特許第6469122号(P6469122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469122硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびそれを用いた誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469122
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびそれを用いた誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20190204BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20190204BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20190204BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20190204BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20190204BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   H01G4/30 311F
   C08F290/06
   C08F290/14
   B32B27/00
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-552799(P2016-552799)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2017-503903(P2017-503903A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2014080285
(87)【国際公開番号】WO2015068859
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-233088(P2013-233088)
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修司
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−26582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08F 290/06
C08F 290/14
C08L 83/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)JIS K 6249に規定される方法に準拠して測定して、25℃において0.5〜10mmの可塑度を有するガム状を呈する、以下のa1)成分およびa2)成分を100:0〜50:50の質量比で含有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物、
a1)炭素原子数4〜12のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%である1種類以上のオルガノポリシロキサン、
a2)炭素原子数2〜3のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲にある1種類以上のオルガノポリシロキサン、
(B)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈し、任意選択により炭素原子数2〜12のアルケニル基を有していてもよく、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.100質量%未満である、オルガノポリシロキサン、
(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si−H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、および
(E)必要な場合には任意に選択した有機溶剤を含有してなり、
前記の(A)成分と(B)成分の質量比が90:10〜99:1の範囲にある、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(B)のオルガノポリシロキサンのアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が少なくとも0.005質量%である、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
有機溶媒を含有する、請求項1又は2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
ヒドロシリル化反応触媒が白金系触媒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
前記の(A)成分が、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
a1)成分が、a1−1)前記炭素原子数4〜12のアルケニル基としてヘキセニル基を含むオルガノポリシロキサンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
(A)成分としてa1)成分及びa2)成分の両方を含み、a2)成分が、a2−1)前記炭素原子数2〜3のアルケニル基としてビニル基を含むオルガノポリシロキサンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
(B)成分が、炭素原子数2〜12のアルケニル基を含み、前記アルケニル基のビニル(CH=CH−)部分の含有量が少なくとも0.005質量%かつ0.100質量%未満であるジメチルポリシロキサンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
(B)成分が、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されたジメチルポリシロキサンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
有機溶剤を含有し、さらに、(G)光重合開始剤を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
25℃における組成物全体の粘度が100〜50,000mPa・sである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化層とシート状基材とを有するシート状物品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材上に塗工し、さらに塗工した組成物を硬化させてなる、請求項12に記載のシート状物品。
【請求項14】
前記硬化層が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を0.01〜0.5g/mとなる量でシート状基材上に塗工し、さらに塗工した組成物を硬化させて得られる硬化層である、請求項12または請求項13に記載のシート状物品。
【請求項15】
前記硬化が、加熱硬化、エネルギー線硬化、または加熱およびエネルギー線の組み合わせによる硬化である、請求項12〜14のいずれか一項に記載のシート状物品。
【請求項16】
前記シート状基材が、プラスチックフィルムである請求項12〜15のいずれか一項に記載のシート状物品。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか一項に記載のシート状物品からなる、誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム。
【請求項18】
請求項12〜16のいずれか一項に記載のシート状物品からなる、セラミックグリーンシート形成用剥離フィルム。
【請求項19】
請求項17に記載の誘電体セラミック層形成材料用剥離フィルムまたは請求項18に記載のセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムを用い、前記フィルム上の硬化したオルガノポリシロキサンの層の上にセラミックスラリーを塗工し、塗工したセラミックスラリーを乾燥させる工程を含む、誘電体セラミック層形成材料またはセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項20】
セラミックグリーンシートの製造方法である、請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物およびそれを用いた誘電体セラミック層形成材料用の剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用の剥離フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、及び多層セラミック基板などの積層セラミック製品、特に積層セラミック電子部品を製造する場合には、焼成前のセラミック原料を必要に応じてバインダー及び溶剤等とともに混合してペースト状混合物にし、これをプラスチック製のキャリアフィルム上に塗工しかつ乾燥させて誘電体セラミック層形成用材料、一般にセラミックグリーンシートとよばれるシートを作製し、さらに、このセラミックグリーンシート上に、ペースト状にした内部電極材料を印刷して内部電極を形成させ、その電極パターンどうしを位置合わせしながら複数枚のセラミックグリーンシートを積層させた後に、そのシートを圧着して一体化させ、さらにそれを焼成することによって、積層セラミック製品、特に積層セラミック電子部品を製造する方法が知られている。
【0003】
セラミックグリーンシートは、例えば、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック原料及び分散媒等を含有するセラミックスラリーを剥離フィルム上に塗工し、さらにこれを乾燥させることによって作ることができる。キャリアフィルムともよばれるこの剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗工及び乾燥させて得られるセラミックグリーンシートは、その後の工程において遅くともセラミックを焼成する工程の前には剥離フィルムから剥離される。剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのベースフィルムの表面に、ポリシロキサン等のシリコーン系化合物を用いてセラミックグリーンシートに対する剥離性を付与した剥離フィルムが一般に使用されている(特許文献1〜8)。この剥離フィルムには、その剥離フィルム上に成形した薄いセラミックグリーンシートをその剥離フィルムから破断させることなく剥離することができる剥離特性が必要である。
【0004】
さらに近年では、電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板の小型化および多層化が進み、それに伴って、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。
【0005】
