特許第6469110号(P6469110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469110
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   F16H7/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-540774(P2016-540774)
(86)(22)【出願日】2015年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2015072673
(87)【国際公開番号】WO2016021740
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-162318(P2014-162318)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】平岡 和人
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−118706(JP,A)
【文献】 特開2002−221261(JP,A)
【文献】 実開平6−65655(JP,U)
【文献】 実開昭54−107768(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/180145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延びる軸部と、
付勢部材からの付勢力によって前記軸部に沿って前記軸線方向一方側に移動される推進部と、
を備え、
前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方が、板状の部材によって形成されており、
前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方には、前記軸線方向へ沿って延びるスリットが形成されることで、前記軸部及び前記推進部のうち前記スリットが形成されたものが前記軸線方向と交差する方向へ撓み変形可能とされたテンショナ。
【請求項2】
前記軸部又は前記推進部には、前記軸線方向に沿って被係合部が形成されており、
前記軸部と前記推進部との間には、前記被係合部と係合する係合部を有するストッパ部が設けられており、前記ストッパ部は、前記係合部が前記被係合部に係合することによって前記推進部の前記軸線方向他方側への移動を規制する請求項1記載のテンショナ。
【請求項3】
前記ストッパ部はブロック状に形成された又は板状の部材で形成されたチップと、前記チップを付勢するばね部材で構成されている請求項2記載のテンショナ。
【請求項4】
前記軸部又は前記推進部のいずれもが板状の部材によって形成されており、
前記被係合部は、前記軸部又は前記推進部を形成する板状の部材に形成されており、
前記ストッパ部は、板状の部材によって形成されていると共に、前記係合部は、前記ストッパ部を形成する板状の部材に形成されている請求項2又は請求項3記載のテンショナ。
【請求項5】
前記被係合部は、前記軸部に形成されており、
前記ストッパ部は、前記推進部と共に移動され、
前記推進部と前記ストッパ部との接触面が前記軸線方向に対して傾斜している請求項2記載のテンショナ。
【請求項6】
前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方には、オイルが通過する孔及び前記スリットの少なくとも一方が形成されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記推進部は、前記軸部の内周部に配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記スリットは、前記軸部及び前記推進部の両方に形成されている請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記軸部に形成された前記スリットと前記推進部に形成された前記スリットとが、前記軸線方向のまわりの同位置に配置されている請求項8記載のテンショナ。
【請求項10】
前記被係合部は、前記推進部に形成されており、
前記推進部は、前記ストッパ部及び前記軸部に対して移動され、
前記軸部と前記ストッパ部との接触面が前記軸線方向に対して傾斜している請求項2記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンやベルトの張力を保つために用いられるテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5157013号公報、特許第3717473号公報及び特許第3837595号公報には、タイミングベルトやタイミングチェーンを押圧することによって、タイミングチェーンやタイミングベルトの張力を保つテンショナが開示されている。
【0003】
特許第5157013号公報に記載されたテンショナは、有底円筒状に形成された筒状部材と、筒状部材内に挿入された中実のシャフト部材と、筒状部材及びシャフト部材を支持するケースと、を含んで構成されている。筒状部材及びシャフト部材が推進バネ及びホルダバネの付勢力によってケースに対して伸び出すことによって、筒状部材の先端がタイミングベルトやタイミングチェーンを押圧する(チェーンガイド等を介して押圧する)ようになっている。また、エンジンの一部を構成するエンジンケース等の膨張により、クランクシャフトとカムシャフトとの軸間が変化して、タイミングベルトやタイミングチェーンからテンショナに過負荷が加わることが考えられるが、本文献に記載されたテンショナでは、ホルダバネが圧縮されてシャフト部材が後退することによって、前記過負荷がテンショナに加わることが抑制されている。
