特許第6469243号(P6469243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469243その場形成可能な流体チャネルを備えた携帯型電気エネルギー蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469243
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】その場形成可能な流体チャネルを備えた携帯型電気エネルギー蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20190204BHJP
   H01M 10/6235 20140101ALI20190204BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20190204BHJP
   H01M 10/659 20140101ALI20190204BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190204BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20190204BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20190204BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/6235
   H01M10/625
   H01M10/659
   H01M2/10 E
   H01G11/18
   H01G11/10
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-544729(P2017-544729)
(86)(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公表番号】特表2018-512700(P2018-512700A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】US2016019910
(87)【国際公開番号】WO2016138463
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】62/126,223
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】104108583
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514022545
【氏名又は名称】ゴゴロ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】リウ タイツン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング チアンペン
(72)【発明者】
【氏名】リン イーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ルーク ホクサム ホレース
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−165597(JP,A)
【文献】 特開2014−103005(JP,A)
【文献】 特開2013−222603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52−10/667
H01M 2/10
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型電気エネルギー蓄電装置を製造する方法であって、
携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールを提供することと、
前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールを提供することと、
前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に熱エネルギー吸収材料を提供することと、
前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングおよび前記熱エネルギー吸収材料内に犠牲部材を提供することであって、前記犠牲部材は、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、前記第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される、前記犠牲部材を提供することと、
前記犠牲部材を前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置付けることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の温度が、約50℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の温度が、約60℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分解された材料が、分解前の前記材料の体積よりも少ない体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱エネルギー吸収材料が、相変化材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の温度を下回って環境に曝されたときに熱分解せず、前記第1の温度よりも高い第2の温度で環境に曝されると熱分解する材料で形成された別の犠牲部材を提供することであって、前記別の犠牲部材は、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール両方との間に位置する、前記別の犠牲部材を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
携帯型電気エネルギー蓄電装置であって、
複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、
複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して位置する、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、
熱エネルギー吸収材料と、
第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、前記第1の温度よりも高い第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成された犠牲部材であって、前記熱エネルギー吸収材料内に位置する、犠牲部材と、
を備え、
前記犠牲部材が、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する、携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項8】
前記第2の温度が、約50℃以上である、請求項に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項9】
前記第2の温度が、約60℃以上である、請求項に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項10】
前記分解された材料が、分解前の前記材料の体積よりも少ない体積を有する、請求項に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項11】
前記熱エネルギー吸収材料が、相変化材料である、請求項に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項12】
携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングであって、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールが、前記ハウジング内に位置する、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと、
第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、前記第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成された別の犠牲部材であって、前記の犠牲部材は、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール両方との間に位置する、別の犠牲部材と、
をさらに備える、請求項に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項13】
携帯型電気エネルギー蓄電装置であって、
携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと、
複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、
複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置される、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、
複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する、第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールとは反対の前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの側に配置される、第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、
熱エネルギー吸収材料と、
前記熱エネルギー吸収材料内の犠牲部材であって、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、前記第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される、犠牲部材と、
を備え、
前記犠牲部材が、前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する、携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項14】
前記犠牲部材が、前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと前記第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項15】
前記第2の温度が、約50℃以上である、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項16】
前記第2の温度が、約60℃以上である、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項17】
前記分解された材料が、分解前の前記材料の体積より少ない体積を有する、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項18】
前記熱エネルギー吸収材料が、相変化材料である、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【請求項19】
第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、前記第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成された別の犠牲部材であって、前記別の犠牲部材は、前記携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと前記第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび前記第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール両方との間に位置する、別の犠牲部材をさらに備える、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明する実施形態は、車両および家電製品などの電動装置に使用されるものなどの携帯型電気エネルギー蓄電装置、ならびにそのような携帯型電気エネルギー蓄電装置のための熱暴走軽減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような電池は、より小型で軽量のユニットにより多くのエネルギーを充填することで知られている。リチウムイオン電池は、携帯電話、タブレット、ラップトップ、電動工具および他の高電流機器などの携帯型電子装置に給電することに広い用途を見出している。低重量および高エネルギー密度はまた、リチウムイオン電池を、ハイブリッド車および完全電動車両における使用に関して魅力的なものにしている。
【0003】
リチウムイオン電池の潜在的な欠点は、それらの電解質溶液である。電解液が酸または塩基の水溶液からなる他のタイプの電池とは異なり、リチウムイオンセル内の電解液は、典型的には、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネート(可燃性であり得る)などの有機溶媒中のリチウム塩からなる。
【0004】
通常の動作では、リチウムイオン電池を充電すると、電解質溶液中のリチウムイオンは、薄い多孔質ポリマーセパレータを通ってカソードから移動し、アノード内に挿入される。電荷平衡電子もまたアノードに移動するが、充電器内の外部回路を通って進行する。放電時、逆のプロセスが起こり、電子は給電されている装置を通って流れる。
【0005】
ごくまれな状況において、リチウムイオン電池の内部または外部の短絡が発生し得る。たとえば、リチウムイオン電池を含む電動装置は、激しい衝撃または衝突を受け、その結果電池内に破損が生じ、それによって短絡を招く可能性がある。ポリマーセパレータの薄い性質のために、切断、プレス、粉砕、または他の電池製造工程中に発生したマイクロメートルサイズの金属粒子が、電池セル内に存在する可能性があり、または電池セル内に入り込む可能性がある。これらの小さな金属粒子は蓄積し、最終的にアノードとカソードとの間に短絡を形成する可能性がある。このような短絡は、カソードが電解質溶液と反応して電解質溶液を分解し、熱および炭化水素などの反応性ガスを発生させ得る温度をもたらす可能性があるため、回避されるべきである。典型的には、通常の動作温度では、リチウムイオン電池は非常に安定しているが、ある特定の温度より高くなると、リチウムイオン電池の安定性は予測が難しくなり、高温では、電池ケース内の化学反応によってガスが発生し、その結果電池ケース内の内圧が増大する。これらのガスは、カソードとさらに反応して、より多くの熱を放出し、電池内または電池付近に、酸素の存在下で電解液を発火させ得る温度を生成する可能性がある。電解液が燃焼すると、少量の酸素が生成され、これが燃焼を促進するのを助け得る。何らかの時点で、電池ケース内の圧力が上昇した結果、電池ケースの破裂が生じる。さらなる酸素に曝されると、逃げるガスが発火して燃焼することがある。いくつかの電池製造業者は、セルが破裂および発火する万一の事象において、燃焼を支援するガスが所定の場所および方向でセルを退出するようにセルを設計している。たとえば、従来のAAAまたはAAセルの形状の電池セルは、セルの各端部に位置する終端部から排気するように設計され得る。