セラミックグリーンシート用のキャリアフィルムにも用いることができる剥離性を基材フィルムに付与するための材料として、本発明者は、取り扱いが容易であり、基材表面に硬化層を形成することができ、粘着性物質に対する良好な剥離性と硬化層の円滑なすべり性を基材表面に付与することができる硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、(A)25℃における粘度が20〜500mPa・sであり、炭素原子数4〜12の高級アルケニル基の含有量が1.0〜5.0質量%の範囲にある1種類以上のオルガノポリシロキサン100質量部、(B)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至ガム状を呈し、炭素原子数2〜12のアルケニル基の含有量が0.005〜0.100質量%の範囲にあるオルガノポリシロキサン0.5〜15質量部、(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si−H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A)成分および(B)成分中のアルケニル基に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5〜5となる量、および(D)白金系触媒触媒量、を含有してなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を既に提案している(特開2011−26582号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−011710号公報
【特許文献2】特開2004−182836号公報
【特許文献3】特開2004−216613号公報
【特許文献4】特開2008−254207号公報
【特許文献5】特開2009−034947号公報
【特許文献6】特開2009−215428号公報
【特許文献7】特開2009−227976号公報
【特許文献8】特開2009−227977号公報
【特許文献9】特開2011−026582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板を小型化および/または多層化するために、誘電体セラミック層形成用材料からなる層の薄層化が必要である。しかし、薄膜状のセラミックグリーンシートを作成する場合、基材フィルム上に塗工したセラミックスラリーを乾燥させた後の厚みが3μm以下になると、セラミックスラリーを塗工して乾燥させたときに、セラミックスラリーの塗工部分の端部が収縮して、塗工部分の端部の厚みがそれよりも内側部分よりも厚くなる、いわゆる端部収縮の発生、ピンホールの形成、および/または不均一な塗工が生じやすくなるという問題点があった。また、成形したセラミックグリーンシートを基材フィルム、すなわち剥離フィルムから剥離させるときに、膜厚が薄いことによるセラミックグリーンシートの強度の低下によって、シートの破断等の不具合が起こりやすくなるという問題点があった。
【0008】
さらに、セラミックグリーンシートを用いて製造される電子材料及び電子部品は、その用途に応じて、用いる無機セラミック原料、バインダー樹脂、分散剤、および有機溶剤等の種類が異なるので、剥離フィルムに塗工するセラミックスラリーの種類によって、剥離フィルムに対するセラミックスラリーの塗工性が変わる。したがって、用いるセラミックスラリーの種類にかかわらず、セラミックスラリーに対する良好な塗工性と、得られるセラミックグリーンシートに対する良好な剥離性の両方を備えた剥離フィルムが今も求められている。
【0009】
一方、上述したとおり、基材フィルム表面に剥離性を付与するための材料として本発明者が特開2011−026582号公報に開示した硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、実質的に無溶剤型、すなわち溶剤を含まない硬化性オルガノポリシロキサン組成物であり、ディスプレイの表面保護シート等に用いる材料としては有用であるが、これをそのままセラミックグリーンシートの剥離フィルム用の材料として用いるには適していない点があった。
【0010】
本発明は、この様な実状に鑑みてなされたものであり、セラミックグリーンシート成形用フィルム、すなわちいわゆるキャリアフィルムであって、その表面上へのセラミックスラリーの塗工性に優れるとともに、その表面上に形成されたセラミックグリーンシートの剥離性にも優れたセラミックグリーンシート成形用剥離フィルム、およびそのフィルムを製造するために適した剥離剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、誘電体セラミック層形成用材料用の剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムに用いるために基材フィルムの表面特性を改質するための剥離剤組成物として、下記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材、例えば基材フィルム上にコーティングし、硬化させて得られる剥離フィルムが、誘電体セラミック層形成用材料用の剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムとして優れた特性を示すことを発見して本発明を完成させた。すなわち、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、以下の成分(A)乃至(E):
(A)25℃における粘度が20mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈する、以下のa1)成分およびa2)を100:0〜50:50の質量比で含有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物、
a1)炭素原子数4〜12のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%である1種類以上のオルガノポリシロキサン、
a2)炭素原子数2〜3のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲にある1種類以上のオルガノポリシロキサン、
(B)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈し、炭素原子数2〜12のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.005質量%以上かつ0.100質量%未満のオルガノポリシロキサン、
(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si−H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、および
(E)任意で有機溶剤
を含有してなり、
前記の(A)成分と(B)成分の質量比が90:10〜99:1の範囲にある、硬化性オルガノポリシロキサン組成物である。なお、本発明において、可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度であり、具体的には、25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値(単位:mm)である。この組成物において有機溶剤は任意成分であり、組成物は有機溶剤を含んでいても、含まなくてもよい。特に、本発明の組成物は任意の有機溶剤を含む任意の形態、例えば、溶液及び懸濁液であることができ、溶液であることが特に好ましい。
【0012】
さらに、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、前記の(A)成分が、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明で好適な(A)成分はいわゆる高重合度のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であり、その物性の範囲は、その重合度の増加等により、高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域に連続的に広がっている。すなわち、オルガノポリシロキサンの重合度の増加等により、25℃における粘度が15,000,000mPa・sを超えると、一般的にその粘度の測定が困難になり、さらに高粘度を呈する領域(液状)から、その物性を可塑度により特定する領域(ガム状)に移行する。すなわち、本発明の好適な(A)成分は、25℃における粘度測定が可能であり、粘度が1,000,000mPa・s以上の液状を呈する重合度等を有するものから、さらに高重合度となる領域を含み、25℃における粘度測定が困難であり、可塑度により物性を特定すべき重合度等の領域に至るガム状のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物を含むものである。特に、前記の(A)成分が、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であることが好ましい。最も好適には、前記の(A)成分は、25℃における可塑度が0.5〜3.0mmのガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物である。
【0014】
さらに、上記(A)成分において、
a1)成分が、a1−1)前記炭素原子数4〜12のアルケニル基としてヘキセニル基を含み、前記ヘキセニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンであり、
a2)成分が、a2−1)前記炭素原子数2〜3のアルケニル基としてビニル基を含み、前記ビニル基の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0015】
a1−1)成分のアルケニル基がヘキセニル基であり、a2−1)成分のアルケニル基がビニル基であることが特に好ましい。
【0016】
さらに、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物においては、(B)成分が、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されたジメチルポリシロキサンであることが好ましい。ここで、前記の(B)成分の物性の範囲は、先の(A)成分について説明したのと同様に、その重合度の増加等により、25℃において、高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域に連続的に広がっている。すなわち、本発明において好適な(B)成分は、高粘度液状を呈するジメチルポリシロキサンであってもよく、粘度測定が一般的に困難な、可塑度を有するガム状を呈するジメチルポリシロキサンであってもよい。特に、前記の(B)成分が、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至その可塑度が3.0mm以下のガム状を呈するジメチルポリシロキサンであることが好ましい。最も好適には、前記の(B)成分は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖された、25℃における可塑度が0.5〜3.0mmのガム状を呈するジメチルポリシロキサンである。
【0017】
さらに、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(G)光重合開始剤をさらに含有することができ、これによって熱硬化のみならずエネルギー線(化学作用線ともいう)、例えば、紫外線または電子線によっても硬化させることができる。
【0018】
さらに、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、25℃における組成物全体の粘度が100〜50,000mPa・sであることが好ましい。