【0004】
特許第3717473号公報に記載されたテンショナは、円柱状プランジャと、円柱状プランジャが挿入されたハウジング本体と、円柱状プランジャのハウジング本体に対する突出状態を保持する楔形カムチップ及びカム受けリングと、を含んで構成されている。円柱状プランジャが突出付勢用バネの付勢力によってハウジング本体に対して伸び出すことによって、円柱状プランジャの先端がタイミングベルトやタイミングチェーンを押圧するようになっている。また、本文献に記載されたテンショナでは、カム受けリング付勢用バネが圧縮されて、円柱状プランジャが楔形カムチップ及びカム受けリングと共に後退することによって、前記過負荷がテンショナに加わることが抑制されている。
【0005】
特許第3837595号公報に記載されたテンショナは、一対のシャフト部材と、一方のシャフトをその軸線回りに回動させる方向に付勢する捩りバネと、一方のシャフト及び捩りバネ等を収容するケースと、他方のシャフトを支持する軸受と、を含んで構成されている。捩りバネによって一方のシャフトが回動されて、他方のシャフトがケースに対して伸び出すことによって、他方のシャフトの先端に取付けられたキャップがタイミングベルトやタイミングチェーンを押圧するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許第5157013号公報、特許第3717473号公報及び特許第3837595号公報に記載されたテンショナでは、タイミングベルトやタイミングチェーン側に向けて延び出る部品(筒状部材、シャフト部材、及び円柱状プランジャ等)が、切削加工等の機械加工が施されることによって形成されている。そのため、当該機械加工が施された部品を含んで構成されたテンショナの製造コストを削減することが難しい。
【0007】
また、上記特許第3717473号公報に記載されたテンショナでは、タイミングベルトやタイミングチェーンを押圧する円柱状プランジャが、中実の鋼材等によって形成されている。すなわち、タイミングベルトやタイミングチェーンを押圧する部品である円柱状プランジャの剛性が高くなっている。そのため、クランクシャフトの回転数変動により、瞬間的な荷重がタイミングベルトやタイミングチェーンから円柱状プランジャに入力されると、当該円柱状プランジャが変形し難い。これにより、エンジンの内部から感覚的な打音等が発生することが考えられる。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、製造コストを削減することができるテンショナを得ることを第1の目的とし、打音のレベルを低減することができるテンショナを得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様のテンショナは、軸線方向に沿って延びる軸部と、付勢部材からの付勢力によって前記軸部に沿って前記軸線方向一方側に移動される推進部と、を備え、前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方が、板状の部材によって形成されており、前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方には、前記軸線方向へ沿って延びるスリットが形成されることで、前記軸部及び前記推進部のうち前記スリットが形成されたものが前記軸線方向と交差する方向へ撓み変形可能とされている。
【0010】
第1の態様のテンショナによれば、付勢部材の付勢力によって推進部が軸部に対して一方側に移動されることによって、当該推進部の先端側をベルトやチェーン(ベルトガイドやチェーンガイド等)に押し付けることができる。これにより、ベルトやチェーンの張力が保たれる。
【0011】
ここで、本テンショナでは、推進部及び軸部の少なくともいずれかが、板状の部材によって形成されている。そのため、推進部及び軸部の少なくともいずれかを、板状の部材にプレス加工を施すことによって形成することができる。これにより、推進部及び軸部を、中実の部材に切削加工等を施すことによって形成した場合に比して、推進部及び軸部の製造コストを削減することができ、ひいては、テンショナの製造コストを削減することができる。
【0012】
また、本テンショナでは、推進部及び軸部の少なくともいずれかを、板状の部材にプレス加工を施すことによって形成することにより、ベルトやチェーンが推進部を押圧した際に、板状の部材により形成された推進部及び軸部を撓ませ易くすることができる。これにより、瞬間的な荷重がベルトやチェーンから推進部に入力された際の打音のレベルを低減することができる。
【0013】
第2の態様のテンショナは、第1の態様のテンショナにおいて、前記軸部又は前記推進部には、前記軸線方向に沿って被係合部が形成されており、前記軸部と前記推進部との間には、前記被係合部と係合する係合部を有するストッパ部が設けられており、前記ストッパ部は、前記係合部が前記被係合部に係合することによって前記推進部の前記軸線方向他方側への移動を規制する。
【0014】
