(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6469293
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】でん粉組成物、製紙用添加剤及びでん粉組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 3/02 20060101AFI20190204BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20190204BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20190204BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
C08L3/02
C08K5/21
C08K3/24
D21H19/10 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-151082(P2018-151082)
(22)【出願日】2018年8月10日
【審査請求日】2018年9月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】松本 行司
【審査官】
今井 督
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−238523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 3/00− 3/20
C08K 3/00− 13/08
D21H 19/00− 19/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
でん粉100質量部に対し、0.5〜3質量部の尿素と、0.15〜0.3質量部の酸とを含有するでん粉組成物であって、前記酸は、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを含み、前記硫酸と、硝酸及び/又は塩酸との質量比が42:58〜87:13の範囲であり、前記でん粉組成物の8質量%糊液のpHが6.5〜8.3であることを特徴とするでん粉組成物。
【請求項2】
自家変性処理に用いられる請求項1記載のでん粉組成物。
【請求項3】
前記でん粉が未加工でん粉である、請求項1又は請求項2に記載のでん粉組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のでん粉組成物を含有することを特徴とする製紙用添加剤。
【請求項5】
でん粉100質量部に対し、0.5〜3質量部の尿素と、0.15〜0.3質量部の酸とを含有するでん粉組成物の製造方法であって、前記酸として、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを含み、前記硫酸と、硝酸及び/又は塩酸との質量比が42:58〜87:13の範囲であるものを用い、前記でん粉組成物の8質量%糊液のpHが6.5〜8.3となるように前記酸及び尿素を配合することを特徴とするでん粉組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なでん粉組成物、製紙用添加剤及びでん粉組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
でん粉は、製紙用薬品としては填料に次ぐ需要(国内年間約40〜50万トン)があり、早くから自家変性の対象とされてきた。自家変性とは、製紙会社で使用直前に用途に応じた化工や反応を施すことで、自製化とも称する。自家変性で得られたでん粉は、市販のあらかじめ加工されたものに比べて品質的に劣るものの安価な原料(未加工でん粉など)を用いることから、経済的メリットが期待できるため、大手製紙会社を中心に広く採用されている。でん粉の自家変性は、カチオン化、エステル化なども知られているが、最も需要が多いのは表面サイズ用途を対象とした低粘度化である。
【0003】
表面サイズとは紙の印刷適正や紙力の向上、板紙のカール防止などの目的で水溶性ポリマーの溶液を紙に塗布することをいい、コスト面よりでん粉を加熱糊化した糊液が最も一般的に使用される。
【0004】
でん粉の塗布量は、紙の種類、塗布条件などで変わるが、いずれの場合も操業と効果のバランスを考慮して適当な濃度と粘度に調整された糊液が用いられる。
【0005】
でん粉は、もともと重量平均分子量が数千万から数億の巨大分子であり、そのままでは糊液の粘度が高すぎて塗布が困難となる。逆に、粘度を下げるために糊液の濃度を下げれば、塗布量が低くなりすぎて目的の効果が得られなくなる。そこで、通常10%濃度で60℃の測定条件下で10〜150mPa・sの粘度に低粘度化される。