本発明はさらに、上記の溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化層とシート状基材とを有するシート状物品も提供する。
【0019】
上記シート状物品においては、硬化層が、上述したいずれかの溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物を0.01〜0.5g/mとなる量でシート状基材上に塗工し、さらに塗工した組成物を加熱硬化、または加熱およびエネルギー線による硬化をさせて得られる硬化層であってよい。
【0020】
また、上記のシート状基材は、プラスチックフィルムであることが好ましい。
【0021】
さらに本発明は、上記のシート状物品からなる、誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムを提供する。
【0022】
さらに本発明は、上記の誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルムまたはセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムをキャリアフィルムとして用い、そのフィルム上の硬化したオルガノポリシロキサンの層の上にセラミックスラリーを塗工し、塗工したスラリーを乾燥させる工程を含む、誘電体セラミック層形成材料の製造方法、特に、セラミックグリーンシートの製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である剥離剤組成物を使用して得られる剥離シート、本発明に係る誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルムまたはセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムは、そのフィルムへのセラミックスラリーの塗工性に優れている。具体的には、本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である剥離剤組成物を硬化させて得られる硬化層の表面にセラミックスラリーを塗工して乾燥させた場合、塗工したセラミックスラリーの端部が収縮してその端部の厚みがそれより内側よりも厚くなる、いわゆる端部収縮が発生することを抑制することができる。また、本発明に係る剥離剤組成物を使用して得られる剥離フィルム、本発明に係る誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルムまたはセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムは、その上に成形したセラミックグリーンシートの剥離性にも優れ、低い剥離力でセラミックグリーンシートを、フィルム、すなわちキャリアフィルムの剥離剤層から剥離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述したとおり、本発明は、剥離フィルムからの誘電体セラミック層成形材料、特にセラミックグリーンシートの剥離性に優れ、かつフィルム上へのセラミックスラリーの塗工性に優れたセラミックグリーンシート成形用剥離シート、及びその剥離シートを製造するのに適した硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供するものである。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述した成分(A)〜(D)を含み、任意でさらに成分(E)を含んでも含まなくてもよいことを特徴とする。特に好ましい態様は成分(E)を含む態様である。以下、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の各構成成分、本発明の組成物を用いて製造したシート状物品、およびセラミックグリーンシート成形用剥離シートについて詳細に説明する。
【0025】
なお、本明細書中に記載した25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度は、回転粘度計により、測定した値である。また、可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度であり、具体的には、25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値(単位:mm)である。
【0026】
[A成分について]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の(A)成分は、25℃における粘度が20mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状を呈する、以下に説明するa1)成分およびa2)を100:0〜50:50の質量比で含有するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物である。
a1)炭素原子数4〜12のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%である1種類以上のオルガノポリシロキサン。
a2)炭素原子数2〜3のアルケニル基を有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲にある1種類以上のオルガノポリシロキサン。
【0027】
したがって、(A)成分は、a1)成分のみからなるか、a1)成分とa2)成分の混合物であり、そのため(A)成分は1種または2種以上のオルガノポリシロキサンから構成される。
【0028】
[a1成分]
上記の(A)成分を構成するa1)成分は、直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐鎖状オルガノポリシロキサン、および一部環状構造を含む直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンから選択することができるが、工業的な観点からは、下記化学式(1)で表わされる直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化1】
【0029】
式(1)中、R11は、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6〜22のアリール基(例えば、フェニル基等)、炭素原子数2〜3のアルケニル基(ビニル基またはアリル基)または水酸基である。Rは、炭素原子数4〜12のアルケニル基である。Rは、R11またはRで表わされる基である。mは0以上の数であり、nは1以上の数である。ただし、m、n、およびRは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサン分子中の炭素原子数4〜12のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%となる数である。
【0030】
例えば、式(1)の両末端のRが共に炭素原子数4〜12のアルケニル基(R)であるとき、当該アルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量は下記式:
{(Rのビニル部分の分子量:約27)×(m+2)}/全体の分子量×100(質量%)
で表わされ、a1)成分は、上記式(1)において、炭素原子数4〜12のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲、より好適には1.0〜2.0質量%の範囲となる条件を満たすオルガノポリシロキサンである。さらに、a1)成分では、式(1)中のm+nは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が20mPa・s以上となる範囲の数であり、特に、25℃での粘度が1,000,000mPa・s以上の液状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数乃至25℃における可塑度が0.5〜3.0mmのガム状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数であることが好ましい。
【0031】
a1)成分は、下記化学式(2)で表される、分子鎖両末端および側鎖にヘキセニル基を有するオルガノポリシロキサンであることが特に好ましい。
【化2】
(式(2)中、m1は0以上の数でありn1は各々正の数であり、m1は式(2)で表される分子中のヘキセニル基(−(CHCH=CH)中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%の範囲、より好ましくは1.0〜2.0質量%の範囲となる数である。また、m1+n1は、式(2)で表されるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が20mPa・s以上となる範囲の数であり、より好適には、1,000,000mPa・s以上となる数乃至25℃における可塑度が0.5〜3.0mmのガム状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数である。)
【0032】
a1)成分の25℃における粘度は20mPa・s以上であり、これ以下の粘度であると、上述した炭素原子数4〜12のアルケニル基の含有量の範囲を満たすことが困難になる場合がある。一方、その粘度が20mPa・s以上であれば、25℃において、液状乃至ガム状(通常、粘度10,000,000mPa・s以上であり、可塑性を有する半固体状の高重合度シリコーンポリマー)であってもよい。先に説明した通り、本発明で好適な(A)成分である高重合度のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物の物性の範囲は、その重合度の増加等により、高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域に連続的に広がっている。すなわち、オルガノポリシロキサンの重合度が増加等し、25℃における粘度が15,000,000mPa・sを超えると、一般的にその粘度の測定が困難になり、さらに高粘度を呈する領域(液状)から、その物性を可塑度により特定する領域(ガム状)に移行する。
【0033】
シート状基材に対する本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の良好な塗工性を得るためには、a1)成分の25℃における粘度が10,000,000mPa・s以上であることが好ましい。a1)成分の25℃における粘度の上限はないが、取り扱いが困難にならないためには、25℃において粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈することが好ましい。
【0034】
a1)成分は2種類以上の粘度の異なるa1)成分の混合物であってもよい。なお、前記の可塑度が3.0mmを超えるガム状のオルガノポリシロキサンであっても、低粘度の液状オルガノポリシロキサンとの混合物にすることで、好適に取り扱うことができる場合があり、そのような態様も本発明の範囲内である。
【0035】
[a2成分]
上記の(A)成分を構成するa2)成分は、直鎖状、分岐鎖状、並びに一部環状構造を含む直鎖状および分岐鎖状のオルガノポリシロキサンから選択してよいが、工業的な観点からは、下記化学式(1)で表わされる直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化3】
