(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体内に形成された薬剤収納部に対して上から下に空気を通過させて薬剤含有空気を得て、前記薬剤含有空気を前記薬剤収納部の下の排気口から、当該害虫駆除器と設置床面との間に形成される底部空間を通して外部に送り出す害虫駆除器であって、
前記筐体内における前記排気口より下に排気路空間が形成され、
前記排気路空間の下に、前記排気路空間を前記底部空間に開放する底開口が形成され、
前記底開口に、水平方向に延びる回動軸を中心に回動して前記底開口を開閉する開閉フラップが備えられ、
前記排気口の上に、前記排気口の大きさよりも小さい貫通穴を有する補助板部材が着脱可能に備えられた
害虫駆除器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0012】
図1に、害虫駆除器11の正面側から見た斜視図、
図2に、それを背面側から見た斜視図を示す。
【0013】
この害虫駆除器11は、例えば厨房などの害虫駆除空間の床面(設置床面X)に置いて使用され、
図2に矢印で示したように、背面の上端部から害虫駆除空間の空気を吸引して、その空気を内部において薬剤含有空気に変換して、底から送り出す構造である。薬剤含有空気への変換には、蒸散性殺虫剤溶液を多孔性のマットに含浸させた薬剤含浸体12(
図3、
図4参照)を使用する。薬剤含浸体12は長方形板状である。
【0014】
図3は害虫駆除器11の正面図中央縦断面図、
図4はその側面図中央縦断面図(
図1のA−A断面図)であり、内部の概略の構造を示している。害虫駆除器11は、前述したように、筐体13内に形成された薬剤収納部14に対して上から下に空気を通過させて薬剤含有空気を得て、この薬剤含有空気を薬剤収納部14の下の排気口15から、害虫駆除器11と設置床面Xとの間に形成される底部空間Yを通して外部に送り出す。
【0015】
筐体13は複数の部材を組み合わせて構成され、これらの部材は例えば金属などの適宜の材料で構成できるが、この例ではすべての部材は合成樹脂製である。
【0016】
筐体13は、前面が凸の円弧面であり、背面と左右両側面が平面である柱状である。つまり、筐体13の平面視形状は、長円形を長軸方向の半分の位置で切断した略半長円形状である。この筐体13は、大きく分けて天板部材31と、本体部材32と、台座部材33を有する。
【0017】
天板部材31は、平板状の天板31aと、天板31aの外周縁から下に延びる周壁31bを有する。周壁31bは、本体部材32の上端に外嵌合する。周壁31bの背面には、外気を導入するための吸気口16が形成されている。吸気口16は長穴で形成され、複数備えられている。
【0018】
本体部材32は筒状に形成されており、中央から背面側の部分に通気部17が形成されている。通気部17は本体部材32の内に仕切り部材34を備えることで構成され、仕切り部材34の外側には断熱等のための適宜の空間Sが形成される。この空間Sには制御基板(図示せず)などの適宜の部材を収容できる。
【0019】
通気部17の上端部には、空気を下に送るファン18が備えられている。
【0020】
ファン18を備えた部分より下は、前述の薬剤収納部14である。薬剤収納部14には、薬剤収納部14を構成するとともに薬剤含浸体12を収納する収納ラック35が備えられる。
図5が収納ラック35の斜視図であり、上面と前面の上側部分を欠いた略中空直方体形状であり、底板35aには
図3、
図4に断面で示したように複数の通気穴36が形成されている。通気穴36は平面視長方形状である。
【0021】
収納ラック35の左右両側の側板35bにおける上端縁には、前面板35cに向かって下がる傾斜辺37が形成されている。この傾斜辺37は、収納ラック35に対する薬剤含浸体12の出し入れを容易にするためであるとともに、
図6に示したように、収納ラック35を手前に引いて薬剤収納部14を開けられるようにするためのものである。
【0022】
収納ラック35の前面板35cの切欠き38は、左右両側の縁を残して所定の深さに設定される。この切欠き38は、
図3に示したように、筐体13内に薬剤収納部14に向けてヒータ19を備えるためである。ヒータ19は、通気部17内の前面側、つまり仕切り部材34の内周面のうち前面に対応する側に備えられる。切欠き38の大きさと位置は、前面板35cにおけるヒータ19と重なる位置に形成される。
【0023】
なお、ヒータ19は長方形薄板状であり、薬剤収納部14の温度を高めるためのものである。薬剤収納部14の温度を適正な温度に高めることによって、薬剤含有空気の生成を促進させたり、害虫駆除の有効性を高めたりすることができる。
【0024】
収納ラック35の背面板35dの内面と前面板35cの内面には、長方形板状の薬剤含浸体12を害虫駆除器11の左右方向に適宜間隔をあけて複数枚並べて収納するための複数のリブ39が離間配置されている。
