特許第6469188号(P6469188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469188アゼチジニウム含有コポリマー及びこれらの使用
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  • 特許6469188-アゼチジニウム含有コポリマー及びこれらの使用 図000028
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469188
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】アゼチジニウム含有コポリマー及びこれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/58 20060101AFI20190204BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20190204BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20190204BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20190204BHJP
   C07D 205/04 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   C08F220/58
   C08F290/06
   C08F220/28
   G02C7/04
   !C07D205/04
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2017-154402(P2017-154402)
(22)【出願日】2017年8月9日
(62)【分割の表示】特願2015-517331(P2015-517331)の分割
【原出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2018-9179(P2018-9179A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】61/659,592
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ホーランド,トロイ・バーノン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ユンシン
(72)【発明者】
【氏名】プルーイット,ジョン・ダラス
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チュン−ユアン
(72)【発明者】
【氏名】シャンカーナラヤナン,マニヴァッカム・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カプーア,ヤシュ
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−505189(JP,A)
【文献】 米国特許第04341887(US,A)
【文献】 米国特許第05510004(US,A)
【文献】 特表2013−513135(JP,A)
【文献】 特表2013−533518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
C08F 20/00 − 20/70
C08J 7/04 − 7/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N−2−アクリルアミドグリコール酸のモノマー単:及び
(b
【化16】

式中、T及びTは、相互に独立に、C〜C14アルキル基である]で示されるアゼチジニウム化合物と、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸、エポキシ含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸C−Cイソシアナトアルキル、アジリジン含有ビニルモノマー及びアズラクトン含有ビニルモノマーよりなる群から選択される第一のエチレン性官能基化ビニルモノマーとの、1個のヒドロキシル基と1個の他の官能基(酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアナート基、アジリジン基又はアズラクトン基)との間でのカップリング反応による反応生成物である、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーのアゼチジニウム含有モノマー単位
を含む、アゼチジニウム含有コポリマー。
【請求項2】
(a)メタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択されるカルボキシル含有ビニルモノマーのカルボキシル含有モノマー単位;及び
(b)
【化16】

[式中、T及びTは、相互に独立に、C〜C14アルキル基である]で示されるアゼチジニウム化合物と、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸、エポキシ含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸C−Cイソシアナトアルキル、アジリジン含有ビニルモノマー及びアズラクトン含有ビニルモノマーよりなる群から選択される第一のエチレン性官能基化ビニルモノマーとの、1個のヒドロキシル基と1個の他の官能基(酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアナート基、アジリジン基又はアズラクトン基)との間でのカップリング反応による反応生成物である、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーのアゼチジニウム含有モノマー単位
を含む、アゼチジニウム含有コポリマー。
【請求項3】
(a)カルボキシル含有ビニルモノマー、アミノ含有ビニルモノマー及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のビニルモノマーである、反応性モノマー単位{ここで、カルボキシル含有ビニルモノマー単位は、アクリル酸、C−Cアルキルアクリル酸、N−2−アクリルアミドグリコール酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、そしてアミノ含有ビニルモノマー単位は、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリルC−C12アルカンアミン、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物とアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドとのカップリング反応生成物、C−C12アルカンアミン又はC−C12アミノアルカノールとエポキシ含有ビニルモノマーとのカップリング反応生成物、及びこれらの組合せよりなる群から選択される};
(b)
【化16】

[式中、T及びTは、相互に独立に、C〜C14アルキル基である]で示されるアゼチジニウム化合物と、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸、エポキシ含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸C−Cイソシアナトアルキル、アジリジン含有ビニルモノマー及びアズラクトン含有ビニルモノマーよりなる群から選択される第一のエチレン性官能基化ビニルモノマーとの、1個のヒドロキシル基と1個の他の官能基(酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアナート基、アジリジン基又はアズラクトン基)との間でのカップリング反応による反応生成物である、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーのアゼチジニウム含有モノマー単位;並びに
(c)モル基準で少なくとも50%の、少なくとも1種の親水性ビニルモノマー{(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸グリセロール、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、1500ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エリトリトール、(メタ)アクリル酸アラビトール、(メタ)アクリル酸マンニトール、(メタ)アクリル酸ズルシトール、(メタ)アクリル酸フシトール、(メタ)アクリル酸イジトール、(メタ)アクリル酸イノシトール、(メタ)アクリル酸キシリトール、(メタ)アクリル酸ソルビトール、(メタ)アクリル酸グルコース、(メタ)アクリル酸フルクトース、(メタ)アクリル酸ガラクトース、及びこれらの組合せよりなる群から選択される}の非反応性親水性モノマー単位
を含む、アゼチジニウム含有コポリマー。
【請求項4】
アゼチジニウム含有コポリマーが、モル基準で50%以下のアゼチジニウム含有モノマー単位及び反応性モノマー単位を含む、請求項に記載のアゼチジニウム含有コポリマー。
【請求項5】
アゼチジニウム含有コポリマーの重量平均分子量Mwが少なくとも10,000ダルトンである、請求項1〜のいずれか1項に記載のアゼチジニウム含有コポリマー。
【請求項6】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に非シリコーンヒドロゲルコーティングを形成するためのアンカリングポリマーであって、請求項1〜のいずれか1項に記載のアゼチジニウム含有コポリマーからなる、アンカリングポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、費用効果が高く時間効率が良いやり方で、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にヒドロゲルコーティングを適用するのに適した、アゼチジニウム含有ビニルモノマー及びコポリマーに関する。更に、本発明は、眼用レンズ製品を提供する。
【0002】
背景
ソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、その高い酸素透過度と快適さからますます普及している。しかしシリコーンヒドロゲル材料は、疎水性(非湿潤性)であり、かつ眼の環境から脂質又はタンパク質を吸着しやすく、そして目に付着するかもしれない表面、又はその表面の少なくとも一部領域を典型的には有する。よって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは一般に、表面改質を必要とする。
【0003】
相対的に疎水性のコンタクトレンズ材料の親水性を改質するための既知のアプローチは、プラズマ処理の利用によるものであり、例えば、Focus NIGHT & DAY(商標)及びO2OPTIX(商標)(CIBA VISION)、並びにPUREVISION(商標)(Bausch & Lomb)のような市販のレンズは、その生産工程においてこのアプローチを利用している。例えば、Focus NIGHT & DAY(商標)に見い出されるような、プラズマコーティングの利点は、その耐久性、比較的高い親水性/湿潤性、並びに脂質及びタンパク質の沈着及び吸着に対する低い感受性である。しかしシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのプラズマ処理は、費用効果が高くない。なぜなら前もって形成されたコンタクトレンズは、典型的にはプラズマ処理の前に乾燥しなければならないためであり、そしてプラズマ処理装置に関連する比較的高い設備投資のためである。
【0004】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面親水性を改質するために種々の他のアプローチが提案及び/又は利用されている。このような他のアプローチの例は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造用のレンズ配合物への湿潤剤(親水性ポリマー)の組み込み(例えば、米国特許第6,367,929号、6,822,016号、7,052,131号、及び7,249,848号を参照のこと);交互積層(layer-by-layer)(LbL)のポリイオン性材料堆積法(例えば、米国特許第6,451,871号、6,717,929号、6,793,973号、6,884,457号、6,896,926号、6,926,965号、6,940,580号;及び7,297,725号、並びに米国特許出願公開番号2007/0229758A1;2008/0174035A1及び2008/0152800A1を参照のこと);コンタクトレンズ上のLbLコーティングの架橋(共同所有の同時係属出願である米国特許出願公開番号2008/0226922 A1及び2009/0186229 A1に提案されている);及び種々の機序によるコンタクトレンズへの親水性ポリマーの付着(例えば、米国特許第6,099,122号、6,436,481号、6,440,571号、6,447,920号、6,465,056号、6,521,352号、6,586,038号、6,623,747号、6,730,366号、6,734,321号、6,835,410号、6,878,399号、6,923,978号、6,440,571号、及び6,500,481号、米国特許出願公開番号2009/0145086A1、2009/0145091A1、2008/0142038A1、及び2007/0122540A1を参照のこと)を包含する。これらの手法は、シリコーンヒドロゲル材料を湿潤性にするのに使用できるが、これらの手法には幾つかの欠点がある。例えば、湿潤剤は、レンズ配合物中の他のシリコーン成分とのその不適合性のために、得られるレンズに混濁を与えるかもしれず、そして長期装着目的のために、耐久性のある親水性表面を提供できないかもしれない。LbLコーティングは、プラズマコーティングほど耐久性が高くなく、そして比較的高い表面電荷密度を有するかもしれない;これは、コンタクトレンズ洗浄液及び消毒液と干渉するかもしれない。架橋LbLコーティングは、親水性及び/又は湿潤性が元のLbLコーティング(架橋前)よりも劣る可能性があり、そしてなお比較的高い表面電荷密度を有する。更にこれらは、大量生産環境での実施には費用効果及び/又は時間効率が高くないかもしれない。なぜなら、これらが典型的には、親水性コーティングを得るために比較的長時間を要するか、及び/又は骨の折れる多段階を必要とするためである。
【0005】
最近、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに非シリコーンヒドロゲルコーティングを適用するための、新しい費用効果の高いアプローチが米国特許出願公開番号2012/0026457 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載された。この公報には、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAE)から誘導される部分架橋親水性ポリマー材料及び湿潤剤が、コンタクトレンズ上の非シリコーンヒドロゲルコーティングの形成に使用されることが報告されている。この新しいアプローチは、耐久性のある親水性コーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供できるが、その適用性及び利点は、この部分架橋親水性ポリマー材料の親水性及び/又は反応性官能基含量のレベルにおける汎用性及び制御性の欠如により限定されることがある。
【0006】
したがって、非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに適用するための、所望のレベルの親水性及び/又は官能基含量を有する反応性コポリマーに対するニーズはなお存在する。
【0007】
発明の要約
本発明は、第1の態様において、アゼチジニウム含有ビニルモノマーを提供する。
【0008】
本発明は、第2の態様において、少なくとも1種の本発明のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位、並びにカルボキシル含有ビニルモノマー、アミノ含有ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーから誘導されるモノマー単位を含む、アゼチジニウム含有コポリマーを提供する。
【0009】
本発明は、第3の態様において、それぞれ架橋親水性コーティングを施したコーティングシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法であって、(a)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調達する工程;(b)アンカリングポリマーの下塗りコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに適用する工程(ここで、アンカリングポリマーは、カルボキシル含有ビニルモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー及び/又は本発明のアゼチジニウム含有コポリマーである);及び(c)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム、カルボキシル、アミノ、及び/又はチオール基を含む水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で水溶液中で約40℃〜約140℃の温度まで及び該温度で、1個のアゼチジニウム基と1個のアミノ又はカルボキシル基の間の分子間及び分子内架橋反応を誘導するのに充分な時間加熱し、それによって耐久性のある非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に形成する工程を含む方法を提供する(ただし、アンカリングポリマー及び水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の少なくとも一方は、アゼチジニウム基を含む)。
【0010】
本発明は、第4の態様において、それぞれ架橋親水性コーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法であって、(a)本発明のアゼチジニウム含有コポリマーを含むレンズ形成組成物からシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調達する工程;(b)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム、カルボキシル、アミノ、及び/又はチオール基を含む水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で水溶液中で約40℃〜約140℃の温度まで及び該温度で、1個のアゼチジニウム基と1個のアミノ又はカルボキシル基の間の分子間及び分子内架橋反応を誘導するのに充分な時間加熱し、それによって耐久性のある非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に形成する工程を含む方法を提供する。
【0011】
第5の態様において、本発明は、非シリコーンヒドロゲルコーティングを備えたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、この非シリコーンヒドロゲルコーティングは、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位、アミノ又はカルボキシル基を有するビニルモノマーから誘導される反応性モノマー単位、及び親水性ビニルモノマーから誘導される親水性モノマー単位を含む、熱架橋しうる親水性ポリマー材料の分子間及び分子内架橋を熱的に誘導することにより得られ、このシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約40barrerの酸素透過度、約100度以下の水接触角を特徴とする表面湿潤性、及び指擦り試験に耐えることを特徴とする良好なコーティング耐久性を有する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【0012】
第6の態様において、本発明は、滅菌及び密封したレンズパッケージを含む眼用製品であって、このレンズパッケージは、オートクレーブ処理後レンズパッケージング溶液及びそこに浸漬された容易に使用可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み、この容易に使用可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、元のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近にアミノ基及び/又はカルボキシル基を有する元のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位をモル基準で0.001%〜約25%含む、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を含有するオートクレーブ処理前パッケージング溶液中でオートクレーブ処理に付すことにより得られる架橋親水性コーティングを含み、この親水性ポリマー材料は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に、それぞれシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近の1個のアミノ又はカルボキシル基と、親水性ポリマー材料の1個のアゼチジニウム基との間に形成される第2の共有結合を介して共有結合しており、このオートクレーブ処理後パッケージング溶液は、約6.0〜約8.5のpHを維持するのに充分な量の少なくとも1種の緩衝剤、及び親水性ポリマー材料の加水分解産物を含み、そして約200〜約450ミリオスモル(mOsm)の浸透圧及び約1センチポアズ〜約10センチポアズの粘度を有する、眼用製品を提供する。
【0013】
本発明のこれらの態様や他の態様は、追って好ましい実施態様の以下の説明から明らかになろう。この詳細な説明は、単に本発明を例証するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、そして本発明の範囲は、添付の請求の範囲及びその均等物により定義される。当業者には明白であろうとおり、本開示の新規概念の趣旨及び範囲を逸することなく、本発明の多くの変形及び修正を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、種々のコンタクトレンズによるポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)の取り込み及び放出を示す。
【0015】
発明の実施態様の詳細な説明
特に断りない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当該技術分野における通常の技術者が共通に理解する意味と同じ意味を有する。一般に、本明細書に使用される命名法及び実験手順は、当該技術分野において周知であり共通に利用されている。これらの手順には、当該技術分野及び種々の一般的な参考文献に提供されるような、従来法が使用されている。ある用語が単数形で提供される場合、本発明者らは、その用語の複数形も考えに入れる。本明細書に使用される命名法及び後述の実験手順は、当該技術分野において周知であり共通に利用されているものである。また、添付の請求の範囲を包含する本明細書において使用されるとき、文脈が明白に他を指示していない限り、「a」、「an」、及び「the」のような単数形への言及は複数形を包含し、そして特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を包含する。本明細書において使用される「約」は、「約」と言及される数が、記載された数±その記載された数の1〜10%を含むことを意味する。
【0016】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」とは、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズのことをいう。「シリコーンヒドロゲル」とは、完全に水和すると少なくとも10重量パーセントの水を吸収でき、そしてエチレン性不飽和基を有する、少なくとも1種のシリコーン含有ビニルモノマー又は少なくとも1種のシリコーン含有ビニルマクロマー又は少なくとも1種のシリコーン含有プレポリマーを含む、重合しうる組成物の共重合により得られる、架橋シリコーン含有ポリマー材料のことをいう。
【0017】
本出願において使用されるとき、「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」という用語は、水溶性でなく、そして完全に水和するとそのポリマーマトリックス内に少なくとも10重量%の水を含有できる、架橋ポリマー材料のことをいう。
【0018】
本出願において使用されるとき、「非シリコーンヒドロゲル」という用語は、理論的にケイ素を含まないヒドロゲルのことをいう。
【0019】
「ビニルモノマー」とは、本明細書において使用されるとき、唯一のエチレン性不飽和基を有しており、そして化学線又は熱により重合できる、化合物のことをいう。
【0020】
「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」という用語は、本明細書では広い意味で使用され、そして少なくとも1個の>C=C<基を含有する任意の基を包含することが意図される。典型的なエチレン性不飽和基は、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル、メタアクリロイル(下記式:
【化1】

