマーは、本発明のタイヤのゴム組成物中で主要である、即ち、上記エポキシ化エチレン系エラストマーは、唯一のエラストマーであるか、或いは、上記組成物のエラストマーのうちの最高質量を示すエラストマーである。
【0051】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば、30〜100phr、特に50〜100phr、好ましくは70〜100phrの主要エポキシ化エチレンエラストマーを、0〜70phr、特に0〜50phr、好ましくは0〜30phrの1種以上の他の少量エラストマーとのブレンドとして含む。
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記組成物は、100phrのエラストマー全体において、1種以上のエポキシ化エチレン系エラストマーを含む。
【0052】
II. 2. 補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0053】
全てのカーボンブラック、特に、タイヤにおいて通常使用するHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN772)も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0054】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO−A−2006/069792号、WO−A−2006/069793号、WO−A−2008/003434号およびWO−A−2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0055】
“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色充填剤”、“透明充填剤”としても、または実際には“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、任意構成成分としての中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る、任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来、天然または合成の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(−OH)基の存在に特徴を有する。
【0056】
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0057】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET比表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0058】
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m
2/gと400m
2/gの間、より好ましくは60m
2/gと300m
2/gの間のBET比表面積を有する。
【0059】
好ましくは、補強用充填剤全体(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間の量であり、最適量は、知られている通り、目標とする特定の用途によって異なる:例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、勿論、継続的に高速走行し得るタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用タイヤ、または大型車のような実用車用タイヤに関して要求される補強レベルよりも低い。
【0060】
本発明の好ましい実施態様によれば、30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間の量の有機充填剤、特にカーボンブラックと、任意構成成分としてのシリカとを含む補強用充填剤を使用する;シリカは、存在する場合、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば、0.1phrと10phrの間)の含有量で使用する。
【0061】
また、本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間の量の無機充填剤、特にシリカと、任意構成成分としてのカーボンブラックとを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば、0.1phrと10phrの間)の含有量で使用する。
【0062】
上記無機充填剤と上記エチレン系エラストマー間のカップリングは、一つには、上記2つの存在物間に存在する化学的および/または物理的性質の相互作用によってもたらされ得る。
【0063】
にもかかわらず、上記補強用無機充填剤と上記エラストマー間のカップリングを強化するには、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合をもたらすことを意図するカップリング剤(または結合剤)、例えば、少なくとも二官能性カップリング、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用し得る。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは0〜12phr、より好ましくは0phrと8phrの間の量である。
【0064】
当業者であれば、この項において説明している補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、その表面に、充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とし得る官能部位、特にヒドロキシル部位を含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0065】
