特許第6469199号(P6469199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6469199-熱容量管理 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469199
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】熱容量管理
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20190204BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G06F1/20 D
   F24F3/044
   G06F1/20 B
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-205075(P2017-205075)
(22)【出願日】2017年10月24日
(62)【分割の表示】特願2016-540323(P2016-540323)の分割
【原出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2018-22525(P2018-22525A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/873,632
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/474,496
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507202736
【氏名又は名称】パンドウィット・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マハムド・アイ・イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】サウラブ・ケー・シュリヴァスタヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・イー・ウィルコックス
【審査官】 征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−193247(JP,A)
【文献】 特開2009−174851(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0096721(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0128455(US,A1)
【文献】 特開2012−038250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/20
F24F11/00−11/89
G05D23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データセンター熱容量管理のための方法であって、
データセンター内の複数の筐体から筐体情報を収集するステップであって、前記筐体情報は少なくとも前記複数の筐体の各々についての入口温度及び最大許容筐体温度を含む、ステップと、
前記データセンターのための残余の冷却能力を導出するステップと、
前記複数の筐体中の各筐体について、少なくとも前記筐体について前記収集された筐体情報を使用して、θ値を計算するステップであって、前記θ値は、前記最大許容筐体温度に対する、各筐体の前記入口温度と給気温度との温度勾配として記述される、ステップと、
前記複数の筐体についての前記入口温度のすべてがそれらのそれぞれの最大許容筐体温度を下回ると判定し、応答して、前記計算されたθ値の各々がユーザ定義のθ値を下回るか、θ値であるか、それを上回るかを判定するステップと、
もし前記計算されたθ値のいずれか1つが前記ユーザ定義のθ値であるか、それを上回るのであればアラームを提供するステップと、
もし前記計算されたθ値のすべてが前記ユーザ定義のθ値を下回るのであれば前記複数の筐体に亘って前記導出された残余の冷却能力を分配するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記複数の筐体に亘って前記導出された残余の冷却能力を分配するステップは、
前記複数の筐体に亘って均等に前記導出された残余の冷却能力を分配するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複数の筐体についての総電力使用量を収集するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記複数の筐体についての前記総電力使用量を収集するステップは、
前記複数の筐体中の各筐体から、総電力使用量の読み取りを収集するステップと、
前記複数の筐体中の各筐体についての前記収集された総電力使用量の読み取りの各々を加算して、前記複数の筐体についての前記総電力使用量を取得するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