で示される)、アリル、ビニル(下記式:
【化2】

で示される)、スチレニル、又は他のC=C含有基を包含する。
【0021】
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドのことをいう。
【0022】
「(メタ)アクリラート」という用語は、メタクリラート及び/又はアクリラートのことをいう。
【0023】
「親水性ビニルモノマー」とは、本明細書において使用されるとき、ホモポリマーとして典型的には、水溶性であるか、又は少なくとも10重量パーセントの水を吸収できるポリマーが得られる、ビニルモノマーのことをいう。
【0024】
「疎水性ビニルモノマー」とは、本明細書において使用されるとき、ホモポリマーとして典型的には、水不溶性であり、かつ10重量パーセント未満の水しか吸収できないポリマーが得られる、ビニルモノマーのことをいう。
【0025】
本出願において使用されるとき、「マクロマー」又は「プレポリマー」という用語は、2個以上のエチレン性不飽和基を含有する、中分子量及び高分子量の化合物又はポリマーのことをいう。中分子量及び高分子量とは、典型的には700ダルトンを超える平均分子量を意味する。
【0026】
本出願において使用されるとき、「架橋物質(crosslinker)」という用語は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物のことをいう。「架橋剤(crosslinking agent)」とは、約700ダルトン以下の分子量を有する架橋物質のことをいう。
【0027】
本出願において使用されるとき、「ポリマー」という用語は、1種以上のモノマー又はマクロマー又はプレポリマーを重合/架橋することにより形成される材料を意味する。
【0028】
本出願において使用されるとき、ポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を包含する)の「分子量」という用語は、特に断りない限り、又は試験条件が他に指定のない限り、重量平均分子量のことをいう。
【0029】
本出願において使用されるとき、「アミノ基」という用語は、特に断りない限り、式:−NHR’(式中、R’は、水素又はC−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐アルキル基である)の第1級又は第2級アミノ基のことをいう。
【0030】
「カルボキシル含有ビニルモノマー」という用語は、カルボキシル基(−COOH)を有するビニルモノマーのことをいう。
【0031】
「アミノ含有ビニルモノマー」という用語は、アミノ基を有するビニルモノマーのことをいう。
【0032】
「アゼチジニウム」という用語は、下記式:
【化3】

[式中、T、T及びTは、直接結合である]で示される正荷電の三価の基(radical)(又は基(group))のことをいう。
【0033】
「ホスホリルコリン」という用語は、下記式:
【化4】

[式中、nは、1〜5の整数であり、そしてR、R及びRは、相互に独立に、C−Cアルキル又はC−Cヒドロキシアルキルである]で示される両性イオン基のことをいう。
【0034】
「アズラクトン」という用語は、下記式:
【化5】

[式中、pは、0又は1であり;T及びTは、相互に独立に、1〜14個の炭素原子を有するアルキル基、3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基、5〜12個の環原子を有するアリール基、6〜26個の炭素並びに0〜3個の硫黄、窒素及び/又は酸素原子を有するアレーニル基であるか、あるいはT及びTは、これらが結合している炭素と一緒に、5〜8個の環原子を含有する炭素環を形成することができる]で示される一価の基のことをいう。
【0035】
本出願において使用されるとき、「非反応性親水性ビニルモノマー」という用語は、カルボキシル又はアミノ基を含まない親水性ビニルモノマーのことをいう。
【0036】
「ポリシロキサンセグメント」という用語は、下記式:
【化6】

[式中、R、R、R、R、R、R、R10、R11は、相互に独立に、C−C10アルキル、C−Cアルキル−又はC−C−アルコキシ置換フェニル、C−C10フルオロアルキル、C−C10フルオロエーテル、C−C18アリール基、−alk−(OCn1−OR(ここで、alkは、C−Cアルキレンの二価の基であり、Rは、H又はC−Cアルキルであり、そしてn1は、1〜10の整数である)であり、m1及びm2は、相互に独立に、0〜50の整数であり、かつ(m1+m2)は、1〜100である]を有する二価の基のことをいう。
【0037】
ポリマーに関して「水溶性」という用語は、そのポリマーが、室温(例えば、約22℃〜約28℃)で約0.05〜約30重量%の濃度を有するポリマーの水溶液を形成するのに充分な程度まで水に溶解できることを意味する。
【0038】
「水接触角」とは、平均水接触角(即ち、液滴(Sessile Drop)法により測定される接触角)のことをいい、そしてこれは、少なくとも3個の個々のコンタクトレンズでの接触角の測定値を平均することにより得られる。
【0039】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングに関して「無傷性(intactness)」という用語は、そのコンタクトレンズが、実施例1に記載されるスダンブラック染色試験においてスダンブラックにより染色できる程度を記述することを目的としている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングの良好な無傷性とは、事実上コンタクトレンズのスダンブラック染色が存在しないことを意味する。
【0040】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングに関して「耐久性」という用語は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上のコーティングが、指擦り試験に耐えられることを記述することを目的としている。
【0041】
本明細書において使用されるとき、コンタクトレンズ上のコーティングに関して「指擦り試験に耐える」又は「耐久性試験に耐える」ことは、実施例1に記載される手順によりレンズを指で擦った後、指で擦ったレンズの水接触角がなお約100°以下、好ましくは約90°以下、更に好ましくは約80°以下、最も好ましくは約70°以下であることを意味する。
【0042】
材料の固有の「酸素透過度」、Dkは、酸素が材料を通り抜ける速度である。本出願において使用されるとき、ヒドロゲル(シリコーン又は非シリコーン)又はコンタクトレンズに関して「酸素透過度(Dk)」という用語は、2012/0026457 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例1に記載される手順による、境界層効果に起因する酸素フラックスに対する表面抵抗について補正された測定された酸素透過度(Dk)を意味する。酸素透過度は、従来からbarrerの単位で表されるが、ここで「barrer」は、[(cm酸素)(mm)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−10として定義される。
【0043】
レンズ又は材料の「酸素伝達率」、Dk/tは、測定される面積に関してt[mmの単位]の平均厚さを持つ特定のレンズ又は材料を酸素が通り抜ける速度である。酸素伝達率は、従来からbarrer/mmの単位で表されるが、ここで「barrer/mm」は、[(cm酸素)/(cm)(秒)(mmHg)]×10−9として定義される。
【0044】
レンズを介する「イオン透過度」は、イオノフラックス拡散係数と相関する。このイオノフラックス拡散係数、D([mm/分]の単位)は、下記式:
D = −n’/(A × dc/dx)
[式中、n’=イオン輸送の速度[mol/分];A=曝露されたレンズの面積[mm];dc=濃度差[mol/L];dx=レンズの厚さ[mm]]のとおり、フィックの法則を適用することにより求める。
【0045】
「眼に適合性」とは、本明細書に使用されるとき、眼環境に有意な損傷を及ぼすことなく、かつ使用者に有意な不快感を与えることなく、長時間眼環境と密接に接触させることができる材料又は材料の表面のことをいう。
【0046】
コンタクトレンズを滅菌及び保存するためのパッケージング溶液に関して「眼に安全」という用語は、その溶液に保存されるコンタクトレンズが、オートクレーブ処理後の洗浄なしに眼に直接装着するのに安全であること、及びその溶液が、コンタクトレンズを介しての眼との毎日の接触のために安全かつ充分に快適であることを意味する。オートクレーブ処理後の眼に安全なパッケージング溶液は、眼に適合性である浸透圧及びpHを有しており、そして国際ISO標準及び米国FDAの規制による眼刺激性又は眼細胞毒性の材料を実質的に含まない。
【0047】
「有機系溶液」とは、有機系溶媒及びこの有機系溶媒に溶解した1種以上の溶質からなる均一混合物である溶液のことをいう。有機系コーティング溶液とは、この溶液中の溶質として少なくとも1種のポリマーコーティング材料を含有する有機系溶液のことをいう。
【0048】
「有機系溶媒」は、1種以上の有機溶媒、及び場合により溶媒系の重量に対して約40%以下、好ましくは約30%以下、更に好ましくは約20%以下、更になお好ましくは約10%以下、特に約5%(重量%)以下の水からなる溶媒系を記述することを目的とする。
【0049】
本発明は一般に、アゼチジニウム含有コポリマー、及びシリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズ上の非シリコーンヒドロゲルコーティングを形成する際のこれらの使用に関する。本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、所望の程度の親水性/疎水性及び/又はアゼチジニウム含量を有するように合わせることができる。このようなアゼチジニウム含有コポリマーは、スキームI:
【化7】

[式中、T、T及びTは、相互に独立に、直接結合であり;Xは、−S−、−OC(=O)−、−O−、又は−NR’−(ここで、R’は、水素、C−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキル基である)であり;Tは、ポリマー鎖又はC−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキル基である]に図解される様にアゼチジニウム基を伴う熱誘導反応機序により、ヒドロゲルコーティングを形成するためのアンカリングポリマー及び/又は反応性親水性ポリマーとして使用することができる。このような反応は、便利には直接にレンズパッケージ中で、コンタクトレンズ業界ではよく利用される滅菌プロセスである、オートクレーブ処理(即ち、パッケージング溶液中にレンズを含むレンズパッケージを約118℃〜約125℃でおよそ20〜40分間加圧下で加熱する)中に実施することができる。
【0050】
本発明は、1つの態様において、式(1):
【化8】

[式中、R”は、水素又はメチルであり;T及びTは、相互に独立に、C〜C14アルキル基であり;Y、Y、及びYは、相互に独立に、直接結合、−O−、−NR’−、−C(O)−NR’−、−NR’−C(O)−、−O−C(O)−NH−、−NH−C(O)−O−、−NR’−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NR’−、−C(O)−O−、−O−C(O)−、−NH−C(O)−NH−Z−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−Z−NH−C(O)−O−、−O−C(O)−NH−Z−NH−C(O)−NH−、及び−NH−C(O)−NH−Z−NH−C(O)−O−よりなる群から選択される結合であり;R’は、水素、C−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキル基であり;Zは、場合によりその中に1個以上の−O−、−NR’−及び−C(O)−の結合を含有する、直鎖又は分岐のC−C12アルキレンの二価の基又はC−C45脂環式又は脂肪族−脂環式の二価の基であって、R’は、上記と同義であり;Z、Z、及びZは、相互に独立に、直接結合、場合によりその中に1個以上の−O−、−NR’−、及び−C(O)−の結合を含有するC−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキレンの二価の基、C−CアルキレンオキシC−Cアルキレンの二価の基、−(CH(R”)CHO)r1−CH(R”)CH−の二価の基(ここで、R”は、上記と同義であり、そしてr1は、1〜20の整数である)、非置換フェニレンの二価の基、C−Cアルキル若しくはC−Cアルコキシ置換フェニレンの二価の基又はC−C12アラルキレンの二価の基、場合によりその中に1個以上の−O−、−NR’−、及び−C(O)−の結合を含有するC−C45脂環式又は脂肪族−脂環式の二価の基、C−C24芳香族又は芳香脂肪族(araliphatic)の二価の基、あるいはこれらの組合せである]で示される1つの分類のアゼチジニウム含有ビニルモノマーを提供する。
【0051】
本発明のアゼチジニウム含有ビニルモノマーは、2工程法により調製することができる。第1工程において、ジ−アルキルアミン(HNT)は、下記式:
【化9】