【0006】
単一のリチウムイオン電池のみが使用される用途では、電池の故障および燃焼の可能性が、望ましくない状況を作り出す。この状況の重大性は、複数のリチウムイオン電池が電池バンクまたはモジュールの形態で配備されるときに増大する。1つのリチウムイオン電池が故障したときに起こる燃焼は、他のリチウムイオン電池が通常安定している温度より高い局所温度を生成することがあり、それによってこれらの他の電池は故障し、破裂し、ガスを排気し、このガスはその後発火し、燃焼する。したがって、リチウムイオンセルのバンク内の単一セルの破裂は、バンク内の他のセルを破裂させ、発火して燃焼するガスを排出させる可能性がある。幸いにも、リチウムイオン電池は非常に安全であることが証明されており、リチウムイオン電池の故障およびその結果となる破裂は、非常にまれな事象である。それにもかかわらず、破裂のリスク、および破裂したリチウムイオン電池を退出するガスの発火を低減するための取り組みがなされてきている。たとえば、カソードに使用される材料の開発により、広く使用されているコバルト酸化物から作製されたカソードよりも耐熱性に優れたリチウムベースのカソード材料が製造されてきた。これらのより最近開発された材料は、耐熱性がより優れ得るが、この利点はかなりの代償を払う。たとえば、リチウムマンガン酸化物カソードは、リチウムコバルト酸化物よりも低い充電容量を有し、依然として高温において分解する。リチウム鉄リン酸塩カソードは、特に熱的乱用によく耐えるが、それらの動作電圧および体積ベースのエネルギー密度は、コバルト酸リチウムカソードのそれよりも低い。
【0007】
他の取り組みは、ポリマーセパレータおよびその設計に焦点を当てている。たとえば、軽度の過熱に対してある程度の保護を提供するために、ポリプロピレンの2つの層の間にポリエチレンの層を挟むポリマーセパレータを利用することが提案されている。セルの温度が、セルの安定性が予測不能になる温度に近づき始めるにつれて、ポリエチレンは溶融し、ポリプロピレン中の孔を塞ぐ。ポリプロピレンの孔がポリエチレンで塞がれると、リチウムの拡散が阻止され、発火する機会を有する前にセルを効果的に遮断する。他の取り組みは、ポリプロピレンよりも高い融点を有するポリマーセパレータの利用に焦点を当てている。たとえば、ポリイミドから作製されたセパレータおよび高分子量ポリエチレンから作製されたセパレータおよび埋め込まれたセラミック層が、頑強な高融点ポリマーセパレータを形成するために提案されている。低い可燃性の電解液および不揮発性、不燃性イオン性液体、フルオロエーテルおよび他の高度にフッ化溶媒を電池電解液として開発し利用することも検討されている。研究者は、液体を全く含まないリチウムイオン電池を開発している。これらの固体電池は、本質的に不燃性であり、したがって非常に安定で安全であり、長いサイクル寿命および保管寿命を有する、無機リチウムイオン伝導体を含む。しかし、これらの固体電池の製造には、高価で労力を要する真空蒸着方法を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの取り組みにもかかわらず、電気エネルギー蓄電セルの故障および複数セル配備におけるこのような故障の結果として生じるガスの燃焼のリスク、ならびに故障したセルに隣接する電池セルへの熱エネルギーを誘発する故障の伝播、およびそのようなまれな事象が発生した場合にユーザに対する危険を効果的に管理する携帯型電気エネルギー蓄電装置に対する必要性が引き続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願に説明する実施形態は、携帯型電気エネルギー蓄電装置、および携帯型電気エネルギー蓄電装置内に熱分解することができる犠牲部材を含む携帯型電気エネルギー蓄電装置の製造方法に関する。犠牲部材の熱分解時、電気エネルギー蓄電セルの故障の結果から生じるガスが通過することができるチャネルが、携帯型電気エネルギー蓄電装置内に形成される。
【0010】
説明する主題の1つの態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置を製造する方法は、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接する、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとを提供することを含む。これらの実施形態によれば、熱エネルギー吸収材料がハウジング内に提供され、犠牲部材がハウジング内および熱エネルギー吸収材料内に提供される。犠牲部材は、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される。
【0011】
本明細書に説明する方法のさらなる実施形態では、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される別の犠牲部材が、提供される。他の犠牲部材は、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール両方との間に位置する。
【0012】
この出願に説明する他の実施形態は、携帯型電気エネルギー蓄電装置であって、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置される、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、熱エネルギー吸収材料と、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される犠牲部材であって、熱エネルギー吸収材料内に位置する犠牲部材とを含む、携帯型電気エネルギー蓄電装置に関する。いくつかの実施形態では、説明する携帯型電気エネルギー蓄電装置は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールがハウジング内に位置する携帯型電気気エネルギー蓄電装置ハウジングと、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成された別の犠牲部材とを含む。この別の犠牲部材は、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの両方との間に位置する。
【0013】
この出願に説明する追加の実施形態は、携帯型電気エネルギー蓄電装置であって、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置される、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含み、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジング内に位置する第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールとは反対の第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの側に配置される、第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールとを含む、携帯型電気エネルギー蓄電装置に関する。携帯型電気エネルギー蓄電装置は、さらに、熱エネルギー吸収材料と、熱エネルギー吸収材料内の犠牲部材とを含み、犠牲部材は、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成される。いくつかの実施形態では、説明する携帯型電気エネルギー蓄電装置は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールがハウジング内に位置する携帯型電気気エネルギー蓄電装置ハウジングと、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料で形成された別の犠牲部材とを含む。この別の犠牲部材は、携帯型電気エネルギー蓄電装置ハウジングと第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの両方との間に位置する。
【0014】
本出願に説明する他の実施形態は、熱エネルギーを誘発するセル故障の伝播に対する断熱材および熱バリアとして機能する電気エネルギー蓄電セルバリアを含む携帯型電気エネルギー蓄電装置に関する。電気エネルギー蓄電セルバリアはまた、電気エネルギー蓄電セルの端子を損傷から保護するように機能し、電気的絶縁体として作用し、衝撃または他の力に起因する損傷から電気エネルギー蓄電セルを保護するための衝撃吸収体として働く弾性材料を含む。
【0015】
説明する1つの態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、第1の電気エネルギー蓄電セルと、第2の電気エネルギー蓄電セルと、断熱材料および弾性材料を含む電気エネルギー蓄電セルバリアとを含み、電気エネルギー蓄電セルバリアは、第1の電気エネルギー蓄電セルと第2の電気エネルギー蓄電セルとの間に位置する。
【0016】
別の説明する態様の実施形態では、第1の電気エネルギー蓄電セルは、複数の第1の電気エネルギー蓄電セルを含む。
【0017】
他の実施形態では、第2の電気エネルギー蓄電セルは、複数の第2の電気エネルギー蓄電セルを含む。
【0018】
さらに別の実施形態では、第2の電気エネルギー蓄電セルは、第1の電気エネルギー蓄電セルに隣接している。
【0019】
以下の化学作用に限定されるものではないが、第1の電気エネルギー蓄電セルは、ニッケル金属水素化物の化学作用またはリチウムイオンの化学作用を含むことができ、第2の電気エネルギー蓄電セルは、第1の電気エネルギー蓄電セルと同じ化学作用を含むことができる。
【0020】
特定の実施形態では、電気エネルギー蓄電セルバリアは、断熱材料の層、弾性材料の層および/または弾性材料の2つの層の間の断熱材料の1つの層を含む。具体的な実施形態では、断熱材料は、故障したセルの発火が起こる温度で約0.5BTU/ft2/時間/インチ未満、好ましくは0.5BTU/ft2/時間/インチ未満の熱伝導率を有する。断熱材料は、セラミック材料、バーミキュライトベースの材料、または断熱特性を提供することが知られている他の材料を含むことができる。セラミック材料用の担体は、紙ベース、セラミック含浸布、ガラス繊維、または断熱材料を含む薄いシートに形成することができる他の材料であってもよい。断熱材料の具体例は、セラミック繊維紙などのセラミック繊維を含むものである。適切なセラミック繊維の例は、アルミナ、ムライト、炭化ケイ素、ジルコニアまたは炭素を含む。
【0021】
弾性材料の例は、ゴム、より具体的には、フルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、パーフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含む。
【0022】
別の説明する態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールであって、第1の電気エネルギー蓄電モジュールに隣接して配置される、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとを含む。この携帯型電気エネルギー蓄電装置はまた、断熱材料と、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する弾性材料とを含む第1の電気エネルギー蓄電セルバリアと、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアであって、断熱材料と、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して位置する弾性材料とを含む、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアと、弾性材料を含む第3の電気エネルギー蓄電セルバリアであって、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置される、第3の電気エネルギー蓄電セルバリアとを含む。この説明する態様の特定の実施形態では、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材料は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材料の2つの層の間にある。
【0023】
さらに他の実施形態では、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの弾性材料は、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材料と第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間にある。
【0024】
この態様の追加の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接する第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、断熱材料、および第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置された弾性材料を含む、第4の電気エネルギー電気エネルギー蓄電セルモジュールとを含む。これらの追加の実施形態では、第4の電気エネルギー蓄電セルバリアの断熱材料は、第4の蓄電セルバリアの弾性材料の層によって第3の電気エネルギー蓄電セルバリアから分離される。
【0025】
本出願に説明するさらなる態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、カバーおよびベースを含むハウジングを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む少なくとも1つの電気エネルギー蓄電セルモジュールが、ハウジング内に含まれ、断熱材料および弾性材料を含む電気エネルギー蓄電セルバリアは、カバーに隣接して位置しており、このとき断熱材料は、カバーと弾性材料の間に位置する。弾性材料は、ベースに隣接して位置し、電気エネルギー蓄電セルモジュールとベースとの間にある。
【0026】
本出願に説明するさまざまな態様の実施形態によれば、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、携帯型電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内圧を下回る場合は無傷のままであり、携帯型電気エネルギー蓄電装置内の圧力が最大内圧を超え場合に破裂する、バースト構造を含む。
