(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469112
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】腔に収容されるチューブのための端部嵌合構造及びチューブを腔内に設置する方法
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
F16L33/22
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-541654(P2016-541654)
(86)(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公表番号】特表2017-502226(P2017-502226A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014074856
(87)【国際公開番号】WO2015090796
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】1322201.3
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516179993
【氏名又は名称】ワトソン−マーロウ ブレーデル ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】アウデ ヴリエリンク ロナルド
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−208898(JP,A)
【文献】
米国特許第06220635(US,B1)
【文献】
実開昭58−146184(JP,U)
【文献】
特開平07−098084(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2447532(EP,A2)
【文献】
欧州特許第00569875(EP,B1)
【文献】
国際公開第2007/004343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/00
F16L 33/20
F16L 33/22−3/24
F04B 43/12
F04C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腔の接続口に対向する第1の接触肩を有するブラケットと、
前記ブラケットの前記第1の接触肩に対向して配置され、その中を通してチューブを受け入れるよう構成された圧縮リングであって、軸方向の大きさ及び半径方向の大きさを有する空洞を画成する圧縮リングと、
前記チューブの中に受け入れられるように構成され、それにより前記圧縮リングに重なりかつ前記圧縮リングを越えて延びるインサートと、そして、
前記ブラケットを前記接続口に連結して前記ブラケットを前記接続口に向けて軸方向に引き寄せるための締着具であって、前記圧縮リングを前記第1の接触肩と前記接続口との間で圧縮することで前記接続口を密封し、かつ、前記圧縮リングによって画成される前記空洞を変形させる締着具と、
を含む端部嵌合構造であって、
前記空洞の変形は、前記空洞の軸方向の大きさを減少させ、前記空洞の半径方向の大きさを増加させ、これにより前記インサートに対して前記チューブを圧縮する、
腔に収納されるチューブのための端部嵌合構造。
【請求項2】
前記圧縮リングは、静止状態においては前記チューブの外径より大きいか、又は等しく、また、圧縮状態においては前記チューブの外径よりも小さい内径を有する、請求項1に記載の端部嵌合構造。
【請求項3】
前記空洞は、前記圧縮リングの断面によって画成され、前記圧縮リングと前記チューブ、前記ブラケット、及び/又は前記接続口の間に位置する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項4】
前記圧縮リングの断面は、1又は2以上の環状路を画成する、請求項3に記載の端部嵌合構造。
【請求項5】
前記圧縮リングの断面は、軸方向に互いに間隔を空けた複数の前記環状路を画成する、請求項4に記載の端部嵌合構造。
【請求項6】
前記圧縮リングの断面は、互いに対して異なった方向に向いた複数の前記環状路を画成する、請求項4又は5のいずれか1項に記載の端部嵌合構造。
【請求項7】
前記空洞は、前記圧縮リングの断面内にある、請求項1〜6のいずれか一項の端部嵌合構造。
【請求項8】
前記圧縮リングは、中空である、請求項7に記載の端部嵌合構造。
【請求項9】
前記圧縮リングは、複数の空洞を画成する細孔を有するフォーム材料で形成される、請求項7又は8のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項10】