II. 3. 架橋系
上記で説明したエポキシ化エチレン系エラストマーと補強用充填剤は、本発明に従うタイヤの組成物を架橋または硬化させることのできる架橋系と混合する。この架橋系は、一般式(I)の少なくとも1種のポリカルボン酸と一般式(II)の少なくとも1種のイミダゾールを含む。
【0066】
II. 3. a ポリ酸
本発明の前提条件において使用するポリ酸は、下記の一般式(I)を有するポリカルボン酸である:
【化3】
(式中、Aは、共有結合、または少なくとも1個の炭素原子を有し、必要に応じて置換され且つ必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている炭化水素基を示す)。
【0067】
好ましくは、一般式(I)のポリ酸においては、Aは、共有結合、または1〜1800個の炭素原子、好ましくは2〜300個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜100個の炭素原子、極めて好ましくは2〜50個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す。1800個よりも多い炭素原子数では、そのポリ酸は、あまり有効ではない架橋剤である。従って、Aは、好ましくは、3〜50個の炭素原子、好ましくは5〜50個の炭素原子、さらに好ましくは8〜50個の炭素原子、さらにより好ましくは10〜40個の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す。
【0068】
好ましくは、一般式(I)のポリ酸においては、Aは、脂肪族もしくは芳香族タイプの2価の基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基であり得る。好ましくは、Aは、脂肪族タイプの2価の基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基であり得る。また、この場合も好ましくは、Aは、飽和または不飽和脂肪族タイプの2価の基、例えば、アルキレン基である。
【0069】
一般式(I)のポリ酸のA基は、酸素、窒素およびイオウ、好ましくは酸素から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子によって遮断し得る。
また、一般式(I)のポリ酸のA基は、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノおよびカルボニル基から選ばれる少なくとも1個の基によって置換し得る。
【0070】
一般式(I)のポリ酸は、2個よりも多いカルボン酸官能基を含み得る;この場合、A基は、1個以上のカルボン酸官能基によっておよび/またはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールまたはアラルキル基から選ばれ、これらの基自体1個以上のカルボン酸官能基によって置換されている1個以上の炭化水素基によって置換されている。
好ましい形態によれば、A基は、もう1個のカルボン酸官能基を含んでいない;従って、そのポリ酸は、ジ酸である。
【0071】
ポリ酸の含有量は、0.2〜100phr、好ましくは0.2〜50phr、さらに好ましくは0.4〜30phrの範囲内である。0.2phrよりも少ないポリ酸においては、架橋の効果が実質的でなく、一方、100phrよりも多いポリ酸では、ポリ酸、即ち、架橋剤が、エラストマーマトリックスに対して質量によって主要となる。
【0072】
本発明の前提条件において使用するポリ酸は、商業的に入手可能であり、或いは、当業者であれば、例えば文献US 7 534 917号において、さらにまた、この文献に引用されている参考文献において記載されている化学経路または文献US 3 843 466号に記載されている発酵のような生物学経路のような周知の方法に従う技術において容易に調製し得る。
【0073】
例えば、商業的に入手可能であり且つ本発明の前提条件において使用するポリ酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、或いはトリメシン酸または3,4−ビス(カルボキシメチル)シクロペンタンカルボン酸のようなポリ酸を挙げることができる。
【0074】
II. 3. b. イミダゾール
本発明のタイヤの架橋系において使用するイミダゾールは、下記の一般式(II)のイミダゾールである:
【化4】
(式中、・R
1は、炭化水素基または水素原子を示し;
・R
2は、炭化水素基を示し;
・R
3およびR
4は、互いに独立して、水素原子または炭化水素基を示し;
・或いは、R
3およびR
4は、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成する)。
【0075】
好ましくは、一般式(II)のイミダゾールは、下記であるような基を有する:
・R
1は、水素原子或いは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基を示し、これらの基は、必要に応じて、1個以上のヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよい;
・R
2は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基を示し、これらの基は、必要に応じて、1個以上のヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよい;
・R
3およびR