筐体から、前記総電力使用量の読み取りを収集するステップは、
前記筐体に設置された電力出力ユニットから前記総電力使用量の読み取りを収集するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記データセンターについての総冷却能力を計算するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記データセンターについての前記総冷却能力を計算するステップは、
前記データセンター内の冷却装置の定格容量を取得するステップと、
前記データセンター内の前記冷却装置の前記取得された定格容量を加算して、前記データセンターについての前記総冷却能力を取得するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記データセンターのための前記残余の冷却能力を導出するステップは、
前記データセンターについての前記計算された総冷却能力から、前記複数の筐体についての前記総電力使用量を減算するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
データセンター熱容量管理のための方法であって、
データセンター内の複数の筐体中の各筐体についての入口温度及び最大許容筐体温度を収集するステップと、
前記複数の筐体中の各筐体について、少なくとも前記収集された前記筐体についての入口温度及び最大許容筐体温度を使用して、θ値を計算するステップであって、前記θ値は、前記最大許容筐体温度に対する、各筐体の前記入口温度と給気温度との温度勾配として記述される、ステップと、
前記計算されたθ値のいずれかが1以上であるかどうか判定するステップと、
もし前記計算されたθ値のいずれかが1以上であれば、
潜在的な過熱の危険性の第一のアラームをユーザに提供し、
前記過熱の危険性を修正するための提案を前記ユーザに提供するステップと、
もし前記計算されたθ値のいずれもが1以上でなければ、前記計算されたθ値のいずれかがユーザ定義のθ値以上であるかどうか判定するステップと、
もし前記計算されたθ値のいずれか1つが前記ユーザ定義のθ値以上であれば、前記ユーザ定義のθ値を調整するための第二のアラームを前記ユーザに提供するステップと、
もし前記計算されたθ値のいずれもが前記ユーザ定義のθ値以上でなければ、前記複数の筐体に亘って任意の残余の冷却能力を分配するステップとを含む方法。
【請求項10】
データセンター内の複数の筐体中の筐体についての入口温度を収集するステップは、
前記筐体に設置された複数の温度センサから温度を記録するステップと、
前記記録された温度から、最大記録温度を、前記筐体についての前記入口温度として選択するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
データセンター内の複数の筐体中の筐体についての入口温度を収集するステップは、
前記筐体に設置された複数の温度センサから温度を記録するステップと、
前記記録された温度を平均して、前記筐体についての前記入口温度を取得するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2013年9月4日に出願された米国仮特許出願第61/873632号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、概してデータセンター内の熱容量管理の分野に係り、より具体的には、データセンタのパーツに関連した温度情報に基づいてフィードバックを提供する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
データセンターは、多くの場合、その稼働の初日で使用される容量の通常は2倍以上の予想容量で設計されている。その結果、時間の経過とともに、データセンター内の機器は、運用上のニーズによって必要なものとして更新され、置換され、そして追加される。データセンターの寿命の間に起こる変化を考えると、どの場所が新しい機器のために安全と見倣すことができるかを認識することが重要である。安全係数は、筐体内で使用可能なラックユニット(RU)スペース、筐体の重量制限、及び電源の可用性のみならず、さらに重要なことには、与えられた筐体で得られる冷却(熱)容量によっても決まる。
【0004】
熱容量管理に向けた様々なシステムが開発されてきた。しかし、データセンターの熱容量を評価する新しい方法は、データセンター管理者によって引き続き必要とされており、どのようにして電子機器がこの容量に影響を与えるのかを考えると、この分野に関連して新しく改良されたシステムと方法の必要性が生じてくる。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、概して熱と電力の変数に基づいてフィードバック情報を提供するためのシステム及び方法を対象としている。
【0006】