で示されるエピクロロヒドリンと反応させることにより、下記式:
【化10】

[式中、T及びTは、相互に独立に、C〜C14アルキル基である]で示されるアゼチジニウム化合物を形成することができる。第2工程において、生じるアゼチジニウム化合物は、カップリング剤の非存在下で、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物(塩化物、臭化物、又はヨウ化物)、(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸、エポキシ含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸C−Cイソシアナトアルキル、アジリジン含有ビニルモノマー、及びアズラクトン含有ビニルモノマーよりなる群から選択されるエチレン性官能基化ビニルモノマーと、1個のヒドロキシル基と1個の他の官能基(酸ハロゲン化物基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアナート基、アジリジン基、又はアズラクトン基)との間のカップリング反応の周知の条件下で反応させる。あるいは、生じるアゼチジニウム化合物は、カップリング剤(例えば、ジイソシアナート化合物、二酸ハロゲン化物化合物、ジ−アズラクトン化合物、又はジ−エポキシ化合物)の存在下で、(メタ)アクリル酸C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、アリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、及びC−Cアルキルアクリル酸(例えば、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸)よりなる群から選択されるエチレン性官能基化ビニルモノマーと、周知のカップリング条件下で反応させる。
【0052】
「カップリング反応」は、当業者には周知の種々の反応条件(例えば、酸化還元条件、脱水縮合条件、付加条件、置換(又は置き換え)条件、Diels-Alder反応条件、カチオン架橋条件、開環条件、エポキシ硬化条件、及びこれらの組合せなど)下で共有結合又は結合を形成する、カップリング剤の存在下又は非存在下での一対の対応する官能基の間の任意の反応を記述することを目的とする。一対の共反応性官能基の間の種々の反応条件下でのカップリング反応の非限定例が、説明を目的として後述される。例えば、ヒドロキシル基は、酸塩化物若しくは臭化物基と、又は酸無水物基と反応させることにより、エステル結合(−C(O)−O−)を形成し;ヒドロキシル(又はヒドロキシ)は、イソシアナートと反応させることにより、ウレタン結合を形成し;ヒドロキシルは、エポキシ又はアジリジンと反応させることにより、OH−又はNH−含有エーテル結合(−CH(OH)−CH−O−又は−CH(NH)−CH−O−)を形成し;ヒドロキシル基は、触媒の存在下でアズラクトン基と反応させることにより、アミドアルキレンカルボキシ結合(−OC(O)−(CH−CT−C(O)−NH−)を形成し;アミノ基は、アルデヒド基と反応させることにより、Schiff塩基を形成するが、これは更に還元してもよく;アミノ基−NHR’は、酸塩化物若しくは臭化物基と、又は酸無水物基と反応させることにより、アミド結合(−CO−NR’)を形成し;アミノ基−NHR’は、イソシアナート基と反応させることにより、尿素結合(−NR”−C(O)−NH−)を形成し;アミノ基−NHR’は、エポキシ又はアジリジン基と反応させることにより、OH−又はNH−含有アミン結合(−CH(OH)−CH−NR’−又はCH(NH)−CH−NR’−)を形成し;アミノ基−NHR’は、アズラクトン基と反応(開環)させることにより、アルキレン−ジアミド結合(−C(O)NR’−(CH−CT−C(O)−NH−)を形成し;アミノ基−NHR’は、カルボン酸基と、カップリング剤−カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、又はこれらの混合物)の存在下で反応させることにより、アミド結合を形成し;カルボキシル基は、エポキシ基と反応させることにより、エステル結合を形成する。
【0053】
任意の適切なC−C24ジイソシアナートを本発明に使用することができる。好ましいジイソシアナートの例は、特に限定されないが、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチル−1,6−ジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジイソシアナート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレン−4,4’−ジフェニルジイソシアナート、1,3−ビス−(4,4’−イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアナート、及びこれらの組合せを包含する。
【0054】
任意の適切な二酸ハロゲン化物を本発明に使用することができる。好ましい二酸ハロゲン化物の例は、特に限定されないが、塩化フマリル、塩化スベロイル、塩化スクシニル、塩化フタロイル、塩化イソフタロイル、塩化テレフタロイル、塩化セバコイル、塩化アジポイル、塩化トリメチルアジポイル、塩化アゼラオイル、ドデカン二酸塩化物、コハク酸塩化物、グルタル酸塩化物、塩化オキサリル、二量体酸塩化物、及びこれらの組合せを包含する。
【0055】
任意の適切なジ−エポキシ化合物を本発明に使用することができる。好ましいジ−エポキシ化合物の例は、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びこれらの組合せである。このようなジ−エポキシ化合物は、市販されている(例えば、Nagase ChemteX CorporationからのDENACOLシリーズのジ−エポキシ化合物)。
【0056】
任意の適切なC10−C24ジ−アズラクトン化合物を本発明に使用することができる。このようなジアズラクトン化合物の例は、米国特許第4,485,236号(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載されるものである。
【0057】
アジリジン含有ビニルモノマーの好ましい例は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸3−(1−アジリジニル)プロピル、(メタ)アクリル酸4−(1−アジリジニル)ブチル、(メタ)アクリル酸6−(1−アジリジニル)ヘキシル、及び(メタ)アクリル酸8−(1−アジリジニル)オクチルを包含する。
【0058】
エポキシ含有ビニルモノマーの好ましい例は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルを包含する。
【0059】
アズラクトン含有ビニルモノマーの好ましい例は、特に限定されないが、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オンを包含する(2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(VDMO)及び2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(IPDMO)を最も好ましいアズラクトン含有ビニルモノマーとする)。
【0060】
上記のカップリング反応のための反応条件は、教科書に教示されており、当業者には周知である。
【0061】
本発明のこの態様はまた、式(2):
【化11】

[式中、p1、p2、及びp3は、相互に独立に、ゼロ又は1であり;R”は、水素又はメチルであり;Yは、直接結合、−O−、−NR’−、−C(O)−NR’−、−NR’−C(O)−、−O−C(O)−NH−、−NH−C(O)−O−、−NR’−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NR’−、−C(O)−O−、−O−C(O)−よりなる群から選択される結合であり;R’は、水素、C−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキル基であり;Zは、直接結合、場合によりその中に1個以上の−O−、−NR’−、及び−C(O)−の結合を含有するC−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキレンの二価の基、C−CアルキレンオキシC−Cアルキレンの二価の基、あるいは−(CH(R”)CHO)r1−CH(R”)CH−の二価の基(ここで、R”は、上記と同義であり、そしてr1は、1〜20の整数である)であり;そしてZは、C−C20非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキル基、−(CHr2−O−(CHCHO)r1−Z(ここで、r1は、上記と同義であり、r2は、ゼロ又は1〜7の整数であり、そしてZは、C−Cアルキルである)である]により表される、本発明の別の分類のアゼチジニウム含有ビニルモノマーに関する。
【0062】
この分類のアゼチジニウム含有ビニルモノマーは、エピクロロヒドリンを直接、第2級アミン基(−NH−)を有するビニルモノマーと、当業者には既知の反応条件下で反応させることにより調製することができる。ビニルモノマーの例は、特に限定されないが、N−アリルC−C12アルカンアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−1−ヘプタンアミン、N−アリル−1−オクタンアミン、N−アリル−1−デカンアミン、N−アリル−1−ドデカンアミン);当業者には周知のカップリング反応条件下で、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシC−C12アルカン、又はモノ−エポキシ末端ポリエチレングリコール)をアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドと反応させるか、あるいはC−C12アルカンアミン又はアミノ−C−C12アルカノールをエポキシ含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、又はアリルグリシジルエーテル)と、反応させるかのいずれかにより得られる、第2級アミン含有ビニルモノマーを包含する。
【0063】
本発明のアゼチジニウム含有ビニルモノマーは、SiHyコンタクトレンズ上の非シリコーンヒドロゲルコーティングを形成するのに、及び/又はSiHyコンタクトレンズ上のアンカリング下塗りコーティングを形成するのに適したコポリマーを調製するのに、特定の利用法を見いだすことができる。
【0064】
本発明は、別の態様において、アゼチジニウム基を有する少なくとも1種のビニルモノマーから(好ましく上記式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから)誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位、並びにカルボキシル含有ビニルモノマー、アミノ含有ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーから誘導されるモノマー単位を含むアゼチジニウム含有コポリマーを提供する。
【0065】
好ましいカルボキシル含有ビニルモノマーの例は、特に限定されないが、アクリル酸、C−Cアルキルアクリル酸(例えば、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸)、N,N−2−アクリルアミドグリコール酸、β−メチル−アクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの組合せを包含する。
【0066】
好ましいアミノ含有ビニルモノマーの例は、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリルC−C12アルカンアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−1−ヘプタンアミン、N−アリル−1−オクタンアミン、N−アリル−1−デカンアミン、N−アリル−1−ドデカンアミン)、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシC−C12アルカン、又はモノ−エポキシ末端ポリエチレングリコール)とアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドとのカップリング反応生成物、C−C12アルカンアミン又はC−C12アミノアルカノールとエポキシ含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、又はアリルグリシジルエーテル)とのカップリング反応生成物、及びこれらの組合せを包含する。
【0067】
好ましい疎水性ビニルモノマーの例は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリラート、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロブチル、シロキサン含有ビニルモノマー、ポリシロキサン含有ビニルモノマー(約3〜約40個のケイ素原子を有する)、及びこれらの組合せを包含する。
【0068】
好ましいシロキサン含有ビニルモノマーの例は、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]−(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルプロピル−シロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルフェニルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルエチルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)−2−メチル−アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)アクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチル−シリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)−プロピルオキシ)プロピル)−2−メチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)−プロピル)アクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド、N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド、N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド、N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)−プロピル]アクリルアミド、3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、メタクリル酸トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピル(TRIS)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)−メチルシラン、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−メタクリルオキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバマート、3−(トリメチルシリル)−プロピルビニルカルボナート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−トリス(トリメチル−シロキシ)シラン、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナート、t−ブチルジメチル−シロキシエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルエチルビニルカルボナート、トリメチルシリルメチルビニルカルボナート、及びこれらの組合せを包含する。
【0069】
「ポリシロキサン含有ビニルモノマー」とは、唯一のエチレン性不飽和基及び少なくとも1個のポリ(ジ−C−Cアルキル置換シロキサン)セグメントを含むビニルモノマーのことをいう。約3〜約40個のケイ素原子を有する、好ましいポリシロキサン含有ビニルモノマーの例は、種々の分子量のモノ−(メタ)アクリラート末端ポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノ−C−Cアルキル末端ポリジメチルシロキサン、又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノ−C−Cアルキル末端ポリジメチルシロキサン)、モノ−ビニル−末端ポリジメチルシロキサン、モノ−(メタ)アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン、モノ−ビニルカルバマート末端ポリジメチルシロキサン、モノ−ビニルカルボナート末端ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組合せを包含する。あるいは、モノエチレン性官能基化ポリシロキサンは、上記のように単官能基化ポリシロキサン(即ち、例えば、−NH、−OH、−COOH、エポキシ基、ハロゲン化物などのような、唯一の末端官能基を持つ)のエチレン性官能基化により得ることができる。適切な単官能基化ポリシロキサンは、例えば、Aldrich、ABCR GmbH & Co.、Fluorochem、又は Gelest, Inc, Morrisville, PAから市販されている。
【0070】
水素解離定数(pKa)は、ポリアクリル酸で約4.0、ポリメタクリル酸で約5.3、ポリエチルアクリル酸で約6.3、ポリプロピルアクリル酸で約6.7、そしてポリブチルアクリル酸で約7.4であることが報告されている(H. Dong, J. Phys. Chem. A112 (49): 12687-12694 (2008); F. Mitsuko, R. Grubbs, and J.D. Baldeschwieler, J. Colloid Interface Sci. 185: 210-216 (1997); S.J. Grainger and E.H. El-Sayed, in Biologically-Responsive Hybrid Biomaterials: A Reference for Material Scientists and Bioengineers, E. Jabbari et A. Khademhosseini, Eds., Boston, MA: Artech Publishing (2010), Chapter 7, pp171-190を参照のこと)。pKaの差のため、中性pHでのこれらのポリマーのカルボキシル基の電離度は有意に異なっていてよく、レンズケア溶液中に存在する正荷電の抗菌剤(例えば、PHMB、Aldox、POLYQUADなど)の取り込みが異なるレベルになってよい。SiHyコンタクトレンズ上のコーティング用のアゼチジニウム含有ポリマーが、主としてメタクリル酸又はエチルアクリル酸からなる場合には、レンズケア溶液中に存在するこのような正荷電の抗菌剤の取り込みは、最小限に抑えることができると考えられる。
【0071】
好ましい実施態様において、本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、好ましくは:少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;及びカルボキシル含有ビニルモノマー(好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導される)から誘導されるカルボキシル含有モノマー単位;及び場合により、少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマー[好ましくは(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリルC−C12アルカンアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−1−ヘプタンアミン、N−アリル−1−オクタンアミン、N−アリル−1−デカンアミン、N−アリル−1−ドデカンアミン)、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシC−C12アルカン、又はモノ−エポキシ末端ポリエチレングリコール)とアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドとのカップリング反応生成物、C−C12アルカンアミン又はC−C12アミノアルカノールとエポキシ含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、又はアリルグリシジルエーテル)とのカップリング反応生成物、及びこれらの組合せよりなる群から選択される]から誘導されるアミノ含有モノマー単位を含む。
