【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は、本発明によるパイルドライバによって達成され、このパイルドライバは、
− 杭のところにまたは杭に接して横断方向に配置されるまたは配置可能な支持部材と、
− 支持部材によって下面で境界が決められ、1つまたは複数の側壁をさらに備え、液体を収容するように構成された液体チャンバと、
− 燃焼空間を囲む上部と、
− 液体チャンバと流体接続する1つまたは複数の通過開口を備える下部とを備える
− 1つまたは複数の圧力増大チャンバと、
− 燃焼空間内にある燃料を点火するように構成された点火機構とを備え、
− 燃焼空間が、燃焼中に、中にある燃料を膨張させるように構成され、その結果、支持部材より上で圧力の増大が生じ、液体チャンバ内の支持部材より上にある液体が、支持部材から離れるように少なくとも上向きに変位され、支持部材を介して下向きの力が杭に及ぼされるパイルドライバである。
【0008】
作動原理は、ニュートンの第1および第3の法則、「作用=反作用」に基づく。換言すると、対象Aが、対象Bに力を及ぼす際、この力には、BのAに対する等しいが反対方向の力が伴う。膨張する際、燃焼空間(対象A)は、その上に位置する媒体(反作用体B)に力を及ぼす。ニュートンの第3の法則に従って、反作用体(B)は、燃焼空間(A)に対して等しいが反対方向(すなわち下方)の力を及ぼす。燃焼空間は、支持部材より上に、かつそれに近接して配置されるため、反作用体によって燃焼空間に及ぼされる反作用力は、支持部材によって杭に伝達されることになる。杭はこれにより、支持部材を介して下向きの力を受け、これは杭を地面へ下方に打ち込む目的で本発明によって利用される。
【0009】
加えて、燃焼空間が膨張する際上向きに変位した媒体は、再び下方に降下し、支持部材とぶつかり、ここでそれもまた支持部材を介して杭に対する下向きの力を及ぼす。このような作動原理は、ラムが任意の高さから杭へ落とされる従来のパイルドライバの作動に対応している。
【0010】
可撓性の部材の代わりに1つまたは複数の圧力増大チャンバを利用することによって、別の有意な利点が提供される。可撓性の部材が燃焼空間を囲む一実施形態では、燃焼空間の最大容積は、可撓性の部材の最大限の広がりによって制限される。本発明による実施形態では、燃焼空間は、より大きな容積を得ることができ、その上、より頑強にもなる。
【0011】
上部によって燃焼空間を囲み、液体チャンバと流体接続する1つまたは複数の通過開口を備える下部をさらに備える圧力増大チャンバを適用することで(これは、出願人の事前公開されていないオランダ特許出願NL2008169号に記載されるパイルドライバと対照的である)、燃焼チャンバと水の間にNL2008169号の可撓性部材によって形成される仕切りが必要なくなる。このような仕切り壁は、本発明によってなくすことができるため、より頑強であり、さらにはいかなる可撓性部材の最大限の広がりによっても制限されないパイルドライバが得られる。
【0012】
従来式の杭打ち作業の典型的な鋼と鋼の衝突音とは対照的に、本発明による杭打ち工程には、海洋生物に対してさほど有害でない別の種類の音が伴う。
【0013】
好ましい一実施形態によれば、圧力増大チャンバは、剛性の筐体を形成し、これは頑強である。
【0014】
別の好ましい一実施形態によれば、1つまたは複数の圧力増大チャンバが、液体チャンバの内部で支持部材に取り付けられる。圧力増大チャンバ内の燃料が点火され、圧力増大チャンバによって囲まれた燃焼空間内で膨張が起こる際、これによって生じる圧力の増大は、ほぼ直接的に、圧力増大チャンバの下部に設けられた通過開口を介して支持部材より上の圧力増大を生じさせることができる。
【0015】
別の好ましい一実施形態によれば、液体チャンバの1つまたは複数の側壁が、周辺領域から液体を分離する。媒体は杭打ちハンマーまたは杭の中に配置され、これにより少なくとも杭打ちハンマーまたは杭の壁によってパイルドライバの外部にある水から閉鎖されるため、燃焼空間の膨張の結果としてこの媒体のみが変位される。変位された媒体は、周辺領域から隔離されるため、周辺にある水中における衝撃波は阻止される。海洋生物に衝撃を与える衝撃波はこのように杭打ち作業中において阻止される。
【0016】