実施形態において、本発明は、特定のデータセンター内のリアルタイムな設備利用度を提供するために、温度測定及び電力計の読み取りを用いるステップを含む方法である。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、データセンター内またはデータセンタのサブセット内で冷却能力を管理するためのシステムであり、システムは少なくとも1つのプロセッサ、そして少なくとも1つのプロセッサに接続されたコンピュータ可読媒体を備える。コンピュータ可読媒体は、複数の筐体から情報を収集するための命令を含み、情報は、入口温度、最大許容筐体温度、及び給気温度を含み、収集された温度は複数の筐体それぞれについてシータ値を計算するために使用される。さらに、コンピュータ可読媒体は、複数の筐体入口温度のいずれかが、それぞれの最大許容筐体温度以下であるか、最大許容筐体温度であるか、最大許容筐体温度以上であるかのうちの少なくとも1つであることを計算されたシータ値のいずれかが示しているかどうかを判定するための命令を含む。コンピュータ可読媒体はさらに、計算されたシータ値のいずれかに基づいて、遂行される冷却能力管理がユーザの信頼レベルを満たすかどうかを判定し、もし信頼レベルが満たされていれば複数の筐体に残余の冷却能力を分配する命令を含む。
【0008】
さらに別の実施形態においては、本発明は、データセンター内の冷却能力を管理するための方法をコンピュータに実行させるために、これに記憶された命令のシーケンスを含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体である。この方法には、複数の筐体それぞれから筐体情報を収集することが含まれ、前記筐体情報には入口温度、最大許容筐体温度、及び給気温度が含まれる。この方法にはまた、複数の筐体の積算電力量を収集することが含まれる。この方法にはまた、複数の筐体の総冷却能力を収集することが含まれる。この方法にはまた、複数の筐体に残余の冷却能力を導出することが含まれる。この方法にはまた、複数の筐体それぞれについてθ値を算出することが含まれ、算出されたθ値のそれぞれは、それぞれ収集された筐体の情報から少なくとも部分的に計算されることが含まれる。そして、この方法にはまた、計算されたθ値のそれぞれに対して、複数の筐体入口温度のいずれか1つが、それぞれの最大許容筐体温度以下であるか、最大許容筐体温度であるか、そして最大許容筐体温度以上であるかのうちの少なくとも1つであることを示しているかどうかを判定し、もし前記入口温度のいずれか1つが、それぞれの最大許容筐体温度であるか温度以上の少なくとも1つであれば第一のアラームを発し、前記入口温度のすべてがそれぞれの最大許容筐体温度以下であれば、計算されたθ値の各々がユーザ定義のθ値以下であるか、θ値であるか、それ以上の少なくとも1つであるかを判定し、もし計算されたθ値のいずれか1つがユーザ定義のθ値であるか、それ以上の少なくとも1つであれば第一のアラームを発し、そして、もし計算されたθ値のすべてがユーザ定義のθ値以下であれば複数の筐体すべてに亘って残余の冷却能力を分配することが含まれる。
【0009】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、以下の図面、説明、そして後に続く特許請求の範囲を参照することでより良く理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のフローチャート代表図を示す。
図2】信頼率とシータ値との相関関係を示す。
図3】本発明の実行済みの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず図1図を参照して説明するが、この図は本発明の一実施形態において実行されるステップを示すフローチャートを解説している。最初のステップ100では、筐体の入口温度Tmax,iがデータセンタ内で使用可能な筐体から得られる。これは、筐体内に設置された温度センサを監視することによって達成することができる。1つのセンサのみが設置されているような場合には唯一の温度読み取りが得らる一方で、筐体内に複数のセンサが設置されている場合には、Tmax,i値のために最大限記録された温度を使用することが好ましい。代替的には、平均値を考慮してもよい。
【0012】
次のステップ105において、消費電力値Pが使用可能な筐体から得られる。必要なリアルタイム電力の読み取りを得るための1つの方法は、典型的にはデータセンター筐体に設置された電源出力ユニット(POU)から電力使用情報を収集することである。各POUは、それぞれの筐体のために総電力使用量の読み取りを提供する。データセンター内またはデータセンターのサブセットには、各データセンター内またはそのデータセンターのサブセットに存在する筐体それぞれから使用可能なPOUの読み取りを加えることによって、総電力消費量値ΣPが提供される。
【0013】
