【文献】
物流現場改善チャレンジ DSSの「作業行動調査分析システム」 作業動線を徹底調査,生産・物流現場の問題点を可視化,MATERIAL FLOW,日本,株式会社流通研究社,2009年 9月 1日,第50巻,第9号,第45−48頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1および特許文献2等に開示された従来技術では、移動する対象者の動線データを作成する際、無線タグを使用する近距離無線通信技術を利用しているため、対象者が身に着ける無線タグは小型で取り扱いやすいものの、信号を送受信する各無線タグリーダには、電源ラインのほか管理装置等にデータを送信するための信号線を配置する必要があり、当該無線タグリーダの設置時間および設置コストが大きな負担となっていた。
【0006】
さらに、上記近距離無線通信技術による方法は、電磁波(電波)を利用して信号の送受信を行うため、無線タグリーダが発する電磁波の送信範囲(方向角度範囲)が広く、複数の無線タグリーダが近接して設置される場合、1つ無線タグに対し、複数の無線タグリーダが通信を行ってしまうなど、動線データの誤検出に繋がるおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されているように、固定カメラで撮影した映像から客の動線データを作成・出力しようとした従来技術においては、撮影した映像から正確な奥行を導き出すには限界があることから、店舗内の客の動線データを正確に作成して出力することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、移動体の移動情報を正確かつ詳細に取得するとともに、取得した移動体の移動情報(位置情報や映像情報など)を分析・出力することによって、生産性を向上させることが可能な、生産性向上システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)移動エリア内(調査対象エリア200)における移動体(移動体70)の移動情報にもとづいて
改善シミュレーションの解析出力が可能な生産性向上システム(生産性向上システム100)であって、前記移動エリア内に複数設置されるとともに固有の位置識別情報を赤外線信号として発信する位置情報発信手段(位置情報発信器20)と、前記移動体に装着されるとともに前記位置情報発信手段から発信される前記赤外線信号を受信して位置情報データを記憶する位置情報受信手段(装着型位置情報受信器30)と、前記移動体に装着されるとともに当該移動体前方の映像を撮影して映像情報データを記憶する撮影手段(装着型撮影カメラ40及び装着型映像レコーダ50)と、前記位置情報受信手段が記憶する前記位置情報データ及び前記撮影手段が記憶する前記映像情報データを取得して分析を行う分析手段(分析装置10)と、
前記分析手段による分析結果を表示手段に出力する分析結果出力手段と、前記表示手段に出力された前記分析結果に対する解析操作に応じて、前記改善シミュレーションの結果を前記表示手段に出力する表示解析出力手段と、を
備え、前記分析
結果出力手段は、
前記移動エリアのレイアウト図と前記位置情報データにもとづ
く動線図
(動線図400)とが合成されたエリア動線図(図8参照)を前記表示手段に出力するとともに、当該
エリア動線図と前記映像情報データと
を紐付けて前記表示手段に出力
可能とし、前記表示解析出力手段は、前記表示手段に表示された前記エリア動線図上の前記動線図を上下方向及び/又は左右方向の任意の範囲に縮小する前記解析操作(図9、図10参照)に応じて、前記改善シミュレーションの結果を前記表示手段に出力することが可能であることを特徴とする生産性向上システム。
【0010】
上記(1)の構成によれば、移動エリア内に複数設置された位置情報発信手段が、移動体に装着された位置情報受信手段に位置識別情報を赤外線信号にて発信するため、電磁波(電波)の影響を受けやすい精密電子部品を取り扱うような場所でも好適に使用することが可能となる。また、電磁波は赤外線のような指向性を有しておらず、位置情報発信手段に電磁波を利用した場合は、設置間隔の制限を受けて密に設置することができないが、本発明は赤外線信号を使用することにより、細かく送信範囲を設定できるため、設置間隔に大きな制限を受けることなく、より詳細な位置情報データを得ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の分析手段は、取得した位置情報データにもとづいて動線図を出力するとともに、当該動線図と取得した映像情報データとを合成して出力することが可能となっている。このような構成により、例えば、動線図上の任意の位置に対応するに撮影手段により撮影された映像を、動線図上にウィンドウを展開して表示することが可能となり、上記任意の位置における移動体の作業状況などを映像により確認することができる。