【0027】
別の説明する態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、カバーおよびベースを含むハウジングを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとが、ハウジング内に含まれ、このとき第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して配置される。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールが、ハウジング内に含まれ、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して、第1の電気エネルギー蓄電セルとは反対の第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの側に配置される。弾性材料間に挟まれた断熱材料を含む第1の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する。弾性材料間に挟まれた断熱材料を含む第2の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第3の電気エネルギー蓄電モジュールとの間に位置する。弾性材料を含む第3の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールとベースとの間に位置し、断熱材料および弾性材料を含む第4の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第3の電気エネルギー蓄電セルモジュールとカバーの間に位置する。
【0028】
別の説明する実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、側壁を含むハウジングと、複数の電気エネルギー蓄電セルを含みハウジング内に位置する第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールとを含む。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールもまた、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接してハウジング内に位置する。携帯型電気エネルギー蓄電装置は、弾性材料の電気エネルギー蓄電セル接触保護層と不燃性材料の燃焼バリア層との間に挟まれた誘電材料の電気絶縁層を含む、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の電気絶縁層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含み、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の燃焼バリア層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含む。携帯型電気エネルギー蓄電装置は、さらに、弾性材料の電気エネルギー蓄電セル接触保護層と不燃性材料の燃焼バリア層との間に挟まれた誘電材料の電気絶縁層を含む、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の電気絶縁層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含み、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の燃焼バリア層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含む。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第1の電気エネルギー蓄電セルバリアとの間に位置する。この説明する実施形態によれば、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の電気絶縁層に含まれる少なくとも1つのバイアス排気孔、および第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の燃焼バリア内に含まれる少なくとも1つのバイアス排気孔は、閉位置に付勢され、閉位置から開位置に移動可能であり、閉位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを妨げ、開位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを閉位置よりも小さい程度に妨げる。第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の電気絶縁層内に含まれた少なくとも1つのバイアス排気孔、および第2の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の燃焼バリア層内に含まれた少なくとも1つのバイアス排気孔は、閉位置に付勢され、閉位置から開位置に移動可能であり、このとき閉位置は、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを妨げ、開位置は、第2の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを閉位置よりも小さい程度で妨げる。
【0029】
本明細書に説明する携帯型電気エネルギー蓄電セル装置のさらなる態様の実施形態では、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、側壁を含むハウジングを含み、このときハウジング内には、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールが位置している。複数の電気エネルギー蓄電セルを含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールもまた、ハウジング内に、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールに隣接して位置する。弾性材料の層と不燃性材料の層との間に挟まれた誘電材料の層を含む第1の電気エネルギー蓄電セルバリアは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュールと第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールとの間に位置する。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含み、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の層は、少なくとも1つのバイアス排気孔を含む。第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの誘電材料の層内に含まれる少なくとも1つのバイアス排気孔、および第1の電気エネルギー蓄電セルバリアの不燃性材料の層内に含まれる少なくとも1つのバイアス排気孔は、閉位置に付勢され、閉位置から開位置に移動可能であり、このとき閉位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを妨げ、開位置は、第1の電気エネルギー蓄電セルバリアを通るガスの流れを閉位置よりも小さい程度で妨げる。
【0030】
図面において、同一の参照番号は同様の要素または動作を特定する。図面中の要素のサイズおよび相対的な位置は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。たとえば、さまざまな要素の形状および角度は縮尺通りに描かれておらず、これらの要素のいくつかは、図面の読みやすさを改善するために任意に拡大され配置される。さらに、描かれた要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する情報も伝達することを意図するものではなく、図面における認識を容易にするためにのみ選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】1つの非限定的に例示する実施形態による、本明細書に説明するさまざまな構成要素または構造のうちのいくつかを含む携帯型電気エネルギー蓄電装置の等角の部分的分解図である。
図2図1の携帯型電気エネルギー蓄電装置の等角の、より完全な分解図である。
図3】1つの非限定的に例示する実施形態による、本明細書に説明するさまざまな構成要素または構造のうちのいくつかを含む、携帯型電気エネルギー蓄電装置の別の実施形態の等角の部分的分解図である。
図4】1つの非限定的に例示する実施形態にしたがって形成されたバースト構造の等角図である。
図5】本明細書に説明する非限定的な実施形態による電気エネルギー蓄電装置の概略図であり、電気エネルギー蓄電セルモジュールの故障した電気エネルギー蓄電セルから発するガスおよび熱エネルギーがとる潜在的な経路を例示する。
図6】本明細書に説明する非限定的な実施形態による、本明細書に説明するさまざまな構成要素または構造のうちのいくつかを含む携帯型電気エネルギー蓄電装置の電気エネルギー蓄電セルモジュールの分解図である。
図7図6に例示するタイプの2つの電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む携帯型電気エネルギー蓄電装置の側面図である。
図8】非限定的な実施形態による、バイアス排気孔が閉位置にある電気エネルギー蓄電セルモジュールの一部分の等角図である。
図9】開位置にあるバイアス排気孔を示す、図8の電気エネルギー蓄電セルモジュールの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本出願の主題の具体的な実施形態が例示のために本明細書に説明されているが、開示する主題の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな改変がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、本出願の主題は、付属の特許請求の範囲によるものを除いて限定されない。
【0033】
以下の説明では、開示するさまざまな実施形態の完全な理解を提供するために、特定の具体的な詳細が記載される。しかし、当業者であれば、これらの具体的な詳細の1つまたは複数を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施形態を実施できることを認識するであろう。他の場合、携帯型電気エネルギー蓄電セル、たとえば電池に関連する周知の構造は、実施形態の不必要に不明瞭な説明を避けるために詳細に示されず、または説明されていない。
【0034】
文脈がそうでないことを要求しない限り、明細書および特許請求の範囲を通して、「備える」という単語およびその変形、「備える」および「備えている」などは、「含むが、それには限定されない」とする包括的な意味で、開放的に解釈されるものとする。
【0035】
本明細書を通じて、「1つの実施形態」または「一実施形態」の参照は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通してさまざまな場所での「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。
【0036】
第1、第2、および第3などの序列の使用は必ずしもランク付けされた序列の観念を意味するのではなく、むしろ動作または構造の複数の事例間を区別するだけになり得る。
【0037】
携帯型電力蓄電装置または電気エネルギー蓄電装置への参照は、それだけに限定されないが、電池、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタを含む電力を蓄電し、蓄電された電力を放出することができる任意の装置、およびそれらの複数から構成するモジュールを意味する。携帯型電気エネルギー蓄電セルへの参照は、たとえば、それだけに限定されないが、ニッケル−カドミウム合金電池セルまたはリチウムイオン電池セルを含む、たとえば充電式または二次電池セルなどの化学蓄電セルまたはその複数のセルを意味する。携帯型電気エネルギー蓄電セルの非限定的な例は、図面では円筒形として、たとえば従来のAAAサイズの電池に似たサイズおよび形状で示されているが、本開示は、ここに例示するフォームファクタに限定されない。
【0038】
本明細書に提供する開示の見出しおよび要約は、便宜上のものにすぎず、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0039】
全般的に説明すると、本開示は、電動またはハイブリッド型車両、たとえばオートバイ、スクータおよび電気自転車、電動工具、電動芝生および園芸用機器などの電気装置に給電するのに適した携帯型電気エネルギー蓄電装置であって、1つの電気エネルギー蓄電セルまたはモジュールから別の電気エネルギー蓄電セルまたはモジュールへの熱エネルギーを不安定化する、電気エネルギー蓄電セルの移動および伝播を防止するように働く1つまたは複数の電気エネルギー蓄電セルバリアを含む、携帯型電気エネルギー蓄電装置の例を対象とする。本明細書に説明する実施形態による携帯型電気エネルギー蓄電装置のさらなる説明は、電動スクータで使用される携帯型電気エネルギー蓄電装置の文脈で提供されるが、本明細書に説明する実施形態による携帯型電気エネルギー蓄電装置は、電気式スクータにおける用途に限定されないことを理解されたい。加えて、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、複数の電気エネルギー蓄電セルを含む単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールと、各々が複数の電気エネルギー蓄電セルを含む1対の電気エネルギー蓄電セルモジュールを参照して以下に説明される。本説明は、単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールのみまたは1対の電気エネルギー蓄電セルモジュールのみを含む電気エネルギー蓄電装置に限定されず、2対以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む携帯型電気エネルギー蓄電装置を包含する。
【0040】
本出願に説明する実施形態による携帯型電気エネルギー蓄電装置が電気式スクータなどの電気車両に給電するために使用される具体的な用途では、1つまたは複数の携帯型電気エネルギー蓄電装置が、ユーザの下方に、たとえば、スクータの座席の下に位置するコンパートメント内に受け入れられる。通常、携帯型電気エネルギー蓄電装置は、ユーザが携帯型電気エネルギー蓄電装置を持ち運び、それをコンパートメントから出し入れするためのハンドルを含む。
【0041】