【0036】
式(1)中、R11は、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6〜22のアリール基(例えば、フェニル基等)、炭素原子数2〜3のアルケニル基(ビニル基またはアリル基)または水酸基である。Ra’は、炭素原子数2〜3のアルケニル基(ビニル基またはアリル基)である。Rは、R11またはRa’で表わされる基である。mは0以上の数であり、nは1以上の数である。ただし、m、n、およびRは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサン分子中の炭素原子数2〜3のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%、より好ましくは1.0〜2.0質量%となる数である。
【0037】
例えば、両末端のRが共に炭素原子数2〜3のアルケニル基(R)であるとき、アルケニル基の含有量は下記式:
(分子中に存在する炭素原子数2〜3のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の分子量の合計)/全体の分子量×100(質量%)
で表わされ、a2)成分は、上記式(1)において、炭素原子数2〜3のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%、より好ましくは1.0〜2.0質量%となる条件を満たすオルガノポリシロキサンである。さらに、a2)成分では、式(1)中のm+nは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が20mPa・s以上となる範囲の数であり、粘度が1,000,000mPa・s以上となる数であることが好ましく、25℃において粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈する数であることが特に好ましい。
シート状基材への硬化性オルガノポリシロキサン組成物の良好な塗工性を得るためには、a2)成分の25℃における粘度が10,000,000mPa・s以上乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状であることが好ましい。
【0038】
a2)成分は2種類以上の粘度の異なるa2)成分の混合物であってもよい。なお、前記の可塑度が3.0mmを超えるガム状のオルガノポリシロキサンであっても、低粘度の液状オルガノポリシロキサンとの混合物にすることで、好適に取り扱うことができる場合があり、そのような場合も本発明の範囲内である。
【0039】
(A)成分は、a1):a2)を100:0〜50:50の質量比、好ましくは、100:0〜70:30の質量比、さらに好ましくは、100:0〜90:10の質量比で含むことが好ましい。すなわち、(A)成分はa1)成分のみからなるか、あるいは、a1)成分及びa2)成分の組み合わせである。このとき、(A)成分が、a1)成分およびa2)成分の混合物である場合には、可塑性を有する半固体状(ガム状)の高重合度オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であることが望ましく、a1)成分、a2)成分のいずれか一方、または両方が可塑度を有するオルガノポリシロキサンの組み合わせが挙げられる。特に、オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物の25℃における可塑度が0.5〜10.0mmのガム状を呈することが好適である。
【0040】
a1)及びa2)成分は上述したオルガノポリシロキサンを任意の組み合わせで用いることができる。特に好ましいこれらの組み合わせは、a1)成分として、a1−1)炭素原子数4〜12のアルケニル基としてヘキセニル基を含み、かつヘキセニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.0質量%の範囲にある1種以上のオルガノポリシロキサンと、a2)成分として、a2−1)炭素原子数2〜3のアルケニル基としてビニル基を含み、前記ビニル基の含有量が0.5〜3.0質量%、好ましくは1.0〜2.0質量%の範囲にある1種以上のオルガノポリシロキサンとを組み合わせて用いることである。a1−1)成分の炭素数4〜12のアルケニル基は全てがヘキセニル基であることが特に好ましい。またa2−1)成分の炭素数2〜3のアルケニル基は全てがビニル基であることが特に好ましい。
【0041】
成分(A)が2種類以上のオルガノポリシロキサンの混合物であり混合物全体としてガム状である場合は、その可塑度(JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度:25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値)が0.5〜10.0mmの範囲内であることが好ましく、特に0.9〜3.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0042】
[B成分]
成分(B)は、セラミックスラリーに対する優れた塗工性を剥離フィルムに付与するための添加剤であり、成分(B)を用いることによって、得られる剥離フィルムに、セラミックスラリーに対する良好な塗工性を付与することができる。より詳細には、上記の(A)成分の使用によって得られる高い架橋密度を有する硬化したオルガノポリシロキサン層の表面に成分(B)が効果的にブリードアウトすることによって剥離フィルム表面特性を改質することにより、セラミックスラリーの良好な塗工性を剥離性フィルムに付与することができると推測される。
【0043】
成分(B)は、任意に炭素原子数2〜12のアルケニル基を含み、アルケニル基のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.100質量%未満、好ましくは少なくとも0.005質量%、好ましくは0.010〜0.050質量%である、オルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合するアルケニル基以外の基としては、メチル基、エチル基、およびプロピル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基およびノナフルオロヘキシル基などのハロアルキル基;並びに、シラノール基が例示され、アルケニル基以外の基はこれらの基から選択される基である。成分(B)の炭素数2〜12のアルケニル基としては特に限定されないが、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、およびドデセニルが挙げられるが、ビニル、アリル、およびヘキセニルが好ましく、ビニルおよび/またはヘキセニルがさらに好ましく、ビニルが特に好ましい。
【0044】
本発明の目的を達成するために、(B)成分は、炭素原子数2〜12のアルケニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.100質量%未満、好ましくは0.005〜0.100質量%、好ましくは、0.010〜0.050質量%の範囲にある低反応性のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した基の90%以上、より好ましくは全てが非反応性のアルキル基またはアリール基であることが好ましい。非反応性のアルキル基またはアリール基は非置換のアルキル基またはアリール基であって、上述したアルキル基及びアリール基が挙げられ、特に好ましい基は、メチル基及びフェニル基から選択される基である。
【0045】
(B)成分中のアルケニル基の含有量が上記の下限未満では、硬化反応性が著しく低下することによりシリコーンポリマーのセラミックシートへの移行量が増大し、このセラミックシートを用いて積層セラミックコンデンサを作製した場合には、得られるコンデンサの性能の低下という問題を生じる場合がある。一方、アルケニル基の含有量が上記の上限を超えると、付加反応により硬化したポリオルガノシロキサン(すなわちシリコーン)の層に(B)成分が取り込まれてしまい、硬化したシリコーン層から(B)成分が剥離フィルム表面に出てくることによってセラミックスラリーに対する良好な塗工性を剥離フィルムの表面に付与するという本発明の効果が十分に得られない場合がある。一方、(B)成分においてアルケニル基は任意の官能基であるが、アルケニル基含有量が上記の下限を超えると、硬化反応性は増加し、シリコーンポリマーのセラミックシートへの移行性が著しく低下する。ビニル(CH=CH−)部分の含有量が0.010〜0.050質量%である(B)成分を使用することにより、積層セラミックコンデンサを作製するため得られるセラミックシートの性能を、分子中にアルケニル基を有しない(B)成分と比べて、さらに改善することができる。
【0046】
(B)成分は、好ましくは25℃において液状乃至可塑度を有するガム状を呈し、液状の場合25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上であることが好ましく、10,000,000mPa・s以上であることがさらに好ましい。粘度の上限は特に限定されないが、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の良好な塗工性および組成物への配合時の取扱いの容易さから(B)成分が可塑度を有し、かつ、その25℃における可塑度が10.0mm以下のガム状であることが好ましい。また、(B)成分がガム状である場合は、その可塑度(JIS K 6249に規定される方法に準じて可塑度計で測定された可塑度:25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値)が0.5〜10.0mmの範囲内であることが好ましく、特に、0.9〜3.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
(B)成分としては、具体的には、分子鎖末端がケイ素原子に結合したアルキル基,アルケニル基,アリール基,ハロアルキル基またはシラノール基からなる群から選択される同一または異種の基で封鎖された、ポリジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン・フェニルメチルシロキサン共重合体、およびジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体であって、上述したアルケニル基含有量を有するオルガノポリシロキサンが例示される。このような(B)成分として、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、シラノール基、またはビニル基からなる群から選択される同一または異種の基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のジメチルポリシロキサンであって、任意に上述したアルケニル基含有量を有するジメチルポリシロキサンが特に好ましい。また、(B)成分は2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよく、例えば、重合度の異なるポリジメチルシロキサンの混合物を使用してもよい。
【0048】
最も好ましくは、(B)成分は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基により封鎖されたポリジメチルシロキサンであり、特に、ガム状のポリジメチルシロキサンが好ましく使用できる。
【0049】