第2の態様のテンショナによれば、ベルトやチェーンの張力が保たれた状態において、ベルトやチェーンが推進部を押圧すると、ストッパ部の係合部が軸部の被係合部に係合される。これにより、推進部の他方側への移動が規制される。また、推進部の他方側への移動が規制された状態においても、すなわち、ベルトやチェーンの張力が高くなり易い状況下においても、板状の部材により形成された推進部及び軸部が撓むことにより、ベルトやチェーンの張力が過大になることを抑制することができる。
【0015】
第3の態様のテンショナは、第2の態様のテンショナにおいて、前記ストッパ部はブロック状に形成された又は板状の部材で形成されたチップと、前記チップを付勢するばね部材で構成されている。
【0016】
第3の態様のテンショナによれば、チップとバネ部材によって推進部の他方側への移動を規制することができる。
【0017】
第4の態様のテンショナは、第2の態様又は第3の態様のテンショナにおいて、前記軸部又は前記推進部のいずれもが板状の部材によって形成されており、前記被係合部は、前記軸部又は前記推進部を形成する板状の部材に形成されており、前記ストッパ部は、板状の部材によって形成されていると共に、前記係合部は、前記ストッパ部を形成する板状の部材に形成されている。
【0018】
第4の態様のテンショナによれば、推進部及び軸部に加えて、ストッパ部が板状の部材によって形成されていることにより、テンショナの製造コストがより一層削減される。そしてさらに、ストッパ部の係合部及び軸部又は推進部の被係合部についてもプレス加工で形成することができ、テンショナの製造コストをより一層削減することができる。
【0019】
第5の態様のテンショナは、第2の態様のテンショナにおいて、前記被係合部は、前記軸部に形成されており、前記ストッパ部は、前記推進部と共に移動され、前記推進部と前記ストッパ部との接触面が前記軸線方向に対して傾斜している。
【0020】
第5の態様のテンショナによれば、推進部とストッパ部との接触面が軸部の軸線方向に対して傾斜しているため、ベルトやチェーンが推進部を押圧すると、推進部とストッパ部とが摺接する。そのため、クランクシャフトの回転数変動による瞬間的な荷重がベルトやチェーンから推進部に入力された際のテンショナの抗力にヒステリシスを持たせることができる。すなわち、テンショナに入力された前記瞬間的な荷重のエネルギーを減衰させることができる。これにより、瞬間的な荷重がベルトやチェーンから推進部に入力された際の打音のレベルを低減することができる。
【0021】
また、本テンショナでは、瞬間的な荷重がベルトやチェーンから推進部に入力されると、ストッパ部と推進部との接触部の接触圧が高まる。そして、当該接触圧が高い部位が板状の部材の厚み方向に変形する。これにより、瞬間的な荷重がベルトやチェーンから推進部に入力された際の打音のレベルをより一層低減することができる。
【0022】
第6の態様のテンショナは、第1の態様〜第5の態様のいずれかのテンショナにおいて、前記軸部及び前記推進部の少なくとも一方には、オイルが通過する孔及び前記スリットの少なくとも一方が形成されている。
【0023】
第6の態様のテンショナによれば、テンショナ内部の潤滑を良好にすることができる。
【0024】
第7の態様のテンショナは、第1の態様〜第6の態様のいずれかのテンショナにおいて、前記推進部は、前記軸部の内周部に配置されている。
【0025】
第7の態様のテンショナによれば、推進部を軸部の内周部に配置することにより、テンショナの軸線方向一方側の部分が大型化することを抑制することができる。
第8の態様のテンショナは、第1の態様〜第7の態様のいずれかのテンショナにおいて、前記スリットは、前記軸部及び前記推進部の両方に形成されている。
第9の態様のテンショナは、第8の態様のテンショナにおいて、前記軸部に形成された前記スリットと前記推進部に形成された前記スリットとが、前記軸線のまわりの同位置に配置されている。
第10の態様のテンショナは、第2の態様のテンショナにおいて、前記被係合部は、前記推進部に形成されており、前記推進部は、前記ストッパ部及び前記軸部に対して移動され、前記軸部と前記ストッパ部との接触面が前記軸線方向に対して傾斜している。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るテンショナは、製造コストを削減することができ、また打音のレベルを低減することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係るテンショナを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るテンショナを示す側面図である。
図3】第1実施形態に係るテンショナを示す背面図である。
図4】第1実施形態に係るテンショナを示す正面図である。
図5図3に示された5−5線に沿って切断したテンショナの断面を示す側断面図である。
図6】第1実施形態に係るテンショナが取付けられたエンジンを示す部分断面図である。
図7A】軸部を示す側面図である。
図7B】軸部を示す背面図である。
図7C】軸部を示す正面図である。
図7D図7Bに示された7D−7D線に沿って切断した軸部の断面を示す側断面図である。
図8A】フランジを示す正面図である。
図8B】フランジを示す部分側断面図である。
図9A】スライドを示す平面図である。
図9B】スライドを示す背面図である。
図9C】スライドを示す正面図である。
図9D図9Cに示された9D−9D線に沿って切断したスライドの断面を示す側断面図である。