【0072】
別の好ましい実施態様において、本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、好ましくは:少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択される(更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導される)カルボキシル含有ビニルモノマーから誘導されるカルボキシル含有モノマー単位;並びに少なくとも1種の疎水性ビニルモノマー(好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリラート、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロ−イソプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロブチル、シロキサン含有ビニルモノマー、約3〜約40個のケイ素原子を有するポリシロキサン含有ビニルモノマー、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更に好ましくは少なくとも1種のシロキサン含有ビニルモノマー、少なくとも1種のポリシロキサン含有ビニルモノマー及びこれらの組合せよりなる群から選択される)から誘導される疎水性モノマー単位;並びに場合により、少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマー[好ましくは(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリルC−C12アルカンアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−1−ヘプタンアミン、N−アリル−1−オクタンアミン、N−アリル−1−デカンアミン、N−アリル−1−ドデカンアミン)、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシC−C12アルカン、又はモノ−エポキシ末端ポリエチレングリコール)とアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドとのカップリング反応生成物、C−C12アルカンアミン又はC−C12アミノアルカノールとエポキシ含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、又はアリルグリシジルエーテル)とのカップリング反応生成物、及びこれらの組合せよりなる群から選択される]から誘導されるアミノ含有モノマー単位を含む。
【0073】
別の好ましい実施態様において、本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、好ましくは:少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;少なくとも1種の疎水性ビニルモノマー(好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリラート、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロ−イソプロピル、メタクリル酸ヘキサフルオロブチル、シロキサン含有ビニルモノマー、約3〜約40個のケイ素原子を有するポリシロキサン含有ビニルモノマー、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更に好ましくは少なくとも1種のシロキサン含有ビニルモノマー、少なくとも1種のポリシロキサン含有ビニルモノマー及びこれらの組合せよりなる群から選択される)から誘導される疎水性モノマー単位;及び場合により、少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマー[好ましくは(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、アリルアミン、ビニルアミン、アミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリルC−C12アルカンアミン(例えば、N−エチル−2−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−アリルメチルアミン、N−アリル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−2,3−ジメチル−1−ペンタンアミン、N−アリル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−2−メチル−1−ヘキサンアミン、N−アリル−1−ヘプタンアミン、N−アリル−1−オクタンアミン、N−アリル−1−デカンアミン、N−アリル−1−ドデカンアミン)、唯一のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、1,2−エポキシC−C12アルカン、又はモノ−エポキシ末端ポリエチレングリコール)とアリルアミン、ビニルアミン、(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、又はアミノ−C−Cアルキル(メタ)アクリルアミドとのカップリング反応生成物、C−C12アルカンアミン又はC−C12アミノアルカノールとエポキシ含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、又はアリルグリシジルエーテル)とのカップリング反応生成物、及びこれらの組合せよりなる群から選択される]から誘導されるアミノ含有モノマー単位を含む。
【0074】
別の好ましい実施態様において、本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、好ましくは:(1)少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;(2)カルボキシル含有モノマー単位及び/又はアミノ含有モノマー単位である、反応性モノマー単位[ここで、カルボキシル含有モノマー単位は、少なくとも1種のカルボキシル含有ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導され、そしてアミノ含有ビニルモノマー単位は、少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導される];並びに(3)モル基準で少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、更に好ましくは少なくとも約70%、更になお好ましくは少なくとも約75%の、少なくとも1種の親水性ビニルモノマー[(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸グリセロール、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、1500ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール(コポリマー中の酢酸ビニルの加水分解型)、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー((メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び米国特許第5,461,433号(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載されたものを包含する)、糖含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸エリトリトール、(メタ)アクリル酸アラビトール、(メタ)アクリル酸マンニトール、(メタ)アクリル酸ズルシトール、(メタ)アクリル酸フシトール、(メタ)アクリル酸イジトール、(メタ)アクリル酸イノシトール、(メタ)アクリル酸キシリトール、(メタ)アクリル酸ソルビトール、(メタ)アクリル酸グルコース、(メタ)アクリル酸フルクトース、(メタ)アクリル酸ガラクトース)、及びこれらの組合せよりなる群から選択される(好ましくは(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリセロール、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、1500ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー((メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び米国特許第5,461,433号(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載されたものを包含する)、(メタ)アクリル酸エリトリトール、(メタ)アクリル酸アラビトール、(メタ)アクリル酸マンニトール、(メタ)アクリル酸ズルシトール、(メタ)アクリル酸フシトール、(メタ)アクリル酸イジトール、(メタ)アクリル酸イノシトール、(メタ)アクリル酸キシリトール、(メタ)アクリル酸ソルビトール、(メタ)アクリル酸グルコース、(メタ)アクリル酸フルクトース、(メタ)アクリル酸ガラクトース、及びこれらの組合せよりなる群から選択される)]から誘導される非反応性親水性モノマー単位を含む。更に好ましくは、このコポリマーは、モル基準で約50%以下、好ましくは約2.5%〜約40%、更に好ましくは約5%〜約30%、更になお好ましくは約7.5%〜約25%のアゼチジニウム含有モノマー単位及び反応性モノマー単位を含む。
【0075】
本発明のアゼチジニウム含有コポリマーの重量平均分子量Mは、少なくとも約10,000ダルトン、好ましくは少なくとも約50,000ダルトン、更に好ましくは少なくとも約100,000ダルトン、更になお好ましくは約200,000〜約1,000,000ダルトンである。
【0076】
当業者であれば、任意の既知の重合法による本発明のアゼチジニウム含有コポリマーの調製方法には詳しい。
【0077】
本発明のアゼチジニウム含有コポリマーは、SiHyコンタクトレンズ上の架橋親水性コーティングを形成するのに特定の利用法を見いだすことができる。
【0078】
本発明は、更なる態様において、それぞれ架橋親水性コーティングを施したコーティングシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、この本発明の方法が、(a)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調達する工程;(b)アンカリングポリマーの下塗りコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに適用する工程{ここで、アンカリングポリマーは、カルボキシル含有ビニルモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー及び/又はアゼチジニウム含有コポリマー[少なくとも1種の(好ましくは上記の式(1)又は(2)の)アゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導される第1のアゼチジニウム含有モノマー単位、並びに少なくとも1種のカルボキシル含有ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導されるカルボキシル含有モノマー単位、少なくとも1種のアミノ含有ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導されるアミノ含有モノマー単位、少なくとも1種の疎水性ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導される疎水性モノマー単位、及びこれらの組合せよりなる群から選択されるモノマー単位を含む]である};及び(c)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基及びこれらの組合せよりなる群から選択される反応性官能基を含む水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で、水溶液中で約40℃〜約140℃の温度まで及び該温度で、1個のアゼチジニウム基と1個のアミノ又はカルボキシル基の間の分子間及び分子内架橋反応を誘導するのに充分な時間加熱し、それによって耐久性のある非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に形成する工程を含む方法を提供する(ただし、アンカリングポリマー及び熱架橋しうる親水性ポリマー材料の少なくとも一方は、アゼチジニウム基を含む)。
【0079】
当業者であれば、コンタクトレンズの製造方法は熟知している。例えば、コンタクトレンズは、例えば、米国特許第3,408,429号の例に記載されるように従来の「スピンキャスト成形」で、又は米国特許第4,347,198号;第5,508,317号;第5,583,463号;第5,789,464号;及び第5,849,810号に記載されるように静止形での完全キャスト成形プロセスにより、又は特別注文のコンタクトレンズの製造に使用されるようにシリコーンヒドロゲルボタンの旋盤切削により生産できる。キャスト成形では、レンズ配合物を、典型的には成形用型に分配してコンタクトレンズ製造用の成形用型中で硬化(即ち、重合及び/又は架橋)する。シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズの生産のために、キャスト成形用若しくはスピンキャスト成形用の、又はコンタクトレンズの旋盤切削に使用されるSiHyロッドを製造するための、SiHyレンズ形成組成物(又はSiHyレンズ配合物)は一般に、シリコーン含有ビニルモノマー、シリコーン含有ビニルマクロマー、シリコーン含有プレポリマー、親水性ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、架橋剤(約700ダルトン以下の分子量を有しており、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含有する化合物)、ラジカル開始剤(光開始剤又は熱開始剤)、親水性ビニルマクロマー/プレポリマー、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む(当業者には周知のとおり)。SiHyコンタクトレンズ配合物はまた、当業者には知られている他の必要な成分、例えば、UV吸収剤、可視着色剤(例えば、染料、色素、又はこれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子)、生理活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙液安定化剤、及びこれらの混合物などを含むことができる(当業者には知られているとおり)。得られるSiHyコンタクトレンズは次に、抽出溶媒での抽出に付して、得られるレンズから未重合成分を除去することができ、そして水和プロセスに付すことができる(当業者には知られているとおり)。更に、前もって形成されたSiHyコンタクトレンズは、着色コンタクトレンズ(即ち、当業者には周知のとおり、少なくとも1種の着色パターンが表面にプリントされているSiHyコンタクトレンズ)であってもよい。
【0080】
上記の成分の種々の組合せを包含する多数のSiHyレンズ配合物が、本出願の出願日までに公開された多数の特許及び特許出願に記載されている。これら全ては、コーティングすべきSiHyレンズを調達するのに利用できる。ロトラフィルコンA(lotrafilcon A)、ロトラフィルコンB、デレフィルコンA(delefilcon A)、バラフィルコンA(balafilcon A)、ガリフィルコンA(galyfilcon A)、セノフィルコンA(senofilcon A)、ナラフィルコンA(narafilcon A)、ナラフィルコンB、コムフィルコンA(comfilcon A)、エンフィルコンA(enfilcon A)、アスモフィルコンA(asmofilcon A)などのような市販のSiHyレンズを製造するためのSiHyレンズ配合物はまた、本発明においてコーティングすべきSiHyコンタクトレンズを製造する際に使用することができる。
【0081】
本発明により、下塗りコーティングは、(コーティングすべき)SiHyコンタクトレンズをアンカリングポリマーの溶液と接触させることにより形成される。コンタクトレンズをアンカリングポリマーの溶液と接触させるには、これをコーティング溶液中に浸漬するか、又はこれをコーティング溶液でスプレーすることにより行うことができる。1つの接触方法は、単にコンタクトレンズをアンカリングポリマーの溶液の浴に一定時間浸漬することを伴うか、あるいはコンタクトレンズをアンカリングポリマーの溶液の一連の浴に順に各浴について一定の短時間浸漬することを伴う。別の接触方法は、単にアンカリングポリマーの溶液をスプレーすることを伴う。しかし、スプレー工程及び浸漬工程の種々の組合せを伴う多くの代替法が、通常の技能を有する当業者により設計されよう。
【0082】
コンタクトレンズとアンカリングポリマーの溶液との接触時間は、約10分以内、好ましくは約5〜約360秒間、更に好ましくは約5〜約250秒間、更になお好ましくは約5〜200秒間持続してもよい。
【0083】
本発明により、アンカリングポリマーは、これが、水、有機溶媒、2種以上の有機溶媒の混合物、水と1種以上の有機溶媒との混合物に可溶性でありさえすれば、直鎖又は分岐又は架橋ポリマーである。
【0084】
カルボキシル含有ビニルモノマー、アゼチジニウム含有ビニルモノマー、アミノ含有ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、非反応性親水性ビニルモノマー、及びアゼチジニウム含有コポリマーの全ての実施態様及び好ましい実施態様は、上記されており、そして本発明のこの態様において利用することができる。
【0085】
好ましい実施態様において、本発明のアンカリングポリマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択されるカルボキシル含有ビニルモノマーから誘導され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導されるカルボキシル含有モノマー単位を含む。
【0086】
別の好ましい実施態様において、アンカリングポリマーは、ポリアクリル酸(PAA);ポリメタクリル酸(PMAA);ポリエチルアクリル酸、ポリプロピルアクリル酸;アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、及びプロピルアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも2種のビニルモノマーのコポリマー;ポリマレイン酸(即ち、部分的に又は完全に加水分解されたポリマレイン酸無水物);マレイン酸及び1種以上のビニルモノマー(例えば、エチレン、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、及び/又はイソブチレン)のコポリマー;モル基準で約0.05%〜約20%(好ましくは約0.1%〜約15%、更に好ましくは約0.5%〜約10%)のアゼチジニウム含有ビニルモノマー(好ましくは上記の式(1)のアゼチジニウム含有ビニルモノマー)、及びモル基準で約80%〜約99.95%の1種以上のカルボキシル含有ビニルモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択される)からなるコポリマー;下記式:
【化12】