別の好ましい一実施形態によれば、液体チャンバ内の支持部材より上にある液体は水である。水は、特に沖合の杭打ち作業の場合、有り余るほど大量に存在しており、このため代替媒体をこの場所に輸送する必要はない。水の別の利点は、その高い熱伝達係数であり、これにより燃焼中に放出される熱の迅速な放出と分散が行われる。
【0017】
別の好ましい一実施形態によれば、パイルドライバはさらに、燃料を燃焼空間に運ぶために燃料供給チャネルと、燃焼後、燃焼生成物を排出するための燃焼生成物排出チャネルとを備える。燃焼空間に短時間で燃料が充填され、燃焼生成物をなくして空にすることができるため、このシステムは、比較的短い期間における一連の連続する燃焼に適している。別の状況では、所望であれば、同一チャネルが、燃料供給と、燃焼生成物の排出の両方の機能を交互に果たすことに留意されたい。その場合チャネルが、時に燃料供給チャネルとして機能し、次には燃焼生成物排出チャネルとして機能する。
【0018】
別の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つのクロージャが設けられ、これは支持部材および1つまたは複数の側壁と協働して、実質的に気密に閉じられた容積を有する液体チャンバを形成し、これにより流体を実質的に気密の液体チャンバ内に運び込む、および/またはこのチャンバから運び出す目的で供給手段がさらに設けられる。これらの供給手段は、例えばポンプおよび/またはガスボトルを備えることができる。
【0019】
別の好ましい一実施形態によれば、流体は空気および/または水であり、流体の空気を使用して予圧力を実質的に気密の閉じた空間に加えることができ、流体の水が反作用体を提供する。
【0020】
地面に打ち込まれる杭は、先端抵抗と、軸の摩擦抵抗の合計である打ち込み全抵抗に遭遇する。土の種類、杭の長さおよび杭の形状などのパラメータによって、両抵抗およびしたがって打ち込み全抵抗は変化する。ポンプを使用して実質的に気密の容積に存在する水および空気の量に影響を与えることによって、その時に所望される打ち込み力に従って圧力増大プロファイルを最適化することが可能になる。特定のセットのパラメータに関する所望される打ち込み力を判断する制御手段が、これに従ってポンプを制御することができる。テストは、予圧力が加えられる際、ほんの5メートルの水柱がすでに10〜15バールのピーク圧力を実現することができることを示した。より高い水柱によってより高いピーク圧力を達成することができる。
【0021】
杭を地面へさらに打ち込むと、それはさらに剛直になる。軸の摩擦抵抗は特に、地下の長さが大きくなる際に増大する。しかしながら杭は次第により剛直になるため、次第に増大する水柱の形態の反作用体の大きさを杭打ちハンマーまたは自動打ち込み杭の中で支持することができる。杭の剛性が増大することで、安定性に悪影響を及ぼすことなく杭の重心をより高くすることが可能になる。
【0022】
先端抵抗および/または軸の摩擦抵抗はまた、例えば杭のヘッドにおいてまたは杭の壁に沿って、杭を打ち込む際に液体を取り込むことによって抑えることもできる。このような液体の一例は、グラウト、すなわちセメントと水の混合物である。このグラウトが後に硬化する際、土への杭のより良好な付着も達成され、これにより耐荷力は最終的に、この杭がこのような液体なしで打ち込まれた場合よりも高くなる。
【0023】
別の好ましい一実施形態によれば、各々が点火機構を備える複数の圧力増大チャンバが設けられ、この場合、圧力増大チャンバ内の燃料を所定のシーケンスでおよび/または所定の間隔で点火するように構成された制御手段がさらに設けられる。
【0024】
システムは、複数の燃焼空間を使用することによってより柔軟に適合させることができる。例えば連続する燃焼を最適なやり方で互いに調整することがこれにより可能である。一方で、その後に続く燃焼空間にすでに燃料が充填され、ちょうど点火された燃焼空間は依然として中にある燃焼生成物がなくなった空の状態にする必要があることを想定することも可能である。それに続く燃焼が一方で、先の燃焼において上向きに変位した反作用体が降下する間に起こることで、圧力増大は、その時に克服すべき打ち込み抵抗に従って最適化される。制御手段によって制御される点火は、所望される圧力増大プロファイルを生成するという選択肢を与える。