さらに、本発明は、表示解析出力手段を有しており、エリア動線図(図8参照)に表示された動線図(動線図400)を上下方向及び/又は左右方向の任意の範囲に縮小する解析操作(図9、図10参照)に応じて、改善シミュレーション結果としての動線図を表示手段に出力することが可能となっている。このような構成により、縮小されたレイアウト範囲に対する動線を、シミュレーション表示することが可能となる。
【0012】
(2)前記位置情報受信手段(装着型位置情報受信器30)は、前記移動体(移動体70)の脚部に装着される上記(1)に記載の生産性向上システム。
【0013】
上記(2)の構成によれば、本発明の位置情報受信手段が、移動体である調査対象者の脚部に装着されるため、手首や胴体に取り付ける場合に比べて、調査対象者の体の向きや腕の動作状態等によって位置情報発信手段からの赤外線信号が受信できないような事態が起こり難いという効果を得ることができる。さらに、頭部に位置情報受信手段を取り付ける場合に比べて、取付け具を小型化できるほか、調査対象者の身長を考慮することなく、位置情報発信手段を容易に設置することが可能である。
【0014】
(3)前記位置情報受信手段及び前記撮影手段はGPS時計を内蔵
し、前記分析手段は、前記位置情報受信手段から取得した前記位置情報データと前記撮影手段から取得した前記映像情報データとを、前記GPS時計の共通の時刻データで紐づける上記(1)または(2)に記載の生産性向上システム。
【0015】
上記(3)の構成によれば、位置情報受信手段から取得した位置情報データと、撮影手段から取得した映像情報データは、互いにGPS時計の正確な時刻に紐づいてデータが記憶されるので、分析手段において上記位置情報データと映像情報データとを合成して出力する場合に、動線図上の任意の位置と、その位置で撮影された映像に時間的な誤差が生じることを防ぐことができる。また、位置情報受信手段および撮影手段の時刻設定をする際、互いに時刻を確認しながら時刻合わせをする必要がなく、位置情報受信手段および撮影手段それぞれにおいて、GPSの受信が行われれば自ずと設定時刻は一致することから、極めて容易に正確な共通の時刻を設定することが可能となる。
【0016】
(4)前記
表示解析出力手段は、前記改善シミュレーションの結果として、縮小された前記動線図と、作業時間の削減効果を
前記表示手段に出力する
ことが可能である上記(1)から(3)のいずれかに記載の生産性向上システム。
【0017】
上記(4)の構成によれば、例えば、
図9、10に示されるように、分析手段の表示画面上のレイアウト変更ラインL1、L2を上下、左右の任意の位置に移動させ、仮想的に移動エリアを縮小することにより、移動距離の短縮による作業時間の削減効果が算出・表示させることが可能である。これにより、移動エリアのレイアウト変更に先立って、作業時間削減効果を事前にシミュレーションすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の生産性向上システム(以下では、単に「本システム」と記載することがある。)について説明する。
【0020】
本発明の生産性向上システムの一実施例として、
図1には生産性向上システム100のシステム全体構成が図示されている。本実施例における生産性向上システム100は、主に分析装置10、位置情報発信器20、装着型位置情報受信器30、装着型撮影カメラ40、装着型映像レコーダ50、定点撮影装置60とから構成されており、施設内における移動体の現状調査結果を分析する機能を有している。
【0021】
A.各システム構成デバイスの説明
以下に、本実施例の生産性向上システム100を構成する各デバイスについて説明する。
(分析装置10)
本実施例における分析装置10は、本システムのシステムプログラムが組み込まれたパーソナルコンピュータが使用され、当該分析装置10に対する有線または無線による接続、記憶媒体の読み込み等により、種々のデータが入出力可能に構成されている。また、当該分析装置10の図示しない画像表示部には、後述する分析機能による分析結果を図、表、グラフ等によって表示することが可能に構成されている。
【0022】
(位置情報発信器20)
本実施例の位置情報発信器20は、
図2(a)に示されるような箱形の筐体を有し、バッテリおよび赤外線発信回路が主に内蔵され、さらに筐体外側面には有効距離セレクタスイッチおよび外部情報入出力端子が備えられている。また、本実施例の位置情報発信器20は、図示されるようにスタンド部材22に取り付けられており、任意の場所の床面に単独で設置することが可能となっている。このような構成によれば、従来のような電源ラインや信号線を配線する必要がないため、位置情報発信器20を短時間、低コストで設置できる上、配線が困難な場所にも容易に設置することができる。