前記ブラケットは、前記チューブをその中に受け入れるように形成された環状部分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項11】
記環状部分は、前記チューブが接触する第2の接触肩を有する、請求項10に記載の端部嵌合構造。
【請求項12】
開口部が前記環状部分を貫通して設けられ、前記開口部は前記第2の接触肩の近くに位置する、請求項10又は11のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項13】
前記インサートは、前記チューブの内部に受け入れられるよう形成される軸部分を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項14】
前記インサートは、前記軸部分から放射状に延びる、1又は2以上の突起を更に含む、請求項13に記載の端部嵌合構造。
【請求項15】
前記1又は2以上の突起の直径は、前記チューブの内径より大きく、又前記軸部分の残りの部分の直径は前記チューブの内径よりも小さい、請求項14に記載の端部嵌合構造。
【請求項16】
前記インサートは、前記ブラケットと接触する端部を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項17】
前記ブラケットは、前記接続口の表面に対して接触する内面部を含み、これにより前記圧縮リングの圧縮を制限する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項18】
前記ブラケットは、前記接続口の溝に受入れられ、又は前記接続口の舌を受け入れる、対応する舌又は溝を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の端部嵌合構造。
【請求項19】
前記舌及び溝は環状であって、前記舌は前記圧縮リングを収容する、請求項18に記載の端部嵌合構造。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の端部嵌合構造を含む蠕動ポンプ。
【請求項21】
腔の接続口からチューブ端が突き出るように、前記チューブを腔内に置くことと;
圧縮リング及びブラケットを前記チューブ端に被せて置き、これにより、軸方向の大きさ及び半径方向の大きさを有する空洞を画成する前記圧縮リングが、第1の接触肩と前記接続口の間に配置されるようすることと;
インサートを前記チューブの内部に置いて、前記インサートが前記圧縮リングに重なり、前記圧縮リングを越えて延びるようにすること;及び、
前記ブラケットを前記接続口に向けて軸方向に引き寄せ、これにより、前記第1の接触肩と前記接続口との間の前記圧縮リングを圧縮して前記接続口を密封し、前記圧縮リングによって画成される前記空洞を変形させること;を含む方法であって、
前記空洞の変形は、前記空洞の軸方向の大きさを減少させ、前記空洞の半径方向の大きさを増加させ、これにより前記インサートに対して前記チューブを圧縮する、
チューブを腔の中に設置する方法。
【請求項22】
前記ブラケットを前記接続口に向けて軸方向に引き寄せることは、前記空洞が前記空洞の軸方向の大きさを減少させ、半径方向の大きさを増加させ、それによって前記チューブを前記インサートに対して圧縮する第1圧縮段階と、前記圧縮リングの材料が圧縮されて前記圧縮リングを前記ブラケット及び前記接続口に対して密封する第2圧縮段階と、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ブラケットを前記接続口に向けて軸方向に引き寄せることには、前記ブラケットの内側フランジが前記接続口の表面に対して接触するまで前記ブラケットを前記接続口に向けて引き寄せることが含まれる、請求項21又は22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蠕動ポンプは、ポンプでくみ揚げる流体がポンプの構成部分と接触することを望まれない利用分野で一般的に使用されている。例えば、蠕動ポンプは、流体とポンプ内部の構成部分との接触が流体を汚染させ、又はポンプを損傷させる危険にさらす可能性がある殺菌済の流体、又は摩耗性の流体のポンプによるくみ揚げに頻繁に使用される。それ故に、蠕動ポンプは、殺菌されたポンプによるくみ揚げが要求される食品工業と摩耗性の粒子を含んだスラリーを輸送する必要のある骨材工業で頻繁に使用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、蠕動ポンプは、ポンプハウジング、ポンプハウジングの中に配置されるロータ組立完成品、及びポンプハウジングとロータ組立完成品の間に設置されるフレキシブルチューブからなる。ロータ組立完成品は、通常一対の圧縮シューを備えており、ロータ組立完成品が回転しているときに、シューがチューブに沿って動くことによりチューブに蠕動動作を起こさせる。