【0006】
上記において、粘度を下げる、すなわち低分子化する方法としては、酵素処理、酸加水分解や熱化学変性等の化学処理が知られている。
【0007】
酵素処理は、一部の製紙会社で酵素変性としてでん粉の自家変性に採用されている。酵素としては、一般にでん粉分子をランダムに分解するα−アミラーゼが用いられる。酵素はその活性の安定化のため、一定のpH範囲に管理した状態で低粘度化を進める必要がある。また、酵素は触媒的に働くので、低粘度化が完了した時点で酵素を失活させないと、保存中に糊液の低粘度化など糊液品質の低下が進行するおそれがある。
【0008】
また、酵素変性は、酵素の添加量が微量で済み、経済的ではあるが、いわば生き物の酵素による変性のため、原料でん粉の品質やわずかな処理条件の変化により糊液粘度がバラツキやすいこと、夾雑するタンパク質がスカムとして沈殿し、抄紙機、用具、紙を汚染しがちなことなどの潜在的な問題がある。
【0009】
酸加水分解では、酸が触媒として働き、でん粉分子をほぼランダムに分解する。でん粉自家変性においては、でん粉の水懸濁液もしくは加熱糊化した糊液に酸を添加し、一定時間保持して加水分解を進めた後、アルカリで中和する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、変性時のでん粉濃度や温度の変動、中和のタイミングのわずかなズレなどで、糊液粘度などの糊液品質が大きくばらつく欠点があり、実用的とはいいがたい。
【0010】
ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)は、でん粉自家変性としては最も普及している熱化学変性(TCC法、Thermochemical conversion)に使用される。熱化学変性は、薬品による低粘度化と熱機械作用による低粘度化を組み合わせた方法であり、一般に薬品を添加したでん粉の懸濁液をジェットクッカーに連続的に送り込み同時に蒸気を吹き込んで150℃前後に加熱して5分間ほど保持して変性を進めた後、蒸気を分離してついで希釈水を連続的に添加することにより、目的の低粘度糊液を得る。高温で高いせん断を受けるためでん粉分子の分散が進み、比較的安定な品質の糊液が得られることが特徴である。
【0011】
しかし、ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を用いた場合、その添加量に応じて希望の粘度の糊液を簡単に得ることができる反面、変性により硫酸が副生するため苛性ソーダで中和する必要があること(作業性が悪い)、変性時に褐色に着色すること(変性度が高く、中和pHが高いほど著しい)、変性時の温度や時間の変動で糊液の粘度などの糊液品質がばらつきやすいことなどの欠点を持つ。また、ペルオキソ二硫酸水溶液は、PRTR制度の第一種指定化学リストに収載されており、環境への負荷が懸念される。
【0012】
なお、熱分解、せん断による機械的分解、放射線などの物理的にでん粉を低粘度化する方法も知られている。例えば、熱機械変性はジェットクッカーを用いて高温高圧の蒸気を吹き込み、水蒸気が水に凝縮する際に起こる強いせん断力を利用してでん粉を低粘度化する方法である。しかしながら、物理的なでん粉自家変性は、その低粘度化の程度の不十分さやコスト面から表面サイズに応用されていない。
【0013】
上述のように、紙の表面サイズには未加工のでん粉を加熱糊化すると同時に、酵素処理、化学処理を適用することにより低粘度化する、いわゆる自家変性による低粘度化したものが大量に用いられている。なかでも、白色度を低下させることなく自家変性用でん粉を得る手法として、でん粉の水性懸濁液に酸性物質と水溶性窒素化合物を添加したうえ、高温で蒸煮し低粘度化する緩衝型酸加水分解方式による熱化学変性法が提案されている(特許文献1)。この熱化学変性用でん粉は、用いる酸の種類により長期保存する間に自家変性後のでん粉糊液粘度が変化し、実用上問題のあることが判明している。当該問題を解決するために、酸性物質として塩酸又は硝酸と硫酸を一定割合で配合して用いる熱化学変性法が提案されている(特許文献2)。当該方法により、長期間保存しても自家変性後のでん粉糊液粘度の変化を抑制し、一定な粘度の熱化学変性でん粉が得られる。
【0014】
しかしながら、上記手法において糊液の粘度についての記載はあり、確かに粘度は紙への表面サイズについて効果を上げるに重要な因子であるが、他の品質(糊液における沈殿やpH)という観点での検討は一切行われておらず、品質改善の余地を残す設計であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公平05−20471号公報