【0023】
なお、位置情報発信器20の設置方法については、上記本実施例の構成に必ずしも限定されるものではなく、マグネットや取付けバンド、専用取付け具等を使用して、床面以外の構造物や設備、機器等に設置することも可能である。
【0024】
また、位置情報発信器20の外側面には
図2(a)に示されるように赤外線信号を発射するための発光部21が設けられており、位置情報発信器20固有の位置識別情報が、水平・垂直方向角約70度の照射範囲において赤外線信号として発信されている。
【0025】
また、本実施例の位置情報発信器20には、前述したように赤外線信号の有効照射距離を選択する図示しない有効距離セレクタスイッチが設けられており、有効照射距離を1mまたは2mに切り替えが可能となっている。
【0026】
なお、上記した本実施例における赤外線信号の照射範囲(方向角度)および有効照射距離は適宜設定変更することが可能であり、赤外線信号が有効に到達する範囲を大きく(例えば、10mや20mなどの任意の距離)、または小さく(例えば、1m未満の任意の距離)設定することが可能である。例えば、赤外線信号の有効到達範囲を小さく設定することにより、所定エリア内において密に位置情報発信器20を設置することが可能となるとともに、それぞれの赤外線信号が相互干渉することなく、後述する装着型位置情報受信器30に対して赤外線信号を発射することができる。
【0027】
また、従来型の電磁波(電波)を利用した近距離無線通信技術による方法は、電磁波の影響を受けやすい精密電子部品を取り扱うような場所では利用できなかったが、本発明の赤外線による通信方式はこのような場所でも好適に利用することができる。
【0028】
(装着型位置情報受信器30)
本実施例の装着型位置情報受信器30は、
図2(b)に示されるような箱形の筐体を有し、バッテリおよび赤外線受信回路、GPS時計回路、データメモリが主に内蔵され、さらに外部情報入出力端子が備えられている。また、本実施例の装着型位置情報受信器30は、図示されるように、移動体70である調査対象者の足首に固定するためのバンド部32を備えており、装着型位置情報受信器30の外側面には受光部31が、バンド部32における装着型位置情報受信器30の左右両側には受光部31a、31c(
図2(b)斜視図背面側にあるため破線で図示する。)が、後方には受光部31bがそれぞれ設けられている。
【0029】
なお、バンド部32に設けられた受光部31a、31b、31c(
図2(b)斜視図背面側にあるため破線で図示する。)は、それぞれ装着型位置情報受信器30内の赤外線受信回路に接続されており、調査対象者の足の向きに影響を受けることなく、位置情報発信器20から発信されている赤外線信号を確実に受信できるように構成されている。また、装着型位置情報受信器30を調査対象者の足首に装着することによって、手首や胴体に取り付ける場合に比べ、調査対象者の体の向きや腕の動作状態等によって位置情報発信器20からの赤外線信号が受信できないような事態が起こり難いという効果を得ることができる。さらに、頭部に装着型位置情報受信器30を取り付ける場合に比べても、図示されるようにバンド部32を小型化できるほか、調査対象者の身長を考慮せずに位置情報発信器20を設置することが可能である。
【0030】
また、本実施例の装着型位置情報受信器30は、前述の位置情報発信器20から発信された赤外線信号を32回/秒でデータメモリに記憶するように構成されており、位置情報発信器20から赤外線信号を受信すると、赤外線信号に含まれる固有の位置識別情報と、GPS時計回路から得た正確な受信時間(時刻)情報とを位置情報データとしてデータメモリに記憶されるように構成されている。
【0031】
なお、上記のようにして装着型位置情報受信器30内のデータメモリに記憶した位置情報データは、現状調査の後に調査対象者の足首から外された装着型位置情報受信器30と分析装置10とを専用ケーブルで接続することにより、分析装置10に転送されるように構成されている。なお、装着型位置情報受信器30に内蔵されるデータメモリは、当該装着型位置情報受信器30に着脱可能な記録媒体としてもよく、このような構成によれば、装着型位置情報受信器30自体を分析装置10近傍まで運んで直接専用ケーブルで接続する必要がないため、容易に分析装置10へのデータ転送が可能となる。もちろん、電波利用に制限がないエリアでは、無線装置を利用して装着型位置情報受信器30から分析装置10に位置情報データをリアルタイムで転送することも可能である。
【0032】
(装着型撮影カメラ40)
装着型撮影カメラ40は