(式中、T及びTは、上記と同義である)で示されるアゼチジニウム化合物とポリマレイン酸無水物との又は無水マレイン酸及び1種以上のビニルモノマー(例えば、エチレン、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、及び/又はイソブチレン)のコポリマーとの反応生成物[ここで、アゼチジニウム化合物対無水マレイン酸のモル当量比は、約0.25以下(好ましくは約0.2以下、更に好ましくは約0.15以下、更になお好ましくは約0.1以下)である];並びにこれらの組合せである。
【0087】
別の好ましい実施態様において、本発明のアンカリングポリマーは、好ましくは:アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択される(更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導される)カルボキシル含有ビニルモノマーから誘導されるカルボキシル含有モノマー単位;並びに少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位を含む。
【0088】
別の好ましい実施態様において、本発明のアンカリングポリマーは、好ましくは:アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択される(更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導される)カルボキシル含有ビニルモノマーから誘導されるカルボキシル含有モノマー単位;少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;並びに少なくとも1種の疎水性ビニルモノマーから(好ましくは少なくとも1種のシロキサン含有ビニルモノマー及び/又は少なくとも1種のポリシロキサン含有ビニルモノマーから)誘導される疎水性モノマー単位を含む。
【0089】
別の好ましい実施態様において、本発明のアンカリングポリマーは、好ましくは:少なくとも1種の(上記の)式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位;及び少なくとも1種の疎水性ビニルモノマーから(好ましくは少なくとも1種のシロキサン含有ビニルモノマー及び/又は少なくとも1種のポリシロキサン含有ビニルモノマーから)誘導される疎水性モノマー単位を含む。
【0090】
別の好ましい実施態様において、本発明のアンカリングポリマーは、好ましくは:アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、マレイン酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択される(更に好ましくはメタクリル酸、エチルアクリル酸、及びこれらの組合せよりなる群から選択され、更になお好ましくはメタクリル酸から誘導される)カルボキシル含有ビニルモノマーから誘導されるカルボキシル含有モノマー単位;並びに少なくとも1種の疎水性ビニルモノマーから(好ましくは少なくとも1種のシロキサン含有ビニルモノマー及び/又は少なくとも1種のポリシロキサン含有ビニルモノマーから)誘導される疎水性モノマー単位を含む。
【0091】
アンカリング下塗りコーティングを形成するためのアンカリングポリマーの重量平均分子量Mは、少なくとも約10,000ダルトン、好ましくは少なくとも約50,000ダルトン、更に好ましくは少なくとも約100,000ダルトン、更になお好ましくは約200,000〜約1,000,000ダルトンである。
【0092】
コンタクトレンズ上に下塗りコーティングを形成するためのアンカリングポリマーの溶液は、1種以上のアンカリングポリマーを水、水と水と混和性の有機溶媒との混合物、有機溶媒、又は1種以上の有機溶媒の混合物に溶解することにより調製できる。好ましくは、このアンカリングポリマーは、水と1種以上の有機溶媒、有機溶媒、又は1種以上の有機溶媒の混合物に溶解される。少なくとも1種の有機溶媒を含有する溶媒系は、一部のアンカリングポリマーがシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの中に浸透して、下塗りコーティングの耐久性を向上させられるように、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを膨潤させることができると考えられている。
【0093】
任意の有機溶媒を、アンカリングポリマーの溶液の調製に使用することができる。有機溶媒の例は、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i−プロピル、塩化メチレン、メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、1−又は2−ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びexoノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、及びこれらの混合物を包含する。
【0094】
本発明のこの態様において、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料は、アゼチジニウム基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、及びこれらの組合せよりなる群から選択される反応性基を含有する限り、任意の水溶性ポリマーであってよい。好ましくは、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料は、(i)少なくともモル基準で約50%、好ましくは少なくとも約60%、更に好ましくは少なくとも約70%、更になお好ましくは少なくとも約75%の少なくとも1種の親水性ビニルモノマー(上記のいずれか1種)から誘導される非反応性親水性モノマー単位を含む、(上記のものであり、そしてここで使用できる)本発明のアゼチジニウム含有コポリマー;(ii)シリコーンをまるで含まない(上記のものであり、そしてここで使用できる)アゼチジニウム含有コポリマーと、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤との反応生成物;(iii)ポリアミノアミド−エピクロロヒドリンと、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する少なくとも1種の親水性増強剤との反応生成物;並びに(iv)アミノ基、カルボキシル基、チオール基、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1個の反応性官能基を有する水溶性親水性ポリマーである。
【0095】
「親水性増強剤」という用語は、本発明のアゼチジニウム含有コポリマーと反応することにより、親水性部分及び/又は親水性鎖として共有結合で組み込まれる親水性増強剤を持つ生成物を形成できる、親水性有機化合物又はポリマーのことをいう。少なくとも1個のアミノ基、少なくとも1個のカルボキシル基、及び/又は少なくとも1個のチオール基を含有する限り、本発明には任意の適切な親水性増強剤を使用することができる。
【0096】
好ましい分類の親水性増強剤は、特に限定されないが、アミノ−、カルボキシル−又はチオール含有単糖類(例えば、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、1−チオールグリセロール、5−ケト−D−グルコン酸、ガラクトサミン、グルコサミン、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルコサミン酸、マンノサミン、サッカリン酸1,4−ラクトン、糖類酸、ケトデオキシノヌロソン酸、N−メチル−D−グルカミン、1−アミノ−1−デオキシ−β−D−ガラクトース、1−アミノ−1−デオキシソルビトール、1−メチルアミノ−1−デオキシソルビトール、N−アミノエチルグルコンアミド);アミノ−、カルボキシル−又はチオール含有二糖類(例えば、コンドロイチンジサッカリドナトリウム塩、ジ(β−D−キシロピラノシル)アミン、ジガラクツロン酸、ヘパリンジサッカリド、ヒアルロン酸ジサッカリド、ラクトビオン酸);及びアミノ−、カルボキシル−又はチオール含有オリゴ糖類(例えば、カルボキシメチル−β−シクロデキストリンナトリウム塩、トリガラクツロン酸);並びにこれらの組合せを包含する。
【0097】
別の好ましい分類の親水性増強剤は、1個以上のアミノ、カルボキシル及び/又はチオール基を有する親水性ポリマーである。更に好ましくは、親水性増強剤としての親水性ポリマー中のアミノ(−NHR’、ここでR’は上記と同義である)、カルボキシル(−COOH)及び/又はチオール(−SH)基を有するモノマー単位の含量は、親水性ポリマーの総重量に基づいて、重量基準で約40%未満、好ましくは約30%未満、更に好ましくは約20%未満、更になお好ましくは約10%未満である。
【0098】
1つの好ましい分類の親水性増強剤としての親水性ポリマーは、アミノ−又はカルボキシル含有多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース(繰り返し単位、−[C10−m(CHCOH)]−(式中、mは1〜3である)の組成に基づいて概算される、約40%以下のカルボキシル含量を有する)、カルボキシエチルセルロース(繰り返し単位、−[C10−m(CCOH)]−(式中、mは1〜3である)の組成に基づいて概算される、約36%以下のカルボキシル含量を有する)、カルボキシプロピルセルロース(繰り返し単位、−[C10−m(CCOH)]−(式中、mは1〜3である)の組成に基づいて概算される、約32%以下のカルボキシル含量を有する)、ヒアルロン酸(繰り返し単位、−(C1320NCOH)−の組成に基づいて概算される、約11%のカルボキシル含量を有する)、コンドロイチン硫酸(繰り返し単位、−(C121813NSCOH)−の組成に基づいて概算される、約9.8%のカルボキシル含量を有する)、又はこれらの組合せなどである。
【0099】
別の好ましい分類の親水性増強剤としての親水性ポリマーは、特に限定されないが、モノ−アミノ、カルボキシル又はチオール基を持つポリ(エチレングリコール)(PEG)(例えば、PEG−NH、PEG−SH、PEG−COOH);HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ、カルボキシル又はチオール基を持つマルチアームPEG;1個以上のアミノ、カルボキシル又はチオール基を持つPEGデンドリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ−又はジカルボキシル末端ホモ−又はコポリマー;非反応性親水性ビニルモノマーのモノアミノ−又はモノカルボキシル末端ホモ−又はコポリマー;(1)約60重量%以下、好ましくは約0.1%〜約30%、更に好ましくは約0.5%〜約20%、更になお好ましくは約1%〜約15%(重量%)の1種以上の反応性ビニルモノマー、及び(2)少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマー及び/又は少なくとも1種のホスホリルコリン含有ビニルモノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマー;並びにこれらの組合せを包含する。反応性ビニルモノマー及び非反応性親水性ビニルモノマーは、前述のものである。
【0100】
更に好ましくは、親水性増強剤としての親水性ポリマーは、PEG−NH;PEG−SH;PEG−COOH;HN−PEG−NH;HOOC−PEG−COOH;HS−PEG−SH;HN−PEG−COOH;HOOC−PEG−SH;HN−PEG−SH;1個以上のアミノ、カルボキシル又はチオール基を持つマルチアームPEG;1個以上のアミノ、カルボキシル又はチオール基を持つPEGデンドリマー;アクリルアミド(AAm)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、400ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、ビニルアルコール、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びこれらの組合せよりなる群から選択される非反応性親水性ビニルモノマーのモノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ホモ−又はコポリマー;(1)約0.1%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約20%、更に好ましくは約1%〜約15%(重量%)の(メタ)アクリル酸、C−C12アルキルアクリル酸、ビニルアミン、アリルアミン、及び/又は(メタ)アクリル酸アミノ−C−Cアルキル、並びに(2)(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及び/又はアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、400ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、ビニルアルコール、及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1種の非反応性親水性ビニルモノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマーである。
【0101】
最も好ましくは、親水性増強剤としての親水性増強剤は、PEG−NH;PEG−SH;PEG−COOH;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリビニルピロリドン;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリアクリルアミド;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(DMA);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(DMA−co−NVP);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(NVP−co−(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(ビニルアルコール);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン]ホモポリマー又はコポリマー;モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(NVP−co−ビニルアルコール);モノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ポリ(DMA−co−ビニルアルコール);約0.1%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約20%、更に好ましくは約1%〜約15%(重量%)の(メタ)アクリル酸を含むポリ[(メタ)アクリル酸−co−アクリルアミド];約0.1%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約20%、更に好ましくは約1%〜約15%(重量%)の(メタ)アクリル酸を含むポリ[(メタ)アクリル酸−co−NVP];(1)(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、並びに(2)約0.1%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約20%、更に好ましくは約1%〜約15%(重量%)のカルボン酸含有ビニルモノマー及び/又はアミノ含有ビニルモノマーを含む組成物の重合生成物であるコポリマー、及びこれらの組合せである。
【0102】
官能基を含むPEG及び官能基を含むマルチアームPEGは、種々の供給業者、例えば、Polyscience、及びShearwater Polymers, Inc.などから調達することができる。
【0103】
1種以上の非反応性親水性ビニルモノマーの、又はホスホリルコリン含有ビニルモノマーのモノアミノ−、モノカルボキシル−、ジアミノ−又はジカルボキシル末端ホモ−又はコポリマーは、米国特許第6,218,508号(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載される手順により調製することができる。例えば、非反応性親水性ビニルモノマーのジアミノ−又はジカルボキシル末端ホモ−又はコポリマーを調製するには、この非反応性ビニルモノマー、アミノ又はカルボキシル基を持つ連鎖移動剤(例えば、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、又は他のヒドロキシメルカプタン類、アミノメルカプタン類、若しくはカルボキシル含有メルカプタン類)及び場合により他のビニルモノマーを、反応性ビニルモノマー(アミノ又はカルボキシル基を有する)と、ラジカル開始剤の存在下で共重合(熱又は化学線による)させる。一般に、連鎖移動剤と反応性ビニルモノマー以外の全てのビニルモノマーとのモル比は、約1:5〜約1:100であるのに反して、連鎖移動剤と反応性ビニルモノマーとのモル比は、1:1である。このような調製では、生じる親水性ポリマーの分子量を制御するために、アミノ又はカルボキシル基を持つ連鎖移動剤が使用され、生じる親水性ポリマーに1個の末端アミノ又はカルボキシル基を提供するように、生じる親水性ポリマーの終端を形成し、一方この反応性ビニルモノマーは、生じる親水性ポリマーに他の末端カルボキシル又はアミノ基を提供する。同様に、非反応性親水性ビニルモノマーのモノアミノ−又はモノカルボキシル末端ホモ−又はコポリマーを調製するには、非反応性ビニルモノマー、アミノ又はカルボキシル基を持つ連鎖移動剤(例えば、2−アミノエタンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、又は他のヒドロキシメルカプタン類、アミノメルカプタン類、若しくはカルボキシル含有メルカプタン類)及び場合により他のビニルモノマーを、反応性ビニルモノマーの非存在下で共重合(熱又は化学線による)させる。
【0104】
本出願において使用されるとき、非反応性親水性ビニルモノマーのコポリマーとは、非反応性親水性ビニルモノマーと1種以上の更なるビニルモノマーとの重合生成物のことをいう。非反応性親水性ビニルモノマー及び反応性ビニルモノマー(例えば、カルボキシル含有ビニルモノマー)を含むコポリマーは、周知のラジカル重合法により調製できるか、又は供給業者から調達できる。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及びカルボキシル含有ビニルモノマーを含有するコポリマーは、NOP Corporationから調達できる(例えば、LIPIDURE(登録商標)-A及び-AF)。
【0105】
少なくとも1個のアミノ、カルボキシル又はチオール基を有する(親水性増強剤としての)親水性ポリマーの重量平均分子量Mは、好ましくは約500〜約1,000,000、更に好ましくは約1,000〜約500,000である。
【0106】
ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン(PAE)(又はポリアミド−ポリアミン−エピクロロヒドリン又はポリアミド−エピクロロヒドリン)は、Hercules製のKymene(登録商標)若しくはPolycup(登録商標)樹脂(エピクロロヒドリン官能基化アジピン酸−ジエチレントリアミンコポリマー)又はServo/Delden製のPolycup(登録商標)若しくはServamine(登録商標)樹脂などのように市販されている。あるいは、PAEは、エピクロロヒドリンを、ポリアミンとジカルボン酸から誘導される重縮合物であるポリ(アミドアミン)(例えば、アジピン酸−ジエチレントリアミンコポリマー)と反応させることにより得られる。ポリアミドアミンポリマーのエピクロロヒドリン−官能基化のための反応条件は、EP 1465931(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に教示されている。
【0107】
本発明では、親水性増強剤と本発明のアゼチジニウム含有コポリマー(又はポリアミドアミン−エピクロロヒドリン)との間の反応は、約40℃〜約100℃の温度で、反応性官能基(アゼチジニウム、カルボキシル、アミノ、及び/又はチオール基)を含有する水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を形成するのに充分な時間(約0.3時間〜約24時間、好ましくは約1時間〜約12時間、更になお好ましくは約2時間〜約8時間)実施する。
【0108】