図10A】キャップを示す側面図である。
図10B】キャップを示す平面図である。
図10C】キャップを示す背面図である。
図11A】チップを示す正面図である。
図11B】チップを示す背面図である。
図11C】チップを示す底面図である。
図11D図11Bに示された11D−11D線に沿って切断したチップの断面を示す側断面図である。
図12A】板バネを示す側面図である。
図12B】板バネを示す正面図である。
図12C】板バネを示す背面図である。
図13A】軸部を示す側面図である。
図13B】軸部を示す背面図である。
図13C】軸部を示す正面図である。
図13D図13Bに示された13D−13D線に沿って切断した軸部の断面を示す側断面図である。
図14】瞬間的な荷重がスライドに入力された際のテンショナの変位と抗力との関係を示すグラフである。
図15】第2実施形態に係るテンショナを示す図1に対応する斜視図である。
図16】第3実施形態に係るテンショナを示す図2に対応する側面図である。
図17】第4実施形態に係るテンショナを示す図1に対応する斜視図である。
図18】他の形態のスライドを示す図9Dに対応する側断面図である。
図19A】他の形態の板バネを示す斜視図である。
図19B】他の形態の板バネを示す側面図である。
図19C】他の形態の板バネを図19Aとは異なる方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図12Cを用いて本発明の実施形態に係るテンショナについて説明する。
【0029】
図6に示されるように、本実施形態のテンショナ10は、エンジン12の一部を構成するタイミングチェーン14の張力を保つために用いられている。ここで、エンジン12の構成について簡単に説明すると、このエンジン12は、一例としてDOHCのガソリンエンジンとされており、またエンジン12は、クランクシャフト16と、図示しないバルブを開閉するためのカムシャフト18,20と、を備えている。また、クランクシャフト16には、タイミングチェーン14のピッチに対応するスプロケット部16Aが形成されており、さらに、カムシャフト18,20には、タイミングチェーン14のピッチに対応するスプロケット22,24が取付けられている。そして、クランクシャフト16の回転がスプロケット22,24にタイミングチェーン14を介して伝達されることによって、カムシャフト18,20が駆動されるようになっている。また、エンジン12は、タイミングチェーン14をガイドするためのチェーンガイド26を備えている。そして、テンショナ10が、タイミングチェーン14をチェーンガイド26を介して押圧することによって、タイミングチェーン14の張力が保たれるようになっている。
【0030】
(テンショナ10の詳細な構成)
図1図5に示されるように、テンショナ10は、エンジン12のシリンダブロック28(図6参照)にフランジ30を介して固定される軸部32と、軸部32に沿ってタイミングチェーン14(図6参照)側に移動することが可能とされた推進部としてのスライド34と、を備えている。また、テンショナ10は、スライド34をタイミングチェーン14側に向けて付勢する付勢部材としてのコイルバネ36と、スライド34のタイミングチェーン14と離間する側への移動を規制するストッパ部としての一対のチップ38と、を備えている。
【0031】
(軸部32の構成)
図7A図7Dに示されるように、軸部32は、所定の形状の鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されており、この軸部32は、当該軸部32の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に伸びる矩形状の有底筒状に形成されている。具体的には、軸部32は、軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)を板厚方向とする矩形状に形成された底壁部32Aを備えている。この底壁部32Aには、詳述するフランジ30に形成されたかしめ突起部30A(図8B参照)が挿入される円形のかしめ孔32Bが形成されている。
【0032】
また、軸部32は、底壁部32Aの一方側及び他方側の端部から、それぞれ軸線方向一方側(矢印A1方向)に屈曲して延びると共に互いに平行に配置された一対の第1側壁部32Cを備えている。この第1側壁部32Cは、軸線方向を長手方向とする矩形状に形成されており、第1側壁部32Cには、被係合部としての複数の被係合凹部32Dがプレス加工にて形成されている。また、複数の被係合凹部32Dは、所定のピッチで軸線方向に沿って配列されており、また本実施形態では、一方の第1側壁部32Cに形成された複数の被係合凹部32Dと他方の第1側壁部32Cに形成された複数の被係合凹部32Dとが、軸線方向にハーフピッチずらした状態で配列されている。
【0033】
また、軸部32は、第1側壁部32Cの短手方向の両端部からそれぞれ他方の第1側壁部32C側に向けて延びる第2側壁部32Eを備えている。また、一方の第1側壁部32Cから延びる第2側壁部32Eと他方の第1側壁部32Cから延びる第2側壁部32Eとが離間されていることにより、一方の第1側壁部32Cから延びる第2側壁部32Eと他方の第1側壁部32Cから延びる第2側壁部32Eとの間には、エンジン12(図6参照)内のオイルを軸部32内に導入させることが可能とされたスリット32Fが形成されている。さらに、第2側壁部32Eの軸線方向一方側の端部には、舌片状に形成されたガイド片32Gが設けられている。