図3(a)、(b)に示されるように専用ベスト41の肩部分に取り付けられ、当該専用ベスト41を着用した現状調査における調査対象者の前方を撮影するように構成されている。また、映像信号は専用ベスト41の背中部分に取り付けられた後述する装着型映像レコーダ50に映像信号線42を介して送信され、記録されるように構成されている。なお、本実施例の装着型撮影カメラ40は、水平画角170度の広角映像を連続して撮影することが可能となっており、専用ベスト41を着用する調査対象者の手元の作業状況や周辺風景を広範囲に撮影することができるよう構成されている。
【0033】
(装着型映像レコーダ50)
装着型映像レコーダ50は
図3(a)、(b)に示されるように箱形の筐体を有し、バッテリおよびGPS時計回路、データメモリが主に内蔵され、さらに映像入力端子、外部情報入出力端子、液晶表示装置が備えられている。また、本実施例の装着型映像レコーダ50は、図示されるように現状調査における調査対象者が着用する専用ベスト41の背中部分に取り付けられており、当該専用ベスト41の肩部分に取り付けられた装着型撮影カメラ40から伸びる映像信号線42が装着型映像レコーダ50の図示しない映像入力端子に接続されている。
【0034】
また、装着型撮影カメラ40によって映像が撮影される場合には、撮影した映像とともに、GPS時計回路から得た正確な撮影時間(時刻)が映像情報データとしてデータメモリに記憶されるように構成されている。
【0035】
なお、上記のようにして装着型映像レコーダ50内のデータメモリに記憶した映像情報データは、現状調査の後に専用ベスト41から外された装着型映像レコーダ50の外部情報入出力端子と、分析装置10とを専用ケーブルで接続することで分析装置10に転送されるように構成されている。なお、本実施例では装着型映像レコーダ50に内蔵されるデータメモリに映像情報データが記憶される構成となっているが、当該データメモリを装着型映像レコーダ50に着脱可能な記録媒体としてもよく、このような構成によれば、装着型映像レコーダ50自体を分析装置10の近傍に運んで直接接続する必要がなく、容易に分析装置10へのデータ転送が可能となる。もちろん、電波利用に制限がないエリアでは、無線装置を利用して装着型映像レコーダ50から分析装置10に映像情報データをリアルタイムで転送することも可能である。
【0036】
(定点撮影装置60)
本実施例の定点撮影装置60は、図示しないカメラ装置と記録装置とから構成され、現状調査の調査対象エリア200内を広範囲に見渡せる任意の位置に設置されている。これにより、現状調査の調査対象者を含む周辺風景を広範囲に撮影して記録することが可能となっている。なお、上記記録装置はGPS時計回路を内蔵しており、撮影した映像データはGPS時計の正確な時刻とともに映像情報データとして記録され、分析装置10に転送されるように構成されている。
【0037】
B.現状調査の方法
以下に、本実施例の生産性向上システム100において、現状調査による各データの収集方法等について説明する。
(位置情報発信器20の設置:S100)
生産性の向上を図ろうとするエリアの現状調査に先立って、
図4のフローに示されるように、調査対象エリア200内の各所に位置情報発信器20を設置する。本実施例では
図6の平面図に示されるように製造施設を調査対象エリア200としており、当該調査対象エリア200内には、二つの出入口DW1、DW2と、6基の工作機械M1〜M6が配置され、さらに中央付近には二つの作業台WB1、WB2が配置されている。
【0038】
そして、
図6の平面図に示されるように、本実施例では各工作機械および作業台周辺の床面に位置情報発信器20(図示MS1〜MS17)を17基設置している。位置情報発信器20の設置に際しては、現状調査において調査対象者がどのような工作機械や作業台に立ち寄ってどのような時間滞留しているのか、さらに、どのような移動経路を辿って移動しているのか、その動線が把握できるように適宜必要な箇所に位置情報発信器20を設置するが必要である。
【0039】
(定点撮影装置60の設置:S110)
図6の平面図に示されるように、本実施例の調査対象エリア200の四隅には、定点撮影装置60のカメラ装置C1〜C4を4基設置している。これにより、調査対象者を含めた周辺の状況を映像として記録することが可能となる。なお、定点撮影装置60は本発明において必須の構成要素ではないが、調査対象者を含め、周辺の状態や他の移動体70(他の作業員など)との位置関係を現状調査の後に確認することができることから、設置することが好ましい。
【0040】
(調査対象者への各種装置の装着:S120)
続いて、現状調査に先立って、調査対象者に対して前述した各種装置の装着を行う。すなわち、本実施例では、装着型位置情報受信器30を
図2(b)に示される態様で調査対象者の足首に固定し、さらに、
図3(a)、(b)に示される態様で装着型撮影カメラ40と装着型映像レコーダ50が取り付けられた専用ベスト41を調査対象者に着用させる。
【0041】