次のステップ110では、データセンターまたはデータセンターのサブセットの総冷却能力が算出される。これは、データセンター内に設置された冷却装置の定格容量など、メーカーが提供するデータを用いて行うことができる。このデータを使用することによって、データセンター内またはデータセンターのサブセット内の冷却装置の定格容量は一緒に加算され、冷却装置における現在の指定された設定値で利用可能なすべての残余冷却能力を得るために用いられる。
【0014】
総電力使用量を入手することで、ステップ115において残余の冷却能力を判定することが可能となる。これを行うためにはステップ105で算出した総電力使用量ΣPが、ステップ110で算出した総冷却能力から減算される。結果としてPcool値が得られる。
【0015】
次に、無次元パラメーターシータ(θ)を算出する必要がある。このパラメータは、少なくとも1つの筐体のために、好ましくはデータセンター内またはデータセンターのサブセット内のすべての筐体ために計算される。すべての筐体のために、シータは、最大の入口筐体温度Tmax,i、最大許容温度TAllowable、及び冷却装置によって供給されている給気温度TSATを用いて計算されるが、ここでθは次式を用いて導出される。
【0016】
【数1】
【0017】
最大許容温度TAllowableは、メーカーの仕様書から取得することができ、或いはユーザが適当と認める任意の値にこの値を設定することも可能である。冷却装置によって供給されている空気の給気温度TSATは、冷却空気を供給する装置またはその近傍で、或いは供給さている空気の温度の正確な表示を提供すると看做される筐体の前に位置する任意な箇所で前記温度を測定することにより求めることができる。
【0018】
シータは、最大許容温度TAllowableに対して、各筐体の入口温度Tmax,iと給気温度との温度勾配として記述することができる。ゼロのシータ値は、筐体の入口温度が給気温度(無勾配)であることを示している。そして1のシータ値は、筐体の入口温度が許容温度であることを示し、1を超える値は、筐体の入口温度が許容温度以上であることを示している。
【0019】
ステップ125で示すように、計算されたシータ値は次の手順を決定するために使用される。いずれかの筐体の入口温度が設定された許容温度以上である場合(1に等しいか1以上のシータ値によって明示される)、システムは、入口温度が許容温度以下のところへ転換される許容温度よりも入口温度の放出が高くなるまで、筐体のいずれかで使用可能な追加の冷却能力は無いと判断する。過熱の潜在的な危険性をユーザに通知するため、ステップ130で示すようにアラーム信号が送られる。これには任意の数の適切な方法で行うことができ、電子的、視覚的、聴覚的、または任意の他の適切な伝達方法が含まれ得る。一実施形態では、メッセージが特定の色で強調される疑わしいいずれかの筐体を抱えているデータセンターのマップのような表示を提供してデータセンターを管理するために使用されるデータセンタ管理ソフトウェア内で、ユーザはメッセージを受信する。この実施形態の変形例では、シータ≧1を有する任意の筐体が赤色表示され、1>シータ>0を有する任意の筐体が黄色表示され、そしてシータ=0を有する任意の筐体が緑色に表示されるように、すべての筐体は強調表示することができる。ユーザがアラームを受信した時点で、ユーザは問題を解決するために必要な措置を採ることができる。ステップ135に示すように、本発明は、アラームの原因となる問題を修正するための潜在的な処し方をユーザに提供し得る。これにはブランキングパネルを点検するように提案すること、穿孔タイルの追加、及び/または冷却ユニットの設定値を変更することが含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0020】
すべての筐体の入口温度が許容温度以下である場合(すべての計算されたシータ値が1以下のまま維持されていることによって裏付けられる)、本発明は、既定義のθuser値に対して計算されたシータ値を比較する。θuser値は特定のユーザの信頼比率に相当し、これら2つの値間での定義済み相関は、実際のデータセンターの典型である複数の計算流体力学(CFD)モデルを介して導出される(本明細書で後述するように)。図2のプロットは、様々なシータ値で使用される冷却能力の管理方法における信頼値を示している。例えば、ユーザが指定したシータ(θuser)が0.3またはそれ以下である場合、図1のフローチャートで示される冷却能力管理方法は、IT機器のために安全な熱環境を維持しつつ、四六時中稼働させる可能性がある。しかし、θuserが0.6である場合には、図1のフローチャートで示される冷却能力管理方法は、70%の確率で動作する可能性がある。ここで留意すべきは、もし一定の信頼レベルが選択されているときは、そのようなレベルは選択した信頼レベルに依然として対応するθuserの可能な限り最高な値に相関していることである。従って、例えば100%の信頼レベルが選択された場合、本発明の実施するに当たって使用されるθuser値は0.1の代わりに0.3となるであろう。
【0021】