【0034】
また、図5に示されるように、軸部32の内部には、コイルバネ36が配置されており、このコイルバネ36は、軸線方向に沿って延び縮みすることが可能とされている。
【0035】
(フランジ30の構成)
図8A及び図8Bに示されるように、フランジ30は、軸部32よりも厚肉の鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されており、このフランジ30には、軸部32の底壁部32Aに形成されたかしめ孔32B(図7B参照)に挿入されるかしめ突起部30Aが形成されている。図5に示されるように、このかしめ突起部30Aがかしめられることによって、軸部32がフランジ30に固定されている。
【0036】
また、フランジ30には、ボルト40(図6参照)が挿入されるボルト挿入孔30B及び後述する回動部材46A(図3参照)が挿入される回動部材挿入孔30Cが形成されている。そして、図6に示されるように、ボルト挿入孔30Bに挿入されたボルト40が、シリンダブロック28に螺入されることによって、フランジ30がシリンダブロック28に固定される、即ち、テンショナ10がシリンダブロック28に固定されるようになっている。
【0037】
(スライド34の構成)
図9A図9Dに示されるように、スライド34は、所定の形状の鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されている。なお、本実施形態では、軸部32と同じ厚みの鋼鈑材を用いてスライド34が形成されている。具体的には、スライド34は、当該スライド34の軸線方向他方側(矢印A2方向)の部位が軸線方向一方側(矢印A1方向)に向けて窄まった箱状に形成されており、このスライド34は、軸線方向を板厚方向とする矩形状に形成された底壁部34Aを備えている。この底壁部34Aには、軸部32がクリアランスを有して挿入(遊挿)される矩形状の軸部挿入孔34Bが形成されている。
【0038】
また、スライド34は、底壁部34Aの一方側及び他方側の端部からそれぞれ軸線方向一方側に屈曲して延びる一対の傾斜壁部34Cを備えている。一方の傾斜壁部34Cと他方の傾斜壁部34Cとの間の距離Lは、軸線方向一方側に向かうにつれて次第に短くなるように設定されている。
【0039】
また、スライド34は、一方の傾斜壁部34C及び他方の傾斜壁部34Cの軸線方向一方側の端部から、それぞれ軸線方向一方側に屈曲して延びると共に互いに平行に配置された一対の第1側壁部34Dを備えている。この第1側壁部34Dは、軸線方向を長手方向とする矩形状に形成されている。また、スライド34は、第1側壁部34Dの短手方向の両端部からそれぞれ他方の第1側壁部34D側に向けて延びる第2側壁部34Eを備えている。そして、第1側壁部34D及び第2側壁部34Eによって囲まれた空間に軸部32の第1側壁部32C及び第2側壁部32Eが挿入(遊挿)されるようになっている。そしてさらに、前述の軸部挿入孔34B及び第1側壁部34D及び第2側壁部34Eによって囲まれた空間に軸部32が挿入(遊挿)されることによって、スライド34が軸部32の一部を囲うと共にスライド34が軸部32に沿って移動することが可能となっている。
【0040】
また、一方の第1側壁部34Dから延びる第2側壁部34Eと他方の第1側壁部34Dから延びる第2側壁部34Eとが離間されていることにより、一方の第1側壁部34Dから延びる第2側壁部34Eと他方の第1側壁部34Dから延びる第2側壁部34Eとの間には、軸部32のガイド片32G(図7C参照)が配置されるガイドスリット34Fが形成されている。また、第2側壁部34Eの軸線方向他方側の部位には、制限部34Gが設けられており、図2に示されるように、軸部32のガイド片32Gが制限部34Gに当接することによって、スライド34の軸部32に対する軸線方向一方側への移動距離が制限されるようになっている。なお、エンジン12(図6参照)内のオイルを軸部32側にガイドスリット34Fを通じて導入させることが可能となっている。
【0041】
また、第1側壁部34D及び第2側壁部34Eの軸線方向一方側の端部には、後述するキャップ42の係止部42C(図10A参照)が係止される係止孔34Hが形成されている。
【0042】
(キャップ42)
図10A図10Cに示されるように、キャップ42は、所定の形状の鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されており、このキャップ42は、軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)を板厚方向とする矩形状に形成された頂壁部42Aを備えている。
【0043】
また、キャップ42は、頂壁部42Aの端部から延出していると共に側面視で略U字状に折り曲げられた係止部42Cを備えている。図5に示されるように、この係止部42Cがスライド34に設けられた係止孔34Hに係止されることによって、キャップ42がスライド34に取付けられるようになっている。また、頂壁部42Aの軸線方向他方側の端面には、コイルバネ36が当接している。これにより、コイルバネ36の付勢力がキャップ42を介してスライド34に伝達されて、当該スライド34が軸部32に沿って軸線方向一方側に移動するようになっている。
【0044】
(チップ38)