次に、上記装着型位置情報受信器30と装着型映像レコーダ50に内蔵されているGPS時計回路の時刻設定を行う。本実施例ではGPSアンテナを含む時刻設定装置は上記装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50とは別体に構成されており、屋外において当該時刻設定装置を装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50のGPS時計回路に接続してそれぞれ時刻の設定を行う。なお、装着型位置情報受信器30および専用ベスト41の装着前に時刻の設定を行うようにしてもよい。
【0042】
上記のようなGPS時計の時刻設定により、装着型位置情報受信器30で記憶される位置情報データと、装着型映像レコーダ50で記憶される映像情報データは、互いにGPS時計の正確な時刻に紐づいてデータが記憶されるので、両データの時間的なずれを確実に防止することが可能である。また、装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50の時刻設定をする際、互いに時刻を確認しながら時刻合わせをする必要がなく、装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50それぞれにおいて、GPSの受信が行われれば自動的に装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50の設定時刻は一致することから、極めて容易に正確な共通の時刻を設定することが可能となる。
【0043】
(調査対象者の現状調査:S130)
上記した各種装置の設置、装着等が完了すると、所定時間の現状調査を行う。本実施例では、
図6の平面図に示され調査対象エリア200において、製造施設の稼動開始から4時間の現状調査を行っている。なお、現状調査の調査時間は適宜設定することが可能であり、調査対象エリア200の種別(例えば、製造施設、事務所施設、物流施設 他)や、調査対象エリア200の規模や使用形態などを考慮し、調査結果の分析に必要となる調査時間を設定することが望ましい。
【0044】
(各種データの収集および分析:S140)
調査対象エリア200における所定時間の現状調査が終了すると、
図5に示されるように、装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50、定点撮影装置60の記録装置を分析装置10に接続するとともに、各装置のデータメモリ等に記憶された位置情報データや映像情報データを当該分析装置10に転送する。
【0045】
分析装置10では、転送されてきた位置情報データや映像情報データをもとに、
図5に図示される「山積表の作成・出力」、「動線図の作成・出力」、「動線図と映像データとの合成・出力」、「レイアウトの変更シミュレーション」等の処理・分析が行われる。
【0046】
C.各種分析機能
以下に、本実施例の生産性向上システム100において実行される、上記「山積表の作成・出力」、「動線図の作成・出力」、「動線図と映像データとの合成・出力」、「レイアウトの変更シミュレーション」等の各種分析機能について説明する。
(山積表の作成・出力)
装着型位置情報受信器30のデータメモリから転送された位置情報データにもとづいて、
図7に示されるような山積表300が作成され、分析装置10の表示装置に表示出力される。本実施例では、現状調査の全体時間(秒)、全体時間の中の移動時間および滞留時間が出力され、さらに、それぞれの全体時間に対する割合(%)が表示されるように構成されている。
【0047】
また、山積表300では、調査対象者の立ち寄り場所ごとに累積滞留時間(秒)および立ち寄り回数(カウント)が算出され、図示されるように累積滞留時間(秒)の小さいものから順に表示されるよう構成されている。このように山積表300を表示出力することにより、全体時間における移動時間を明確に把握することができるとともに、累積滞留時間(秒)や立ち寄り回数が多い場所を把握して、生産効率に問題がないか検証することが可能となる。
【0048】
(動線図の作成・出力)
分析装置10では、装着型位置情報受信器30のデータメモリから転送された位置情報データにもとづいて、
図8に示されるような動線
図400が作成・出力され、分析装置10の表示装置に表示される。本実施例では、図示されるように調査対象エリア200に6基の工作機械M1〜M6が配置され、中央付近には二つの作業台WB1、WB2が配置されているが、装着型位置情報受信器30のデータメモリから転送された位置情報データにもとづいて、移動方向や経路、立ち寄った工作機械等が認識できるように表示出力される。さらに、出力画面の動線図下方には、現状調査の調査時間における作業時間(秒)、調査対象者の歩行歩数および移動距離(m)が併せて表示される。
【0049】
(動線図と映像情報データとの合成・出力)