このように、ステップ140では、データセンター内における一連の筐体、或いはすべての筐体のために計算されたシータ値が既定義のθuser値以下に収まると判断された場合、本発明は、ステップ145で前記筐体のすべてに亘り残余の冷却能力Pcoolを配分し、実行された配分が成功裏に稼働するであろう信頼度の割合をユーザに提供する。しかし、計算されたシータ値のいずれかがθuser値に等しいか大きい場合には、本発明は、ステップ150でアラームを出力する(ステップ130と同様に)。このアラームは、本発明による冷却能力管理が十分な信頼率を達成できないであろうことをユーザに知らせることができる。
【0022】
既定義のθuser値は所望の信頼レベルを選択することでユーザにより設定可能であることを特筆するが、ここでは選択された信頼レベルに基づいて、本発明が適切なθuser値を決定する。このようにして、ユーザが適切な信頼率〜85%を下回らないと判断したならば、本発明はその割合を0.4のθuser値に変換し、ステップ140でその値を使用する。
【0023】
前述したように、θuser値と信頼レベルとの相関関係は、実際のデータセンターの典型である複数の計算流体力学(CFD)モデルを経て発展される。CFDモデルは、給気温度、筐体の電源、及びIT機器の様々なタイプのような種々の条件、多数の基本変数を変化させるために実行される。それぞれの筐体について、CFDモデルは種々の空気比(AR)で起動される。実施形態では、これらの範囲は0.8ARから2ARである。空気比は、冷却ユニットにより供給される気流とIT機器に必要な総空気流との間の比として定義される。
【0024】
各CFDを実行するために、筐体の最大入口温度が監視されている。筐体の最大入口温度が所定の許容温度を超えた場合、熱容量は管理されない。すべての筐体入口温度が許容温度以下である場合には、利用可能な冷却能力をすべての筐体中に均等に分配することによって、冷却能力は管理されている。次に、モデルは様々なARのために新しく管理された冷却能力を使用して再び実行される。シータは、安全な筐体の入口温度を提供した最小ARで実行される基底線を求め筐体ごとに計算される。最大シータ値は、本発明のパーセント信頼度のために使用される。
【0025】
この作業は、残りのCFDモデルのために様々な筐体で繰り返し行われる。最大シータ値は、本発明の全体的なパーセント信頼レベルを提供するために収集される。パーセント信頼レベルは、ユーザがデータセンター内で与えられた一連のシータ値に対して、筐体間でのキャパシティ管理をするために使用される手法に関連した信頼バロメーターをユーザに提供する処し方である。
【0026】
本発明によるシステムをいかに使用することができるかの実施例が図3に示されている。この図は、2つのデータセンターのレイアウトを示しており(一方が現在のレイアウトであり、一方は予想されるレイアウトである)、ユーザが特定の信頼度レベルを選択することができるユーザ入力インターフェースを提供している。ここで説明している実施形態では、信頼度レベルの選択はスライダによって行われるが、スライダは「オプティミスティック」から「コンサーバティブ」までの範囲で変動し、「コンサーバティブ」は最も信頼度が高く、「オプティミスティック」は最も信頼度が低いことを表す。しかし、少なくとも他の要因1つに基づいて、マニュアルでの番号入力または自動入力することも含まれ、任意の数の手法で入力してもよいが、これらに限られているものでもない。必要な温度値を有すると、システムは最大シータ値が0.05になるように算出する。この値が1未満であるならば、本発明はアラームをトリガすることなく次のステップに進むことになる。次に、0.05のシータ値は、選択された信頼度パーセンテージに由来するθuser値と比較される。説明した実施形態では、選択された信頼度割合のパーセンテージは〜100%であり、これは0.3のθuser値に変換される。最大シータがθuser値以上またはθuser値に等しいので、システムは再びアラームをトリガすることなく、対象としているすべての筐体全体に亘って均等に残余の冷却能力を配分する。この場合、残りの冷却能力が均等に分配され、各筐体は、冷却能力の追加5.73キロワットを受け取ることになる。別の実施形態では、代替の配分方式を実装することも可能である。
【0027】
ここで留意すべきは、「データセンター」なる記載は、それがデータセンターのサブセットのみに言及することが可能であるため、データセンター全体にのみ言及するものとして解釈されるべきではないことである。従って、本出願及び特許請求の範囲全体を通して、「データセンター」への言及は、データセンター全体及び/またはデータセンターのサブセットを指すものとして理解することができる。
【0028】