4は、個々に、水素或いは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、5〜24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜30個の炭素原子を有するアリール基または7〜25個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれる同一または異なる基を示し、これらの基は、必要に応じて、ヘテロ原子によって遮断されていてもおよび/または置換されていてもよく;或いは、R
3およびR
4は、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって、5〜12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選ばれる環を形成する。
【0076】
好ましくは、R
1は、2〜12個の炭素原子を有するアルキル基または7〜13個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれる基を示し、これらの基は、必要に応じて、置換されていてもよい。さらに好ましくは、R
1は、7〜13個の炭素原子を有する必要に応じて置換されたアラルキル基を示し;R
2は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を示す。さらにより好ましくは、R
1は、7〜9個の炭素原子を有する必要に応じて置換されたアラルキル基を示し;R
2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。
【0077】
好ましくは、R
3およびR
4は、個々に、水素或いは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜24個の炭素原子を有するアリール基または7〜13個の炭素原子を有するアラルキル基から選ばれる同一または異なる基を示し、これらの基は、必要に応じて、置換されていてもよい。また、この場合も好ましくは、R
3およびR
4は、これらが結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒に、ベンゼン、シクロヘキセンまたはシクロペンテン環を形成する。
【0078】
本発明の良好な実施においては、上記イミダゾールの含有量は、好ましくは、一般式(I)のポリカルボン酸上に存在するカルボン酸官能基に対して、0.5〜4モル当量、好ましくは0.5〜3モル当量の範囲内である。0.5モル当量よりも少ないと、イミダゾール協力剤(coagent)の効果が、上記ポリ酸を単独で使用している状態と比較して観察されない;一方、4モル当量の値よりも高いと、それより低い含有量と比較して、さらなる利益は観察されない。従って、上記イミダゾールの含有量は、さらに好ましくは、一般式(I)ポリカルボン酸上に存在するカルボン酸官能基に対して、0.5〜2.5モル当量、好ましくは0.5〜2モル当量、さらにより好ましくは0.5〜1.5モル当量の範囲内である。
【0079】
本発明の前提条件において使用するイミダゾールは、商業的に入手可能であり、或いは、当業者であれば、例えば、文献JP2012211122号およびJP2007269658号において或いはScience of Synthesis, 2002, 12, 325−528において記載されているような周知の方法に従う技術において容易に調製し得る。
【0080】
例えば、商業的に入手可能であり且つ本発明の前提条件において使用するイミダゾールとしては、1,2−ジメチルイミダゾール、1−デシル−2−メチルイミダゾールまたは1−ベンジル−2−メチルイミダゾールを挙げることができる。
【0081】
II. 3. c. ポリ酸およびイミダゾール
明らかに、また、本発明における“ベースとする”なる表現の定義によれば、上記で提示した一般式(I)のポリ酸と一般式(II)のイミダゾールをベースとする組成物は、上記ポリ酸と上記イミダゾールが一緒に前以って反応していて上記ポリ酸の1個以上の酸官能基とそれぞれ1個以上のイミダゾール核との間で円を形成している組成物であり得る。
【0082】
II. 4. 各種添加剤
また、本発明に従うタイヤのゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤または酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;上記で説明した架橋剤以外の架橋剤;補強用樹脂または可塑剤のような、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。好ましくは、上記可塑剤は、固形炭化水素樹脂(即ち可塑化用樹脂)、増量剤オイル(即ち可塑化用オイル)またはこれら2成分の混合物である。
【0083】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し且つ組成物の粘度を低下させることによって、生状態において加工されるべきそれら組成物の能力を改良することのできるより一般的な加工助剤も含み得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二級または第三級アミン;或いは、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0084】
好ましくは、本発明のタイヤの組成物は、上記で説明し且つ少なくとも1種のポリ酸と少なくとも1種のイミダゾールを含む架橋系以外の架橋系を含んでいない。換言すれば、少なくとも1種のポリ酸と少なくとも1種のイミダゾールをベースとする上記架橋系は、好ましくは、本発明のタイヤの組成物中の唯一の架橋系である。好ましくは、本発明のタイヤの組成物は、加硫系を含まないか或いは1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満の加硫系を含む。従って本発明に従うタイヤの組成物は、好ましくは、分子状イオウを含まないか或いは1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満の分子状イオウを含む。同様に、上記組成物は、好ましくは、当業者にとって既知であるような如何なる加硫促進剤も含まないか或いは1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より好ましくは0.2phr未満の加硫促進剤を含む。