【0025】
収納ラック35の背面側には、害虫駆除器11の周面を構成する板状のカバー部材41が固定されている。カバー部材41は、筐体13の周面、具体的には本体部材32の背面側に形成された側部開口32aに嵌る形状である。カバー部材41の下端部には、
図3に示したように筐体13の本体部材32に対する傾動動作で開閉を可能にする回動支持部42が下に突設されている。回動支持部42は、左右方向の両側に一対形成されており、
図7に示したように本体部材32の側部開口32aの下端の背面側端縁に形成された左右一対の支持穴43に着脱可能で、且つ回動可能に嵌るものである。カバー部材41の上端部には、薬剤収納部14を閉じた状態に保持するための施錠装置44が備えられている。
【0026】
本体部材32における収納ラック35の底板35aが乗る部分、つまり薬剤収納部14の下である内底面14aは板状に形成され、
図7、
図3、
図4に示したように、前述の排気口15が形成されている。この排気口15は、収納ラック35の底板35aと同様に平面視長方形状の複数の貫通穴で構成されている。
【0027】
本体部材32内の通気部17のうち排気口15より下には、
図3、
図4に示したように排気路空間20が形成される。この排気路空間20は四方が囲まれた閉鎖可能な空間であり、適宜の高さに設定されるとよい。
【0028】
排気路空間20より上、つまり内底面14aに形成された排気口15の上には、
図7に分離して示したように、補助板部材21が着脱可能に備えられる。補助板部材21は、平面視形状が内底面14aに嵌合対応する形状であり、平板部21aの外周縁に周壁部21bが垂設されている。平板部21aは複数の貫通穴21cを有する。この貫通穴21cは前述した排気口15や通気穴36の大きさよりも小さく、この例では貫通穴21cの形状は平面視円形である。
【0029】
排気路空間20の下は前述の台座部材33で塞がれる。台座部材33は、板状の底板33aと、底板33aの外周縁から下に延びる周壁33bを有する。そして底板33a、つまり排気路空間20の下には、排気路空間20を底部空間Yに開放する底開口22が形成されている。底開口22は害虫駆除器11と外部(装置外)との境界となる部分であり、底板33aの略中央に形成され、平面視略四角形状である。底開口22は複数個備えてもよいが、この例では1個である。
【0030】
周壁33bは、前面と背面と左右の両側面に略横長台形状の切欠き部23を有している。換言すれば、台座部材33は周壁33bにおける四隅に相当する部分に、設置床面Xに接地する脚部33cが形成されており、これら脚部33cで底部空間Yを形成するとともに脚部33cの間の切欠き部23を通して、底部空間Yとそれより外の部分を連通させている。
【0031】
底開口22には、
図8、
図9に示したように水平方向に延びる回動軸を中心に回動して底開口22を開閉する開閉フラップ24が備えている。開閉フラップ24は複数個が平行に備えられ、同時に回動することによって底開口22を開閉する。
【0032】
図8は、底開口22を開いた状態を示す平面図、
図9は
図8のB−B断面図である。これらの図に示すように開閉フラップ24は細幅板状に形成され、平面方向を立てた姿勢と水平に寝かせた姿勢とに回動するものであり、上面における長手方向の両端部に起立片25,26が形成されている。起立片25,26の外側面、つまり開閉フラップ24の長手方向外側の面には回動軸としての軸部27が形成されている。開閉フラップ24の短手方向の一方、つまり底開口22を開いた時に上に位置する側の端縁には、下面側に切欠き部24aが形成され、短手方向の他方、つまり底開口22を開いた時に下に位置する側の端縁には、上面側に切欠き部24bが形成されている。これらの切欠き部24a,24bは、隣接する開閉フラップ24同士が回動して水平になった時に互いに噛みあうように近接させるためのものである。
【0033】
図10は開閉フラップ24を備えるフラップユニット28の斜視図であり、このフラップユニット28は、台座部材33の底板33a上に装着される。
【0034】
フラップユニット28は、平面視方形枠状のフレーム28aに、複数の開閉フラップ24の軸部27を回動可能に保持して構成される。開閉フラップ24の起立片25,26のうち、害虫駆除器11の前面側部分に対応する側の起立片26は、他方の起立片25とは異なり、斜め上方に突出するアーム部26aを有している。アーム部26aには連動用軸部26bが形成されている。複数の開閉フラップ24の連動用軸部26bは、連結部材28bを介して回動可能に連結されている。
【0035】