本発明の実施形態は、少なくとも1つのコンピュータを用いて実行することができる。上述の動作の少なくともいくつかは、これらの動作がコンピュータによって実行され得るように、コンピュータ可読命令でコード化されてもよい。コンピュータは、固定デバイス(例えば、サーバ)、またはポータブルデバイス(例えば、ラップトップ)であってもよい。コンピュータは、プロセッサ、メモリ、及び1つ以上のドライブまたはストレージデバイスを備えている。ストレージデバイス及びそれに関連するコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、及びコンピュータの他の非一時的な情報の格納を提供する。ストレージデバイスには、RAM、ROM、EEPROM、EPROMまたはフラッシュメモリデバイスの他のタイプを含むメモリチップストレージ、ハードまたはフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープなどの磁気記憶デバイス、CD−ROMディスク、BD−ROMディスク、及びブルーレイ(登録商標)ディスクなどの光記憶デバイス、並びにホログラフィック記憶デバイスのような非一時的データ、情報、または命令を記憶することが可能な任意のデバイスが含まれる。
【0029】
コンピュータは、遠隔コンピュータなど1つまたは複数のリモートコンピュータへの論理接続を使用するネットワーク環境で動作することができる。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイスまたは他の共通ネットワークノードとすることができ、コンピュータに関連して上述した要素のすべてとまではいかなくとも、多くのものを備えていてもよい。ネットワーキング環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、及びインターネットにおいて当たり前のものである。例えば、本出願の主題において、コンピュータは、データを退避させているソースマシンを含むことができ、リモートコンピュータは、デスティネーションマシンを含むことができる。しかし、ここで留意すべきは、ソース及びデスティネーションマシンがネットワークまたは他の任意の手段によって接続される必要はなく、その代わりに、ソースプラットフォームによって書き込まれ、デスティネーションプラットフォームまたはプラットフォームによって読み取ることができる任意の媒体を介してデータを移行することができることである。LANまたはWLANネットワーキング環境で使用される場合、コンピュータは、ネットワークインターフェースまたはアダプタを介してLANに接続される。WANネットワーキング環境で使用される場合、コンピュータは、一般的にインターネットなどの環境へWANを介して通信を確立するためのネットワーク・インターフェース・カードまたは他の手段を備えている。コンピュータ間の通信リンクを確立する他の手段も使用できることが理解されよう。
【0030】
当業者であれば、ハードウェアとシステムにおけるアスペクトのソフトウェア実装の間には殆ど差違が残されていないと言って良いほどに、最新鋭の技術は進行したことを認識するであろうし、ハードウェアまたはソフトウェアの使用は、一般に(常にではないが、特定の状況においてハードウェアとソフトウェアの間の選択が重要になり得る)、費用対効果の兼ね合いを象徴する設計上の選択である。当業者は、本明細書に記載のプロセス及び/またはシステム及び/または他の技術(例えば、ハードウェア、ソフトウェア、及び/またはファームウェア)を遂行することが可能な各種の媒介物が存在し、好ましい媒介物は、プロセス及び/またはシステム及び/または他の技術が展開される状況とともに異なるものになることを理解するはずである。例えば、速度と精度が最も重要であると実装者が判断した場合、実装者は主にハードウェア及び/またはファームウェアの媒介物を選ぶことができ、或いは柔軟性が最重要であると判断した場合、実施者は主にソフトウェア実装を選択することができ、或いは更なる選択肢として、実施者はハードウェア、ソフトウェア、及び/またはファームウェアのある組み合わせを選ぶことができる。従って、本明細書に記載のプロセス及び/またはデバイス及び/または他の技術を遂行し得る幾つかの可能な媒介物が存在し、それらのいずれも、使用されるべき任意の媒介物が配備される状況に応じた選択であるという点において、他のものに対して本質的に優れているわけではなく、実装の具体的な懸念(例えば、スピード、柔軟性、または予測可能性に関する)は、そのいずれもが変わり得る。当業者は、実装の光学的態様には、一般的には光配向ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアを使用するであろうことを認識するはずである。
【0031】
本発明を幾つかの実施形態の観点から説明してきたが、これらの実施形態は非限定的であり(それらが例示的または非例示的と分類されたかどうかに関係なく)、そして本発明の範囲内に収まる変更、置換、及び均等物が存在することを特筆する。さらに、記載した実施形態は相互に排他的なものとして解釈されるべきではなく、代わりに、そのような組み合わせが許容されるならば、潜在的な組合せとして理解されるべきである。また、本発明の方法及び装置を実施する多くの代替方法があることに留意すべきである。従って、特許請求の範囲は、このようなすべての変更、置換、及び均等物が本発明の真の精神及び範囲内に入るものを含むと解釈されるべきであると意図している。
図1
図2
図3