【0025】
別の好ましい一実施形態によれば、燃料の燃焼中に追加燃料を燃焼空間に噴射するおよび/または点火の時期を変えるように構成された制御手段が設けられる。圧力増大プロファイルをこれにより、その時に所望される打ち込み力に従って最適化することができる。特定のセットのパラメータに対して所望される打ち込み力を判断する制御手段は、これに従って追加燃料の噴射を制御することができる。
【0026】
別の好ましい一実施形態によれば、圧力逃がし弁を備えた少なくとも1つの開口が、支持部材内またはその下に設けられる。「〜の下」は、杭打ち工程における向きを指すことに留意されたく、すなわち開口は、支持部材と、杭が打ち込まれる地面の間の壁の一部に配置される。支持部材の下に所定の(任意選択で可変)サイズの穴を配置することで、支持部材の下にある液体の流出速度を調整することを可能にする。衝突の結果として生じる杭の降下速度もまたこれにより制限される。
【0027】
別の好ましい一実施形態によれば、開口は可変であり、制御手段が設けられ、この制御手段を利用して開口のサイズを制御することができる。杭の降下速度をこれによりさらに良好に制御することができる。
【0028】
別の好ましい一実施形態によれば、燃焼空間は、燃焼中に燃焼空間から放出される燃焼生成物を吸引するように構成された加圧下空間とガス接続されている。加圧下状況を利用して、燃焼中に放出された燃焼生成物は、極めて短時間で燃焼空間から吸い出される。燃焼生成物をこれにより、燃焼によって上向きの方向に変位された媒体が落下して戻り再度支持部材に衝突する前に除去することができる。落下する媒体は、「ガススプリング」上へは落下せず、実際には支持部材に「ぶつかる」ため、この落下媒体によって支持部材に伝達される下向きのエネルギーは、杭を下方に地面へ打ち込むのに実質的にすべて利用することができる。
【0029】
別の好ましい一実施形態によれば、パイルドライバは杭の中に組み込まれ、その側壁と共に液体チャンバの側壁を形成する。パイルドライバは、杭の中に組み込まれるため、複数の杭をほぼ同時に打ち込むことができ、これにより、海洋生物が杭の打ち込み作業から生じる煩わしい騒音に曝される時間がはるかに短くなる。25メートルを超える水深の場所に関して、スペースフレームまたはジャケットとも呼ばれる特有のフレームを適用するのが常である。このような枠組み構造は、多数の杭を介して力を海底へ伝えることで、質量/剛性の比率を最小限にする。このような枠組み構造の欠点は、各々の杭を個別に打ち込む必要がある、または各々の杭が別々にアンカー留めされることであり、これにより、従来のパイルドライバの場合、杭の数に比例したかなりの作業時間がかかる点である。杭を所望されるように枠組み構造(すなわちスペースフレームまたはジャケット)の支柱内に伸張可能に配置することで、このような枠組み構造を海底に沈めることが可能になり、その後、杭を枠組み構造から下方に海底へ打ち込むことができる。パイルドライバが杭の中に組み込まれる際従来のパイルドライバは必要とされないため、本発明によって、異なる杭をほぼ同時に地面へ打ち込むことができる。本発明によるシステムにおいて、したがって作業時間数は、杭の数に比例せず、3本の杭の打ち込み作業には、1本の杭を打ち込むのとほぼ同じ時間量しかかからない。これは、海洋生物にとって特に有利であり、海洋生物は、杭打ち作業から生じる煩わしい騒音に曝される時間が短くなる。
【0030】
本発明によるシステムはしたがって、事前に組み立てられた構造体を杭打ちすることを可能にし、この場合、その土台は、所望であれば、風力タービンにすでに取り付けられている。このような構造体は、その構造体が所定の場所に打ち込まれる前に船で送られる、または浸水させることができる。
【0031】
従来のパイルドライバが不必要であることの別の利点は、対応する好適な船を備えたこのような重量のある構造体が必要ないという点である。この目的に適したクレーンおよび対応する好適な船を使用して杭を配置し、杭を部分的にのみ地面へ打ち込み、その後クレーンを備えた船をより小型の船によって置き換えるだけで十分である。これは、このような大型船および従来のパイルドライバの操作にはかなりの費用が伴うため、特に有利である。
【0032】