【0003】
吸込み及び排出導管(通常、構造上硬くて曲がらない)は、ポンプハウジングの中に設けられた一対の接続口によってチューブに連結される。吸込み及び排出導管のチューブへの接続は、ポンプでくみ揚げた流体の漏れを避けるため、流体密封でなければならない。
【0004】
チューブと圧縮シューの摩耗量を減らして熱を散逸するため、特に、高い作動圧力を必要とされるところ(多くの場合、強化ホースが使用され、そのようなポンプはホースポンプと呼ばれる)では、ポンプハウジング内に潤滑流体を供給することがしばしば望まれる。それ故、ポンプハウジングの中の接続口においては、潤滑流体がポンプハウジングから漏れ出すのを防止するため、チューブをポンプハウジングに対して密封することが必要である。
【0005】
それ故、上述のように、潤滑流体の漏れを避けるために、チューブは、ポンプハウジングに対して密封されなければならず、又ポンプでくみ揚げた流体の漏れを避けるために吸込み及び排出導管に対しても密封されなければならない。
図1及び2は、そのような密封ができる公知の端部嵌合構造の2つの実施形態を示す。
【0006】
図1の実施形態においては、端部嵌合構造はチューブ(不図示)の端部に被さって受け入れられるゴムブッシュ1を含む。ブラケット3は、ブッシュ1に被さって受け入れられ、ポンプハウジングの接続口に連結され、それによりブッシュ1のフランジが、前記ブラケット3と接続口との間に挟まれるようになっている。ブッシュ1のフランジは、ポンプハウジングを密封し、ポンプハウジングから潤滑流体が漏れ出ることを防止する。
【0007】
ホースクランプ5は、ブッシュ1の上で、ホースクランプ5の中に配置されたチューブを用いて受け入れられる。
【0008】
フランジ7は、ブラケットに3に連結され、インサート9はフランジ7を貫通して開口部に設置される。インサート9は、フランジ7を通って延びてチューブ内部の中に入る。そして、ホースクランプ5が締付けられ、チューブをインサート9に対して密封する。
【0009】
図2に示されるように、ブッシュ1をOリング11に置き換えてもよい。本来、Oリング11はブッシュ1と同じ目的を果たすので、ポンプハウジングから潤滑流体が漏れ出ることを防止するためにポンプハウジングを密封する。
【0010】
密閉機能のほかに、
図1及び2に示す端部嵌合構造は、又チューブを定位置に緊結するので、これによりロータの動作に対する歪除去も提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図1及び2に示した端部嵌合構造は適当な密封特性を提供するが、組立てるのに幾らか困難であり、また時間がかかる。更に、端部嵌合構造は、正確に組み立てられないことがあり、その結果として、ポンプでくみ揚げた流体及び/又は潤滑流体の漏れ、及び/又は吸込み接続口での空気の取り込みに起因するポンプ性能の低下を招く可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それ故に、本発明の実施形態によって、腔の接続口に対向する第1の接触肩を有するブラケットと;ブラケットの第1の接触肩に対向して設置され、その中を通してチューブを受け入れるよう形成される圧縮リングであって、軸方向の大きさ及び半径方向の大きさを有する空洞を画成する圧縮リングと;チューブの内部に受け入れられ、圧縮リングに重なり圧縮リングを越えて延びるインサートと;そして、ブラケットを接続口に向けて軸方向に引き寄せることによってブラケットを接続口に連結するための締着具であって、圧縮リングを第1の接触肩と接続口との間で圧縮することで接続口を密封し、またそれにより圧縮リングによって画成される空洞を変形させる締着具と;を含む端部嵌合構造であって、空洞の変形はその軸方向の大きさを減少させ、その半径方向の大きさを増加させ、これにより、インサートを背にしたチューブを圧縮する、腔に収納されるチューブのための端部嵌合構造が提供される。
【0013】
圧縮リングは、静止形態においてはチューブの外径より大きいか、又は実質的にチューブの外径に等しく、又圧縮形態においてはチューブの外径よりも小さい内径を有してよい。
【0014】
腔は、蠕動ポンプのポンプハウジングによって画成されてよい。
【0015】
空洞は、圧縮リングの断面によって画成されてよく、圧縮リング及びチューブ、ブラケット、及び/又は接続口の間に位置してよい。
【0016】
圧縮リングの断面は、1又は2以上の環状路を画成してよい。
【0017】
圧縮リングの断面は、軸方向に互いに間隔を空けた複数の環状路を画成してよい。
【0018】
