(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469153
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】パネル及びパネル組立構造
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
E04H17/16 102
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-44623(P2017-44623)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-145758(P2018-145758A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年10月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売場所:サンワフロント株式会社(東京都北区赤羽1−41−5)、販売日:平成29年1月7日 販売場所:田中金属株式会社(東京都中野区大和町3−32−1)、販売日:平成29年1月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512108072
【氏名又は名称】日本メタル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘明
【審査官】
立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−227575(JP,A)
【文献】
特開2006−274737(JP,A)
【文献】
特開2006−52564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/16
E04H 17/14
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に設置された支持杆に交差状に取り付けられる長尺状のパネルであって、
表面と裏面とを有する長尺で平板状の主板部と、
前記主板部の短手方向における両端部から共に前記主板部の裏面側に突出するように延出形成されてなり、かつ前記主板部の表面と連続する面が凸となるような湾曲形状をなす一対の湾曲部と、
を具備し、前記一対の湾曲部間に、前記支持杆に設けられた嵌合部が嵌合するものであり、
さらに、前記湾曲部の端縁部から、前記湾曲部における前記主板部の裏面と連続する面側へ折り返されてなり、かつ、対向する前記湾曲部における表面と連続する面が凸となる湾曲形状の折り返し部を備えている
ことを特徴とするパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のパネルと、前記パネルが取り付けられた前記支持杆とを備えるパネル組立構造であって、
前記支持杆における前記嵌合部の外周縁には、前記パネルの前記折り返し部の端縁に対向する爪部が設けられている
ことを特徴とするパネル組立構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持杆に交差状に取り付けられることによって領域を区画するパネル及び該パネルを用いたパネル組立構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されているような、両側に曲折部(湾曲部)を連続して設けた断面C形状で細長状の複数枚のパネル素子(パネル)と、パネル素子の断面C形状に対応する複数の凸部(嵌合部)を所定間隔で有する少なくとも一対の配列材(支持杆)とを交差状に組み合わせ、且つ、配列材の各凸部に各パネル素子を嵌め込み、全体で所望面積のパネルを形成するパネル素子の組立構造があった。
【0003】
また、上記のような構成にあって、例えば特許文献2に開示されているような、湾曲部の端縁部に折り返し部を設けたゲートパネル(パネル)もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−330660号公報
【特許文献2】意匠登録第1468152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の構成にあっては、前記折り返し部が前記湾曲部の湾曲形状に沿って折り曲げられているために、湾曲部と折り返し部との境界部分においてクラック(ヒビ割れ)が発生しやすいという問題があった。また、パネル全体が、ねじれるような外力に対して弱いという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、クラックの発生を防止でき、かつ強度に優れたパネルを提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、前記パネルを用いたパネル組立構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定位置に設置された支持杆に交差状に取り付けられる長尺状のパネルであって、表面と裏面とを有する長尺で平板状の主板部と、前記主板部の短手方向における両端部から共に前記主板部の裏面側に突出するように延出形成されてなり、かつ前記主板部の表面と連続する面が凸となるような湾曲形状をなす一対の湾曲部と、を具備し、前記一対の湾曲部間に、前記支持杆に設けられた嵌合部が嵌合するものであり、さらに、前記湾曲部の端縁部から、前記湾曲部における前記主板部の裏面と連続する面側へ折り返されてなり、かつ、対向する前記湾曲部における表面と連続する面が凸となる湾曲形状の折り返し部を備えていることを特徴とするパネルである。
【0009】
かかる構成にあっては、前記折り返し部が設けられることによってパネルの剛性が強くなる。また、前記折り返し部を支持杆の嵌合部に引っ掛けて、意図しないパネルの脱落を防止できる効果も得られる。さらに、パネルの端部で手を切る等の心配がなく、安全性に優れるという効果も得られる。加えて、前記湾曲部と前記折り返し部との境界部で、屈曲の度合いが減少するために、当該境界部においてクラックの発生を抑制することができる。また、前記湾曲部及び前記折り返し部が連続する領域全体が湾曲形状となり、いわゆる卵殻形状で構成されるため、パネルの長手方向に沿った軸を基準としたねじれに対して強度が飛躍的に向上する。