好ましい実施態様において、熱架橋しうる親水性ポリマー材料は、(1)モル基準で約50%以下(好ましくは約2.5%〜約40%、更に好ましくは約5%〜約30%、更になお好ましくは約7.5%〜約25%)のアゼチジニウム含有モノマー単位(上記の式(1)又は(2)の少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導される)及び反応性モノマー単位;並びに(2)モル基準で少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、更に好ましくは少なくとも約70%、更になお好ましくは少なくとも約75%の、少なくとも1種の親水性ビニルモノマー[(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸グリセロール、3−アクリロイルアミノ−1−プロパノール、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−アクリルアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、1500ダルトン以下の重量平均分子量を有するC−C−アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール(コポリマー中の酢酸ビニルの加水分解型)、ホスホリルコリン含有ビニルモノマー((メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び米国特許第5,461,433号(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)に記載されたものを包含する)、糖含有ビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸エリトリトール、(メタ)アクリル酸アラビトール、(メタ)アクリル酸マンニトール、(メタ)アクリル酸ズルシトール、(メタ)アクリル酸フシトール、(メタ)アクリル酸イジトール、(メタ)アクリル酸イノシトール、(メタ)アクリル酸キシリトール、(メタ)アクリル酸ソルビトール、(メタ)アクリル酸グルコース、(メタ)アクリル酸フルクトース、(メタ)アクリル酸ガラクトース)、及びこれらの組合せよりなる群から選択される]から誘導される非反応性親水性モノマー単位を含む本発明のアゼチジニウム含有コポリマーである。
【0109】
本発明のこの態様では、加熱の工程は、好ましくは密封レンズパッケージ中でパッケージング溶液(即ち、緩衝化水溶液)に浸漬したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを約118℃〜約125℃の温度でおよそ20〜90分間オートクレーブ処理することにより実施される。本発明のこの実施態様では、このパッケージング溶液は、オートクレーブ処理後に眼に安全な緩衝化水溶液である。
【0110】
レンズパッケージ(又は容器)は、ソフトコンタクトレンズのオートクレーブ処理及び保存用として当業者には周知のものである。本発明には任意のレンズパッケージを使用できる。好ましくは、レンズパッケージは、基部とカバーを含むブリスターパッケージであって、このカバーは、基部に取り外し可能に密封され、そしてこの基部は、滅菌パッケージング溶液及びコンタクトレンズを受けるための空洞を包含する。
【0111】
レンズは、使用者に販売する前に、個々のパッケージに包装し、密封して、滅菌する(例えば、約120℃以上で少なくとも30分間加圧下でオートクレーブ処理することによる)。当業者であれば、レンズパッケージの密封及び滅菌の方法は充分に理解していよう。
【0112】
本発明では、パッケージング溶液は、少なくとも1種の緩衝剤及び1種以上の当業者に知られている他の成分を含有する。他の成分の例は、特に限定されないが、等張化剤、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、及び潤滑剤(例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)を包含する。
【0113】
このパッケージング溶液は、パッケージング溶液のpHを目的の範囲に、例えば、好ましくは約6〜約8.5の生理的許容範囲に維持するのに充分な量で緩衝剤を含有する。任意の既知の生理学的に適合性の緩衝剤を使用することができる。本発明のコンタクトレンズケア組成物の成分として適切な緩衝剤は、当業者には知られている。例としては、ホウ酸、ホウ酸塩、例えば、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えば、クエン酸カリウム、炭酸水素塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、トリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−トリス(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオール類、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、これらの塩、リン酸塩緩衝剤、例えば、NaHPO、NaHPO、及びKHPO又はこれらの混合物がある。好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]−メチルアミノ)プロパン(ビス−トリス−プロパン)である。パッケージング溶液中の各緩衝剤の量は、好ましくは約0.001%〜2%、好ましくは0.01%〜1%;最も好ましくは約0.05%〜約0.30%(重量%)である。
【0114】
このパッケージング溶液は、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜約350mOsmの浸透圧を有する。パッケージング溶液の浸透圧は、浸透圧に影響を及ぼす有機又は無機物質を加えることにより、調整することができる。適切な眼用に許容しうる等張化剤は、特に限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール類、マンニトール類、ソルビトール、キシリトール及びこれらの混合物を包含する。
【0115】
本発明のパッケージング溶液は、25℃で約1センチポアズ〜約8センチポアズ、より好ましくは約1.5センチポアズ〜約5センチポアズの粘度を有する。
【0116】
好ましい実施態様において、パッケージング溶液は、好ましくは約0.01%〜約2%、更に好ましくは約0.05%〜約1.5%、更になお好ましくは約0.1%〜約1%、最も好ましくは約0.2%〜約0.5%(重量%)の本発明の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を含む。
【0117】
別の好ましい実施態様において、本発明の方法は、加熱の工程の前に更に:室温でシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを熱架橋しうる親水性ポリマー材料の水溶液と接触させることにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上に熱架橋しうる親水性ポリマー材料の最上層を形成させる(即ち、LbLコーティング)工程;この熱架橋しうる親水性ポリマー材料の最上層を持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、レンズパッケージ中でパッケージング溶液に浸漬する工程;レンズパッケージを密封する工程;及びシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを中に含むレンズパッケージをオートクレーブ処理することにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に架橋親水性コーティングを形成させる工程を含むことができる。正荷電しているため、この熱架橋しうる親水性ポリマー材料は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの下塗りコーティング上に、物理相互作用を介して非共有結合層を形成することができると考えられている。
【0118】
本発明の方法により得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、好ましくは約90度以下、更に好ましくは約80度以下、更になお好ましくは約70度以下、最も好ましくは約60度以下の平均水接触角を有することを特徴とする表面親水性/湿潤性を有する。
【0119】
アゼチジニウム含有ビニルモノマーの好ましい実施態様を包含する全ての種々の実施態様は、上記されており、そして本発明のこの態様において利用することができる。
【0120】
当然のことながら、本発明の好ましい実施態様を包含する種々の実施態様は、別々に上記されているかもしれないが、これらは本発明のこの態様において任意の望ましいやり方で組合せること及び/又は一緒に利用することができる。
【0121】
本発明は、別の更なる態様において、それぞれ架橋親水性コーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法であって、この本発明の方法が、(a)(上記の)アゼチジニウム含有コポリマー及び/又は上記と同義の式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーを含むレンズ形成組成物からシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを調達する工程;(b)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、アゼチジニウム基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基及びこれらの組合せよりなる群から選択される反応性基を含む水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で水溶液中で約40℃〜約140℃の温度まで及び該温度で、1個のアゼチジニウム基と1個のアミノ又はカルボキシル基との間の分子間及び分子内架橋反応を誘導するのに充分な時間加熱し、それによって耐久性のある非シリコーンヒドロゲルコーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に形成する工程(ここで、非シリコーンヒドロゲルコーティングは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近のアゼチジニウム含有コポリマーのアゼチジニウム基を介して固定される)を含む方法を提供する。
【0122】
一部のアゼチジニウム含有コポリマー及び/又はアゼチジニウム含有モノマー単位は、アゼチジニウム含有コポリマーを含むレンズ形成組成物から得られるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近に位置していると考えられる。レンズ表面上及び/又はレンズ表面付近のこれらのアゼチジニウム基は、非シリコーンヒドロゲルコーティングを結合させるためのアンカリング部位として使える。
【0123】
好ましい実施態様において、このアゼチジニウム含有コポリマーは、レンズ形成組成物中の重合しうる成分と併用でき、そして上記と同義の式(1)又は(2)のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位、及び疎水性ビニルモノマーから誘導される疎水性モノマー単位を含む。更に好ましくは、このアゼチジニウム含有コポリマーは、いずれのエチレン性不飽和基も実質的に含まない(好ましくは含まない)。
【0124】
アゼチジニウム含有コポリマーに関して「レンズ形成組成物中の重合しうる成分と併用できる」という用語は、アゼチジニウム含有コポリマー及び重合しうる成分を含むレンズ形成組成物が、少なくとも約85%、更に好ましくは少なくとも約90%、更になお好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の光透過率(400nm〜700nmの間)を有することを意味する。
【0125】
好ましい実施態様において、本方法は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にアンカリングポリマーの下塗りコーティングを適用する工程を更に含む。上記のアンカリングポリマーの全ての実施態様(好ましい実施態様を包含する)は、この態様において本発明の方法のこの好ましい実施態様に利用することができる。
【0126】
好ましくは、加熱の工程は、密封レンズパッケージ中でパッケージング溶液(即ち、緩衝化水溶液)に浸漬したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、約118℃〜約125℃の温度でおよそ20〜90分間オートクレーブ処理することによって実施する。
【0127】
好ましくは、パッケージング溶液は、約0.01%〜約2%、好ましくは約0.05%〜約1.5%、更に好ましくは約0.1%〜約1%、更になお好ましくは約0.2%〜約0.5%(重量%)の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を含む。
【0128】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、SiHyレンズ配合物、アゼチジニウム含有ビニルモノマー、アンカリングポリマー及び下塗りコーティングを形成するためのその使用、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で水溶液中でシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを加熱する工程、レンズパッケージング溶液及びその成分、レンズパッケージの好ましい実施態様を包含する全ての種々の実施態様は、上記されており、そして本発明のこの態様において組合せること及び/又は一緒に利用することができる。
【0129】
更なる態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲル材料で作られたレンズ本体と、そこに施された非シリコーンヒドロゲルコーティングとを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、この非シリコーンヒドロゲルコーティングは、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマー(好ましくは上記の式(1)又は(2)のモノマー)から誘導されるアゼチジニウム含有モノマー単位、及びアミノ又はカルボキシル基を有するビニルモノマーから誘導される反応性モノマー単位を含む、熱架橋しうる親水性ポリマー材料の分子間及び分子内架橋を熱的に誘導することにより得られ、このシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約40barrerの酸素透過度、約100度以下の水接触角を特徴とする表面湿潤性、及び指擦り試験に耐えることを特徴とする良好なコーティング耐久性を有する、コンタクトレンズを提供する。
【0130】
本発明により、レンズ本体とは、コーティングすべき前もって形成されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのことをいい、上記のとおりシリコーンヒドロゲルレンズ配合物(組成物)から得られる。
【0131】
好ましい実施態様において、このシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約50barrer、好ましくは少なくとも約60barrer、更に好ましくは少なくとも約70barrerの酸素透過度;約1.5MPa以下、好ましくは約1.2MPa以下、更に好ましくは約1.0MPa以下、更になお好ましくは約0.3MPa〜約1.0MPaの弾性率;完全に水和されるとき好ましくは約18%〜約70%、更に好ましくは約20%〜約60%(重量%)の含水量;及びこれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する。
【0132】
コーティングすべきシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、アゼチジニウム含有ビニルモノマー、及び熱架橋しうる親水性ポリマー材料の好ましい実施態様を包含する種々の実施態様は、上記されており、そして本発明のこの態様において組合せること及び/又は一緒に利用することができる。
【0133】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの含水量は、US 5,849,811に開示されたBulk Techniqueにより測定できる。
【0134】
更に別の更なる態様において、本発明は、滅菌及び密封したレンズパッケージを含む眼用製品であって、このレンズパッケージは、オートクレーブ処理後レンズパッケージング溶液及びそこに浸漬された容易に使用可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み、この容易に使用可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、アミノ基及び/又はカルボキシル基を元のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近に有する元のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、少なくとも1種のアゼチジニウム含有ビニルモノマーから誘導されるモル基準で0.001%〜約25%のアゼチジニウム含有モノマー単位を含む、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を含有するオートクレーブ処理前パッケージング溶液中でオートクレーブ処理に付すことにより得られる架橋親水性コーティングを含み、この親水性ポリマー材料は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上に、それぞれシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの表面上及び/又は表面付近の1個のアミノ又はカルボキシル基と、親水性ポリマー材料の1個のアゼチジニウム基との間に形成される第2の共有結合を介して共有結合しており、このオートクレーブ処理後パッケージング溶液は、約6.0〜約8.5のpHを維持するのに充分な量の少なくとも1種の緩衝剤、及び親水性ポリマー材料の加水分解生成物を含み、そして約200〜約450ミリオスモル(mOsm)の浸透圧及び約1センチポアズ〜約10センチポアズの粘度を有する、眼用製品を提供する。
【0135】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、SiHyレンズ配合物、アゼチジニウム含有ビニルモノマー、アンカリングポリマー及び下塗りコーティングを形成するためのその使用、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料、水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料の存在下で水溶液中でシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを加熱する工程、レンズパッケージング溶液及びその成分、レンズパッケージの好ましい実施態様を包含するすべての種々の実施態様は、上記されており、そして本発明のこの態様において組合せること及び/又は一緒に利用することができる。
【0136】
前記開示により、当該分野における通常の技術者は本発明を実施できよう。本明細書に記載される種々の実施態様には、種々の修正、変形、及び組合せを加えることができる。読者がその具体的な実施態様及びその利点をより理解できるように、以下の実施例への参照が示唆を与える。本明細書及び実施例は、典型例として考慮することが意図される。
【0137】
本発明の種々の実施態様は、特定の用語、装置、及び方法を用いて記述されているが、このような記述は、例証のみを目的としている。使用される語は、限定よりは記述の語である。当然のことながら、当業者であれば、以下の請求の範囲に明記される本発明の本質又は範囲を逸することなく変更及び変形を加えることができる。更に、当然のことながら、種々の実施態様の態様は、全体又は一部において交換することができるか、あるいは任意のやり方で組合せること及び/又は一緒に利用することができる。したがって、添付の請求の範囲の本質及び範囲は、そこに含有される好ましいバージョンの記述に限定すべきではない。
【0138】
実施例1
酸素透過度測定
レンズ及びレンズ材料の見掛けの酸素透過度(Dkapp)、見掛けの酸素伝達率(Dk/t)、固有(又はエッジ補正した)酸素透過度(Dk)は、米国特許出願公開番号2012/0026457 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例1に記載される手順により測定した。
【0139】
潤滑性評価