圧縮リングの断面は、互いに対して異なった方向に向いた複数の環状路を画成してよい。
【0019】
空洞は、圧縮リングの断面内にあってよい。
【0020】
圧縮リングは、中空でよい。
【0021】
圧縮リングは、複数の空洞を画成する細孔を有するフォーム材料で形成されてよい。
【0022】
ブラケットは、チューブを中に受け入れるように形成された環状部分を含んでよい。
【0023】
環状部分は、チューブが接触してくる第2の接触肩を有してよい。
【0024】
第2の接触肩の近くに位置する開口部であれば、開口部を環状部分に貫通して設けてよい。
【0025】
インサートは、チューブの内部の中に受け入れられるよう形成される軸部分を有してよい。インサートは、軸部分から放射状に延びる、1又は2以上の突起を更に含んでよい。1又は2以上の突起の直径は、チューブの内径よりも大きくてよく、又軸部分の残りの部分の直径は、チューブの内径よりも小さくてよい。
【0026】
軸部分は、ブラケットの環状部分で受け入れられてよい。それ故、環状部分はインサートをチューブ内に挿入する案内をしてよい。
【0027】
インサートはブラケットと接触する端部を含んでよい。
【0028】
インサートの端部は、ブラケットのフランジ部分と接触する対応するフランジ部分を有してよい。ブラケットのフランジ部分は、ブラケットを排出又は吸込み導管に接続できるような形態としてよい。
【0029】
ブラケットは、圧縮リングの圧縮を制限するために、接続口の表面に接触する内面(フランジ)部分を含んでよい。
【0030】
ブラケットは、接続口の対応する溝に受入れられ又は舌を受け入れる、舌又は溝を含んでよい。
【0031】
舌及び溝は環状でよく、舌は圧縮リングを収容する。
【0032】
本発明の他の実施形態によると、上述の端部嵌合構造を有する蠕動ポンプが提供される。
【0033】
本発明の他の実施形態によると、チューブを腔内に置き、腔の接続口からチューブ端が突き出るようにすることと;軸方向の大きさ及び半径方向の大きさを有する空洞を画成する圧縮リング、及びブラケットをチューブの端に被せて置き、圧縮リングが、第1の接触肩と接続口の間に配置されるようにすることと;インサートをチューブの内部に置き、インサートが圧縮リングに重なり、圧縮リングを越えて延びるようにすること;そして、ブラケットを接続口に向けて軸方向に引き寄せ、これにより、第1の接触肩と接続口との間の圧縮リングを圧縮して接続口を密封し、圧縮リングによって画成される空洞を変形させること;を含む方法であって、空洞の変形は、空洞の軸方向の大きさを減少させ半径方向の大きさを増加させ、これによってインサートに対してチューブを圧縮する、
チューブを腔の中に設置する方法が提供される。
【0034】
ブラケットを接続口に向けて軸方向に引き寄せることは、空洞が腔の軸方向の大きさを減少させ半径方向の大きさを増加させることにより、インサートに対してチューブを圧縮する第1圧縮段階と、圧縮リングをブラケットと接続口に対して密封するために、圧縮リングの材料が圧縮される第2圧縮段階と、を含んでよい。
【0035】
ブラケットを接続口に向けて軸方向に引き寄せることは、ブラケットの内面フランジが接触口の表面に接触するまで引き寄せることを含んでよい。
【0036】
本発明の開示内容の理解を助け、又如何にして効果を得るかをするかを明確に示すため、ここで、実施形態としての添付図によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、従来技術による端部嵌合構造の実施形態の分解組立図である。
【
図2】
図2は、従来技術による端部嵌合構造の他の実施形態の分解組立図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による端部嵌合構造の断面図であり、端部嵌合構造の第1組立段階を示すものである。
【
図4】
図4は、
図3の端部嵌合構造の圧縮リングの断面の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3の端部嵌合構造のインサートの断面図である。
【
図6】
図6は、可能な2つの実施形態を示したインサートの端部の拡大図である。
【
図7】
図7は、第2組立段階における端部嵌合構造の断面図である。
【
図8】
図8は、第3組立段階における端部嵌合構造の断面図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態における圧縮リングの断面図の例であり
【
図11】
図11は、既設のポンプへの端部嵌合構造のレトロフィットに使用することができる追加アダプタを用いた端部嵌合構造の分解組立図であり、
【発明を実施するための形態】
【0038】
図3は、蠕動ポンプのポンプハウジングに設けられた(吸込み又は排出)接続口4と接続するように形成された、本発明の実施形態による端部嵌合構造2を示す。