図1を参照すると、携帯型電気エネルギー蓄電装置10は、複数の個々の電気エネルギー蓄電セル14を含む電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含む。電気エネルギー蓄電セルモジュール12は、シェル18と、カバー20と、ベース22とを含むハウジング16内に収容されている。シェル18、カバー20およびベース22は、金属またはプラスチックなどの非金属などの同じまたは異なる剛性不燃性材料から形成される。金属の例示的な非限定的な例は、アルミニウムである。例示しないが、カバー20は、電気エネルギー蓄電装置の運搬を容易にするハンドルを含むことができる。これもまた例示しないが、ベース22は、導電性要素を含み、この導電性要素は、シェル18を通過し、シェル18内の導電性要素と協働して、携帯型電気エネルギー蓄電装置10の外部の場所から電気エネルギー蓄電セルモジュール12への電気接続をもたらす。さらに、導電性要素は、各電気エネルギー蓄電セルモジュールと関連付けられ、個々の電気エネルギー蓄電セルを電気的に接続し、電気エネルギー蓄電セルモジュールも電気的に接続する。シェル18は、カバー20およびベース22に気密に密封され、気密ハウジングを形成する。ベース22を通過する導電性要素も、ベース22に気密に密封される。したがって、シェル18、カバー20、およびベース22は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含む気密エンクロージャを形成する。シェル18、カバー20およびベース22は気密エンクロージャを形成するので、エンクロージャを排気して燃焼を支援する酸素を除去することができる。燃焼を支援する酸素を除去することにより、密封されたエンクロージャ内で起こり得る燃焼の量が低減される。代替的には、エンクロージャは、窒素などの燃焼を支援できないガスで酸素を置換することによって、燃焼を支援する酸素をパージすることができる。シェル18は、雌対合部材および雄対合部材などの従来の材料を単独でまたは接着材料と組み合わせて使用して、カバー20およびベース22に密封され得る。代替的にまたは追加的に、ガスケットを設けてシェル18をカバー20およびベース22に密封することができる。同様に、ベース22を通過する導電性要素は、接着材料および/またはガスケットなどの従来の材料を使用してベース22に密封され得る。
【0042】
電気エネルギー蓄電セルモジュール12を構成する隣合う電気エネルギー蓄電セル14間の隙間、および電気エネルギー蓄電セル14とハウジング16の間の空所は、潜熱蓄積可能な熱エネルギー吸収材料によって占められている。適切な熱エネルギー吸収材料は、材料の温度の実質的な変化なしに、たとえば相変化によって熱エネルギーを吸収または放出する。熱エネルギー吸収材料の例は、相変化を介して大量のエネルギーを吸収および蓄積することができる材料を含む。そのような材料は一般に相変化材料と呼ばれる。相変化材料は、通常、相変化が固体と液体の間にある材料に限定されると理解されるが、相変化材料は、固体と液体の状態の間で変化するものに限定されない。相変化材料は、有機材料、たとえばパラフィンおよび脂肪酸であることができる。相変化材料はまた、塩水和物などの無機物であることもできる。相変化材料はまた、共晶材料または吸湿材料であることもできる。
【0043】
背景技術で留意したように、まれであるが、リチウムイオン電気エネルギー蓄電セルの内部または外部の短絡の結果、個々の電気エネルギー蓄電セルの温度が、カソードが電解質溶液と反応してこれを分解し得るレベルまで上昇する可能性がある。これが起こると、追加の熱エネルギーが生成され、電解質溶液の分解から生成されたガスがカソードと反応して、より多くの熱エネルギーを放出し得る。電気エネルギー蓄電セル内のガスの生成は、密封されたセル内の圧力を増大させる。セル内の圧力が設計されたセルバースト圧力より高く増大する場合、セルは破裂し、ガスが逃げる。これらの反応中、限定された量の酸素が生成され、これは、さらなる燃焼を支援し得る。逃げるガスが、ガスが発火する温度より高い温度に曝されると、ガスは発火し燃焼し得る。加えて、1つの短絡したセルから放出された熱エネルギーおよびバーストしたセルから逃げるガスの燃焼により、他の電気エネルギー蓄電セルの温度が、そのようなセルが通常安定する温度より高く上昇した場合、これらの他の電気エネルギー蓄電セルのカソードは、次いで電解質溶液と反応し、これらのセルをバーストさせて燃焼させるガスを生成する。このような短絡によって開始される燃焼はまれであるが、ユーザの安全のための良好な設計およびその懸念により、電気エネルギー蓄電セルが故障する万一の事象においてユーザを保護するためにそのような措置を講じることが指示される。
【0044】
引き続き図1を参照し、図2を追加的に参照すると、本明細書に説明する携帯型電気エネルギー蓄電装置の1つの態様の1つの非限定的な実施形態は、複数の電気エネルギー蓄電セル14を含む単一の電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含む。図1に例示する実施形態では、単一の電気エネルギー蓄電セルモジュール12は、複数の個々の電気エネルギー蓄電セル14を含む。図1に例示する数と比較して、より多くの数またはより少ない数の個々の電気エネルギー蓄電セルが利用され得ることを理解されたい。
【0045】
開示する主題の他の特徴を不明瞭にすることを避けるために具体的に例示していないが、電気エネルギー蓄電セル14間の隙間は相変化材料によって占められる。利用される具体的な相変化材料は、相変化材料がその相変化を完了し、その温度が上昇し始める前に吸収することができる熱エネルギーの大きさを含む、いくつかの要素を考慮して選択される。通常、状態の変化が完了する前により多くのエネルギーを吸収することができる相変化材料が、より少ない熱エネルギーを吸収したときに状態変化を完了する相変化材料よりも好ましい。例示的な相変化材料は、有機材料、たとえばパラフィンおよび脂肪酸を含む。相変化材料はまた、塩水和物などの無機物であることもできる。相変化材料はまた、共晶材料または吸湿材料であることもできる。図1および2に例示する実施形態では、電気エネルギー蓄電セルバリア24は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上方に位置する。電気エネルギー蓄電セルバリア24は、断熱材料の層26と、弾性材料の層28とを含む。断熱材料の層26および弾性材料の層28の両方は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上面全体に重なるようにサイズ設定される。断熱材料の層26の周囲および弾性材料の層28の周囲は、シェル18内に密接に嵌合するように成形されサイズ設定される。弾性材料の層28と断熱材料の層26との間の密接な嵌合は、これらの層とシェル18の内面との間に気密シールが設けられるほど厳密な公差を有する必要はない。しかし、シェル18の内面と断熱材料の層26および弾性材料の層28の少なくとも一方との間の嵌合が密接になればなるほど、電気エネルギー蓄電セルバリア24は、燃焼からの熱エネルギーおよび炎がシェル18の内面と断熱材料26および/または弾性材料28の外周との間を通ることをより良好に遮ることができる。相変化材料または他の流体が電気エネルギー蓄電セルバリア24とシェル18の間を流れることができることを確実にするという観点から見て、シェル18の内面と、断熱材料の層26および弾性材料の層28のうちの少なくとも一方との間の嵌合の密接性は、小さいほうが好ましい。断熱材料の層26および/または弾性材料の層28とシェル18の内面との間の協働は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セル14の燃焼からの熱エネルギーおよび火炎が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12に隣接する側とは反対の電気エネルギー蓄電セルバリア24の側の場所に移動することを妨げ、いくつかの実施形態では、より好ましくはこれを防止する。他の実施形態では、断熱材料の層26および/または弾性材料の層28とシェル18の内面との間の協働は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セル14の燃焼からの熱エネルギーおよび火炎が、電気エネルギー蓄電セルモジュール12に隣接する側の反対の電気エネルギー蓄電セルバリア24の側の場所に移動することを妨げるが、ガスが電気エネルギー蓄電セルバリア24の一方の側から流れることは可能にする。
【0046】
断熱材料26は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セルの燃焼によって生成された熱エネルギーが、電気エネルギー蓄電装置セルモジュール12とは反対の断熱材料の層26の側に移動することに対する断熱層およびバリアとして働く。電気エネルギー蓄電セルバリア24の一方の側から他方の側への熱エネルギーの移動に対するバリアを設けることにより、高温によって誘発される電気エネルギー蓄電セルの故障の伝播が低減または回避される。断熱材料26は、断熱材料を通る熱エネルギーの伝達を妨げるような熱伝導率を有する材料から選択される。さらに他の非限定的な例において、断熱材料26は、非導電性である材料から形成される。断熱材料26の非導電特性は、断熱材料が、電気エネルギー蓄電セル14に電気的に接続された導電性特徴に悪影響を及ぼす、たとえばこれを短絡させることを防止する。断熱材料26の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルが排気し、発火が起こる温度に対応する温度において約0.5BTU/ft2/hr/インチ未満の熱伝導率を有する材料を含む。加えて、断熱材料は、約130℃を上回る温度でも耐火性である。断熱材料は、セラミック材料、バーミキュライトベースの材料、または断熱特性を提供することが知られている他の材料を含むことができる。セラミック材料用の担体は、紙ベース、セラミック含浸布、ガラス繊維、または断熱材料を含む薄いシートに形成することができる他の材料であってもよい。断熱材料の非限定的な例は、セラミック繊維を含む材料を含む。このようなセラミック繊維は、アルミナ、ムライト、炭化ケイ素、ジルコニアまたは炭素から形成され得る。具体的な実施形態では、断熱材料の層26は、紙のような形態のセラミック繊維を含む。そのように限定されるように意図しないが、一部のセラミック紙材は1260℃以上の耐火性を有する。図1および図2に例示する実施形態によれば、断熱材料の層26は、約0.5mmから約2mmの範囲の厚さを有するが、断熱材料は、とりわけ、望まれる断熱量に応じてより厚くすることもより薄くすることもできる。
【0047】
弾性材料28は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12内の電気エネルギー蓄電セル14の燃焼の、電気エネルギー蓄電セルモジュール12とは反対のエネルギー蓄電セルバリア24の側への移動に対する物理的な不燃性バリアを提供することにより、燃焼バリアとして働く。弾性材料の層28の材料の非限定的な例は、約130℃以上の温度で不燃性である弾性材料を含む。非限定的な実施形態では、弾性材料28は、電気エネルギー蓄電セル端子が形成される材料よりも軟質の材料から形成されることによって、電気エネルギー蓄電セル14の端子に保護をもたらす。さらに他の非限定的な例では、弾性材料28は、非導電性の材料から形成される。弾性材料28の非導電性の特性は、弾性材料が、電気エネルギー蓄電セル14に電気的に接続された導電性特徴に悪影響を及ぼす、たとえばこれを短絡させることを防止する。弾性材料28の材料の非限定的な例は、ショアスケールで約50から100未満の硬度および約10から約20オーム以上の電気抵抗率を有する材料を含む。具体的な実施形態では、弾性材料は、フルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ペルフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、およびスチレンブタジエンゴムである。図1および図2に例示する実施形態によれば、弾性材料の層28は、約0.5mmから2.0mmの厚さであるが、とりわけ、望まれる燃焼移動の阻止量および/または衝撃吸収の量に応じて、より厚くすることができ、またはより薄くすることもできる。
【0048】
背景技術で説明したように、単一の電気エネルギー蓄電セルのみが利用される用途では、セルの燃焼は望ましくない状況を作り出す。この状況の重大さは、複数の電気エネルギー蓄電セルが電池バンクまたはモジュールの形態で配備される場合に増大する。たとえば、電気エネルギー蓄電セルがリチウムイオン化学作用を含む場合、リチウムイオンセルの燃焼は、リチウムイオンセルが不安定になり、バーストして燃焼する温度よりも高い局所温度を生成する可能性がある。したがって、リチウムイオンセルのバンク内の単一のリチウムイオンセルの燃焼が、バンク内の他のセルをバーストさせ、発火させ、燃焼させる可能性がある。幸いにも、リチウムイオンセルは非常に安全であることが証明されており、リチウムイオンセルのバーストおよび燃焼は非常にまれである。それにもかかわらず、ユーザの安全性への関心、およびスクータなどの電気車両の動力源としての電気的エネルギー蓄電セルの受け入れにおいて、リチウムイオン電気エネルギー蓄電セルのバーストおよび燃焼のすでに低い確度をさらに低減し、そのようなセルが発火する万一の事象において燃焼を管理するための措置を講ずることが重要である。
【0049】
本明細書に説明する実施形態によれば、電気エネルギー蓄電セルの燃焼または複数の電気エネルギー蓄電セルの燃焼は、本明細書に説明する実施形態の以下の特徴の組み合わせによって管理される。第1に、バーストしたセルからのガスの発火を開始し、発火したセルの燃焼を維持するために酸素が必要であるということが利用される。第2に、燃焼が起こった場合、故障し、燃焼する可能性があるセルから他のセルへの熱エネルギーの移動が制限される。第3に、特定の閾値圧力まで、セル故障の結果として形成されたガスおよびそのようなガスの燃焼から形成されたガスは、気密密封された電気エネルギー蓄電装置内に含まれる。第4に、電気エネルギー蓄電装置のバースト作用は、予測できない潜在的に危険な方向への制御不能なバーストを避けるように制御される。
【0050】
第1のレベルでは、酸素を含まない気密ハウジング内にリチウムイオン電気エネルギー蓄電セルを含むことにより、セルは、バーストした故障したセルを退出し得る可燃性ガスを発火させ、その燃焼を持続するのに必要な酸素から隔離される。したがって、単一のセル故障の結果、セルがバーストし、セルから排気されたガスが発火する万一の事象において、燃焼を持続させるために利用可能な酸素は、故障したセル内の反応物の間に起こる反応によって生成される酸素に限定される。燃焼を支援するために利用可能な酸素をその場で発生した酸素に限定することにより、電気エネルギー蓄電装置内の燃焼が起こる時間の長さが最小限に抑えられ、それにより、装置内の温度が、故障およびその後のバーストおよび他のセルからのガスの燃焼が起こるレベルまで上昇する確度が低減される。加えて、電気エネルギー蓄電装置内に酸素が存在しないことにより、熱エネルギー吸収材料の燃焼が妨げられる。たとえば、熱エネルギー吸収材料として使用される相変化材料は、液体状態に変化すると可燃性になる。電気エネルギー蓄電装置内の酸素含有量を限定することにより、相変化材料の燃焼が回避または低減される。