過度の地下水の圧力が杭打ち作業の後に生じる場合がある。これは、安定させるのに時間を必要とし、この後、杭に十分な耐荷力を与える目的でさらなる打ち込み作業を行うことができる。従来の杭打ち技術の場合、大型船が過度の地下水の圧力を安定させるのを待っている必要があったが、これは、パイルドライバが杭に組み込まれる本発明による杭打ちシステムにおいては必要ない。所望であれば、本発明の作動原理を介して複数のさらなる燃焼サイクルを形成するために、小型船が後に残るが、それはしばらくしてから自発的にすべて起こると想定することも可能である。十分な燃料と、制御手段がこの目的のために利用可能であるだけで十分である。
【0033】
本発明はさらに、杭を下方に地面へ打ち込むための方法に関し、方法は
− 支持部材を杭のところにまたは杭に接して横断方向に配置するステップと、
− 支持部材によって下面で境界が決められる液体チャンバ内に液体を収容するステップと、
− 圧力増大チャンバに燃料を供給するステップであって、圧力増大チャンバが、
− 燃焼空間を囲む上部と、
− 液体チャンバと流体接続する1つまたは複数の通過開口を備える下部とを備え、
− 燃料が圧力増大チャンバに供給され、これにより液体を圧力増大チャンバ内で下方に押しやる際、一定量のガスが、圧力増大チャンバの上部において増大するステップと、
− 圧力増大チャンバ内で液体レベルより上に位置する燃料を点火機構を使用して燃焼させ、これにより膨張が起こるステップと、
− 膨張を利用して、圧力増大チャンバ内にある少なくとも一部の液体および/または燃焼生成物を液体チャンバに流体接続することによって圧力増大チャンバから変位させ、
− これにより支持部材より上で圧力の増大が起こり、これにより液体チャンバ内で支持部材より上に位置する液体もまた、支持部材から離れるように少なくとも上向きの方向に変位されるステップと、
− 杭に及ぼされる下向きの反作用力によって杭を下方に地面へ打ち込むステップとを含む。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、方法はさらに、
− 燃料供給チャネルを介して圧力増大チャンバの燃焼空間に燃料を運ぶステップと、
− 点火機構を使用して圧力増大チャンバ内の燃料を燃焼させるステップと、
− 燃焼後、燃焼生成物排出チャネルより燃焼生成物を排出するステップと、
− 杭を段階的に地面へ打ち込むためにこれらのステップを繰り返すステップとを含む。
【0035】
別の好ましい一実施形態によれば、方法はさらに、燃料の燃焼中に燃焼空間に追加燃料を噴射するステップを含む。圧力増大プロファイルをこれにより、その時に所望される杭打ち力に従って最適化することができる。所望であれば、特定のセットのパラメータに関して所望される打ち込み力を判断する制御手段が、これに従って追加燃料の噴射を制御する。
【0036】
別の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つのクロージャが設けられ、これは支持部材および1つまたは複数の側壁と協働して、実質的に気密に閉じられた容積を有する液体チャンバを形成し、方法は、ポンプまたはガスボトルなどの供給手段を利用して流体を実質的に気密の液体チャンバに運び込む、および/または液体チャンバから運び出すステップを含む。供給手段を利用して実質的に気密の容積にある水および空気の量に影響を与えることによって、圧力増大プロファイルをその時に所望される打ち込み力に従って最適化することを可能にする。
【0037】
別の好ましい一実施形態によれば、流体は空気であり、予圧力を生じさせる。
【0038】
別の好ましい一実施形態によれば、流体は水であり、反作用体を提供する。
【0039】
別の好ましい一実施形態によれば、燃焼空間は、加圧下空間とガス接続しており、方法は、燃焼のほぼ直後に、燃焼によって中に形成された燃焼生成物を燃焼空間から吸い出すことで、このような燃焼生成物が、燃焼によって上向きの方向に変位された媒体が落下して戻り再度支持部材に衝突する前に少なくとも実質的に燃焼空間から除去されるステップを含む。
【0040】
方法の別の好ましい一実施形態によって、本発明によるパイルドライバが適用される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下の記載においてさらに明らかにされる。