潤滑性評点は、0をポリアクリル酸(PAA)でコーティングした対照レンズに割り当て、1をOasys(商標)/TruEye(商標)市販レンズに割り当て、そして5を市販のAir Optix(商標)レンズに割り当てる、定性的順位付けスキームである。試料を過剰のDI水で少なくとも3回濯いで、次にPBSに移してから評価した。評価の前に、手を石けん水で濯ぎ、DI水で広く濯いで、次にKimWipe(登録商標)タオルで乾かした。試料を指で挟んで扱い、上記の標準レンズと比較して各試料に数字を割り当てた。例えば、レンズがAir Optix(商標)レンズよりわずかに良好であると決定されるならば、これらは、4という数が割り当てられる。整合性を保つため、全ての評点は、バイアスを回避するため同じ2名の操作者により独立に収集され、そしてデータは今までのところ、この評価における非常に良好な定性的一致及び整合性を示している。
【0140】
表面親水性/湿潤性試験。
コンタクトレンズ上の水接触角は、コンタクトレンズの表面親水性(又は湿潤性)の一般的な尺度である。具体的には、低い水接触角は、より親水性の高い表面に相当する。コンタクトレンズの平均接触角(液滴(Sessile Drop)法)は、Boston, MassachusettsにあるAST, Inc.製のVCA 2500XE接触角測定装置を用いて測定した。この装置は、前進若しくは後退接触角又は固定(静止)接触角を測定することができる。測定は、完全に水和したコンタクトレンズで、以下のとおり吸い取り紙で乾燥した直後に実施した。コンタクトレンズをバイアルから取り出し、緩く結合したパッケージング添加物をレンズ表面から除去するために、約200mlの新鮮DI水中で3回洗浄した。次にレンズを糸くずの出ない清潔な布(Alpha Wipe TX1009)の上に置き、表面水を除去するために軽くたたき、接触角測定台に取り付け、乾燥空気で風乾して、最後に製造業者が提供するソフトウェアを用いて液滴接触角を自動測定した。接触角を測定するために使用したDI水は、>18MΩcmの抵抗率を持ち、使用した液滴容量は2μlとした。典型的には、コーティングしていないシリコーンヒドロゲルレンズ(オートクレーブ処理後)は、大体120度の液滴接触角を有する。ピンセットと測定台は、イソプロパノールで充分に洗浄して、DI水で濯いでから、コンタクトレンズと接触させた。
【0141】
水ブレイクアップ時間(Water Break-up Time)(WBUT)試験。
レンズ(オートクレーブ処理後)の湿潤性はまた、水膜がレンズ表面上で壊れ始めるのに要する時間を測定することにより評価される。簡単に述べると、レンズをバイアルから取り出して、緩く結合したパッケージング添加物をレンズ表面から除去するために、約200mlの新鮮DI水中で3回洗浄した。レンズをこの溶液から取り出して明るい光源にかざした。水膜が壊れて(脱湿して)下部のレンズ材料が露出するのに必要な時間を、目視により記録した。コーティングしていないレンズは、典型的にはDI水から取り出されると即座に壊れて、0秒のWBUTが割り当てられる。WBUT≧5秒を示すレンズは、湿潤性であると考えられ、そして眼の上で適切な湿潤性(涙膜を支持する能力)を示すことが期待される。
【0142】
コーティングの無傷性試験。
コンタクトレンズの表面上のコーティングの無傷性は、以下のとおりスダンブラック染色試験により試験することができる。コーティング(LbLコーティング、プラズマコーティング、又は任意の他のコーティング)を施したコンタクトレンズをスダンブラック染料液(ビタミンE油中のスダンブラック)中に浸した。スダンブラック染料は、疎水性であり、そして疎水性材料に吸着されるか、又は疎水性レンズ表面上に若しくは疎水性レンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)の部分的にコーティングされた表面上の疎水性スポット上に吸着される傾向が強い。疎水性レンズ上のコーティングが無傷であるならば、レンズ上又はレンズ内に染色スポットは観測されないはずである。試験を行う全てのレンズは完全に水和させた。
【0143】
コーティング耐久性の試験。
レンズはSolo-care(登録商標)多目的レンズケア溶液を使い、(使い捨てのパウダーフリーのラテックス手袋を着用して)30回指で擦り、次に生理食塩水で濯いだ。上記手順を所定回数、例えば、1〜30回(即ち、洗浄及び浸漬のサイクルを模した、連続指擦り試験の回数)繰り返した。次にレンズをスダンブラック試験(即ち、上記のコーティング無傷性試験)に付すことにより、コーティングが未だ無傷であるかどうかを検査した。指擦り試験に耐えるには、有意な染色スポットの増加が存在しない(例えば、染色スポットが総レンズ表面の約5%以下しか覆わない)。コーティング耐久性を求めるために、水接触角を測定した。
【0144】
低pHでのコンタクトレンズアナライザーによるレンズの試験(低pH CLAN)。
低pH CLANにより、疎水性(ナイルレッド、ナイルブルーオキサゾンとしても知られている)染料を用いてレンズ表面上のコーティング範囲について試験した。レンズ上の任意の露出した疎水性領域は、疎水性染料を結合させる。レンズ上の均一なコーティングが無傷であるならば、レンズ上又はレンズ内に染色スポットは観測されないはずである。本試験は、コンタクトレンズを1N HCl(水溶液)に約30秒間浸漬し、次にナイルレッド液(1−プロパノール/n−ヘプタン)に2秒間浸漬し、そして最後に過剰の染料を濯ぎ落とすためにDI水に30秒間浸漬することにより行った。次にレンズをCLAN(拡大光学素子及びフィルターを通した固定焦点のデジタルカメラ)に入れて、次にレンズを青色蛍光励起光で照射した。画像を捕捉して、疎水性表面により吸着された疎水性蛍光染料について画像処理ソフトウェアにより解析した。明るいピクセルの数の半分と暗いピクセルの数の半分の合計が5000を超えるならば、レンズは失敗と考えられる。
【0145】
ビーズ試験。
ビーズ試験は、コンタクトレンズ表面上の負電荷を求めるために利用する。50以下のビーズ試験値は、レンズ表面上の電荷について許容しうる。一般に>200のビーズ数を有する高値はまた、パッケージングされたコーティングが、PAA/PMAAコーティングレンズを覆うことができないことを反映する。この方法では、Dovex 1x4塩化物型50〜100メッシュ(CAS 69011-19-4)0.2gを遠心分離カップ中に量り取り、続いてPBS(リン酸塩緩衝生理食塩水)4mlを加えた。レンズをチューブの後ろ側に置き、このチューブを300rpmで1分間振とうした。次に、このチューブを濯いで、PBS 5mlで置換し、続いて300rpmで1分間振とうすることにより、表面のビーズを取り除いた。次にレンズを顕微鏡下で分析して、ビーズをカウントした。
【0146】
TBO分析。
リン酸水素二ナトリウムの原液(0.2%重量/重量、pH2)を調製した。炭酸水素ナトリウムの原液(0.2%重量/重量、pH10)を調製した。水中のトルイジンブルーOの原液(略してTBO、2000ppm)を調製した。2個のデジタルブロックヒーターを35及び50℃にセットした。pH2及びpH10緩衝液の両方の新たに希釈した0.1%(重量/重量)溶液を調製した。TBO原液(2000ppm)から50ppm TBO溶液を調製した。試験すべき各レンズをDI水 100mL中で約5分間濯いだ。過剰の水を除去するために、Alphaワイプ合成ワイパーを用いて各レンズから吸い取った。レンズを24ウェルTCPSプレート(1ウェルに1レンズ)に入れた。各ウェルに50ppm染料液1.5mlをピペットで加えて、このプレートを50℃の加熱ブロック上に30分間置いた。上記染色工程の終了後、レンズを取り出して、これらを24ウェルTCPSプレートの新しいウェルに入れた。新たな0.1% pH10緩衝液1.5mlをピペットで加えて、レンズを室温で5分間放置した。上記濯ぎ工程の終了後、レンズを取り出して、これらを24ウェルTCPSプレートの新しいウェルに入れた。新たな0.1% pH10緩衝液1.5mlをピペットで加えた。35℃にセットしたブロックヒーター上にこのプレートを30分間放置した。レンズをウェルから取り出して、Alphaワイプ合成ワイパーを用いて過剰の染料を穏やかに吸い取った。レンズを新しい24ウェルTCPSプレートのウェルに入れて、0.1% pH2溶液1.5mlをピペットで加えた。このプレートを50℃にセットしたブロックヒーター上に30分間放置した。この工程中に結合した染料をレンズから放出させた。レンズをウェルから取り出した。この溶液は、UV-VIS分析及び定量に利用される。0.1% pH2溶液中のTBOの0〜100ppmの較正標準液を調製した。標準TBO溶液、コーティングレンズからの未知の溶液、及びコーティングしていないレンズからの溶液のスペクトルを波長625、630、及び635で測定した。コーティングレンズ溶液からコーティングしていないレンズ溶液の吸光度値を差し引き、次に較正曲線を使用することによりTBOの量を決定した。
【0147】
PHMB法。
NaCl 7.85g、リン酸二水素ナトリウム0.773g、及びリン酸水素二ナトリウム4.759gを精製水に溶解することにより、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)1リットルを調製した。必要に応じてpHを7.1〜7.3に調整した。NaCl 4.500g、塩化カルシウム二水和物0.074g、クエン酸一水和物0.550g、クエン酸ナトリウム1.400g、及び精製水493.475gを合わせることにより、ATS溶液を調製した。pH7.0に調整した。PBS中に10ppm PHMB溶液を調製した。各レンズを10ppm PHMB溶液3mL中に入れて一晩(>16時間)置いた。レンズを取り出して、次に過剰のPBS溶液を除去するために吸い取った。2個の吸い取ったレンズをATS溶液2mLに入れた。旋回シェーカーを250rpmで用いて2時間撹拌した。2時間後に、溶液減量が最小になるように溶液から注意深くレンズを取り出した。PBS中にPHMB標準溶液(0.5、1、2、4、8、及び10ppm)を調製した。1cm石英セルを用いて、標準液、取り込み及び放出試料について240nmで吸光度を測定することにより、PHMBの濃度を求めた。
【0148】
実施例2
メタクリル酸ジエチルアゼチジニウムエステル塩化物塩(AZM)モノマーの合成
2a. ジエチルヒドロキシルアゼチジニウム塩化物の合成。
ジエチルアミン(50g、0.686モル)を無水アセトニトリル25mLにアルゴン下で溶解した。この溶液を氷浴中で0℃まで冷却した。この溶液に、無水アセトニトリル20mL中のエピクロロヒドリン(63.248g、0.684モル)を加えた。この混合物を0℃で約5時間撹拌後、反応は室温で更に約27時間行われた。固体生成物を濾過により収集して、冷アセトニトリルで2〜3回洗浄した。典型的収率は、30〜50%の範囲にあった。
【0149】
【化13】
【0150】
2b. メタクリル酸ジエチルアゼチジニウムエステル塩化物塩(AZM)の合成。
窒素流を取り付けたシュレンクフラスコ中で、得られたヒドロキシアゼチジニウム塩化物塩(60g、0.362モル)を無水アセトニトリル336mLに溶解した。この溶液に、メタクリル酸無水物(45.73g、0.297モル)及びジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(7mg)を約5分間かけて室温で加えた。次にこの反応混合物を室温で約18時間撹拌した。アセトニトリルを留去して、残渣をアセトニトリル/ジエチルエーテル(1:1)溶媒混合物1Lに懸濁した。この固体生成物を濾過により収集して、乾燥させた。典型的収率は、大体55%であった。
【0151】
【化14】
【0152】
実施例3
パッケージ内コーティング(IPC)コポリマーの合成
3a. IPC用のAZM/APMA/PEG/DMA含有コポリマーの調製。
500mLのガラス反応釜で、メトキシポリエチレングリコール2000メタクリレート(PEG2000-MA)の溶液(水中50%)5.0g、アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)1.0g、実施例2で調製したAZM 1.0g、N,N’−ジメチルアクリルアミド(DMA)5.47g、及びIrgacure 2959溶液(水中1%)3.00mLを33.75mMクエン酸塩緩衝液(pH4)184.53gに溶解した。少なくとも4個のすりガラス接合部を含有する反応釜に、蓋をした。1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。4個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。約1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次に約40mL/分の水流量を用いて50kDa透析膜を水に対して24時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば2%まで希釈した。
【0153】
3b. IPC用のAZM/APMA/アクリルアミド含有コポリマーの調製。
500mLのガラス反応釜で、アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)1.5g、実施例2で調製したAZM 1.5g、アクリルアミド6.97g、及びIrgacure 2959溶液(水中1%)3.00mLを33.75mMクエン酸塩緩衝液(pH4)187.03gに溶解した。少なくとも4個のすりガラス接合部(1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される)を含有する反応釜に、蓋をした。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。4個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で1時間点けた。1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次に約40mL/分の流量を用いて50kDa透析膜を水に対して24時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば2%まで希釈した。
【0154】
3c. IPC用のAZM/APMA/PEG/AGA含有コポリマーの調製。
500mLのガラス反応釜で、水中の50% PEG2000-MA溶液5.0g、アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)1.0g、実施例2で調製したAZM 1.0g、アクリロイルグルコサミン(AGA)5.47g、及び水中の1% Irgacure 2959溶液3.00mLを33.75mMクエン酸塩緩衝液(pH4)184.53gに溶解した。少なくとも4個のすりガラス接合部(1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される)を含有する反応釜に、蓋をした。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。4個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で1時間点けた。約1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次に50kDa透析膜を水に対して24時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば2%まで希釈した。
【0155】
3d. IPC用のAZM/APMA/AA/アクリルアミド含有コポリマーの調製。
500mLのガラス反応釜で、アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)1.5g、実施例2で調製したAZM 1.5g、アクリル酸0.2g、アクリルアミド6.77g、及び水中の1% Irgacure 2959溶液3.00mLを33.75mMクエン酸塩緩衝液(pH4)187.03gに溶解した。少なくとも4個のすりガラス接合部(1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される)を含有する反応釜に、蓋をした。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。4個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。約1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次に約40mL/分の流量を用いて50kDa透析膜を水に対して24時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば2%まで希釈した。
【0156】
実施例4
両親媒性コポリマー(ACP)の合成
4a. AZM/AA/PDMS/DMA含有コポリマーの調製。
1Lのガラス反応釜に、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelestカタログ番号MCR-M11)(PDMS1000−MA)6.0gを加えた。少なくとも4個のすりガラス接合部(1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は真空及び窒素注入口に、1個は200mL均圧添加ロートに、そして1個は試料のアクセスに使用される)を含有する反応釜に、蓋をした。2mbarの真空引きによりPDMS1000−MAを10分間脱気した。約10分後、反応釜に窒素を充填した。この脱気及び窒素充填の手順を6回繰り返した。200mL均圧添加ロートで、実施例2で調製したAZM 3.0g、アクリル酸(AA)6.0g、DMA 14.91g、及びt−アミルアルコール中の1% Irgacure 2959溶液3.00mLをt−アミルアルコール100.3g及びメタノール33.3gに溶解した。添加ロート中のこの溶液に100mbarの真空引きを約10分間行った。約10分後このロートに窒素を充填した。この脱気及び窒素充填の手順を3回繰り返した。PDMS1000−MAと溶液の両方を脱気後、この溶液をPDMS1000−MAを有する釜に加えた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。2個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。次に25kDa透析膜を1−PrOHに対して約35時間(その間1−PrOH(1−プロパノール)の2回の交換を包含する)使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば10%まで希釈した。
【0157】
4b. AZM/AA/バルキーTRIS/DMA含有コポリマーの調製。
この手順は、PDMS1000−MAの代わりにバルキーTRIS(Gelestカタログ番号MCT-M11)6.0gを使用することを除いて、4aと同じである。
【0158】
4c. AZM/AA/POSS−MA/DMA含有コポリマーの調製。
1Lのガラス反応釜に、メタクリルイソブチルPOSS(登録商標)(Hybrid Plasticsカタログ番号MA0702、CAS番号307531-94-8)(以降「POSS−MA」)6.0g、実施例2で調製したAZM 3.0g、アクリル酸(AA)6.0g、DMA 14.91g、t−アミルアルコール中の1% Irgacure 2959溶液3.00mL、t−アミルアルコール100.3g、及びメタノール33.5gを加えた。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。2個のUV電球を45分間点けた。次に25kDa透析膜を1−PrOHに対して約35時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば10%まで希釈した。
【0159】
4d. AZM/AA/TRIS/DMA含有コポリマーの調製。
この手順は、POSS−MA 6.0gの代わりにTRIS 6.0gを使用することを除いて、4cと同じである。
【0160】
4e. AZM/AA/PDMS/DMA含有コポリマーの調製。
1Lのガラス反応釜に、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelestカタログ番号MCR-M11)(PDMS1000−MA)3.0gを加えた。少なくとも4個のすりガラス接合部(1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は真空及び窒素注入口に、1個は200mL均圧添加ロートに、そして1個は試料のアクセスに使用される)を含有する反応釜に、蓋をした。2mbarの真空引きによりPDMS1000−MAを10分間脱気した。約10分後、反応釜に窒素を充填した。この脱気及び窒素充填の手順を6回繰り返した。200mL均圧添加ロートで、実施例2で調製したAZM 3.0g、アクリル酸(AA)12.0g、DMA 11.91g、及びt−アミルアルコール中の1% Irgacure 2959溶液3.00mLをt−アミルアルコール67g及びメタノール67gに溶解した。添加ロート中のこの溶液に175mbarの真空引きを約10分間行った。約10分後このロートに窒素を充填した。この脱気及び窒素充填の手順を3回繰り返した。PDMS1000−MAと溶液の両方を脱気後、この溶液をPDMS1000−MAを有する釜に加えた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。2個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。次に25kDa透析膜を1−PrOHに対して約35時間(その間1−PrOH(1−プロパノール)の2回の交換を包含する)使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば10%まで希釈した。
