【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、ジオクチルテレフタレートおよび下記の化学式1で表示される化合物を含む可塑剤組成物が提供される。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1において、R
1ないしR
3はそれぞれ独立的にC
2−8アルキルである。
【0011】
前記一実施形態による可塑剤組成物は、塩化ビニル樹脂の可塑剤として使用されるものであり、2種以上の可塑剤の相互作用によって可塑剤の移行(migration)を効果的に抑制でき、これを含む樹脂組成物のゲル化速度を顕著に向上させることができる。
【0012】
前記ジオクチルテレフタレートはジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートともいい、親環境可塑剤として知られている。ただし、ジオクチルテレフタレートは移行(migration)の問題がある。
【0013】
可塑剤の移行(migration)とは、高分子樹脂が混合された可塑剤のうちの一部が高分子樹脂外部に流出する現象を意味し、流出された可塑剤が体内に流入すれば生命活動に直接関与する内分泌系の正常的な活動を阻害したり非正常的な反応を触発させて致命的な危害を与えるため、可塑剤の移行(migration)を最大限抑制しなければならない。
【0014】
これに本発明は、ジオクチルテレフタレートの可塑剤として優れた特性をそのまま維持すると同時に、可塑剤の移行(migration)を抑制するために前記化学式1で表示される化合物を共に使用する。
【0015】
前記化学式1で表示される化合物はクエン酸とC
2−8アルコールのエステル化合物であって、理論的に限定されるものではないが、前記エステル基とジオクチルテレフタレートのエステル基の間の水素結合などの相互作用によって可塑剤が塩化ビニル樹脂外部に流出しないようにする。
【0016】
特に、前記化学式1において、前記R
1ないしR
3はそれぞれ独立的にブチルまたはオクチルの化合物を使ってより効果的に可塑剤の移行(migration)を抑制し、ゲル化速度を改善することができる。
【0017】
このような化学式1で表示される化合物の例としては、トリブチルシトレート(tributyl citrate)、ブチルジオクチルシトレート、ジブチルオクチルシトレート、トリオクチルシトレート(trioctyl citrate)またはこれらの混合物などが挙げられる。ここで、ブチルジオクチルシトレートは前記化学式1のR
1ないしR
3のうちの一つはブチルであり、二つはオクチルである化合物を総称し、ジブチルオクチルシトレートは前記化学式1のR
1ないしR
3のうちの一つはオクチルであり、二つはブチルである化合物を総称する。
【0018】
前記化学式1で表示される化合物は商業的に購入して用いることができ、また、下記反応式1のような方法で製造することができる。
【0019】
【化2】
【0020】
前記反応はクエン酸とC
2−8アルコールのエステル化反応で、R
1ないしR
3の構造により一回の反応または反応物を異にして前記反応を順次に行って製造することができる。前記反応の条件は、当業界の通常のエステル化反応条件を使用することができる。
【0021】
前記ジオクチルテレフタレートおよび前記化学式1で表示される化合物の重量比は9.5:0.1ないし0.1:9.5である。
【0022】
万一、前記化学式1で表示される化合物の含有量が前記範囲未満であれば可塑剤の移行(migration)特性を効果的に改善できないし、前記化学式1で表示される化合物の含有量が前記範囲を超過すればジオクチルテレフタレートの含有量が少なくなって熱安定性および発泡性が大きく落ちる。好ましくは、前記ジオクチルテレフタレートおよび前記化学式1で表示される化合物の重量比は9:1ないし5:5である。
【0023】
後述する実施形態を参考にすれば、ジオクチルテレフタレートおよび前記化学式1で表示される化合物の重量比を9:1ないし6:4、より好ましくは8:2ないし6:4に調節した場合、可塑剤の移行(migration)特性が改善されることが確認された。
【0024】
前記可塑剤組成物は、ジオクチルテレフタレートおよび前記化学式1の可塑剤以外に下記の化学式2で表示される化合物をさらに含むことができる。
【0025】
【化3】
【0026】
前記化学式2において、R
4ないしR
6はそれぞれ独立的にC
2−8アルキルである。
【0027】
その中でも、前記可塑剤組成物はR
4ないしR
6がそれぞれ独立的にブチルまたはオクチルの化合物をさらに含むことができる。このような化学式2で表示される化合物の例としては、アセチルトリブチルシトレート(acetyl tributyl citrate)などが挙げられる。
【0028】
一方、発明の他の一実施形態によれば、塩化ビニル樹脂100重量部および前記可塑剤組成物40ないし120重量部を含む塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【0029】
前記塩化ビニル樹脂組成物は、一実施形態による可塑剤組成物を含むことによって可塑剤の移行(migration)特性が改善される。また、前記塩化ビニル樹脂組成物は、前記可塑剤組成物によって既存のジオクチルテレフタレートだけを可塑剤として用いた樹脂組成物対比改善されたゲル化速度を示すことができる。前記塩化ビニル樹脂はポリ塩化ビニル(PVC)であり、重合度が700ないし1,200であるものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記塩化ビニル樹脂組成物は、添加剤、例えば安定剤、発泡剤、充填剤および二酸化チタン(TiO