【0051】
通常、個々の電気エネルギー蓄電セルからのガスの排気および燃焼は、数秒間しか続かない。この間、局所的な温度は、隣接する電気エネルギー蓄電セルが不安定になり得る温度に近づく可能性がある。普通なら安定している電気エネルギー蓄電セルを故障したセルから発する熱エネルギーから隔離するために、隣接する電気エネルギー蓄電セル間の隙間は、上述の熱エネルギー吸収材料によって占められる。熱エネルギー吸収材料は、熱エネルギー吸収材料の温度を上昇させることなく、セルの故障および故障したセルから発するガスの燃焼に起因する熱エネルギーを吸収する。電気エネルギー蓄電装置内に存在する熱エネルギー吸収材料が、温度が上昇し始める前に吸収できる熱エネルギーの量は、熱エネルギー吸収材料の組成および存在する材料の体積に依存する。たとえば、一定量の熱エネルギー吸収材料は、特定の数のセルの故障および燃焼によって生成される熱エネルギーの全量を吸収するのに十分であるが、追加のセルが故障して燃焼すると、熱エネルギー吸収材料は、温度を上昇させることなく追加の熱エネルギーを吸収することはできなくなる。
【0052】
故障した電気エネルギー蓄電セルが、熱エネルギー吸収材料が吸収することができる熱エネルギーの量を超える熱エネルギーを生成する万一の事象では、追加の電気エネルギー蓄電セルが故障して燃焼する確度は高くなり、その結果、追加のセルが自己伝播式に故障し、燃焼する可能性がある。このような自己伝播式故障および燃焼の結果、電気エネルギー蓄電装置内の圧力は、本明細書に説明する実施形態に含まれる特徴がない場合、装置の制御されないバーストを結果として生じさせ得るレベルまで上昇し得る。本明細書に説明するタイプの電気エネルギー蓄電セル装置は、装置内の圧力が閾値量を超える場合に所定の場所および所定の方向にバーストするように設計されたバースト構造を含む。そのようなバースト構造は、以下でより詳細に説明される。このような圧力閾値は、バーストが望まれない場所では装置がバーストする圧力未満であることを前提にして、任意のレベルに設定され得る。電気エネルギー蓄電装置がバーストする圧力はまた、X個以上の個々のセルの故障および燃焼に起因する圧力上昇を考慮に入れることができ、ここで、Xは、セルの数であり、この数を超えると、そのような数のセルの故障および燃焼の結果、望ましくない場所において電気エネルギー蓄電装置をバーストさせるのに必要な圧力を超える圧力を装置内に生じさせる。本明細書に説明するバースト構造を含む実施形態によれば、装置ハウジングはバーストして、ハウジングの近傍の人への傷害のリスクを低減する方向に高温ガスおよび炎を向ける。
【0053】
図4を参照すると、図1および図2に例示する実施形態では、ベース22にバースト構造30が設けられている。図4のバースト構造30は、ベース22の底部に「切れ目が付けられた」特徴を含む。ベース22の底部に切れ目を付けることにより、ベース22の切れ目が付けられていない部分より薄い切れ目が付けられた部分を生成する。切れ目付けとは、ベースに切れ目を成形することによって提供されるか、またはベースに切れ目を刻印することによって提供することができる。切れ目付けはまた、他のよく理解されている技術によっても提供され得る。バースト構造30は、切れ目が付けられた部分を有するものとして図4に例示されているが、切れ目が付けられた特徴以外の特徴をバースト構造として提供することができることを理解されたい。たとえば、バースト構造は、ハウジング内の圧力が所定のレベルを超えると、ハウジング16を排気する圧力逃がし弁または他の構造またはハードウェアの形態を取ることができる。
【0054】
バースト構造30は、ハウジング16内の圧力が所定の圧力に達すると破損または破壊して開くように設計されている。バースト構造が破損する所定の圧力は、任意の圧力、たとえば、ハウジング16内の所定の数の個々の電気エネルギー蓄電セル14の発火および燃焼時にハウジング内で上昇する圧力より高い圧力であってよい。たとえば、発火して燃焼する電気エネルギー蓄電セルの数が所定の数を下回る場合、ハウジング16内の圧力の増大は、ハウジング16の制御されないバーストの大きなリスクを作り出すようなものではない。一方、発火して燃焼する電気エネルギー蓄電セルの数が所定の数より多くなる場合、ハウジング内の圧力の増大は、ハウジングが制御不能にバーストするリスクを増大させる。バースト構造30は、ハウジング16内の圧力が所定の圧力に達すると破損または破壊して開くように設計されている。図4に例示する実施形態では、バースト構造30は、ベース22の底部内に位置する。したがって、バースト構造30がバーストすると、高温の燃焼ガスおよび炎が携帯型電気エネルギー蓄電装置10の底部を退出して下方向に向けられ得る。バースト構造30は、ベース22の底部内に位置するものとして例示されているが、他の場所に位置することもできる。たとえば、バースト構造30は、ベース22の側部に、またはシェル18の側部に、またはカバー20の上部または側部に位置することができる。バースト構造の具体的な場所は、通常、燃焼ガスおよび炎がハウジング16を出て安全な方向、たとえば通常の使用においてハウジング16の近くにいる人々から離れるように向けられるように選択される。電気エネルギー蓄電装置が電動スクータの座席の下方に位置する実施形態では、バースト構造30は、好ましくは、高温ガスおよび炎がユーザから離れる方向にハウジング16を退出するようにベース22の底部に位置する。
【0055】
図2に戻って参照すると、電気エネルギー蓄電セルモジュール12のベース22に隣接する側において、弾性材料の層32は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の電気エネルギー蓄電セル14を、バースト構造30を含むベース22から分離する。例示する実施形態では、セルモジュール12の下方に追加の電気エネルギー蓄電セルが存在せず、ベース22がユーザから最も遠くに位置しているために、熱エネルギーおよび燃焼の伝播の懸念が小さいことから、この場所において断熱材料の層は省略されている。
【0056】
図3を参照すると、電気エネルギー蓄電セル装置の別の実施形態が例示されており、2つ以上の電気エネルギー蓄電セルモジュール12を含む。図3に例示する実施形態では、複数の個々の電気エネルギー蓄電セル46を含む第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34が、複数の電気エネルギー蓄電セル14を含む第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上方に位置する。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34の上方には、図1を参照して説明した電気エネルギー蓄電セルバリア24と同一の第2の電気エネルギー蓄電セルバリア36が配置されている。図3の実施形態はまた、弾性材料の層42と弾性材料の層44との間に挟まれた断熱材料の層40を含む第1の電気エネルギー蓄電セルバリア38を含むことも、図1に例示する実施形態とは異なる。弾性材料42、44および断熱材料40は、図1および2を参照して上述した弾性材料32および断熱材料26と本質的に同一である。第1の電気エネルギー蓄電セルバリア38の弾性材料42の第2の層は、電気エネルギー蓄電セルモジュール34内の電気エネルギー蓄電セル46の電気端子を保護する。
【0057】
図1および2を参照して例示および説明した実施形態とは異なり、図3に例示する電気エネルギー蓄電装置の実施形態は、電気エネルギー蓄電セルモジュール12の上方に第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34を含む。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール34を設けることは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12内で起こり得る燃焼から電気エネルギー蓄電セルモジュール34を保護する、および電気エネルギー蓄電セルモジュール34内で起こり得る燃焼から第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール12を保護するのに望ましくなる。この保護は、3層の電気エネルギー蓄電セルバリア38によってもたらされる。
【0058】
単一の電気エネルギー蓄電セルモジュールおよび2つの電気エネルギー蓄電セルモジュールを含む実施形態が、図1〜3を参照して上述されているが、本明細書に説明される主題によれば、3つ以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールが提供され得る。3つ以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールが提供される場合、本明細書に説明する実施形態によれば、電気エネルギー蓄電セルモジュール間には、図3の電気エネルギー蓄電セルバリア38に類似する3層電気エネルギー蓄電セルバリアが、設けられる。
【0059】
加えて、電気エネルギー蓄電セルバリア24、36および38の具体的な実施形態が説明されてきたが、追加の断熱が望まれる場合、断熱材料の追加の層を設けることができることを理解されたい。同様に、電気端子のさらなる保護が望まれる場合には、弾性材料の追加の層が設けられ得る。
【0060】
図5は、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発するガスおよび熱エネルギーが熱吸収材料内でとることができるいくつかの異なる経路を概略的に例示している。点線102によって概略的に表される第1の例では、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール100の一部分を構成する電気エネルギー蓄電セル(図示せず)の上端から発するガスおよび熱エネルギーは、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100の上部カバー104の内面に衝突し、上部カバー104の内面によって反射され、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内に含まれる。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュールの内部に向かうこれらのガスおよび熱エネルギーの偏向は、少なくとも、ガスおよび熱エネルギーが、電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の普通なら損傷を受けていない電気エネルギー蓄電セルに損傷を引き起こし得るという理由のため、望ましくない。たとえば、ガスの燃焼からの熱エネルギーは、普通なら損傷を受けていない電気エネルギー蓄電セルに自己発火させる可能性があり、それによって電気エネルギー蓄電セルモジュール100の熱暴走を伝播し得る。加えて、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内のガスの燃焼の結果、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の圧力の増大をもたらし得る。このような圧力増大が第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100のバースト圧力を超える場合、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100は、場合によっては爆発力を伴ってバーストし得る。
【0061】
別の例では、点線106によって概略的に表されているが、ガスおよび熱エネルギーは、カバー104を通過して、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100から逃げる。ガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の周りを流れる。この場合、ガスおよび熱エネルギーにより、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100内の電気エネルギー蓄電セルが故障し、破裂し、もしくは発火する可能性、または第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール100がバーストする確度は低くなり得るが、点線106に沿って進行するガスおよび熱エネルギーが、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の電気エネルギー蓄電セルを故障させ、破裂させまたは発火させるリスクは増大し、それによって携帯型電気エネルギー蓄電装置120がバーストするリスクの増大を招き得る。第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の電気エネルギー蓄電セルの発火は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール内の局所的な温度が個々の携帯型電気エネルギー蓄電セルの故障および/または発火が起こる温度より高く上昇したときに起こり得る。たとえば、電気エネルギー蓄電セルモジュール100から発するガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の下面に衝突し、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の局所的な温度を、電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の個々の電気エネルギー蓄電セルが発火および/または破裂する温度より高く上昇させ得る。第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の下面に衝突するガスおよび熱エネルギーは、消散し、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108の周囲に移動し、ここではこれらガスおよび熱エネルギーは、電気エネルギー蓄電セルモジュール108と例示する携帯型電気エネルギー蓄電装置120のシェル110との間を通過し得る。この場所に存在するガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の局所的温度を、電気エネルギー蓄電セルモジュール108内の個々の電気エネルギー蓄電セルが故障、破裂および/または発火する温度を超えるようにし得る。
【0062】
図6を参照すると、本明細書に説明する非限定的な実施形態による電気エネルギー蓄電装置の分解図は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200を含む。電気エネルギー蓄電セルモジュール200は概略的に示されているが、モジュール200は、図2および図3に例示するものに類似する複数の個々の電気エネルギー蓄電セルを含むことが理解される。加えて、電気エネルギー蓄電セルモジュール200は、矩形モジュールとして概略的に示されているが、蓄電セルモジュール200は、矩形形状に限定されず、円筒形状または丸みを帯びたコーナを有する矩形形状などの他の形状をとってもよい。例示していないが、モジュール200は、モジュール200内の個々の電気エネルギー蓄電セルを電気的に接続するための電気接続と、モジュール200によって給電される装置にモジュール200を電気的に接続する接続とを含む。モジュール200は、モジュール200の周囲を画定する外壁202を含む。