【0039】
端部嵌合構造2はブラケット6を含む。ブラケット6は、通常、円筒状の軸部分8と、軸部分8の何れか一端から垂直に放射状に延びる外側及び内側フランジ部分10a、10bとを含む。
【0040】
軸部分8は、互いに段が付けられた第1部分8aと第2部分8bで形成される。それ故、第1部分8aは、第2部分8bの内径d2よりも小さい内径d1を有する。
【0041】
環状舌12は、内側フランジ部分10bの内面から突き出ている。環状舌12の内面は軸部分8の第2部分8bの内面から一段下がっている。それ故、第2部分8bは、環状舌12の内径d3よりも小さい内径d2を有する。
【0042】
上述のように、軸部分8の第1部分及び第2部分8a、8b、及び環状舌12は、互いに対して段がついており、これにより第1放射状接触面14a
(第2の接触肩)は、軸部分8の第1部分及び第2部分8a、8bの間に形成され、第2放射状接触面14b
(第1の接触肩)は、軸部分8の第2部分8b及び環状舌12の間に形成される。
【0043】
圧縮リング16は、環状舌12の半径方向にインボード側に配置され、第2放射状接触面14bに接触する。圧縮リング16は柔軟な弾性材料で形成される。
図4に示すように、圧縮リング16は、実質的にU型形状(また、C型形状又は半円形状と呼んでもよい)の断面を有し、U型形状の断面で画成される環状路18が半径方向に外側に向かうように配置される。環状舌12の軸方向の大きさは圧縮リング16の幅よりも大きい。このため、環状舌12の部分は圧縮リング16を超えて突き出ている。
【0044】
図3に示されるように、圧縮リング16の環状路18は環状舌12と対向する。圧縮リング16は第2放射状接触面14bとの関係で寸法がきまる。すなわち、静止形態においては、圧縮リング16の半径方向の一番奥の面は、軸部分8の第2部分8bの内面と、実質的に、同一水準である。言い換えると、圧縮リング16の内径は、実質的に、第2部分8bの内径d2に等しい。しかしながら、圧縮リング16は、第2部分8bの内面の水準よりも僅かに上か又は僅かに下で着座してもよい。
【0045】
ブラケット6の内側フランジ部分10bには全周に幾つかの開口部が配置され、それぞれの開口部はボルト20(及びワッシャー)を受け入れる。また、ブラケット6の外側フランジ部分10aには、ブラケットを排出又は吸込み導管と接続するため、全周に幾つかの開口部(不図示)が設けられてもよい。
【0046】
接続口4の端面には、ブラケット6の環状舌12を受け入れる寸法で作られた環状溝22が設けられる。環状溝22は、ポンプハウジングの円筒状内面24によって画成される接続口4の開口部を取り囲む。環状溝22は、接続口4の端面を内側放射状接触面26aと外側放射状接触面26bに分割する。内側放射状接触面26aは、外側放射状接触面26bの水準より下でへこんでいて円錐テーパである。円錐テーパはチューブをポンプハウジングに据えるのに役立つ可能性がある。また、円錐テーパは、分解時において、圧縮リング16を取り外す助けにもなりうる。
【0047】
接続口4は、接続口4の全周に複数のねじ穴28が配置されており、ねじ穴28は外側放射状接触面26bを貫通する。
【0048】
組立の第1段階においては、蠕動ポンプのチューブ30はポンプハウジングの中にあってよい。これは、接続口4の一つを通じてチューブ30をポンプハウジング内に導き入れ、そしてチューブ30をポンプハウジング内に引き入れるためポンプのロータを回転させることによって行ってよい。
【0049】
ロータのシューがチューブ30を締めてチューブ30に対するロータのスリップを避けることが可能なように、チューブ30の一端には拡大された鍔が設けられてもよい。
【0050】
したがって、2つのシューを備えたロータを有する従来のホースポンプ(C型)の場合は、チューブ30をポンプの中に完全に挿入するのには、ロータの半回転と少しの回転のみで済む。このことは、チューブを挿入する(そして流体をポンプでくみ揚げる)ために、ポンプが低速で運転される場合、又はポンプを手で回転させる場合には、特に有利である。
【0051】
チューブ30は十分長く、ポンプハウジングに挿入すると、接続口4から僅かな長さが突き出る。それゆえ、ブラケット6はチューブ30の一端を覆って挿入され、ブラケット6の環状舌12が接続口4の環状溝22に受け入れられることで、接続口4の内側放射状接触面26aは、圧縮リング16を間に配置した状態で、ブラケット6の第2放射状接触面14bと対向する。
【0052】