[(A)成分と(B)成分の割合]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の前記の(A)成分と(B)成分の質量比は、90:10〜99:1の範囲であり、97:3〜94:6の範囲がより好ましく、95.5:4.5〜94.5:5.5の範囲がさらに好ましく、95:5であることが特に好ましい。(A)成分と(B)成分の質量比を前記の範囲内にすることによって、セラミックスラリーに対する良好な塗工性を剥離フィルムに付与することができる。一方、(B)成分の比率が前記の範囲の上限値を超えると、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性が低下するおそれがあり、剥離フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートの、剥離フィルムからの剥離性が低下するおそれがある。
【0050】
[(C)成分]
(C)成分は、一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si−H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、上記成分(A)の架橋剤である。(C)成分は、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましく、その水素原子の分子中における結合位置は特に限定されない。ケイ素原子結合水素原子の含有量は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物全体の0.1〜2.0質量%となる量であることが好ましく、0.5〜1.8質量%となる量であることがより好ましい。また、水素原子以外で、(C)成分が含有するケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびオクチル基等のアルキル基が例示され、メチル基であることが好ましい。また、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、および分岐状環状のいずれか又はそれらの1つ以上の組み合わせが例示される。なお、ケイ素結合水素原子の一分子中の数は全分子の平均値である。
【0051】
(C)成分の25℃における粘度は1〜1,000mPa・sであり、好ましくは5〜500mPa・sである。これは、25℃における成分(C)の粘度が1mPa・s未満であると、(C)成分がそれを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物中から揮発し易くなり、1,000mPa・sを超えると、そのような(C)成分を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間が長くなるからである。このような(C)成分は、特に限定されないが、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、および環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が例示される。なお、(C)成分として、2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することもできる。
【0052】
より好ましくは、(C)成分は、下記一般式(2)で示される1種類のオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたは2種類以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であり、成分(A)および成分(B)に含まれるケイ素原子結合アルケニル基と付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより、硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成することができる。
【化4】
【0053】
式(2)中、R12は非置換もしくは置換のアルキル基またはアリール基であり、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基である。Rは前記のR12で表わされる基またはケイ素原子に結合した水素原子(H)であるが、q=0のときは、Rはケイ素原子に結合した水素原子(H)である。p及びqは0以上の数であり、10≦(p+q)≦200の関係を満たす数である。(p+q)が前記下限値未満では硬化条件によっては、成分(C)が硬化性オルガノポリシロキサン組成物から揮発してしまい、組成物が十分に硬化しないおそれがある。また、(p+q)が前記の上限値を超えるとフィルムに塗工する前にゲルが生成するおそれがある。さらに、pおよびqは、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(H)の数を”r”とするとき、0.01≦r/(p+q)≦1の関係を満たすことが好ましく、さらに0.2≦r/(p+q)≦1の関係を満たすことが好ましく、0.4≦r/(p+q)≦1の関係を満たすことが特に好ましい。r/(p+q)が前記の下限値未満では、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化が不十分となる場合があるからである。なお、rはケイ素原子に結合した水素原子(H)であるRの数とqの数の和であり、例えば、両末端のRがケイ素原子に結合した水素原子(H)であるとき、rは”q+2”である。
【0054】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物における(C)成分の配合量は、(A)成分および(B)成分中のアルケニル基の合計モル数に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5〜5となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。このモル比が前記の下限値よりも小さいと、得られる硬化性組成物の硬化性が低下し、前記の上限を超えると、得られる剥離シートからの誘電体セラミック層成形用材料、特にセラミックグリーンシートの剥離抵抗が大きくなり、実用的な剥離性が得られなくなるおそれがある。
【0055】
[(D)成分]
(D)成分はヒドロシリル化反応触媒であり、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に存在するケイ素原子結合アルケニル基と、ケイ素原子結合水素原子との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒である。好ましいヒドロシリル化反応触媒は、白金系金属を含むヒドロシリル化反応触媒であり、具体的には、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とケトン類との錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末の白金系触媒が例示される。特に、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が好ましく使用できる。
【0056】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物への(D)成分の添加量は触媒量であればよく、通常、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全質量に対して、(D)成分が含有する白金系金属量が1〜1,000ppmの範囲となる量が好ましく、5〜500ppmの範囲となる量がさらに好ましい。
【0057】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物]
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は(E)有機溶剤を任意で含むことができる。特に、本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は(B)成分の含有量が多いので、取り扱い作業性および塗工性を良好にするために、公知の(E)有機溶剤に、成分(A)〜(D)を含む組成物を分散ないし溶解させて使用することが好ましい。ただし、本発明の目的に反しない限り、任意の有機溶剤以外の低粘度の液状オルガノポリシロキサン(例えば、25℃において、0.5〜10mPas程度の低粘度である鎖状または環状のオルガノポリシロキサン)に、前記の成分(A)〜(D)を分散ないし溶解させて使用することも可能である。有機溶剤は、トルエンおよびキシレン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、およびイソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルおよび酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテルおよび1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびデカメチルシクロペンタシロキサンなどの重合度3〜6の環状ポリシロキサン類、並びに、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及びメチルペンタフルオロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を例示することができる。耐熱性が低いポリオレフィン等のシート状基材に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄く塗工する場合には、組成物の硬化性への影響が少ないことから、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤の使用が好ましい。
【0058】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の成分(A)〜(D)および任意で成分(E)以外に、常温下でのゲル化および硬化を抑制して保存安定性を向上させるとともに、加熱時には硬化性にするために、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含有することが好ましい。ヒドロシリル化反応抑制剤としては、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、およびオキシム化合物が例示される。具体的な化合物としては、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、および1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ETCH)等のアルキンアルコール;3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンが例示できる。硬化性オルガノポリシロキサン組成物への(F)ヒドロシリル化反応抑制剤の添加量は、通常、成分(A)100質量部当り成分(F)0.001〜5質量部の範囲内であるが、成分(F)の種類、用いるヒドロシリル化反応触媒の特性と使用量、成分(A)中のC〜C12アルケニル基の含有量、成分(C)中のケイ素原子結合水素原子量、および硬化性組成物に対する所望の可使時間および作業環境に応じて適宜、(F)成分の好ましい使用量を容易に決めることができる。