【0085】
II. 5. ゴム組成物の製造
本発明のタイヤにおいて使用する上記組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、100℃と190℃の間、好ましくは120℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階)、および、その後の、典型的には100℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度まで低下させた機械的加工の第2段階(“生産”段階)を使用して製造し、この仕上げ段階において、上記架橋系を混入し得る。当業者であれば、ミキサー内の温度を上記エポキシ化エチレン系エラストマーの性質の関数として如何にして調整するかは承知しているであろう。
【0086】
場合によっては、本発明の実施においては、上記架橋系は、密閉ミキサー内に上記組成物の全ての他の構成成分と一緒に導入するかまたは上記の生産段階中に導入するかのいずれかである。
【0087】
そのようにして得られた最終組成物を、その後、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、本発明のタイヤの製造において使用するゴム形状要素を形成する。
【0088】
II. 6. 本発明のタイヤ
本発明に従うタイヤのゴム組成物は、上記タイヤの種々の部品内で、特に、クラウン、ビード領域、側壁領域およびトレッド(特にトレッドの下地層中)内で使用することができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、タイヤ内で、タイヤの少なくとも1つの部品内のエラストマー層として使用し得る。
【0089】
エラストマー“層”とは、ゴム(または“エラストマー”、両者は同義とみなす)組成物製の、任意の形状と厚さを有する任意の三次元構成要素、特に、シート、ストリップまたは任意の断面、例えば、矩形または三角形を有する他の構成要素を意味するものと理解されたい。
【0090】
先ずは最初に、上記エラストマー層は、タイヤのクラウン内に位置し、一方のトレッド、即ち、走行中に道路と接触することを意図する部分と他方の上記クラウンを補強するベルトとの間のトレッド下地層として使用し得る。このエラストマー層の厚さは、好ましくは0.5〜10mmの範囲内、特に1〜5mmの範囲内である。
【0091】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、本発明に従うゴム組成物は、タイヤのビード領域の、カーカスプライ、ビードワイヤーおよびカーカスプライの折返し間の半径方向の領域内に位置するエラストマー層を形成するのに使用し得る。
【0092】
同様に、本発明に従う組成物は、クラウンのプライ(タイヤベルト)内またはクラウンプライおよびカーカスプライの各末端間の領域内で使用し得る。
本発明のもう1つの好ましい実施態様は、本発明に従う組成物をタイヤの側壁領域内に位置するエラストマー層を形成するための使用であり得る。
また、本発明の組成物は、タイヤのトレッドにおいて有利に使用し得る。
【0093】
III. 本発明の実施例
III. 1. 組成物の製造
下記の試験を、以下の方法で実施する:上記エポキシ化エチレン系エラストマー、補強用充填剤、ポリ酸、イミダゾールおよび他の添加剤を、初期容器温度が約80℃である密閉ミキサー内に連続して導入する(最終充填度;約70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1段階で実施する;この段階は、上記組成物に応じて135℃〜165℃の範囲の最高“落下”温度に達するまで全体でおよそ2〜4分間続く。本発明に従わない幾つかの組成物中に存在する通常のイオウ含有加硫系の導入は、80℃での機械的加工の第2段階において実施する。
【0094】
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mm厚)または薄シートの形にカレンダー加工するか、或いは、形状要素の形に押出加工する。
【実施例1】
【0095】
III. 2. 実施例1
この試験は、特に本発明のタイヤのトレッドとして使用することのできるゴム組成物を説明する。これらの組成物は、通常のゴム組成物(イオウによる加硫)よりも優れている調製の容易性および簡素性を示すと共に上記組成物の剛性とヒステリシス間の妥協点もイオウによって加硫させた組成物と比較して改良している。
【0096】
このために、数種のゴム組成物、即ち、下記の表1に示すような本発明に従う組成物(C4)および本発明に従わない組成物(対照のC1〜C3)を上記したようにして調製した。
組成物C1〜C3は、加硫組成物(即ち、タイヤの硬化においては通常のイオウ系の加硫系によって架橋させた)であり、これら組成物のエラストマーの性質は変動し、さらにまた、充填剤の含有量も変動している;一方、組成物C4は、本発明に従うポリ酸とイミダゾールによって架橋させている。
【0097】
表1
(1) SBR:15%のスチレン単位、20%の1,2−ブタジエン単位および65%の1,4−ブタジエン単位;
(2) 水素化SBR (1):上記SBRの二重結合の65%を水素化している;
(3) EPOXPE:8%のグリシジルメタクリレート、24%のメチルアクリレートおよび68%のエチレンを含むエポキシ化ポリエチレン、Arkema社からのLotader AX8900;