ボルト20は、内側フランジ部分10b内の開口部を貫通して、ブラケット6を接続口4に連結するために、ねじ穴28と螺合する。ボルト20は、ブラケット6の第1放射状接触面14aがチューブ30の端部に接触するまで引き寄せるように締付けられる。上述のように、圧縮リング16は、静止状態においては、第2放射状接触面14と実質的に面一である。したがって、チューブ30は、容易に圧縮リング16内を通って軸部分8の第2部分8bの中まで滑り込むことができる。また、ボルト20の締付は、ブラケット6の環状舌12を接続口4の環状溝22に引き寄せて引き入れ、又ブラケット6の第2放射状接触面14bを接続口4の内側放射状接触面26aに引き寄せる。
【0053】
ボルト20は十分長いので、最初にねじ穴28の中で螺合し、接続口4の内側放射状接触面26aが圧縮リング16と接触することはない(又は、少なくとも、圧縮リング16をその静止形態から十分変形させることはない)。しかしながら、圧縮リング16を越えて突き出ている環状舌12の部分は、環状溝22の中に受け入れられる。
【0054】
チューブ30が第1放射状接触面14aに接触しており、しかし圧縮リング16が依然としてその静止形態にあるときに、インサート32がブラケット6に挿入される。特に、
図5に示すように、インサート32は、軸部分34と軸部分34から垂直に放射状に拡延するフランジ部分36を有する。
【0055】
インサート32の軸部分34はブラケット6の軸部分8を貫通してチューブ30内部に入り、これに伴いインサート32のフランジ部分36がブラケット6の外側フランジ部分10aと接触する。それ故、ブラケット6の軸部分8は、インサート32の軸部分34をチューブ30に入れる案内をする。インサート32の軸部分34は十分長いため、圧縮リング16を越えて突き出ている。
【0056】
インサート32の軸部分34の断面は、その長さに沿って実質的に一様であり、その長さを横断する一定の外径、diを有する。外径diは、実質的に、チューブ30の内径、dtと同じか、又は僅かに大きくてよい。
【0057】
しかしながら、
図6に示すように、軸部分34の自由端(すなわち、フランジ部分36から間隔を置いた端部)においては、軸部分34の残部よりも大きな直径を有する1又は2以上の突起38が形成されてよい。例えば、
図6(a)においては、軸部分34の周りに拡大した鍔38aが設けられており、一方、
図6(b)においては、軸部分34の周りに半径方向に延びる一連のあご38bが設けられている。しかしながら、突起38は、軸部分34の全長の10%未満に相当し得る、軸部分34の小さな部分を覆って設けられるにすぎない。
【0058】
この場合、インサート32の軸部分34の外径diはチューブ30の内径dtよりも僅かに小さくてよく、突起38は、チューブ30の内径dtより大きな直径を有してよい。その代わりに、インサート32の軸部分34の外径diと突起38の直径が両方ともチューブ30の内径dtに実質的に等しいか、又はチューブ30の内径dtより僅かに大きくてもよい。したがって、突起38はインサート32の軸部分34をチューブ30の内部に挿入することに対して何らかの抵抗となる。しかしながら、この抵抗は、インサート32の挿入の間、チューブ30がポンプハウジング内に押し込まれる程には十分ではない。
【0059】
図5及び6に示すように、また、インサート32には、軸部分34の自由端において内側テーパ40が設けられており、ポンプでくみ揚げた流体をチューブ30からインサート32の中へ、又はインサート32からチューブ30の中へ案内する。
【0060】
インサート32が所定位置にある状態で、ボルトを更に締付けて、ブラケット6の第2放射状接触面14bを接続口4の内側放射状接触面26aに向けて更に引き寄せることができる。
図7に示すように、これは圧縮リング16を圧縮して変形させる。
【0061】
圧縮リング16を軸方向に圧縮することは、圧縮リング16の半径方向の大きさを増加させる。これは環状路18によってもたらされる。環状路18の内面は一定の表面積を有しており、それ故に軸方向の大きさの何らかの変化は、必ず、対応する半径方向の大きさの変化に変換される。更に、圧縮リング16は環状舌12で支持されているので、圧縮リング16の半径方向の大きさの増加は、圧縮リング16の内径の減少として実現される。特に、圧縮リング16の内径は、第2部分8bの内径d2よりも小さくなり、そして、重要なことは、チューブ30の外径よりも小さくなる。
【0062】
この第1段階の圧縮においては、環状路18の内面の対向する部分には、互いに、圧縮リング16の軸方向の大きさを減少させて、圧縮リング16の半径方向の大きさを増加させる方向に力が加えられる。換言すると、圧縮リング16は形状が変形するが、材料そのものは著しくは圧縮されない。
【0063】