【0059】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、および任意で(E)成分を含み、さらに、任意選択により(F)成分を含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物は、溶剤を含む溶液型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物として用いるのに適している。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、シート状基材への組成物の良好なコーティング特性を得るために、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、組成物全体の粘度が100〜50,000mPa・sであることがより好ましい。
【0060】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分に加えてそれ以外の任意成分をさらに添加することができる。その他の任意成分としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物からなる接着促進剤;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、およびチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系およびベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、およびアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤などから選択される1種類以上の界面活性剤;帯電防止剤、耐熱剤、染料、および顔料等の公知の添加剤が挙げられ、これらから選択される成分を1種または2種以上組み合わせて、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することができる。
【0061】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の成分(A)〜成分(D)、任意選択により場合によって(E)成分および任意選択により場合によってはさらに(F)成分を含むものであり、室温または50〜200℃の条件下において白金系触媒(D成分)の存在下で付加反応を行わせることにより、優れた剥離特性を有する硬化皮膜を形成できる。さらに、得られる硬化皮膜の物理特性および剥離性が優れていることから、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、エネルギー線(化学作用線ともいう)、例えば、紫外線または電子線、特に紫外線照射により硬化させることが好ましい。この場合、紫外線硬化は、紫外線硬化のみ、あるいは紫外線硬化と加熱硬化とを併用して行うことができる。硬化性組成物の硬化時間は、用いる硬化条件に応じて適宜調節できる。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に良好な紫外線硬化性を付与するためには、(G)光重合開始剤を組成物にさらに配合することが好ましい。以下、(G)成分について説明する。
【0062】
(G)光重合開始剤は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に紫外線硬化性を与える成分であり、付加反応による熱硬化と紫外線硬化を併用することにより、耐熱性の低いプラスチックフィルム基材への熱によるダメージが低減され、本発明の硬化物のプラスチックフィルムへの密着性が向上するという利点がある。さらに、本発明の硬化組成物からなる硬化皮膜表面からシリコーン成分がセラミックシート上へ移行し、セラミックシートがシリコーン成分により汚染される(これをシリコーンの移行性という)ことを防ぎ、シリコーンの移行性をさらに低減することができるという利点がある。この(G)成分は、紫外線の照射によりラジカルを発生する化合物として公知のもの、例えば、有機過酸化物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、およびアゾ化合物などの中から適宜選択して用いることができる。具体的な化合物としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕2−モルフォリノ−1−プロパノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびジエトキシアセトフェノンなどがあげられる。本発明の組成物を紫外線で硬化させる場合、成分(G)としては、ベンゾフェノン、4−メトキシアセトフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。特に好ましい成分(G)としては、ジエトキシアセトフェノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
【0063】
上記(G)光重合開始剤は、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。その配合量は、特に限定されないが、成分(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であり、好ましくは0.01〜2.5質量部の範囲である。(G)成分の配合量が前述の範囲内であれば、本発明の組成物を硬化させて得られる剥離性硬化皮膜は、シリコーンの移行性が改善され、強度等の物理特性に優れたものとなる。
【0064】
本発明の組成物は、前記(A)成分〜(D)成分、任意で(E)成分、さらに任意選択により場合により(F)成分およびその他の任意成分を用いる場合はそれらを均一に混合することにより製造することができる。各成分の添加順序は特に限定されるものではないが、混合後、得られた組成物を直ちに使用しない場合は、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混合したものと、(D)成分を別々に保存しておき、使用直前に両者を混合することが好ましい。また、(A)成分〜(D)成分、任意で(E)成分さらに(F)成分からなる組成物において、成分(F)の配合量を調整することにより、常温では架橋せず、加熱すると架橋して硬化するようにした組成物も好ましい。
【0065】
上記の本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材上に均一に塗工し、成分(A)と成分(B)がヒドロシリル化反応して架橋するのに十分な条件下で加熱、エネルギー線(例えば、紫外線、電子線など)の照射、あるいはこれらの併用をすると、シート状基材表面に硬化したシリコーン被膜(すなわち硬化したオルガノポリシロキサン)被膜を有するシート状物品が得られる。本発明によるシート状物品は、その硬化したシリコーン被膜の上へのセラミックスラリーの塗工性が良好であり、かつ、スラリーの乾燥後に得られる誘電体セラミック層成形用材料、特にセラミックグリーンシートを基材から剥離しやすいという特徴を有する。すなわち、そのようにして得られる本発明のシート状物品は、誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特にセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムとして用いることができる。また、本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化層は柔軟性に優れるため、基材への追従性が良く、非平面状の対象物に貼りつける際にも気泡の巻き込みが少ないという利点を有する。このため、光学ディスプレイやガラス表面の保護フィルムのように、硬化層の剥離特性と保護すべき対象への硬化層の密着特性が共に必要とされる用途に極めて好適に使用することができる。
【0066】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を塗工するためのシート状基材としては、特に制限はなく、従来公知の材料の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、ポリエチレンテフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリプロピレンおよびポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ならびにポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられる。このフィルムは単層であってもよいし、同種または異種のプラスチックからなる2層以上の多層から構成されていてもよい。本発明に用いるシート状基材、特に誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、とりわけセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムのための基材としては、プラスチックフィルム、特にポリエステルフィルムが好ましく、なかでもポリエチレンテフタレートフィルムが好ましい。なかでも、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルムをシート状基材として用いることが好ましい。ポリエチレンテフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくい。したがって、埃等によって生じる、シート状基材へのセラミックスラリーの塗工不良を有効に防止することができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行い、これをシート状基材として用いることも、シート状基材へのセラミックスラリーの塗工不良等の発生の防止に有効である。
【0067】
また、シート状基材の表面に塗工して硬化させた本発明の硬化性オルガノポリシロキサンとシート状基材の表面との間の密着性を向上させるために、所望によりシート状基材の片面または両面に、酸化法または凸凹化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、および紫外線照射処理などが挙げられ、また、凸凹化法としては、例えば、サンドブラスト法、及び溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、シート状基材の種類に応じて適した方法を選択することができるが、シート状基材の表面処理によって得られる所望する効果が高いこと及び操作が簡便であることから、コロナ放電処理法が好ましい方法としてあげられる。
【0068】
シート状基材の厚さは、一般に、10〜300μmであり、好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜125μmである。
【0069】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物のシート状基材上への塗工方法は、公知の任意の方法を用いて行うことができるが、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、およびダイコート法などを用いることができる。