(4) シリカ 160 MP、Rhodia社からのZeosil 1165MP;
(5) Degussa社からのTESPT Si69;
(6) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6−PPD);
(7) オレイン酸ヒマワリ油;
(8) ポリリモネン樹脂;
(9) Sigma Aldrich社からのドデカン二酸、CAS 693−23−2;
(10) Sigma Aldrich社からの1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、CAS = 13750−62−4;
(11) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS);
(12) ジフェニルグアニジン;
(13) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(14) Stearin (Uniqema社からのPristerene 4931)。
【0098】
組成物C1〜C4の性質を前述のようにして測定して、結果を下記の表2に示している。
混合物のより大きな簡素化が、加硫対照組成物におけるよりも少ない成分による本発明の組成物において注目される。さらにまた、通常の加硫系の本発明において処方しているようなポリ酸とイミダゾールの架橋系による置換えは、剛性の増大を得ると共に混合物のヒステリシス、即ち、加硫ジエン混合物の通常の剛性/ヒステリシス妥協点に関する不一致を改良することを可能にしていることも注目し得る。
【0099】
表2
【実施例2】
【0100】
III. 2. 実施例2
また、この試験も、特に本発明のタイヤのトレッドとして使用することのできるゴム組成物を説明する。これらの組成物は、通常のゴム組成物(イオウによる加硫)よりも優れている調製の容易性および簡素性を示すと共に上記組成物のヒステリシスもイオウによって加硫させた組成物と比較して改良している。
【0101】
このために、数種のゴム組成物、即ち、下記の表3に示すような本発明に従う組成物(C7)および本発明に従わない組成物(対照のC5およびC6)を上記したようにして調製した。
組成物C5およびC6は、エポキシド官能基を担持するが主としてジエンであるエラストマーをベースとし、イオウ(タイヤの硬化においては通常の)によってまたは本発明において提案したポリ酸/イミダゾール架橋系によって架橋させる組成物であり;一方、組成物C7は、本発明に従うポリ酸とイミダゾールによって架橋させたエポキシ化オレフィン系マトリックスをベースとしている。
【0102】
表3
(1) エポキシ化天然ゴム、Guthrie Polymer社からのENR25;
(2) EPOXPE:8%のグリシジルメタクリレート、24%のメチルアクリレートおよび68%のエチレンを含むエポキシ化ポリエチレン、Arkema社からのLotader AX8900;
(3) シリカ 160 MP、Rhodia社からのZeosil 1165MP;
(4) Degussa社からのDynasylan Octeo;
(5) N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6−PPD);
(6) Sigma Aldrich社からのドデカン二酸、CAS 693−23−2;
(7) Sigma Aldrich社からの1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、CAS = 13750−62−4;
(8) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS);
(9) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(10) Stearin (Uniqema社からのPristerene 4931)。
【0103】
組成物C5〜C7の性質を前述のようにして測定して、結果を下記の表4にしている。
混合物のより大きな簡素化が、加硫対照組成物におけるよりも少ない成分による本発明の組成物において注目される。さらにまた、通常の加硫系のポリ酸とイミダゾールの架橋系による置換えは、僅かな剛性化が伴って、混合物のヒステリシスの改良をもたらしていることも注目し得る。剛性の増大が伴うヒステリシスのこの低下は、エポキシ化ジエンマトリックスの本発明に従って架橋させたエポキシ化ポリオレフィンマトリックスによって置換えた場合に増進されている。
【0104】
表4
【実施例3】
【0105】
III. 3. 実施例3
この試験は、組成物C10が本発明の系と別の系で架橋させたゴム組成物よりも高い架橋効率を示すことを説明する。
このために、ゴム組成物を下記の表5において示すようにして調製した。組成物C8〜C10は、本発明に従いポリ酸とイミダゾール(
C8)或いはポリ酸のみ(
C9)またはイミダゾールのみ(
C10)のいずれかによって架橋させた組成物である。
【0106】
表5
(1) EPOXPE:92%のポリエチレンおよび8%のグリシジルメタクリレートを含むエポキシ化ポリエチレン、Arkema社からのLotader AX8840;
(6) Sigma Aldrich社からのドデカン二酸、CAS 693−23−2;
(7) Sigma Aldrich社からの1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、CAS = 13750−62−4。
【0107】
組成物C8〜C10の性質を前述のようにして測定して、結果を下記の表6に示している。
表6
【0108】
上記ポリ酸と上記イミダゾールの併用は、対照組成物
C9および
C10におけるよりも組成物
C8においてはるかに迅速で且つより有効な架橋を達成することを可能にしていることが注目される。