開閉フラップ24の回動は、ソレノイドやモータなどの適宜のロータリーアクチュエータ28cを駆動源して行われる。ロータリーアクチュエータ28cの回転軸(図示せず)は、複数の開閉フラップ24のうちの一つの開閉フラップ24の一方の軸部27に連結されている。図示例では、3個の開閉フラップ24を備えているので、中間に位置する開閉フラップ24の軸部27に、ロータリーアクチュエータ28cの回転軸(図示せず)が連結される。このため、ロータリーアクチュエータ28cは、筐体13内における前面側の最も外方に突出している部分に位置することになる。
【0036】
ロータリーアクチュエータ28cが一つの開閉フラップ24の軸部27を回転すると、その回転は連結部材28bを介して他の開閉フラップ24に伝達され、すべての開閉フラップ24は同時に起立姿勢と水平姿勢の間を90度正逆回転する。ロータリーアクチュエータ28cは、タイマを備えた制御装置(図示せず)を介して駆動制御される。
【0037】
以上のほか、害虫駆除器11は、図示と詳しい説明を省略するが、ヒータ19の駆動のための各種装置や、薬剤収納部14の温度を測定する温度センサ、操作スイッチなどを備えている。
【0038】
図11に示したように、合成樹脂製の薬剤収納部14におけるヒータ19に対向する部位、つまり収納ラック35の背面板35dの内面に、リブ39を一部切り欠いて反射板29を備えてもよい。反射板29はヒータ19の熱を反射するので、薬剤収納部14の温度を高め作用を果たす。
【0039】
以上のように構成された害虫駆除器11は、次のように使用される。
【0040】
背面側のカバー部材41を傾けるか、取り外すかして、収納ラック35に薬剤含浸体12を収納して薬剤収納部14を閉じ、施錠装置44を利用してロックをかける。
【0041】
夜間の所定時間を稼働時間帯として、それ以外の時間を非稼働時間帯として制御装置で設定すると、その設定に従って、害虫駆除器11は駆動する。非稼働時間帯は、ファン18やヒータ19がオフ状態であり、ロータリーアクチュエータ28cは開閉フラップ24を水平にして底開口22を塞ぐ状態を維持している。これが、稼働時間になると、ロータリーアクチュエータ28cが駆動して開閉フラップ24を上下方向に立てる姿勢にし、底開口22を開く。これにより、底開口22を通して薬剤収納部14と外部が連通する。
【0042】
また、ファン18やヒータ19も駆動する。ファン18の駆動により上端部背面の吸気口16から害虫駆除空間の空気が通気部17に取り込まれ、この空気は薬剤収納部14、つまり収納ラック35に収納された薬剤含浸体12を通過して下方に移動し、薬剤を含んだ薬剤含有空気となって、排気口15から排気路空間20に移動する。排気路空間20に入った薬剤含有空気は底開口22を通過して、底部空間Yから、台座部材33の切欠き部23を通って四方に拡散する。
【0043】
運転中、温度センサは、あらかじめ設定された温度に制御して、より有効な殺虫環境をつくるとともに、安全を確保する。
【0044】
稼働時間が経過すると、タイマによりヒータ19やファン18が停止するとともに、ロータリーアクチュエータ28cが駆動して開閉フラップ24を水平姿勢に回転させ、底開口22を閉じる。これにより、底開口22を通じての薬剤収納部14と外部との連通を遮断する。
【0045】
排気路空間20は排気口15と開閉フラップ24との間に間隔を形成するので、たとえ薬剤が排気口15にたれて付着した場合でも、開閉フラップ24の開閉動作を確実に行わせる。また、開閉フラップ24は、排気口15に接することなく開閉するとともに、水平の軸部27、しかも開閉フラップ24の長手方向の外側に突出して排気口15を有する領域よりも外側に位置する軸部27を中心に回動するものであるので、薬剤がたれたとしても回動動作に支障をきたしにくい。このため、運転に伴って排気口15に薬剤がたれたとしても開閉フラップ24の開閉動作を確保でき、自動運転で底開口22が閉じなかったり開かなかったりすることを防止して、安全で確実な稼働を期待できる。
【0046】
排気口15の上には、排気口15の大きさよりも小さい貫通穴21cを有する補助板部材21を着脱可能に備えているので、この点からも排気口15に対する薬剤のたれを抑制できる。
【0047】
また、底開口22は1個であるとともに、その底開口22に複数の開閉フラップ24を平行に備えているので、排気路空間20の高さを比較的小さくすることができ、害虫駆除器11のコンパクト化に資する。
【0048】
害虫駆除器11のコンパクト化については、フラップユニット28のロータリーアクチュエータ28cを前面側に位置させるとともに、最も外方に突出している左右方向の中間部に位置させているので、この点からもコンパクト化をはかることができる。
【0049】
筐体13の周面に側部開口32aを形成して、収納ラック35を備えたカバー部材41を着脱可能に取り付けたので、薬剤含浸体12の着脱などの操作性が良好である。しかも、カバー部材41の下端部に回動支持部42を形成したので、引き出すように収納ラック35を傾けて薬剤収納部14を開いて、所望の作業ができるので、操作性が良い。