【0161】
実施例5
リン酸塩/クエン酸塩緩衝濃縮液の調製。
緩衝濃縮液は、0.484重量%のクエン酸ナトリウム二水和物、0.708重量%のリン酸水素二ナトリウム、0.088重量%のリン酸二水素ナトリウム一水和物、及び1.486重量%の塩化ナトリウムをDI水に溶解することにより調製した。必要ならばpHを約7.2に調整した。
【0162】
AZM含有コポリマーを含むIPC生理食塩水の調製。
パッケージ内コーティング溶液(IPC−5A〜IPC−5D)は、2% AZM含有コポリマー溶液(実施例3の3a〜3d)及び上で調製した緩衝濃縮液から調製し、そして下記表に示される組成を有する。IPC−5A〜IPC−5DのpHは、必要ならばpH7.2〜7.4に調整した。
【0163】
【表1】
【0164】
IPC−5Eの調製。
ポリ(AAm−co−AA)(90/10)部分ナトリウム塩(〜90%固形分、ポリ(AAm−co−AA)90/10、Mw200,000)は、Polysciences, Inc.から購入して、受領したまま使用した。ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAE)(Kymene、NMRでの測定で0.46のアゼチジニウム含量)をAshlandから水溶液として購入して、受領したまま使用した。IPC−5Eは、約0.07%w/wのポリ(AAM−co−AA)(90/10)及び約0.15%のPAE(約8.8ミリモルの初期アゼチジニウムのミリモル当量)をリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)(約0.044w/w% NaHPO・HO、約0.388w/w% NaHPO・2HO、約0.79w/w% NaCl)に溶解して、pHを7.2〜7.4に調整することにより調製した。次にIPC−5Eを約60℃で約6時間、熱前処理した(熱前処理)。この熱前処理の間に、ポリ(AAM−co−AA)及びPAEを相互に部分架橋させる(即ち、PAEの全てのアゼチジニウム基を消費しない)ことにより、IPC−5E中の分岐ポリマーネットワーク内にアゼチジニウム基を含有する水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を形成させた。熱前処理後、IPC−5Eを室温に冷却し、次に0.22ミクロンPES膜フィルターを用いて濾過した。
【0165】
実施例6
PAAコーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件、レンズ取り出し、PAAコーティング溶液、PAAコーティング手順など)により調製した。
【0166】
PAAコーティング溶液。
ポリアクリル酸(PAA)コーティング溶液は、一定量のPAA(M.W.:450kDa、Lubrizol製)を所定容量の1−プロパノール(1−PrOH)に溶解して約0.44重量%の濃度にすることにより調製し、そしてギ酸によりpHを約2.0に調整した。
【0167】
PAAコーティングを施したコンタクトレンズは、それぞれ以下のパッケージング生理食塩水の1種0.55mLを含有するポリプロピレンレンズパッケージングシェル/ブリスター(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした:リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)及びIPC−5A〜IPC−5D(実施例5で調製)。次にこのブリスターを箔で密封して、121℃で約30分間オートクレーブ処理した。架橋コーティングは、アゼチジニウム含有コポリマー又はポリマー材料を含有するパッケージング生理食塩水に浸漬したレンズ上にオートクレーブ処理中に形成させた。オートクレーブ処理後に得られたレンズを特性決定して、結果は下記表に報告した。
【0168】
【表2】
【0169】
実施例7
レンズの調製。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件など)によるキャスト成形により調製した。
【0170】
PMAAコーティング溶液。
ポリメタクリル酸(PMAA)溶液は、PMAA(Mn〜418K)及びギ酸を所定容量の水/1−プロパノール混合物に溶解することにより調製し、そして次に水及び1−プロパノールで希釈することにより、以下の組成を有するPMAAコーティング溶液を形成した:
1. 40×PMAA:PMAA(0.011%w/w);1−プロパノール(86.19%w/w);水(9.63%w/w);及びギ酸(3.74%w/w)。
2. FS PMAA:PMAA(0.44%w/w);1−プロパノール(86.63%w/w);水(9.63%w/w);及びギ酸(3.74%w/w)。
【0171】
PMAAコーティングレンズ。
上記のように得られたキャスト成形コンタクトレンズを取り出して、以下の一連の浴に浸漬することによりコーティングした:約56秒間、DI水浴;それぞれ約22、78、226秒間、3種のメチルエチルケトン(MEK)浴;約56秒間、1種のDI水浴;約100秒間、1種のPMAAコーティング溶液(上で調製)の浴;約56秒間、1種の水/1−プロパノール(50%/50%)混合物の浴;約56秒間、1種の水浴;約56秒間、1種のリン酸塩緩衝生理食塩水の浴;及び約56秒間、1種のDI水浴。
【0172】
架橋コーティングの適用。
PMAAコーティングを施したコンタクトレンズを、それぞれ以下のパッケージング生理食塩水の1種0.55mLを含有するポリプロピレンレンズパッケージングシェル/ブリスター(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした:PBS(対照として)、IPC−5A(実施例5で調製)、及びIPC−5B(実施例5で調製)。次にブリスターを箔で密封して、約121℃で約30分間オートクレーブ処理した。架橋コーティングは、アゼチジニウム含有コポリマー又はポリマー材料を含有するパッケージング生理食塩水に浸漬したレンズ上にオートクレーブ処理中に形成させた。
【0173】
SiHyレンズの特性評価。
オートクレーブ処理後に得られたレンズを特性評価して、結果は下記表に報告した。
【0174】
【表3】
【0175】
実施例8
本実施例は、AZM(実施例2で調製された)及びアクリル酸を使用することにより、IPCコポリマーと反応するように設計された架橋しうる一次コーティングを提供する、両親媒性コポリマー(ACP)の調製を説明する。
【0176】
このようなコポリマーの構造は、以下に示される。
【0177】
【化15】
【0178】
コポリマー中でAZMは求電子性であり、そしてアクリル酸は求核性である。両方とも、パッケージ内架橋コーティングをシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに適用するための、生理食塩水に加えた架橋しうるコポリマーと反応することができる。このコポリマーはまた、ポリジメチルシロキサンセグメント(PDMS)を組み込むことにより、このコポリマーを疎水性レンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)の表面に付着させる疎水性相互作用を提供する。DMAを使用することにより、親水性及び高分子量コポリマーを提供する。このコポリマーは、ポリアクリル酸(PAA)又はポリメタクリル酸(PMAA)ホモポリマーに比較して、はるかに低いアクリル酸含量(濃度)を有する。
【0179】
本発明のコポリマーを調製するための反応混合物中に使用されるモノマーの重量パーセントの好ましい範囲は、以下の表1にリストされる。このコポリマーは、コポリマー4aを調製するための実施例4に記載された手順と同様に調製した。
【0180】
【表4】
【0181】
レンズの調製。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件など)によるキャスト成形により調製した。
【0182】
ACPコーティング溶液の調製。
両親媒性コポリマー溶液(以降ACPコーティング溶液I〜IV)はそれぞれ、実施例4で調製したACPコポリマー4a〜4e(約10%溶液)の1種を1−プロパノール(85%)及び水(15%)の混合物に溶解することにより調製した。このACP濃度は、約1重量%である。
【0183】
ACPコーティングレンズ。
上記のキャスト成形コンタクトレンズを取り出して、以下の一連の浴に浸漬することによりACPでコーティングした:約56秒間、1種のDI水浴;それぞれ約22、78、224秒間、3種のMEK浴;約56秒間、1種のDI水浴;約180秒間、1種の1−プロパノール/水(85%/15%)の混合物中のACPコーティング溶液(約1重量%)の浴;約180秒間、1種の水/1−プロパノール(58%/42%)混合物の浴;約180秒間、1種の水/1−プロパノール(72%/28%)混合物の浴;及び約180秒間、1種のDI水浴。ACP−Iコーティングレンズは、ACPコーティング溶液I(ACPコポリマー4aを含有する)を用いて得た;ACP−IIコーティングレンズは、ACPコーティング溶液II(ACPコポリマー4bを含有する)を用いて得た;ACP−IIIコーティングレンズは、ACPコーティング溶液II(ACPコポリマー4cを含有する)を用いて得た;ACP−IVコーティングレンズは、ACPコーティング溶液IV(ACPコポリマー4dを含有する)を用いて得た。対照Aレンズは、浴6がACPを含まず、溶媒混合物のみを含有することを除いて、上記手順により得た。
【0184】
架橋コーティングの適用。
上で調製したACPコーティングコンタクトレンズは、それぞれ以下のパッケージング生理食塩水の1種0.55mLを含有するポリプロピレンレンズパッケージングシェル/ブリスター(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした:PBS(対照として)及びIPC−5E(実施例5で調製)。対照Aレンズは、それぞれPBS 0.55mLを含有するポリプロピレンレンズパッケージングシェル/ブリスター(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした。対照Bレンズは、それぞれPBS 0.55mLを含有するポリプロピレンレンズパッケージングシェル/ブリスター(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした、ACPコーティングレンズである。次にこのブリスターを箔で密封して、約121℃で30分間オートクレーブ処理した。架橋コーティングは、アゼチジニウム含有コポリマー又はポリマー材料を含有するパッケージング生理食塩水に浸漬したレンズ上にオートクレーブ処理中に形成させた。
【0185】
SiHyレンズの特性評価。
オートクレーブ処理後に得られたレンズを特性評価して、結果は下記表に報告した。
【0186】
【表5】
【0187】
実施例9
レンズの調製。
PAAコーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件、レンズ取り出し、PAAコーティング溶液、PAAコーティング手順など)により調製した。
【0188】
AZM/APMA/DMA含有コポリマーの調製。
500mLガラス反応釜で、アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)1.0g、実施例2で調製したAZM 2.5g、N,N’−ジメチルアクリルアミド(DMA)6.47g、及びIrgacure 2959溶液(水中1%)3.00mLを33.75mMクエン酸塩緩衝液(pH4)187.0gに溶解した。少なくとも4個のすりガラス接合部を含有する反応釜に、蓋をした。1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。4個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。約1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次に約40mL/分の水流量を用いて50kDa透析膜を水に対して24時間使用して、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば2%まで希釈した。
【0189】
AZM/APMA/DMAコポリマーを用いるIPC生理食塩水の調製。
IPC 9Aは、上で調製したAZM/APMA/DMAコポリマーの0.5%w/w溶液を作ることにより調製した。2%コポリマー溶液は、実施例5のPBS濃縮液(50%w/w)及び水(25%w/w)により希釈して、0.5w/w%の最終濃度を得た。ポリ(AAm−co−AA)(90/10)部分ナトリウム塩(〜90%固形分、ポリ(AAm−co−AA)90/10、Mw200,000)は、Polysciences, Inc.から購入して、受領したまま使用した。IPC 9Bは、約0.1%w/wのポリ(AAm−co−AA)(90/10)及び約0.5%w/wのAZM/APMA/DMAコポリマーを溶解することにより調製した。IPC 9Cは、約0.3%w/wのポリ(AAm−co−AA)(90/10)及び約0.5%w/wのAZM/APMA/DMAコポリマーを溶解することにより調製した。IPC 9B及び9Cの両方とも、約0.044w/w% NaHPO・HO、約0.388w/w% NaHPO・2HO及び約0.79w/w% NaClを加えることにより、pH7.2〜7.4に調整した。次に、IPC 9B及び9Cを70℃で10時間予熱した。この熱前処理の間、ポリ(AAm−co−AA)及びAZMコポリマーを相互に部分的に反応させる(即ち、コポリマーの全てのアゼチジニウム基を消費しない)ことにより、IPC 9B及び9Cの分岐ポリマーネットワーク内にアゼチジニウム基を含有する水溶性の熱架橋しうる親水性ポリマー材料を形成した。熱前処理後、0.22ミクロンPES膜フィルターを用いて、IPCを濾過した。
【0190】
架橋コーティングの適用。
PAAコーティングレンズは、IPC 9A、9B又は9Cのいずれか0.65mlを含有するポリプロピレンシェル(1シェルに1個のレンズ)にパッケージングした。ブリスターを密封して、121℃で45分間オートクレーブ処理した。
【0191】
レンズの特性評価。
試験はコーティング生理食塩水の効力を求めるためにレンズで行った。分かるとおり、AZM/APMA/DMAのコポリマー自体は、レンズ上の良好な潤滑性を提供できないが、ポリ(AAm−co−AA)の添加は、潤滑性を大いに向上させた。
【0192】
【表6】
【0193】
実施例10
レンズの調製。
PAAコーティングを施したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件、レンズ取り出し、PAAコーティング溶液、PAAコーティング手順など)により調製した。
【0194】
メタクリル酸、アクリル酸、及びAZMのコポリマーの調製。
500mLガラス反応釜で、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、25%無水クエン酸ナトリウム水溶液158g、実施例2で調製したAZM、及びIrgacure 2959溶液(水中1%)2.65mLを加えた。5N NaOHを用いてpHを5.5に調整した。水を265gまで加えた。少なくとも4個のすりガラス接合部を含有する反応釜に、蓋をした。1個はガラス撹拌シャフトに使用され、1個は熱電対に、1個は窒素注入口に、そして1個は試料のアクセスに使用される。この溶液に20分間約200mL/分で窒素を注入した。窒素流量は、約150mL/分に減少させた。撹拌速度は150rpmにセットした。この反応釜は、RPR-3500 UV電球を持つRayonet UV反応器に入れた。2個のUV電球を約2.0mW/cmの強度で約1時間点けた。約1時間後、定性的濾紙により溶液を真空濾過した。次にこの溶液の導電率が10uS/cm未満に達するまで、10kDa膜を使用する限外濾過により、コポリマー溶液を精製した。固形分を求めて、必要ならば0.8%まで希釈した。下記表に与えられる比で種々のコポリマーを調製した。
【0195】
【表7】
【0196】
実施例11
レンズの調製。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、米国特許出願公開番号2012/0026458 A1(その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)の実施例19に記載された手順(レンズ配合物、成形用型、キャスト成形条件など)によるキャスト成形によって調製した。
【0197】
PMAAコポリマーコーティング溶液。
ポリメタクリル酸(PMAA)コポリマーコーティング溶液は、実施例10で調製したPMAAコポリマーから、以下の組成を有するように調製した:実施例10で調製したPMAA 10A〜10Eの1種である、PMAAコポリマー(0.011%w/w);1−プロパノール(86.63%w/w);水(9.63%w/w);及びギ酸(3.74%w/w)。
【0198】
PMAAコポリマーコーティングレンズ。
上記のとおり得られたキャスト成形コンタクトレンズを取り出し、以下の一連の浴に浸漬することによりコーティングした:約56秒間、DI水浴;それぞれ約22、78、226秒間、3種のメチルエチルケトン(MEK)浴;約56秒間、1種のDI水浴;約100秒間、1種のPMAAコポリマーコーティング溶液(上で調製)の浴;約56秒間、1種の水/1−プロパノール(50%/50%)混合物の浴;約56秒間、1種の水浴;約56秒間、1種のリン酸塩緩衝生理食塩水の浴;及び約56秒間、1種のDI水浴。レンズは、実施例1に記載されるTBO分析により酸基含量について直ちに試験した。データは以下に示される。
【0199】
【表8】
【0200】
実施例12
メタクリル酸13.0g及びメルカプトエタノール1.2mgを水243.0gに溶解して、水酸化ナトリウム水溶液(33%)を加えることによりpHを3.0に調整した。この溶液を丸底フラスコ中で撹拌下、窒素で穏やかに1時間パージした。脱気後、この溶液を90℃に加熱した。別に2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA-086、Wako)3.6mgを水5mLに溶解して、窒素で1時間パージし、シリンジに充填して、合成溶液に加えることにより、重合を開始させた。合成は、90℃で撹拌下20時間行った。重合後、硫酸を加えることにより合成溶液のpHをpH=3に調整し、10kDaセルロース膜での水性の限外濾過(12×溶媒交換)によりPMAAを精製した。最後に凍結乾燥によりPMAAを乾燥させた。
【0201】
実施例13
メタクリル酸15.0g及びメルカプトエタノール3.4mgを水285.0gに溶解して、水酸化ナトリウム水溶液(33%)を加えることによりpHを3.5に調整した。この溶液を丸底フラスコ中で撹拌下、窒素で穏やかに1時間パージした。脱気後、この溶液を50℃に加熱した。別に2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA-061、Wako)9.1mgを水5mLに溶解して、窒素で1時間穏やかにパージし、シリンジに充填して、合成溶液に加えることにより、重合を開始させた。合成は、50℃で撹拌下20時間行った。重合後、硫酸を加えることにより合成溶液のpHをpH=3に調整し、10kDaセルロース膜での水性の限外濾過(12×溶媒交換)によりPMAAを精製した。最後に凍結乾燥によりPMAAを乾燥させた。
【0202】
実施例14
種々のレンズ(Bausch & Lomb製のPurevision(登録商標);Johnson & Johnson製のACUVUE(登録商標)2(登録商標);実施例7で調製したFS PMAA/IPC−5Aコーティングを施したSiHyレンズ;実施例7で調製した40×PMAA/IPC−5Aコーティングを施したSiHyレンズ;実施例8に記載された手順により、そして実施例4で調製したACP−4eを下塗りコーティングとして使用し、かつ架橋コーティングを形成するのに実施例5で調製したIPC生理食塩水IPC−5Aを使用することにより調製した、ACP−4e/IPC−5Aコーティングを施したSiHyレンズ)をポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)取り込み及び放出について実施例1に記載された手順により試験した。試験の結果は図1に示される。PHMB取り込みは、ACP下塗りコーティングを有するレンズが最少であった。
図1