【0070】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材の上に塗工して硬化させる場合、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さは特に限定されないが、0.01〜3μmであることが好ましく、0.03〜1μmであることがさらに好ましい。シート状基材上の硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さが0.01μm未満の場合、これをセラミックグリーンシート成形用剥離シートとして用いたときに、その層が剥離剤層として十分な機能を示さないおそれがある。一方、シート状基材の上の硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さが3μmを超える場合、得られるシート状物品をロール状に巻き取ったときにブロッキングが発生するおそれがある。
さらに、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層とは反対側のシート状基材の表面、あるいはシート状基材とオルガノポリシロキサン組成物の層との間には、上述した帯電防止層のほか、その他の層を任意選択で設けてもよい。
【0071】
シート状基材とその上に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工して硬化させて得られる硬化層とを有するシート状物品は、誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムとして用いるのに適している。セラミックグリーンシートは、本発明のセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムの上、すなわち硬化したポリオルガノシロキサン組成物の面の側にセラミックスラリーを塗工し、そのスラリーを乾燥させる工程を含む方法で作成することができる。より具体的には、任意の塗工方法、たとえば、スロットダイ塗工法やドクターブレード法を使用して、セラミックスラリーを本発明のセラミックグリーンシート成形用剥離フィルム上に形成された硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の表面に塗工し、さらに乾燥させることによって、セラミックグリーンシートを形成させる。このとき、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて剥離層を形成させた誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムを用いると、塗工したセラミックスラリーの端部が収縮して、その端部の厚さがそれより内側のセラミックスラリーの厚さよりも厚くなる現象、いわゆる端部収縮の発生が抑えられ、それとともに、セラミックスラリー塗工面でのピンホールの発生、及びセラミックスラリーの塗工むらの発生も抑制される。また、本発明のセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムを用いた場合、硬化したオルガノポリシロキサン組成物からなる表面が良好な剥離性を有するので、その上に強度の低い薄膜のセラミックグリーンシートを形成した場合でも、セラミックグリーンシートにヒビあるいは破断などの不具合を発生させることなく、低い剥離力でセラミックグリーンシートをその下の硬化したオルガノポリシロキサンの層から剥離させることができる。このように、本発明のセラミックグリーンシート形成用剥離フィルムは、セラミックスラリーに対する優れた塗工性と、その後形成されたセラミックグリーンシートに対する優れた剥離性を備えている。
【0072】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述したように誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムに用いるのに適しているが、用途はそれに限定されず、さまざまなフィルム及びシートの表面処理に用いることができる。特に、本発明の組成物からなる硬化層を有するシート状物品は、液晶パネル、プラズマディスプレイ、偏光板及び位相差板等の光学部品あるいはプリント配線板、IC、トランジスタ、コンデンサ等の電気・電子部品の表面を保護するための表面保護フィルムとしても用いることができ、その場合には、本発明の組成物に帯電防止剤を添加することが好ましい。
【0073】
帯電防止剤は、公知のイオン性または非イオン性の帯電防止剤を特に制限なく用いることができ主成分に親水性基を持つシリコーンオイルを添加する方法(特開昭52−103499号公報)、スルホン酸塩を添加する方法(特公平3−59096号公報)、含フッ素シリコーンオイルを添加する方法(特開平1−83085 号公報、同1−83086号公報、同1−121390号公報)、界面活性剤を含有したシリコーンオイルを添加する方法(特開平1−294099号公報)、導電粉を添加する方法(特開平2−69763号公報、同3−292180号公報、同4−86765号公報)等が例示できる。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物との相溶性の見地から、リチウム塩またはポリエーテル変性ポリシロキサンである帯電防止剤の使用が好適である。これらのイオン性帯電防止剤またはポリエーテル変性ポリシロキサン等は、例えば、特開2009−30028号公報、特開2012−157978号公報、特開2011−178828号公報に開示のものが特に制限なく使用できる。また、帯電防止の見地から、前記の帯電防止剤の添加剤としての使用だけでなく、界面活性剤系、シリコーン系、有機ホウ素系、導電性高分子系、金属酸化物系、蒸着金属系などの帯電防止剤による処理を行ってもよい。
【実施例】
【0074】
以下に本発明の実施例を比較例とともに示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、量を示す「部」は質量部を意味し、Hexはヘキセニル基を示し、Viはビニル基、Meはメチル基を表す。また、ビニル(CH=CH−)部分とは、ケイ素原子に結合したアルケニル基中のビニル(CH=CH−)基部分を表し、分子量全体に占める当該ビニル部分の含有量を質量%で表わし、当該アルケニル基がビニル基である場合、単に「ビニル基含有量」という。粘度および可塑度は25℃において測定した値である。可塑度の測定方法は上述したとおりであり、粘度の測定は、デジタル表示B型回転粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVDA2型)を使用して行った。また、硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる硬化物の層の剥離抵抗値(剥離力)は以下に示す方法によって測定した。
【0075】
[硬化層の形成方法]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、メイヤーバーを用いて二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に、溶剤を除いた固形分換算量で0.15g/mとなる量で塗工した。塗工後に、上記組成物が塗工された基材を、熱風循環式オーブン中で130℃において30秒間加熱処理することにより、ポリエステルフィルム基材表面にオルガノポリシロキサンの硬化層を形成させた。
【0076】
[セラミック用バインダー樹脂塗工性評価]
ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、エスレックB・K、BM−1)3質量部、にトルエン55質量部を加えて均一になるまで混合し、さらにその混合物にメタノール33質量部、n−ブタノール9質量部を添加して全体が均一になるまで撹拌を行い、セラミック用バインダー樹脂溶液を調製した。
【0077】
実施例又は比較例に示した硬化層を作成してから、温度25℃、湿度60%の空気中で24時間保管した硬化層表面に、上記セラミックバインダー樹脂溶液を乾燥後の膜厚が2μmになるようにメイヤーバーを用いて均一に塗工し、各実施例又は比較例に記載の方法により硬化させた。このようにしてセラミックバインダー樹脂付剥離フィルムシートを作成した。
【0078】
[塗工性試験]
得られたセラミック用バインダー樹脂付剥離フィルムシートにおいて、端部収縮(塗工したセラミック用バインダー樹脂の端部がそれより内側よりも厚くなる現象)が発生したかどうかを、目視により確認した。その結果、端部収縮が発生しなかったものを○、端部収縮が僅かに発生したものをΔ、端部収縮が著しく発生したものを×とした。
【0079】
[セラミック用バインダー樹脂剥離力評価]
ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、エスレックB・K、BH−3)8質量部、にトルエン50質量部を加え均一になるまで混合し、メタノール33質量部、n−ブタノール9質量部を添加して均一になるまで撹拌を行い、セラミックバインダー樹脂溶液を調製した。
【0080】
実施例又は比較例に示した硬化層を作成してから温度25℃、湿度60%の空気中で24時間保管した剥離層表面に、上記セラミックバインダー樹脂溶液を、乾燥後の膜厚が10μmになるようにアプリケーターを用いて均一に塗工し、その後、熱風循環式オーブンにて100℃で1分間乾燥させた。このようにして得られたセラミックバインダー樹脂付剥離フィルムシートを5cm幅に切断して試験片を作成し、20g/cmの荷重をかけて、温度25℃、湿度60%の空気中に24時間放置した。この後、引っ張り試験機[株式会社エー・アンド・ディー製テンシロン万能試験機]を用いて、セラミックバインダー樹脂層を角度90度、剥離速度0.3m/minの条件で引張り、剥離に要した力(mN/50mm)を測定した。この方法による剥離力が20mN/50mm以下であれば剥離特性良好、20mN/50mm以上であれば剥離特性不良と判断した。
【0081】
[実施例1]組成物1
(A)a1)分子鎖両末端および側鎖にヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.15、ヘキセニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量0.80質量%)30.0部、(B)分子鎖末端がビニル基で封鎖されたジメチルシロキサン(可塑度1.20、ビニル基含有量0.02質量%)1.5部、(C)粘度25mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを全組成物中のSiH/Vi比が1.5となる量として1.3部、(E)トルエン66.2部、および(F)3−メチル−1−ブチン−3−オール1.0部を均一に混合し溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物1)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が全組成物中120ppmとなる量で添加配合したものを、上記の方法で、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に0.15g/mとなる量で塗工し、120℃×30秒の条件下で硬化させて硬化層を得た。そのようにして得られた硬化層へのセラミックバインダー樹脂塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0082】
[実施例2]組成物2
実施例1の(B)成分の使用量を0.4部に替えた以外は、実施例1と同様にして組成物2を得た。これを用いて、硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0083】
[実施例3]組成物3
実施例1の(B)成分の使用量を3.0部に替えた以外は、実施例1と同様にして組成物3を得た。これを用いて、硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0084】