図11A図11Dに示されるように、チップ38は、鋳造や板金加工等によってブロック状に形成されており、図5に示されるように、このチップ38は、スライド34の傾斜壁部34C、底壁部34A及び軸部32の第1側壁部32Cに囲まれた空間内に配置されている。具体的には、図11A図11Dに示されるようにチップ38は、軸線方向に対する傾斜角度θがスライド34の傾斜壁部34Cの傾斜角度θと略同一の角度とされた三角柱状の傾斜壁部38Aと、傾斜壁部38Aの長手方向の両端部から軸部32の第1側壁部32C側に向けて延びる側壁部38Bと、を備えている。また、傾斜壁部38Aの長手方向の中間部には、軸部32の第1側壁部32Cに形成された被係合凹部32Dに係合することが可能とされた係合部としての複数の係合凸部38Eが形成されている。また、複数の係合凸部38Eのピッチは、複数の被係合凹部32Dと対応するピッチとされている。
【0045】
図5に示されるように、以上説明したチップ38が、スライド34の傾斜壁部34C、底壁部34A及び軸部32の第1側壁部32Cに囲まれた空間内に配置された状態で、スライド34が軸部32に対して軸線方向一方側(矢印A1方向)に移動する際には、チップ38が軸部32と離間する方向へ移動することが可能となるように、スライド34の傾斜壁部34C、底壁部34A及び軸部32の第1側壁部32Cに囲まれた空間の寸法が設定されている。また、スライド34が軸部32に対して軸線方向他方側(矢印A2方向)へ移動すると、チップ38の傾斜壁部38Aとスライド34の傾斜壁部34Cとが接触して、チップ38が軸部32側に向けて移動する。そして、チップ38に形成された係合凸部38Eが軸部32に形成された被係合凹部32Dに係合する。これにより、スライド34の軸線方向他方側への移動が規制されるようになっている。なお、以上説明したチップ38は、板状の部材にプレス加工を施すことにより形成してもよい。
【0046】
(板バネ44の構成)
図12A図12Cに示されるように、板バネ44は、鋼板材にプレス加工等が施されることによって形成されており、この板バネ44は、軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)に湾曲されたバネ部44Aを備えている。このバネ部44Aは、互いに平行に配置された一対の第1延在部44A1及び一対の第2延在部44A2を有することにより矩形枠状に形成されている。また、本実施形態では、一対の第1延在部44A1の長手方向の中間部が軸線方向他方側(矢印A2方向に)凸状に湾曲されている。また、バネ部44Aには、軸部32が挿入(遊挿)される矩形状の軸部挿入孔44Bが形成されている。また、図5に示されるように、上記チップ38が、バネ部44Aによって軸線方向一方側に向けて付勢されることによって、スライド34の傾斜壁部34C、底壁部34A及び軸部32の第1側壁部32Cに囲まれた空間内におけるチップ38のがたつきが抑制されている。
【0047】
(ストッパ機構46の構成)
図3及び図4に示されるように、本実施形態では、テンショナ10をエンジン12に組付ける際に用いられるストッパ機構46が設けられている。このストッパ機構46は、フランジ30に形成された回動部材挿入孔30C(図8A参照)に挿入された回動部材46Aと、この回動部材46Aと共に回転する回動片46Bと、を含んで構成されている。図4に示されるように、回動片46Bが、スライド34の底壁部34Aに係止されることによって、当該スライド34の軸線方向一方側への移動が規制されている。また、テンショナ10がエンジン12(図6参照)に固定された状態で(フランジ30がシリンダブロック28(図6参照)に固定された状態で)、図3に示された回動部材46Aを回動させると、図4に示された回動片46Bがスライド34の底壁部34Aから外れて、スライド34が軸線方向一方側への移動するようになっている。そして、軸線方向一方側に移動したスライド34の先端部に取付けられたキャップ42がチェーンガイド26(図6参照)を押圧することによって、タイミングチェーン14(図6参照)の張力が保たれるようになっている。
【0048】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0049】
以上説明したテンショナ10によれば、図5に示されるように、コイルバネ36の付勢力によってスライド34が軸部32に対して一方側に移動されることによって、当該スライド34の先端側に取付けられたキャップ42をチェーンガイド26(図6参照)に押し付けることができる。これにより、タイミングチェーン14(図6参照)の張力が保たれる。また、タイミングチェーン14の張力が保たれた状態において、タイミングチェーン14が振れること等により、チェーンガイド26がスライド34の先端側に取付けられたキャップ42を押圧すると、チップ38の係合凸部38Eが軸部32の被係合凹部32Dに係合される。これにより、スライド34の軸線方向他方側への移動が規制される。
【0050】
ここで、本実施形態のテンショナ10では、軸部32がスライド34に挿入(遊挿)された状態では、スライド34が軸部32の一部を囲った状態となっている。これにより、軸部32とスライド34との間に、エンジン12(図6参照)内のオイルが付着し易くなり、軸部32とスライド34との間の潤滑性が確保される。また、軸部32とスライド34との間に入り込んだオイルによって、チップ38の係合凸部38Eと軸部32の被係合凹部32Dとの間の潤滑性が確保される。すなわち、本実施形態のテンショナ10では、当該テンショナ10を構成する部品同士の潤滑性を良好にすることができる。