【0063】
1対のモジュール側壁204が、外壁202の4辺に隣接して配置されている。各モジュール側壁204は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200に面する内面205と、内面205とは反対のモジュール側壁204の側の外面208とを含む。例示する実施形態では、外面208は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離れるように向いている。図6の非限定的な実施形態では、モジュール側壁204は、互いの鏡像である2つの部分として例示されている。モジュール側壁204は、モジュール200上に摺動する1つの部品から構成することができ、または3つ以上の部分から構成することができることを理解されたい。モジュール側壁204は、モジュール側壁204をその内面205から外面208に通り抜ける複数の排気孔206を含む。例示する実施形態では、円形であり、複数の縦列に整列している排気孔206が示されている。排気孔206は円形に限定されず、楕円形または矩形のような他の形状になることもできる。加えて、排気孔206は、複数の縦列内に設けられる必要はなく、縦列以外の異なる構成で配置され得る。排気孔206は、モジュール側壁204内の、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の空所に対応する場所に位置する。このような空所は、セルモジュール200内の個々の電気エネルギー蓄電セルの間に生じる。排気孔206をそのような空所と位置合わせすることによって、個々の電気エネルギー蓄電セルと流体間、ならびにモジュール側壁204の一方の側とモジュール側壁204の反対側との間の対流または他のタイプの熱伝達を促進する流体の流れが、たとえば正常動作中により容易に生じ得る。例示していないが、特定の実施形態では、モジュール側壁204は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の周囲に個々の電気エネルギー蓄電セルを置いた結果として生じる、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外側の輪郭に一致するように成形され得る。側壁204に使用される材料は、電気エネルギー蓄電セルの故障時に発生するガスおよび熱エネルギーに関連する高温に耐えることができるタイプのものである。そのような温度は、1000℃以上の範囲であることができる。側壁204の例示的な材料は、燃焼することなくまたは著しく歪むことなくそのような高温に耐えることができる金属、プラスチック、または他の材料を含む。
【0064】
電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方には、電気エネルギー蓄電セルバリア210が位置する。電気エネルギー蓄電セルバリア210は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から別の電気エネルギー蓄電セルモジュールへの燃焼の広がりに対するバリアとして働き、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セルの電極を電気蓄電セルバリア210の導電性構成要素から電気的に絶縁するように働き、電気エネルギー蓄電セルモジュール200からまたはそこへの熱伝達に対するバリアを提供し、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セルの電極を、電気エネルギー蓄電セルバリア210の剛性または研磨性材料との接触によって引き起こされる損傷から保護することを含む、いくつかの機能で働く。図6の非限定的な実施形態では、電気エネルギー蓄電セルバリア210は、弾性材料の電気エネルギー蓄電セル接触保護層214と不燃性材料の燃焼バリア層216との間に挟まれた誘電材料の電気絶縁層212を含む。
【0065】
電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、弾性材料であり、その非限定的な例は、約130℃以上の温度で不燃性である弾性材料を含む。語句「弾性材料」は、可撓性で弾力性があり、変形後に元の形状に実質的に戻ることができる材料を指す。本明細書に説明するタイプの弾性材料は、変形後に元の形状に完全に戻る可撓性かつ弾力性の材料に限定されない。本明細書に説明する非限定的な例による弾性材料は、可撓性で弾力性があり、変形後に元の形状に完全には戻らない材料を含む。非限定的な実施形態では、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、電気エネルギー蓄電セルの端子を構成する材料より軟質である材料から形成されることによって、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の一部分を構成する電気エネルギー蓄電セルの端子に物理的保護をもたらす。さらに他の非限定的な例では、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の弾性材料は、非導電性である。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の非伝導特性は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214が、電気エネルギー蓄電セルに電気的に接続された端子または導電性特徴に悪影響を及ぼす、たとえばこれを短絡させるのを防止する。電気エネルギー蓄電セル保護層214が形成される材料の非限定的な例は、ショアスケールで約50から100未満の硬度および約10から約20オーム以上の電気抵抗率を有する弾性材料を含む。具体的な実施形態では、弾性材料は、フルオロポリマーゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマーゴム、フルオロシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ペルフルオロエラストマーゴム、ポリアクリルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、およびスチレンブタジエンゴムである。他の具体的な実施形態では、弾性材料は、熱硬化性独立気泡ポリウレタン発泡体または他の独立気泡熱硬化性ポリマーなどの低弾性率の適合性発泡体である。
【0066】
電気エネルギー蓄電セル接触保護層214はまた、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の一方の側から電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の反対側への燃焼の伝播に対するバリアまたは妨害物としても働く。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発するガスの燃焼の結果生じる炎に対する不燃性の妨害物または火災防塞板を提供することによって、燃焼の伝播に対するバリアまたは妨害物として働く。さらに他の実施形態では、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気絶縁層212との間に断熱をもたらす。そのような断熱は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から電気絶縁層212への熱エネルギーの伝達を妨げ、および/またはこれに対するバリアとして作用する。電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気絶縁層212との間の熱伝達を妨げることにより、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方に位置する隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール(図示せず)の隣接する電気エネルギー蓄電セル(図示せず)は、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルの故障を結果としてもたらし得る熱エネルギーから遮蔽される。たとえば、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の電気エネルギー蓄電セルが故障するというまれな事象において、蓄電セルは、燃焼時に大量の熱エネルギーを発生させるガスを放出する。この熱エネルギーは、他の電気エネルギー蓄電セルを故障させ、可燃性ガスを放出する可能性がある。これらのガスが発火した場合、電気エネルギー蓄電セルの熱暴走が起こり得る。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214で使用するための材料の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルが可燃性ガスを放出し、これらのガスの発火が起こる温度に対応する温度において約0.5BTU/ft2/hr/インチ未満の熱伝導率値を有する。図6および図7に示すいくつかの実施形態によれば、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、約0.1mmから3.0mmの厚さである。他の実施形態では、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、約0.5mmから2.0mmの厚さであり、さらに他の実施形態では、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、約0.75mmから1.25mmの厚さである。電気エネルギー蓄電セル接触保護層214は、とりわけ、望まれる燃焼移動阻止、断熱、電気エネルギー蓄電電池端子保護および/または衝撃吸収の量に応じて、記載された非限定範囲より厚くすることができ、または薄くすることもできる。
【0067】
電気絶縁層212は、非導電性材料から形成され、その非限定的な例は、約130℃以上の温度では不燃性であり、これらを電気絶縁体にする比誘電率を有する材料を含む。非限定的な実施形態では、電気絶縁層212の非導電性の材料は、電気絶縁層212が、電気エネルギー蓄電セルに電気的に接続された端子または導電性特徴に悪影響を及ぼす、たとえばこれを短絡させるのを防止する。電気絶縁層212の非導電性の材料はまた、電気エネルギー蓄電セルの端子および電気エネルギー蓄電セルモジュール200を構成する電気回路を燃焼バリア層216から電気的に絶縁する。さらに他の非限定的な実施形態では、電気絶縁層212を構成する非導電性の材料は、不燃性または難燃性であり、したがって電気絶縁層212が電気絶縁層212の一方の側から電気絶縁層212の反対側への燃焼の伝播を妨げる、または防止することを可能にする。他の非限定的な実施形態では、電気絶縁層212を構成する非導電性の材料は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214と燃焼バリア層216との間に断熱をもたらす。そのような断熱は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から電気エネルギー蓄電セル接触保護層214を介して電気絶縁層212に熱エネルギーを伝達することを妨げ、および/またはこれに対するバリアとして作用する。電気エネルギー蓄電セルモジュール200と燃焼バリア層216との間の熱伝達を妨げることは、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール(図示せず)を、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルの故障をもたらし得る熱エネルギーから保護するのに役立つ。たとえば、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の電気エネルギー蓄電セルが故障し、ガスを放出し、その燃焼時にかなりの量の熱エネルギーを発生させるまれな事象では、この熱エネルギーは、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の他の電気エネルギー蓄電セルが、故障し、破裂し、自己発火するようにし得る。電気絶縁層212に使用するための材料の非限定的な例は、電気エネルギー蓄電セルが破裂し、発火し得る可燃性ガスを放出する温度に対応する温度において、約3BTU/ft2/時間/インチ未満、約2BTU/ft2/時間/インチ未満および約1BTU/ft2/時間/インチ未満の熱伝導率値を有する。いくつかの実施形態では、電気絶縁層212の非導電性の材料は、自己消火性である。
【0068】
非導電性の材料は、セラミック材料、バーミキュライトベースの材料、または非導電性であることが知られている他の材料、または電気の導電率が低く、良好な断熱材料を含むことができる。セラミック材料用の担体は、紙ベース、セラミック含浸布、ガラス繊維または薄いシートに形成することができる他の材料であってよい。非導電性の材料の非限定的な例は、セラミック繊維を含む材料、たとえば不燃性有機バインダーと一緒に保持されたシリカおよび酸化カルシウム繊維の織物から作製された圧縮性繊維シートを含む。このようなセラミック繊維は、アルミナ、ムライト、炭化ケイ素、ジルコニアまたは炭素から形成され得る。具体的な実施形態では、非導電性の材料は、シリカ/シリカ繊維、アルミニウム、ケブラー(Kevlar)(登録商標)、ノーメックス(登録商標)およびカルシウムマグネシウム珪酸塩繊維を含む。そのように限定されるように意図しないが、電気絶縁層212に使用されるいくつかの非導電性の材料は、1260℃以上に対する耐火性を有する。図6および7に例示する非限定的な実施形態によれば、電気絶縁層212を構成する非導電性の材料の層は、約0.1mmから約3mmの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、電気絶縁層212の厚さは約0.25mから2.0mmであり、さらに他の実施形態では、電気絶縁層212の厚さは約0.35mmから1.25mmである。電気絶縁層212は、とりわけ、望まれる電気絶縁、燃焼移動阻止、および/または断熱の量に応じて、説明した非限定範囲より厚くすることができ、または薄くすることもできる。
【0069】