【特許文献2】特開2004−238523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のような状況に鑑み、本発明は、でん粉自体及び蒸煮後糊液のより品質の高いでん粉組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記目的達成のため、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の1つは、でん粉100質量部に対し、0.5〜3質量部の尿素と、0.13〜0.35質量部の酸とを含有するでん粉組成物であって、前記酸は、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを含み、前記硫酸と、硝酸及び/又は塩酸との質量比が42:58〜87:13の範囲であり、前記でん粉組成物の8質量%糊液のpHが6.5〜8.3であることを特徴とするでん粉組成物を提供するものである。
【0018】
本発明のでん粉組成物は、自家変性処理に用いられることが好ましい。
【0019】
本発明のでん粉組成物においては、前記でん粉が未加工でん粉であることが好ましい。
【0020】
本発明のもう1つは、前記でん粉組成物を含有することを特徴とする製紙用添加剤を提供するものである。
【0021】
本発明の更にもう1つは、でん粉100質量部に対し、0.5〜3質量部の尿素と、0.13〜0.35質量部の酸とを含有するでん粉組成物の製造方法であって、前記酸として、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを含み、前記硫酸と、硝酸及び/又は塩酸との質量比が42:58〜87:13の範囲であるものを用い、前記でん粉組成物の8質量%糊液のpHが6.5〜8.3となるように前記酸及び尿素を配合することを特徴とするでん粉組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、糊液とした際の品質が高くでん粉自体の保存安定性の変化が抑制されたでん粉組成物を提供することができる。具体的には、自家変性後の糊液の沈殿率が低く、でん粉組成物を長期間保存しても自家変性後の糊液の品質が変化し難いものを提供することが出来る。
【0023】
当該でん粉組成物は、次亜塩素酸塩で低粘度化した酸化でん粉等と比べ、簡便かつ低コストで製造することが出来る。また、でん粉の糊化と同時に低分子化を行うため、酸化でん粉等と比べ加工(低分子化)処理後の洗浄・脱水・乾燥などの工程が不要なことや排水がないこと、加工処理後に別途糊化作業を行う必要がないことで環境負荷の低減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のでん粉組成物は、でん粉と、尿素と、酸とを含有する組成物であり、でん粉質量に対して、所定範囲の質量の尿素及び酸を含有し、酸として、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを所定の割合で含有し、8質量%糊液のpHが6.5〜8.3であることを特徴とする。
【0025】
本発明に用いるでん粉は、製紙、段ボール、繊維、塗料、その他工業用途などに用いられるでん粉であれば制限はなく、例えば、未加工のでん粉、湿熱処理や温水処理などの物理的処理が施されたでん粉、架橋処理、エステル化処理、カチオン化処理などの化学的処理が施されたでん粉、α-アミラーゼ処理などの酵素的処理が施されたでん粉を用いることができる。簡便、低コスト、低環境負荷で低粘度化でん粉を得ると言う本発明の趣旨を考慮すると、未加工のでん粉を用いるのが好ましい。
【0026】
でん粉としては、コーンスターチ、タピオカでん粉、馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、小麦でん粉等を用いることができる。また、複数のでん粉を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明のでん粉組成物の調製には、酸として、硫酸と、塩酸及び硝酸のいずれか又は両者とが用いられる。これらは、市場で入手できる硫酸、塩酸、硝酸であれば、いずれも使用できる。
【0028】
酸の添加量は、でん粉100質量部に対して、0.13〜0.35質量部となるように配合すればよく、上記範囲ででん粉8質量%糊液のpHが6.5〜8.3となるように調整すればよい。また、酸の添加量は、上記の範囲内において、所望とするでん粉糊液の粘度、でん粉の種類、熱化学変性の条件、尿素の添加量などに応じて適宜調整することができる。その効果を考慮すると、でん粉100質量部に対して0.15〜0.3質量部とするのが好ましく、0.19〜0.25質量部とするのがより好ましい。酸の量が過少であると、糊液のpHが所望の範囲であったとしても糊液に沈殿が生じやすく糊液の品質に問題が生じ、またでん粉糊液の調製時に加水分解が十分に進行しないため糊液の粘度も十分に低下しない。酸が過大である場合も、糊液のpHが所望の範囲であったとしても糊液に沈殿が生じやすく糊液の品質に問題が生じる。