【0010】
また本発明は、前記パネルと、前記パネルが取り付けられた前記支持杆とを備えるパネル組立構造であって、前記支持杆における前記嵌合部の外周縁には、前記パネルの前記折り返し部の端縁に対向する爪部が設けられていることを特徴とするパネル組立構造である。
【0011】
かかる構成にあっては、前記折り返し部が前記爪部に引っ掛かることで、意図しないパネルの脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパネルは、クラックの発生を防止でき、かつ強度に優れる効果がある。
【0013】
また、本発明のパネル組立構造は、パネルの脱落を防止できる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例にかかるパネル組立構造の説明図である。
【
図2】実施例にかかるパネルを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【
図3】実施例にかかるパネルの折り返し部を示す説明図である。
【
図4】実施例にかかるパネル組立構造の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のパネル及びパネル組立構造を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0016】
図1に示すように、パネル組立構造1は、例えば地面等の床面に埋設されて起立する支持杆10と、支持杆10に交差状に取り付けられる長尺状のパネル20と、を備えている。
【0017】
支持杆10は、
図1に示すように、横断面が略コの字形状の本体部11を有し、本体部11の端部には、嵌合部12が鉛直方向に複数列設されている。
【0018】
また、パネル20は、
図2に示すように、表面22と裏面23とを有する長尺で平板状の主板部21を有している。また、主板部21の短手方向における両端部からは、主板部21の表面22と連続する面である表面32が凸となるような湾曲形状をなす一対の湾曲部31,31が、主板部21の裏面23側に突出するように延出形成されている。
【0019】
さらに、一対の湾曲部31,31の各々の端縁部35からは、折り返し部41が設けられている。さらに詳述すると、折り返し部41は、湾曲部31における主板部21の裏面23と連続する裏面33側へ折り返されていると共に、対向する湾曲部31の表面32と連続する面である表面42が凸となる湾曲形状をなしている。
【0020】
図3に従って、折り返し部41の形状をさらに詳述すると、湾曲部31と折り返し部41との間には、湾曲部31と折り返し部41とによって囲まれたいわゆる卵殻形状を有する空隙Sが形成されており、外観全体として湾曲部31と折り返し部41とによって卵殻形状となっている。
【0021】
したがって、湾曲部31と折り返し部41との境界部である端縁部35において、屈曲の度合いが緩和され、これによってクラックが発生してしまうことを防止できる。
【0022】
また、湾曲部31と折り返し部41とによって形成される卵殻形状によって、パネル20の長手方向に沿った軸を基準としたねじれに対する強度が飛躍的に向上する。
【0023】
また本実施例におけるパネル組立構造1にあっては、
図1,4に示すように、パネル20の一対の湾曲部31,31間を、支持杆10に設けられた嵌合部12に押し当てることで、支持杆10にパネル20が取り付けられるところ、支持杆10に設けられた嵌合部12の外周縁には、パネル20の折り返し部41の端縁部45に対向する1対の爪部13,13が設けられている。
【0024】
そして、相互を嵌合させる際は、パネル20の湾曲部31と折り返し部41との境界部を、支持杆10の嵌合部12における湾曲面14に沿わせながらパネル20を嵌合部12に圧着し、一対の湾曲部31間を広げながら湾曲部31間に嵌合部12を嵌め込む。そして、この嵌め込まれた状態では、爪部13が折り返し部41の端縁45に引っ掛かることにより、パネル20の抜脱が防止される。なお、パネル20において、湾曲部31と折り返し部41との境界部は、当該湾曲部31における主板部21側の端部よりも外側寄りに配置されており、嵌め込み作業が円滑に実行できる構成となっている。
【0025】
なお、支持杆10にパネル20を取り付けた状態で、パネル20の折り返し部41と支持杆10の爪部13とは必ずしも常時接触している必要はない。例えば、折り返し部41と爪部13との間に、パネル20の微変形を許容するいわゆる遊び(間隙)が設けられていても勿論良い。
【0026】
一方、折り返し部41と爪部13とを互いに常時接触させた構成することにより、パネル20のがたつきを抑制したり、振動時の異音を低減したりすることができる。
【0027】
本発明にあっては、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0028】
また、パネル20及び支持杆10は、ステンレススチール(SUS)等の金属製であってもよいし、合成樹脂製であってもよい。
【0029】
また、パネル20の主板部21の表面22や湾曲部31の表面32に木目等の意匠を施しても構わない。また、パネル組立構造1を外階段等に構築する場合に、パネル20の主板部21の裏面23等にも意匠を施してもよい。
【0030】
また、パネル20の表面22には、例えば防錆塗膜等が形成されていても構わない。
【0031】
また、空隙Sを形成する湾曲部31及び折り返し部41の形状寸法も、適宜自由に選択可能である。例えば折り返し部41の湾曲度合いは図示したものに限らず、より平板形状に近い構造であってもよいし、空隙Sが
図2に示すような側面視で円に近似するような形状としてもよい。
【0032】
また、パネル20の短手方向に沿った折り返し部41の長さL1(
図2参照)の、湾曲部31における前記短手方向に沿った長さL2に対する割合は、40%〜50%程度の割合で折り返し部41が形成されていることが望ましく、最も望ましい割合は43%前後である。
【符号の説明】
【0033】
1 パネル組立構造
10 支持杆
11 本体部
12 嵌合部
13 爪部
20 パネル
21 主板部
22 表面
23 裏面
31 湾曲部
32 表面
33 裏面
35 端縁部
41 折り返し部
42 表面
45 端縁部
S 空隙