前述のように、インサート32の軸部分34は、圧縮リング16に重なり圧縮リング16を越えて延びる。それ故、圧縮リング16の変形は、インサート32の軸部分34に対してチューブ30を押し付ける。その結果、圧縮リング16は、チューブ30とインサート32の互いに対する、また、接続口4及びブラケット6に対する、位置を固定する。インサート32の軸部分34は、圧縮リング16の圧縮中にインサート32が外に押されることがないよう、圧縮リング16及び内側放射状接触面26aを十分越えて延びている。しかしながら、インサート32の軸部分34は、チューブ30が軸部分34への円滑な移行を確実に行うために十分短い。換言すると、チューブ30は、可能な限り(上述の対立を考慮すると)、軸部分34の端部に接近して密封(圧縮リング16によって圧縮される場所で)する。これは衛生を改善する。というのは、ポンプでくみ揚げられた流体が、圧縮リング16の内部の領域においてチューブ30と軸部分34の間にたまることが防止されるからである。
【0064】
図8に示すように、ボルトは、内側フランジ部分10bが外側放射状接触面26bに接触するまで更に締付けられる。これは、ユーザに十分な圧縮が行われていることを確認する感覚的なフィードバックを提供する。このように、圧縮リング16の圧縮は、内側放射状接触面26aが外側放射状接触面26bの水準の下に沈む大きさによって決まる。これは、適切な密封を達成するために圧縮リング16を十分な圧縮下に置く一方、圧縮リング16が過大応力になることを避ける構成である。
【0065】
第1段階の圧縮に続いて、環状路18の内面の対向する部分はすでに互いに接触する程の力が加えられている。したがって、この第2段階の圧縮においては、圧縮リング16の更なる圧縮は、圧縮リング16の材料そのものが圧縮される。
【0066】
圧縮リング16は、環状路18が半径方向外側に環状舌12に対向するように向けられていると述べたが、それ以外の向きにしてもよい。特に、環状路18が、チューブ30、ブラケット6の第2放射状接触面14b、又は接続口4の内側放射状接触面26aに対向するように、圧縮リング16を向けてもよい。
【0067】
更に、圧縮リング16がU型形状の断面を有すると述べたが、圧縮リング16について他の多くの形状を使用してよい。
【0068】
例えば、
図9に示すように、前述した単一の環状路18の代わりに、圧縮リングは軸方向に互いに間隔を空けられた複数の環状路を画成してよい。特に、
図9(a)は、2つの環状路を有する圧縮リングを示し、一方、
図9(b)は、3つの環状路を有する圧縮リングを示す。
【0069】
図10に示すように、圧縮リング16の断面形状はまた大きく異なってもよい。例えば、圧縮リング16の断面形状は、
図10(a)に示すように、より角があってもよい。また、圧縮リング16の断面は、
図10(b)〜
図10(f)に示すように、X、Y、T、O、又はP−形状でもよい。また、
図10(g)及び
図10(h)に示すように、圧縮リング16は、円又は四角の断面を有していて開放若しくは閉じられたセルフォームによって形成されてもよい。
【0070】
しかしながら、実施形態のすべてにおいて、圧縮リング16は軸方向の大きさ及び半径方向の大きさを有する1又は2以上の空洞を画成する。O及びP−形状の実施形態において(
図10(e)及び
図10(f)参照)、空洞は圧縮リング16の断面内で画成される。同様に、圧縮リング16がフォーム材料で形成される場合には、空洞は材料それ自体の細孔によって形成される。他方、U、X、Y及びT−形状の実施形態においては、1又は2以上の空洞は、圧縮リング16と接続口4、ブラケット6及び/又はチューブ30との間に形成される。1又は2以上の空洞の形成を考慮しなくても、圧縮リングの柔軟な性質は、圧縮リング16の圧縮を通じて空洞の軸方向の大きさを減少させることを可能にする。このことは、順に、圧縮リング16の半径方向の大きさを増加させる結果となり、それ故、必要とされる密封と固定を提供する。空洞は、従来のOリングの変形と比べて、圧縮リング16の半径方向の大きさの増加を拡大する。したがって、圧縮リング16は、より小さい断面を有することができ、かつ、なお半径方向の大きさの同じ増加を達成することができる。
【0071】
図示はしていないが、軸部分8の第2部分8bを貫通して、1又は2以上の半径方向の開口部を第1放射状接触面14aの領域内に設けてもよい。そのような開口部は、ブラケット6を接続口4に螺合して圧縮リング16を変形させる前と後の両方において、チューブ30が第1放射状接触面14aに寄せて適切に着座されているかを、視覚的に確認するために使用することができる。例えば、一対の半径方向開口部を備えてもよく、これらの開口部は互いに一つの直径に沿って対向しており、それ故にいずれの方向からもチューブ30への視覚的なアクセスが提供される。
【0072】
また、チューブ30はブラケット6から突き出てよく、又は従来のホースクランプでチューブ30を(
図1及び