[実施例4]組成物4
(A)a1)分子鎖両末端および側鎖にヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.15、ヘキセニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量0.80質量%)15.0部、a2)分子鎖両末端がシラノール基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.20、ビニル基含有量0.90質量%)15.0部、(B)分子鎖末端がビニル基で封鎖されたジメチルシロキサン(可塑度1.20、ビニル基含有量0.02質量%)1.5部、(C)粘度25mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを全組成物中のSiH/Vi比が1.5となる量として1.4部、(E)トルエン66.1部、および(F)3−メチル−1−ブチン−3−オール1.0部を均一に混合して溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物4)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が120ppmとなる量で組成物に添加配合したものを上記の方法で、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に0.15g/mとなる量で塗工し、さらに120℃×30秒の条件下で硬化させて得た硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0085】
[実施例5]組成物5
実施例1の組成物1にさらに(G)成分としてジエトキシアセトフェノンを0.04部添加して、溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物5)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、さらに(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が組成物中に120ppmとなる量で添加し混合したものを、上述した方法により、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)の表面に0.15g/mとなる量で塗工した。硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工した後の基材を、熱風循環式オーブン中で130℃において30秒間加熱処理を行い、次いで紫外線照射(アイグラフィックス(株)アイグランデ、照射エネルギー全量:110mJ/cm)することにより、ポリエステルフィルムの表面に硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成させた。硬化したオルガノポリシロキサンの層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性およびその硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0086】
[実施例6]組成物6
実施例4の組成物4に(G)成分としてジエトキシアセトフェノンを0.04部添加し、溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物6)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、さらに(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が組成物に対して120ppmとなる量で添加し混合したものを、上述した方法によって、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に0.15g/mとなる量で塗工した。硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工した後のポリエステルフィルムに対して、熱風循環式オーブン中で130℃において30秒間加熱処理を行い、次いで紫外線照射(アイグラフィックス(株)アイグランデ、照射エネルギー全量:110mJ/cm)することにより、ポリエステルフィルムの表面に硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成させた。硬化したオルガノポリシロキサンの層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性およびその硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0087】
〔実施例7〕組成物7
実施例3の(B)成分の種類を、分子鎖末端がシラノール基で封鎖されたジメチルシロキサン(可塑度1.43)に替えた以外は、実施例3と同様にして組成物7を得た。これを用いて、硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。剥離試験後フィルム上に少量のシリコーン移行が観察された。
【0088】
〔実施例8〕組成物8
実施例3の(B)成分の種類を、分子鎖の末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルシロキサン(可塑度1.29)に替えた以外は、実施例3と同様に組成物8を得た。これを用いて、硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。剥離試験後フィルム上に少量のシリコーン移行が観察された。
【0089】
[比較例1]比較組成物1
実施例1の(B)成分を除いた以外は、実施例1と同様にして比較組成物1を得た。これを用いて、硬化したオルガノポリシロキサン層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0090】
[比較例2]比較組成物2
実施例1の(B)成分の使用量を5.0部に代えた以外は、実施例1と同様にして比較組成物2を得た。これを用いて、硬化したオルガノポリシロキサン層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0091】
[比較例3]比較組成物3
比較例1の比較組成物1に(G)成分としてジエトキシアセトフェノンを0.04部添加し、溶剤型硬化性オルガノポリシロキサン組成物(比較組成物3)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が組成物中で120ppmとなる量で添加し混合したものを上述した方法で、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)の表面に0.15g/mとなる量で塗工した。硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工した後のポリエステルフィルムに対して、熱風循環式オーブン中で130℃において30秒間加熱処理を行い、次いで紫外線照射(アイグラフィックス(株)アイグランデ、照射エネルギー全量:110mJ/cm)することにより、ポリエステルフィルム基材の表面に硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成させた。硬化したオルガノポリシロキサンの層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0092】
[比較例4]比較組成物4
比較例2の比較組成物2に(G)成分としてジエトキシアセトフェノンを0.04部添加し、溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(比較組成物4)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、さらに(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が組成物中で120ppmとなる量で添加し混合したものを上述した方法で、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)の表面に0.15g/mとなる量で塗工した。硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工した後のポリエステルフィルムに対して、熱風循環式オーブン中で130℃において30秒間加熱処理を行い、次いで紫外線照射(アイグラフィックス(株)アイグランデ、照射エネルギー全量:110mJ/cm)することにより、ポリエステルフィルム基材の表面に硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成させた。硬化したオルガノポリシロキサンの層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0093】
[比較例5]組成物5
(A)a1)分子鎖両末端および側鎖にヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.15、ヘキセニル基中のビニル(CH=CH−)部分の含有量0.80質量%)12.0部、a2)分子鎖両末端がシラノール基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.20、ビニル基含有量0.90質量%)18.0部、(B)可塑度が1.20mmの分子鎖末端がビニル基で封鎖されたジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.02質量%)1.5部、(C)粘度25mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン(全組成物中のSiH/Vi比が1.5となる量として)1.4部、(E)トルエン66.1部、および(F)3−メチル−1−ブチン−3−オール1.0部を均一に混合して溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物4)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を3.0質量%にし、(D)塩化白金酸・1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金金属含有率0.6質量%)を白金金属量が120ppmとなる量で組成物に添加配合して硬化性組成物を得た。この組成物を上記の方法で、二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に0.15g/mとなる量で塗工し、さらに120℃×30秒の条件下で硬化させて得た硬化層へのセラミックバインダー樹脂の塗工性および硬化層からのセラミックバインダー樹脂の剥離力を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜8で得られた剥離フィルムは、硬化したポリオルガノシロキサン層が、セラミックバインダー樹脂に対する優れた塗工性を示すとともに、硬化したポリオルガノシロキサン層から低い剥離力でセラミックバインダー樹脂を剥離することができ、セラミックバインダー樹脂の剥離性にも優れるものであった。一方、比較例1〜5では、それらを用いて得られる硬化したポリオルガノシロキサン層は、セラミックバインダー樹脂の良好な塗工性および剥離性のいずれかが満足できる結果ではなかった。