2)で構成される群から選択されるいずれか一つ以上をさらに含むことができる。前記添加剤は、塩化ビニル樹脂組成物で向上させようとする物性によって適するように選択されることができる。
【0031】
前記安定剤は、塩化ビニル樹脂でHClが分離されて発色団であるポリエン構造を形成し、主鎖の切断、架橋現象を起こして発生する様々な物性変化を予防する目的として添加されることができる。このような安定剤としては、Ca−Zn系化合物、K−Zn系化合物、Ba−Zn系化合物、有機Tin系化合物、マタリック石鹸系化合物、フェノール系化合物、燐酸エステル系化合物または亜燐酸エステル系化合物からなる群から選択されるいずれか一つ以上を用いることができる。本発明で用いることができる安定剤として、より具体的な例は、Ca−Zn系化合物;K−Zn系化合物;Ba−Zn系化合物;メルカプチド(Mercaptide)系化合物、マレイン酸系化合物またはカルボン酸系化合物のような有機Tin系化合物;Mg−ステアレート、Ca−ステアレート、Pb−ステアレート、Cd−ステアレート、またはBa−ステアレートなどのようなマタリック石鹸系化合物;フェノール系化合物;燐酸エステル系化合物;または亜燐酸エステル系化合物などであり、使用目的によって選択的に含まれる。本発明では特にK−Zn系化合物、好ましくはK−Zn系複合有機化合物を使用することが好ましい。
【0032】
前記安定剤は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、好ましくは0.5ないし7重量部、より好ましくは、1ないし4重量部が含まれる。安定剤の含有量が0.5重量部未満であれば、熱安定性が低下する問題点があり、7重量部を超過すれば必要以上の熱安定性が発現されることができる。
【0033】
本発明で使用される発泡剤は、化学的発泡剤、物理的発泡剤、またはこれらの混合物の中から選択されるいずれか一つ以上であることを含む。
【0034】
前記化学的発泡剤としては特定温度以上で分解されてガスを生成する化合物であれば特に制限せず、アゾジカーボンアミド(azodicarbonamide)、アゾジイソブチロニトリル(azodiisobutyro−nitrile)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonhydrazide)、4,4−オキシベンゼンスルホニル−セミカルバジド(4,4−oxybenzene sulfonyl−semicarbazide)、p−トルエンスルホニルセミ−カルバジド(p−toluene sulfonyl semi−carbazide)、バリウムアゾジカルボキシレート(barium azodicarboxylate)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド(N,N’−dimethyl−N,N’−dinitrosoterephthalamide)、トリヒドラジノトリアジン(trihydrazino triazine)などを例として挙げることができる。また、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどを例として挙げることができる。また、物理的発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、空気、ヘリウムなどの無機発泡剤または1ないし9個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素化合物(aliphatic hydrocarbon)、1ないし3個の炭素原子を含む脂肪族アルコール(aliphatic alcohol)、1ないし4個の炭素原子を含むハロゲン化脂肪族炭化水素化合物(halogenated aliphatic hydrocarbon)などの有機発泡剤を挙げることができる。
【0035】
前記のような化合物の具体的な例には、脂肪族炭化水素化合物としてメタン、エタン、プロパン、ノーマルブタン、イソブタン、ノーマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタンなどがあり、脂肪族アルコールとして、メタノール、エタノール、ノーマルプロパノール、イソプロパノールなどがあり、ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物として、メチルフルオリド(methyl fluoride)、ペルフルオロメタン(perfluoromethane)、エチルフルオリド(ethyl fluoride)、1,1−ジフルオロエタン(1,1−difluoroethane、HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(1,1,1−trifluoroethane、HFC−143a)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(1,1,1,2−tetrafluoroethane、HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(1,1,2,2−tetrafluoromethane、HFC−134)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(1,1,1,3,3−pentafluorobutane、HFC−365mfc)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(1,1,1,3,3−pentafluoropropane、HFC.sub.13 