図2の実施形態で使用されているホースクランプ5と同様なやり方で)締着することを可能にするために、ブラケット6内でむき出しにされてもよい。これは、ポンプが特に尋常でない状況(例えば、採掘)で使用されることになる場合、又はチューブが特別大きな直径を有する場合に、チューブ30を所定位置に固定するのに役立つ可能性がある。
【0073】
ブラケット6は、ボルト20に代えて代替の手段を用いて接続口4に連結してよい。例えば、ブラケット6を接続口4に対して軸方向に移動させるために、他のタイプの締着具を使用してもよい。更に、ブラケット6と接続口4とは互いに螺合してもよい。これによると、ブラケット6の接続口4に対する相対的な回転が、ブラケット6を接続口4に対して軸方向に移動させる。これは、内側フランジ部分10bの必要性を取り除く可能性がある。
【0074】
圧縮リング16は、組立時に単にチューブ30に被せて置けばよく、前述のように、ブラケット6によって運ぶ必要はない。チューブ30を接続口4に入れ、又は接続口4から出すときに、圧縮リング16を通じて受け入れられるよう、代替的に、圧縮リング16を接続口4に連結することができるであろう。しかしながら、ブラケット6は適当な接触肩を有していなければならない。接触肩とは、接続口と協働して半径方向に内側にチューブ30を締着するよう、圧縮リング16に力を加えるものである。
【0075】
環状舌12は、ブラケット6よりはむしろ接続口4に設けられてよく、又環状溝22は接続口4よりもむしろブラケット6の一部として設けられてもよい。更に、環状舌12及び溝22は環状である必要はない。その代わりに、舌と溝は、複数の分離した舌及び溝の要素の組合せによって形成されてよい。例えば、それぞれの舌及び溝の要素は円弧を備えて凸部又は凹部を画成してよい。これは、ブラケット6を、接続口4に対して固定された方向に設置しなければならない場合に、特に有利かもしれない。更に、そのような構成は圧縮リング16を正確な位置に保持することを一層可能とする。
【0076】
ブラケット6とインサート32は、接触フランジ部分による以外の構成を用いて互いに連結されてよい。特に、ブラケット6及び/又はインサート32にはフランジ部分が設けられる必要はない。しかしながら、ブラケット6及び/又はインサート32にとって、インサート32を挿入することができる深さを制限する何らかの構成を有することが有利である。もっとも、これはインサート32から放射状に延びる1又は2以上の突出若しくはタブを備えること、又はインサート32の局所的な厚さを増加させることによってもよい。
【0077】
以上のようにチューブ30のことを記載しているが、これはホースに代えてもよい。更に、ブラケット6とインサート32は互いに一体に形成されてよく、これによりチューブ30はブラケット6(特に、軸部分の第2部分8b)とインサート32(特に、軸部分34)との間に受け入れられる。
【0078】
ここに記載した端部嵌合構造2は、
図11及び12に示すように、簡単なアダプタ部材42によって既設のポンプにレトロフィットを施してもよい。そのような既設のポンプにおいては、接続口4’は平坦な端面を有していてもよい。その場合、従来の端部嵌合構造は、接続口4’の中に設けられたねじ穴によって端面と接触する。それで、アダプタ部材42は、環状溝22等のような、上に述べた特徴を有しており、それ故、接続口4’を接続口4に変換する。アダプタ部材42は、接続口4’の従来のねじ穴を使用して、接続口4’に付加される。アダプタ部材42の裏面には環状溝44が備えられる。環状溝44は、アダプタ部材42と接続口4’の間に配置された従来のOリング46を受け入れ、これらの間を密封する。
【0079】
端部嵌合構造2について蠕動ポンプを参照して詳説してきているが、端部嵌合構造2は、チューブが腔を貫通し、かつ、チューブ及びチューブと腔との間の密封が必要であるような他の用途にも、また使用してよい。例えば、端部嵌合構造2は、蠕動ポンプの排出導管内で発生する脈動を減少させるために使用される可能性があるパルスダンパとも、同じような態様で使用することができるであろう。そのようなパルスダンパは、圧縮された空気や窒素などの気体を収容している圧力容器を貫通するホースを含んでよい。したがって、圧力容器は、圧力容器内に存在している圧縮気体が圧力容器から出るのを防止するため、ホースに対して密封されなければならない。ホースは排出導管に連結されており、そのため、再び排出導管は、ポンプでくみ揚げた流体の漏れを避けるために流体密封されなければならない。それ故、本発明による端部嵌合構造2は、そのような密封を提供するために、上述した内容と同じような態様で使用することができるであろう。また、それ以外の用途についても当業者にとっては明らかである。
【0080】
本発明はここに述べた実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しないで修正又は改作されてよい。