【0051】
また、本実施形態のテンショナ10では、スライド34及び軸部32が、板状の部材である鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されている。そのため、スライド34及び軸部32が、中実の部材に切削加工等が施されることによって形成されている場合に比して、スライド34及び軸部32の製造コストを削減することができ、ひいては、テンショナ10の製造コストを削減することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、スライド34及び軸部32に加えて、チップ38がプレス加工にて形成されていることにより、テンショナ10の製造コストがより一層削減されている。そしてさらに、チップ38の係合凸部38E及び軸部32の被係合凹部32Dについてもプレス加工で形成することにより、テンショナ10の製造コストをより一層削減することができる。
【0053】
また、本実施形態のテンショナ10によれば、スライド34とチップ38との接触面が軸部32の軸線方向に対して傾斜しているため、即ち、スライド34の傾斜壁部34Cとチップ38の傾斜壁部38Aが軸線方向に対して傾斜している。そのため、スライド34が軸線方向他方側に押圧されると、スライド34とチップ38とが摺接する。そのため、クランクシャフト16の回転数変動による瞬間的な荷重がタイミングチェーン14及びチェーンガイド26からスライド34に入力された際のテンショナ10の抗力にヒステリシスを持たせることができる。すなわち、テンショナ10に入力された前記瞬間的な荷重のエネルギーを減衰させることができる。これにより、瞬間的な荷重がスライド34に入力された際の打音のレベルを低減することができる。図14には、前記瞬間的な荷重がスライド34に入力された際のテンショナ10の変位と抗力とをプロットしたグラフが示されている。この図に示されるように、テンショナ10の抗力が増加している領域R1と減少していく領域R2とで、テンショナ10の抗力に差異(ヒステリシス)が生じていることがわかる。また、本実施形態では、スリット32Fが軸部32に形成されていることに加えて、ガイドスリット34Fがスライド34に形成されている。これにより、上記瞬間的な荷重がスライド32に入力された際に、軸部32の側部(第2側壁部32E)及びスライド34の側部(第2側壁部34E)を軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)と直交する方向に撓ませ易くすることができる。換言すると、上記瞬間的な荷重がスライド32に入力された際に、軸部32及びスライド34を軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)に撓ませ易くすることができる。これにより、本実施形態では、瞬間的な荷重がスライド34に入力された際の打音のレベルをより一層低減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態のテンショナ10では、スライド34及び軸部32が、鋼板材にプレス加工が施されることによって形成されていることにより、スライド34が押圧された際に、スライド34及び軸部32を撓ませ易くすることができる。詳述すると、瞬間的な荷重がスライド34に入力されると、チップ38とスライド34との接触部の接触圧が高まる。すなわち、スライド34の傾斜壁部34Cがチップ38の傾斜壁部38Aを押圧する反作用によって、スライド34の傾斜壁部34Cが軸部32とは離間する方向に変形する。これにより、瞬間的な荷重がスライド34に入力された際の打音のレベルをより一層低減することができる。
【0055】
また、チップ38の係合凸部38Eが軸部32の被係合凹部32Dに係合されることによって、スライド34の軸線方向他方側への移動が規制された状態においても、即ち、タイミングチェーン14の張力が高くなり易い状況下においても、スライド34及び軸部32が撓み易いことにより、タイミングチェーン14の張力が過大になることを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、テンショナ10がチェーンガイド26(図6参照)を押圧することによる反力が、キャップ42、スライド34の第1側壁部34D、スライド34の傾斜壁部34C及びチップ38を介して軸部32に入力されるようになっている。これにより、上記反力がスライド34の底壁部34Aに伝達され難くなっている。このように、上記反力が伝達され難い底壁部34A、すなわち、上記反力による変形が少ない底壁部34Aに沿ってチップ38を配置することにより、上記反力によるチップ38の意図しない変形を抑制することができる。これにより、テンショナ10の耐久性を高めることができる。なお、図18に示されるように、底壁部34Aに形成された軸部挿入孔34Bの周縁部にバーリング部34Iを設けることにより、底壁部34Aを変形し難くして最適な剛性を設定することも可能である。また、本実施形態では、チップ38を底壁部34Aに沿って配置しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、チップ38が配置されるスペースをスライド34におけるキャップ42が取付けられた側に配置してもよい。
【0057】