245fa)、ペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、ジフルオロメタン(difluoromethane)、ペルフルオロエタン(perfluoroethane)、2,2−ジフルオロプロパン(2,2−difluoropropane)、1,1,1−トリフルオロプロパン(1,1,1−trifluoropropane)、ペルフルオロプロパン(perfluoropropane)、ジクロロプロパン(dichloropropane)、ジフルオロプロパン(difluoropropane)、ペルフルオロブタン(perfluorobutane)、ペルフルオロシクロブタン(perfluorocyclobutane)、メチルクロライド(methyl chloride)、メチレンクロライド(methylene chloride)、エチルクロライド(ethyl chloride)、1,1,1−トリクロロエタン(1,1,1−trichloroethane)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(1,1−dichloro−1−fluoroethane、HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(1−chloro−1,1−difluoroethane、HCFC−142b)、クロロジフルオロメタン(chlorodifluoromethane、HCFC−22)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(1,1−dichloro−2,2,2−trifluoroethane、HCFC−123)、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(1−chloro−1,2,2,2−tetrafluoroethane、HCFC−124)、トリクロロモノフルオロメタン(trichloromonofluoromethane、CFC−11)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CFC−12)、トリクロロトリフルオロエタン(trichlorotrifluoroethane、CFC−113)、1,1,1−トリフルオロエタン(1,1,1−trifluoroethane)、ペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、ジクロロテトラフルオロエタン(dichlorotetrafluoroethane、CFC−114)、クロロへプタフルオロプロパン(chloroheptafluoropropane)、ジクロロヘキサフルオロプロパン(dichlorohexafluoropropane)などを挙げることができる。前記のような発泡剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して0.5ないし5重量部であることが好ましく、発泡剤の含有量が少なすぎる場合には発泡をするためのガスの生成量が少なすぎて発泡効果が極めて少ないか、全く期待することができず、多すぎる場合にはガスの生成量が多すぎて要求される物性を期待しにくい。
【0036】
本発明の充填剤は、塩化ビニル樹脂組成物の生産性、乾燥状態の感触(Dry touch)を向上させる目的として用いられ、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、または粘土からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを含む。
【0037】
前記本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物において、前記充填剤は、好ましくは30ないし150重量部、より好ましくは、50ないし130重量部含まれることができる。充填剤が50重量部未満で含まれる場合、寸法安定性と経済性が低くなる問題点があり、130重量部超過して含まれる場合、発泡表面が良くなくて、加工性が低下する問題点がある。
【0038】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、二酸化チタン(TiO
2)を添加して白色度および隠蔽性を向上させることができる。前記二酸化チタンは、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、好ましくは1ないし20重量部、より好ましくは、3ないし15重量部が含まれることができる。二酸化チタンが3重量部未満で含まれる場合、白色度および隠蔽性が落ちて印刷後に色が正しく出ず、15重量部超過して含まれる場合、発泡表面が低下する問題点がある。
【0039】
本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、前記可塑剤および選択的に添加剤を使用して当業界で一般的に知られた方法によって製造されることができ、その方法において特に限定されるものではない。
【0040】
前記塩化ビニル樹脂組成物は、床材、壁紙、ターポリン、人造皮革、おもちゃ、自動車下部コーティング材などに用いることができ、特に可塑剤の移行(migration)特性が改善されて環境的な問題が少なく、速いゲル化速度で高い生産性を有するという利点がある。