本実施例では、装着型位置情報受信器30のデータメモリから分析装置10に転送される位置情報データと、装着型映像レコーダ50および定点撮影装置60のデータメモリや記録装置から転送される映像情報データは、いずれも共通のGPS時計(時刻)に紐づいて記憶されている。したがって、本実施例では
図8に示される動線図と映像情報データが分析装置10によって合成されている。
【0050】
例えば、本実施例では分析装置10の表示装置上に表示された動線の任意の位置に、マウス操作によってポインタを合わせ、プルダウンメニューにて映像表示指示することにより、
図8の動線図上にウィンドウが展開され、装着型撮影カメラ40が撮影した調査対象者の前方の映像と、定点撮影装置60が撮影した調査対象エリア200の全体映像とが表示されるように構成されている。また、必要に応じて映像を再生することも可能である。
【0051】
さらに、任意の時刻を指定することにより、
図8の動線図上に、指定した時刻における位置をマーカー表示するとともに、上記したような態様で映像表示することも可能である。これにより、時系列によるマーカーの移動表示態様を見ながら、必要に応じて当該マーカー位置における映像を確認・検証することが可能となる。
【0052】
上記のような表示出力構成によれば、例えば立ち寄り頻度の高い動線上の地点や、滞留時間の長い動線上の地点の映像を確認することが可能となり、当該地点における作業内容などを確認して、無駄な作業を無くしたり、作業方法を変更するなどして生産効率を改善することが可能となる。
【0053】
(レイアウトの変更シミュレーション)
続いて、
図9には本実施例のレイアウト変更シミュレーションにおける画像の表示態様が示されている。本発明の生産性向上システムの特徴の一つとして、調査対象エリア200内の機械設備等のレイアウト変更に先立って、当該調査対象エリア200を任意の大きさに仮想的に縮小させ、縮小されたレイアウト範囲に対する作業時間の削減効果をシミュレーションして表示出力することが可能となっている。
【0054】
すなわち、本実施例では
図9の画像表示態様に示されるように、動線図上にレイアウト変更ラインL1を表示することが可能となっており、マウス操作等により、当該レイアウト変更ラインL1を左右の任意の位置に移動して仮想的にレイアウト範囲を縮小変更することができる。これにともない、図示されるように動線も左右方向に移動距離が短縮変更され、当該変更後の「必要作業時間(秒)」、「歩数」、「移動距離(m)」の表示とともに、レイアウト範囲の縮小変更による年間削減効果が算出・表示されるように構成されている。
【0055】
さらに、本実施例では、
図10の表示態様に示されるように、上下方向にレイアウト変更ラインL2を表示することも可能となっており、マウス操作等により、当該レイアウト変更ラインL2を上下の任意の位置に移動して仮想的にレイアウト範囲を縮小変更することができる。そして、レイアウト変更ラインL1、L2の位置に応じて動線も上下左右方向に移動距離が短縮変更され、当該変更後の「必要作業時間(秒)」、「歩数」、「移動距離(m)」の表示とともに、レイアウト範囲の縮小変更による年間削減効果が算出・表示されるように構成されている。
【0056】
(他の実施態様)
以上、本発明の生産性向上システムの一実施例について、図面にもとづいて説明したが、具体的な構成は上記した実施形態に必ずしも限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施例では動線図と映像情報データとを合成して出力するようにしたが、これに加えて
図7に示される山積表300を動線図および映像情報データと合成して相互にリンクするよう構成することも可能である。
【0058】
このように構成することによって、例えば、山積表300に出力表示された「機械6」などの場所にマウスのポインタを合わせることによってプルダウンメニューを表示させ、選択したメニューに応じて、動線図上の「機械6」の位置にマーカーを表示したり、「機械6」において装着型撮影カメラ40が撮影した映像を再生させことが可能である。
【0059】
さらに、分析装置10の表示装置に表示されたウィンドウ内に映像を再生させながら、併せて上記表示装置に表示されている動線図上でマーカーを移動表示させることも可能であり、このような構成によれば、調査対象者の詳細な作業内容を映像で確認しつつ、当該映像が撮影された立ち寄り箇所の正確な位置を同時に確認することが可能となる。
【0060】
例えば、上記実施例では現状調査において装着型位置情報受信器30を調査対象者の足首に装着したが、必ずしもこのような態様に限られるものではなく、手首や胴体、頭部等、身体の任意の箇所に装着することも可能である。
【0061】