【0029】
該酸中の硫酸と、塩酸及び/又は硝酸との割合は、硫酸:硝酸及び/又は塩酸の質量比が42:58〜87:13となるように配合する必要がある。すなわち、例えば酸として硫酸と硝酸を用いる場合、でん粉に添加する酸中の42〜87質量%が硫酸となる。硫酸だけ、又は塩酸及び/又は硝酸だけを配合すると、でん粉自体の保存安定性が損なわれるだけでなく、糊液のpHが所望の範囲であったとしても糊液に沈殿が生じやすく品質に問題が生じる。また、硫酸だけを配合すると糊液の粘度が十分に低下せず、塩酸及び/又は硝酸だけを配合するとでん粉がダマになりやすいという問題を有する。酸中の硫酸の割合が過少であっても過大であっても、糊液に沈殿が生じやすく品質に問題が生じる。塩酸と硝酸の両者を用いる場合、これら両者の割合は格別限定されることはなく任意でよい。なお、自家変性後糊液の良好な品質が達成される限り、塩酸、硝酸、硫酸以外の酸を少量併用してもよいが、概して好ましくない。なお、硫酸:硝酸及び/又は塩酸の質量比は、45:54〜87:13となるようにすることが好ましく、45:54〜80:20となるようにすることがより好ましく、50:50〜70:30となるようにすることが特に好ましい。
【0030】
本発明において酸とともに使用される尿素は、工業用、肥料用等のいずれも用いることができ、固形品のほか液状品(高濃度水溶液)も用いることができる。その添加量は、でん粉100質量部に対して0.5〜3質量部となるように配合すればよく、上記範囲ででん粉糊液のpHが6.5〜8.3となるように調整すればよい。また、尿素の添加量は、所望とするでん粉糊液の粘度、でん粉の種類、自家変性の条件、酸の添加量などに応じて適宜調整することができる。その効果を考慮すると、でん粉100質量部に対して1〜3質量部とするのが好ましく、1〜2質量部とするのがより好ましい。
【0031】
尿素の量が過少であると、でん粉の自家変性に際し加水分解が過度にすすむとともに、酸の中和が不完全になり、でん粉糊液のpHが所望の範囲よりも低くなりやすい。また、でん粉糊液のpHが所望の範囲となるよう酸の添加量を併せて減らすと、熱化学変性時に加水分解が十分に進行しないため、糊液の沈殿が増えて粘度も十分に低下しない。更に、尿素の量が過少であると、でん粉組成物自体の保存中に安定性の低下、自家変性後の糊液の沈殿の増加と粘度の低下を招く。
【0032】
一方、尿素の量が過大である場合は、コストの点やその後の製紙工程などへ残留尿素が持ち込まれてしまう点で好ましくない。加えて、でん粉組成物自体の保存中に尿素が分解してアンモニアが発生し、添加した酸を消費してしまうため、結果として得られる糊液の粘度、沈殿率が高くなってしまう傾向がある。更に、尿素の量が過大であると、でん粉組成物自体の保存中に安定性の低下、自家変性後の糊液粘度、沈殿率の上昇を招く。
【0033】
でん粉に上記酸と尿素とを添加してでん粉組成物を調製する方法は、格別限定されない。例えば、酸と尿素を含む水溶液を調製し、それをでん粉に混合することができる。酸と尿素とを含む水溶液の調製に際しては、なるべく少量の水に攪拌しながら尿素、次いで所定の割合の、硫酸と、塩酸及び/又は硝酸とを順次添加し、溶解せしめることが好ましい。調製された混合水溶液を、所定の添加割合になるように、でん粉の粉体に添加、混合する。混合には、例えば、リボンミキサー、パドルミキサー、コニカルミキサー、スクリューブレンダー、ジェットミキサーなどバッチ式、連続式のいずれの混合機も用いることができる。水溶液の添加により水含有量がでん粉の平衡点より高くなるので、気流乾燥機などにより平衡水分量の近辺まで乾燥する。多量の水を用いると最終的に得られるでん粉組成物の水分量を平衡点付近にもっていくための乾燥負荷が増大するので好ましくない。
【0034】
本発明のでん粉組成物から目的とする低粘度のでん粉糊液を得るには常法に従って自家変性すればよい。自家変性の好ましい具体例を挙げると、でん粉濃度が30重量%以上となるようにでん粉組成物に水を加えて水性懸濁液とし、これを滞留装置付きのでん粉変性装置に連続的に供給し、同時に蒸気を連続的に加えて140〜160℃で2〜7分間保持した後、大気中に放出して蒸気を分離し、次いで適当な温度の希釈水を連続的に添加することにより、目的の濃度及び粘度に調整された沈殿率の低い低粘度でん粉糊液を得ることができる。
【0035】
本発明のでん粉組成物は、その特徴を発揮するために、自家変性に用いられるものであることが好ましい。「自家変性」とは、上記に例示されたようなでん粉の糊化と低分子化を同時に行う処理を意味する。上記に例示されるようなでん粉自家変性装置を用いて自家変性することででん粉の糊化、酸によるでん粉の加水分解及び尿素の熱分解で生じるアンモニアによる酸の中和を同時に行うことが出来る。