燃焼バリア層216は、不燃性の高強度材料であり、その非限定的な例は、約130℃以上の温度で不燃性であり、付与される力のタイプ、および電気エネルギー蓄電セルモジュール200の故障した電気エネルギー蓄電セルから発するガスによって作り出された条件に耐えることができる材料を含む。たとえば、構造的損傷および/または短絡などによる電気エネルギー蓄電セルの故障の結果、セル内の圧力上昇の結果として故障した電気エネルギー蓄電セルの破裂が生じる可能性がある。破裂すると、電気エネルギー蓄電セル内のガスは高速で逃げて燃焼し得る。燃焼バリア層216の不燃性で高強度の材料は、携帯型電気エネルギー蓄電装置から高速で逃げるこれらのガスによって引き起こされる力に耐え、そのようなガスの燃焼に関連する高温に耐えることができる材料から選択される。燃焼バリア層216は、故障した電気エネルギー蓄電セルから発する高温ガス、および/またはそのような高温ガスの燃焼の結果生じる炎が、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の上方の隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに衝突するのを妨げ、理想的には防止する。ガスおよび/または炎が隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに衝突するのを妨げるおよび/または防止することにより、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール内の電気エネルギー蓄電セルが、故障した電気エネルギー蓄電セルからのガスが燃焼するときに生成された温度に曝されることによって故障する確度が低減される。非限定的な実施形態では、燃焼バリア層216の不燃性で高強度の材料は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールへの燃焼の伝播に対する妨害物またはバリアとして作用する。燃焼バリア層216として使用するための材料の非限定的な例は、溶融することなく約130℃以上の温度に耐えることができる金属または金属合金を含む。他の非限定的な例では、燃焼バリア層216として使用する材料は、約500℃以上、750℃以上、またはさらには1000℃以上の温度で溶融しない金属を含む。他の実施形態では、燃焼バリア層216を構成する金属は、約1000℃を上回る温度に少なくとも10秒間曝された後溶融しない。さらに他の実施形態では、燃焼層216として使用するための材料は、約1400℃の温度に少なくとも1秒間曝された後に溶融しない金属を含む。具体的な非限定的な実施形態では、燃焼バリア層216は、銅、銅合金、ニッケル、またはニッケル合金から形成される。燃焼バリア層216が形成され得る例示的な金属として銅、銅合金、ニッケルおよびニッケル合金が説明されているが、燃焼バリア層216は、ガスおよび/またはガスの燃焼からの炎が、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールに衝突するのを妨げる、または防止することができる他の金属または非金属材料から形成され得る。
【0070】
電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下方には、第2の電気エネルギー蓄電セルバリア218が位置する。電気エネルギー蓄電セルバリア218は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層220と、電気絶縁層222と、燃焼バリア層224とを含む。電気エネルギー蓄電セルバリア210およびその電気エネルギー蓄電セル接触保護層214、電気絶縁層212および燃焼バリア層216の説明は、電気エネルギー蓄電セルバリア218の電気エネルギー蓄電セル接触保護層220、電気絶縁層222、および燃焼バリア層224に同等に適用される。その説明は、簡潔にするために繰り返されない。第2の電気エネルギー蓄電セルバリア218は、その電気エネルギー蓄電セル接触保護層220、電気絶縁層222および燃焼バリア層224の配向が異なる。電気エネルギー蓄電セルバリア218のこれら3つの層は、電気エネルギー蓄電セルバリア210の同じ3つの層の鏡像である。換言すれば、図6の電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離れながら、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の最も近くには、電気エネルギー蓄電セル接触保護層220が置かれる。電気エネルギー蓄電セル接触保護層220の下方には、電気絶縁層222が位置し、電気絶縁層222の下方には、燃焼バリア層224が位置する。
【0071】
図6には例示しないが、図7にさらに例示するような電気エネルギー蓄電装置120は、図6に例示する電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下方に位置する少なくとも1つの追加の電気エネルギー蓄電セルモジュール226を含む。電気エネルギー蓄電セルモジュール200および電気エネルギー蓄電セルモジュール226の両方は、複数の電気エネルギー蓄電セル232を含む。他の実施形態では、電気エネルギー蓄電装置120は、2つを上回る電気エネルギー蓄電セルモジュールを含むことができる。たとえば、電気エネルギー蓄電装置120は、3つ以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含むことができる。図7では、電気エネルギー蓄電セルモジュール226は、電気エネルギー蓄電セルバリア228と電気エネルギー蓄電セルバリア230との間に挟まれている。電気エネルギー蓄電セルバリア228は、電気エネルギー蓄電セルバリア210と同一であり、電気エネルギー蓄電セルバリア230は、電気エネルギー蓄電セルバリア218と同一である。したがって、電気エネルギー蓄電セルバリア228および電気エネルギー蓄電セルバリア230の説明は、簡略化のために省略されている。
【0072】
図7を参照すると、電気エネルギー蓄電セルモジュール200は、電気エネルギー蓄電セルモジュール226から距離Dだけ離間される。非限定的な実施形態では、距離Dは、約5mmから約20mmの範囲であり、他の非限定的な実施形態では、距離Dは、約7mmから約15mmの範囲であり、さらに他の実施形態では、距離Dは約8mmから約11mmの範囲である。図6および図7に例示する実施形態では、4つのスペーサ234が、電気エネルギー蓄電セルモジュール200と電気エネルギー蓄電セルモジュール226との間に配置される。スペーサ234は、円筒状の形状であり、各々は中心孔を含む。各スペーサ234の中央孔は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214および220、電気絶縁層212および222、ならびに燃焼バリア層216および224の各々を貫通する開口部236と流体連通している。スペーサ234の中央孔と開口部236との組み合わせは、電気エネルギー蓄電セルモジュール226の内部と電気エネルギー蓄電セルモジュール200の内部を流体連通させる。この流体連通により、電気エネルギー蓄電セルモジュール200および226内の圧力を均等化することが可能である。
【0073】
本明細書に説明する主題の具体的な実施形態では、モジュール側壁204の内面205は、膨張性塗料のような防火性または耐火性材料を担持する。代替的には、そのような防火性または耐火性材料は、そのようなモジュールの外面とモジュール側壁204の内面との間の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外部の外壁202によって担持されてよい。このような防火性/耐火成夫材料を提供することにより、モジュール側壁204の外部の炎が電気エネルギー蓄電セルモジュール200の内部に移動することが妨げられる。
【0074】
図6を参照して上述したように、図5の個々の電気エネルギー蓄電セルモジュール100または108は、側壁204を貫通する排気孔206を含む側壁204を含むことができる。そのような実施形態では、図5の電気エネルギー蓄電セルモジュール100の一部分を構成する電気エネルギー蓄電セル(図示せず)から発するガスおよび熱エネルギーは、側壁204内の排気孔206を通ってモジュール100から逃げることができる。
【0075】
本発明者らは、特定の実施形態では、電気エネルギー蓄電装置内の熱エネルギー吸収材料が、電気エネルギー蓄電セルが故障したときに発生するガスの、電気エネルギー蓄電装置内の流れを妨げることを観察した。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、この妨げは、熱エネルギー吸収材料の少なくとも一部が、故障した電気エネルギー蓄電セルによってガスが生成されるときに密封容器内で固体状態にある結果として起こると考えられる。本明細書に説明する特定の実施形態では、犠牲部材が熱エネルギー吸収材料内に設けられ、犠牲部材の熱分解時、熱エネルギー吸収材料内のチャネルは残る。これらのチャネルは、電気エネルギー蓄電セルが故障したときに発生するガスなどの流体が流れる流路を提供する。
【0076】
図5および7を参照すると、犠牲部材302は、電気エネルギー蓄電セルモジュール100の下方に位置する。別の犠牲部材304は、電気エネルギー蓄電セルモジュール100と電気エネルギー蓄電セルモジュール108との間に位置する。図5および図7では、犠牲部材は、電気エネルギー蓄電セルモジュール108の上方に例示されないが、電気エネルギー蓄電セルモジュール108の上方に犠牲部材を設けることができる。追加の犠牲部材306および310が、シェル110の側壁308と電気エネルギー蓄電セルモジュール100および108両方との間に設けられる。以下でより詳細に説明するように、これらの犠牲部材は、熱分解する材料から形成される。犠牲部材の熱分解時、分解前に犠牲部材が占める空間内に、熱エネルギー吸収材料内の隙間またはチャネルが形成される。流体、たとえば、電気エネルギー蓄電セルの故障に起因するガスは、熱エネルギー吸収材料によってブロックされることなく、これらのチャネル内を流れることができる。
【0077】
図6を参照すると、図5の犠牲部材302および304の例示的な実施形態が示される。図6に示すように、犠牲部材302および304は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214、電気絶縁層212および燃焼バリア層216の形状およびサイズに類似する矩形の形状である。犠牲部材302および304の特定の形状およびサイズは、図6に例示するものに限定されず、犠牲部材302および304は異なる形状をとり、異なるサイズのものであることができることを理解されたい。犠牲部材302および304の形状およびサイズは、シェル110および/またはモジュール100および108の形状によって決定され得る。図6はまた、図5の追加の犠牲部材306および310の例示的な実施形態を示す。図6に示すように、犠牲部材306および310は、矩形の形状であり、電気エネルギー蓄電セルモジュール100の底部から電気エネルギー蓄電セルモジュール108のほぼ上部まで延びる。追加の犠牲部材306および310の特定の形状およびサイズは、図6に例示するものに限定されず、犠牲部材306および310は、異なる形状をとり、異なるサイズのものであることができ、ここでもこれら両方は、シェル110および/またはモジュール100および108の形状によって決定され得ることを理解されたい。加えて、犠牲部材306および310は、電気エネルギー蓄電セルモジュール100および108の追加のまたは異なる側部に隣接して、または電気エネルギー蓄電セルモジュール100および108のより少ない側に位置することができる。
【0078】
犠牲部材は、第1の温度を下回る環境に曝されると熱分解せず、第1の温度を上回る第2の温度の環境に曝されると熱分解する材料から形成される。加えて、犠牲部材が形成される材料は、熱吸収材料の熱吸収能力を著しく低下させないことが好ましい。犠牲部材が形成される材料は、熱エネルギー吸収材料が流体状態または固体状態にあるときに熱エネルギー吸収材料と接触した後にその形状を実質的に保持することができなければならない。
【0079】
犠牲部材が形成される材料は、通常の動作条件下で電気エネルギー蓄電装置内で経験される温度の環境に曝されると熱分解しないが、この材料は、1つまたは複数の電気エネルギー蓄電セルが故障したときに、電気エネルギー蓄電装置内で経験される環境に曝されると熱分解する。熱分解とは、材料を含む環境の温度がこの材料の分解温度より高く上昇したときに起こる、犠牲部材が形成される材料の体積の低減を指す。熱分解は、材料を含む環境の温度が材料の分解温度より高く上昇することによって、収縮、燃焼、溶融、蒸発、凍結、凝結、昇華の結果、または材料の体積の低減を結果として生じさせる任意の他の現象であることができる。
【0080】
犠牲部材として使用するための例示的な材料は、約50℃以上の温度の環境に曝されると熱分解するが、約50℃未満の温度で環境に曝されると熱分解しない材料、約60℃以上の温度の環境に曝されると熱分解するが、約60℃未満の温度の環境に曝されると熱分解しない材料、および約70℃以上の温度の環境に曝されると熱分解するが、約70℃未満の温度の環境に曝されると熱分解しない材料を含む。犠牲部材として使用するための例示的な材料は、熱分解されると、熱分解前の材料の体積よりも少なくとも25%未満、熱分解前の材料の体積より少なくとも50%未満、熱分解前の材料の体積より少なくとも約100%未満、または熱分解前の材料の体積よりも少なくとも約200%未満の体積を有する材料を含むことができる。熱分解後、熱分解前の材料よりも少なくとも25%以上少ない体積を有する材料もまた、犠牲部材を形成するために使用されてもよいが、熱分解の際に、そのような材料は、流体が流れることができる熱吸収材料内により小さい隙間を生じさせる。
【0081】
本明細書に説明する実施形態によって犠牲部材を形成することができる例示的な材料は、ポリマー材料を含む。犠牲部材を形成するのに使用するためのポリマー材料の非限定的な例は、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリプロピレンおよびプロピレンコポリマー、およびこれらのポリマー材料と他のポリマー材料および/または非ポリマー材料とのブレンドを含む。ポリマー材料は、中実形態でも発泡形態でもよい。中実形態は、射出成形、真空成形または押出成形技術を用いて製造され得る。発泡形態は、膨張した独立気泡発泡体および押出独立気泡発泡体を含む。
【0082】
図6を参照すると、電気絶縁層212は、複数のバイアス排気孔238を含む。燃焼バリア層216は、複数のバイアス排気孔240を含む。電気絶縁層222は、複数のバイアス排気孔242を含み、燃焼バリア層224は、複数のバイアス排気孔244を含む。バイアス排気孔238、240、242および244は、本質的に同一である。図6を参照して説明する実施形態では、バイアス排気孔238および240は上方向に開き、一方でバイアス排気孔242および244は下方向に開く。バイアス排気孔238、240、242および244は、本質的に、電気エネルギー蓄電セルモジュール200を構成する個々の電気エネルギー蓄電セル232と位置合わせされる。
【0083】