また、上記実施例では現状調査において、装着型撮影カメラ40を調査対象者の肩部に、装着型映像レコーダ50を調査対象者の背中部分に装着したが、必ずしもこのような態様に限られるものではなく、調査対象者の手元およびその周辺映像を撮影・記録できる方法であれば、胸部や頭部、腰部など、他の箇所に装着型撮影カメラ40や装着型映像レコーダ50を装着するように構成してもよい。
【0062】
また、上記実施例では装着型撮影カメラ40と装着型映像レコーダ50とを別体に構成していたが、必ずしもこのような態様に限られるものではなく、撮影カメラと映像レコーダとを一体に構成してもよい。
【0063】
また、上記実施例では装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50のGPS時計の時刻設定に際し、当該装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50とは別体に構成されたGPSアンテナを含む時刻設定装置をGPS時計回路に接続したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、装着型位置情報受信器30および装着型映像レコーダ50にGPSアンテナを含む時刻設定装置を内蔵するようにしてもよく、このような構成によれば、設定作業が容易となり、現状調査を屋外で行う場合は、実質的に時刻設定作業を行う必要はなく、大幅に手間を削減することが可能となる。
【0064】
また、本発明の生産性向上システムは複数の調査対象者の位置情報データおよび映像情報データを収集・分析することが可能であり、前述した分析結果においても、各調査対象者毎、または複数の調査対象者のデータをまとめて総合的に分析結果を出力することも可能である。
【0065】
また、本発明の生産性向上システムは、機械設備等のレイアウト変更に先立って、レイアウト範囲に仮想的に縮小して、レイアウト範囲の縮小変更による年間削減効果をシミュレーションして表示出力することが可能となっているが、さらに、上記シミュレーション結果にもとづいて、機械設備等のレイアウト変更案を表示出力する機能を付加するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施例では移動体70として製造施設の作業エリアで作業を行う作業員を調査対象に、現状調査から分析装置10による各種分析を行ったが、必ずしも調査対象となる移動体70は人に限られるものではなく、例えば、フォークリフトや荷役運搬車などの車両を調査対象とすることも可能であり、人と車両の両面について現状調査にもとづく分析を行って、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0067】
また、上記実施例における分析装置10はパーソナルコンピュータを使用しているが、必ずしもこのような装置に限定されるものではなく、例えば、コンピュータネットワーク上(例えば、インターネットなど)のサーバコンピュータを分析装置10とすることが可能であるほか、コンピュータネットワーク上の複数のコンピュータ集合体によって分析装置10を構成することも可能である。
【0068】
すなわち、本生産性向上システムの各デバイスによって収集された移動体の移動情報を、デジタルデータとしてコンピュータネットワーク上に出力し、例示した上記分析装置10で解析・分析したデジタルデータを当該コンピュータネットワーク上の複数のコンピュータデバイスで表示出力することが可能であり、例えば、屋内において働く人の行動をデジタルデータ化してインターネット上に出力して可視化することができる。
【0069】
さらに、本生産性向上システムによって解析・分析されたデジタルデータは、例えば、AI(artificial intelligence)による解析に好適に利用することが可能である。
【0070】
また、本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施例に記載された具体的な数値範囲、デバイスの寸法形状・機能等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【解決手段】生産性向上システム100は、移動エリア内における移動体の移動情報にもとづいて分析を行う生産性向上システムであって、移動エリア内に複数設置されるとともに固有の位置識別情報を赤外線信号として発信する位置情報発信手段と、移動体に装着されるとともに位置情報発信手段から発信される赤外線信号を受信して位置情報データを記憶する位置情報受信手段と、移動体に装着されるとともに当該移動体前方の映像を撮影して映像情報データを記憶する撮影手段と、位置情報受信手段が記憶する位置情報データ及び撮影手段が記憶する前記映像情報データを取得して分析を行う分析手段と、を有する。分析手段は、位置情報データにもとづいて動線図を出力するとともに当該動線図と映像情報データとを合成して出力する。