【0036】
本発明のでん粉組成物は、簡便・安価に沈殿率が低く低粘度のでん粉糊液を調整することができるため、様々な用途に用いることができる。その用途に限定はなく、例えば、製紙用、繊維用、塗料用などに用いることができる。すなわち、本発明のでん粉組成物は、例えば、製紙用添加剤、繊維用添加剤、塗料用添加剤として用いることができ、その糊液としての性質を考慮すると製紙用添加剤とするのが好ましい。上記各添加剤は、その使用方法にも特に制限はなく、通常用いられる添加剤と同様に用いることができる。
【0037】
本発明のでん粉組成物によれば、自家変性後の糊液に一定の粘度を与え、沈殿が少なく、pHが中性付近という、品質が安定化された糊液を得ることが出来る。具体的には、後述の実施例に示したとおり、糊液に沈殿が生じにくい。糊液に沈殿が生じると、例えば製紙用に用いる場合、沈殿物がストレーナーやフィルターに詰まる、塗工ロールに汚れが付着する等の不具合が生じるため、大きな問題となる。また、糊液における沈殿生成は、糊液の老化性の指標であり、沈殿が生じやすい糊液ほど老化しやすい糊液といえ、糊液が老化することにより不均質となる、歩留まりが低下するといった問題が生じる。一方、糊液の粘度を低く保つことができれば、種々の作業効率を高めることができ、例えば製紙用に用いる場合は表面サイズ剤として使用しやすくなる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例
<試料の調製>
表1に示した配合で、尿素及び酸(硫酸、硝酸、塩酸)を少量の水に溶解した水溶液を、コーンスターチに均一に添加、混合した後、気流乾燥により水分量約13%のでん粉組成物を得た。なお、試料10は、糊液のpHが表1に記載した通りとなるように糊化時に苛性ソーダをインラインで添加して調製した。
【0039】
得られた各試料(でん粉組成物)について、以下の手法で糊液の粘度及び沈殿率を測定した。
<粘度の測定>
各試料を30質量%濃度になるように水に溶解して水性懸濁液を得た。これを定量ポンプで熱化学変性用の市販「日食でん粉変性装置」に連続的に供給し、同時に0.9Mpaの圧力を有する蒸気を連続的に供給して150℃に加熱して糊化させ、次いでホールディングコイルでこの温度に5分間滞留させて酸加水分解と酸の中和(尿素の加熱分解により生成するアンモニアによる)を進めた。背圧弁を通過させた直後に糊液をフラッシュチャンバーに導き、過剰の蒸気を分離した後、温水を連続的に供給して約65℃の8質量%濃度の糊液を得た。この糊液について、60℃、60rpmの条件でB型粘度計(東機産業社製)を用いて測定した。
<沈殿率の測定>
上記粘度測定に用いた8質量%濃度糊液約10gを遠沈管に採取し、約50℃の温水約40mlにて希釈後に3000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心後上澄みを捨て、沈殿を再度、温水約40mlに懸濁し、再度遠心分離した。上澄みを捨て、沈殿を重量既知のアルミカップに蒸留水で流し入れ、105℃で一夜乾燥した。乾燥後の重量を採取重量(沈殿重量)とし、糊液中のでん粉重量(糊液重量×8/100)で割ることで沈殿率(糊液のでん粉のうち沈殿した割合)を求めた。
測定結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示した通り、各酸の添加量が所望の範囲でありかつ糊液pHが所望の範囲である変性でん粉(試料11〜試料17、試料19、試料22〜試料25)は、糊液の粘度が十分に低く、沈殿率が1.0%以下と極めて低かった。ただし、尿素を4%添加した試料24及び試料25は、3ヶ月保存後のでん粉組成物について同様に糊液の粘度を測定したところ、表1に示した調整直後のものと比べ粘度が大きく上昇しており(データ省略)、保存安定性に問題があった。一方で、各酸の添加量や糊液pHが所望の範囲を満たさない変性でん粉は、いずれも糊液の沈殿率が2%を越える高い値であった。でん粉糊液において沈殿が多いと、製紙工程においてフィルターやストレーナーに詰まりが生じる、糊液の均質性が大きく低下する、塗工ロールに汚れが付着するという点で大きな問題となる。また、糊液の沈殿率は、糊液老化安定性の指標であり、沈殿率の高い糊液は老化しやすいため糊液の保存安定性が低いといえる。
【要約】
【課題】でん粉自体及び蒸煮後糊液のより品質の高いでん粉組成物を提供する。
【解決手段】このでん粉組成物は、でん粉100質量部に対し、0.5〜3質量部の尿素と、0.13〜0.35質量部の酸とを含有する。また、前記酸として、硫酸と、硝酸及び/又は塩酸とを含み、前記硫酸と、硝酸及び/又は塩酸との質量比が42:58〜87:13の範囲であり、前記でん粉組成物の8質量%糊液のpHが6.5〜8.3である。
【選択図】なし