バイアス排気孔240の以下の説明は、バイアス排気孔238に等しく適用される。追加的に図8および9を参照すると、バイアス排気孔240は、燃焼バリア層216内に形成された少なくとも1つのフラップ248を含む。図8および9の例示的な実施形態では、フラップ248は正方形の形状を有する。フラップ248は、燃焼バリア層216を貫通する複数の切れ目が付けられた部分250、252および254によって画定される。切れ目が付けられた部分250、252および254は、ブレード、スタンプ、レーザなどの金属を切断するのに適した切断装置を使用して形成され得る。切れ目が付けられた部分250、252および254は、正方形フラップ248の3つの側部を画定する。残りの側部は、ヒンジ部分256によって画定される。ヒンジ部分256は、燃焼バリア層216を完全に貫通せず、フラップ248がそれに沿って曲がるヒンジ様構造として働き、そのためフラップ248は、図8に示す閉位置から図9に例示する開位置に移動することができる。ヒンジ部分256は、ヒンジ部分256の場所で燃焼バリア層216を圧縮することができる装置を使用して形成され得る。ヒンジ部分256は、クリンプ構造として例示され説明されているが、本明細書に説明する実施形態は、クリンプされるヒンジ部分256に限定されず、フラップ248用のヒンジとして機能することができる他の構造を含む。たとえば、ヒンジ部分256は、ヒンジ部分256に沿って燃焼バリア層216の折り畳みまたは曲げを容易にする穿孔または他の構造によって提供され得る。フラップ248のヒンジ部分256は、フラップ248に所定の閾値圧力が及ぼされたときに、バイアス排気孔238がそのヒンジ部分に沿って曲がり、図9に例示するように開くように設計され得る。
【0084】
燃焼バリア層216内に設けられたバイアス排気孔240に加えて、類似のバイアス排気孔238が電気絶縁層212内に設けられている。図6、8および9に例示する例示的な実施形態では、バイアス排気孔240およびバイアス排気孔238は実質的に同一であるが、本明細書に説明する実施形態は、実質的に同一のバイアス排気孔240およびバイアス排気孔238を含む携帯型電気エネルギー蓄電装置に限定されない。図9を参照すると、電気絶縁層212内に設けられたバイアス排気孔238は、3つの切れ目が付けられた部分およびヒンジ部分によって形成される。例示する実施形態では、バイアス排気孔238の3つの切れ目が付けられた部分は、バイアス排気孔240の切れ目が付けられた部分250、252および254の下にあり、バイアス排気孔238のヒンジ部分は、バイアス排気孔240のヒンジ部分256の下にあり、バイアス排気孔238のフラップ239はフラップ248の下にある。他の実施形態では、バイアス排気孔238の切れ目が付けられた部分は、バイアス排気孔240のヒンジ部分256の下にある。特定の実施形態では、フラップ239の周囲寸法は、フラップ248の周囲寸法よりわずかに小さくてもよい。フラップ239とフラップ248の間の周囲寸法のこの差異は、フラップ248が開いているときに、フラップ239が燃焼バリア層216内の開口部を通過することを可能にする。反対に、フラップ248と比較してフラップ239の周囲寸法が小さくなると、フラップ248がバイアス排気孔238の開口部を通過することを妨げる。加えて、バイアス排気孔238のヒンジ部分は、バイアス排気孔240のヒンジ部分256からわずかに横方向にずらされて、燃焼バリア層216内の開口部を通るバイアス排気孔238のより自由な開放を促進することができる。
【0085】
バイアス排気孔238のフラップの下面258は、電気エネルギー蓄電セル接触保護層214の上面に接触する。この接触は、図8および図9の下方向のフラップの移動を妨げ、次いで、フラップ248の下方向の移動を妨げる。対照的に、フラップ239およびフラップ248は、図9に例示するように上方向に移動することができる。したがって、バイアス排気孔238およびバイアス排気孔240は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離れる方向に開くことができるが、電気エネルギー蓄電セルモジュール200に向かう方向には開くことができない「一方向」排気孔である。バイアス排気孔238および240は、図8に例示する閉位置に付勢されるが、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の圧力の上昇、または故障した電気エネルギー蓄電セルから放出されるガスの力は、駆動力をもたらすことができ、この駆動力により、フラップ239および248は、それぞれのヒンジ部分に沿って曲がり、上方向に開く。電気エネルギー蓄電セルモジュール200内のガスを逃がすことを可能にすることに加えて、バイアス排気孔の一方向の特性はまた、バイアス排気孔に衝突し得るガスが、ガスが衝突する側とは反対のバイアス排気孔の側にある電気エネルギー蓄電セルモジュールを構成する電気エネルギー蓄電セルと直接接触することを妨げ、または防止する。バイアス排気孔は、電気エネルギー蓄電セルモジュールから内向きではなく外向きに開くため、バイアス排気孔は、電気エネルギー蓄電セルモジュール内の故障した電気エネルギー蓄電セルから発するガスおよび熱エネルギーの放出を可能にし、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールのバイアス排気孔と衝突するガスおよび熱エネルギーが、隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュールの電気エネルギー蓄電セルと直接接触することを防止する。
【0086】
電気絶縁層222は、複数のバイアス排気孔242を含み、燃焼バリア層224は、複数のバイアス排気孔244を含む。バイアス排気孔238およびバイアス排気孔240ならびにバイアス排気孔238および240を構成する特徴の上記の説明は、バイアス排気孔242および244が図6に示す非限定的な実施形態に対して下方向に開くことを除き、バイアス排気孔242およびバイアス排気孔244それぞれに等しく適用される。
【0087】
図7を参照すると、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の圧力が、バイアス排気孔238および240(図6)が開く圧力を超えると、バイアス排気孔238および240が開き、ガスがバイアス排気孔を通って逃げることを可能にする。ガスが第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226から逃げることを可能にすることにより、モジュール226がバーストするリスクが低減される。逃げたガスは、図6の点線106に類似する経路を辿ることができる。第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226から逃げるガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下面に衝突し、ここで第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の下面に沿って消散し、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の周囲および第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200と、シェル282との間の空間に入り込む。ガスおよび熱エネルギーは、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200とシェル282との間の空間を通過するとき、ガスまたは燃焼ガスの熱エネルギーを消散させる。図7では、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226は、距離Dだけ第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200から離間される。第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200から第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226までの距離Dだけの離間は、ガスおよび熱エネルギーをより広い表面領域にわたって横方向に広げることを可能にすることによって、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226から発するガスおよび熱エネルギーの消散を促進する。より大きな表面領域にわたって第2の電気エネルギー蓄電モジュールから発するガスの熱エネルギーの消散を促進することにより、電気エネルギー蓄電セルモジュール200の小さな面積に集束される熱エネルギーの大きさが低減され、それによってそのような集束された熱エネルギーが、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の電気エネルギー蓄電セル232の故障または爆発を引き起こす確度を低減する。バイアス排気孔238および240の開放により、第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の故障した電気エネルギー蓄電セル232から発するガスおよび熱エネルギーが、たとえば図5の点線102に沿って第2の電気エネルギー蓄電セルモジュール226内で内部に向けられる確度が低減される。
【0088】
ガスおよび熱エネルギーが第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200とシェル282との間を流れるとき、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200は、モジュール側壁204によってガスおよび熱エネルギーから少なくとも完全にまたは部分的に分離される。モジュール側壁204にわたる圧力差は、モジュール側壁204内の排気孔206によって緩和される。排気孔206はまた、モジュール側壁204の一方の側の圧力がモジュール側壁204の他方の側の圧力と平衡化することを可能にすることによって、携帯型電気エネルギー蓄電装置120内の圧力の均等化を容易にする。携帯型電気エネルギー蓄電装置120内の圧力の均等化はまた、電気エネルギー蓄電セルバリア210および電気エネルギー蓄電セルバリア218内の開口部236によって促進される。開口部236は、第1の電気エネルギー蓄電セルモジュール200内のガスが、電気エネルギー蓄電セルバリア210または電気エネルギー蓄電セルバリア218を通過して携帯型電気エネルギー蓄電装置120の内部空間または隣接する電気エネルギー蓄電セルモジュール226に入ることを可能にする。電気エネルギー蓄電セルバリア210および電気エネルギー蓄電セルバリア218のガスの通過は、電気エネルギー蓄電セルモジュール200内の圧力およびシェル282内の電気エネルギー蓄電セルモジュール200の外側の圧力または電気エネルギー蓄電セルモジュール226内の圧力を均等化するように働く。特定の実施形態では、チューブまたは管が、電気エネルギー蓄電セルモジュールの上方に位置する開口部236と、電気エネルギー蓄電セルモジュールの下方に位置する開口部236との間を延びることができる。
【0089】
本明細書に説明する非限定的な実施形態によるバイアス排気孔の動作および利点は、電気エネルギー蓄電セルバリア210内のバイアス排気孔を参照して説明されてきたが、同じ動作および利点は、バイアス排気孔242および244ならびに電気エネルギー蓄電セルバリア218によっても提供される。図5および図7の非限定的な実施形態には、2つの電気エネルギー蓄電セルモジュール200および226のみが例示されているが、本明細書に説明する実施形態による携帯電気エネルギー蓄電装置は、本明細書に説明するタイプの3つ以上の電気エネルギー蓄電セルモジュールを含むものを含む。
【0090】
前述の詳細な説明は、概略的な図および例を使用して、装置のさまざまな実施形態を示している。そのような概略図および例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む限り、当業者であれば、そのような構造および例内の各機能および/または動作が、個々におよび/または集合的に、広範囲のハードウェアおよびそれらの組み合わせによって実装され得ることを理解するであろう。上述のさまざまな実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本明細書で参照され、および/または出願データシート内に列挙された米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物のすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、さらに別の実施形態を提供するために、必要に応じてさまざまな特許、出願および刊行物の概念を採用するように改変され得る。
【0091】
全電気式スクータおよび/またはバイクなどの個人輸送用車両に使用するための動力システムの環境および状況において全般的に論じられているが、本明細書の教示は、他の車両および非車両環境を含む広範囲の他の環境において適用され得る。さらに、具体的な形状および配向を参照して例示されているが、例示および説明は、網羅的であることを意図するものではなく、例示する正確な形態に実施形態を限定することを意図するものでもない。たとえば、電気エネルギー蓄電セルは、丸い円筒である必要はないが、正方形柱、正方形の箱または矩形の箱などの異なる形状をとることができる。同様に、複数の電気エネルギー蓄電セルモジュールを利用する実施形態は、モジュールが上下に積み重ねられていることを参照して例示され、説明されているが、そのような説明は網羅的であることを意図するものではなく、またはそのような正確な構成に本明細書に説明する実施形態を限定することを意図するものでもない。たとえば、電気エネルギー蓄電セルモジュールは、並べて置かれ、断熱材料の層および弾性材料の層を含む電気エネルギー蓄電セルバリアによって分離され得る。加えて、電気エネルギー蓄電セルバリアは、弾性材料の層と断熱材料の層との組み合わせ、ならびに弾性材料の2つの層の間に挟まれた断熱材料の層を参照して例示され説明されている。ここでも、これらの図および説明は網羅的であることを意図するものではなく、または例示する正確な形態に実施形態を限定することを意図するものでもない。たとえば、電気エネルギー蓄電セルバリアは、断熱材料の層および弾性材料の層の例示され具体的に説明する数より多く含むことができる。
【0092】
要約に説明されているものを含む、例示する実施形態の上記の説明は、網羅的であることを意図するものではなく、または開示する正確な形態に実施形態を限定することを意図するものではない。特定の実施形態および実施例は、例示的目的のために本明細書に説明されているが、当業者によって認識されるように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな等価の改変を加えることができる。
【0093】
これらの変更および他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示する具体的な実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を持つ等価物の全範囲に沿うすべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
図2
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