さらに、本実施形態のテンショナ10によれば、軸部32に形成されたスリット32F及びスライド34に形成されたガイドスリット34Fを介して、テンショナ10の所望の位置にオイルを導入させることができる。これにより、前述した潤滑性をより良好なものとすることができる。なお、上記スリット32Fに代えて、軸部32の第1側壁部32C及び第2側壁部32Eにオイルが通過可能な孔を形成してもよいし、スライド34の第1側壁部34D及び第2側壁部34Eにオイルが通過可能な孔を形成してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、スライド34が軸部32に対して軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)と直交する方向にガタつくように(所定の距離だけ移動可能に)両者の各部の寸法が設定されている。これにより、チェーンガイド26(図6参照)のバタつきをスライド34が軸部32に対して軸線方向(矢印A1及び矢印A2方向)と直交する方向にガタつくことにより(移動することにより)吸収することができる。
【0059】
また、本実施形態のテンショナ10によれば、コイルバネ36の配置を軸部32の内部に配置することにより、テンショナ10の小型化を図ることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、軸部32及びスライド34を鋼板材にプレス加工をすることによって形成した例について説明いてきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸部32及びスライド34のいずれかを鋳造等により形成することもできる。一例として、図13A図13Dに示されるように、前述の軸部32に対してガイドスリット34Fを備えていない鋳造製の軸部48を用いることもできる。なお、当該軸部48において前述の軸部32に対応する部位には、軸部32と同一の符号を付している。また、チップ38についても他の製造方法により製造されたものを用いてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、コイルバネ36の配置を軸部32の内部に配置した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、コイルバネ36の内径よりも大きな内径の付勢部材としてのコイルバネを軸部32の外周部に沿って配置した構成とすることもできる。
【0062】
さらに、本実施形態では、角柱状に形成された軸部32を用いてテンショナ10を構成した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示された第2実施形態に係るテンショナ50のように、円筒状に形成された軸部32及び当該円筒状の軸部32に対応するスライド34を用いることもできる。なお、テンショナ50において前述のテンショナ10と同一の機能を有する部材及び部分については、テンショナ10と同一の符号を付している。
【0063】
また、本実施形態では、スライド34が被係合凹部32Dが形成された軸部32に対して軸線方向一方側に移動することによってタイミングチェーン14(図6参照)の張力を保った例について説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図16に示された第3実施形態に係るテンショナ52のように、前述のスライド34に対応するものを軸部54とすると共に、前述の軸部32に対応するものを推進部56とすることもできる。軸部54に対して推進部56が軸方向一方側に移動することによって、タイミングチェーン14の張力を保つことができる。なお、テンショナ52において前述のテンショナ10と同一の機能を有する部材及び部分については、テンショナ10と同一の符号を付している。さらに、図17に示されたテンショナ58のように、軸部54を鋳造によって形成することもできる。なお、当該テンショナ58においては、前述のテンショナ10,52と同一の機能を有する部材及び部分については、テンショナ10,52と同一の符号を付している。また、図16及び図17に示されたテンショナ52,58のように、推進部56を軸部54の内周部に配置することにより、テンショナ52,58の軸方向一方側の部位が大型化することを抑制することができる。
【0064】
また、図12A図12Cに示されるように、本実施形態では、板バネ44のバネ部44Aの一部を構成する一対の第1延在部44A1の長手方向の中間部が軸線方向他方側(矢印A2方向に)凸状に湾曲された構成の板バネ44を用いてテンショナ10を構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図19A図19Cに示されるように、バネ部44Aの一部を構成する一対の第1延在部44A1の長手方向の中間部(スライド34の底壁部34Aに当接する部分)が軸線方向他方側(矢印A2方向に)凸状に湾曲されていることに加えて、バネ部44Aの他の一部を構成する一対の第2延在部44A2の長手方向の中間部(チップ38に当接する部分)が軸線方向一方側(矢印A1方向に)凸状に湾曲された構成の板バネ44を用いることもできる。当該構成では、板バネ44の軸線方向への撓み量をより一層大きくすることができる。また、板バネ44が第1延在部44A1を支点として矢印A3方向に揺動し易くなることにより、チップ38をよりスムーズに移動させることができる
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C